【実施例】
【0015】
本発明はたくさんのタイプのクレーンに対する適用性を有しているけれども、以下においては、
図1に作動状態で示されている移動式巻き上げクレーン10に関連させて本発明を説明する。移動式巻き上げクレーン10は、車体12とも称される下方構造と、クローラ14及び16の形態の可動の接地部材とを備えている。2つの前方クローラ14と2つの後方クローラ16とが備えられていることは勿論であるが、
図1の側面図においては、これらの各々の一つだけを見ることができる。クレーン10においては、当該接地部材は、各側に1つのクローラを有するちょうど一組のクローラとすることができる。もちろん、ここに示されているものではなく付加的なクローラやタイヤのような他のタイプの接地部材を使用することができる。
【0016】
回転床20はクレーン10の上方構造の一部であり且つ前記接地部材に対して旋回できるように車体12に回転可能に結合されている。下方構造と上方構造とのうちの一方は、その面上に歯を有しているリングギヤを備えている第一の構造を有しており、当該下方構造と上方構造とのうちの他方は、本発明の駆動装置が取り付けられている第二の構造を有している。クレーン10においては、回転床は、リングギヤを備えている旋回リングによって車体12に取り付けられており、その結果、回転床20は接地部材14,16に対して軸線を中心に旋回できる。回転床は、当該回転床の前方部分に枢動可能に取り付けられているブーム22と、その第一の端部によって当該回転床上に取り付けられているマスト28と、当該マストと回転床の後方部分との間に結合されている後方連結器30と、可動のカウンタウェイトユニット34とを支えている。カウンタウェイトは、支持部材上の個々のカウンタウェイト部材44の多層積み重ね形態とすることができる。
【0017】
マスト28の頂部とブーム22との間に装備されているブーム巻き上げ索具(以下において更に詳細に説明されている)は、クレーンによって吊り上げられる荷のバランスをとるためにカウンタウェイトを使用することができるように、ブームの角度と伝達荷重とを制御するために使用されている。荷吊り上げワイヤロープ24が、フック26を支持しているブーム上のプーリーの周囲に這わされている。当該荷吊り上げワイヤロープは、他端が、回転床に結合されている第一の主要な荷巻き上げドラム70に巻き付けられている。回転床20は、運転室、ブーム巻き上げ索具のための巻き上げドラム50、第二の主要な巻き上げドラム80及び滑車ワイヤロープのための補助的な荷巻き上げドラム90のような移動式巻き上げクレーン上に通常見出される他の部材を備えている。所望ならば、
図1に示されているように、ブーム22は、主ブームの頂部に枢動可能に取り付けられているラフィング(引き込み)ジブ23又はその他のブーム構造を備えていても良い。ラフィングジブ23が備えられている場合には、クレーンは、第一及び第二のジブ支柱27及び29並びにこれに関連するラフィングジブ索具及びラフィングジブ吊り上げドラム100を備えることができ、当該ドラム100は、図示されている実施例においては、回転床20の前方ローラー担持装置上に取り付けられている。ラフィングジブ吊り上げワイヤロープ19は、ドラム100からジブ支柱27と29との間の角度を制御する索具まで延びている。
【0018】
後方連結器30はマスト28の頂部に隣接しているけれども、当該マストに係合されている他の部品と干渉しないようにマストから十分に離して結合されている。後方連結器30は、
図1に示されているように、圧縮荷重及び引っ張り荷重の両方に耐えるように設計されているラティス部材を備えていても良い。クレーン10においては、マストは、掴み取り作業、移動作業及び据え置き作業のようなクレーンの動作中に、回転床に対して固定された角度に保持される。
【0019】
