【実施例】
【0036】
次に、この微細気泡電解水生成装置並びにこの微細気泡電解水生成方法により生成された微細気泡電解水(以下、ナノ電解水という)を用いた洗浄力の効果を検証する。
【0037】
実施例1
〔試験内容〕
飽和食塩水を、3室構造からなる電解槽を用いて、酸性、アルカリ性電解水とも毎分4リットル生成の条件で電気分解し、以下の試料を調製した。
【0038】
・ナノ電解水1:電解水を生成する際に発生するガス(水素、塩素)をナノバブル化し、電解水に添加したものの総称(アルカリ性電解水+水素ナノバブル、酸性電解水+塩素ナノバブル)
・ナノ電解水2:大気をナノバブル化し、電解水に添加したものの総称(アルカリ性電解水+大気ナノバブル、酸性電解水+大気ナノバブル)
・ナノアルカリ性電解水1:アルカリ性電解水を生成する際に発生する水素ガスをナノバブル化し、アルカリ性電解水に添加したもの
・ナノアルカリ性電解水2:大気をナノバブル化し、アルカリ性電解水に添加したもの
・ナノ酸性電解水1:酸性電解水を生成する際に発生する塩素ガスをナノバブル化し、酸性電解水に添加したもの
・ナノ酸性電解水2:大気をナノバブル化し、酸性電解水に添加したもの
・電解水:3室型電解槽の中間室に飽和塩水を循環し、電気分解することで陽極および陰極室から得られる水の総称
【0039】
ナノ電解水を用いて人工汚染布(EMPA社製)の洗濯を行い、洗浄効率を算出した。
【0040】
比較対象物として、水道水、洗剤および電解水を用いて同様の試験を行った。
その結果は、
図3〜
図6のグラフ図に示した。
【0041】
即ち,ナノ電解水1(尚、各表および図面では、丸付き数字1で表す)は、アルカリ性電解水を生成する際に発生する水素ガスを再度アルカリ性電解水に戻す(0.2L/minを15分間)方法で調整したものであり、洗濯後、使用したアルカリ性電解水を取り除き、新たに酸性電解水(発生する塩素ガス(0.2L/min)を15分間戻す)を用いて洗濯を行った。
【0042】
その後、水道水で濯ぎを行った。また、ナノ電解水2(尚、各表および図面では、丸付き数字2で表す)は、それぞれの電解水で発生するガスの代わりに空気(0.2L/min,15分間)を吹き込む方法で調整したアルカリ性電解水、酸性電解水の順で洗濯を行い、最後に水道水で濯ぐ方法で洗濯を行った。
【0043】
〔試験方法〕
タオル(横64cm×縦27cm)に15cm角の人工汚染布(未汚染布、カーボンブラック/鉱物油、血液、ココア、赤ワインの5種)をそれそれ縫い付け、下記の工程に従って洗濯を行った。
【0044】
なお、槽内の洗濯物どうしの擦れを再現するために、バスタオル(横128cm×縦60cm)9枚と一緒に洗濯を行った。
【0045】
A 水道水・洗剤洗濯工程順(1.→4.)
(使用洗剤) 洗濯用合成洗剤 アタックバイオEX(花王株式会社製)
1.洗浄(水温8°C)/15分間
〔条件〕 水位:低 洗剤洗濯時,洗剤60g添加
仮脱水/1分間
2.すすぎ(水温8°C)/10分間
〔条件〕 水位:低
仮脱水/1分間
3.すすぎ2(水温8°C)/15分間
〔条件〕 水位:低
4.脱水 / 15分間
【0046】
B 電解水洗濯工程(白物設定)順(1.→4.)
1.アルカリ性電解水洗浄(水温7°C)/15分間
〔条件〕 水位:低 pH:10.80 ORP:−192 塩素濃度:19
ppm
仮脱水/1分間
2.酸性電解水洗浄(水温7°C)/10分間
〔条件〕 水位:低 pH:4.05 塩素濃度:19ppm
仮脱水/1分間
3.すすぎ2(水温6°C)/3分間
〔条件〕 水位:低
4.脱水 / 5分間
【0047】
C ナノ電解水洗濯工程〔(1),(2)共通 順(1.→4.)
