特許第5676051号(P5676051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5676051微細気泡電解水生成装置および微細気泡電解水の生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676051
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】微細気泡電解水生成装置および微細気泡電解水の生成方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/46 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   C02F1/46 A
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-510996(P2014-510996)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(86)【国際出願番号】JP2013003297
(87)【国際公開番号】WO2013175800
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2014年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-118979(P2012-118979)
(32)【優先日】2012年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-43350(P2013-43350)
(32)【優先日】2013年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100103506
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 弘晋
(72)【発明者】
【氏名】中本 義範
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−209546(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/004274(WO,A1)
【文献】 特開2004−121962(JP,A)
【文献】 特開2010−279900(JP,A)
【文献】 特開2011−217785(JP,A)
【文献】 特開平09−122652(JP,A)
【文献】 特開2007−105728(JP,A)
【文献】 特開2012−096203(JP,A)
【文献】 特開2013−017963(JP,A)
【文献】 特開2013−010758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 − 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極を有するアノード室と、カソード電極を有するカソード室と、これら両室の間に設けられた中間室と、前記アノード室と中間室との間に設けられた隔膜と、前記カソード室と中間室との間に設けられた隔膜とを備えた3室構造からなる電解装置を設け、
該電解装置に隣接して、酸性電解水を貯留するための酸性電解水貯留槽と、アルカリ性電解水を貯留するためのアルカリ性電解水貯留槽とを、それぞれ設け、
これら各電解水貯留槽には、それぞれ、アノード室とカソード室とを配管を介してそれぞれ連通し、
さらに、これら各電解水貯留槽は、気体と液体によりナノバブルを発生させるナノバブル生成装置とに、それぞれ連通し、
前記アノード電極側では、前記アノード電極で発生した塩素ガス及びアノード電解水は、前記アノード室と前記ナノバブル生成装置を連通する前記配管を介して前記ナノバブル生成装置に供給され、当該塩素ガス及びアノード電解水により、前記アノード電解水の中に前記ナノバブル生成装置によって塩素ガスのナノバブルを生成し、酸性電解水貯留槽に供給され、
前記カソード電極側では、前記カソード電極で発生した水素ガス及びカソード電解水は、前記カソード室と前記ナノバブル生成装置を連通する前記配管を介して前記ナノバブル生成装置に供給され、当該水素ガス及びカソード電解水により、前記カソード電解水の中に前記ナノバブル生成装置によって水素ガスのナノバブルを生成し、アルカリ性電解水貯留槽に供給する