カウンタウェイトユニット34は、回転床20の残りの部分に対して動かすことができる。マストの頂部に隣接して結合されている引っ張り部材32は、カウンタウェイトユニットを吊り下げ状態に支持する。当該カウンタウェイトユニットをマストの頂部の前方の第一の位置へと動かし且つこの位置に保持することができ、或いはマストの頂部の後方の第二の位置へと動かし且つこの位置に保持することができるように、カウンタウェイト移動構造が回転床とカウンタウェイトユニットとの間に結合されている。このことは、米国特許出願第12/023,902号に更に詳細に説明されている。
【0020】
油圧シリンダ又は代替的にはラックとピニオンとのアセンブリのような少なくとも一つの直線作動装置36と、第一の端部が回転床に枢動可能に結合されており且つ第二の端部が直線作動装置36に枢動可能に結合されている少なくとも一つのアームとが、カウンタウェイトの位置を変えるためにクレーン10のカウンタウェイト移動構造内で使用されている。直線作動装置36の伸長及び収縮によって回転床に対するカウンタウェイトユニットの位置を変えることができるように、当該アームと直線作動装置36とは、回転床とカウンタウェイトユニットとの間に結合されている。
図1には最も前方位置にあるカウンタウェイトが示されているけれども、直線作動装置36は、部分的に又は一杯まで伸長して、カウンタウェイトを、中央位置或いは後方位置又は荷がフック26によって吊り下げられるときのようなあらゆる中間の位置へ移動させる。
【0021】
カウンタウェイト移動構造の好ましい実施例においては、回転床20と直線作動装置36の第二の端部との間には、固相溶接板構造とすることができる枢動フレーム40が結合されている。枢動フレーム40とカウンタウェイトとの間には、後方アーム38が結合されている。後方アーム38もまた、枢動フレーム40に結合されている端部に角度が付けられた部分39を備えている溶接板構造である。これは、アーム38が枢動フレーム40と整列せしめられて直に結合されることを可能にしている。後方連結器30は、必要とされるときにカウンタウェイト移動構造が脚部間を通過するのを可能にするように、相対的に離して拡げられた下方脚部を備えたA字形状を有している。
【0022】
クレーン1は、幾つかの国ではクレーン規格に適合することが要求されるかも知れないカウンタウェイト支持装置46を備えていても良い。当該カウンタウェイト移動構造とカウンタウェイト支持構造とは、米国特許出願第12/023,902号に更に詳細に説明されている。
【0023】
ブーム巻き上げ索具は、ブーム巻き上げドラム50に巻き付けられ且つ下方平衡装置47上及び上方平衡装置48のスリーブ内を通されているワイヤロープ25の形態のブーム巻き上げワイヤロープを備えている。当該ブーム巻き上げドラムは、回転床に結合されているフレーム60(
図2)に取り付けられている。索具はまた、ブームの頂部と上方平衡装置48との間に結合されている固定長さの吊束21をも備えている。下方平衡装置47は、マスト28を介して回転床20に結合されている。この構造は、ブーム巻き上げドラム50の回転によって下方平衡装置47と上方平衡装置48との間のブーム巻き上げワイヤロープ25の量が変えられ、それによって、回転床20とブーム22との間の角度を変えることができるようにしている。
【0024】
ブーム巻き上げドラムのフレーム60、下方平衡装置47及び上方平衡装置48は、各々、協働する取り付け構造を備えており、それによって、下方平衡装置と上方平衡装置とは、ブーム巻き上げドラムのフレームに取り外し可能に結合させることができ、その結果、ブーム巻き上げブランク材、下方平衡装置、上方平衡装置及びブーム巻き上げワイヤロープは、結合されたアセンブリとして運搬することができる。作業現場間での運搬のためのものであるような配置とされている結合されたブーム巻き上げドラム50、フレーム60、下方平衡装置47及び上方平衡装置48は、米国特許出願第61/098,632号に説明されている。
【0025】