1.ナノアルカリ性電解水洗浄(水温7°C)/15分間
〔条件〕 水位:低 pH(1):12.17 ORP(1):−596
pH(2):11.78 ORP(2):−202
仮脱水/1分間
2.ナノ酸性電解水洗浄(水温6°C)/10分間
〔条件〕 水位:低 pH(1):4.41 塩素濃度(1):18ppm
pH(2):4.40 塩素濃度(2):18ppm
仮脱水/1分間
3.すすぎ (水温7°C)/3分間
〔条件〕 水位:低
4.脱水 / 5分間
【0048】
〔使用機器〕
・分光測色計 CM−600d(コニカミノルタ センシング株式会社製)
・ボータブル電気伝導率・pH計 WM−32EP(東亜ディーケーケー社製)
・ORP複合電極 PST−2739C(東亜ディーケーケー社製)
・塩素濃度計 RC−2Z(笠原理化学工業株式会社製)
・業務用洗濯機22kgタイプ WN220(山本製作所製)
【0049】
〔試験結果〕
試験時のナノ電解水のpH,ORPおよび塩素濃度を表1および2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
尚、表1は、ナノアルカリ性電解水生成時の各種値一覧である。
【0052】
【表2】
【0053】
尚、表2は、ナノ酸性電解水生成時の各種値一覧である。
【0054】
尚、表2は、ナノ酸性電解水工程の際は、電解水洗濯時と塩素濃度を一致させるため、水道水で希釈を行ったものを使用した。
【0055】
洗濯後、分光測色計を用いて520nmでの反射率(R)の測定を行い、下記の計算式よりK/S値および洗浄効率(%)を算出した。
【0056】
〔計算式〕
1.計算式は、 K/S値=〔1−反射率(R)〕
2 ÷2÷反射率(R)
2.洗浄効率(%)
〔(洗浄布のK/S)−(洗濯後の汚染布のK/S)〕÷〔(汚染布のK/S)−(未汚染布のK/S)〕×100
【0057】
【表3】
【0058】
尚、表3は、未汚染布であり、反射率(R)は、汚染布1枚につき、表裏計10回の測定を行った平均である。
【0059】
【表4】
【0060】
尚、表4は、カーボンブラック/鉱物油(洗濯前)である。
【0061】
【表5】
【0062】
尚、表5は、カーボンブラック/鉱物油(洗濯後)である。
【0063】
【表6】
【0064】
尚、表6は、血液(洗濯前)であり、反射率(R)は、汚染布1枚につき、表裏計10回の測定を行った平均である。
【0065】
【表7】
【0066】
尚、表7は、血液(洗濯後)である。
【0067】
【表8】
【0068】
尚、表8は、ココア(洗濯前)である。
【0069】
【表9】
【0070】
尚、表9は、ココア(洗濯後)である。
【0071】
【表10】
【0072】
尚、表10は、赤ワイン(洗濯前)である。
【0073】
【表11】
【0074】
尚、表11は、赤ワイン(洗濯後)である。
【0075】
人工汚染布として鉱物油中に分散しているカーボンブラックが付着している布に対しては、一般洗剤の洗浄力と大きな相違は認められなかった。その理由として、洗濯段階で鉱物油が洗剤中の界面活性剤との反応により乳化されて布から取り除かれる際に、泡となりその中にカーボンブラックが粒子となって取り込まれる。
【0076】
しかし、ナノ電解水には界面活性剤としての効果は働かないことから、遊離したカーボンブラックは編み込まれている繊維の間に油の一部とともに取り込まれて、洗浄効果が多少低下したせいと考えられる。
【0077】
次に、血液が付着した布では、血液中のタンパク質にある赤血球が残る布全体が変色することが考えられる。そこでナノ電解水1およびナノ電解水2の方法で調製したナノ電解水で洗濯することにより、繊維の間に入り込んだ血液はナノ効果により繊維の間から取り除かれることが考えられ、期待通りの洗浄効果がえられた。
【0078】
さらに、ココアは、嗜好品の一つとして、健康面からもカカオポリフェノールなどが含まれており、抗酸化物質と呼ばれる活性酸素の攻撃から身を守るために働く機能を持っている。
【0079】
また、ココアには脂質が含まれていることから、繊維にしっかり付着することが考えられ、水道水や洗剤などでは編み込まれている繊維間に入り込んだ脂質などは効率よく取り除くことは難しい。
【0080】
そこで、ナノ化した電解水中でも(1)の方法で調製したナノ電解水での洗濯は、繊維間に入り込んだ脂質を効率よく取り除くことが可能であることが明らかになった。
【0081】
最後に、フラボノイド、アントシアニン、カテキンおよびタンニンなど多くのポリフェノール類を含む赤ワインが付着した布の洗濯では、通常、酸素系漂白剤で赤ワインのシミ抜きをするが、すべての織物に使うことはできない。
【0082】