ことを特徴とする微細気泡電解水生成装置。
【請求項2】
アノード電極を有するアノード室と、カソード電極を有するカソード室と、前記アノード室と前記カソード室との間に設けられた隔膜とを備えた2室構造からなる電解装置を設け、
該電解装置に隣接して、酸性電解水を貯留するための酸性電解水貯留槽と、アルカリ性電解水を貯留するためのアルカリ性電解水貯留槽とを、それぞれ設け、
これら各電解水貯留槽には、それぞれ、アノード室とカソード室とを配管を介してそれぞれ連通し、
さらに、これら各電解水貯留槽は、気体と液体によりナノバブルを発生させるナノバブル生成装置とに、それぞれ連通し、
前記アノード電極側では、前記アノード電極で発生した塩素ガス及びアノード電解水は、前記アノード室と前記ナノバブル生成装置を連通する前記配管を介して前記ナノバブル生成装置に供給され、当該塩素ガス及びアノード電解水により、前記アノード電解水の中に前記ナノバブル生成装置によって塩素ガスのナノバブルを生成し、酸性電解水貯留槽に供給される。前記カソード電極側では、前記カソード電極で発生した水素ガス及びカソード電解水は、前記カソード室と前記ナノバブル生成装置を連通する前記配管を介して前記ナノバブル生成装置に供給され、当該水素ガス及びカソード電解水により、前記カソード電解水の中に前記ナノバブル生成装置によって水素ガスのナノバブルを生成し、アルカリ性電解水貯留槽に供給することを特徴とする微細気泡電解水生成装置。
【請求項3】
アノード電極とカソード電極を有し、これらの極間に隔膜を設けない1室構造からなる電解装置を設け、
該電解装置に隣接して、電解水を貯留するための電解水貯留槽を設け、
この電解水貯留槽には、該電解装置と配管を介して連通し、
さらに、この電解水貯留槽は、気体と液体によりナノバブルを発生させるナノバブル生成装置とに連通し、
前記アノード電極側では、前記アノード電極で発生した塩素ガス及びアノード電解水は、前記電解装置と前記ナノバブル生成装置を連通する前記配管を介して前記ナノバブル生成装置に供給され、当該塩素ガス及びアノード電解水により、前記アノード電解水の中に前記ナノバブル生成装置によって塩素ガスのナノバブルを生成し、前記電解水貯留槽に供給される
ことを特徴とする微細気泡電解水生成装置。
【請求項4】
前記アノード電解水の中にナノバブルを生成した微細気泡酸性電解水を、殺菌処理に使用することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の微細気泡電解水生成装置。
【請求項5】
前記カソード電解水の中にナノバブルを生成した微細気泡アルカリ性電解水を、洗浄処理に使用することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の微細気泡電解水生成装置。
【請求項6】
電解装置のアノード室とカソード室と、2つのアルカリ性・酸性電解水貯留槽と、これら2つのナノバブル生成装置を接続して、アノード室で発生した塩素ガス、および酸性電解水により前記ナノバブル生成装置によって塩素ナノバブル電解水を生成し、カソード室で発生した水素ガス、およびアルカリ性電解水により前記ナノバブル生成装置によって水素ナノバブル電解水を生成することを特徴とする微細気泡電解水生成方法。
【請求項7】
前記電解装置は、アノード電極を有するアノード室とカソード電極を有するカソード室と、これら両室との間に設けられた隔膜を備えた2室構造からなる電解装置である
ことを特徴とする請求項6に記載の微細気泡電解水生成方法。
【請求項8】
前記電解装置は、アノード電極とカソード電極を有し、これらの極間に隔膜を設けない1室構造からなる電解装置である
ことを特徴とする請求項6に記載の微細気泡電解水生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微細気泡電解水生成装置および微細気泡電解水の生成方法に関するものであり、特に、電気分解により生ずる電解水およびガスを用い、洗浄分野全般、特に工業用部品の洗浄及び業務用清掃に用いて最適なアルカリ性電解ナノバブル水と、業務用清掃に用いて好適な酸性電解ナノバブル水を得る微細気泡電解水生成装置および微細気泡電解水の生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食塩水を電気分解(電解)すると、アノード極側(アノード室)では、下記の反応(1)が起こり、カソード極側(カソード室)では、下記の反応(2),(3)(4)が起こる。
