特許第5676106号(P5676106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676106
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】触媒系及び重合方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/646 20060101AFI20150205BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   C08F4/646
   C08F10/00
【請求項の数】26
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2009-537174(P2009-537174)
(86)(22)【出願日】2007年11月13日
(65)【公表番号】特表2010-509484(P2010-509484A)
(43)【公表日】2010年3月25日
(86)【国際出願番号】US2007023749
(87)【国際公開番号】WO2008060512
(87)【国際公開日】20080522
【審査請求日】2010年9月7日
(31)【優先権主張番号】60/858,824
(32)【優先日】2006年11月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599168648
【氏名又は名称】ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ナタラジャン・ムルガナンダム
(72)【発明者】
【氏名】ジーバン・アビチャンダニ
(72)【発明者】
【氏名】カーステン・エイ・テリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘマント・ジー・パテル
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・ロドリゲス
【審査官】 福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−520283(JP,A)
【文献】 米国特許第05393851(US,A)
【文献】 特開2002−053607(JP,A)
【文献】 特表平11−501342(JP,A)
【文献】 特表2001−501987(JP,A)
【文献】 特開平03−121106(JP,A)
【文献】 米国特許第04522982(US,A)
【文献】 特開2005−068424(JP,A)
【文献】 特表2005−509701(JP,A)
【文献】 特表2004−506745(JP,A)
【文献】 特開平06−287212(JP,A)
【文献】 特開2002−249508(JP,A)
【文献】 特開2005−290098(JP,A)
【文献】 特表2000−506212(JP,A)
【文献】 特開平08−301916(JP,A)
【文献】 特開平08−245714(JP,A)
【文献】 特開平07−002918(JP,A)
【文献】 特表2004−521158(JP,A)
【文献】 特表2007−522334(JP,A)
【文献】 特表2003−513113(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0256280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンの重合方法であって、
(a)多峰型触媒系を準備し、ここで、該多峰型触媒系はビスアミド触媒系及びメタロセン触媒系を含み;
(b)該多峰型触媒系を1℃未満の制御された温度で5日を超えて保存し;
(c)該多峰型触媒系とC2〜C4α−オレフィンよりなる群から選択される単量体とを重合過程において接触させ;及び
(d)多峰型重合体を生成させること
を含むオレフィンの重合方法。
【請求項2】
前記ビスアミド触媒系が第15族元素含有金属触媒化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビスアミド触媒系は、第3〜14族金属原子が少なくとも1個の陰イオン性脱離基に結合し、かつ、少なくとも2個の第15族原子にも結合してなる金属触媒化合物を含み、ここで、該第15族原子の少なくとも1個は、C1〜C20炭化水素基、ヘテロ原子含有基、珪素、ゲルマニウム、錫、鉛、燐又はハロゲンであることができる別の基を介して第15又は16族原子にも結合しており、該第15又は16族原子は、何にも結合していなくてもよく、又は、水素、第14族原子含有基、ハロゲン若しくはヘテロ原子含有基に結合していてもよく、また、該2個の第15族原子のそれぞれは、環状基にも結合していてよく、また、水素、ハロゲン、ヘテロ原子又はヒドロカルビル基若しくはヘテロ原子含有基に適宜結合していてもよい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多峰型触媒系が噴霧乾燥触媒混合物を含み、ここで、噴霧乾燥触媒混合物は、ビスアミド触媒化合物、メタロセン触媒化合物、活性剤及び残留溶媒を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記噴霧乾燥触媒混合物が前記ビスアミド触媒化合物及び前記メタロセン化合物を併せて1〜3重量%含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記噴霧乾燥触媒混合物が前記活性剤を30〜50重量%含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記噴霧乾燥触媒混合物が前記シリカ充填剤を50〜70重量%及び前記残留溶媒を2〜4重量%含む、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記噴霧乾燥触媒混合物を液体に分散させて触媒混合物懸濁液を形成させ、ここで、該液体は、オイル及びヘキサン又は97℃を超えるASTM D86の沸点を有する高純度イソパラフィン系溶媒を含む、請求項4〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記触媒混合物懸濁液が前記噴霧乾燥触媒混合物を15〜30重量%含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒混合物懸濁液が前記オイルを60〜70重量%含み、前記ヘキサン又は97℃を超えるASTM D86の沸点を有する高純度イソパラフィン系溶媒を20重量%未満含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記制御温度が−9℃未満である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記多峰型触媒を少なくとも30、60又は100日間保存する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
(a)前記接触工程を60℃を超える温度及び200psig〜400psigの圧力で実施し;及び
(b)老化した触媒の生産性が未使用の触媒の生産性の少なくとも75%、85%又は90%である、
請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記接触工程で生成された老化触媒重合体の高分子量部分が未使用触媒重合体の高分子量部分の少なくとも85%又は90%である、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
生成された多峰型重合体の生成物特性を該多峰型触媒系の予想老化特徴応答を使用して予測し、ここで、該予想老化特徴応答は触媒生産性応答、水素応答、共単量体応答又は多峰型触媒系の共単量体応答である、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記予想老化特徴応答を加速老化方法を使用して決定し、しかも該加速老化方法がハイスループット重合ユニットを使用する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
次の工程:
(a)ビスアミド触媒系の第1老化特徴応答を決定し;
(b)メタロセン触媒系の第2老化特徴応答を決定し;及び
(c)第1老化特徴応答と第2老化特徴応答とを組み合わせて多峰型触媒系の予想老化特徴応答を生成すること
を更に含み、ここで、
(a’)前記第1老化特徴応答は時間に応じたビスアミド触媒系の第1触媒生産性応答であり、前記第2老化特徴応答は時間に応じたメタロセン触媒系の第2触媒生産性応答であり、前記予想老化特徴応答は時間に応じた前記多峰型触媒系の老化触媒生産性であり;
(b’)該第1老化特徴応答は時間に応じた該ビスアミド触媒系の第1分子量分布応答であり、該第2老化特徴応答は時間に応じたメタロセン触媒系の第2分子量分布応答であり、該予想老化特徴応答は、該多峰型触媒を使用する、時間に応じた予想分子量分布応答であり;又は
(c’)該第1老化特徴応答は時間に応じたビスアミド触媒系の第1メルトインデックス応答であり、第2老化特徴応答は時間に応じたメタロセン触媒系の第2メルトインデックス応答であり、該予想老化特徴応答は時間に応じた多峰型触媒系の予想メルトインデックス応答である、
請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記予測生成物特性が多峰型重合体のメルトインデックス、触媒残留物の含有量、分子量分布、高分子量成分のパーセンテージ又は低分子量成分のパーセンテージである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項19】
多峰型触媒系の老化特徴応答のモデルを一次分解又は二次分解の仮定に基づき策定する、請求項15〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
多峰型触媒の老化の制御方法であって、
(a)ビスアミド触媒系及びメタロセン触媒系を含む多峰型触媒系を準備し;及び
(b)該多峰型触媒系を携帯型容器内で輸送すること
を含み、ここで、該携帯型容器を−9℃未満の制御温度で保持する、多峰型触媒の老化の制御方法。
【請求項21】
前記ビスアミド触媒系が第15族元素含有金属触媒化合物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ビスアミド触媒系は、第3〜14族金属原子が少なくとも1個の陰イオン性脱離基に結合しかつ少なくとも2個の第15族原子にも結合してなる金属触媒化合物を含み、ここで、該第15族原子の少なくとも1個は、C1〜C20炭化水素基、ヘテロ原子含有基、珪素、ゲルマニウム、錫、鉛、燐又はハロゲンであることができる別の基を介して第15又は16族原子にも結合し、該第15又は16族原子は、何にも結合していなくてもよく、又は、水素、第14族原子含有基、ハロゲン若しくはヘテロ原子含有基に結合していてもよく、また、該2個の第15族原子のそれぞれは、環状基にも結合していてよく、また、水素、ハロゲン、ヘテロ原子又はヒドロカルビル基若しくはヘテロ原子含有基に結合していてもよい、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
次の工程:
a)多峰型触媒系を制御温度で保存した後に該多峰型触媒系を温め;及び
b)該多峰型触媒系を撹拌してから該多峰型触媒系と単量体とを接触させること
をさらに含む、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記多峰型触媒系を温めた後に多峰型触媒系を撹拌する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記多峰型触媒系を少なくとも10℃に温めてから多峰型触媒系を撹拌する、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記多峰型触媒系を少なくとも24時間撹拌する、請求項24又は25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年11月14日に出願された米国特許出願第60/858,824号の利益を主張する。その開示を参照により含めるものとする。
