特許第5676084号(P5676084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5676084コンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676084
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】コンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/07 20060101AFI20150205BHJP
   G01N 29/11 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   G01N29/07
   G01N29/11
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-123703(P2009-123703)
(22)【出願日】2009年5月22日
(65)【公開番号】特開2010-271207(P2010-271207A)
(43)【公開日】2010年12月2日
【審査請求日】2012年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐治
(72)【発明者】
【氏名】堤 知明
(72)【発明者】
【氏名】海津 信廣
(72)【発明者】
【氏名】原田 光男
(72)【発明者】
【氏名】小淵 康義
(72)【発明者】
【氏名】相京 泰仁
(72)【発明者】
【氏名】山谷 敦
【審査官】 喜々津 徳胤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−002559(JP,A)
【文献】 特開2003−004712(JP,A)
【文献】 岡田 篤生,“特集:予防保全に役立つ新技術(調査)”,特集 土木工法2009 予防保全に役立つ新技術-維持・補修がより手軽にさらにきめ細かく,2009年 4月24日,pp.77-81
【文献】 森濱 和正,“リバウンドハンマによる強度推定に関する検討”,土木学会年次学術講演会講演概要集,2008年 8月13日,Vol.63rd,Disk2,5-157,pp.313-314
【文献】 松尾 豊史,“ハンチの有無がRCボックスカルバートの変形性能及び破壊モードに及ぼす影響”,土木学会年次学術講演会講演概要集,2002年 9月 1日,Vol.57th,部門5,V-097,pp.193-194
【文献】 幸左 賢二,“開削トンネル隅角部の耐震性に関する実験的研究”,コンクリート工学年次論文報告集,1998年 6月30日,Vol.20,No.3,pp.1057-1062
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N29/00−29/52
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンチ部を含むコンクリート構造物の圧縮応力を受けた部位の圧壊箇所の範囲及び程度の判定に用いるコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法であって、
(1)コンクリート構造物の圧縮応力を受けていない健全部に超音波法による発振子及び受振子をそれぞれ、同じ高さでかつ所定の発振子・受振子間距離の2点に配置し、前記発振子により超音波パルスを発振し、前記受振子により当該超音波パルスを受振することにより、前記発振子及び前記受振子間の超音波速度を計測し、
(2)上記(1)と同様の2点間の計測をコンクリート表面の圧縮応力が集中する位置でハンチ部から上方へ又は下方に前記健全部に向けて計測位置を所定の間隔で移動して順次行い、当該各計測位置の前記発振子及び前記受振子間の超音波速度を計測し、
(3)上記(2)により得られたハンチ部を含むコンクリート表面の圧縮応力が集中する位置の各計測位置の超音波速度を上記(1)により得られた前記健全部の超音波速度で除して、当該各計測位置の速度比を求め、
(4)上記(3)により得られた当該各計測位置の速度比の低下の度合いにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定する、
ことを特徴とするコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法。
【請求項2】
ハンチ部を含むコンクリート構造物の圧縮応力を受けた部位の圧壊箇所の範囲及び程度の判定に用いるコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法であって、
(1)コンクリート構造物の圧縮応力を受けていない健全部に超音波法による発振子及び受振子をそれぞれ、同じ高さでかつ所定の発振子・受振子間距離の2点に配置し、前記発振子により超音波パルスを発振し、前記受振子により当該超音波パルスを受振することにより、前記発振子及び前記受振子間の超音波速度及び当該受振した超音波の振幅を計測し、
(2)上記(1)と同様の2点間の計測をコンクリート表面の圧縮応力が集中する位置でハンチ部から上方へ又は下方に前記健全部に向けて計測位置を所定の間隔で移動して順次行い、当該各計測位置の前記発振子及び前記受振子間の超音波速度及び当該受振した超音波の振幅を計測し、
