(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブレイドガイドは、前記可撓ブレイドが通されるガイド孔を有し、前記ガイド孔は、前記可撓ブレイドの他端側に前記回転シャフトの径方向の外側に広げられた部分を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の搾汁機用本体。
前記可撓ブレイドは、可撓性を有する金属材料、プラスチック材料及び炭素材料、並びにこれらの複合材料から選ばれた材料で構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の搾汁機用本体。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面にのみ限定されるものではない。また、上述した本発明の構成要素に、本明細書に記載された技術事項から任意に選択した1つ又は2つ以上の構成要素を付加することができる。本明細書で説明する内容は、本発明に係る搾汁機用本体、搾汁機、及び搾汁機用可撓ブレイドに適用される。また、それらを用いた搾汁の方法にも適用される。
【0029】
[搾汁機用本体の基本構成及び基本原理]
本発明に係る搾汁機用本体2は、
図1及び
図2に示すように、回転シャフト21と、長手方向が回転シャフト21の軸方向に一致し、回転シャフト21の周囲に配置された可撓ブレイド23と、可撓ブレイド23の長手方向の中間位置に設けられたブレイドガイド25と、を備えている。可撓ブレイド23の長手方向の一端23aは、回転シャフト21の軸方向にスライド可能に構成されている。これに対し、可撓ブレイドの長手方向の他端23bは、ブレイドガイド25から可撓ブレイド23の他端23b側に延びる軸部材252(
図3から
図5を参照)又は回転シャフト21に連結されている。
【0030】
可撓ブレイド23は、可撓ブレイド23の一端23aのスライドに伴って、可撓ブレイド23の他端23bとブレイドガイド25との間で、
図1に示す、直線状に延びた形態(縮径形態)と、
図2に示す、湾曲して外側に広がる形態(拡径形態)との間で形態が変化する。
【0031】
なお、
図1及び
図2は、搾汁機用本体2が2本の可撓ブレイド23を有する形態を例に示している。しかし、搾汁機用本体2は、1本の可撓ブレイド23で構成したり、3本以上の可撓ブレイド23で構成したりすることができる。また、
図1及び
図2において、部材20が、ブレイドガイド25から可撓ブレイド23の他端23bに向けて延びている。この部材20は、回転シャフト21で構成したり、ブレイドガイド25から可撓ブレイドの他端側に延びる軸部材(
図3から
図5の符号252の部材)で構成したりすることができる。
【0032】
この搾汁機用本体2は、搾汁する対象物である果実等の素材M(以下、単に「素材M」ともいう。)を搾汁するためのものである。搾汁機用本体2は、
図1に示すように、可撓ブレイド23が直線状に延びた形態で、搾汁機用本体2の先端(
図1に示した搾汁機用本体2の下端)とブレイドガイド25との間の部分が素材Mの芯の位置に挿入される。その後、
図2に示すように、可撓ブレイド23の一端23aは、ブレイドガイド25側に向けてスライドする。可撓ブレイド23の一端23aがスライドすることによって、可撓ブレイド23は、ブレイドガイド25と他端23b(搾汁機用本体2の先端)との間の領域で、湾曲し、外側に広がった形態になる。
【0033】
また、搾汁機用本体2は、可撓ブレイド23が広がった形態で、
図2に示すように回転され、素材Mの外皮をそのまま残し、外皮の内部で搾汁する。その後、可撓ブレイド23の一端23aが、ブレイドガイド25から離れる方向にスライドする。その結果、可撓ブレイド23は、
図1に示すように、ブレイドガイド25と他端23bとの間で、直線状に延びた形態に復元する。
【0034】
可撓ブレイド23が、上記のように形態の変化を行うことで、可撓ブレイド23は、外皮の内部で、素材Mの芯の位置から外皮の直近の位置まで移動する。そのため、搾汁機用本体2は、素材Mの外皮を残存させたまま、外皮の内部で確実かつ効率的に搾汁を行う。その結果、素材Mを搾汁するときや搾汁された果汁等を飲むときに、人に楽しさを与えることができ、且つ、実用的な構造を有する搾汁機用本体2を提供することができるという特有の効果を奏する。
【0035】
なお、本明細書において、素材から得られる搾汁は、液体の他に、シャーベット状の半流動体(半固体)又は、粒状の固体を含む。
【0036】
[搾汁機用本体の具体的な構成]
以上の基本構成を有する搾汁機用本体2の具体的な構成を
図3から
図12を参照して説明する。搾汁機用本体2は、回転シャフト21、回転シャフト21の周囲の領域に配置された可撓ブレイド23、可撓ブレイドの長手方向の中間部分に配置されたブレイドガイド25、可撓ブレイド23の一端23a(
図3から
図5に示した可撓ブレイド23の上側の端部)を回転シャフト23の軸方向にスライドさせるブレイドスライダ22、及び可撓ブレイド23の他端23bを軸部材252又は回転シャフト21に連結するための連結機構24を有している。
【0037】
(回転シャフト)
この回転シャフト21において、横断面の形状は六角形に形成されている。回転シャフト21の上部は、搾汁機Sが備えるシャフトホルダ33(
図15参照)によって保持される。回転シャフト21の上部は、外径が細い細径部212と、細径部212よりも上側の頭部211とで構成されている。なお、回転シャフト21の横断面の形状は、六角形であることには限定されず、正方形等の六角形以外の多角形に形成してもよい。また、回転シャフト21の横断面は、円形であってもよい。
【0038】
(可撓ブレイド)
可撓ブレイド23は、
図3から
図5に示す例では、3本用いられている。3本の可撓ブレイド23は、周方向に間隔を均等に空けて回転シャフト21の周囲に配置されている。なお、可撓ブレイド23は、3本用いることには限定されず、1本、2本、又は4本以上用いることもできる。
【0039】
各可撓ブレイド23は、
図6(A)に示すように、帯状に形成されている。各可撓ブレイド23の幅H1は、長手方向の全域で一定である。可撓ブレイド23の長手方向の一端23aは、ブレイドスライダ22に保持される。また、長手方向の他端23bは連結機構24に連結される。可撓ブレイド23の一方の側縁は、素材Mの内部で搾汁を行いやすくするために鋸歯が形成されている。鋸歯の谷の部分は、円弧状をなしている。この鋸歯は、搾汁機用本体2が回転したときに回転方向の前部側をなす側縁に形成されている。