【0002】
発明の分野
概して、本発明は、触媒系を使用してオレフィンを重合させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
多峰型分子量分布で製造された重合体は、ユニークな生成物特性を付与する。多峰型生成物、特に二峰型生成物は、様々な重合体を混合させる、一連の反応条件下で多峰型重合体を生じさせる及び単一の反応器条件下で異なる触媒を反応させるなどの様々な方法によって製造できる。経済的に成り立つことが分かっている方法の一つは、触媒系が1種以上の触媒又は触媒成分(つまり、事実上重合プロセスの間に単量体を重合させるための1以上の活性部位を与えるもの)を含む多峰型触媒系を製造することである。反応装置に供給されたときに、それぞれの触媒成分は同時に、異なる生成物特性を有する重合体成分を生成する。最終的に、別個の生成物の利点を有する重合体組成物となる。
【0004】
米国特許第6,605,675号、同6,846,886号、同6,956,089号、同6,689,847号、同6,274,684号、同6,841,631号、同6,894,128号、同6,534,604号並びに国際公開第WO2002/046243号及びWO2001/030861号には、概して、多峰型触媒系を製造するための方法及び技術と、これらの多峰型触媒系により重合するための方法及び技術とが記載されている。例えば、これらの文献は、第15族元素含有金属化合物(ビスアミド化合物)とメタロセン化合物との組合せを含む二峰型触媒組成物を検討している。これらの多峰型触媒系の利点の一つは、分子量スプリット比(生成された高分子量重合体対低分子量重合体の比)にある。しかしながら、その触媒系の生産性及びこれらの多峰型触媒で製造された重合体の分子量スプリット比は、この多峰型触媒の老化による分解により大きな影響を受ける可能性がある。
【0005】
「老化」とは、通常、経時的に触媒が失活すること又は経時的に触媒系の生産性が失われることであると説明されている。この問題は、当該触媒系が異なる速度で老化する2種以上の触媒成分を含むときにはさらに悪化する。この老化の程度は、通常、所定の触媒バッチの活性や生産性を長期間にわたり測定することによって確認される。触媒系は、所定の期間、例えば数日又は数ヶ月にわたってそのそれぞれの触媒成分が全体的に又は部分的に変化し得るので、この現象を検討するのには、通常、時間とかなりの資金とが必要である。さらに、有意義な結果を得るためには、複数の試料及び重合試験が必要である。
【0006】
触媒系を試験するための様々な方法及びシステムが開発されている。例えば、Brummer,Oliver外,「High−Throughput Screening Applied To Process Development」,Handbook of Combinatorial Chemistry,第2巻,2002,864−884頁、Boussie,T.R.外,「A Fully Integrated High−Throughput Screening Methodology for the Discovery of New Polyolefin Catalysts:Discovery of a New Class of High Temperature Single−Site Group (IV) Copolymerization Catalysts」,Journal of the American Chemical Society (2003),125(14),第4306−4317頁、Murphy,Vince外,「High−Throughput Approaches For The Discovery And Optimization Of New Olefin Polymerization Catalysts」,Chemical Record(2002),2(4),第278−289頁及びBoussie T.R.外,「A Fully Integrated High−Throughput Screening Methodology For The Discovery Of New Polyolefin Catalysts:Discovery Of A New Class Of High Temperature Single−Site Group(IV) Copolymerization Catalysts」,Journal of the American Chemical Society(2003),125(14),第4306−17頁には、触媒系の開発及び評価においてハイスループットスクリーニング方法及び同装置を使用する方法が一般的に検討されている。また、米国特許第6,440,745号、米国特許出願公開第2003/161763号並びに国際公開第WO1999/064160号、WO2001/098371号及びWO2000/009255号でも様々な試験方法が検討されている。
【0007】
他の背景技術の文献としては、WO2005/068076号、WO2006/022918号及びWO2006/086104号が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,605,675号明細書
【特許文献2】米国特許第6,846,886号明細書
【特許文献3】米国特許第6,956,089号明細書
【特許文献4】米国特許第6,689,847号明細書
【特許文献5】米国特許第6,274,684号明細書
【特許文献6】米国特許第6,841,631号明細書
【特許文献7】米国特許第6,894,128号明細書
【特許文献8】米国特許第6,534,604号明細書
【特許文献9】国際公開第2002/046243号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2001/030861号パンフレット
【特許文献11】米国特許第6,440,745号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2003/161763号明細書
【特許文献13】国際公開第1999/064160号パンフレット
【特許文献14】国際公開第2001/098371号パンフレット
【特許文献15】国際公開第2000/009255号パンフレット
【特許文献16】国際公開第2005/068076号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2006/022918号パンフレット
【特許文献18】国際公開第2006/086104号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Brummer,Oliver外,「High-Throughput Screening Applied To Process Development」,Handbook of Combinatorial Chemistry,第2巻,2002,p.864-884
【非特許文献2】Boussie,T.R.外,「A Fully Integrated High-Throughput Screening Methodology for the Discovery of New Polyolefin Catalysts:Discovery of a New Class of High Temperature Single-Site Group (IV) Copolymerization Catalysts」,Journal of the American Chemical Society (2003),125(14),p.4306-4317
【非特許文献3】Murphy,Vince外,「High-Throughput Approaches For The Discovery And Optimization Of New Olefin Polymerization Catalysts」,Chemical Record(2002),2(4), P.278-289
【非特許文献4】Boussie T.R.外,「A Fully Integrated High-Throughput Screening Methodology For The Discovery Of New Polyolefin Catalysts:Discovery Of A New Class Of High Temperature Single-Site Group(IV) Copolymerization Catalysts」,Journal of the American Chemical Society(2003),125(14),p.4306-17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、老化及び多峰型触媒系のような触媒系の影響を理解し、そして次にそれらの老化を制御する要望がある。さらに、これらの触媒系でオレフィンを重合させて、例えば多峰型重合体組成物を製造すると共に、例えば触媒系の生産性及び例えば分子量分布のような重合体特性といった所定のプロセス特性及び生成物特性を予測し制御することができることに対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の概要
本発明は、多峰型触媒系を準備し;該多峰型触媒系を制御温度で保存し;該多峰型触媒系とC2〜C4α−オレフィンよりなる群から選択される単量体とを重合過程において接触させ;そして多峰型重合体を生成させることによってオレフィンを重合させる方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、当該多峰型触媒系は、ビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系を含む。別の実施形態では、当該ビスアミド触媒系は、第15族元素含有金属触媒化合物を含む。他の実施形態では、当該非ビスアミド触媒系は、メタロセン触媒系又は従来の遷移金属触媒系を含む。制御温度は、好ましくは約21℃未満、より好ましくは約1℃未満、さらに好ましくは約−9℃未満である。
【0013】
他の実施形態では、当該ビスアミド触媒系は、第3〜14族金属原子が少なくとも1個の陰イオン性脱離基及び少なくとも2個の第15族原子に結合してなる金属触媒化合物を含み、ここで、該少なくとも2個の第15族原子の一つは、C1〜C20炭化水素基、ヘテロ原子含有基、珪素、ゲルマニウム、錫、鉛、燐又はハロゲンであることができる別の基を介して第15又は16族原子にも結合し、該第15又は16族原子は、何にも結合していなくてもよく、又は、水素、第14族原子含有基、ハロゲン若しくはヘテロ原子含有基に結合していてもよく、また、該2個の第15族原子のそれぞれは、環状基にも結合していてよく、また、水素、ハロゲン、ヘテロ原子又はヒドロカルビル基若しくはヘテロ原子含有基に適宜結合していてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態における多峰型触媒系は、噴霧乾燥触媒混合物を含み、ここで、該噴霧乾燥触媒混合物は、ビスアミド触媒化合物、メタロセン触媒化合物、活性剤及び残留溶媒を含む。これらの実施形態のうちいくつかにおける噴霧乾燥触媒混合物は、ビスアミド触媒化合物とメタロセン化合物とを併せて約1〜約3重量%(重量パーセント)含む。他の実施形態では、該噴霧乾燥触媒混合物は、活性剤を約30〜約50重量%含む。別の実施形態では、該噴霧乾燥触媒混合物は、シリカ充填剤を約50〜約70重量%含み、残留溶媒を約2〜約4重量%含む。
【0015】
本発明の一実施形態では、該噴霧乾燥触媒混合物を液体に分散させて触媒混合物の懸濁液を形成させる。一実施形態では、この液体は、オイル及び炭化水素を含み、ここで、該炭化水素は、ヘキサン又は97℃を超えるASTM D86の沸点を有する高純度イソパラフィン系溶媒である。一実施形態では、該炭化水素はヘキサンである。別の実施形態では、該炭化水素は、約97℃を越えるASTM D 86の沸点を有する高純度イソパラフィン系溶媒である。一実施形態では、触媒混合物懸濁液は、噴霧乾燥触媒混合物を約15〜約30重量%含む。別の実施形態では、触媒混合物懸濁液は、オイルを約60〜約70重量%含み、ヘキサン又は97℃を超えるASTM D86の沸点を有する高純度イソパラフィン系溶媒を約20重量%未満含む。