(3)上記(2)により得られたハンチ部を含むコンクリート表面の圧縮応力が集中する位置の各計測位置の超音波速度及び振幅をそれぞれ、上記(1)により得られた前記健全部の超音波速度及び振幅で除して、当該各計測位置の速度比及び振幅比を求め、
(4)上記(3)により得られた当該各計測位置の速度比及び振幅比の低下の度合いにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定する、
ことを特徴とするコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法に関し、特に、目視による表面的な観察では把握できないコンクリートの圧壊箇所の範囲及び程度を判定するのに適した、コンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、トンネル、橋梁、各種水路、ダムなど既設のコンクリート構造物が地震などの外力を受けて、コンクリートの強度に劣化が生じた場合、その補修、補強が必要となるため、コンクリートの強度を測定する必要がある。コンクリート構造物の強度を測定するためには、そのコンクリート構造物について実際に計測する必要があり、この計測方法としては、計測対象のコンクリート構造物の表面から、通常、直径100mm、高さが直径の2倍の長さ200mm程度の円柱状のコンクリートコアを試験体として採取し、この試験体の上下端面に加圧板を密着させ、荷重を加えて圧縮する載荷試験(圧縮強度試験)を行う方法が知られている。この載荷試験の結果により、例えば図4に示すようなコンクリートの応力−ひずみ曲線を得ることができ、コンクリートの圧縮強度を求めることができる。この種の計測方法は例えば特許文献1などに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2655529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような載荷試験の結果から得られた、図4に示すようなコンクリートの応力−ひずみ曲線は最大圧縮強度に達する前(試験体A)と最大圧縮強度に達した後(試験体B)に分けられるが、圧縮強度がピークに達した後の例えば最大圧縮強度の80%程度の強度である試験体Bの表面と圧縮強度がピークに達する前の試験体Aの表面を観察対比しても、いずれも圧壊部の範囲や程度を把握できないために、コンクリートが受けた応力・ひずみ履歴を予想することは難しい。
【0005】
また、この関連で、例えば、ボックスカルバートのようなコンクリート構造物が地震を受けた場合のコンクリートの強度を計測するために、ボックスカルバートモデルのコンクリート構造物の載荷試験を行ってみたところ、特に圧縮力を受けた箇所では、上記と同様に、圧壊箇所の判定が困難であった。図5に示すように、ボックスカルバートモデルのコンクリート構造物を(図5中に示す矢印方向に)片押しすると、このコンクリート構造物の損傷箇所は圧縮応力を受ける箇所と引張応力を受ける箇所に分けられ、四角で囲まれた部分が圧縮力を受ける箇所であり、その反対側が引張力を受ける箇所である。この載荷試験の結果から、コンクリートの圧壊箇所はコンクリートのひずみが5000μにまで達し、コンクリートが圧壊していることが分かっているものの、その状態がコンクリートの表面に相応のひび割れが発生して外部に現れていれば目視により確認できるが、特に圧縮力を受けた箇所では、表面にひび割れが発生していない、あるいは発生していたとしても目視では確認できないために、表面的な観察では、圧縮破壊されている範囲や圧縮強度が低下している範囲、また圧縮強度の低下の程度を判定することができない。
【0006】
そこで、本願発明者らは、コンクリート構造物において、圧縮応力を受け、目視による表面的な観察ではコンクリート表面下の損傷の状態を把握できない部位について、圧縮破壊の範囲及び程度を判定することを目的として、鋭意研究の結果、超音波法を利用して、コンクリート表面下の損傷の状態を把握し、コンクリートの圧縮破壊された範囲や圧縮強度が低下した範囲、圧縮強度の低下の程度を判定することを見出し、本発明を創案するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
ハンチ部を含むコンクリート構造物の圧縮応力を受けた部位の圧壊箇所の範囲及び程度の判定に用いるコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法であって、
(1)コンクリート構造物の圧縮応力を受けていない健全部に超音波法による発振子及び受振子をそれぞれ、同じ高さでかつ所定の発振子・受振子間距離の2点に配置し、前記発振子により超音波パルスを発振し、前記受振子により当該超音波パルスを受振することにより、前記発振子及び前記受振子間の超音波速度を計測し、
(2)上記(1)と同様の2点間の計測をコンクリート表面の圧縮応力が集中する位置でハンチ部から上方へ又は下方に前記健全部に向けて計測位置を所定の間隔で移動して順次行い、当該各計測位置の前記発振子及び前記受振子間の超音波速度を計測し、
(3)上記(2)により得られたハンチ部を含むコンクリート表面の圧縮応力が集中する位置の各計測位置の超音波速度を上記(1)により得られた前記健全部の超音波速度で除して、当該各計測位置の速度比を求め、