【0040】
可撓ブレイド231は、
図6(B)に示すように構成することもできる。この可撓ブレイド231は、帯状をなしている。また、可撓ブレイド231の幅H1は、長手方向の全域で一定である。可撓ブレイド231において、一方の側縁に形成された鋸歯の谷の部分は、直線状をなしている。
【0041】
可撓ブレイド23は、可撓性を有する材料であれは材料に限定はない。例えば、金属材料、プラスチック材料、及び炭素材料、並びにこれらの複合材料から選ばれた材料で構成することができる。なお、繰り返しの応力が可撓ブレイドには発生する。そのため、可撓ブレイド23は、耐久性を有する材料であることが好ましい。
【0042】
この搾汁用本体2においては、後述する連結機構24が、可撓ブレイド23の他端23b側を一端23aよりも大きく湾曲する。そして、曲げ応力は、可撓ブレイド23が大きく湾曲するにしたがって大きくなる。そのため、曲げ応力は、可撓ブレイド23の一端23b側よりも他端23b側に大きい。可撓ブレイドに発生する曲げ応力を低くするために、可撓ブレイドは、例えば、
図6(C)に示す形状に形成することもできる。
図6(C)に示す可撓ブレイド232の幅は、長手方向の中央よりも他端232b側の領域で、他端232b側に向かうしたがって徐々に広くなっている。そのため、可撓ブレイド232では、曲げ応力は、長手方向の中央よりも他端232b側の領域で低くなる。また、この可撓ブレイド23において、幅が広がる部分で、可撓ブレイド232が湾曲する程度を小さくすることができる。そのため、可撓ブレイド232は、円弧状に相対的に近い形状に湾曲する。この可撓ブレイド232は、その結果、外皮の内部で効率的に搾汁する。
【0043】
(ブレイドガイド)
ブレイドガイド25は、可撓ブレイド23の湾曲する領域を設定している。このブレイドガイド25は、円筒をなしている。ブレイドガイド25は、可撓ブレイド23の長手方向の中間部分に設けられている。
図3から
図5に示す例では、ブレイドガイド25は、回転シャフト21の下端に取り付けられている。また、ブレイドガイド25は、その下面から可撓ブレイド23の他端23b側(
図3から
図5の下方)に向けて延びる軸部材252を備えている。ブレイドガイド25と軸部材252とは、1つの部材として構成されている。軸部材252の中心軸と回転シャフト21の中心軸とは、同一直線上に設けられ一直線をなしている。
【0044】
ブレイドガイド25は、
図7に示すように、3つのガイド孔251aを備えている。これらのガイド孔251aは、可撓ブレイド23を通すための孔である。3つのガイド孔251aは、ブレイドガイド25に取り付けられた回転シャフト21の周囲に設けられている。3つのガイド孔251aは、
図7(A)に示すように、周方向に均等に間隔を空けて配置されている。各ガイド孔251aは、ブレイドガイド25をその高さ方向に貫いている。なお、ガイド孔251aの数は、用いられる可撓ブレイド23の数に一致している。
【0045】
また、ガイド孔251aは、
図7(B)に示すように、可撓ブレイド23の他端23b側に回転シャフト21の径方向の外側に広がる部分251bを備えている。外側に広がる部分251bは、曲面で構成されている。外側に広がる部分251bをなす曲面は、ガイド孔251aの外側の壁面が可撓ブレイド23の他端23b側に向けて徐々に広げられている。この外側に広がる部分251bは、可撓ブレイド23を外側に向けて円滑に広げさせている。なお、外側に広がる部分251bは、ガイド孔251aの外側の壁面を曲面で形成することには限定されない。外側に広がる部分251bは、ガイド孔251aの外側の壁面を外側に向けて直線状に傾斜させ、可撓ブレイド23の他端23b側にテーパーを形成して設けることもできる。
【0046】
なお、外側に広がる部分251bと、直線的に延びる可撓ブレイド23の一端23a側の部分とは、これらの境界の部分で、R面(曲面)でつなげるとよい。外側に広がる部分251bと、直線的に延びる可撓ブレイド23の一端23a側の部分とをR面でつなげた場合、可撓ブレイド23が、湾曲して外側に広がった形態から直線状に延びた形態に復元するときに、可撓ブレイド23は、ガイド孔251aの内部で境界の部分に引っかかることなく円滑に直線状に延びた形態に復元する。
【0047】
このブレイドガイド25と可撓ブレイド23の一端23aとの間の長さL1は、
図8に示すように、素材Mの大きさに応じて設定されている。可撓ブレイド23がブレイドガイド25と他端23bとの間の領域で湾曲して外側に広がる程度は、可撓ブレイド23の一端23aがスライドする長さに比例している。すなわち、可撓ブレイド23の一端23aがスライドする長さが長い場合、可撓ブレイド23が湾曲して外側に広がる程度は大きい。一方、可撓ブレイド23の一端23aがスライドする長さが短い場合、可撓ブレイド23が湾曲して外側に広がる程度は小さい。この原理を利用して、直径が相対的に大きな素材Mを搾汁する場合、可撓ブレイド23の一端23aとブレイドガイド25との間の長さL1は相対的に長く設定される。一方、直径が相対的に小さな素材Mを搾汁する場合、可撓ブレイド23の一端23aとブレイドガイド25との間の長さL1は相対的に短く設定される。
【0048】
ブレイドガイドは、
図9に示すブレイドガイド25Aのように、円筒状の部材を回転シャフト21の軸方向の中間部分に固定して設けることもできる。この
図9に示すように、円筒状の部材を回転シャフト21の軸方向の中間部分に固定してブレイドガイド25Aを構成した場合、以下に説明する連結機構24は、回転シャフト21の先端に直接固定して設けられる。
【0049】
(連結機構)
連結機構24は、可撓ブレイド23の他端23bを軸部材252に連結している。この連結機構24は、可撓ブレイド23の他端23b側を回転シャフト21の軸方向に平行をなす閉じた形態と回転シャフト21の径方向の外側に開いた形態とのそれぞれの形態に誘導する。
【0050】
図3から