【0016】
別の実施形態では、当該ビスアミド触媒系は、担体、活性剤及び第15族元素含有金属触媒化合物を含み、当該非ビスアミド触媒系は、メタロセン触媒化合物を含み、その接触工程は、約60℃を超える温度及び約200psig〜約400psigの圧力で実施され、当該多峰型触媒系は、少なくとも30日間保存され、制御温度は約1℃未満であり;老化した触媒の生産性は、未使用の触媒の生産性の少なくとも約75%である。この実施形態の選択肢では、老化した触媒の生産性は、未使用の触媒の生産性の少なくとも約85%であるのに対し、別の実施形態では、老化した触媒の生産性は、未使用の触媒の生産性の少なくとも約90%である。別の実施形態では、多峰型触媒は、少なくとも60日間保存され、さらに別の実施形態では、該多峰型触媒は、少なくとも100日間保存される。
【0017】
この方法の一実施形態では、ビスアミド触媒系は、担体、活性剤及び第15族元素含有化合物を含み;非ビスアミド触媒系はメタロセン触媒化合物を含み;その接触工程は、約60℃を超える温度及び約200psig〜約400psigの圧力で実施され;多峰型触媒系は、少なくとも30日間保存され;制御温度は約1℃未満であり;当該接触工程で生成された老化触媒重合体の高分子量部分は、未使用触媒重合体の高分子量部分の少なくとも約85%である。この実施形態における選択肢では、老化触媒重合体の高分子量部分は、未使用触媒重合体の高分子量部分の少なくとも約90%である。別の実施形態では、多峰型触媒は、少なくとも60日間保存され、さらに別の実施形態では、多峰型触媒は、少なくとも100日間保存される。さらに別の実施形態では、制御温度は−9℃未満である。
【0018】
また、本発明は、次の工程:ビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系を含む多峰型触媒系を準備し;そして該多峰型触媒系とα−オレフィン組成物とを重合過程において接触させて多峰型重合体を生成させることを含み、ここで、該多峰型重合体の生成物特性を該多峰型触媒系の予想老化特徴応答を使用して予測する、オレフィンを重合して多峰型重合体を生成させる方法も提供する。一実施形態では、予想老化特徴応答は、加速老化方法を使用して決定される。さらなる実施形態では、この加速老化方法は、ハイスループット重合ユニットを使用する。
【0019】
該多峰型重合体の生成物特性を予想される老化特徴を使用して予測する別の実施形態では、当該方法は、次の工程:ビスアミド触媒系の第1老化特徴応答を決定し;非ビスアミド触媒系の第2老化特徴応答を決定し;そして、該第1老化特徴応答と該第2老化特徴応答とを組み合わせて多峰型触媒系の予想老化特徴応答を生成することをさらに含むことができる。
【0020】
多峰型重合体の生成物特性を予想される老化特徴を使用して予測する別の実施形態では、非ビスアミド触媒系は、メタロセン触媒化合物を含み、ビスアミド触媒系は、担体と、活性剤と、第3〜14族金属原子が少なくとも1個の陰イオン性脱離基に結合し、かつ、少なくとも2個の第15族原子にも結合してなる金属触媒化合物とを含み、ここで、該第15族原子の少なくとも1個は、C1〜C20炭化水素基、ヘテロ原子含有基、珪素、ゲルマニウム、錫、鉛、燐又はハロゲンであることができる別の基を介して第15又は16族原子にも結合し、該第15又は16族原子は、何にも結合していなくてもよく、又は、水素、第14族原子含有基、ハロゲン若しくはヘテロ原子含有基に結合していてもよく、また、該2個の第15族原子のそれぞれは、環状基にも結合していてよく、また、水素、ハロゲン、ヘテロ原子又はヒドロカルビル基若しくはヘテロ原子含有基に適宜結合していてもよい。
【0021】
多峰型重合体の生成物特性を予想される老化特徴を使用して予測するさらに別の実施形態では、α−オレフィン組成物は、C2〜C4α−オレフィンよりなる群から選択される単量体と、C4〜C8α−オレフィンよりなる群から選択される共単量体とを含み、約60℃を超える温度及び約200psig〜約400psigの圧力で接触を行う。
【0022】
別の実施形態では、第1老化特徴応答は、時間に応じたビスアミド触媒系の第1触媒生産性応答であり、第2老化特徴応答は、時間に応じた非ビスアミド触媒系の第2触媒生産性応答であり、予想老化特徴応答は、時間に応じた多峰型触媒系の老化触媒生産性応答である。
【0023】
別の実施形態では、第1老化特徴応答は、保存時間後のビスアミド触媒系の第1分子量分布応答であり、第2老化特徴応答は、時間に応じた非ビスアミド触媒系の第2分子量分布応答であり、予想老化特徴応答は、多峰型触媒を使用する、時間に応じた予想分子量分布応答である。
【0024】
多峰型重合体の生成物特性を予想される老化特徴を使用して予測する様々な実施形態では、保存時間は、少なくとも30、60又は100日である。
【0025】
この方法の別の実施形態では、第1老化特徴応答は、時間に応じたビスアミド触媒系の第1メルトインデックス応答であり、第2老化特徴応答は、時間に応じた非ビスアミド触媒系の第2メルトインデックス応答であり、予想老化特徴応答は、時間に応じた多峰型触媒系の予想メルトインデックス応答である。
【0026】
さらに別の実施形態では、予測される生成物特性は、多峰型重合体のメルトインデックス、触媒残留物の含有量、分子量分布、高分子量成分のパーセンテージ又は低分子量成分のパーセンテージである。
【0027】
他の実施形態では、予想老化特徴応答は、生産性応答、水素応答、共単量体応答又は多峰型触媒系の共単量体応答である。
【0028】
他の実施形態では、予想老化応答は、バッチ式気相反応器で決定される生産性応答、水素応答、共単量体応答又は多峰型触媒系の共単量体応答である。
【0029】
さらに他の実施形態では、第1老化特徴応答及び第2老化特徴応答は、加速老化方法を使用して決定される。さらなる実施形態では、当該加速老化方法は、ハイスループット重合試験ユニットを使用する。
【0030】
さらに別の実施形態では、多峰型触媒系の老化特徴応答のモデルを一次分解又は二次分解の仮説に基づき策定する。
【0031】
また、本発明は、ビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系を含む多峰型触媒系を準備し;そして該多峰型触媒系を携帯型容器中で輸送することを含む多峰型触媒の老化の制御方法であって、該携帯型容器を約21℃未満の制御温度で保持するものを提供する。別の実施形態では、当該携帯型容器を約1℃未満、より好ましくは−9℃未満の制御温度で保持する。
【0032】
多峰型触媒を輸送する別の実施形態では、ビスアミド触媒系は、第15族元素含有金属触媒化合物を含む。多峰型触媒を輸送するさらに別の実施形態では、非ビスアミド触媒系はメタロセン触媒系を含む。
【0033】
多峰型触媒を輸送するさらに別の実施形態では、非ビスアミド触媒系はメタロセン触媒系を含み、ビスアミド触媒系は、第3〜14族金属原子が少なくとも1個の陰イオン性脱離基に結合し、かつ、少なくとも2個の第15族原子にも結合してなる金属触媒化合物であり、該第15族原子の少なくとも1個は、C1〜C20炭化水素基、ヘテロ原子含有基、珪素、ゲルマニウム、錫、鉛、燐又はハロゲンであることができる別の基を介して第15又は16族原子にも結合し、該第15又は16族原子は、何にも結合していなくてもよく、又は、水素、第14族原子含有基、ハロゲン若しくはヘテロ原子含有基に結合していてもよく、また、該2個の第15族原子のそれぞれは、環状基にも結合していてよく、また、水素、ハロゲン、ヘテロ原子又はヒドロカルビル基若しくはヘテロ原子含有基に適宜結合していてもよい。直前の実施形態のさらなる具体例では、制御温度は約1℃未満であり、さらに制御温度は−9℃未満である。
【0034】
別の実施形態は、多峰型触媒系又は触媒系を制御温度で保持する、多峰型触媒系を含むコンテナ又は容器を提供する。少なくとも一つの実施形態では、コンテナ又は容器内にある多峰型触媒系は、当該コンテナ又は容器内にある間撹拌され得る。
【0035】
本発明の別の実施形態は、次の工程:a)多峰型触媒系を制御温度で保存した後に該多峰型触媒系を温め;b)該多峰型触媒系を撹拌してから該多峰型触媒系と単量体とを接触させることをさらに含む、オレフィンの重合方法を提供する。
【0036】
別の実施形態では、多峰型触媒系を温めた後に多峰型触媒系を撹拌する。
【0037】
少なくとも一つの実施形態では、多峰型触媒系を少なくとも約24時間撹拌する。
【0038】
少なくとも一つの実施形態では、多峰型触媒系を少なくとも約10℃に温めてから該多峰型触媒系と単量体とを接触させる。
【0039】
少なくとも一つの他の実施形態では、多峰型触媒系を少なくとも10℃に温めてから多峰型触媒系を撹拌する。
【0040】
本発明の他の特徴及び利点は、次の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、単なる例示であると理解すべきである。というのは、当業者であれば、本発明の精神及び本発明の範囲内での様々な変更及び改変は、この詳細な説明から明らかだからである。
【0041】
次の図面は、本願明細書の一部をなすものであり、本発明の所定の側面をさらに実証するために含めるものである。本発明は、これらの図面の一つ以上をここに与えた特定の実施形態の詳細な説明と共に参照することによってさらによく理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、複数の温度で保存した多峰型触媒粉末の生産性の経時変化を示すグラフ図である。
図2図2は、様々な温度及び本発明の制御温度で保存した多峰型触媒粉末及び多峰型触媒懸濁液の生産性の経時変化を示すグラフ図である。
図3図3は、加速老化方法を使用して老化した多峰型触媒を用いて製造された重合体の分子量分布変化を示すグラフ図である。
図4図4は、本発明の制御温度で保存された多峰型触媒を使用して製造された重合体の分子量分布を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
発明の詳細な説明
本発明は、次の工程:多峰型触媒系を準備し;該多峰型触媒系を制御温度で保存し;該多峰型触媒系とC2〜C4α−オレフィンよりなる群から選択される単量体とを重合過程において接触させ;そして多峰型重合体を生成させることを含むオレフィンの重合方法を提供する。一実施形態では、当該多峰型触媒系は、ビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系を含む。別の実施形態では、当該触媒系と、C2〜C4α−オレフィンよりなる群から選択される単量体及びC4〜C8α−オレフィンよりなる群から選択される共単量体とを重合過程において接触させる。
【0044】
ここで使用するときに、「触媒老化」とは、触媒混合物を製造後に保存する期間にわたってその触媒系の応答が変化する現象をいう。触媒系の応答におけるこれらの変化は、触媒を製造した後の所定期間にわたり当該触媒混合物を保存した後に同じ条件で重合体を製造した場合と比較したときに、その触媒系が異なる応答を示すという事実を反映するものである。例えば、触媒混合物を所定期間保存した後に、触媒混合物の触媒生産性が低下する可能性があり、或いは生成した重合体の分子量分布が変化する可能性がある。これは、特に多峰型触媒系にとって問題となる。例えば、二峰型触媒系では、高分子量(HMW)重合体成分は第1触媒成分から製造され、低分子量(LMW)重合体成分は、同じ反応条件下で第2触媒成分から製造される。全体の生産性は、これらの成分の活性により促進される。さらに、分子量分布は、これら2成分の相対的な生産性によって決まる。つまり、老化が生産性に影響を与える場合には、分子量分布にも影響を与える。特に、HMW又はフローインデックス及びスプリット(HMW及びLMWのパーセンテージ)は、老化に影響を受ける。これは、生成物の特性に直接的な影響を及ぼす。ここで使用するときに、用語「多峰型重合体」とは、少なくとも「二峰型分子量分布」を含む重合体を意味し、この用語は、刊行物及び認められた特許に反映されたときに当業者が当該用語に与えた最も広い定義を有するものとする。したがって、好ましい実施形態では、多峰型重合体は、少なくとも2つの分子量のピークを有することができる。例えば、少なくとも2個の識別可能な分子量分布を有するポリオレフィンを含む単一組成物は、ここで使用される「多峰型」重合体であるとみなされる。好ましくは、これらの重合体成分は、異なる分子量を有する以外に、異なる共単量体分布レベルを有することができる。
