(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676130
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】油圧ポンプの制御方法および同方法を用いた建設機械
(51)【国際特許分類】
F15B 11/00 20060101AFI20150205BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
F15B11/00 N
E02F9/22 A
E02F9/22 C
E02F9/22 R
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-79935(P2010-79935)
(22)【出願日】2010年3月30日
(65)【公開番号】特開2011-208790(P2011-208790A)
(43)【公開日】2011年10月20日
【審査請求日】2012年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 憲夫
(72)【発明者】
【氏名】西谷 圭介
(72)【発明者】
【氏名】西山 雅大
【審査官】
吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−195322(JP,A)
【文献】
特開昭60−049103(JP,A)
【文献】
特開平07−189914(JP,A)
【文献】
特開平04−083906(JP,A)
【文献】
特開平06−159314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の油圧アクチュエータ、前記第1の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第1の可変容量型油圧ポンプ、第2の油圧アクチュエータ、前記第2の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第2の可変容量型油圧ポンプ、前記第1の油圧ポンプと油圧アクチュエータ間に設けられた切換弁制御弁、前記第1の油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび前記油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられたリリーフ弁を備え、さらに前記油圧アクチュエータを駆動すべく前記切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記油圧アクチュエータおよび前記リリーフ弁に限定する手段を備えた油圧駆動装置における前記油圧ポンプを制御する方法であって、同方法は、前記油圧アクチュエータを駆動すべく前記切換弁制御弁への操作指令を与える第1工程と、前記第1工程 中、前記油圧アクチュエータの速度を検出する第2工程と、前記第1工程中、前記リリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第3工程と、前記第1工程中、前記第3工程による算出結果を前記油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第4工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧ポンプの吐出圧力を検出する第5工程と、前記第3工程による算出結果と前記第5工程における検出圧力とから求まる前記第1の油圧ポンプの吸収トルクTsと前記エンジンの出力トルクTeとの差から前記第2の油圧ポンプへの指令吸収トルクTmを演算し前記第2の油圧ポンプへの指令とする第6工程とからなる前記油圧ポンプの制御方法。
【請求項2】
第1の油圧アクチュエータ、前記第1の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第1の可変容量型油圧ポンプ、前記第1の油圧ポンプと第1の油圧アクチュエータ間に設けられた第1の切換弁制御弁および前記第1の油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられた第1のリリーフ弁、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記第1の油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記第1の油圧アクチュエータおよび前記第1のリリーフ弁に限定する手段、前記第1の油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび同エンジンにより回転駆動力を与えられる第2の可変容量型油圧ポンプならびに同第2の油圧ポンプから圧油の供給を受ける複数の油圧アクチュエータおよび切換弁制御弁を備えた建設機械における前記第1の油圧ポンプを制御する方法であって、同方法は、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令を与える第1工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧アクチュエータの速度を検出する第2工程と、前記第1工程中、前記第1のリリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記第1の油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第3工程と、前記第1工程中、前記第3工程による算出結果を前記第1の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第4工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧ポンプの吐出圧力を検出する第5工程と、前記第3工程による算出結果Qとこの算出結果Qから旋回ポンプに要求される単位回転あたりの吐出容積が演算され、旋回ポンプの圧力と前記吐出容積の積として、エンジンの出力トルクと前記旋回ポンプの差が演算される第6工程とからなる前記第1の油圧ポンプの制御方法。
