(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676102
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】電位センサ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20150205BHJP
G01R 33/36 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
A61B5/05 390
G01N24/04 530Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-520039(P2009-520039)
(86)(22)【出願日】2007年7月13日
(65)【公表番号】特表2009-543643(P2009-543643A)
(43)【公表日】2009年12月10日
(86)【国際出願番号】GB2007002645
(87)【国際公開番号】WO2008009906
(87)【国際公開日】20080124
【審査請求日】2010年7月2日
(31)【優先権主張番号】0614261.6
(32)【優先日】2006年7月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】502096808
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ サセックス
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】プランス ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ハーランド クリストファー
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−511174(JP,A)
【文献】
特開平08−178986(JP,A)
【文献】
特開2006−098158(JP,A)
【文献】
特開昭61−082104(JP,A)
【文献】
特開2000−065878(JP,A)
【文献】
特表2005−521048(JP,A)
【文献】
特開平04−121651(JP,A)
【文献】
特開平09−051884(JP,A)
【文献】
米国特許第3404341(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験下の試料と容量結合し、測定信号を生成するように構成された少なくとも1つの検出電極と、
入力として前記測定信号を受信し、出力として増幅された検出信号を供給するように構成されたセンサ増幅器と、
小電位に対する前記検出電極による検出の感度を向上するために、高入力インピーダンスを前記センサ増幅器に提供する入力インピーダンス増加手段と、
前記センサ増幅器の信号対雑音比を向上するために、前記センサ増幅器の前記出力から、単一の周波数を含む可干渉性のフィードバック信号であってオシレータを利用して生成した前記可干渉性のフィードバック信号を前記センサ増幅器の入力端子に与えるフィードバック手段とを備え、
前記フィードバック手段が、前記入力インピーダンス増加手段と協同し、前記センサ増幅器の入力インピーダンスが前記可干渉性のフィードバック信号の前記周波数および位相に対して増加する、
電位センサ。
【請求項2】
前記入力インピーダンス増加手段は、前記可干渉性のフィードバック信号を用いて、ブートストラップ、保護化および中和化の少なくとも一つを更に提供するために配置される、請求項1に記載の電位センサ。
【請求項3】
前記測定信号が周期的である請求項1又は2に記載の電位センサ。
【請求項4】
前記センサ増幅器は、選択された信号周波数帯域において前記信号対雑音比を上昇させ、前記測定信号を増幅するために差動構成される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電位センサ。
【請求項5】
前記オシレータは、測定されている前記試料を励起する駆動信号を提供し、
前記可干渉性のフィードバック信号は、前記オシレータから導き出される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電位センサ。
【請求項6】
前記可干渉性のフィードバック信号として用いる基準信号を提供するために励起に関わる前記オシレータから前記駆動信号を減衰させる減衰器を更に備える、請求項5に記載の電位センサ。
【請求項7】
前記オシレータは、前記センサ増幅器の前記出力から前記可干渉性のフィードバック信号を導き出すための位相ロックループオシレータを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電位センサ。
【請求項8】
前記位相ロックループオシレータは、前記センサ増幅器の前記出力に基づいて、ビートが前記測定信号と共に見出されるまで周波数掃引する構成を備える、請求項7に記載の電位センサ。
【請求項9】
前記オシレータは、測定されている前記試料を励起するために駆動信号を提供し、
前記フィードバック手段は、