【0045】
重合体又は重合体組成物を説明するために使用するときに、用語「単峰型」とは、任意の重合体(例えばポリエチレン)であって、上で定義した多峰型ではないもの、例えば、単一の分子量分布を有するものを意味する。
【0046】
ここで使用するときに、用語「多峰型触媒系」又は「多峰型触媒」とは、少なくとも2種の触媒成分又は触媒系であって、それぞれの触媒成分又は触媒系が、例えば、分子量分布、共単量体分布その他の生成物特性といった様々な生成物特性を有する重合体を製造することができるものを含む触媒系をいう。用語「多峰型触媒系」とは、2種金属触媒のみならず複数の触媒系も含み、かつ、少なくとも2種の異なる触媒化合物であって、それぞれが異なる金属基を有するものを含む任意の組成物、混合物又は系を含むものとする。好ましくは、それぞれの異なる触媒化合物が単一の担体粒子上に存在するので、2成分触媒又は2種金属触媒は、担持2成分又は2種金属触媒である。しかしながら、ここで使用するときに、多峰型触媒という用語は、系又は混合物であって、これらの触媒の1種が担体材料の一つの集合体上に存在し、別の触媒が担体粒子の他方の集合体上に存在するものを広く包含する。好ましくは、この後者の場合には、これら2種の担持触媒を単一の反応器に同時に又は連続的に導入し、そして重合を2成分又は2種金属触媒系、すなわち、担持触媒の2つの集合体の存在下で実施する。上記触媒系は、各種活性剤、各種連続添加剤などの他の成分を含有してもよい。上記の触媒系は、同一の又は異なる金属、同一の又は異なる配位子及び同一の又は異なる脱離基を有することができる。
【0047】
特定の一理論に束縛されないが、触媒の応答は、触媒系の各種成分の重合応答が様々な割合で経時的に変化し得るため、経時的に変化しやすいと考えられる。この経時変化の割合は、触媒を保存した温度に依存していたことが分かっている。この触媒応答の変化は、多峰型触媒系(殊に当該多峰型触媒系がビスアミド触媒成分と非ビスアミド触媒成分とを含む場合)にとって特に問題である。仮に、2つの触媒成分の重合応答が異なる速度で変化するとするならば、同じ反応器条件で製造された重合体の特性は、当該触媒の老化と共に変化するであろう。
【0048】
特定の一理論に束縛されるものではないが、ビスアミド触媒成分は、非ビスアミド触媒成分よりも熱的に不安定であるとも考えられる。これは、ビスアミド触媒成分しか含まない触媒の触媒生産性及び重合応答が、特に高温で保存したときに劇的に経時変化することでも分かる(以下の実施例参照)。逆に、非ビスアミド成分を含有する触媒は、それよりもはるかに少ない触媒重合応答の経時変化しか示さなかった。つまり、多峰型触媒系がビスアミド成分と非ビスアミド成分とを含む場合には、これら2つの成分の重合応答は、異なる速度で変化する。この差は、高い保存温度のときに一層大きい。これら2つの成分の分子量応答及び生産性は時間経過と共に異なってくるので、同じ条件で異なる多峰型重合体が生成される。この応答の変化は、触媒系を保存する期間と、当該触媒系を保存する温度とに依存する。
【0049】
ある種の触媒系の重合応答が予測できない場合には、かなりの量の等級外物質が触媒ラン(ここで使用するときに、「触媒ラン」とは、特定の触媒容器が反応系に供給される期間のことである)の開始時に生成されると同時に、重合応答が評価され、そしてその反応条件は、補正のために変更される。より新しい又は古い触媒バッチを反応系に供給する場合には、このプロセスが繰り返される。さらに、触媒生産性に乏しいと、古い触媒バッチのいくらかが使用できなくなる。触媒を制御温度で保存することによって、その触媒の応答はさらに予測可能なものとなり、場合によっては長期の保存期間にわたって安定となる。この触媒は予測可能性が高いので、触媒ランの開始時には少ない等級外物質しか生成されない。
【0050】
ここで使用するときに、「老化触媒」とは、所定期間にわたって保存された、典型的には5日を超えて、好ましくは約30日を超えて、より好ましくは約60日を超えて、さらに好ましくは約100日を超えて保存された触媒(特定の実施形態では多峰型触媒系)をいう。
【0051】
ここで使用するときに、「未使用の触媒の生産性」とは、多峰型触媒系を当該触媒の製造後すぐに(当該触媒が実質的に変化する前に)重合系に供給したときの当該触媒系の触媒生産性をいう。「老化触媒生産性」とは、多峰型触媒を所定期間にわたって保存した後、典型的には5日を超えて、好ましくは約30日を超えて、より好ましくは約60日を超えて、さらに好ましくは約100日を超えて保存した後に重合系に供給したときの当該触媒系の触媒生産性をいう。本発明の一実施形態では、老化触媒生産性は、未使用の触媒の生産性の少なくとも約75%であり、好ましくは未使用の触媒の生産性の約85%を超え、さらに好ましくは未使用の触媒の生産性の約90%を超える。
【0052】
ここで使用するときに、「制御温度で」とは、その温度を所定の範囲内に維持することをいうが、ただし、所定の温度又は所定の温度範囲で制御されている化学物質や組成物の性質が著しく変化したり影響を受けたりしない限りにおいて当該範囲のいずれかの限界を超えることが可能なときには、その温度を考慮するものとする。所定の実施形態では、この温度は、30℃以内(一定温度の+/−);或いは20℃以内(一定温度の+/−);或いは10℃以内(一定温度の+/−);或いは5℃(一定温度の+/−);或いは2℃以内(一定温度の+/−)に維持される。
【0053】
重合体の分子量分布における変化は、「未使用触媒重合体」(触媒が実質的に変化する前に多峰型触媒系を使用して製造された重合体)の高分子量部分及び低分子量部分を測定し、そしてこれを「老化触媒重合体」(所定期間にわたって保存された多峰型触媒を使用して製造された重合体)の高分子量部分及び低分子量部分と比較することによって特徴付けることができる。本発明の一実施形態では、当該接触工程で生成された老化触媒重合体の高分子量部分は、未使用触媒重合体の高分子量部分の少なくとも約85%である。別の実施形態では、老化触媒重合体の高分子量部分は、未使用触媒重合体の高分子量部分の少なくとも約90%である。
【0054】
本発明によれば、多峰型触媒系を制御温度で保存して触媒が「老化」しないようにすることができる。一実施形態では、触媒系は、約21℃未満、好ましくは約1℃未満、さらに好ましくは約−9℃未満の制御温度として保存される。
【0055】
多峰型触媒系が通常保存される時間の長さは、製造計画、製造場所、運送時間及び他の要因に依存して変動し得る。保存時間は、数日又は数ヶ月であることができる。この明細書の目的上、触媒は、それが製造される時から重合系に注入される時点まで(輸送される又はあらゆる種類の容器内で保持される期間を含む)保存状態にあるとみなす。つまり、触媒混合物を保存する期間とは、製造の日から触媒を重合系に注入する日までの期間のことである。一実施形態では、多峰型触媒系は、少なくとも30日間保存され、好ましくは少なくとも60日間、さらに好ましくは少なくとも100日間保存される。
【0056】
触媒系の制御温度保存は、当業者に知られている任意の方法で行うことができる。例えば、触媒系は、触媒系の温度が監視及び制御されるジャケット付き保存容器内で保存できる。別の例では、触媒系を保存容器又はシリンダー内に置き、そしてこの保存容器又はシリンダーを温度の制御された環境、例えば、冷蔵庫、冷蔵トラック又は冷蔵輸送コンパートメント内に置く。
【0057】
重合方法
ここで説明する本発明の実施形態は、触媒と単量体又は単量体/共単量体との接触を円滑にする任意の重合方法に使用するのに好適である。重合方法としては、溶液、気相流動床、スラリー相及び高圧方法又はそれらの組合せが挙げられる。好ましい方法としては、1種以上のオレフィンであってその少なくとも1種がエチレン又はプロピレンであるものの気相流動床又はスラリー相重合が挙げられる。気相方法が特に好ましい(例えば、米国特許第4,543,399号、同4,588,790号、同5,028,670号、同5,317,036号、同5,352,749号、同5,405,922号、同5,436,304号、同5,453,471号、同5,462,999号、同5,616,661 号及び同5,668,228号を参照されたい。これらの全ては、参照により本明細書に完全に含めるものとする。)。また、好ましいのは、所定の重合方法、特に気相及び液相を含む循環流動体を含む気相流動床方法である。
【0058】
一実施形態では、本発明の方法は、2〜30個の炭素原子、好ましくは2〜12個の炭素原子、より好ましくは2〜8個の炭素原子を有する1種以上のオレフィン単量体の溶液重合方法、高圧重合方法、スラリー重合方法又は気相重合方法に関する。本発明は、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1,4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1及びデセン−1の2種以上のオレフィン単量体を重合するのに特に適している。
【0059】
本発明の方法に有用な他の単量体としては、エチレン系不飽和単量体、4〜18個の炭素原子を有するジオレフィン、共役ジエン又は非共役ジエン、ポリエン、ビニル単量体及び環状オレフィンが挙げられる。本発明に有用な単量体として、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン類、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明の方法の好ましい一実施形態では、エチレンの共重合体が製造され、この場合、エチレンと、3〜15個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子、最も好ましくは4〜8個の炭素原子を持つ少なくとも1種のα−オレフィンを有する共単量体とを気相方法で重合させる。
【0061】
気相方法における反応器の圧力は、約100psig(690kPa)〜約600psig(4138kPa)まで、好ましくは約200psig(1379kPa)〜約400psig(2759kPa)の範囲で、より好ましくは約250psig(1724kPa)〜約350psig(2414kPa)の範囲で変更できる。
【0062】
気相方法においてその接触工程中の反応器の温度は、約30℃〜約120℃まで、好ましくは約60℃〜約115℃の範囲で、より好ましくは約70℃〜110℃の範囲で、最も好ましくは約70℃〜約95℃の範囲で変更できる。
【0063】
本発明の方法が意図する他の気相方法としては、連続重合方法又は多段重合方法が挙げられる。また、本発明が意図する気相方法としては、米国特許第5,627,242号、同5,665,818号及び同5,677,375号並びに欧州特許出願公開第EP−A−0794200号、EP−B1−0649992号、EP−A−0802202号及び同EP−B−634421号に記載されたものが挙げられる。これらの全てを参照により本明細書に含めるものとする。
【0064】
一実施形態では、本発明は、プロピレンそのものを重合させるための又はプロピレンとエチレン及び/又は4〜12個の炭素原子を有する他のオレフィンなどの1種以上の他の共単量体とを重合させるための重合方法、特に気相又はスラリー相方法に関するものである。ポリプロピレン重合体は、米国特許第5,296,434号及び同5,278,264号に記載された、特に架橋したメタロセン触媒を使用して製造できる。これらの特許文献の両方を参照により本明細書に含めるものとする。本発明の方法で製造されるプロピレン系重合体としては、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン及びシンジオタクチックポリプロピレンが挙げられる。他のプロピレン重合体としては、プロピレンのランダム、ブロック又はインパクト共重合体が挙げられる。
【0065】