10〜15%程度のアルコールを含んでおり、布の繊維間に浸み込んだアルコールに溶け込んでいるポリフェノール類を取り除くには、電解水の酸化還元電位(Oxidation Reduction Potential =ORP,単位mV)を考慮しなければならない。
【0083】
すなわち,プラスの値が大きいほど酸化力(老化)が大きく、マイナスの値が大きいほど還元力(老化防止)が強く、その働きは強まる。
【0084】
そこで、ORPの数値からアルカリ電解水のORP値が−192を示した電解水による洗濯に高い洗浄力効果を発揮したものと考察した。このことは、アルカリ性電解水をバブリングによるナノ発泡化を行うとORP値が上昇し還元力が強くなり、洗浄効果低下に影響を及ぼしたためと考えられる。
【0085】
また、本試験では二通りのナノ電解水を用いて検証を行なったが、電解水(2)では空気を吸引処理したナノ電解水であり、原水と比べてORP値(−596→−202mV)がブラス側に移行した結果、その洗浄力とナノ電解水1よりもナノ電解水2の方が僅かながら洗浄力が向上した結果が得られた。
【0086】
以上の結果から、どのような食材で布を汚染したかを考慮した上で調製した2種類のナノ電解水を使い分けることにより、従来の洗剤を使用する洗濯よりも効率良く洗浄性の効果が確認できた。
【0087】
次に、この微細気泡電解水生成装置並びにこの微細気泡電解水生成方法により生成されたナノ電解水を用い、殺菌力の効果を検証する。
【0088】
〔試験内容〕
ナノ電解水を用い、ボストンレタス(市販)から無作為に葉3枚を抽出し、1枚を4分割して、それぞれを検体とする。検体量は、約8g程度とし、検体を軽く水洗いした後、約50リットル程度試験水を水張りしたシンクからバスポンプ〔BP−101K(株式会社工進社製)〕で吸い上げ、2分間流水洗浄する。洗浄後、検体を軽く水洗いをする。
【0089】
検体は、滅菌バッグにいれ、10倍希釈液を加えて、1分間ホモジナイズする。出来上がった検体液1ミリリットルを簡易培地〔ペトリフィルム・一般生菌用プレート(住友スリーエム株式会社製)〕にて分注する。
【0090】
また、混釈法に従い、段階希釈を行なう。インキュベーターにて35℃、48時間の環境で培養する。培地に現れたコロニーを計測し、3枚当たりの平均値を1gまたは1ミリリットルあたりの菌数とする。
【0091】
試験水は、
1) 水道水
2) 酸性電解水 pH3.01 遊離残留塩素濃度 40ppm
3) ナノバブル酸性電解水 pH3.05 遊離残留塩素濃度 40ppm
を使用した。尚、生成条件は、本願出願人の製造・販売に係る,電解水生成装置(守る水:登録商標)(製品番号ESS−ZERO)と、同じく微細気泡発生装置(ナノアクア:登録商標)(製品番号MN−20)を手動接続させ、15分間連続稼働する。酸性電解水流量は、毎分約3リットル生成させた。
【0092】
〔一般生菌数〕
レタス洗浄前後の菌数を計測した。培地は、一般生菌用ペトリフィルムを使用した。インキュベーターにて約48時間培養して、コロニー数を計測する。3検体の平均値をとり(n=3)無処理から2オーダー下がれば、殺菌効果があるとみなす。
【0093】
〔結果〕
無処理に比べ、ナノバブル酸性電解水処理と酸性電解水処理で2オーダー以上が減少しており、有意な差がみられた。特に、ナノバブル酸性電解水は4オーダー以上の減少が見られており、最も優れた結果となった。
【0094】
【表12】
【0095】
〔要旨〕
上記〔表12〕ならびに
図8にそれぞれ示すように、ナノバブル酸性電解水処理が、最も一般菌数が減少していた。これは、野菜自体の特性(一枚葉は柔軟性があり葉厚が薄い。)にナノバブル化した泡が効果的に働いていたことが示唆された。その他一枚葉における再現検証等を引続き行なう必要がある。また、「無処理」とは、ボストンレタスの検体、購入したまま、何も水洗い等の処理していないことをいう。
【0096】
〔考察〕
このように、ボストンレタスにおいては、ナノバブル酸性電解水を2分間流水洗浄する事により、一般菌数が検出不可レベルで殺菌が出来ていた。その他葉野菜においては、サニーレタスやキャベツなどで予備試験を行なっているが、処理後の菌数バラつきが見られており、処理時間を長くすることにより問題はない。
【0097】
また、フリルレタスでは実際の現場において、良好な結果が得られており、葉物野菜でも結球状と1枚葉の物で効果に差があることが示唆された。
【0098】
これは、1枚葉は結球状に比べ、表面に柔軟性があり葉厚が薄い。その事から、表面付着の細菌が多く、流水洗浄により攪拌されることでナノバブル化した泡が深部に到達しやすい結果と考える。
【0099】
前記ナノバブル生成装置(14)は、マイクロナノバブルを含む気・液混合液体を生成するものであり、該生成装置(14)は例えば特許第4563496号に記載された発明を利用して構成すればよいものである。