【0003】
(1) 2Cl- −2e- →Cl2
(2) 2Na+ +2e- →2Na
(3) 2Na+2H2 O→2Na+ +H2 +2OH-
(4) 2H2 O+2e- →H2 +2OH-
【0004】
従って、カソード室では、アルカリ性で、かつ、還元性のカソード電解水が得られる。
【0005】
しかし、このカソード電解水と共に水素ガスが発生するものの、溶解性の低い水素ガスはカソード電解水には溶解せずに、気中に発散されていた。また、アノード室では、酸性のアノード電解水と塩素ガスが得られる。
【0006】
アノード電解水とともに発生した塩素ガスを有効に利用する技術として特許文献1が知られている。
【0007】
特許文献1は、苛性ソーダと食塩の混合した電解質水溶液を電気分解し、得られた電解液を、洗濯・洗浄用の用水とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−251353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の方法は、得られた電解水に含まれる塩素ガスが揮発しやすく保存安定性に劣るため、洗濯・洗浄用の用水として使用した場合、満足のゆく洗浄効率が得られなかった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、満足のゆく洗浄効率が得られる電解水を提供することにある。
【0011】
本発明者が鋭意研究を重ねた結果、塩化ナトリウム水溶液の電気分解で発生するガスをナノバブル化すれば上記課題が解決できること見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、この発明は、アノード電極を有するアノード室と、カソード電極を有するカソード室と、アノード室とカソード室との間に設けられた隔膜とを備えた2室構造からなる電解装置または、アノード電極を有するアノード室と、カソード電極を有するカソード室と、これら両室の間に設けられた中間室と、前記アノード室と中間室との間に設けられた隔膜と、前記カソード室と中間室との間に設けられた隔膜とを備えた3室構造からなる電解装置を設け、該電解装置に隣接して、酸性電解水を貯留するための酸性電解水貯留槽と、アルカリ性電解水を貯留するためのアルカリ性電解水貯留槽とを、それぞれ設け、これら各電解水貯留槽には、それぞれ、アノード室とカソード室とを配管を介してそれぞれ連通し、さらに、これら各電解水貯留槽は、気体と液体によりナノバブルを発生させるナノバブル生成装置とに、それぞれ連通し、これらナノバブル生成装置で、前記アノード室で発生した塩素ガス、および酸性電解水により、塩素ナノバブル電解水を生成し、前記カソード室で発生した水素ガス、およびアルカリ性電解水により、水素ナノバブル電解水を生成することを特徴とする微細気泡電解水生成装置および微細気泡電解水の生成方法に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、カソード極で生成されるカソード電解水、および余剰に発生する水素ガスを、本装置内のナノバブル生成装置に供給することにより、カソード電解水中に水素ナノバブルを発生させ、これによりカソード電解水の酸化還元電位(ORP)を高めることができる。
【0014】
また、アノード極で生成するアノード電解水、および余剰に発生する塩素ガスを、本装置内のナノバブル生成装置に供給することにより、アノード電解水中に塩素ナノバブルを発生させ、これによりアノード電解水の塩素濃度を高めることが実現できる等の極めて有益なる効果を奏する。
【0015】
さらに、アノード電解水中に塩素ナノバブルを発生させ、これにより得られたアノード電解水にナノバブルを生成することにより、殺菌効果に優れた微細気泡電解水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明に使用する電解装置の一実施形態を示す説明図である。
図2】この発明に使用する微細気泡電解水生成装置の使用状態を示す説明図である。
図3】この発明に使用する微細気泡電解水生成装置のフロー図である。