(4)上記(3)により得られた当該各計測位置の速度比の低下の度合いにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定する、
ことを要旨とする。
【0008】
また、本発明は、
ハンチ部を含むコンクリート構造物の圧縮応力を受けた部位の圧壊箇所の範囲及び程度の判定に用いるコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法であって、
(1)コンクリート構造物の圧縮応力を受けていない健全部に超音波法による発振子及び受振子をそれぞれ、同じ高さでかつ所定の発振子・受振子間距離の2点に配置し、前記発振子により超音波パルスを発振し、前記受振子により当該超音波パルスを受振することにより、前記発振子及び前記受振子間の超音波速度及び当該受振した超音波の振幅を計測し、
(2)上記(1)と同様の2点間の計測をコンクリート表面の圧縮応力が集中する位置でハンチ部から上方へ又は下方に前記健全部に向けて計測位置を所定の間隔で移動して順次行い、当該各計測位置の前記発振子及び前記受振子間の超音波速度及び当該受振した超音波の振幅を計測し、
(3)上記(2)により得られたハンチ部を含むコンクリート表面の圧縮応力が集中する位置の各計測位置の超音波速度及び振幅をそれぞれ、上記(1)により得られた前記健全部の超音波速度及び振幅で除して、当該各計測位置の速度比及び振幅比を求め、
(4)上記(3)により得られた当該各計測位置の速度比及び振幅比の低下の度合いにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定する、
ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法によれば、コンクリートの圧縮応力を受けていない健全部に、超音波法による発振子及び受振子をそれぞれ、同じ高さでかつ所定の発振子・受振子間距離の2点に配置してこの2点間の超音波速度を計測し、これと同様の2点間の計測をコンクリートの圧縮応力が集中する位置でハンチ部から上方へ又は下方に健全部に向けて計測位置を所定の間隔で移動して順次行い、当該各計測位置の超音波速度を健全部の超音波速度で除して得られる当該各計測位置の速度比を求め、この速度比の低下の度合いにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定するので、例えば図3に示すように、隔壁の高さ位置と速度比との関係から、層間変形角が26/1000の場合、ハンチ部の速度比が75%までに低下し、その範囲はハンチ部の上方へ100mm程度まで、ハンチ部の下方へ50mm程度まで達していることが分かり、また層間変形角が0/1000の場合は、ハンチ部を含めて速度比が100パーセントであり、層間変形角が大きくなると、ハンチ部に集中する圧縮応力も大きくなることが分かるなど、圧縮応力を受けた部位について、コンクリートの圧縮破壊の範囲、圧縮強度の低下の範囲、及び圧縮強度の低下の程度を判定することができる、という格別な効果を奏する。
【0010】
また、本発明のコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法によれば、コンクリートの圧縮応力を受けていない健全部に、超音波法による発振子及び受振子をそれぞれ、同じ高さでかつ所定の発振子・受振子間距離の2点に配置してこの2点間の超音波速度及び超音波の振幅を計測し、これと同様の2点間の計測をコンクリートの圧縮応力が集中する位置でハンチ部から上方へ又は下方に健全部に向けて計測位置を所定の間隔で移動して順次行い、当該各計測位置の超音波速度及び振幅をそれぞれ、健全部の超音波速度及び振幅で除して得られる当該各計測位置の速度比及び振幅比を求め、この速度比及び振幅比の低下の度合いにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定するので、例えば図3に示すように、隔壁の高さ位置と速度比との関係から、層間変形角が26/1000の場合、ハンチ部の速度比が75%までに低下し、その範囲はハンチ部の上方へ100mm程度まで、ハンチ部の下方へ50mm程度まで達していることが分かり、また層間変形角が0/1000の場合は、ハンチ部を含めて速度比が100パーセントであり、層間変形角が大きくなると、ハンチ部に集中する圧縮応力も大きくなることが分かるなど、圧縮応力を受けた部位について、コンクリートの圧縮破壊の範囲、圧縮強度の低下の範囲、及び圧縮強度の低下の程度を判定することができる、という格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態におけるコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法を示す流れ図
図2】同診断方法において、コンクリート構造物の圧縮応力を受けた部位における発振子及び受振子の配置状態及び超音波速度の計測方法を示す斜視図
図3】同診断方法において、コンクリート構造物の圧縮応力を受けた部位(隔壁)の高さ位置と速度比との関係を示す図
図4】従来の載荷試験により得られたコンクリートの応力−ひずみ曲線を示す図