本発明の好ましい一重合技術は、温度を重合体が溶液になる温度よりも低く維持する粒状重合又はスラリー方法と呼ばれている。このような技術は、当業者に周知であり、例えば米国特許第3,248,179号に記載されている。当該特許文献を参照により本明細書に含めるものとする。他のスラリー方法としては、ループ反応器を使用するもの及び直列、並列又はその組合せの複数の撹拌反応器を使用するものが挙げられる。スラリー方法の例としては、連続ループ方法又は撹拌槽方法が挙げられるが、これらに限定されない。また、他のスラリー方法の例は、米国特許第4,613,484号及び同5,986,021号に記載されている。これらの特許文献を参照により本明細書に含めるものとする。
【0066】
溶液方法の例は、米国特許第4,271,060号、同5,001,205号、同5,236,998号、同5,589,555号及び同5,977,251号並びにPCTのWO99/32525号及びPCTのWO99/40130号に記載されている。これらを参照により本明細書に完全に含めるものとする。
【0067】
触媒系
本発明が利用する多峰型触媒系は、α−オレフィンを重合させるための任意の好適な多峰型触媒系であることができる。本発明の触媒系に使用できる触媒化合物としては、第15族元素含有金属化合物;メタロセン化合物;フェノキシド触媒化合物;新規触媒化合物;及び従来型の遷移金属触媒が挙げられる。ここで使用した化学化合物への言及は、全て、「Nomenclature of Organic Chemistry」,Oxford:Pergamon Press,1979;「A Guide to IUPAC Nomenclature of Organic Compounds,Recommendations 1993」,Oxford:Blackwell Scientific Publications,1993及び「Nomenclature of Inorganic Chemistry,Recommendations 1990」,Oxford:Blackwell Scientific Publications(1990)に定義されるような概して化学技術を説明する新たなIUPAC規則を参考にしている。この新たなIUPAC規則の下では、第15族元素は、窒素族元素(別称は第VA族、かつては旧周期律表の第V族として知られていた)からの元素である。本発明の多峰型触媒系は、米国特許第6,605,675号、同6,846,886号、同6,956,089号、同6,274,684号、同6,841,631号、同6,894,128号、同6,534,604号及び同6,689,847号並びに国際公開WO01/30861号及びWO02/46243号に記載された触媒組成物を含むことができる。これらの特許文献の全てを参照により本明細書に含めるものとする。好ましい触媒系としては、米国特許第6,271,325号に記載されるような担持ビスアミド触媒を含む触媒系がさらに挙げられる。この特許文献も参照により本明細書に含めるものとする。
【0068】
一実施形態では、本発明のビスアミド触媒系は、1種以上の第15族元素含有金属触媒化合物を含むことができる。この第15族含有化合物は、概して、第3〜14族金属原子、好ましくは第3〜7族、より好ましくは第4〜6族、さらに好ましくは第4族金属原子が、少なくとも1個の脱離基と、少なくとも2個の第15族原子であってその少なくとも1個が別の基を介して第15又は16族原子に結合したものとに結合してなるものである。
【0069】
一実施形態では、第15族原子の少なくとも1個は、C1〜C20炭化水素基、ヘテロ原子含有基、珪素、ゲルマニウム、錫、鉛又は燐であることができる別の基を介して第15又は16族原子にも結合しているが、ここで、該第15又は16族原子は、何にも結合していなくてもよく、又は、水素、第14族原子含有基、ハロゲン若しくはヘテロ原子含有基に結合していてもよく、また、該2個の第15族原子のそれぞれは、環状基にも結合していてよく、また、水素、ハロゲン、ヘテロ原子又はヒドロカルビル基若しくはヘテロ原子含有基に適宜結合していてもよい。
【0070】
他のビスアミド触媒化合物は、EP−A2−0816384号及び米国特許第5,851,945号に記載された第5及び6族金属イミド錯体である。当該特許文献を参照により本明細書に含めるものとする。さらに、ビスアミド触媒化合物としては、D.H.McConville外,Organometallics 1195,14,5478−5480(参照により含める)に記載された架橋ビス(アリールアミド)第4族元素化合物が挙げられる。さらに、架橋ビス(アミド)触媒化合物は、WO96/27439号(参照により本明細書に含める)に記載されている。一実施形態では、多峰型触媒系は、米国特許第6,605,675号に記載されるように、「ビスアミド」触媒化合物を活性剤と結合させ、粉末状態にまで噴霧乾燥し、次いで鉱油と混合してスラリーを形成させてなるものを含む。当該特許文献を参照により本明細書に含めるものとする。
【0071】
本発明の一実施形態では、多峰型触媒系は、ビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系を含む。非ビスアミド触媒系は、ビスアミド触媒系と相溶性のある任意の触媒系であることができる。一実施形態では、非ビスアミド触媒系は、メタロセン系又は従来の遷移金属触媒系を含む。
【0072】
ここで使用するときに、用語「メタロセン」は、刊行物又は特許文献において「メタロセン」として説明されている任意の化合物だけでなく、メタロセンとしてここで説明する任意の化学化合物又は化学構造体を含むように、広く解釈すべきである。本発明に有用なメタロセン触媒化合物及び触媒系としては、米国特許第5,064,802号、同5,145,819号、同5,149,819号、同5,243,001号、同5,239,022号、同5,276,208号、同5,296,434号、同5,321,106号、同5,329,031号、同5,304,614号、同5,677,401号、同5,723,398号、同5,753,578号、同5,854,363号、同5,856,547号、同5,858,903号、同5,859,158号、同5,900,517同、同5,939,503号及び同5,962,718号並びに国際公開WO93/08221号、WO93/08199号、W095/07140号、WO98/11144号、WO98/41530号、WO98/41529号、WO98/46650号、WO99/02540号及びWO99/14221号並びに欧州特許出願公開第EP−A−0578838号、EP−A−0638595号、EP−B−0513380号、EP−A1−0816372号、EP−A2−0839834号、EP−B1−0632819号、EP−B1−0739361号、EP−B1−0748821号及びEP−B1−0757996号に記載されたものを挙げることができる。これらの全てを参照により本明細書に含めるものとする。
【0073】
一実施形態では、本発明に有用なメタロセン触媒化合物としては、例えば、国際公開第WO92/00333号、WO94/07928号、WO91/04257号、WO94/03506号、WO96/00244号、WO97/15602及びWO99/20637号並びに米国特許第5,057,475号、同5,096,867号、同5,055,438号、同5,198,401号、同5,227,440号及び同5,264,405号並びに欧州特許第EP−A−0420436号に記載されたメタロセン化合物が挙げられる。これらの全てを参照により本明細書に含めるものとする。
【0074】
少なくとも一つの広い実施形態では、メタロセン触媒は、次式:CPm MRn Xq(式中、「Cp」は、置換されていても置換されていなくてもよいシクロペンタジエニル環か、又は置換されていても置換されていなくてもよいシクロペンタジエニル環誘導体、例えばインデニル環のいずれかを表す。)によって表される化合物である。特定の実施形態では、単峰型ポリエチレンを作るために使用されるメタロセンは、2個のシクロペンタジエニル環を有し、ここでは、このようなメタロセンを「ビスシクロペンタジエニルメタロセン」又は「ビス−Cpメタロセン」という。好ましくは、ポリエチレンの1種を形成するために使用されるメタロセン、好ましくは、ここで説明する「第2ポリエチレン」(例えば、2−ポリエチレンブレンド組成物における2種のポリエチレンのうちの1種)を形成(例えば、製造する又は作る)ために使用されるメタロセンは、2個以上のCp配位子、より好ましくは2個のCp配位子を有する;そのため、これは、「ビス−Cpメタロセン」とみなされる。さらに特定の実施形態では、メタロセンは、置換ビスシクロペンタジエニル、好ましくはメチル基及びブチル基で置換されたもの、例えば、ビス(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド又はビス(1,3−メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフルオリドである。
【0075】
メタロセンの他の例は、1&2 Metallocene−Based Polyolefins(John Scheirs及びW.Kaminsky著,John Wiley & Sons社,2000);G.G.Hlatky,181 Coordination Chem.Rev.243−296(1999)で特定されたもの、及び、特に、1 Metallocene−Based Polyolefins 261−377(2000)におけるポリエチレンの合成用のメタロセンである。ここで説明するメタロセン触媒化合物としては、1個以上のCp配位子(シクロペンタジエニル及びシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子)が少なくとも1個の第3族〜第12族金属原子に結合し、かつ、1個以上の脱離基が少なくとも1個の金属原子に結合してなる「半サンドイッチ」及び「全サンドイッチ」化合物が挙げられる。以下、これらの化合物を「メタロセン」又は「メタロセン触媒成分」という。ここで説明する各メタロセンは、好ましくは、以下でさらに説明する特定の実施形態では担体材料上に担持されており、また、このものは、別の触媒成分と共に又はそれなしで担持されていてよい。
【0076】
Cp配位子は、1個以上の環又は環系であって、その少なくとも一部分がπ結合系を含むもの、例えばシクロアルカジエニル配位子及び複素環式アナログである。この環又は環系は、典型的には、第13〜16族原子よりなる群から選択される原子を有し、特に、Cp配位子を構成する原子は、好ましくは炭素、窒素、酸素、珪素、硫黄、燐、ゲルマニウム、硼素及びアルミニウム並びにそれらの組合せよりなる群から選択され、ここで、炭素がこれらの環員の少なくとも50%を構成する。さらに具体的にいうと、Cp配位子は、好ましくは、置換及び非置換のシクロペンタジエニル配位子並びにシクロペンタジエニルにアイソローバルな配位子よりなる群から選択され、その例としては、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル及び他の構造が挙げられるが、これらに制限されない。このような配位子のさらなる例としては、シクロペンタジエニル、シクロペンタフェナントレニル、インデニル、ベンズインデニル、フルオレニル、オクタヒドロフルオレニル、シクロオクタテトラエニル、シクロペンタシクロドデセン、フェナントリンデニル、3,4−ベンゾフルオレニル、9−フェニルフルオレニル、8−H−シクロペンタアセナフチレニル、7H−ジベンゾフルオレニル、インデノ[1,2−9]アントレン、チオフェノインデニル、チオフェノフルオレニル、それらの水素化変種(例えば、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル又は「H4Ind」)、それらの置換変種(以下に詳しく記載する)及びそれらの複素環式変種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
明細書及び請求項にわたって記載するときに、メタロセン触媒化合物の金属原子「M」は、一実施形態では第3〜第12族原子及びランタニド族の原子から選択でき;さらに特定の実施形態では第3〜第10族原子よりなる群から選択でき、さらに特定の実施形態ではSc、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir及びNiよりなる群から選択でき;さらに特定の実施形態では第4、5及び6族原子よりなる群から選択でき、さらに特定の実施形態ではTi、Zr、Hf原子であり、さらに特定の実施形態ではZrである。金属原子「M」の酸化状態は、一実施形態では0から+7までの範囲にあることができ;さらに特定の実施形態では+1、+2、+3、+4又は+5であり;さらに特定の実施形態では+2、+3又は+4である。金属原子「M」に結合する基は、以下において式及び構造で説明する化合物が、特に示さない限り電気的に中性であるようなものである。このCp配位子は、金属原子Mと共に少なくとも1個の化学結合を形成して「メタロセン触媒化合物」を形成する。当該Cp配位子は、置換/引抜き反応に対してさほど影響を受けやすくないという点で、触媒化合物に結合する脱離基とは異なる。