図4】この発明で得られた微細気泡電解水を用いた洗浄効果を示すグラフ図である。
図5】この発明で得られた微細気泡電解水を用いた洗浄効果を示すグラフ図である。
図6】この発明で得られた微細気泡電解水を用いた洗浄効果を示すグラフ図である。
図7】この発明で得られた微細気泡電解水を用いた洗浄効果を示すグラフ図である。
図8】この発明で得られた微細気泡電解水を用いた洗浄効果を示すグラフ図である。
図9】この発明で得られた微細気泡電解水を用いた洗浄効果を示し、(a)は、検体であるボストンレタスを示し、(b)は、検体を無処理の100倍希釈の場合の細菌数を示し、(c)は、検体を水道水100倍希釈の場合の細菌数を示し、(d)は、検体を酸性電解水10倍の場合の細菌数を示し、(e)は、検体をNB(ナノバブル)酸性電解水10倍希釈の場合の細菌数を示すそれぞれ図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においては適宜変更可能である。
【0018】
この発明の微細気泡電解水生成装置の一実施形態を、図1図2図3に基づいて詳述すると、先ず、該装置の一部を構成する電解装置(X)は、アノード電極(6)を有するアノード室(1)と、カソード電極(7)を有するカソード室(2)と、前記アノード室(1)とカソード室(2)の間に設けられた中間室(3)とを有し、前記アノード室(1)と中間室(3)との間に設けられた隔膜(4)と、前記カソード室(2)と中間室(3)との間に設けられた隔膜(5)とを備えた3室構造から構成されている。
【0019】
そして、この発明は、前記電解装置(X)には、該装置のアノード室(1)とカソード室(2)のそれぞれ近傍に設けた、酸性電解水を貯留するための酸性電解水貯留槽(10)と、アルカリ性電解水を貯留するためのカソード電解水貯留槽(11)、さらに、アノード室(1)側とカソード室(2)側に、それぞれナノバブル生成装置(14)(14)を設け、その他、これらの室(1)(2)、貯留槽(10)(11)、ナノバブル生成装置(14)(14)を、それぞれ連通する配管類(8)、(9)、(12)、(13)、(15)、(16)と、貯留槽(10)(11)から放出する配管類(17)、(18)から構成されるものである。また、塩水タンクを2つ設け、アノード室(1)、カソード室(2)、中間室(3)へ供給される。
【0020】
即ち,前記電解装置(X)のアノード室(1)で生成される酸性電解水は、酸性電解水接続配管(8)を介して酸性電解水貯留槽(10)と連通している。
【0021】
また、酸性電解水貯留槽(10)は、ナノバブル生成装置(14)に酸性電解水導水管(12)を介して連通している。
【0022】
さらに、ナノバブル生成装置(14)は、酸性ナノバブル電解水配管(15)を介して、酸性電解水貯留槽(10)と連通している。
【0023】
そして、酸性電解水貯留槽(10)は、酸性ナノバブル電解水放出管(17)により放出されるよう構成されている。
【0024】
また,前記電解装置(X)のカソード室(2)で生成されるアルカリ性電解水は、アルカリ性電解水接続配管(9)を介してアルカリ性電解水貯留槽(11)と連通している。
【0025】
また、アルカリ性電解水貯留槽(11)は、ナノバブル生成装置(14′)にアルカリ性電解水導水管(13)を介して連通している。
【0026】
さらに、ナノバブル生成装置(14′)は、アルカリ性ナノバブル電解水配管(16)を介して、アルカリ性電解水貯留槽(11)と連通している。
【0027】
そして、アルカリ性電解水貯留槽(11)は、アルカリ性ナノバブル電解水放出管(18)により放出されるよう構成している。
【0028】
また、この発明によると、アノード電極で塩素ガスを生成し、その塩素ガスをナノバブル化し、酸性電解水貯水槽に供給するものである。さらに、この発明によると、カソード電極で水素ガスを生成し、その水素ガスをナノバブル化し、アルカリ性電解水貯水槽に供給するものである。
【0029】
以上のように、微細気泡電解水生成装置に用いる電解装置は、アノード室、中間室及びカソード室からなる3室構造の電解装置で説明したが、この、電解装置は、アノード電極を有するアノード室とカソード電極を有するカソード室と、これら両室の間に設けられた隔膜を備えた2室構造からなる電解装置であってもよく、あるいは、アノード電極とカソード電極を有し、これらの極間に隔膜を設けない1室構造からなる電解装置であってもよいものである。