クレーン10は、各々がフレームに取り付けられており且つ積み重ねられた形態で回転床に結合されている4つのドラムを備えていると共に、前方ローラー担持装置に取り付けられたフレームに取り付けられている第五のドラムをも備えている。前記4つの積み重ねられたドラムのうちの2つのドラムのフレームは、回転床に直に結合されており、一方、他の2つのドラムのフレームは、回転床に直に結合されている前記2つのドラムのうちの少なくとも一方に直に結合されることによって、回転床に間接的に結合されている。この場合には、当該4つの積み重ねられたドラムは、荷吊り上げワイヤロープ24が巻き付けられた第一の主たる荷巻き上げドラム70と、荷吊り上げワイヤロープ17が巻き付けられた第二の主たる荷巻き上げドラム80と、滑車ワイヤロープ13が巻き付けられた補助的な荷巻き上げドラム90と、ブーム巻き上げワイヤロープ25が巻き付けられたブーム巻き上げドラム50とであるのが好ましい。当該補助的な荷巻き上げドラム90のフレーム91と、第二の主たる荷巻き上げドラム80のフレーム81とは、回転床に直に結合され、一方、ブーム巻き上げドラム50のためのフレーム60はフレーム81に結合されるのが好ましい。この点に関して、ブーム巻き上げドラム50のフレームは、このようにして第二の主たる荷巻き上げドラムのフレーム81の頂部に積み重ねられ且つ直に釘付けされており、前記第一の荷巻き上げドラムのフレーム71は、補助的な荷巻き上げドラムのフレーム91の頂部に積み重ねられ且つ直に釘付けされている。クレーン10においては、マスト28とブーム停止装置15とは、フレーム71に対する結合部を介して回転床20に直に取り付けられている。
【0026】
図3において最も良くわかるように、クレーン10の回転床20の下方部分は、3つの主要なアセンブリと、回転床の中央フレーム41と、前方ローラー担持装置42と、後方ローラー担持装置43とによって形成されている。
図3にはまた、車体12の一部分であるローラー経路31とリングギヤ33とが図示されている。図面に示されているリングギヤ33の歯35(
図4)は、当該リングギヤの内面に設けられている。米国特許出願第61/099,098号に記載されているように、車体は個々の部品によって構成することができ、ローラー経路31とリングギヤ33とは、車体部分にボルト止めされ且つ当該車体部分と一緒に運搬される部分として作られるのが好ましい。次いで、完成されているローラー経路31とリングギヤ33とが、車体12の各部が作業現場において組み立てられるときに形成される。もちろん、本発明は、一般的な形態で作られているリングギヤを備えたクレーンに適用することができる。ローラー担持装置は、ローラー経路上のローラー37(
図5)上に載置されており且つ
図12において最も良くわかるように一般的なフックとローラーとのアセンブリ53を介して車体に結合されたままである。
【0027】
クレーン10は、リングギヤの歯35と駆動接触状態にある複数のピニオンギヤを使用している。図面に示されている実施例においては、旋回駆動装置内に8つのピニオンギヤが設けられており、各々が関連する油圧駆動モーター及びギヤボックスを備えている。簡素化のために、且つ、油圧モーター、ギヤボックス及びピニオンギヤの組み合わせは一般的な設計であり本発明において使用されるときには常に相互に結合されるので、この組み合わせはピニオンギヤ駆動装置と称されている。当該8つのピニオンギヤ駆動装置は、
図4及び5に示されているように、各々が一対のピニオンギヤ駆動装置49を備えている4つの別個の旋回駆動アセンブリとして構成されている。各旋回駆動アセンブリ45は、前方及び後方のローラー担持装置42及び43の各々の横方向端部のうちの一方の端部に取り付けられている。旋回駆動アセンブリ45のピニオンギヤ駆動装置の各対は、共通のフレーム63に取り付けられている。2つのピニオンギヤ駆動装置を保持しているフレームの部分は堅牢である。当該「堅牢」とは、ピニオンギヤ駆動装置が、フレームによって相互に固定された位置に保持されていることを意味している。フレーム63はまた、同じフレームに取り付けられている少なくとも一つ好ましくは2つのガイドローラをも備えており、当該ガイドローラは、リングギヤ33の歯35を備えている面と反対側の面で当該リングギヤと係合している。このようにして、当該ガイドローラは、ピニオンギヤを大径の内歯リングギヤ33と噛み合った状態に保持するように機能している。