図5は、連結機構24の1つの例を示している。連結機構24は、軸部材252の先端に取り付けられている。この連結機構24は、可撓ブレイド23の他端23bを連結させている。連結機構24は、軸部材252の先端から放射状に突出した3つの凸部241aを有するコア241と、可撓ブレイド23の他端23bを保持する3つの可動片242と、各可動片242を各コア241に対して回転可能に支持する支持ピン243とで構成されている。なお、凸部241aの数及び可動片242の数は、可撓ブレイド23の数に応じて設けられる。
【0051】
コア241は、ブレイドガイド25の軸部材252の先端に固定されている。コア241を構成する3つの凸部241aは、ブレイドガイド25の周方向に均等に間隔をあけて配置されている。そして、各凸部241aは、径方向の外側に突出している。可動片242は、凸部241aに支持ピン243で支持されている。この可動片242は、支持ピン243を中心に回転シャフト21の径方向に回転する。
【0052】
可動片242は、
図10に示すように、可撓ブレイド23の外側に配置された凹状の外側片242aと、可撓ブレイド23の内側に配置された凹状の内側片242bとで構成されている。可動片242は、外側片242aと内側片242bとで可撓ブレイド23の他端23bを挟み込むことによって、可撓ブレイド23の他端23bを保持している。
【0053】
支持ピン243は、可動片242の側部とコア241を構成する凸部241aの側部とを貫通し、可動片242をコア241に支持させている。支持ピン243は、この支持ピン243を中心にして、可動片242がコア241に対し回転することができるように支持している。
【0054】
上記の可動片242は、支持ピン243を中心にして、軸部材252の径方向(回転シャフト21の径方向)に開閉する。そのため、連結機構24は、可撓ブレイド23の他端23b側を回転シャフト21の軸方向に平行をなす閉じた形態と回転シャフト21の径方向の外側に開いた形態とのそれぞれの形態に誘導する。
【0055】
搾汁機用本体2は、この連結機構24を備えているので、可撓ブレイド23が湾曲して外側に広げられたとき、
図5に示すように、可撓ブレイド23が外側に広がる程度を、ブレイドガイド25側で小さくし、他端23b側で大きくすることができる。なお、搾汁される素材Mの外皮には、穴が、あらかじめあけられ、搾汁機用本体は、その穴から素材Mに挿入される。この搾汁機用本体2では、可撓ブレイド23のブレイドガイド25側が他端23b側よりも広がりの程度が小さいので、可撓ブレイド23が、外皮の穴を傷つけることを防止することができる。
【0056】
連結機構は、
図11に示すように構成することもできる。
図11に示す連結機構24Aは、軸部材252の先端に取り付けられた3本の突起246と、可撓ブレイド23の他端に取り付けられた可動片247と、可撓ブレイド23の他端23bを突起246に対し、回転可能に支持させる支持ピン248とを有している。
【0057】
突起246は、軸部材252の先端に3本設けられている。各突起246は、円柱状をなしており、軸部材252の先端から軸部材252の先方(
図11の下方)に向けて延びている。
【0058】
可動片247は、可撓ブレイド23の内面又は外面に取り付けられている。
図11に示す例では、可動片247は可撓ブレイド23の内面に取り付けられている。可動片247は、可撓ブレイド23の幅方向に延びる挿入部247aを形成している。挿入部247aは、可動片247の一部が湾曲し、可撓ブレイド23との間に隙間を設けることで構成されている。この挿入部247aは、内部に支持ピン248を挿入させている。
【0059】
支持ピン248は、その軸方向の端部が各突起246の先端に固定さている。この支持ピン248は、可動片247が取り付けられた可撓ブレイド23の他端23aを突起246に連結させている。そして、この支持ピン248は、可撓ブレイド23の他端23bを突起246同士の間に配置し、軸部材252に対し、可撓ブレイド23bの他端側を回転可能に支持している。
【0060】
(ブレイドスライダ)
ブレイドスライダ22は、
図3から
図5に示すように、その中央に回転シャフト21が通され、回転シャフト21の軸方向に往復移動することができるように構成されている。ブレイドスライダ22は、
図12に示すように、内筒221、スペーサ222及び外筒2223を有している。内筒221は、回転シャフト21の軸方向にスライドする。スペーサ222は、内筒221の外周にはめ込むことによって、可撓ブレイド23の一端23aを保持する。外筒223は、ブレイドスライダ22の外殻をなし、内筒221とはめ込み用部材であるスペーサ222とで可撓ブレイド23の一端23aを保持した形態を維持する。
【0061】
内筒221は、その外周面の3箇所に形成された窪み221aと、窪み221aよりも上側に形成された雄ねじ221bとを備えている。窪み221aは、内筒221の周方向に均等に間隔を空けて形成されている。この窪み221aは、内筒221の下端部の位置が開いている。また、内筒221は、中央に回転シャフト21が通される穴を有している。この穴は六角形をなし、ブレイドスライダ22が回転シャフト21に対し周方向に回転することを防止ししている。内筒221は、回転シャフト21と共に回転される。なお、回転シャフト21の断面形状が円形の場合、内筒21が回転シャフトと共に回転されるように、回り止めを回転シャフト21に設けるとよい。
【0062】
スペーサ222は、内筒221の外周にはめ込むためのリング222bと、リング222bから可撓ブレイド23の他端23b側(
図12の下側)に向けて延びる3つの爪222aとで構成されている。スペーサ222は、このスペーサ222と内筒221との間に可撓ブレイド23の一端23aを挟み込み、可撓ブレイド23の一端23aを保持する。
【0063】
外筒223は、円筒状をなしている。この外筒223内部は空洞である。外筒223は、内周部に内筒221の雄ねじ221bにねじ込ませる図示しない雌ねじを有している。この外筒223は、内筒221とスペーサ222とが可撓ブレイド23の一端23aを保持した形態を維持する。
【0064】