【請求項3】
第1の油圧アクチュエータ、前記第1の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第1の可変容量型油圧ポンプ、前記第1の油圧ポンプと第1の油圧アクチュエータ間に設けられた第1の切換弁制御弁および前記第1の油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられた第1のリリーフ弁、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記第1の油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記第1の油圧アクチュエータおよび前記第1のリリーフ弁に限定する手段、前記第1の油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび同エンジンにより回転駆動力を与えられる第2の可変容量型油圧ポンプならびに同第2の油圧ポンプから圧油の供給を受ける複数の油圧アクチュエータおよび切換弁制御弁を備えた建設機械における前記第1および第2の油圧ポンプを制御する方法であって、同方法は、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令を与える第1工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧アクチュエータの速度を検出する第2工程と、前記第1工程中、前記第1のリリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記第1の油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第3工程と、前記第1工程中、前記第3工程による算出結果を前記第1の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第4工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧ポンプの吐出圧力を検出する第5工程と、前記第3工程による算出結果Qとこの算出結果Qから旋回ポンプに要求される単位回転あたりの吐出容積が演算され、旋回ポンプの圧力と前記吐出容積の積として、エンジンの出力トルクと前記旋回ポンプの差が演算される第6工程、とからなる前記第1および第2の油圧ポンプの制御方法。
【請求項4】
第1の油圧アクチュエータ、前記第1の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第1の可変容量型油圧ポンプ、第2の油圧アクチュエータ、前記第2の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第2の可変容量型油圧ポンプ、前記第1の油圧ポンプと第1の油圧アクチュエータ間に設けられた第1の切換弁制御弁および前記第1の油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられた第1のリリーフ弁、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記第1の油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記第1の油圧アクチュエータおよび前記第1のリリーフ弁に限定する手段、前記第1の油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび同エンジンにより回転駆動力を与えられる第2の可変容量型油圧ポンプならびに同第2の油圧ポンプから圧油の供給を受ける複数の油圧アクチュエータおよび切換弁制御弁を備えた建設機械であって、同建設機械は、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令を与える操作指令手段と、前記第1の油圧アクチュエータの速度を検出する速度検出手段と、前記第1のリリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記第1の油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第1の演算手段と、前記第1の演算手段の算出結果を前記第1の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第1の吐出流量指令手段と、前記第1の油圧ポンプの吐出圧力を検出する吐出圧検出手段と、
前記第1の演算手段による算出結果と前記吐出圧検出手段の検出圧力とから求まる前記第1の油圧ポンプの吸収トルクTsと前記エンジンの出力トルクTeとの差から前記第2の油圧ポンプへの指令吸収トルクTmを演算する第2の演算手段、前記第2の演算手段の算出結果を前記第2の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第2の吐出流量指令手段、とからなることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
前記第1の油圧アクチュエータは旋回用油圧モータであることを特徴とする請求項4記載の建設機械。
【請求項6】
前記第1の油圧アクチュエータは走行用油圧モータであることを特徴とする請求項4記載の建設機械。
【請求項7】
