(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676172
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】ラミネートフィルム外装積層型電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 2/06 20060101AFI20150205BHJP
H01M 2/02 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
H01M2/06 K
H01M2/02 K
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-174311(P2010-174311)
(22)【出願日】2010年8月3日
(65)【公開番号】特開2012-33449(P2012-33449A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年7月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】310010081
【氏名又は名称】NECエナジーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】宇野 元祥
【審査官】
松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/105541(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/086258(WO,A1)
【文献】
国際公開第00/059063(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/06
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが金属薄膜を含む一対のラミネートフィルムと、接合された前記一対のラミネートフィルムで出来る空間に収納される電池要素と、該電池要素の両端部の夫々から引き出された正極および負極の集電部と、前記正極および負極の集電部にそれぞれ接続された正極および負極のタブと、前記電池要素の内部に含浸させた電解液と、保護シートとを備え、該保護シートが、前記集電部と、前記集電部と前記タブとを溶接により接続している溶接部分と、前記集電部と接続された側の前記タブの端部とを覆っているラミネートフィルム外装積層型電池の製造方法であって、
前記タブを通すことが可能な切り込みを有する前記保護シートを用意した後、当該切れ込みに前記タブを通し、
前記切れ込みに前記タブを通した後、前記保護シートを折り曲げて、前記集電部と、前記溶接部分と、前記集電部と接続された側の前記タブの端部とを同時に覆い、当該保護シートを電解液に化学的に侵されない材質の固定テープを用いて固定する、ラミネートフィルム外装積層型電池の製造方法。
【請求項2】
前記ラミネートフィルムは、前記金属薄膜と、該金属薄膜の片面に積層された前記ラミネートフィルムの内壁となる熱融着樹脂フィルムと、該金属薄膜のもう片面に積層された前記ラミネートフィルムの外壁となる保護フィルムとを含むものであることを特徴とする請求項1に記載のラミネートフィルム外装積層型電池の製造方法。
【請求項3】
前記保護シートは電解液に化学的に侵されない材質で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のラミネートフィルム外装積層型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラミネートフィルム外装積層型電池およびラミネートフィルム外装積層型電池における製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド自動車の普及に伴って、その駆動用電源としてリチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池の開発が盛んに行われている。軽量化、薄型化が強く要求されており、そこで電池の外装材に関しても、従来の金属缶ケースに代わり、軽量化、薄型化、また自由な形状を取ることができる外装材として金属薄膜フィルム、または金属薄膜と熱融着樹脂フィルムを積層したラミネートフィルムを用いたものが使用される。
【0003】
電池の外装材として用いられるラミネートフィルムの代表的な例としては、電解液や水分およびガスの透過を防止することが可能な金属薄膜であるアルミニウム薄膜と、その片面にヒートシール層である熱融着樹脂フィルムを積層しもう片面に保護フィルムを積層した3層構造のラミネートフィルムがあげられる。そして、その熱融着樹脂フィルムについてはナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルムが用いられる。
【0004】