【0078】
一実施形態では、メタロセン触媒化合物がJohnson外,「New Pd(II)− and Ni(II)− Based Catalysts for Polymerization of Ethylene and a−Olefins」,J.Am.Chem.Soc.1995,117,6414−6415及びJohnson,外,「Copolymerization of Ethylene and Propylene with Functionalized Vinyl Monomers by Palladium(II)Catalysts」,J.Am.Chem.Soc.,1996,118,267−268及び1996年8月1日公表のWO96/23010号、WO99/02472号、米国特許第5,852,145号、同5,866,663号及び同5,880,241号(参照により本明細書に含める)に記載されたNi2+及びPd2+の錯体を含むことも本発明の範囲内にある。これらの錯体は、以下で説明する本発明の活性剤により陽イオン状態に活性化され得る前記のジハロゲン化錯体のジアルキルエーテル付加体又はアルキル化反応生成物のいずれかであることができる。
【0079】
また、ここで説明した組成物の1つ以上の特定の実施形態は、HN3、ビス(2−(トリメチルフェニルアミド)エチル)アミンジルコニウムジベンジル(高分子量成分のためのもの)及びP−メタロセン触媒のビス(n−プロピルCp)ジルコニウムジクロリド(低分子量成分のためのもの)を含む多峰型触媒系を包含する。
【0080】
また、メタロセン触媒として包含されるのは、国際公開第WO96/23010号及びWO97/48735号並びにGibson外,Chem.Comm.,pp.849−850(1998)に開示された第8〜10族金属化合物のジイミン系配位子である。これらの文献の全てを参照により本明細書に含めるものとする。
【0081】
また、一実施形態では、本発明の上記メタロセン触媒には、それらの構造異性体又は光学異性体又は鏡像異性体(メソ及びラセミ異性体。例えば、引用によって本明細書に含めた米国特許第5,852,143号を参照されたい。)及びそれらの混合物が含まれることも考えられる。
【0082】
従来の遷移金属触媒は、当業者に周知の伝統的なチーグラー・ナッタ触媒及びフィリップス型クロム触媒である。従来の遷移金属触媒の例は、米国特許第4,115,639号、同4,077,904号、同4,482,687号、同4,564,605号、同4,721,763号、同4,879,359号及び同4,960,741号で検討されている。これらの全てを参照により本明細書に含めるものとする。本発明で使用できるこの従来の遷移金属触媒化合物は、元素の周期律表の第III〜VIII族、好ましくはIVB〜VIB族の遷移金属化合物を含む。
【0083】
本発明で使用するのに好適な他の従来型遷移金属触媒化合物及び従来型触媒系は、米国特許第4,124,532号、同4,302,565号、同4,302,566号及び同5,763,723号並びに公開EP−A2 0416815A2号及びEP−A1 0420436号に開示されている。これらを全て参照により本明細書に含めるものとする。
【0084】
他の触媒としては、陽イオン触媒、例えば、AlCl3、バナジウム、束縛構造触媒、コバルト及び鉄触媒(全て当該技術分野において周知である)を挙げることができる。
【0085】
本発明の一実施形態では、多峰型触媒系は噴霧乾燥触媒混合物を含むが、ここで、当該噴霧乾燥触媒化合物は、ビスアミド触媒化合物、メタロセン触媒化合物、活性剤及び残留溶媒を含む。好ましい実施形態では、ヒュームドシリカとメチルアルモキサンとを混合し、次いで噴霧乾燥して担持メチルアルモキサンを形成させる。
【0086】
別の実施形態では、触媒化合物及び/又は活性剤を、好ましくは粒状充填剤材料のような担体材料と混合し、次いで好ましくは噴霧乾燥して自由流動性粉末を形成させる。噴霧乾燥は、当該技術分野において知られている任意の手段により行うことができる。担持触媒の噴霧乾燥について特に記載するEP A0668295B1、米国特許第5,674,795号及び米国特許第5,672,669号並びに1999年12月16日に出願された米国特許出願公開第09/464,114号を参照されたい。
【0087】
また、本発明にとって特に有用な噴霧乾燥方法及び噴霧乾燥組成物は、米国特許第6,605,675号にも記載されている。当該特許文献を参照により本明細書に含めるものとする。一般に、触媒化合物及び随意の活性剤を溶液の状態で放置し(所望ならば、触媒化合物と活性剤とを反応させる)、シリカ又はヒュームドシリカ、例えばGasil(商標)又はCabosil(商標)といった充填剤材料を添加し、次いで当該溶液をノズルにより高圧の状態にすることによって噴霧乾燥できる。
【0088】
いくつかの噴霧乾燥触媒混合物では、2種以上の触媒化合物を一緒に添加し、そして同時に噴霧することができる。さらに、この活性剤/充填剤混合物中には1−ヘキセンのような追加の添加剤又は溶媒が存在してもよい。
【0089】
別の実施形態では、この混合物に結合剤を添加する。これらの結合剤は、粒子の形態を改善させる手段、すなわち、粒度分布を狭くし、粒子の多孔度を低下させ、そして「結合剤」として作用するアルモキサンの量を減少させることを可能にする手段として添加できる。
【0090】
本発明の一実施形態では、噴霧乾燥触媒混合物は、ビスアミド触媒化合物及びメタロセン化合物を併せて約5重量%未満、好ましくはビスアミド触媒化合物及びメタロセン化合物を併せて約1〜約3重量%含む。
【0091】
別の実施形態では、噴霧乾燥触媒混合物は、活性剤を約30〜約50重量%、好ましくは活性剤を約35〜約40重量%含む。
【0092】
別の実施形態では、噴霧乾燥触媒混合物は、シリカ充填剤を約50〜約70重量%、好ましくはシリカ充填剤を約50〜約60重量%含む。
【0093】
他の実施形態では、噴霧乾燥触媒混合物は、残留溶媒を約1〜約6重量%、好ましくは残留溶媒を約2〜約4重量%含む。
【0094】
好ましい一実施形態では、噴霧乾燥触媒混合物は、ビスアミド触媒化合物及びメタロセン化合物を併せて約1〜約3重量%;活性剤を約30〜約50重量%;シリカ充填剤を約50〜約70重量%;及び残留溶媒を約2〜約4重量%含む。
【0095】
一実施形態では、多峰型触媒系は、触媒混合物の懸濁液を形成するように液体中に分散された上記噴霧乾燥混合物を含む。次いで、この触媒混合物懸濁液を重合反応器に供給する。一実施形態では、この液体は、オイル及び炭化水素を含み、ここで、この炭化水素は、ヘキサン又は97℃を超えるASTM D86の沸点を有する高純度イソパラフィン系溶媒である。好ましくは、触媒混合物懸濁液は、触媒混合物懸濁液中に約10〜40重量%の噴霧乾燥混合物、好ましくは触媒混合物懸濁液中に15〜30重量%の噴霧乾燥混合物を有する。
【0096】
別の実施形態では、触媒混合物懸濁液は、オイルを約60〜約70重量%及びヘキサン又は97℃を超えるASTM D86の沸点を有する高純度イソパラフィン系溶媒を約20重量%未満含む。さらなる実施形態では、ヘキサン又は97℃を超えるASTM D86の沸点を有する高純度イソパラフィン系溶媒は、好ましくはヘキサン、より好ましくは高純度イソパラフィン系溶媒、例えばエクソンモービルケミカル社からIsopar(商標)Fluidsとして入手できる、約97℃よりも高いASTM D86の沸点を有するようなものである(Isopar(商標)は、エクソンモービル社の商標である)。

【0097】
本発明の一実施形態は、次の工程:ビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系を含む多峰型触媒系を準備し;該多峰型触媒系を制御温度で保存し;該多峰型触媒系とC2〜C4α−オレフィンよりなる群から選択される単量体とを重合過程において接触させ;そして多峰型重合体を生成させることを含むオレフィンの重合方法を提供する。この実施形態では、当該ビスアミド触媒系は、担体、活性剤及び第15族元素含有金属触媒化合物を含み;当該非ビスアミド触媒系はメタロセン触媒化合物を含み;その接触工程は、約60℃を超える温度及び約200psig〜約400psigの圧力で実施され;当該多峰型触媒は、少なくとも30日間保存され;制御温度は約1℃未満であり;老化した触媒の生産性は、未使用の触媒の生産性の少なくとも約75%である。別の実施形態では、老化した触媒の生産性は、未使用の触媒の生産性の少なくとも約85%であり、好ましくは未使用の触媒の生産性の少なくとも約90%である。別の実施形態では、制御温度は約−9℃未満である。
【0098】
本発明の一実施形態は、次の工程:ビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系を含む多峰型触媒系を準備し;該多峰型触媒系を制御温度で保存し;該多峰型触媒系とC2〜C4α−オレフィンよりなる群から選択される単量体とを重合過程において接触させ;そして多峰型重合体を生成させることを含むオレフィンの重合方法を提供する。この実施形態では:当該ビスアミド触媒系は、担体、活性剤及び第15族元素含有金属触媒化合物を含み;当該非ビスアミド触媒系はメタロセン触媒化合物を含み;その接触工程は、約60℃を超える温度及び約200psig〜約400psigの圧力で実施され;当該多峰型触媒は、少なくとも30日間保存され;制御温度は約1℃未満であり;当該接触工程で生成された老化触媒重合体の高分子量部分は、未使用触媒重合体の高分子量部分の少なくとも約85%であり、好ましくは老化触媒重合体の高分子量部分は未使用触媒重合体の高分子量部分の少なくとも約90%である。別の実施形態では、制御温度は約−9℃未満である。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態では、多峰型触媒系を制御温度で保存した後に温め、次いで撹拌してから多峰型触媒系と単量体とを接触させる。ここで使用するときに、「温める」とは、多峰型触媒系を保存する温度よりも高く当該触媒系の温度を上昇させることをいう。多峰型触媒系は、多峰型触媒系を制御温度の保存環境から単に取り出し、そして周囲条件で当該触媒を加熱させることにより温めることができる。また、この触媒は、多峰型触媒系を加熱環境に置いたり、又は多峰型触媒系を保持する保存容器に熱を加えることにより温めることもできる。
【0100】
ここで使用するときに、用語「撹拌」とは、多峰型触媒系に動きを与えて当該触媒系の固形物を触媒系懸濁液の希釈液中に懸濁させることをいう。撹拌は、固形物と希釈剤とを共に混合させ、そして当該固形物の懸濁液を得るのに好適な任意の方法によって行うことができる。いくつかの実施形態では、撹拌は、多峰型触媒系を保持するコンテナ又は容器を振り動かすか、回転させるか、或いは揺り動かすことによって与えることができる。
【0101】
この場合のいくつかの実施形態では、多峰型触媒系を温めた後に多峰型触媒系を撹拌する。この実施形態では、多峰型触媒系を保持するコンテナ又は容器を、当該触媒を撹拌すべき時期よりも前に制御環境から取り出すことができる。続いて、触媒を温めた後に、撹拌装置、例えば触媒容器回転装置により撹拌する。
【0102】
いくつかの実施形態では、多峰型触媒系は、多峰型触媒系中に含まれる固体触媒粒子をスラリーに完全に懸濁させるのを確保するのに十分な時間にわたり撹拌できる。いくつかの実施形態では、多峰型触媒系は、懸濁液から沈降したいかなる触媒粒子も再懸濁させるために、少なくとも約12時間、24時間、36時間又はそれを超える時間にわたって懸濁できる。
【0103】