このブレイドスライダ22は、可撓ブレイド23aを以下のようにして保持する。可撓ブレイド23の一端23aは、内筒221の窪み221a内に配置され。そして、スペーサ222が内筒221の外周にはめ込まれる。スペーサ222を内筒221の外周にはめ込ませることにより、爪222aが窪み221a内に配置された可撓ブレイド23の一端23aの外面を押さえ込む。可撓ブレイド23の一端23aは、窪み221aとスペーサ222の爪222aとで挟み込まれて保持される。外筒223の内周面に形成された雌ねじが、内筒221の雄ねじ221bにねじ込まれることによって、外筒223、内筒221及びスペーサ222が一体化される。外筒223が内筒221の雄ねじ221bにねじ込まれると、外筒223は内周面がスペーサ222を内筒221の外周面側に押す。そのため、可撓ブレイド23の一端23aは、ブレイドスライダ25に強く固定される。
【0065】
このブレイドスライダ22は、可撓ブレイド23の一端23aを回転シャフト21の軸方向にスライドさせることによって、可撓ブレイド23を他端23b(
図3から
図5に示す可撓ブレイド23の下端)とブレイドガイド25との間で、直線状に延びた形態と湾曲して外側に広がった形態との間で形態の変化をさせている。
【0066】
ブレイドスライダ22が
図3に示した形態からブレイドガイド25に向かって回転シャフト21の軸方向を移動した場合、ブレイドスライダ22は、可撓ブレイド23の一端23aをブレイドガイド25側に移動させる。ブレイドスライダ22がブレイドガイド25側に移動したとき、
図4に示すように、可撓ブレイド23は、その他端23bとブレイドガイド25との間で湾曲し、外側に向かって広げられる。そして、ブレイドスライダ22がブレイドガイド25に最も接近する位置までスライドしたとき、
図5に示すように可撓ブレイド23は、その他端23bとブレイドガイド25との間で外側に向けて最も広げられる。
【0067】
一方、ブレイドスライダ22がブレイドガイド25から離れる方向に向かって回転シャフト21の軸方向を移動した場合、可撓ブレイド23の一端23aはブレイドスライダ22と共にブレイドガイド25から離れる方向に移動する。ブレイドスライダ22がブレイドガイド25から離れる方向に移動したとき、可撓ブレイド23は、広がった形態から直線状に延びた形態に復元する(
図3に示す形態)。
【0068】
[搾汁機の基本構成]
次に、搾汁機用本体2を用いた搾汁機Sについて説明する。搾汁機Sは、
図13に示すように、回転シャフト21と、回転シャフト21を着脱可能に保持するシャフトホルダ33を有し、回転シャフト21を回転させる駆動力を伝達する駆動力伝達機構3と、長手方向が回転シャフト21の軸方向に一致し、回転シャフト21の周囲に配置された可撓ブレイド23と、可撓ブレイド23の長手方向の中間位置に設けられたブレイドガイド25と、可撓ブレイド23の長手方向の一端23aを回転シャフト21の軸方向にスライドさせるためのスライド機構4と、を備えている。
【0069】
可撓ブレイド23の長手方向の一端23aは、回転シャフト21の軸方向にスライド可能に構成されている。また、可撓ブレイド23の長手方向の他端23bは、軸部材252に連結されている。そして、可撓ブレイド23一端23aのスライドに伴って、可撓ブレイド23は、その他端23bとブレイドガイド25との間で、直線状に延びた形態と湾曲して外側に広がる形態の間で変化する。なお、可撓ブレイド23の長手方向の他端23bは、回転シャフト21に連結してもよい(
図9参照)。
【0070】
[搾汁機の具体的な構成]
搾汁機Sは、筐体1と、搾汁機用本体2と、駆動力伝達機構3と、スライド機構4とから主に構成されている。搾汁機Sは、電力によって搾汁機用本体2を回転駆動するタイプと、手動で搾汁機用本体2を回転駆動するタイプとがある。以下では、電力によって搾汁機用本体2を回転駆動する搾汁機Sを例にして説明する。なお、この明細書では、搾汁機Sを
図13に示した状態で、
図13の上下方向を搾汁機Sの上下方向として説明する。
【0071】
(筐体)
筐体1は、基台11と、支柱12と、横断面の形状がアルファベットの「U」字を横たえた形状をなす第1フレーム13と、横断面の形状がアルファベットの「E」字のように形成された第2フレーム14とを有している。
【0072】
基台11は、搾汁機Sを接地するための部位である。この基台11は、
図13に示す搾汁機Sの例では、中央から水平方向の外側に延びる4つの突出した部分で構成されている。ただし、基台11の形状は、
図13に示す形状には限定されず、例えば、円形、矩形等に形成することもできる。支柱12は、基台11の中央から上方に向けて延びている。第1フレーム13は、支柱12の上部に取り付けられている。第1フレーム13の開いた部分が搾汁機Sの背面側に向けられ、第1フレーム13の閉じた部分が搾汁機Sの前面側に向けられている。この第1フレーム13は、モータ31を保持している。第2フレーム14は、第1フレーム13よりも搾汁機Sの前部側に設けられている。第2フレーム14の開いた部分が搾汁機Sの前方に向けられ、第2フレーム14の閉じた部分が搾汁機Sの背面側に向けられている。この第2フレーム14は、後述するシャフトホルダ33を保持している。
【0073】
(駆動力伝達機構)
駆動力伝達機構3、モータ31の駆動力を回転シャフト21に伝達するための機構である。この駆動力伝達機構3は、モータ31の駆動軸に取り付けられた駆動プーリ32と、回転シャフト21の一端側を着脱可能に保持するシャフトホルダ33と、シャフトホルダ33に取り付けられた従動プーリ34と、駆動プーリ32と従動プーリ34とに掛け渡された歯付ベルト35とを有している。
【0074】
モータ31の駆動軸の回転は、駆動プーリ32、歯付ベルト35、従動プーリ34及びシャフトホルダ33の順番に伝達される。モータ31の駆動軸の回転がシャフトホルダ33に伝達されることによって、シャフトホルダ33が回転する。このシャフトホルダ33に保持された回転シャフト21は、シャフトホルダ33の回転に伴って回転する。なお、この搾汁機Sは、モータ31を作動させる図示しない電源スイッチを備えている。図示しない電源スイッチは、後述する操作レバーに連動しており、操作レバーを動かすことによって自動的に入り切りが行われる。
【0075】
以上、駆動力伝達機構3が、駆動プーリ32、従動プーリ34、及び歯付きベルト35を有する場合を例に説明した。ただし、駆動力伝達機構3は、例えば、複数の歯車を相互に噛み合わせてなる歯車群によって構成することもできる。
【0076】
(スライド機構)
スライド機構4は、
図13及び
図14に示すように、操作レバー41、回転軸42、アーム43、スライドプレート44、ガイドポール45及びスプリングダンパー46を備えている。