前記速度検出手段は前記油圧モータの出力軸の回転数を検出する回転速度検出手段であることを特徴とする請求項5または6記載の建設機械。
【請求項8】
前記速度検出手段は前記油圧モータ近傍の供給又は排出路に設けられた流量センサーであることを特徴とする請求項5または6記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に使用される可変容量型油圧ポンプの制御方法に係り、特に当該ポンプから油圧アクチュエータに供給される圧油の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、例えば油圧ショベルにおいては、通常、ブームやアーム、ショベルなどを駆動する油圧シリンダと、旋回台、走行用キャタピラまたは車両を駆動する油圧モータを備えている。これら油圧アクチュエータには、それぞれ、旋回台に搭載された制御弁ユニットの各油圧制御弁を介して油圧ポンプから所要の圧油が供給されるようになっている。
【0003】
ところで、通常、前記油圧ショベルでは油圧ポンプを駆動するために化石燃料を使用するエンジンが設けられており、地球温暖化や環境保全の観点から、油圧ショベルの省エネルギー化やエネルギーの効率化が求められている。
【0004】
例えば特許文献1の
図4で示される油圧回路において、第3油圧ポンプを介して提供される油圧により旋回独立制御が可能であると共に、旋回用油圧ポンプが作業装置用流路に合流し、旋回複合動作時に油量が不足せず、各アクチュエータの速度を維持できるようにするため、第1油圧ポンプ301の下流側から第1センターバイパスライン20に沿って順次に設けられる第1走行制御弁及302及び第1ブーム制御弁303、第2油圧ポンプ306の下流側から第2センターバイパスライン30に沿って順次に設けられる第2走行制御弁307及び第2ブーム制御弁308を有し、外部より入力される弁切換信号に応じて、旋回モータ403の駆動を制御する旋回制御弁402の中立位置で第3油圧ポンプ401から吐き出される圧油が合流するように第3センターバイパスライン40と第2ブーム制御弁308の供給流路との間に連結設置される合流ライン36を包含した構成が開示されている。
【0005】
また、前記特許文献1に記載の油圧回路の場合には可変容量型油圧ポンプの吐出量制御機構については図中で特に明示されていないが、特許文献2においては、その第1図、第4図に示されるように、可変容量型油圧ポンプ23の吐出量を制御するために、吐出ラインに圧力スイッチ34a、34bが設けられこれらの検出信号がコントローラ35に与えられそのフィードバック信号が最大吐出容積可変手段31へ与えられるようになっている。
【0006】
前記の特許文献1、2以外でも、こうした可変容量型の油圧ポンプの吐出側圧力すなわち、負荷側の圧力を検出し当該油圧ポンプの吐出量制御用のフィードバック信号に利用する制御方式がこれまで一般的に利用されている。
【0007】
一方、前記油圧ショベル等では、油圧回路において急激な圧力変化等による機器、装置等の破損をさけるためのリリーフ弁が適宜設けられている。本願の
図5はリリーフ弁の一般的な特性を説明する模式図である。
【0008】
図5の(a)は油圧回路図であって、HMは、例えば負荷LDとしての旋回台を、出力軸Xを介して駆動する油圧モータであって可変容量型のポンプPmから切換弁制御弁VLを介して圧力Pの圧油の供給を受ける。リリーフ弁RFは前記ポンプPmと油圧モータとのラインLに設けられている。
【0009】
図5の(a)中のTは油圧モータHMの出力軸Xに発生するトルク、Vthは油圧モータHMの1回転当りの理論吐出量、Paは油圧モータHMの入力圧力である。TとVthとPaの関係は、T(Nm)=Pa(MPa)×Vth(cm
3/rev)/2πであるから、油圧モータHMのVthが決定されていれば油圧モータHMの出力トルクは油圧モータ入口圧力Paにより決定される。
図5の(b)はリリーフ弁RFの入力ラインLの圧力、すなわち油圧モータ入力圧力Paとリリーフ流量Qの関係を示す。Qminはリリーフ弁RFが機能する必要最小流量であって、例えば特性C1において、設定圧CrP25MPaに設定された場合、CrP近傍の圧力P1のところでQmin(10L/min)以上の流量がリリーフ弁RFに流れていることが必要条件である。なお、Qminより大きな場合、特性C1の圧力変化がないのは、リリーフ弁が機能している状態を示す。
【0010】
図5の(c)は油圧モータHMの起動時の回転数の様子を示す。同(c)において、時刻t=0で切換弁制御弁VLに操作圧信号SGが与えられた後、時間T0経過後の時刻t0にて油圧モータHMが回転を開始し、時刻t1にて所定回転数Nsに達する様子を示す。
【0011】
この場合時間T1は、一般に、運転操縦者の操作感覚を考慮して油圧ショベルとしてほぼ一定に定められている。また、時間T0は前述したQminに達するまでの時間である。
【0012】
本願の
図6は、従来の油圧ショベル旋回モータの回転特性を示す。同図においては起動・加速の状態で油圧モータが所定の回転数に達した直後にブレーキを作用させて停止するまでの油圧モータ入口圧力Pa、油圧モータ出口圧力Pb、パイロット操作圧力Pc、油圧モータ回転速度Nmのそれぞれ波形を示す。
【0013】
さらに、本願の
図7は、油圧ショベルにおける旋回単独操作時の油圧ポンプの定馬力制御を示す波形図である。同図において、吐出圧力が13MPa近傍までは吐出量は一定であり、トルクは比例して増加するが、吐出圧力が13MPa以上では吐出量は比例して減少し、トルクは図示のように上に凸状の曲線となっている。
【0014】
本願の
図8は、油圧ショベルにおける旋回起動と加速時の油圧モータ回転特性を示すプロット波形図である。同図において、油圧モータの入口圧力Pa、回転速度Nmは、
図6のそれぞれの波形に対応している。
【0015】
本願の