他の実施形態では、多峰型触媒系を少なくとも約0、10又は20℃に温めてから当該多峰型触媒系と単量体とを接触させることができる。いくつかの実施形態では、多峰型触媒系を温めてから多峰型触媒系を撹拌することができる。他の実施形態では、多峰型触媒系を温めると同時に当該多峰型触媒系を撹拌してもよく、或いは多峰型触媒系を撹拌した後に温めてもよい。
【0104】
多峰型重合体
ここで説明した組成物の1つ以上の特定の実施形態は二峰型ポリエチレンを包含する。所定の実施形態では、当該組成物用の二峰型ポリエチレンは、米国特許第6,605,675号又は同6,608,149号(これらの両方を参照により含めるものとする)、特に二峰型ポリエチレンの製造を開示及び教示する部分に記載されたとおりに製造できる。
【0105】
少なくとも一つの特定の実施形態では、組成物は、ここで説明した触媒系を使用して製造された二峰型ポリエチレンを含む。例えば、二峰型ポリエチレンは、ヒュームド粒状充填剤と、次式:
【化1】
(式中、Mは、第4、5又は6族金属であり;それぞれのXは独立に陰イオン性脱離基であり;nはMの酸化状態であり;mはY、Z及びLを含む配位子の形式電荷であり;Yは第15族原子であり;Zは第15族原子であり;Lは第15族原子であり;R1及びR2は、独立にC1〜C20炭化水素基又はヘテロ原子含有基であり、この際、このヘテロ原子は珪素、ゲルマニウム、錫、鉛又は燐であり;随意に、R1及びR2は互いに結合し;R3は、存在しないか、又は水素、第14族原子含有基、ハロゲン若しくはヘテロ原子含有基であり;R4及びR5は、独立にアルキル基、アリール基、置換アリール基、環状アルキル基、置換環状アルキル基又は多環系であり;R6及びR7は、独立に、存在しないか、又は水素、アルキル基、ハロゲン、ヘテロ原子、ヒドロカルビル基若しくはヘテロ原子含有基である。)
によって表される触媒化合物とを含む触媒系の存在下で実施された重合によって製造できる。
【0106】
多峰型触媒応答の予測:
本発明の利点の一つは、多峰型触媒系の重合応答における変化を最小化させることができると同時に、老化触媒で製造された重合体の特定を予測できる点である。したがって、本発明は、ビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系を含む多峰型触媒系を準備し、そして該多峰型触媒系とα−オレフィン組成物とを重合過程において接触させて多峰型重合体を生成させることによってオレフィンを重合して多峰型重合体を生成させる方法であって、その際に、該多峰型重合体の生成物特性を該多峰型触媒系の予想老化特徴応答を使用して予測することを特徴とするものも提供する。
【0107】
予想老化特徴応答は、多峰型触媒系の重合性能を評価するために使用される任意の特徴応答であることができる。特に興味深いのは、特定の生成物特性を有する重合体を製造する際の多峰型触媒系の応答又特定の重合パラメーターに対する多峰型触媒系の応答である。ここで使用するときに、「応答」とは、所定の重合条件での触媒系の定量可能な性能又は重合パラメーター若しくは重合条件に応じた性能予測モデルをいう。
【0108】
生成物特性は、任意の重合体特性であることができ、好ましくは触媒組成物によってもたらされる生成物特性又重合特性である。この生成物特性は、残留触媒含有量、触媒灰分、多峰型重合体のメルトインデックス、密度、メルトフローレート、分子量分布、高分子量成分のパーセンテージ若しくは低分子量成分のパーセンテージ又は任意の他の測定可能な重合体特性であることができる。重合パラメーターは、触媒生産性、水素濃度、単量体濃度、共単量体濃度、活性剤濃度、重合温度又は任意の他のプロセスパラメーターであることができる。
【0109】
したがって、ここで使用するときに、予想老化特徴応答とは、所定の重合条件での老化(保存後)多峰型触媒系の定量可能な性能又は重合パラメーター若しくは重合条件に応じた性能予測モデルをいう。例えば、予想老化特徴応答は、保存時間、温度若しくはそれらの組合せに応じた触媒反応又は保存時間、温度若しくはそれらの組合せに応じた触媒応答の変化であることができる。触媒応答は、触媒生産性応答、触媒の分子量分布応答、触媒のメルトインデックス応答、触媒の密度応答、水素応答、共単量体応答その他の触媒の重合体特性応答であることができる。
【0110】
多峰型触媒系に及ぼす触媒老化の影響を定量するために、それぞれの触媒成分について試験を実施して当該触媒成分の重合応答を経時的に決定することができる。これらの試験は、触媒応答の経時的変化が緩やかであるため、かなりの時間がかかる。そのため、本発明の一実施形態では、予想老化特徴応答は、加速老化方法を用いて決定する。ここで使用するときに、「加速老化方法」とは、試験触媒を評価する前に、当該試験触媒を高温で保存することによって、重合応答を定量するための試験を加速させる方法をいう。例えば、加速老化方法は、試験触媒(好ましくは単一の触媒成分系を含むもの)を製造する工程、当該試験触媒を高温で保存する工程、当該試験触媒を重合させる工程及び試験触媒の重合応答を評価する工程を含む。当該試験触媒の重合応答を、製造直後に評価される試験触媒の一部分である対照の触媒と比較することができる。
【0111】
この加速方法を使用してビスアミド触媒系と非ビスアミド触媒系とを別々に評価し、また多峰型触媒系自体を評価する。加速老化方法は、次の工程:未使用の試験触媒バッチを準備し;未使用触媒重合体の試料を製造し;当該試験触媒を高温で保存して老化触媒を製造し;老化触媒重合体の試料を製造し;重合中に各触媒試料の生産性を測定し、そして各重合体試料の重合体特性を評価することを含む。高温は、好ましくは、市販の触媒を保存することができる最も高い予想周囲温度よりも高く、かつ、触媒の失活温度よりも低い。一実施形態では、高温は約40〜120℃であり;或いは、高温は約50〜80℃であり;或いは、高温は約50〜70℃であり;或いは、高温は約50〜65℃であり;或いは、高温は約55〜65℃である。実施形態のある部類では、高温は60℃である。一実施形態では、ビスアミド触媒成分を含む第1試験触媒を製造し、保存し、そして試験し、また別個に、非ビスアミド触媒成分を含む第2試験触媒を製造し、保存し、そして試験する。
【0112】
本発明の一実施形態では、加速老化方法は、平行重合反応器(PPR)と高温急速GPCステーションとセンソリー・アレイ・モジュラー・メジャーメント・システムと自動FT−IR分析ステーションとを備えるハイスループット重合試験(HTPT)ユニットを使用する。好ましいHTPTユニットは、シミックスディスカバリーツールズ社から入手できる。様々な試験方法及びPPRが米国特許出願公開第2003161763号並びに国際公開WO1999064160号、WO2001098371号及びWO2000009255号でも検討されている。これらの特許文献の全てを参照により本明細書に含めるものとする。
【0113】
一実施形態では、当該方法は、ビスアミド触媒系の第1老化特徴応答を決定し;該非ビスアミド触媒系の第2老化特徴応答を決定し;そして、所定の重合条件で該第1老化特徴応答と該第2老化特徴応答とを組み合わせて多峰型触媒系の予想老化特徴応答を生成することをさらに提供する。第1及び第2老化特徴応答は、触媒の重合性能を評価するために使用される任意の特徴応答であることができ、また、好ましくは予想老化特徴応答と同一の特徴応答である。
【0114】
一実施形態では、第1老化特徴応答は、時間に応じたビスアミド触媒系の触媒生産性応答であるのに対し、第2老化特徴応答は、時間に応じた非ビスアミド触媒系の触媒生産性応答である。ここで使用するときに、触媒生産性応答とは、所定の重合条件での触媒系の触媒生産性又は重合条件に応じた触媒生産性モデルをいう。
【0115】
別の実施形態では、第1老化特徴応答は、保存時間後のビスアミド触媒系の第1分子量分布応答であるのに対し、第2老化特徴応答は、時間に応じた非ビスアミド触媒系の第2分子量分布応答である。別の実施形態では、第1老化特徴応答は、時間に応じたビスアミド触媒系の第1メルトインデックス応答であるのに対し、第2老化特徴応答は、時間に応じた非ビスアミド触媒系の第2メルトインデックス応答である。
【0116】
本発明の一実施形態では、第1老化特徴応答及び第2老化特徴応答は、該反応の特徴付けにかかる時間を短縮するために加速老化方法を使用して決定される。さらなる実施形態では、加速老化方法は、老化特徴応答を特徴付けるためにハイスループット重合ユニットを使用する。
【0117】
老化特徴の「応答」を定量するためには、生成物特性又は重合特性を予測するために使用できるモデルを開発することが好ましい。当業者であれば、多峰型触媒及び/又は該多峰型触媒系を含む個々の触媒系の応答を定量するための試験を実施できる。これらのモデルは、様々な応答の序列を含むことができる多項式数学モデルであることができる。本発明の一実施形態では、第1老化特徴応答の第1モデル及び第2老化特徴応答の第2モデルを一次分解又は二次分解の仮定に基づき策定する。別の実施形態では、多峰型触媒系の予想老化特徴応答を一次分解又は二次分解の仮定に基づき策定する。
【0118】
触媒系は、通常、保存のために又は触媒の製造施設と重合体の製造施設との間での輸送のために携帯型のコンテナ又は容器内に置かれ及び/又はその中で輸送される。この携帯型コンテナ又は容器を、単に工場内で移動させたり、トラック、航空機又は船舶により世界中の他の工場の場所に輸送したりすることができる。携帯型容器は、シリンダー、ドラム、DOTで許可を受けたコンテナ又は他の任意の好適な携帯型容器であることができる。多峰型触媒の老化を制御するためには、携帯型容器を上記のような制御温度で保持することができる。一実施形態では、携帯型容器は、当該携帯型容器を制御温度環境、例えば冷蔵トラック又は輸送容器内に置くことによって制御温度で保持される。代わりに、携帯型容器は、携帯型容器の内部を制御温度に維持する任意の他の好適な方法を備えることができる。したがって、本発明は、次の工程:ビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系を含む多峰型触媒系を準備し;そして該多峰型触媒系を携帯型容器内で輸送する工程を含み、該携帯型容器を約21℃未満の制御温度で維持し、好ましくは該形態容器を約1℃未満の制御温度で維持し、より好ましくは該携帯型容器を約−9℃未満の制御温度で保持する、ここで説明した多峰型触媒系のうち任意のものの老化を制御する方法も提供する。
【0119】
実施形態の一部類は、多峰型触媒系又は触媒系を含むコンテナ又は容器であって、該多峰型触媒系又は触媒系を制御温度で保持するものも提供する。少なくとも一つの実施形態では、該コンテナ又は容器を該コンテナ又は容器内にある間に撹拌することができる。
【0120】
簡潔にするために、本明細書では所定の範囲しか明示的に開示していない。しかしながら、任意の下限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定することができるだけでなく、任意の下限値からの範囲を任意の他の下限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定することができ、また同じ方法で、任意の上限値からの範囲と任意の他の上限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定することができる。さらに、所定の範囲内には、たとえ明示的に規定されていなくても、その限界点間にある全ての点又は個々の値が包含される。したがって、全ての点又は個々の値は、それ自体が、任意の他の点若しくは個々の値又は任意の他の下限値若しくは上限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定するための下限値又は上限値として機能することができる。
【0121】
全ての優先権書類は、援用が認められる全ての管轄について、そのような開示が本発明の記載と一致する範囲内で、参照により完全に援用される。さらに、試験手順、刊行物、特許文献、論文など、ここで引用した全ての文献及び刊行物は、援用が認められる全ての管轄について、そのような開示が本発明の記載と一致する範囲内で、参照により完全に援用される。
【0122】
本発明をその特定の実施形態と共に説明してきたが、前の説明は、本発明を例示するものであって本発明の範囲を限定するものではないことを了解すべきである。他の側面、利点及び改変は、本発明の属する技術分野において通常の知識を有するものであれば明らかであろう。
【0123】