ラミネートフィルム外装積層型電池においては、金属箔などからなる集電体の活物質層形成部に活物質層が均一に塗布形成された複数の正極と負極を、セパレータを介して積層し、ラミネート外装材にて覆い、電解液注入後、熱融着にて密封する構造で構成される。
【0005】
これらの電池においては、複数の正極及び複数の負極の接続については、それぞれの金属箔における活物質未塗布部分で、積層されている金属箔と引き出し端子(リード)(以降、タブと称す)とを一括して超音波溶接等の溶接により接続される。
【0006】
特許文献1では、偏平巻回電極体を有するラミネート電池において、内部に気泡が溜まりにくく電池容量を増加させられる構造が開示されている。その構造は、正極、負極の未塗布部分の巻き芯部分に引き出しタブを溶接し露出面に絶縁テープで被覆するとともに、もう片側にも保護テープで被覆し、偏平巻回電極体内に凸凹を生じないようにする構造である。
【0007】
特許文献2では、外装材に封入される電池要素に薄片状の正極タブと負極タブを電気的に接続するが、これらのタブについて、切断時の断面にカエリやバリ状の鋭角部が存在しない形状で、タブの主面から起立するように形成することが開示されている。こうしたタブでは、タブ断面形状を湾曲した形状、4隅角部が湾曲した形状、凸レンズ形状などに形成して、外装ケース外部から内部に空気が侵入することを軽減している。
【0008】
特許文献3では、フィルム外装電池のタブのカエリの除去を行うことなくカエリの不具合を防止する手段を開示している。正極タブ、及び負極タブが正極集電部及び負極集電部との接合部分にそれぞれ正極及び負極タブのカエリを被覆するようにして保護テープを貼り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−303590号公報
【特許文献2】特開2002−75327号公報
【特許文献3】特開2005−149938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ラミネートフィルム外装積層型電池においては、外装フィルム外部から空気の侵入、及び、集電体としての金属箔部がラミネートフィルム金属層に電気的に接触するというショートや、その金属層の損傷で絶縁性を低下させることなど、を防止することが非常に重要である。例えば、外部からの空気の侵入により外装フィルム内部の圧力が上昇することによって電池要素を押圧する力が弱くなりその結果、電池性能が低下しやすくなる。
【0011】
ラミネートフィルム外装電池においてはまた、電池要素が巻回電極体である場合、巻き芯部での凸凹を生じないようにタブ接続部の露出部分を保護テープで被覆する手段や、正極、負極タブの形状にカエリ、バリ状の鋭角部が存在しない形状にして密閉性を考慮し空気の侵入を防止する手段、また正極、負極タブ部分の端のカエリ部に保護テープを設ける手段など、ラミネートフィルムの内壁部分保護を考慮した設計をすることが望ましい。
【0012】
本発明は、上記した背景技術における課題に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、ラミネートフィルム外装電池における集電部、タブ溶接部、およびタブの端のカエリやバリ部分を同時に被覆することにより、ラミネートフィルムの内壁への損傷を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明
の一態様は、
それぞれが金属薄膜を含む一対のラミネートフィルムと、接合された一対のラミネートフィルムで出来る空間に収納される電池要素と、該電池要素の両端部の夫々から引き出された正極および負極の集電部と、正極および負極の集電部にそれぞれ接続された正極および負極のタブと、電池要素の内部に含浸させた電解液と、保護シートとを備え、該保護シートが、集電部と、集電部とタブとを溶接により接続している溶接部分と、集電部と接続された側のタブの端部とを覆っているラミネートフィルム外装積層型電池の製造方法である。
特に、上記の製造方法は、タブを通すことが可能な切り込みを有する保護シートを用意した後、当該切れ込みにタブを通し、切れ込みにタブを通した後、保護シートを折り曲げて、集電部と、溶接部分と、集電部と接続された側のタブの端部とを同時に覆い、当該保護シートを電解液に化学的に侵されない材質の固定テープを用いて固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、集電部とタブとを接続した部位に存在するエッジやバリ、カエリ等を保護シートで被覆することで、ラミネートフィルムの内壁への損傷を抑えることができ、電気的なショートや、ラミネートフィルムの金属層の損傷で絶縁性を低下させること、を防止することができる。結果として、電池の長期信頼性の向上する効果が得られる。
【0019】
また、本発明の製造方法は、保護シートの貼り付け精度の向上、貼り付け易さの向上をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるラミネートフィルム外装積層型電池を示す図。