図9は、従来の定馬力制御の場合における油圧ショベルの旋回起動・加速時の特性を示すプロット波形図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−13927号公報
【特許文献2】特開昭62−160333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述した特許文献2および本願の
図6〜9に示される従来の制御方式では以下のような問題がある。
【0018】
図9に示すように、旋回加速時の、特に初期状態のポンプ吐出量Qpの波形ではピーク部分が発生しており、油圧モータの回転数Nmはピーク部分の後に徐々に増加するようになっている。このため、油圧モータ入口に接続されているリリーフ弁からは加速起動時の初期に大量の圧油がタンク側へ吹き出され、結果として油圧回路系に熱を発生させることとなる。
【0019】
すなわち、従来の油圧ポンプの制御にはエンジンが発生する最大トルク内でポンプの吐出圧力に応じて吐出流量を制御し、いかなる場合でもエンジンストールが発生しない、いわゆる馬力制御或いは定トルク制御方式と呼ばれているものが主流となっている。
【0020】
この従来の制御方式は油圧ポンプの吐出圧力を検出し、これを油圧ポンプサーボ部にフィードバックし吐出流量を制御するものである。この方式では、例えば油圧モータで油圧ショベル等の上部旋回体等を起動する場合、油圧モータが回転し始める際は圧力に応じた流量が供給されるのでその大半が旋回モータに設置されたリリーフ弁よりバイパスされ、油圧装置内の油温を上昇させると共にエンジンの出力トルクを必要以上に消費し燃料を浪費している。また同様に旋回モータが回転を始めた後も必要以上の流量が供給されるためリリーフ弁より余剰流量が放出されているのである。特に油圧ショベルにおいては、旋回動作の起動、停止が頻繁に行われ、都度その起動時にリリーフ弁を介して余剰流量が放出されるため消費燃料の浪費の割合も非常に高いという問題がある。
【0021】
本願の発明者等は上述した問題点を解決すべく鋭意検討した結果、旋回駆動用の油圧モータに供給する油量を、必要最小限の油量に制御することにより前記の問題点が基本的に解決可能であることに着眼し、そのために従来の定トルク制御方式に代わって、油圧モータの回転数を検出しこれを油圧ポンプサーボ部にフィードバックして吐出流量を制御する吐出流量制御方式を採用することで実現できることを見出した。
【0022】
従って、本発明の第1の目的は、旋回モータ等の油圧アクチュエータの速度を検出し、当該油圧アクチュエータ専用の油圧ポンプへフィードバックすることにより前記油圧アクチュエータへは最適な必要最小限の流量を供給可能とする油圧ポンプの制御方法および同方法を用いた建設機械等の油圧装置を提供することにある。
【0023】
また、本発明の第2の目的は、前記制御方法による油圧ポンプの吸収トルクを演算算出し、この値がエンジンの最大出力トルクを超えないように主ポンプの吸収トルクを制御する主ポンプの制御方法および同方法を用いた建設機械等の油圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記の目的を達成するための本発明による油圧ポンプの制御方法は、油圧アクチュエータ、前記油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する
第1の可変容量型油圧ポンプ、
第2の油圧アクチュエータ、前記第2の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第2の可変容量型油圧ポンプ、前記
第1の油圧ポンプと油圧アクチュエータ間に設けられた切換弁制御弁、前記油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび前記油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられたリリーフ弁を備え、さらに前記油圧アクチュエータを駆動すべく前記切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記油圧アクチュエータおよび前記リリーフ弁に限定する手段を備えた油圧駆動装置における前記
第1の油圧ポンプを制御する方法であって、同方法は、前記油圧アクチュエータを駆動すべく前記切換弁制御弁への操作指令を与える第1工程と、前記第1工程中、前記油圧アクチュエータの速度を検出する第2工程と、前記第1工程中、前記リリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第3工程と、前記第1工程中、前記第3工程による算出結果を前記油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第4工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧ポンプの吐出圧力を検出する第5工程と、前記第3工程による算出結果と前記第5工程における検出圧力とから求まる前記
第1の油圧ポンプの吸収トルクTsと前記エンジンの出力トルクTeとの差から前記第2の油圧ポンプへの指令吸収トルクTmを演算し前記第2の油圧ポンプへの指令とする第6工程、とから構成されることができる。
【0025】