【0077】
操作レバー41は、一対のレバー部材410と、手で掴むためのグリップ411を有している。このグリップ411は、レバー部材410の上端同士を連結している。操作レバー41は、
図13及び
図14に示すように、アルファベットの「U」字が逆さまに向けられた形状をなしている。
【0078】
回転軸42は、水平方向に延びている。回転軸42はレバー部材410の下部同士をつないでいる。この回転軸42と操作レバー41とは、1つのユニットとして構成されている。この回転軸42は、操作レバー41が回転軸42を中心に回転することに伴って、操作レバー41と共に回転する。
【0079】
アーム43は、搾汁機Sの前方に突出する、一対のアーム部材430によって構成されている。一対のアーム部材430は、レバー部材410の内側で回転軸42に固定されている。また、アーム43を構成する各アーム部材430は、その先端と各アーム部材430の長手方向の途中の位置との間に長い溝(以下、「長溝」と略す。)431を有している。回転軸42を中心にして操作レバー41を回転させて回転軸42を回転させたとき、アーム43は、回転軸42の回転に伴って回転軸42を中心にして回転する。なお、搾汁機Sを操作する作動する前(操作レバー41を操作する前)において、各アーム部材430の先端に形成された開いた部分が斜め上方、且つ搾汁機Sの前方(搾汁機Sの外側)に向けられている。
【0080】
スライドプレート44は、ブレイドスライダ22を上下方向(回転シャフト21の軸方向)にスライドさせている。このスライドプレート44は、その両側部に外側に向けて突出するピン441をそれぞれ備えている。各ピン441は、各アーム部材430に形成された長溝431の内部にそれぞれ挿入される。各ピン441は、長溝431の内部をスライドする。
【0081】
このスライドプレート44は、アーム43が回転軸42を中心にして回転したときに、アーム43の先端側の上下動に連動して上下方向に移動する。その際、各ピン441は、長溝431の内部を長溝431の長手方向にスライドする。
【0082】
ガイドポール45は、上下に延びる細長い部材である。このガイドポール45は、第2フレーム14の中間支持板14bと下側支持板14cとの間に設けられている。このガイドポール45は、スライドプレート44に形成された図示しない穴に通されており、スライドプレート44の上下動をガイドしている。また、ガイドポール45は、その下部にストッパ451を備えている。このストッパ451は、スライドプレート44が突き当てられることによって、スライドプレート44の移動を制限している。なお、ストッパ451は、その高さを変更することによって、スライドプレート44の移動する長さを調整することができる。
【0083】
スプリングダンパー46は、第2フレーム14の下側支持板14cとアーム43の上端との間を斜めに連結している。スプリングダンパー46は、下げられた操作レバー41が元の位置に戻るときに操作レバー41を上側に向けて押し上げ、操作レバー41が元の位置に復帰することを補助している。また、スプリングダンパー46は、操作レバー41が急激に降下することを防止し、操作レバー41が操作される速度を調整している。その結果、搾汁機用本体2が降下する速度が調整される。
【0084】
(搾汁機用本体)
搾汁機用本体2の具体的な構成は、
図3から
図12を参照して既に説明したように、回転シャフト21と、回転シャフト21の周囲に配置された可撓ブレイド23と、可撓ブレイド23の長手方向の一端23a部を軸部材252の先端に連結している連結機構24と、可撓ブレイド23の他端23bを回転シャフト21の軸方向にスライドさせるブレイドスライダ22と、可撓ブレイド23の長手方向の中間部分に配置されたブレイドガイド25とを備えている。
【0085】
なお、可撓ブレイド23が湾曲する程度は、スライドプレート44がガイドポール45に取り付けられたストッパ451に突き当たることによって設定される。すなわち、スライドプレート44がガイドポール45に取り付けられたストッパ451に突き当たったときに、可撓ブレイド23は、湾曲の程度が最も大きな形態になる。ストッパ451の高さを所望の高さに設定することによって、可撓ブレイドの湾曲の程度を変更させることができる。ただし、ブレイドスライダ22をブレイドガイド25に突き当てて可撓ブレイド23が湾曲する程度を設定してもよい。なお、搾汁機用本体2の具体的な構成は、既に説明したので、ここではその説明を省略する。
【0086】
(シャフトホルダ)
シャフトホルダ33は、
図15に示すように、筒状のホルダ本体331と、ホルダ本体331の上端部に被せられるホルダ蓋体332と、ホルダ蓋体332の内部に設けられ、ホルダ蓋体332の内部で水平にスライドする内蔵スライダ333と、ホルダ蓋体332の内部に設けられ、内蔵スライダ333を水平方向に付勢する内蔵スプリング334とを備えている。
【0087】
ホルダ本体331は、上端部331a、中央部331b及び下端部331cにより構成されている。上端部331aには、ホルダ蓋体332の下端部332cが圧入されて固定されている。中央部331bには、従動プーリ34がはめ込まれる。下端部331cは、その外周面が第2フレームに取り付けられる一方で、その内周面に回転シャフト21が挿入される。そして、ホルダ蓋体332の上端部332cは、第2フレーム14の上側支持板14aに対し、滑らかに回転するように取り付けられている。一方、ホルダ本体331の下端部331cは、第2フレーム14の中間支持板14bに対し滑らかに回転するようにはめ込まれている。そのため、シャフトホルダ33は滑らかに回転する。
【0088】
ホルダ蓋体332は、上部スペース332aと、下部スペース332bとを有している。上部スペース332aは、回転シャフト21の頭部211を収容する。下部スペース332bは、その一端側が開いた長い溝である。この下部スペース332bは、上部スペース332aの下方で、内蔵スライダ333と内蔵スプリング334とを収容している。
【0089】
内蔵スライダ333は、下部スペース332bの内部に配置されている。内蔵スライダ333は、下から上に向かうにつれ、内径が徐々に小さくなる円錐台状の内周面333bを有している。この内蔵スライダ333は、内蔵スプリング334で力が与えられ、