【0028】
フレーム63は、ピニオンギヤと少なくとも1つのガイドローラ55との間の距離の調節を可能にする調整面を備えている。駆動アセンブリ45が2つのガイドローラ55を備えている場合には、各アセンブリのピニオンギヤと2つのガイドローラとの間の距離の個別の調整を可能にする2つの調整構造が使用される。ガイドローラ55は、(第一及び第二のローラーホルダによって作られている)部材上に取り付けられており、当該部材は、2つのガイドローラ間に第一のヒンジ軸を備えており且つ第二のヒンジ軸によってフレーム63の残りの部分に結合されている。
図12において最も良くわかるように、フレーム63は、第一及び第二のローラーホルダ64及び65と、第一及び第二のヒンジ軸66及び67とを備えている。第一のヒンジ軸66は、第一のローラーホルダ64をフレーム63の主要部分に結合している。第二のヒンジ軸67は、第二のローラーホルダ65を第一のローラーホルダ64結合している。
【0029】
ガイドローラとピニオンギヤとの間の距離aは、
図4及び5において最も良くわかる一対の引き締め金具によって調整されるのが好ましい。当該引き締め金具56のうちの一方を
図12及び13において詳細に見ることができる。引き締め金具の調整によって、ピニオンとリングギヤとの間のバックラッシュが制御される。第一の引き締め金具は、第一のローラーホルダ64の、フレームの残りの部分までの距離を調整するように機能する。両方の引き締め金具は、第二のローラーホルダ65の、フレーム63の残りの部分までの距離を調整するように機能するが、この距離は、第二のローラーホルダ65の遠い方の端部において第二の引き締め金具の作用によって別個に調整することができる。
【0030】
枢動リンク74は、フレームとクレーン構造との間の2つの軸線によってフレーム63をクレーンの残りの部分に結合している。当該枢動リンクは、特に、駆動アセンブリ45をより円滑に作動させる。リンク74は、各端部が2つの枢動軸75及び76のうちの一方に結合されているプレート構造を備えており、枢動軸線は、フレーム63と枢動軸75と間の第一の枢動結合部によって提供されており、第二の枢動結合部は、第二の枢動軸76とローラー担持装置の主フレームとの間に設けられている。
図12において最も良くわかるように、当該プレート構造は、軸79を通されて相互に結合されている二つのプレートの組77及び78を備えている。軸79は、プレート77と78とが、フレーム63を保管位置へと移動することができるように再構成されるのを可能にする。頂部の軸79は取り外すことができ、フレーム63はプレート77が下方の軸79を中心として枢動できるように持ち上げることができる。次いで、上方の軸が、プレート77内の穴(図示せず)と整合しているプレート78内の第二の穴69内に再度挿入される。この位置において、引き締め金具56は、フレーム63の主要部分から分離させることができ、このとき、ガイドローラ55はリングギヤ33を通り過ぎて旋回しても良い。この保管形態において、引き締め金具56とローラーホルダ64及び65とは、ローラー55がピニオンギヤ駆動装置49の側部にあるように軸66を中心として枢動する。
図12及び13に示されている保持装置58は、引き締め金具56を運搬のための安定した位置に保持するために、フレーム63の主要部分から分離された引き締め金具の端部に結合されている。次いで、駆動装置がローラー担持装置に近くで旋回することができるように、フレーム63及びリンク74の全体が軸76を中心として枢動することができる。運搬のためにローラー担持装置42又は43の重量を減じる必要がある場合には、当該駆動装置は、軸79を引っ張ることによって完全に取り外すことができる。