また、前記の目的を達成するための本発明による油圧ポンプの制御方法は、第1の油圧アクチュエータ、前記第1の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第1の可変容量型油圧ポンプ、前記第1の油圧ポンプと第1の油圧アクチュエータ間に設けられた第1の切換弁制御弁および前記第1の油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられた第1のリリーフ弁、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記第1の油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記第1の油圧アクチュエータおよび前記第1のリリーフ弁に限定する手段、前記第1の油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび同エンジンにより回転駆動力を与えられる第2の可変容量型油圧ポンプならびに同第2の油圧ポンプから圧油の供給を受ける複数の油圧アクチュエータおよび切換弁制御弁を備えた建設機械における前記第1の油圧ポンプを制御する方法であって、同方法は、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令を与える第1工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧アクチュエータの速度を検出する第2工程と、前記第1工程中、前記第1のリリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記第1の油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第3工程と、前記第1工程中、前記第3工程による算出結果を前記第1の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第4工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧ポンプの吐出圧力を検出する第5工程と、前記第3工程による算出結果と前記第5工程における検出圧力とから求まる前記
第1の油圧ポンプの吸収トルクTsと前記エンジンの出力トルクTeとの差から前記第2の油圧ポンプへの指令吸収トルクTmを演算し前記油圧ポンプへの指令とする第6工程、とから構成されることができる。
【0026】
さらにまた、前記の目的を達成するための本発明による油圧ポンプの制御方法は、第1の油圧アクチュエータ、前記第1の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第1の可変容量型油圧ポンプ、前記第1の油圧ポンプと第1の油圧アクチュエータ間に設けられた第1の切換弁制御弁および前記第1の油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられた第1のリリーフ弁、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記第1の油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記第1の油圧アクチュエータおよび前記第1のリリーフ弁に限定する手段、前記第1の油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび同エンジンにより回転駆動力を与えられる第2の可変容量型油圧ポンプならびに同第2の油圧ポンプから圧油の供給を受ける複数の油圧アクチュエータおよび切換弁制御弁を備えた建設機械における前記第1および第2の油圧ポンプを制御する方法であって、同方法は、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令を与える第1工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧アクチュエータの速度を検出する第2工程と、前記第1工程中、前記第1のリリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記第1の油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第3工程と、前記第1工程中、前記第3工程による算出結果を前記第1の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第4工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧ポンプの吐出圧力を検出する第5工程と、前記第3工程による算出結果と前記第5工程における検出圧力とから求まる前記
第1の油圧ポンプの吸収トルクTsと前記エンジンの出力トルクTeとの差から前記第2の油圧ポンプへの指令吸収トルクTmを演算し前記第2の油圧ポンプへの指令とする第6工程、とから構成されることができる。
【0027】
また、前記の目的を達成するための本発明による油圧ポンプの制御方法を用いた建設機械は、第1の油圧アクチュエータ、前記第1の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第1の可変容量型油圧ポンプ、
第2の油圧アクチュエータ、前記第2の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第2の可変容量型油圧ポンプ、前記第1の油圧ポンプと第1の油圧アクチュエータ間に設けられた第1の切換弁制御弁および前記第1の油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられた第1のリリーフ弁、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記第1の油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記第1の油圧アクチュエータおよび前記第1のリリーフ弁に限定する手段、前記第1の油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび同エンジンにより回転駆動力を与えられる第2の可変容量型油圧ポンプならびに同第2の油圧ポンプから圧油の供給を受ける複数の油圧アクチュエータおよび切換弁