図15の右側に移動する。また、内蔵スライダ333は、回転シャフト21によって、内蔵スプリング334の力よりも大きな力で押されることによって
図15の左側に移動する。
【0090】
内蔵スライダ333が
図15の右側に移動した形態では、内周面333bの中心軸とホルダ蓋体332の上部スペース332aの中心軸とは、相互にずれている(オフセット形態)。この形態で、回転シャフト21の頭部211が、下からシャフトホルダ33に挿入されると、回転シャフト21の面取りがなされた頭部211が内周面333bに突き当てられる。そのため、内蔵スライダ333は、
図15の左側(シャフトホルダ33の内側)に移動する。すなわち、内蔵スライダ333は、回転シャフト21の中心軸側にスライドする。回転シャフト21の頭部211は、内蔵スライダ333の内周面333bを下から上に貫通し、上部スペース332aに到達する。頭部211が上部スペース332aに到達した後、内蔵スライダ333は内蔵スプリング334によって力が与えられ、頭部211の下側に形成された細径部212の位置に戻される。その結果、回転シャフト21の頭部211の下面が内蔵スライダ333の上端面に掛けられ、回転シャフト21がシャフトホルダ33に保持される。
【0091】
シャフトホルダ33による回転シャフト21の保持を解除するには、シャフトホルダ33に保持された形態から、内蔵スライダ333に連ねて設けられたボタン333aを
図15の右側から左側に向けて押す。ボタン333aを押すことによって、内蔵スライダ333は、内蔵スプリング334の力によりも大きな力で、
図15の左側に押される。内蔵スライダ333が移動すると、内周面333bの中心軸と上部スペース332aの中心軸とが一致する。そのため、回転シャフト21は、その頭部211が内周面333bを通過させて、シャフトホルダ33から取り外すことができるようになる。
【0092】
[芯抜き工具]
芯抜き工具は、素材Mの芯を取り去る工具である。
図16は、芯抜き工具50の一例を示している。この芯抜き工具50は、直線状に延びる細長い筒状をなしている。芯抜き工具は、手で掴む柄51と、素材Mの外皮に穴を空けると共に素材Mの芯を取り去る刃先部53とを備えている。柄51と刃先部53とは、中間部52でつながれている。中間部52は、円弧状をなし、芯抜き工具50の前部が開かれている。
【0093】
芯抜き工具50は、
図17に示すように、長手方向の中間に屈曲部54を設け、折り曲げられた形状に構成することもできる。この芯抜き工具50は、折り曲げられた形状を利用して、素材Mから芯を容易に取り去る。
【0094】
まず、芯抜き工具50の刃先部53を利用して素材Mの外皮に穴を空ける。その穴から芯抜き工具50を、
図17(A)に示すように、素材Mの内部に挿入する。次いで、素材Mの内部で、芯抜き工具50をその中心を軸に回転させる。次いで、
図17(B)に示すように、中間部52に形成された屈曲部54を支点にして柄51を素材Mの中心側に向けて移動させる。この作用によって、芯抜き工具50の刃先部53が素材Mの芯の位置の外側に移動し、刃先部53が素材Mの芯を素材Mから切断する。その後、芯抜き工具50が素材Mから抜き取られる。芯抜き工具50の中間部52は、上記のように開かれている。そのため、芯抜き工具50が素材Mから抜き取られるとき、芯抜きの作業によって生じた果汁は、中間部52から素材Mの内部に流れ出し、芯抜き工具50は、素材Mの芯だけを素材Mから取り去る。
【0095】
芯抜き工具60は、
図18に示すように構成することもできる。この芯抜き工具60は、円筒状をなしている。芯抜き工具60は、手で掴むための柄(図示しない)と、刃先部63とを備えている。柄と刃先部63とは、中間部62でつながれている。中間部62は、芯抜き工具60の内部と外部とをつなぐ開かれた部分を有する。この芯抜き工具60は、刃先部63の内側に一対の引っ掛け片65を備えている。引っ掛け片65は、素材Mから分離された芯を引っ掛け、素材Mから取り去る部位である。
【0096】
引っ掛け片65は、芯抜き工具60を素材Mに挿入するときには、
図18(A)に示すように、閉じた形態となる。一方、引っ掛け片65は、芯抜き工具60を素材Mから引き抜くときは、
図18(B)に示すように、開いた形態になる。素材Mの芯は、開いた形態の引っ掛け片65によって引っ掛けられ、芯抜き工具60が素材Mから引き抜かれることに伴って果実から取り去られる。
【0097】
[素材]
以上の搾汁機Sにより搾汁される対象物である素材Mは、種類、形状、大きさ等を問わない。ただし、外皮が相対的に厚く、内部が相対的に柔らかくかつ含有する水分量が相対的に多い果実や野菜であることが好ましい。代表的な素材Mとしては、例えば、グレープルーツ、オレンジ、レモン、ハッサク及びみかん等の柑橘類、並びに、各種のメロンやすいか等の瓜類等を挙げることができる。また、素材Mとしては、かぼちゃ等の野菜を挙げることができる。
【0098】
[作用及び使用法]
以上の構成を有する搾汁機用本体2及びこの搾汁機用本体2を有する搾汁機Sで素材Mを搾汁する場合、搾汁機用本体2及び搾汁機Sは、以下のように作用する。
【0099】
まず、可撓ブレイド23が直線状に延びた形態(縮径形態)の搾汁機用本体2を挿入することができる穴を素材Mの外皮の上部中央に形成する。この穴は、上述した芯抜き工具50,60を用いて形成される。また、芯抜き工具50,60を用い、素材Mから芯を取り去る。
【0100】
次いで、素材Mの下部を手で支え、素材Mの外皮に形成した穴を搾汁用本体2の真下に移動する。その後、外皮の穴から素材Mの内部に搾汁機用本体2を挿入する。
【0101】
次いで、スライド機構4の操作レバー41を操作する。グリップ411を手でつかみ、操作レバー41をスプリングダンパー46の力よりも大きな力で押し下げる。電源スイッチは、操作レバー41の動きに連動して自動的に入り、モータ31が駆動する。モータ31の駆動は、駆動力伝達機構3によってシャフトホルダ33に伝達され、このシャフトホルダ33に保持された搾汁機用本体2が回転する。また、操作レバー41を押し下げる距離に応じ、ブレイドスライダ22が回転シャフト21に沿ってブレイドガイド25側にスライドする。可撓ブレイド23は、ブレイドスライダ22のスライドした距離に応じ、
図4に示した直線状に延びた形態から、
図5又は