【0031】
ピニオンギヤがギヤボックスによって駆動されると、当該ギヤの組は、ピニオンギヤをリングギヤとの噛み合い状態から外すように引っ張る径方向内方への力を発生する。主フレーム63に取り付けられているガイドローラ55は、リングギヤ33の外径に沿って進むことによってピニオンギヤを噛み合い状態に保持するように設計されている。調整用の引き締め金具56を縮めたり伸ばしたりすることによって、バックラッシュを制御することができる。枢動リンク74を使用することによって、この装置に自由度が付加され、これによって駆動アセンブリがリングギヤ33上に“自由に動く”ことが可能になる。枢動リンク74は、接線方向の旋回駆動力の全てをローラー担持装置に伝える。垂直方向の力(重力及びピッチ公差)を無視すると、ピニオンギヤ及びガイドローラは、主要取り付け構造とは独立して作動する。このことにより、支持構造の動きは、事実上は、ギヤの噛み合い作用を及ぼさず、従って、支持構造上の枢動中心軸の正確な位置は、以前の装置よりも重要性が遙かに低い。これによって、軸穴の公差をより大きくすることができ、その上、中心軸の軸受け及びこれに関連する部品の隙間も増すことができ、これによって潜在的に全体のコストを下げられる。
【0032】
支持構造(この場合には、駆動装置が取り付けられているローラー担持装置)の動きが旋回駆動装置に対して有する、本発明の旋回駆動アセンブリ及びリンクにおいて使用される個々の構成要素を設計する際に考慮に入れられる幾つかの効果が存在する。まず第一に、支持構造の径方向の動きによって、枢動リンクがその中立位置から偏倚せしめられる。これによって、ガイドローラ55が受ける圧縮荷重の不均衡が生じる。枢動リンクが偏倚する方向に依存して、一方のガイドローラ上の荷重が増加する一方で他方は減少する。ガイドローラの荷重が決してゼロ値近くまで減少せしめられないことを確保するように設計の際に注意を払わなければならない。このことが起こると、ガイドローラに対応する駆動ピニオンは、バックラッシュが無い状態で作動して歯のかじり及び急速な摩耗が惹き起こされる。このようなガイドローラ荷重の減少をもたらす偏倚量は、設計者が枢動リンクを設計する際に考慮する絶対的な最大許容偏倚量である。
【0033】
設計の分析を簡素化するばかりでなく装置の構成要素にかかる荷重を減らし、従って、本発明の好ましい実施例において使用される2つの設計上考慮すべき点が存在する。これらの考慮すべき点は、駆動装置の種々の構成要素に作用する力が示されている概略図(
図14)を参照することによって最も良く理解できる。
図14は、係合するリングギヤの部分に関して示されている、ピニオンギヤ、ガイドローラ及び枢動結合リンクの配置を示している。
図14において、ピニオンギヤは、駆動歯が係合し且つ力を伝えると考えることができる円であるピッチ円によって表されている。同様に、リングギヤは一部分のみが示されているので、当該リングギヤは、リングギヤのピッチ円すなわちリングギヤのピッチ円弧によって一つの面上で表されている。リングギヤ及びガイドローラの外周が示されている。なぜならば、これらの外周は、これらの部材に作用する力が伝達される場所だからである。
【0034】
第一の設計上考慮すべき点は、各ガイドローラ55がそれら各々の駆動ピニオンと径方向に整合されているのが好ましいということである。言い換えると、各ガイドローラは、
図14に示されているように、旋回するギヤの半径上でピニオンギヤのうちの一つと整合されている。これによって、ギヤの噛み合い(FN)における直角方向の力が、旋回駆動アセンブリにモーメントを付加することなくガイドローラ(R1及びR2)によって付加される径方向の力と均衡が保たれる。
【0035】
第二の設計上考慮すべき点は、枢動リンク74の中立位置を、枢動リンクの作用線がギヤの噛み合いによる接線方向の力同士の交点に合うように配置することである。なぜならば、これらは両方とも垂直方向に取り付けられており、2つの枢動軸線は両方とも、