前記センサ増幅器の出力端子から前記入力端子に至るまでのフィードバックループと、
前記フィードバックループ内に配置され、前記可干渉性のフィードバック信号および前記励起のための外部信号源からの励起信号を加算し、前記試料へ供給するために設けられた加算器と、
を更に備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、顕微鏡による画像解析およびスペクトル分析などの医療用途および顕微鏡用途、ならびに核磁気共鳴(NMR)イメージングおよび分光法などのNMR用途などの様々な用途において、電位を測定するために使用する電位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
高感度の電気力学的測定機器を作製するために、入力インピーダンスを高くすることより、装置を作動させるのに必要とする入力信号の電力を少なくすることが通例である。
しかし、非常に高い入力インピーダンスを有する電子回路は不安定な傾向があり、したがって、実際の機器は通常、必要な程度の感度を成し遂げて、所望の入力インピーダンスを提供し、許容可能な安定度を確実にすることとの間において妥協する。
【0003】
特許文献1においては、電気力学センサが開示されており、複数の異なる回路技術が組み合わされ、従来の電気力学センサと比較して、けた違いの感度の改良を達成し、同時に十分な安定性を維持しており、比較的熟練していない作業者でも通常の状態において測定することが可能となっている。
この以前の用途によれば、電気センサは高い入力インピーダンス電位計を備えて提供され、それは試験中において対象物から生じている小電位を測定するのに適しており、そして、それは対象物との直接の電気接触を有しない少なくとも1つの入力用探針を使用する。
この発明の電位計の回路装置は、増幅器から成る。この増幅器は、この増幅器の出力からのフィードバックを提供し、小電位に対しての感度を累積的に向上するように構成され、他方でそれと関連する電界を乱さない、補助回路を組み合わせたものを含む。この補助回路は、保護化、起動(bootstrapping)、中和化、電源レールのドリフトの修正、およびオフセット修正のうちの少なくとも2つを提供する。
【0004】
これらの特性は高い入力インピーダンスおよび比較的安定した動作を有するセンサを提供する。しかしながら、試験下における信号源または試料との微弱の容量結合またはそれによって生じる微弱な信号が存在する状況においては、ノイズの問題が残っており、正確な信号測定を阻止または妨害する恐れがある。
このことは、例えば、1つまたは各探針が人体との物理的接触がない遠隔非接触モードで、かつ通常、1pFよりも小さい微弱な容量結合におけるなど、微弱な容量結合および非常に精度の高い信号測定が必要不可欠であるような所定の医療および顕微鏡の用途の場合に特に問題となる。
【0005】
より詳細には、試験下の試料とセンサ電極との間の微弱な結合が存在する状況での用途において、試料との容量結合は、センサの入力容量と同程度またははるかに小さい。
この場合、センサによって受信された測定信号は、結合容量および入力容量によって形成された容量性分圧器によって減衰され、捕捉するのが難しい。
【0006】
さらに、フィードバック信号として、増幅器からの出力信号を用いることは、その信号が広帯域信号であるがゆえに不利であり、良好でない信号対雑音比を生じてしまう。それゆえ、ノイズは、フィードバック信号と共に入力される増幅器へ帰還され、さらに粗悪な信号対雑音比を生じさせる。
【0007】
したがって、試験下の試料と微弱な容量結合する場合においても正確な信号測定を行う可能性を向上させる電位センサに対する著しい必要性が存在する。
【0008】
そのような必要性は、信号測定の精度がきわめて重要な場合において特に顕著である。
【0009】
また、信号対雑音比を実質的に改善する電位センサに対する著しい必要性も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願番号WO 03/048789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の問題を克服し、高精度の信号測定を可能にする新しい電位センサを提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、少なくとも以下に記載の好適な実施形態において、信号対雑音比が著しく向上される電位センサを提供することを目的とする。
【0013】
本発明はさらに、電位センサにおいて、信号対雑音比を向上させるための様々な技術およびそれらの技術の組合せを提供することを目的とする。
【0014】
より詳細には、少なくとも以下に記載の好適な実施形態において、本発明は、可干渉性の狭帯域フィードバック信号を用いて電位センサにおいて信号対雑音比を改善するための様々な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、試験下の試料と容量結合し、測定信号を生成するように構成された少なくとも1つの検出電極と、入力として前記測定信号を受信し、出力として増幅された検出信号を供給するように構成されたセンサ増幅器と、低減された電位に対する前記電極の感度を向上するために、高い入力インピーダンスを前記センサ増幅器に提供する入力インピーダンス増加手段と、前記センサの信号対雑音比を向上するために、可干渉性のフィードバック信号を前記センサ増幅器の入力端子に与えるフィードバック手段とを備える電位センサが提供される。