【
図2】本発明の一実施形態によるラミネートフィルム外装積層型電池の電池要素の集電体近傍での断面図。
【
図3】本実施形態と比較するためのラミネートフィルム外装積層型電池(従来例)の電池要素の集電体近傍での断面図。
【
図4】本発明の一実施形態による、保護シートを示す図。
【
図5】本発明の一実施形態による製造方法での、保護シートの挿入工程を示す図。
【
図6】本発明の一実施形態による製造方法での、保護シートの貼り付け工程においてタブ側部分の貼り付けを示した図。
【
図7】本発明の一実施形態による製造方法での、保護シートの貼り付け工程において、
図6の表裏を反転した集電部とタブを超音波溶接にて接合した接合部分側の貼り付けを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明によるラミネートフィルム外装積層型電池の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本実施形態によるラミネートフィルム外装積層型電池の分解斜視図である。
【0023】
この図に示されるように、ラミネートフィルム外装積層型電池1は、凹形状の一対のラミネートフィルム2と、接合された一対のラミネートフィルム2で出来る空間に収納される電池要素3と、電池要素3の両端部の夫々から引き出された正極集電部4および負極集電部5と、正極集電部4および負極集電部5にそれぞれ接続された正極タブ6および負極タブ7と、電池要素3の内部に含浸させた電解液とから構成される。
【0024】
電池要素3は、金属箔などからなる集電体上の所定の領域に活物質層を均一に塗布して形成された複数の正極シートと負極シートを、セパレータを介して積層して構成されている。正極集電部4は、電池要素3の一端側で、複数の正極シートどうしを接続して構成され、負極集電部5は、電池要素3のもう一端側で、複数の負極シートどうしを接続して構成される。
【0025】
正極シートどうしの接続及び負極シートどうしの接続については、それぞれの金属箔の活物質未塗布部分で、積層された複数の正極シートまたは負極シートを正極タブ6または負極タブ7と共に超音波溶接等の溶接により一括して接続される。
【0026】
各ラミネートフィルム2の凹形状部内に電池要素3を収容するように一対のラミネートフィルム2にて電池要素3を覆い、電池要素3に電解液を注入後、一対のラミネートフィルム2どうしの接合部分を熱融着にて気密に接着した構造である。さらに、接合されたラミネートフィルム2の外周辺より外側に正極タブ6および負極タブ7が延出している構造である。
【0027】
図2は本実施形態によるラミネートフィルム外装積層電池1の電池要素3の集電部近傍の断面図である。正極と負極の構成がともに同じであるため、
図2以降については、正極のみで説明する。
【0028】
正極集電部4(複数の正極シートの端部における活物質未塗布部分を接続してなる部分)と正極タブ6とを超音波溶接により接続している部分である超音波溶接部9と、正極タブ6の端部分とを覆う領域に、保護シート8が貼り付けられている。
【0029】
正極集電部4と正極タブ6との超音波溶接時の圧力により、超音波溶接部9の周辺に位置する正極タブ6の端部にカエリ10が生じ、また超音波溶接部9にバリ状の鋭角部分11が生じ、さらに、正極集電部4のエッジ12も存在する。そのため、保護シート8は、正極集電部4のエッジ12、正極タブ6のカエリ10や、超音波溶接部9のバリ状の鋭角部分11などで、ラミネートフィルム2の内壁が損傷することを防止する。これと同じ目的で負極についても保護シート8が貼り付けられる。
【0030】
図3は本実施形態と比較するラミネートフィルム外装積層電池の構成例(従来例)を示している。この例では正極タブ6の端部分13にカエリが出来ていないため、正極タブ6の端部分13への保護が必要ないが、正極集電部4のエッジ12や超音波溶接部9のバリ状の鋭角部分11が存在していて、ラミネートフィルム2の内壁を損傷する可能性がある。
【0031】
ラミネートフィルム2は、電解液や水分およびガスの透過を防止することが可能な金属薄膜であるアルミニウム薄膜の片面にヒートシール層である熱融着樹脂フィルムを積層し、そのもう片面に保護フィルムを積層した3層構造のラミネートフィルムである。上記のカエリ10やバリ、エッジ等でラミネートフィルム2の内壁のヒートシール層が破けて、タブや集電部の金属がアルミニウムなどの金属薄膜とショートするという問題や、ラミネートフィルム2における金属薄膜が損傷して外装の絶縁性が低下するという問題が発生する。本発明は上記のような保護シート8を備えることにより、このような問題を防ぐことができる。
【0032】
(実施例)
図4は本実施形態のラミネートフィルム外装積層型電池に適用される保護シート8の例を示す図である。
【0033】
保護シート8の材質は、電解液に化学的に侵されないポリエチレン、ポリプロピレンなどが好ましく、これらのシートに粘着層を設けて保護テープとして使用してもよい。