図14において線85によって示されている同じ垂直面内にあり、この面は、点88において、ピニオンギヤとリングギヤの歯とのギヤの噛み合いからの接線方向の力(FT)を表している線86と87との交点と交差しているからである。ピニオンギヤは円形経路上で作動するので、ギヤの噛み合いの各々の駆動負荷は、枢動リンクが適正に配置されていない場合には異なる方向に向けられてモーメントを発生させる。枢動リンクの偏倚が考慮される場合には、負荷の分析は依然として必要であるが、これは初期の設計レイアウトを簡素化させる。
【0036】
クレーン10が組み立てられ且つ旋回駆動装置が設置されるときに、バックラッシュの設定及び調整手順は以下のように行われる。1)旋回アセンブリが機械に取り付けられた状態で、ピニオンギヤがリングギヤ33と緊密に噛み合う状態となるまで両方の引き締め金具56を締め付け、2)支持構造に最も近い引き締め金具を半回転だけ緩め、3)特定のバックラッシュが得られるまで、支持構造から最も遠い引き締め金具を緩め、4)特定のバックラッシュが得られるまで、支持構造に最も近い引き締め金具を緩め、5)全てのバックラッシュの調整がなされた後に、360度の動作範囲に亘って機械をゆっくりと旋回させてバックラッシュが十分であることを確認する。指定されるバックラッシュは、駆動装置及びリングギヤ(特に、ピニオンギヤの直径及び歯の直径ピッチ)並びにクレーンの他の特徴に応じて変化する。しかしながら、適切なバックラッシュは、当業者が標準的なギヤ設計ハンドブックを参考にして決定することができる。添付図面に示されている実施例においては、ガイドローラとリングギヤの外周との間のクリアランスは1.52ミリメートル(0.06インチ)が適当であると判断される(これは、約38.1センチメートル(約15インチ)のピッチ円直径と1直径ピッチ歯サイズを有するピニオンギヤの場合に歯車の組内に1.55ミリメートル(0.061インチ)のバックラッシュを形成する)。
【0037】
一つの共通のフレーム内に2つの駆動ピニオンギヤを使用することによって、同じ数のピニオンギヤを旋回駆動装置内で使用するために個々に分離し運搬し再結合させなければならない構成要素の数を、各ピニオンギヤを別個に取り付ける場合と比較して半分に減らすことができる。上記した利点に加えて、本発明は、より少ないピニオンギヤが使用される場合には、必要とされるトルクよりも低いトルクのモーターをピニオンギヤのために使用できるようにする。このことは極めて大きなクレーンに対するコストを低減させる。なぜならば、トルクが比較的低いモーターとギヤボックスとの組み合わせの価格は、2倍のトルクを発生することができるモーターとギヤボックスとの価格の半分未満であるからである。更に、この設計はより長い推定寿命を有する駆動装置をもたらす。
【0038】
本明細書において説明されている現在のところ好ましい実施例に対する種々の変更及び改造が当業者にとって明らかとなることは理解されるべきである。例えば、1又は2個のガイドローラによってリングギヤに当接されて定位置に保持されるピニオンギヤの代わりに、リングギヤよりもピニオンギヤの後方からの力を発生する構造のような幾つかの他の構造を使用することができる。リングギヤが車体上に取り付けられた装置を示したが、当該リングギヤを回転床に取り付け且つピニオンギヤを車体に取り付けることができる。また、歯が内径面上に設けられたリングギヤを示したけれども、当該歯はリングギヤの外径上に配置することができる。このような変更及び改造は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく且つ意図されている利点を減らすことなく行うことができる。従って、このような変更及び改造が特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。