【0016】
従って本発明は、可干渉性のフィードバック信号を与えることによって信号対雑音比を改善することに関する。
【0017】
電気力学センサの通常の慣行とは対照的に、フィードバック信号は、センサの出力から直接に引き出される広帯域信号ではなく、フィードバックのために利用可能な可干渉性の信号であり、これは著しく信号対雑音比を改善する。
【0018】
1つの可能性によれば、フィードバック信号は単一の周波数の最も単純な場合を含み、フィードバック手段が構成され、センサの入力インピーダンスは、フィードバック信号のその正確な周波数および位相においてのみ上昇される。
すなわち、測定信号を増幅させるために、センサは差動構成され、信号対雑音比を高める。
この場合、センサはフィードバック信号の周波数に合わされて、他の周波数において効果的なフィードバック信号を欠いており、センサの感度が最も低いため、他の全ての周波数を排除する。
【0019】
有利にも、可干渉性のフィードバック信号が用いられてもよく、所望されるように、起動、保護化、および中和化を提供する。
【0020】
本発明は、増幅および出力のために増幅器へ供給するための測定信号を生成するために、試料から周期信号が検出される状況において特に適切である。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、電位センサは、測定される試料を励起するために駆動信号を提供する外部信号源を備え、可干渉性のフィードバック信号はこの外部信号源から引き出される。
励起するためにこのような外部信号源を用いることは、多くの用途、例えば、物質の誘電特性を顕微鏡などで画像化することなどにおける分析用途においては通常のことである。
この例において、外部信号源による励起から生じる励起信号は適切に減衰されて、フィードバック信号として使用される基準信号を提供する。
【0022】
本発明の別の実施形態において、測定される試料は自己励起であってよく、この場合、外部からの基準信号は利用可能ではない。
自己励起の試料の一例は、電子回路の自己発振であってもよい。
この場合、位相ロックループ部を提供して、センサ増幅器の出力から可干渉性のフィードバック信号を引き出してもよい。
位相ロックループが作動する限定された帯域のために、全体の信号対雑音比における相当な改善がこの事例において可能である。
【0023】
また、本発明は、増幅および出力のために増幅器へ供給するための測定信号を生成するために、測定される試料を駆動または励起するようにセンサを設計する場合、および試料の帯電を除去し、試料上の最小信号を維持することが所望される場合に適切である。
この例は、大きな電場が、測定される小さな半導体デバイスまたは試料の表面を損傷または破壊するおそれのある、顕微鏡の用途の場合などである。
【0024】
そのようなセンサは、ゼロ電圧モードセンサとして記載してもよく、この例におけるセンサは有利にも、測定される試料を励起する駆動信号を提供する外部信号源、センサ増幅器の出力から入力へのフィードバックループ、およびフィードバックループに配置された電圧加算器を備え、フィードバック検出信号、および励起のための外部信号源からの励起信号が、試料への供給のために、電圧加算器へ供給される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、添付の図面を参照して、例示により以下でさらに記載する。
【
図1】従来技術に係る電気力学センサの回路図である。
【
図2】中和化および変形を用いた、本発明に係る電気力学センサの第1の実施形態のブロック図である。
【
図2a】中和化および変形を用いた、本発明に係る電気力学センサの第1の実施形態のブロック図である。
【
図3】中和化に加え、保護化および起動を用いた、
図2の回路の詳細への変形の回路図である。
【
図4】中和化および位相ロックループを用いた、本発明に係る電気力学センサの第2の実施形態のブロック図である。
【
図5】ゼロ電圧モードセンサを含む、本発明に係る電気力学センサの第3の実施形態の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(従来技術)
図1を参照し、特許文献1に開示される電気力学センサをまず記載する。
【0027】
図1に示すように、特許文献1に係る電気力学センサ10は、センサ増幅器14の非反転型入力端子に接続される検出電極12を備える。
使用の際、検出電極12は、センサ増幅器14に対する入力として測定信号を供給し、このセンサ増幅器14は入力として増幅された検出信号を供給する。
【0028】
検出電極12は、導電経路(stem)18上に搭載された電極ディスク16を含み、この電極ディスク16は表面が酸化された層20を備える。
センサ増幅器14は2つの抵抗26、28によって提供された固定された入力抵抗24を有し、電極12と増幅器14の非反転型入力端子との間に接続され、増幅器14に対して安定した入力バイアス電流を提供する。