制御弁を備えた建設機械であって、同建設機械は、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令を与える操作指令手段と、前記第1の油圧アクチュエータの速度を検出する速度検出手段と、前記第1のリリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記第1の油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第1の演算手段と、前記第1の演算手段の算出結果を前記第1の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第1の吐出流量指令手段と、前記第1の油圧ポンプの吐出圧力を検出する吐出圧検出手段と、前記第1の演算手段による算出結果と前記吐出圧検出手段の検出圧力とから求まる前記
第1の油圧ポンプの吸収トルクTsと前記エンジンの出力トルクTeとの差から前記第2の油圧ポンプへの指令吸収トルクTmを演算する第2の演算手段、前記第2の演算手段の算出結果を前記第2の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第2の吐出流量指令手段、を備えて構成されることができる。
【0028】
その場合、前記第1の油圧アクチュエータは旋回用油圧モータであることが好ましい。
【0029】
またその場合、前記第1の油圧アクチュエータは走行用油圧モータであることが好ましい。
【0030】
さらにまた、前記速度検出手段は前記油圧モータの出力軸の回転数を検出する回転速度検出手段であることが好ましい。
【0031】
またその場合、前記速度検出手段は前記油圧モータ近傍の供給又は排出路に設けられた流量センサーとすることもできる。
【発明の効果】
【0036】
請求項1に記載の発明によれば、油圧アクチュエータ、前記油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する可変容量型油圧ポンプ、前記油圧ポンプと油圧アクチュエータ間に設けられた切換弁制御弁および前記油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられたリリーフ弁を備え、さらに前記油圧アクチュエータを駆動すべく前記切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記油圧アクチュエータおよび前記リリーフ弁に限定する手段を備えた油圧駆動装置における前記油圧ポンプを制御する方法であって、前記油圧アクチュエータを駆動すべく前記切換弁制御弁への操作指令を与える第1工程と、前記第1工程中、前記油圧アクチュエータの速度を検出する第2工程と、前記第1工程中、前記リリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第3工程と、前記第1工程中、前記第3工程による算出結果を前記油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第4工程、とから構成されているので、リリーフ弁での余剰流量によるエネルギー浪費を可及的に少なくすることが可能となる。
【0037】
また請求項2に記載の発明によれば、第1の油圧アクチュエータ、前記第1の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第1の可変容量型油圧ポンプ、前記第1の油圧ポンプと第1の油圧アクチュエータ間に設けられた第1の切換弁制御弁および前記第1の油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられた第1のリリーフ弁、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記第1の油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記第1の油圧アクチュエータおよび前記第1のリリーフ弁に限定する手段、前記第1の油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび同エンジンにより回転駆動力を与えられる第2の可変容量型油圧ポンプならびに同第2の油圧ポンプから圧油の供給を受ける複数の油圧アクチュエータおよび切換弁制御弁を備えた建設機械における前記第1の油圧ポンプを制御する方法であって、同方法は、
前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令を与える第1工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧アクチュエータの速度を検出する第2工程と、前記第1工程中、前記第1のリリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記第1の油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第3工程と、前記第1工程中、前記第3工程による算出結果を前記第1の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第4工程、とから構成されているので、油圧ショベル等の建設機械のエンジンにおける化石燃料の消費を節約することが可能となり、環境汚染を減少することができる。さらに、リリーフ弁の余剰流量をほぼ必要最小量Qminに抑制できるので結果としてリリーフ弁を小型化することができる。
