(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676100
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】ニアネットシェイプ焼結セラミックを用いた圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 9/12 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
G01L9/12
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2009-507749(P2009-507749)
(86)(22)【出願日】2007年4月24日
(65)【公表番号】特表2009-535622(P2009-535622A)
(43)【公表日】2009年10月1日
(86)【国際出願番号】US2007009858
(87)【国際公開番号】WO2007127170
(87)【国際公開日】20071108
【審査請求日】2010年4月22日
【審判番号】不服2013-6588(P2013-6588/J1)
【審判請求日】2013年4月10日
(31)【優先権主張番号】60/794,813
(32)【優先日】2006年4月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147968
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 由里子
(72)【発明者】
【氏名】シトラー フレッド シー
(72)【発明者】
【氏名】ガンセン カール アール
【合議体】
【審判長】
清水 稔
【審判官】
関根 洋之
【審判官】
酒井 伸芳
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−524545(JP,A)
【文献】
特開平3−215364(JP,A)
【文献】
特開平2−221146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサボディと、センサボディに取付けられた偏向可能な部品と、を有し、
偏向可能な部品は、検出されるべきパラメータに応答する、センサにおいて、
センサボディと偏向可能な部品は、酸窒化アルミニウムスピネルおよびアルミン酸マグネシウムスピネルの少なくとも1つからなるニアネットシェイプ焼結セラミックで形成され、
センサボディは、チャンバを有する第1の部分と、チャンバを有する第2の部分と、を含み、
第1の部分は、第2の部分中へ延びてこれに取付けられ、
偏向可能な部品が、第1の部分のチャンバと第2の部分のチャンバとの間に取付けられる、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
検出されるべきパラメータは圧力であり、
センサボディおよび偏向可能な部品は、少なくとも1つの圧力検出チャンバを構成する、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
センサは、容量型差圧センサからなり、
偏向可能な部品は、第1のチャンバと第2のチャンバとの間に位置決めされた中央ダイヤフラムを含み、
中央ダイヤフラムは、第1および第2のチャンバの中の流体圧力の関数として偏向可能である、
請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
焼結セラミックは、約350GPa(50.8×106psi)未満の弾性係数および約1.5MPa・m-1/2より大きい破壊靱性を有するセラミック材料からなる、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
金属温度センサは、センサボディの表面に固定される、請求項1に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。詳細には、本発明は、費用のかかる機械加工作業を最小限にするために、セルボディと、
ニアネットシェイプ焼成された焼結セラミックで作られたダイヤフラム部品と、を有する容量型圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
容量型圧力センサは、工業工程、航空宇宙産業、および他の制御および監視システムで広く用いられている。容量型圧力検出セルは、絶対圧力、ゲージ圧力、差圧、あるいはそれらの圧力の組み合わせを検出するように構成することができる。
【0003】