実際には、入力抵抗24は、一般に100GΩまたはそれ以上の高抵抗値を有する。
また、センサ増幅器14は、電極12および抵抗26を含む入力回路を物理的に囲み、増幅器14の出力によって駆動されるシールドを提供するガード30を有する。
したがって、浮遊容量は、入力検出電極12上と同じようにガードまたはシールド30上に電位を維持することによりこの正のフィードバック技術によって軽減される。
【0029】
ガード30に加えて、さらに回路部品には、増幅器14の出力電圧を抵抗24の中間点に印加する(2つの抵抗26、28の間にて生じる)ように配置されたコンデンサ32を備えて、起動のために提供され、ならびに増幅器14の非反転ターミナルに接続されたコンデンサ34を含む別のフィードバック部を備えて、中和化(neutralization)のために提供される。
さらなる抵抗36、38および電位差計40は、特許文献1に記載されるように、中和点を所望のレベルに設定するために提供される。
【0030】
<基準信号源あり中和化駆動>
図2を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
中和化は、特許文献1に記載されるように、
図1の電気力学センサの入力インピーダンスを著しく高めるために用いてもよいが、この技術によっては信号対雑音比は向上しない。なぜならば、センサ出力において存在するノイズはセンサ入力に帰還されるからである。
【0031】
例えば顕微鏡の用途などにおいて、中和化が重要である多くの状況において、試料は外部から与えられた信号によって励起される。
これらの場合、基準信号は、試料に対する駆動信号を提供するオシレータから利用可能であり、この基準は、
図2に示すように、センサに対する中和化信号を提供するために用いてもよい。
【0032】
図2の電気力学センサは、
図1のセンサと同様の部品のうちの一部を含む。
したがって、同様の部分は同じ参照符号によって示されるので、さらには記載しない。
図に示すように、センサの検出電極12は入力端子V
inによって表され、試料に対する結合容量を表すコンデンサ44によって測定される試料42と結合される。
試料は基準オシレータ46によって駆動または励起され、AC測定信号は、オペアンプ14の非反転入力端子と接続されるセンサ入力端子V
inにおいて生成される。
その結果、アンプ14は出力端子V
out1において増幅されたAC検出信号を供給する。
出力端子V
out1は抵抗48、50によって接地され、実効値(RMS:root mean square)コンバータ回路52およびローパスフィルタ54によって減衰器56に接続され、この減衰器から、基準信号V
nがフィードバックのために取得される。
これらの回路は、中和化を提供するために、増幅器14の非反転入力に対するコンデンサ34によって帰還される基準信号V
nのレベル制御のために用いられる。
この正のフィードバックループのゲインは制御可能であるので、安定した動作の限界範囲内で最大の中和化を達成することができる。
【0033】
従って、
図2の実施形態は自動ゲイン制御(AGC)のフィードバックループを含み、発振を防ぐために中和化信号V
nの強さを制御する。そのフィードバック信号の強さは制御出力端子V
out2におけるセンサ出力信号の強さによって制御される。
ここで、フィードバックループはRMSコンバータ回路52、ローパスフィルタ54、および減衰器56を含む。
センサV
out2の制御出力はローパスフィルタ54と減衰器56との間のAGCフィードバック線から取られ、基準および測定信号周波数は同一であるので、そのAGC制御電圧V
out2は、増幅器14に供給されるAC測定信号の強さから引き出される試料42についての情報を提供する、擬似(quasi)DC制御信号である。
【0034】
この配置構成は、与えられた信号の周波数の場合、および定位相の部品の場合のみに、センサの入力インピーダンスを著しく上昇させる効果を有し、改善場された信号対雑音比を提供する。
【0035】
図2を参照して記載した技術を拡張すると、
図2aに示すスイープ制御部58の制御下において、基準オシレータ46の周波数をスイープすることができる。
実際には、オシレータの周波数をスイープするためのスイープ制御部58は、適切なインタフェースを介してデジタルで周波数を制御するオシレータ46(図に示す)または適切なFM入力を介して信号源を周波数変換するための構成(図に示さず)に接続されたデジタル制御回路、あるいは、スイープされた入力を介して作動周波数を設定するために独立して引き出されるアナログ擬似DCレベルを用いる回路(図に示さず)のいずれかであってもよい。
上述のように、基準および信号周波数は同一なので、制御出力端子V
out2におけるAGC制御電圧は擬似DC信号である。
これは、測定された信号の強さと共に周波数の関数として変化して、基準オシレータの周波数がスイープされると、スペクトルプロットを提供するために用いられてもよい。
この配置構成は、作動中、スペクトラムアナライザに類似する。
【0036】
<基準信号源ありセンサ全駆動>
外部の基準信号源46が中和化信号V
nを提供するために用いられる、
図2の実施形態は、保護(guarding)および起動のそれぞれに適切な信号V