【0038】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、第1の油圧アクチュエータ、前記第1の油圧アクチュエータに所要の圧油を供給する第1の可変容量型油圧ポンプ、前記第1の油圧ポンプと第1の油圧アクチュエータ間に設けられた第1の切換弁制御弁および前記第1の油圧アクチュエータへの圧油の供給流路に設けられた第1のリリーフ弁、前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では前記第1の油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記第1の油圧アクチュエータおよび前記第1のリリーフ弁に限定する手段、前記第1の油圧ポンプに回転駆動力を与えるエンジンおよび同エンジンにより回転駆動力を与えられる第2の可変容量型油圧ポンプならびに同第2の油圧ポンプから圧油の供給を受ける複数の油圧アクチュエータおよび切換弁制御弁を備えた建設機械における前記第1および第2の油圧ポンプを制御する方法であって、同方法は前記第1の油圧アクチュエータを駆動すべく前記第1の切換弁制御弁への操作指令を与える第1工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧アクチュエータの速度を検出する第2工程と、前記第1工程中、前記第1のリリーフ弁の特性値である最小必要流量(Qmin)および前記検出速度に対応する前記第1の油圧アクチュエータへの圧油流量との和の流量を算出する第3工程と、前記第1工程中、前記第3工程による算出結果を前記第1の油圧ポンプの吐出流量指令値として与える第4工程と、前記第1工程中、前記第1の油圧ポンプの吐出圧力を検出する第5工程と、前記第3工程による算出結果と前記第5工程における検出圧力とから前記第2の油圧ポンプへの指令吸収トルクTmを演算し前記第2の油圧ポンプへの指令とする第6工程、とから構成されているので、前記第1の油圧ポンプを第2の油圧ポンプよりも優先して制御することが可能となり、例えば建設機械において第1の油圧ポンプが旋回モータ用とし、第2の油圧ポンプが他の複数の油圧アクチュエータ用とした場合、エンジンの出力範囲内で旋回動作を優先させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の好適実施例を例示するものであって、上部旋回台を回転駆動する専用の旋回ポンプおよびモータを備えた油圧ショベルの油圧回路図である。
【
図3】本発明による制御方法を適用した油圧ショベルの旋回起動・加速時の特性を示すプロット図である。
【
図4】
図3の本発明による制御の旋回ポンプ吐出量Qを
図9の従来の制御の旋回ポンプ吐出量Qpと比較したプロット図である。
【
図5】リリーフ弁の一般的な特性を説明する模式図であって、(a)は油圧回路図、(b)はリリーフ弁の入力側ラインの圧力とリリーフ流量の関係を示す図、(c)は油圧モータの起動時の回転数の様子を示す図である。
【
図6】従来の油圧ショベル旋回モータの回転特性を示す種々の波形図である。
【
図7】油圧ショベルにおける旋回単独操作時の油圧ポンプの定馬力制御を示す波形図である。
【
図8】油圧ショベルにおける旋回起動・加速時の油圧モータ回転特性を示すプロット波形図である。
【
図9】従来の定馬力制御の場合における油圧ショベルの旋回起動・加速時の特性を示すプロット波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好適な実施例について
図1乃至4により詳細に説明する。
【0041】
図1は、上部旋回台を回転駆動する専用の旋回ポンプおよびモータを備えた油圧ショベルの油圧回路を示す。同
図1において、参照符号1はガソリン等の化石燃料を消費して回転駆動力を出力軸Y上に発生するエンジンであって、同軸Yには可変容量型の主ポンプ2、旋回ポンプ4および定吐出量のギアポンプ6、7が同軸状に配置されている。なお、前記旋回ポンプ4および主ポンプ2は、それぞれ本発明における第1の可変容量型油圧ポンプ、第2の可変容量型油圧ポンプを構成する。
【0042】
参照符号3、5はそれぞれ主ポンプ制御部、旋回ポンプ制御部であって、破線で示される圧油信号ラインを介して主ポンプ流量制御用の電磁比例弁19、旋回ポンプ流量制御用の電磁比例弁16から油圧制御信号が与えられるようになっている。
【0043】
参照符号8は、旋回モータHM以外の主ポンプ2から圧油供給を受ける油圧ショベルの油圧アクチュエータ、例えばブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、走行用油圧モータ等(図示略)への圧油の給排を制御する切換制御弁ユニットである。
【0044】
参照符号9は旋回用の切換制御弁であってパイロット弁13からの操作圧信号SG1、SG2が与えられる。同パイロット弁13には圧油源が前記ギアポンプ6から供給されている。なお、前記旋回用の切換制御弁9は本発明における第1の切換制御弁を構成しており、また、前記ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ、走行用油圧モータ等は本発明における第2の油圧アクチュエータを構成する。
【0045】
参照符号10は旋回モータユニットであって、同ユニットには正逆回転可能な旋回用の油圧モータHMおよび一対のリリーフ弁RFとチェック弁CKとが配置されている。旋回モータHMの出力軸Xには減速機12、ピニオン12aを介して、図略の上部旋回台が回転可能に結合されている。
【0046】
参照符号11は回転速度検出器であって旋回モータHMの回転速度に対応する電気信号S1を生成し演算部14へ与えるようになっている。なお、前記回転速度検出器11の代わりに破線で示した流量センサー10aを旋回モータHM近傍の流路に設けることも可能である。なお、前記旋回モータユニット10は本発明における第1の油圧アクチュエータを構成する。
【0047】
前記演算部14にはさらに電気信号S2が与えられている。この信号S2は旋回ポンプ4の吐出側ラインLの圧力Pを検出する油/電変換器17の出力である。前述の電磁比例弁16、19にはその圧油源としてギアポンプ7からの圧油が供給されている。