【0030】
3室型電解槽は生成される電解水に、分解前の電解質(たとえば塩など)をほとんど含まないため、使用環境への影響少なく、2室型電解槽よりも好ましい。
【0031】
次にこの発明の微細気泡電解水の生成方法の一実施形態を、図1図2に基づいて説明する。
【0032】
まず、塩化ナトリウム水溶液を電気分解する。電解装置のアノード電極から発生する塩素ガスおよび酸性電解水をナノバブル生成装置で処理して塩素ナノバブル電解水を調製する。電解装置のカソード電極から発生する水素ガスおよびアルカリ性電解水はナノバブル生成装置で処理して水素ナノバブル電解水を調製する。
【0033】
本発明の微細気泡電解水の原料となる塩化ナトリウム水溶液は、2室型電解槽を使用した場合、0.05〜0.2Wt%の濃度範囲が好ましい。0.05Wt%未満では、著しく電解効率が低下し、0.2Wt%を超えると未分解の電解質が電解水中に残留する点で、好ましくない。
【0034】
3室型電解槽については、中間室の塩化ナトリウム水溶液が陰極水、陽極水それぞれと隔膜で分離されており、塩化ナトリウムの両極への移動はない。したがって、塩化ナトリウム水溶液の濃度については飽和塩水を循環させるなどして用いることができ、0.数パーセント単位の細かい濃度管理を行う必要は無い。
【0035】
本発明の微細気泡電解水は、従来の電解水や殺菌剤ではむずかしかった、残留菌数の減少や、洗浄効果をえることができ、たとえば、カット野菜などの食品加工工場や、クリーニング業などの洗浄・殺菌水として用いることができる。
【実施例】
【0036】
次に、この微細気泡電解水生成装置並びにこの微細気泡電解水生成方法により生成された微細気泡電解水(以下、ナノ電解水という)を用いた洗浄力の効果を検証する。
【0037】
実施例1
〔試験内容〕
飽和食塩水を、3室構造からなる電解槽を用いて、酸性、アルカリ性電解水とも毎分4リットル生成の条件で電気分解し、以下の試料を調製した。
【0038】
・ナノ電解水1:電解水を生成する際に発生するガス(水素、塩素)をナノバブル化し、電解水に添加したものの総称(アルカリ性電解水+水素ナノバブル、酸性電解水+塩素ナノバブル)
・ナノ電解水2:大気をナノバブル化し、電解水に添加したものの総称(アルカリ性電解水+大気ナノバブル、酸性電解水+大気ナノバブル)
・ナノアルカリ性電解水1:アルカリ性電解水を生成する際に発生する水素ガスをナノバブル化し、アルカリ性電解水に添加したもの
・ナノアルカリ性電解水2:大気をナノバブル化し、アルカリ性電解水に添加したもの
・ナノ酸性電解水1:酸性電解水を生成する際に発生する塩素ガスをナノバブル化し、酸性電解水に添加したもの
・ナノ酸性電解水2:大気をナノバブル化し、酸性電解水に添加したもの
・電解水:3室型電解槽の中間室に飽和塩水を循環し、電気分解することで陽極および陰極室から得られる水の総称
【0039】
ナノ電解水を用いて人工汚染布(EMPA社製)の洗濯を行い、洗浄効率を算出した。
【0040】
比較対象物として、水道水、洗剤および電解水を用いて同様の試験を行った。
その結果は、図3図6のグラフ図に示した。
【0041】
即ち,ナノ電解水1(尚、各表および図面では、丸付き数字1で表す)は、アルカリ性電解水を生成する際に発生する水素ガスを再度アルカリ性電解水に戻す(0.2L/minを15分間)方法で調整したものであり、洗濯後、使用したアルカリ性電解水を取り除き、新たに酸性電解水(発生する塩素ガス(0.2L/min)を15分間戻す)を用いて洗濯を行った。
【0042】
その後、水道水で濯ぎを行った。また、ナノ電解水2(尚、各表および図面では、丸付き数字2で表す)は、それぞれの電解水で発生するガスの代わりに空気(0.2L/min,15分間)を吹き込む方法で調整したアルカリ性電解水、酸性電解水の順で洗濯を行い、最後に水道水で濯ぐ方法で洗濯を行った。
【0043】
〔試験方法〕
タオル(横64cm×縦27cm)に15cm角の人工汚染布(未汚染布、カーボンブラック/鉱物油、血液、ココア、赤ワインの5種)をそれそれ縫い付け、下記の工程に従って洗濯を行った。
【0044】
なお、槽内の洗濯物どうしの擦れを再現するために、バスタオル(横128cm×縦60cm)9枚と一緒に洗濯を行った。
【0045】
A 水道水・洗剤洗濯工程順(1.→4.)