g、V
bを提供し、信号対雑音比をさらに相応に改善するために、さらに拡張されてもよい。
この変形を
図3に示し、オシレータ46および減衰器56からの基準信号は、保護信号V
gとして、電極12を囲むシールドまたはガード30に対して帰還される。
さらに、基準信号はコンデンサ32および2つの抵抗26、28によって、増幅器14の非反転入力端子へ、起動信号V
bとして帰還される。
各々のフィードバック技術に必要とされる、個々の信号の相対的なレベルは、
図3に示すように、外部の基準信号源またはオシレータ46によって駆動される独立した一連の分圧器60から取得される。
フィードバック信号の全体のレベルは、
図2に記載するように、AGCループの使用を介して、出力信号V
out2の強さに基づいて全体的に設定される。
【0037】
<基準なし中和化駆動>
図2および
図3の実施形態における別の変形例では、位相ロックループオシレータを用いて、
図4に示すように、駆動信号および中和化信号を駆動させる。
この場合、試料は自己励起であり、駆動オシレータ46は存在せず、駆動オシレータ46からのローカル基準信号は利用可能でない。
しかしながら、向上された信号対雑音比は、増幅器14によって出力された検出信号に対して位相ロックされたセンサにオシレータを導入することによって達成してもよい。
【0038】
図4の実施形態は、増幅器14の出力端子V
out1に接続され、オシレータ64から信号V
out1および出力信号を受信するように構成された周波数逓倍器を含む、位相ロックループオシレータ61を備える。
増幅器66は、オシレータ64によって出力される信号を周波数変調させるために、周波数逓倍器62からの出力をオシレータ64に帰還する。
その結果、増幅された検出信号はオシレータ64からの出力と混合され、位相ロックループを形成する。
【0039】
作動中では、オシレータ64は、ビートが測定信号と共に見出されるまで周波数において掃引(スイープ)し、この位置において掃引が止まる(frozen)。
その理由は、試料とオシレータ64との間に定位相関係が存在しないからであり、ビートは低周波数波形の形をとり、位相ロックが達成される場合、DCになる。
このDC信号はセンサの全体出力V
out2として出力され、AGC信号として用いられる。AGC信号の強さは中和化のために用いられるフィードバック信号の強さを制御する。
このために、DC信号は減衰器56およびコンデンサ34によって、増幅器14の非反転入力端子に対して帰還されて、中和化信号を提供する。
使用の際、位相ロックループオシレータ61は、測定信号が獲得され、位相ロックループ信号を帰還して、センサの入力インピーダンスを、この周波数のみにおいて向上するまで、作動中、掃引する。
これは、増幅器入力へ帰還される広帯域ノイズなしの信号周波数において入力インピーダンスを高めるのに役立つ。
【0040】
図4の実施形態の第1の変形において、保護信号および起動信号は、
図3に示すものと類似する回路特性を用いて、位相ロックループオシレータ61の出力から引き出されてもよく、信号対雑音比をさらに相応に改善する。
【0041】
図4の実施形態のさらなる変形例において、オシレータ64はさらに、
図2の実施形態の場合と同様に、試料を励起するための駆動出力を供給してもよい。
【0042】
<ゼロ電圧モードセンサ>
ここで
図5を参照すると、例えば、試料の帯電が除去される必要のある場合における使用について、本発明のさらなる実施形態を説明する。
一例は、試料およびセンサの相対的な動きによって生じる問題が最小限にされる必要がある場合である。
別の重要な例は、顕微鏡の用途においてであり、大きな電場が試料の表面を損傷する恐れがある場合である。
再び、この実施形態は、前述の実施形態と同様の回路特性の一部を用いており、同様の部分は同じ参照符号によって示され、さらには記載しない。
【0043】
本実施形態によれば、試料42は、加算器72を介してオシレータ70によって励起される。また、この加算器72は増幅器14の出力端子V
out1から帰還された検出信号を受信する。
電圧加算器72を用いてフィードバックループを閉じることによって、僅かなエラー信号のみが試料42上に表れることを確保することが可能である。
出力端子V
out1における検出信号は、さらなる増幅器74によって、電圧加算器72に帰還され、この増幅器74は最適動作のために、ループゲインおよび時定数を設定するために用いられる。
従って、信号対雑音は試料上の大信号(large signal)が存在することによって生じ得るアーチファクト(artifact)を除去することによって向上する。
【0044】
本実施形態において、オシレータ70が再び用いられ、
図2に示すように、フィードバックのための基準信号を提供する。
簡略化のために、中和化に必要とされる特性のみが
図5に示されるが、もちろん保護化および起動もまた、
図3を参照して記載されたように、用いられてもよい。
これらの全ての場合において、保護信号、起動信号、中和化信号は可干渉性の信号源70から引き出され、前述のように、これが信号対雑音比を向上させる。
【0045】
図5の実施形態の使用は、試料42が外部からの信号を用いて励起される場合に限定される。