【0048】
前記演算部14の出力は、電磁比例弁16への流量指令ライン15と電磁比例弁19へのトルク指令ライン18の2種類があり、図示の様に、電気信号によりそれぞれ流量指令値Qおよび主ポンプへの指令吸収トルクTmとして与えられる。
【0049】
図2は、
図1の演算部14の詳細を説明する制御ブロック図である。同
図1において、演算部14は第1の演算部14aと第2の演算部14bからなる。演算部14aでは旋回モータHMの検出回転速度Nmから、ブロックb1に示されるように、旋回ポンプ4への指令値Qが演算される。この演算では、Qthすなわち旋回モータHMの実際の回転速度Nmと旋回モータHMの単位回転容積Vthとの積(Qth(L/min)=(Vth×Nm)/1000)と、リリーフ弁RFの必要最小流量Qminとの和としてQ(Q=Qth+Qmin)が算出される。
【0050】
また、演算部14bでは、ブロックb2において、算出されたQからVactすなわち旋回ポンプ4に要求される単位回転当たりの吐出容積(Vact(cc/rev)=(1000×Q)/Nm)が演算され、さらにブロックb3において、検出された旋回ポンプ4の吐出側の圧力Pと前記Vactの積として旋回ポンプ4の吸収トルクTs(Ts=(P×Vact)/(2π))が算出され、さらに、ブロックb4において、エンジン1の出力トルクTeとTsとの差Tm(Tm=Te−Ts)が演算され、この差Tmが主ポンプ2の指令値となるように電磁比例弁19へ与えられる。なおTeとTsとTmの関係は、Te≧Tm+Tsであればよい。このことは、旋回ポンプ4に要求される吐出量を主ポンプ2に対して優先させ且つエンジン1の最大出力トルクを超えないよう制御するものである。
【0051】
演算部14での演算処理をすべてアナログ処理で遂行することもできるが、マイクロコンピュータシステムにより所定サンプリング時刻ごとにブロックb1〜b4に示す演算を遂行しQ、Tmを出力することが好適である。その場合は図示していないが、信号S1、S2に対してA/D変換が遂行され、またD/A変換が信号Q、Tmに対して遂行される。
【0052】
図3は、本発明の制御方法を適用した油圧ショベルの旋回起動加速時の特性を示すプロットである。同図に示されるように、旋回ポンプ吐出量Q、旋回モータ理論流量Qth、旋回モータ回転速度Nmおよび旋回モータ入口圧力Paの各特性の波形を表したものである。また同図から分かるように、ポンプ吐出量Qとモータ理論流量Qthとの差Qminは起動時刻3.4(sec)から時刻8.6(sec)の間でほぼ一定となっており、旋回ポンプ吐出量Qが旋回モータ理論流量Qthに良好に追従していることが示される。
【0053】
図4は、
図9の従来の制御の旋回ポンプ吐出量Qpと
図3の本発明による制御の旋回ポンプ吐出量Qを比較したプロット図である。同
図4から分かるように、図中の斜線部分が燃費低減に係わる部分となる。
【0054】
なお、前記の説明では、(第1の)油圧アクチュエータを駆動すべく第1の切換弁制御弁への操作指令が与えられている状態では第1の油圧ポンプから吐出される圧油の供給を前記第1の油圧アクチュエータおよび第1のリリーフ弁に限定する手段について直接説明していないが、この限定手段とは、例えば
図1において、旋回ポンプ4は主ポンプ2とは独立した構成となっており、したがって、その吐出側流量も切換制御弁9を介して旋回モータユニット10にのみ供給接続されており、その意味では限定は自明である。
【0055】
以上本発明の好適実施例を説明したが、当業者であれば
図1、2に示された本発明の実施例に基づき種々変形することが可能である。
【0056】
例えば、
図1における旋回ポンプおよび旋回モータの代わりに走行用ポンプおよび走行モータ専用の回路とすることができる。また、
図1における旋回ポンプおよび旋回モータに加え、独立して走行用ポンプおよび走行モータ専用の回路を設けることもできる。
【0057】
また、油圧アクチュエータとしてブームシリンダを指定することもできる。
【0058】
さらに、
図1、2では、演算部14は第1の演算部14aと第2の演算部14bが一体的に結合されているが、第1の演算部だけでもよい。
【0059】
また、
図1に示される油圧回路では、旋回ポンプ4は旋回モータユニット10専用に配置構成されているが、合流弁を設けて、旋回切換制御弁9がOFF状態のときにのみ、前記合流弁を介して旋回ポンプからの圧油を主ポンプ2の吐出ラインへ合流させることも可能である。その場合Qminに代わって別の定数値を設定することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 エンジン
2 主ポンプ
3 主ポンプ制御部
4 旋回ポンプ
5 旋回ポンプ制御部
6 ギアポンプ
7 ギアポンプ
8 主切換制御弁ユニット
9 旋回切換制御弁
10 旋回モータユニット
11 回転速度検出器
12 減速機
13 パイロット弁
14 演算部
15 流量指令
16 旋回ポンプ流量制御用電磁比例弁
17 油/電変換器
18 トルク指令ライン
19 主ポンプ流量制御用電磁比例弁
CK チェック弁
LD 負荷
HM 油圧モータ
RF リリーフ弁
SG 操作圧信号
SG1 操作圧信号
SG2 操作圧信号
X 油圧モータ出力軸
Y エンジン出力軸
VL 切換弁
Nm 旋回モータ回転速度(rpm)
Te エンジン出力トルク(N・m)
Ts 旋回ポンプ吸収トルク(N・m)
Tm 主ポンプへの指令吸収トルク(N・m)
Qth
旋回モータへの毎分流量(L/min)
Vth 旋回モータの単位回転容積(cc/rev)
Q 旋回ポンプへの指令吐出流量(L/min)
Vact 旋回ポンプに要求される単位回転当たりの吐出容積(cc/rev)
P 主ポンプ吐出側圧力(MPa)
Qmin リリーフ弁の必要最小流量(L/min)