ある場合には、容量型圧力センサは、センサの金属部品に対して腐食性である流体の圧力を測定するのに用いられる。この問題を解決するのに用いられる1つの技術は、分離ダイヤフラムを用いて、圧力センサをプロセス流体から分離することにある。次いで、オイル充填が、圧力センサを分離ダイヤフラムに連結するので、分離ダイヤフラムに加えられた圧力がオイル充填を通して容量型圧力センサのダイヤフラムに伝達される。しかしながら、この分離技術は、圧力測定にエラーを導くことがある。
【0004】
容量型圧力センサは、金属、ガラス、サファイア、およびシリコンのような、様々な材料から製造されてきている。より低いオイル充填量を用いる、且つ、製造するのにより費用がかからない、より小さいセンサを提供するために、容量型圧力センサ(および特に差圧センサ)に対する改良の要望が絶えずある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
圧力センサは、セルボディおよびダイヤフラムのために
ニアネットシェイプ焼結セラミックを用いる。本用途に望ましい材料は、高破壊靱性を有する低ヤング率を示す焼結セラミックである。圧力チューブおよび電気コネクタのような金属部品を、焼結セラミック部品を焼成する前あるいは後に、焼結セラミック部品中に組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、セル半部12および14と、ダイヤフラム16と、によって形成された差圧圧力センサ10の断面図である。セル半部12および14と、ダイヤフラム16と、は、
ニアネットシェイプ焼結セラミックで形成される。
【0007】
図1に示す実施形態では、セル半部12およびダイヤフラム16が、第1のチャンバ18を形成し、セル半部14およびダイヤフラム16が、第2のチャンバ20を構成する。金属チューブ22は、圧力下の流体をチャンバ18に供給するために、セル半部12を通して延びる。同様に、金属チューブ24が、チャンバ20との流体連結を提供するために、セル半部14を通して延びる。セル半部は、蝋付け接合11によって接合される。チャンバ18の壁上の容量性プレート26およびチャンバ18に露出されたダイヤフラム16の面上のプレート28が、第1のコンデンサーC1を形成する。チャンバ20の壁上のプレート30およびチャンバ20に面するダイヤフラム16の面上のプレート32が、第2のコンデンサーC2を形成する。
【0008】
チューブ22および24のような金属部品を、セラミック部品を焼成するときに、セラミック部品に蝋付けしてもよいし、あるいは、焼成後に加えてもよい。同様に、焼成中あるいは焼成後に導線をセラミック材料に蝋付けしてもよい。
図1は、ダイヤフラム16上のプレート28および32とセンサ10の外部との間の接続をなす、導線34を示す。導線34を、セル半部14のエッチングチャネルの中に挿入してもよいし、所定の位置に保持して、ガラスフリットを用いて封止してもよい。これは、また、セラミック部品のための焼成工程の一部であってもよい。導線36が、プレート26とセンサ10の外部との間の接続をなす。導線38が、プレート30とセンサ10の外部との間の接続をなす。
【0009】
チャンバ18の充填流体とチャンバ20の充填流体との間の圧力差に依存して、ダイヤフラム16が偏向して第1および第2のコンデンサーの相対容量を変化させる。信号処理回路(図示せず)が、キャパシタンスC1およびC2を、差圧を表す測定値に変換する。
【0010】
温度センサ40が、圧力センサ10に取付けられるのがよい。温度センサ40は、厚膜熱電対あるいは同様のデバイスであるのがよい。リード線42および44は、温度センサ40を信号処理回路に接続する。ここに示すように、温度センサ40は、圧力センサ10の外側に取付けられる。それは、また、内部の表面に施されてもよい。
【0011】
セル半部12および14と、ダイヤフラム16と、を形成する材料としての焼結セラミックの使用は、顕著な利点を提供する。第1に、
ニアネットシェイプ成形製造工程を用いて、部品を製造することができる。セラミック部品を、未焼成の状態で、プレス、鋳造、あるいはモールド粉末から所望形状に形成する。次いで、それを、焼成する(炉の中で加熱する)ことによって、あるいはマイクロ波エネルギーを用いることによって緻密化する。出来た焼結セラミック部品は、本質的に最終製品の仕上形状および寸法を有する。製造は、
ニアネットシェイプ成形工程を用いてなされるので、所望の物理的寸法を得るために、表面仕上げ(すなわち研削)のみが要求される。
【0012】
セル半部12と14との間の連結として蝋付けを示すが、融着が、より厳密な公差を得ることができる技術を提供する。融着では、セル半部12および14は、互いにクランプされ、各部品のセラミック材料が、他方の部品の材料と融合する。融着を圧縮下に維持するために、セラミック材料よりも高い収縮率を有する金属クランプが、2つの部品が結合されている領域に配置されるのがよい。構造が室温まで冷えると、クランプが、融着を圧縮下に維持する。
【0013】