【0034】
保護シート8は細長い長方形シートを用いて形成されており、その中央にシート長手方向に沿って切り込み17が設けられている。切り込み17は、正極タブ6や負極タブ7を挿入できるように、それらのタブの幅寸法(電池要素3の端部から外側へ延出しているタブの方向と直交する方向の幅)とほぼ同じくらいの長さを有する。
【0035】
保護シート8の厚みについては限定されないが、カエリ、バリの損傷を防ぐことと取り扱い易さとを考慮して0.050mm以上を推奨する。
【0036】
次に、本実施形態のラミネートフィルム外装積層型電池の製造方法を
図5〜
図7に沿って説明する。
【0037】
図5は、本実施形態のラミネートフィルム外装積層型電池を製造する際の、保護シート8の挿入工程を示している。この図では正極タブ6を上側にして図示している。
【0038】
電池要素3には前述したように、予め、正極集電部4や負極集電部5が形成される。具体的には、積層された複数の正極シートをその端部における活物質未塗布部分で、正極タブ6と共に超音波溶接により一括して接続することにより、正極集電部4が形成される。また、これと同じように負極集電部5も形成される。
【0039】
このように電池要素3の一端部の正極集電部4に溶接された正極タブ6を、
図5に示すように、保護シート8の中央の切り込み17に通す。このあと、後の保護シート8の貼り付け工程で正極集電部4のエッジ12、正極タブ6の端部のカエリ10、および超音波溶接部9のバリ状の鋭角部分11を被覆できる所まで、保護シート8を移動させる。
【0040】
図6は、
図5に示した工程の次工程である保護シート8の貼り付けにおいて、タブ側へ保護シートの半分を貼り付けた様子を示している。この図では正極タブ6を上側にして図示している。
【0041】
図6に示すように保護シート8を正極タブ6に装着し、正極タブ6の樹脂被覆部16を避け、正極集電部4の端まで挿入する。このとき、
図6に示す保護シート折り曲げ線15の下側半分の保護シート8で超音波溶接部9、正極タブ6の端部のカエリ10、および正極集電部4のエッジ12が覆われるように位置させ、その保護シート8の半分の部分8aを固定テープ14で固定する。
【0042】
固定テープ14としては電解液に化学的に侵されない材質のポリエチレン、ポリプロピレンテープが好ましい。該固定テープの接着部分はアクリル系、シリコン系の接着剤が好適である。
【0043】
図7は、
図6に示した工程にて接着されていない保護シート8の残り半分の部分8bを集電部側へ貼り付けた様子を示している。この図では正極集電部4を上側にして図示している。
【0044】
図6に示したように固定テープ14を貼り付けた後、
図7に示すように、保護シート折り曲げ線15の部分で保護シート15を折り返し、その保護シート8の半分の部分8bで正極集電部4のエッジ12および超音波溶接部9のバリ状の鋭角部分11を覆う。そして、
図6の工程と同様に、保護シート8の部分8bを固定テープ14で固定する。
【0045】
また、負極側についても、
図5ないし
図7に示した工程と同じように保護シート8の装着を実施する。
【0046】
以上説明した製造方法を実施することにより、正極集電部4のエッジ12、正極タブ6の端部のカエリ10、及び、正極集電部4と正極タブ6を超音波溶接してできる超音波溶接部9、などにおける鋭角部を保護シート8で被覆することができる。負極集電部5と負極タブ7の接続部位についても同様に保護シート8で被覆することができる。保護シート8は、電解液に化学的に侵されないシート材の中央に切り込み17を入れて折り返している単純な構成なので、貼り付けが容易であり、また、貼り付け位置精度も向上させることができるだけでなく、正極タブ6が取り付けられていない部分も含めて、正極集電部4のエッジ12を確実に被覆することができる。さらに、保護シート8によってラミネートフィルム2の内壁への損傷を抑えることができるので、タブや集電部の金属がラミネートフィルム2内部の金属薄膜とショートするという問題や、ラミネートフィルム2における金属薄膜が損傷して外装の絶縁性が低下するという問題を防止できる。その結果、電池の長期信頼性が向上する効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によるラミネートフィルム外装積層型電池は、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用電源として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ラミネートフィルム外装積層型電池
2 ラミネートフィルム
3 電池要素
4 正極集電部
5 負極集電部
6 正極タブ
7 負極タブ
8 保護シート
9 超音波溶接部
10 正極タブの端部のカエリ
11 超音波溶接部のバリ状の鋭角部分
12 正極集電部のエッジ
13 正極タブの端部分
14 固定テープ
15 保護シート折り曲げ線
16 樹脂被覆部
17 切り込み