(使用洗剤) 洗濯用合成洗剤 アタックバイオEX(花王株式会社製)
1.洗浄(水温8°C)/15分間
〔条件〕 水位:低 洗剤洗濯時,洗剤60g添加
仮脱水/1分間
2.すすぎ(水温8°C)/10分間
〔条件〕 水位:低
仮脱水/1分間
3.すすぎ2(水温8°C)/15分間
〔条件〕 水位:低
4.脱水 / 15分間
【0046】
B 電解水洗濯工程(白物設定)順(1.→4.)
1.アルカリ性電解水洗浄(水温7°C)/15分間
〔条件〕 水位:低 pH:10.80 ORP:−192 塩素濃度:19
ppm
仮脱水/1分間
2.酸性電解水洗浄(水温7°C)/10分間
〔条件〕 水位:低 pH:4.05 塩素濃度:19ppm
仮脱水/1分間
3.すすぎ2(水温6°C)/3分間
〔条件〕 水位:低
4.脱水 / 5分間
【0047】
C ナノ電解水洗濯工程〔(1),(2)共通 順(1.→4.)
1.ナノアルカリ性電解水洗浄(水温7°C)/15分間
〔条件〕 水位:低 pH(1):12.17 ORP(1):−596
pH(2):11.78 ORP(2):−202
仮脱水/1分間
2.ナノ酸性電解水洗浄(水温6°C)/10分間
〔条件〕 水位:低 pH(1):4.41 塩素濃度(1):18ppm
pH(2):4.40 塩素濃度(2):18ppm
仮脱水/1分間
3.すすぎ (水温7°C)/3分間
〔条件〕 水位:低
4.脱水 / 5分間
【0048】
〔使用機器〕
・分光測色計 CM−600d(コニカミノルタ センシング株式会社製)
・ボータブル電気伝導率・pH計 WM−32EP(東亜ディーケーケー社製)
・ORP複合電極 PST−2739C(東亜ディーケーケー社製)
・塩素濃度計 RC−2Z(笠原理化学工業株式会社製)
・業務用洗濯機22kgタイプ WN220(山本製作所製)
【0049】
〔試験結果〕
試験時のナノ電解水のpH,ORPおよび塩素濃度を表1および2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
尚、表1は、ナノアルカリ性電解水生成時の各種値一覧である。
【0052】
【表2】
【0053】
尚、表2は、ナノ酸性電解水生成時の各種値一覧である。
【0054】
尚、表2は、ナノ酸性電解水工程の際は、電解水洗濯時と塩素濃度を一致させるため、水道水で希釈を行ったものを使用した。
【0055】
洗濯後、分光測色計を用いて520nmでの反射率(R)の測定を行い、下記の計算式よりK/S値および洗浄効率(%)を算出した。
【0056】
〔計算式〕
1.計算式は、 K/S値=〔1−反射率(R)〕2 ÷2÷反射率(R)
2.洗浄効率(%)
〔(洗浄布のK/S)−(洗濯後の汚染布のK/S)〕÷〔(汚染布のK/S)−(未汚染布のK/S)〕×100
【0057】
【表3】
【0058】
尚、表3は、未汚染布であり、反射率(R)は、汚染布1枚につき、表裏計10回の測定を行った平均である。
【0059】
【表4】
【0060】
尚、表4は、カーボンブラック/鉱物油(洗濯前)である。
【0061】
【表5】
【0062】
尚、表5は、カーボンブラック/鉱物油(洗濯後)である。
【0063】
【表6】
【0064】
尚、表6は、血液(洗濯前)であり、反射率(R)は、汚染布1枚につき、表裏計10回の測定を行った平均である。
【0065】
【表7】
【0066】
尚、表7は、血液(洗濯後)である。
【0067】
【表8】
【0068】
尚、表8は、ココア(洗濯前)である。
【0069】
【表9】
【0070】
尚、表9は、ココア(洗濯後)である。
【0071】
【表10】
【0072】
尚、表10は、赤ワイン(洗濯前)である。
【0073】
【表11】
【0074】
尚、表11は、赤ワイン(洗濯後)である。
【0075】