図5】ボックスカルバートモデルのコンクリート構造物の載荷試験から得られた診断結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。この実施の形態では、図5に示すボックスカルバートモデルのコンクリート構造物の、特に隔壁における圧縮応力を受けた部位の診断方法について例示する。この診断方法は、図1に示す超音波法を利用した各ステップを実施することにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定するものである。
【0013】
最初に、コンクリート構造物の圧縮応力を受けていない健全部に、発振子と受振子を所定の発振子・受振子間距離で配置する。この場合、隔壁の上下方向中間部の壁面に発振子と受振子を発振子・受振子間距離を例えば600mm程度として配置する。そして、発振子により超音波パルスを発振し、受振子により当該超音波パルスを受振して、この発振子と受振子との間の超音波の伝播時間から、この発振子及び受振子間の超音波速度を計測し、また併せて、受振した超音波の振幅などを計測する。このようにして隔壁の健全部における超音波速度データ及び振幅データを得る(ステップ1)。
【0014】
次に、ステップ1と同様の計測を、コンクリート表面の圧縮応力が集中する位置から健全部に向けて測定位置を所定の間隔で移動して順次行う。この場合、隔壁下部のハンチ部が圧縮応力の集中する場所である。したがって、図2に示すように、まず、ハンチ部C1に発振子1と受振子2を所定の発振子・受振子距離(例えば600mm)で配置して、この発振子1及び受振子2間の超音波速度を計測し、また併せて、受振した超音波の振幅を計測する。続いて、このハンチ部C1から上方に向けて、またこれとは反対に下方に向けて計測位置を所定の間隔、この場合、例えば50mm間隔で移動して、各計測位置で同様の計測を順次行い、各計測位置の発振子1及び受振子2間の超音波速度、及び当該受振した超音波の振幅を計測する。一般に、圧縮強度のピーク付近から微細なひび割れが生じ始め、ピークを過ぎるとひび割れが増大することが知られており、微細なひび割れが生じると、超音波はひび割れを迂回して進行するため、速度が低下することになる。このようにして隔壁の圧縮応力を受けた部位における超音波速度データ及び振幅データを得る(ステップ2)。
【0015】
次に、ステップ2により得られた各計測位置の超音波速度及び振幅をそれぞれ、ステップ1により得られた健全部の超音波速度及び振幅で除して、各計測位置の速度比及び振幅比を求める(ステップ3)。
【0016】
そして、ステップ3により得られた各計測位置の速度比及び振幅比の低下の度合いにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定する(ステップ4)。図3に隔壁の高さ位置と速度比との関係を示している。凡例は隔壁の傾きを表す層間変形角である。この図3から明らかなように、層間変形角が26/1000の場合、ハンチ部の速度比が75%までに低下し、その範囲はハンチ部の上方へ100mm程度まで、ハンチ部の下方へ50mm程度まで達していることが分かる。なお、層間変形角が0/1000の場合は、ハンチ部を含めて速度比が100パーセントであり、層間変形角が大きくなると、ハンチ部に集中する圧縮応力も大きくなることが分かる。また併せて、この部分のコンクリートのひずみを測定したところ、この部分のコンクリートのひずみは4000μ程度まで達しており、ポストピークであった。
【0017】
以上説明したように、このコンクリート構造物における圧縮応力を受けた部位の診断方法によれば、超音波法を利用し、コンクリート構造物の健全部に発振子及び受振子を所定の発振子・受振子間距離で配置して、これら発振子及び受振子間の超音波速度、及び当該受振した超音波の振幅を計測し、これと同様の計測を、コンクリート表面の圧縮応力が集中する位置から健全部に向けて計測位置を所定の間隔で移動して順次行い、各計測位置の発振子及び受振子間の超音波速度、及び当該受振した超音波の振幅を計測して、各計測位置の超音波速度及び振幅をそれぞれ、健全部の超音波速度及び振幅で除して得られる各計測位置の速度比及び振幅比を求め、この速度比及び振幅比の低下の度合いにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定するので、圧縮応力を受けた部位について、コンクリートの圧縮破壊の範囲、圧縮強度の低下の範囲、及び圧縮強度の低下の程度を判定することができる。
【0018】
なお、この実施の形態では、超音波法を利用し、健全部、各測定位置の超音波速度及び超音波の振幅を計測して、各計測位置の超音波速度及び振幅を健全部の超音波速度及び振幅で除して得られる各計測位置の速度比及び振幅比の低下の度合いにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定するようにしたが、健全部、各測定位置の超音波速度を計測し、各計測位置の超音波速度を健全部の超音波速度で除して得られる各計測位置の速度比の低下の度合いのみにより、コンクリートの圧壊の範囲及び程度を判定するようにしてもよく、このようにしてもコンクリートの圧縮破壊の範囲、圧縮強度の低下の範囲、及び圧縮強度の低下の程度を判定することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 発振子
2 受振子
C1 ハンチ部
図1
図2
図3
図4
図5