したがって、次の実施例は、当業者に対して、本発明の化合物の作製方法又は使用方法に関する完全な開示及び説明を与えるために提供するものであり、本発明者が彼らの発明であると見なす発明の範囲を限定すること意図するものではない。
【実施例】
【0124】

以下の例で説明する重合試験では、試験触媒を、65℃、225psigの全系圧力、200psiのエチレン圧、0.007のC6/C2比(連続)及び0.004のH2/C2比 (連続)で保持された気相試験反応器に注入する。重合時間は1時間であった。二重データセットを使用した実験における標準偏差は10%未満であることがわかり、また、三重データセットについては、標準偏差は1.8%〜8.2%の範囲であった。例1〜5における触媒系の応答は、バッチ式気相反応器で決定した。以下の実験で報告したフローインデックス値は、ASTM D−1238に従って432psi及び190℃で測定されたI21フローインデックス値である。
以下の実験において、分子量分布(MWD)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して特徴付けた。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を含めた分子量は、高温サイズ排除(SEC)クロマトグラフィーを使用して決定した。試料は次のとおりに調製した:7.5mgの試料を10mLの1,2及び4−トリクロルベンゼンに160℃で溶解させる。加熱シリンジを使用して、試料を自動サンプラーガラス瓶中に置く。装置条件は次のとおりであった:300μLの試料を3つのShodex混床式カラム、低分子量カラム及び保護カラム上に注入する。カラム温度は140℃であった。この装置はポリマーラボラトリーズHT−GPC220であった。原データをTriSEc収集プログラムにより取得した。そしてこのデータを社内プログラムにより処理する。
【0125】
例1
多峰型触媒系の老化が触媒の生産性に及ぼす影響を示すために、二峰型触媒を、噴霧乾燥された乾燥粉末ビスアミド/非ビスアミド触媒混合物(3.5モル比)を使用して試験した。このビスアミドは、[(2,3,4,5,6−Me56)NCH2CH22NHZrBz2(ここで、Bzは以下に示すベンジルである:
【化2】
【0126】
非ビスアミドは、以下に示すようなメタロセン触媒のペンタメチルシクロペンタジエニル(n−プロピルシクロペンタジエニル)ZrCl2であった:
【化3】
【0127】
活性剤はメチルアルモキサンであった。噴霧乾燥触媒の組成は、Zr(0.045mmol/g触媒)、Al(5.7mmol/g触媒)、残留トルエン(3.7重量%)及びCaboSil TS610充填剤(触媒残部)であった。乾燥粉末触媒を40、60及び75℃で維持されたホークボンベ内で保存した。これらの結果を以下の表1及び添付した図1に与えている。図から分かるように、温度は老化をかなり加速させる。75℃では、生産性は、1日に70%減少する;60℃では7%減少し、40℃では減少しない。1週間では、生産性の減少は、75℃、60℃及び40℃でそれぞれ77%、39%及び11%である。
【表1】
【0128】
例2
上記と同一の二峰型触媒の生産性を、制御された冷温条件及び暖温条件で保存した場合で検討した。乾燥粉末系と、22重量%の固形物、10重量%のヘキサン及び68重量%の鉱油(Hydrobrite380)から構成される触媒系懸濁液とを試験した。加速老化試験を60℃で実施した。これらの結果を表2及び図2に与える。懸濁液(スラリー)のほうが固体よりも老化することが分かる。このスラリーは、1日後に28%生産性を失い、また同じ温度で1週間に約50%生産性を失う。これに対し、固体は、1日で10%、1週間で40%失う。
【0129】
次いで、代表のスラリーを−10℃のフリーザー内に保存し、そして老化を7ヶ月の期間にわたり測定した。老化は実際に遅れ、最初の3ヶ月でごく僅かの生産性の低下が見られ、次の3ヶ月で約10%の低下が見られた。また、図2においては、−10℃で保存されたスラリーと、60℃で保存された固体及びスラリーとを比較している。−10℃での冷却保存の3ヶ月間では、当該スラリー中における触媒系は、概してその生産性を保持したのに対し、60℃ではその活性のほぼ75%を失った。
【表2】
【0130】
例3
触媒老化が分子量に及ぼす影響を、例1に記載した同一の二峰型触媒を使用して60℃の加速条件で検討した。重合体生成物を、未使用の同一の二峰型触媒バッチを使用して製造し、そして60℃で所定期間にわたり老化させた。得られた結果を表3及び図3に与える。老化により、低分子量ピークのサイズが次第に増大し、またHMWピークのサイズが減少した。また、老化によってFIも増加したことに留意されたい。
【表3】
【0131】
上記表3及び4において、
実験Mnは、実験に基づく数平均分子量であり;
実験Mwは、実験に基づく重量平均分子量であり;
実験Mw/Mnは、実験に基づく重量平均分子量を実験に基づく数平均分子量で割ったものであり;
推定Mnは、数平均分子量の推定値であり;
推定Mwは、重量平均分子量の推定値であり;
推定Mw/Mnは、重量平均分子量推定値を数平均分子量推定値で割ったものであり;
LMW Mnは、低分子量成分の数平均分子量の測定値であり;
LMW Mwは、低分子量成分の重量平均分子量の測定値であり;
LMW Mw/Mnは、低分子量成分の重量平均分子量測定値を数平均分子量測定値で割ったものであり;
LMW重量%は、重合体試料中における低分子量成分の重量パーセントであり;
HMW Mnは、高分子量成分の数平均分子量測定値であり;
HMW Mwは、高分子量成分の重量平均分子量測定値であり;
HMW Mw/Mnは、高分子量成分の重量平均分子量測定値を数平均分子量測定値で割ったものであり;
HMW重量%は、重合体試料中における高分子量成分の重量パーセントであり;
Sum Err^2は、二乗誤差の合計であり;
FIはI21フローインデックスである。
【0132】
例4
老化制御の肯定的な面及び分子量分布に及ぼす影響を、例3で使用したの同じ触媒で−10℃で保存したものを使用して得られた重合体についてSECで実証した。30週間にわたって製造された重合体中において見出された分子量分布を表4及び図4に示す。HMW、FI及びHMWスプリットの変動は、測定値で予想される変動性の範囲内である。図4では、冷却保存の30週間の間に互いに重複するピークを見ることができる。したがって、−10℃での保存により、その特徴的属性、つまり重合体生成物の特性は変化しない。
【0133】
【表4】
【0134】
例5
上記例で説明した多峰型触媒の老化を40、60及び75℃で実施した。伝統的な単一部位動力学モデルがこれらの温度での老化挙動をどの程度明らかにするのかを調査するために、一次分解及び二次分解を試験した。それらの速度定数をリニア・プロットによって得た。活性化エネルギーグラフについてのデータを速度定数から得、そしてアレニウスプロットについて作表した。活性化エネルギーを使用して、これらの速度定数を計算し、様々な保存時間での生産性をそれぞれの動的表現から計算した。40、60及び75℃での実験データを様々なモデル予測と比較した。モデルは、75℃ではそれほどよく予測しないこと;一次及び二次は、60℃で1週間という短期間についてのみ有用であること;一次及び二次の両方は、50日の試験期間中に40℃で妥当に機能したことが分かった。これら二つのモデルを超えて、一次分解はそれよりも単純であり、かつ、40℃での老化の第一近似のために使用できる。この一次モデルは次の通りである:
P/P0=Exp(−k*t)
(ここで、P及びP0は、それぞれ時間t及び0での生産性であり;kは、温度Tでの速度定数であり、tは日で表す保存時間である。)
LN(k)=(−13859/T+38.988)
(ここで、T=°Kで表す保存温度である。)
生産性の%低下=(P/P0 −1)*100
={[exp(−k*t)]−1}*100。
【0135】
40℃で試験した二峰型触媒の老化についての単純表現式は、
生産性の低下(%)= −0.4566*保存時間(日)。
【0136】
一次モデル及び実験結果の比較を表5に示す。
【0137】
【表5】
【0138】
例6
ビスアミド及び非ビスアミド触媒系について別々に試験を実施して、選択した二峰型触媒系を含む2種の触媒系の熱安定性を評価した。これら2種の触媒(噴霧乾燥)のオイルスラリーを数日にわたり60℃に加熱し、その後エチレン/ヘキセン共重合体試験をHTPTユニットで行った。
【0139】
機械撹拌器を備えたガラス内張5ミリリットルオートクレーブ反応器内でHTPTを使用して重合を実行した。この反応器を乾燥させ、そして115℃で完全に脱ガスさせた。希釈剤、共単量体及び掃引剤を室温及び大気圧で添加した。次いで、この反応器を処理圧力にし、そして800回転で撹拌しながらエチレンを装入した。触媒系をシリンジによりこの反応器にプロセス条件で添加した。一定のエチレン取り込みが記録されるまで(ca.0.15g重合体に相当)又は最大の反応時間が経過するまで、この反応容器を目標プロセス温度の2℃以内及び2psigの目標プロセス圧力に維持しつつ重合を続行した(要求に応じたエチレンの自動添加により)。反応を停止し、重合体を反応混合物の真空遠心分離によって回収した。塊状重合活性を、重合体の収量を全触媒装入重量、時間(h)及び絶対単量体圧力(気圧)で割ることによって算出した。重合生産性は、重合体収量を触媒装入量(g)と時間(h)で割ることによって算出した。
【0140】
HTPTユニットは、ビスアミド/非ビスアミド比が>1.0であった触媒処方物に対してMwが比較的高いHTPT生成単峰型生成物のPPRにおいて単一の触媒を試験する(ただし、多峰型触媒の試験を行う)のに有用である。理論に縛られるわけではないが、この理由の少なくとも一部は、選択したビスアミド触媒系及び非ビスアミド触媒系の動力学的プロフィルが劇的に異なるためであると考えられる。表6から分かるように、ビスアミド触媒系の生産性の低下は、ほぼ47%であったのに対し、非ビスアミド触媒系の触媒生産性の低下は20%にすぎなかった。したがって、このHTPT試験は、触媒老化が多峰型触媒成分それぞれに及ぼす影響を予測することができる。
【表6】
【0141】
「から本質的になる」及び「からなる」という句は、特に示さない限り、他の工程、要素又は材料を、本明細書において具体的に言及したかどうかを問わず、このような工程、要素又は材料が本発明の基本的かつ新規な特徴に影響を及ぼさない限りにおいて除外するものではく、さらに、使用する要素及び材料と本来的に関連のある不純物を除外するものでもない。
【0142】
簡潔にする目的で、本明細書では所定の範囲のみしか明示的に開示していない。しかしながら、任意の下限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定することができるだけでなく、任意の下限値からの範囲を任意の他の下限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定することもできるし、同じ方法で、任意の上限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定することができる。さらに、所定の範囲内には、その限界点間の全ての点又は個々の値が、たとえ明示的に規定されていなくても包含される。したがって、全ての点及び個々の値は、それ自体が、任意の他の点若しくは個々の値又は任意の他の下限値若しくは上限値と組み合わせて明示的に規定されていない範囲を規定するための下限値又は上限値として機能することができる。
【0143】
全ての先行技術文献は、援用が認められる全ての管轄について、そのような開示が本発明の記載と一致する範囲において、参照により本明細書において完全に援用される。さらに、試験手順、刊行物、特許文献、学術論文など、本明細書で引用した全ての文書及び参考文献は、援用が認められる全ての管轄について、そのような開示が本発明の記載と一致する範囲において、参照により本明細書において完全に援用される。
【0144】
本発明を多数の実施形態及び実施例について説明してきたが、この開示の利益を有する当業者であれば、ここに開示している本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、他の実施形態を想起できることが分かるであろう。
図1
図2
図3
図4