人工汚染布として鉱物油中に分散しているカーボンブラックが付着している布に対しては、一般洗剤の洗浄力と大きな相違は認められなかった。その理由として、洗濯段階で鉱物油が洗剤中の界面活性剤との反応により乳化されて布から取り除かれる際に、泡となりその中にカーボンブラックが粒子となって取り込まれる。
【0076】
しかし、ナノ電解水には界面活性剤としての効果は働かないことから、遊離したカーボンブラックは編み込まれている繊維の間に油の一部とともに取り込まれて、洗浄効果が多少低下したせいと考えられる。
【0077】
次に、血液が付着した布では、血液中のタンパク質にある赤血球が残る布全体が変色することが考えられる。そこでナノ電解水1およびナノ電解水2の方法で調製したナノ電解水で洗濯することにより、繊維の間に入り込んだ血液はナノ効果により繊維の間から取り除かれることが考えられ、期待通りの洗浄効果がえられた。
【0078】
さらに、ココアは、嗜好品の一つとして、健康面からもカカオポリフェノールなどが含まれており、抗酸化物質と呼ばれる活性酸素の攻撃から身を守るために働く機能を持っている。
【0079】
また、ココアには脂質が含まれていることから、繊維にしっかり付着することが考えられ、水道水や洗剤などでは編み込まれている繊維間に入り込んだ脂質などは効率よく取り除くことは難しい。
【0080】
そこで、ナノ化した電解水中でも(1)の方法で調製したナノ電解水での洗濯は、繊維間に入り込んだ脂質を効率よく取り除くことが可能であることが明らかになった。
【0081】
最後に、フラボノイド、アントシアニン、カテキンおよびタンニンなど多くのポリフェノール類を含む赤ワインが付着した布の洗濯では、通常、酸素系漂白剤で赤ワインのシミ抜きをするが、すべての織物に使うことはできない。
【0082】
10〜15%程度のアルコールを含んでおり、布の繊維間に浸み込んだアルコールに溶け込んでいるポリフェノール類を取り除くには、電解水の酸化還元電位(Oxidation Reduction Potential =ORP,単位mV)を考慮しなければならない。
【0083】
すなわち,プラスの値が大きいほど酸化力(老化)が大きく、マイナスの値が大きいほど還元力(老化防止)が強く、その働きは強まる。
【0084】
そこで、ORPの数値からアルカリ電解水のORP値が−192を示した電解水による洗濯に高い洗浄力効果を発揮したものと考察した。このことは、アルカリ性電解水をバブリングによるナノ発泡化を行うとORP値が上昇し還元力が強くなり、洗浄効果低下に影響を及ぼしたためと考えられる。
【0085】
また、本試験では二通りのナノ電解水を用いて検証を行なったが、電解水(2)では空気を吸引処理したナノ電解水であり、原水と比べてORP値(−596→−202mV)がブラス側に移行した結果、その洗浄力とナノ電解水1よりもナノ電解水2の方が僅かながら洗浄力が向上した結果が得られた。
【0086】
以上の結果から、どのような食材で布を汚染したかを考慮した上で調製した2種類のナノ電解水を使い分けることにより、従来の洗剤を使用する洗濯よりも効率良く洗浄性の効果が確認できた。
【0087】
次に、この微細気泡電解水生成装置並びにこの微細気泡電解水生成方法により生成されたナノ電解水を用い、殺菌力の効果を検証する。
【0088】
〔試験内容〕
ナノ電解水を用い、ボストンレタス(市販)から無作為に葉3枚を抽出し、1枚を4分割して、それぞれを検体とする。検体量は、約8g程度とし、検体を軽く水洗いした後、約50リットル程度試験水を水張りしたシンクからバスポンプ〔BP−101K(株式会社工進社製)〕で吸い上げ、2分間流水洗浄する。洗浄後、検体を軽く水洗いをする。
【0089】
検体は、滅菌バッグにいれ、10倍希釈液を加えて、1分間ホモジナイズする。出来上がった検体液1ミリリットルを簡易培地〔ペトリフィルム・一般生菌用プレート(住友スリーエム株式会社製)〕にて分注する。