図6に示したように、湾曲の程度を徐々に増大させ、外側に向けて徐々に広げられる。
【0102】
搾汁機用本体2は、素材Mの外皮の内部で可撓ブレイド23が広がった形態で回転するので、外皮の内側に存在する果肉(野菜細胞を含む)、内皮、繊維等は、素材Mの中心側から外側(径が拡がる側)に向かって順次に破断、破砕及び撹拌等がなされる。そのため、素材Mは、外皮を残し、外皮の内部で搾汁される。
【0103】
搾汁を行っている間、素材Mをその芯から偏心させてゆっくりと回転させながら行うとよい。素材Mをその芯から偏心させてゆっくりと回転させながら搾汁した場合、外皮の内部で可撓ブレイドがまんべんなく果肉に当たる。そのため、無駄なく素材Mを搾汁することができる。
【0104】
素材Mの搾汁が終了した後、押し下げられていた操作レバー41を元の位置に復帰させる。操作レバー41が元の位置に復帰されると、広げられていた可撓ブレイド23は、直線状に延びる形態に復元される。また、モータ31の電源スイッチは、自動的に切られ、本体2の回転は停止する。この状態で搾汁機用本体2を素材Mから抜き取ると、外皮が残存したままで、外皮の内部に搾汁が得られ、搾汁作業が終了する。
【0105】
得られた搾汁は、外皮を容器として利用し、外皮に形成された穴にストローを挿入して提供することができる。ただし、得られた搾汁は、素材Mに形成された穴から別途に用意した容器に移して提供してもよい。得られた搾汁を提供する際、外皮に形成された穴からリキュール等のアルコール、炭酸水、甘味料等を加えることもできる。なお、素材Mは、必要に応じ、常温の状態、冷却した状態又は加熱した状態で搾汁される。冷凍した素材Mを用いて搾汁を行った場合、シャーベットが作られる。
【0106】
[受け器]
受け器70は、素材Mを受けるための器である。受け器70は、搾汁機Sと別途に設けられている。受け器70は、
図19に示すように、例えば、円筒状の周壁71と、底面72とで構成されている。また、周壁71は、その上部に複数の突起部73を備えている。突起部73は、周方向に均等に間隔を空けて配置されている。この突起部73は、素材Mの外皮に突き刺す部位である。突起部73同士の間の谷部74は、
図19に示すように、平坦に形成されている。ただし、谷部74は、受け器70の下側に向けて窪んだ形状に形成することもできる。谷部74が下側に向けて窪んだ形状である場合、素材Mを受け器70から取り外すとき、指を素材Mと谷部74との間に入れることができ、素材Mを容易に受け器70から取り外すことができる。
【0107】
この受け器70は、素材Mを搾汁する際に、
図19に示すように素材Mの底部を周壁71の上部で受け、受け器70の底面72側を手で持って使用される。その際、突起部73を素材Mの外皮に突き刺して素材Mを受ける。突起部73が外皮に突き刺されることによって、素材Mは受け器70に固定される。なお、この受け器70を用いた場合、素材Mを手で持たず、受け器70を置いた状態で搾汁することもできる。
【0108】
図20は、素材Mを置いた状態で搾汁する場合を示している。この場合、素材Mは、芯が延びる方向を斜めに傾けて受け器70に乗せられる。可撓ブレイド23が湾曲して広がった状態は、
図4及び
図5に示すように、可撓ブレイド23の他端23b側がブレイドガイド25側よりも外側に広く広がる。素材Mの芯CL1が延びる方向を搾汁用本体部2の中心線CL2に対して斜めに傾けて受け器70に乗せることによって、可撓ブレイド23の他端23b側が素材Mの外皮の内部で外皮の直近の領域にまで張り出し、素材Mの上側を残さずに搾汁する。
【0109】
また、素材Mを置いた状態で搾汁する場合、素材Mの上側を覆うカバー80を搾汁機Sに設けるとよい。このカバー80は、置かれた素材Mを押さえ付け、位置がずれることを防止する。
【0110】
[可撓ブレイドの詳細]
可撓ブレイド23の材質、機械的性質及び材質の詳細を説明する。この可撓ブレイド23は、素材Mの内部で、可撓ブレイド23の長手方向の中間部分が径方向の外側に向かって湾曲し、その形態で回転シャフト21によって回転して搾汁を行う。また、可撓ブレイド23は、湾曲した形態から可撓ブレイド23自体の復元力によって直線状に再び延びる性質を有している。
【0111】
望ましい特性としては、可撓ブレイド23は、剛性が低く(ヤング率の値が小さく)、強度が高く、且つ、耐久性が高い(耐疲労性が高い)ことを挙げることができる。また、搾汁は、中性ではなく酸性やアルカリ性であることが多い。そのため、可撓ブレイド23は、耐食性が高いことが好ましい。
【0112】
好ましい材料の一例としては、チタン合金がある。なお、本明細書では、チタン合金とはTiを含有する合金を意味し、Tiの含有量は限定されない。つまり、チタン合金全体を100mol%とした場合、Tiと含有割合が50mol%以下でもよい。また、チタン合金は、弾性変形域における応力と歪みが非線形になる関係を有するチタン合金に限らず、その応力と歪みが線形の関係にあるチタン合金も含む。以下、このチタン合金について、詳細に説明する。
【0113】
(引張弾性限強度と平均ヤング率)
このチタン合金は、以下の機械的性質を有することが好ましい。
(1)引張弾性限強度が、700MPa以上である。ただし、引張弾性限強度は、800MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがより好ましく、1000MPa以上であることがさらに好ましい。なお、引張弾性限強度は、引張試験による(真の)永久歪みが0.2%に到達したときの応力として定義される。
(2)平均ヤング率が100GPa以下である。ただし、平均ヤング率は、80GPa以下であることが好ましく、75GPa以下であることがより好ましく、65GPa以下であることがさらに好ましい。なお、平均ヤング率は、引張試験により得られた応力−歪み線図上で引張弾性限強度の1/2に相当する応力位置での接線の傾きとして求まる。
【0114】
ここで、引張弾性限強度とは、試験片への加重に負荷を与えることと、負荷を除くこととを繰り返し行う引張試験において、永久伸び(歪み)が0.2%に到達したときの負荷により生じる応力をいう。この点で、引張弾性限強度は、引張試験において試験片の最終的な破断直前の加重を、その試験片の平行部における試験前の断面積で除して求める引張強度とは異なる。
【0115】