好ましい焼結セラミックの一例は、サーメット社(バーリントン、マサチューセッツ州)によって製造された、アルミニウム酸窒化物の透明な形態である、ALON(登録商標)と呼ばれる酸窒化アルミニウムスピネルである。ALON(登録商標)は、新しい透明な外装の形態として開発されてきた。それは、例えば、米国特許第4,520,116号に記載されている。圧力センサ用途に適した他のセラミックは、他の酸窒化アルミニウムスピネル、アルミン酸マグネシウムスピネル、酸化アルミニウム、および、イットリウム安定化、部分安定化ジルコニア(PSZ)を含む。焼結セラミック圧力センサダイヤフラムの好ましい機械的特性は、約1.5MPa・m
-1/2を超える破壊靱性および約350GPa(50.8×10
6psi)以下の弾性係数である。これらおよび他の酸化セラミックは、適当なバインダーを含有する粉末を、モールド内でプレスあるいは鋳造することによって、あるいは、ラピッドプロトタイピング/固形物フリー形成製造工程を用いることによって、
ニアネットシェイプ成形される。形成に続いて、部品を焼成して、一般に受け入れられているセラミック処理方法を用いて最終密度の
ニアネットシェイプに到達させる。また、等方加工プレスを、未焼成の形状を緻密化するために用いてもよい。部品を、別々に焼成し、金属化接合を一緒に蝋付けすることによって組み立ててもよいし、あるいはそれらを未焼成の状態で金属化し、全てのリード線および容量性電極を焼成の前に付着させて、単一の作業で焼成してもよい。ある場合には、部品を、マイクロ波エネルギーを用いて加工してもよい。
【0014】
図2は、
図1に示すように背中合わせの形態ではなく、並んだ形態を有する差圧センサ50を示す。差圧センサ50は、2つの並んだ個々のコンデンサーセンサセルを形成する、セル半部52および54と、ダイヤフラム56および58とを含む。金属チューブ60が、チャンバ62と64とを連結する。
【0015】
チャンバ62の壁上のコンデンサープレート66およびダイヤフラム56の内壁上のコンデンサープレート68が、第1のコンデンサーC1を形成する。導線67が、コンデンサープレート66とセンサ50の外部との間の接続をなす。導線69が、コンデンサープレート68とセンサ50の外部との接続をなす。
【0016】
同様に、チャンバ64の内壁上のコンデンサープレート70およびダイヤフラム58の内壁上のコンデンサープレート72が第2のコンデンサーC2を形成する。導線71は、コンデンサープレート70とセンサ50の外部との間の接続をなす。導線73は、コンデンサープレート72とセンサ50の外部との間の接続をなす。
【0017】
Oリング74および76は、ダイヤフラム56および58とプレート78との間の密封を提供する。流体が、プレート78とダイヤフラム56および58の各々の間に導入される。流体は、圧力を分離ダイヤフラムから伝達する充填流体であってもよいし、あるいはプロセス流体自体でもよい。
【0018】
コンデンサープレート66、68、70および72のような金属部品は、ダイヤフラム56および58を偏向させる圧力を加える流体に曝されない。従って、差圧センサ50の並んだ形態は、分離ダイヤフラムを除去するオプションを提供する。
【0019】
Oリング74および76は、ダイヤフラム56および58の外面の溝に取付けられる。それらの溝は、未焼成のセラミックをダイヤフラム56および58に形づくる工程中に、形成される。
【0020】
ニアネットシェイプ焼成セラミック圧力センサは、また、製造工程の一部として温度センサの製造を可能にする。金属温度センサ材料を、
図1のセル半部12あるいは14、あるいは
図2のセル半部52および54の内面あるいは外面上に金属化するのがよい。温度センサを金属化ステップで形成することによって、高価な別々の部品を除去することができる。
【0021】
図2に示す並んだ形態は、また、ライン圧力と差圧の両方を測定させることの潜在性を提供する。これは、センサ全体のサイズの減少、および分離ダイヤフラムおよびオイル充填を必要としない構造のオプションとともに達成することができる。
【0022】
本発明は、バッチ製造にうまく適合し、複雑な機械加工あるいは新しい設備、化学薬品、および半導体タイプのバッチ製造と関連した特別な安全要件を必要としない。
【0023】
本発明を、好ましい実施形態を参照して記載してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、形態および細部に変更をすることができることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】2つの焼結セラミックセル半部および焼結セラミック中央ダイヤフラムによって形成された差圧セルの断面図である。
【
図2】並んだ配置に2つの焼結セラミックセル半部を含み、セル半部毎に別々の焼結セラミックダイヤフラムを有する差圧セルの断面図である。