【0090】
また、混釈法に従い、段階希釈を行なう。インキュベーターにて35℃、48時間の環境で培養する。培地に現れたコロニーを計測し、3枚当たりの平均値を1gまたは1ミリリットルあたりの菌数とする。
【0091】
試験水は、
1) 水道水
2) 酸性電解水 pH3.01 遊離残留塩素濃度 40ppm
3) ナノバブル酸性電解水 pH3.05 遊離残留塩素濃度 40ppm
を使用した。尚、生成条件は、本願出願人の製造・販売に係る,電解水生成装置(守る水:登録商標)(製品番号ESS−ZERO)と、同じく微細気泡発生装置(ナノアクア:登録商標)(製品番号MN−20)を手動接続させ、15分間連続稼働する。酸性電解水流量は、毎分約3リットル生成させた。
【0092】
〔一般生菌数〕
レタス洗浄前後の菌数を計測した。培地は、一般生菌用ペトリフィルムを使用した。インキュベーターにて約48時間培養して、コロニー数を計測する。3検体の平均値をとり(n=3)無処理から2オーダー下がれば、殺菌効果があるとみなす。
【0093】
〔結果〕
無処理に比べ、ナノバブル酸性電解水処理と酸性電解水処理で2オーダー以上が減少しており、有意な差がみられた。特に、ナノバブル酸性電解水は4オーダー以上の減少が見られており、最も優れた結果となった。
【0094】
【表12】
【0095】
〔要旨〕
上記〔表12〕ならびに図8にそれぞれ示すように、ナノバブル酸性電解水処理が、最も一般菌数が減少していた。これは、野菜自体の特性(一枚葉は柔軟性があり葉厚が薄い。)にナノバブル化した泡が効果的に働いていたことが示唆された。その他一枚葉における再現検証等を引続き行なう必要がある。また、「無処理」とは、ボストンレタスの検体、購入したまま、何も水洗い等の処理していないことをいう。
【0096】
〔考察〕
このように、ボストンレタスにおいては、ナノバブル酸性電解水を2分間流水洗浄する事により、一般菌数が検出不可レベルで殺菌が出来ていた。その他葉野菜においては、サニーレタスやキャベツなどで予備試験を行なっているが、処理後の菌数バラつきが見られており、処理時間を長くすることにより問題はない。
【0097】
また、フリルレタスでは実際の現場において、良好な結果が得られており、葉物野菜でも結球状と1枚葉の物で効果に差があることが示唆された。
【0098】
これは、1枚葉は結球状に比べ、表面に柔軟性があり葉厚が薄い。その事から、表面付着の細菌が多く、流水洗浄により攪拌されることでナノバブル化した泡が深部に到達しやすい結果と考える。
【0099】
前記ナノバブル生成装置(14)は、マイクロナノバブルを含む気・液混合液体を生成するものであり、該生成装置(14)は例えば特許第4563496号に記載された発明を利用して構成すればよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0100】
この発明によると、微細気泡電解水生成装置および方法の技術を確立し、その確立された技術に基づいて、製造・販売することにより、産業上の利用可能性があるものである。
【符号の説明】
【0101】
1 アノード室
2 カソード室
3 中間室
4,5 隔膜
6 アノード電極
7 カソード電極
8 酸性電解水配管
9 アルカリ性電解水配管
10 酸性電解水貯水槽
11 アルカリ性電解水貯水槽
12 酸性電解水導水管
13 アルカリ性電解水導水管
14 ナノバブル生成装置
15 酸性ナノバブル電解水配管
16 アルカリ性ナノバブル電解水配管
17 酸性ナノバブル電解水放出管
18 アルカリ性ナノバブル電解水放出管
X 電解装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9