また、平均ヤング率は、厳密な意味でのヤング率の平均ではなく、ヤング率の代表値を意味する。したがって、弾性変形域における応力と歪みが線形の関係になるチタン合金の場合、その平均ヤング率は、応力−歪み線図の原点を通る直線の傾きとして求まる一般的なヤング率と同義である。一方、弾性変形域における応力と歪みが非線形の関係になるチタン合金の場合、応力−歪み線図の原点を通る直線の傾きとしてヤング率を求めることができない。そのため、本明細書では、包括的な概念として上述した平均ヤング率を用いている。
【0116】
上述したチタン合金からなる可撓ブレイド23の引張弾性限強度と平均ヤング率について
図21を参照して説明する。
図21は、応力−歪み線図(模式図)であり、
図21の横軸は歪みを表し、
図21の縦軸は応力を表している。また、
図21のσtは引張強度であり、εeは引張弾性限強度(σe)における歪みである。
【0117】
可撓ブレイド23の応力−歪み線図は、可撓ブレイド23の弾性変形域において、直線状にはならず、上側に凸な曲線(I’−II)となる。可撓ブレイド23は、加えられている加重を除いたとき、曲線II−I’に沿って長さが変化して伸びが0に戻ったり、II−II’に沿って長さが変化して永久歪みが残ったりする。
【0118】
以上に説明した高強度且つ低ヤング率のチタン合金からなる可撓ブレイド23は、優れた弾性変形の性質を有する。そのため、可撓ブレイド23は、大きく湾曲させても弾性変形し、塑性変形し難い。また、このようなチタン合金からなる可撓ブレイド23は、高強度であり、且つ疲労強度(疲労限度)が高い。さらに、こうした可撓ブレイド23は、ヤング率が低いので、湾曲することに伴って発生する曲げ応力が比較的小さい。そのため、大きく湾曲した形態で素材Mを搾汁することによって負荷が可撓ブレイド23に繰り返し加えられた場合でも、この可撓ブレイド23は、長期間にわたって良好に用いることができる。また、この可撓ブレイド23は、不動態被膜(酸化チタン)が表面に形成されるので、耐食性にも優れている。
【0119】
上述したチタン合金は、さらに、弾性変形域内における応力と歪みとの関係が非線形(応力−歪み曲線が上に凸)である場合、高い弾性変形の性質を得ることができる。このチタン合金は、例えば、日本国の特許第3375083号公報、特許第3827149号公報、特許第4123937号公報、及び特許第4408184号公報等に詳細に記載されている。また、このチタン合金は、ゴムメタル(豊田マテリアル株式会社の登録商標)として市販もされている。
【0120】
チタン合金(特に、ゴムメタル)は、冷間加工を施すことによって、ヤング率を低くすること及び強度を高くすることが容易に両立される。そのため、可撓ブレイド23は、冷間加工されたチタン合金を用いることが好ましい。なお、冷間加工とは、再結晶温度(再結晶を起こす最低の温度)以下の温度(例えば、室温)で行う塑性加工を意味する。冷間加工としては、例えば、冷間圧延、冷間プレス、冷間絞り、冷間線引き及び冷間スウェージング加工等を挙げることができる。
【0121】
(組成)
また、上述したチタン合金は、アレルギー等の誘因元素となり得るNi、Co、
Sn、Cr、及びAl等を含まないことが好ましい。例えば、チタン合金は、全体を100質量%としたとき、30質量%以上、60質量%以下のVa族(バナジウム族)元素(V、Nb、Ta)の一種以上と、合計で20質量%以下(好ましくは、10質量%以下)のZr及び/又はHfと、残部がTiと不可避的不純物及び/又は少量の改質元素からなることが好ましい。V、Nb、Taは、β相安定化元素であり、チタン合金のヤング率を低くすると共に冷間加工性を向上させる。ZrとHfとは、チタン合金のヤング率を低くすること及び強度を高くすることに有効な元素である。なお、Zr又はHfの一部を、ヤング率を低くするのに有効なScに置換してもよい。
【0122】
Oは、チタン合金の改質元素の代表例である。全体を100質量%としたときに、Oがチタン合金に0.08質量%以上、0.6質量%以下含まれることが好ましく、0.15質量%以上、0.5質量%含まれるとさらによい。また、Oは、チタン合金の強度を向上させるのに有効な元素であり、Va族元素と共存することによって、チタン合金のヤング率を低下させことと、強度を高めることとを両立することができる。なお、Oに換えて、又はOと共に、0.05質量%以上、1.0質量%以下のCや、0.01質量%以上、1.0質量%以下のBを含ませてもよい。
【0123】
以上に説明したチタン合金からなる可撓ブレイド23を本体2に用いることにより、搾汁を長期間にわたって行うことができる。なお、可撓ブレイド23を構成するチタン合金は、上述した機械的性質を有する限り、その合金の組成に関わりなく、α型、α+β型及びβ型のいずれでもよい。ただし、この可撓ブレイド23を構成するチタン合金は、通常の場合、β型である。
【0124】
なお、可撓ブレイドは、一定の弾性、耐久性及び耐食性を有する材料であれば、以上に説明したチタン合金以外の材料で構成することもできる。例えば、可撓ブレイドは、ステンレス鋼、プラスチック材料、及び炭素材料、並びにこれらの複合材料等で構成することもできる。
【0125】
[絞りの状況]
以上の構成を有する搾汁機Sを用いてグレープフルーツを搾汁した。その結果100個程度のグレープフルーツを問題なく搾汁することができた。可撓ブレイド23を上述したゴムメタルで製作した場合、搾汁機Sは、良好に、1000個のグレープフルーツを搾汁することができた。
【課題】果実等を搾汁するとき及び搾汁した果実等を飲むときに、人に楽しさを与えることができ、且つ実用的な構造の搾汁機、搾汁機用本体及び搾汁機用可撓ブレイドを提供する。
【解決手段】回転シャフト21と、長手方向が回転シャフト21の軸方向に一致し、回転シャフト21の周囲に配置された可撓ブレイド23と、長手方向の中間位置に設けられたブレイドガイド22と、を備え、可撓ブレイド23の長手方向の一端23aは回転シャフト21の軸方向にスライド可能に構成され、可撓ブレイド23の長手方向の他端23bは、ブレイドガイド22から可撓ブレイド23の他端23b側に延びる軸部材又は回転シャフト21に取り付けられ、可撓ブレイド23は、可撓ブレイドの一端23aのスライドに伴って、可撓ブレイドの他端23bとブレイドガイド22との間で、可撓ブレイド23が直線状に延びた形態と湾曲して外側に広がる形態の間で変化する。