(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676191
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】モジュール、モジュール制御装置、モジュール制御システム、時刻同期方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20150205BHJP
G04G 7/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
H04L7/00 Z
G04G7/00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-215976(P2010-215976)
(22)【出願日】2010年9月27日
(65)【公開番号】特開2012-74772(P2012-74772A)
(43)【公開日】2012年4月12日
【審査請求日】2013年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】302069930
【氏名又は名称】NECエンベデッドプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忍
【審査官】
阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−155421(JP,A)
【文献】
特開平08−107631(JP,A)
【文献】
特開平01−302939(JP,A)
【文献】
特開2009−130519(JP,A)
【文献】
特開2006−005615(JP,A)
【文献】
特開平8−328616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7
G04G 7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同構成の他のモジュールと直列に接続されるモジュールであって、
接続された全部のモジュールにおける時刻の同期を行うための同期信号を入力すると、当該同期信号を、後段に接続された直近のモジュールに出力する第1入出力部と、
後段に接続された他のモジュール全部を経て戻ってきた前記同期信号を入力すると、当該同期信号を、前段に接続された直近のモジュールに出力する第2入出力部と、
時刻を計測する計時部と、
前記第1入出力部から前記同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、前記第2入出力部から前記同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録部と、
前記第1時刻と前記第2時刻を基に前記接続された全部のモジュールで一致する基準時刻を算出する算出部と、
実行すべき処理と、当該処理を実行するまでの時間を示す実行時間とが定義されたコマンド信号が前記第1入出力部に入力された場合に、前記基準時刻に前記実行時間を加えた時刻に前記処理を実行する処理実行部と、を備え、
前記第1入出力部が前記同期信号の入力から出力までを所定の時間で処理するとともに、前記第2入出力部が前記同期信号の入力から出力までを前記所定の時間で終了するように処理し、
前記算出部は、前記第2時刻−(前記第2時刻−前記第1時刻)/2を計算することより前記基準時刻を算出することを特徴とするモジュール。
【請求項2】
前記モジュールが始端とされる場合、前段の直近には、前記他のモジュールの代わりとしてモジュール制御装置が接続され、
前記第1入出力部は、
前記モジュール制御装置から出力された前記同期信号を入力し、
前記第2入出力部は、
前記モジュール制御装置に対して前記同期信号を出力することを特徴とする請求項1記載のモジュール。
【請求項3】
前記モジュールが終端とされる場合、前記第1入出力部から出力される前記同期信号は、前記第2入出力部に入力されることを特徴とする請求項1又は2記載のモジュール。
【請求項4】
直列に接続された同構成の複数のモジュールのうち、始端のモジュールに接続されるモジュール制御装置であって、
前記複数のモジュール全部における時刻の同期を行うための同期信号を、前記始端のモジュールに出力する出力部と、
前記複数のモジュール全部を経て戻ってきた前記同期信号を入力する入力部と、
時刻を計測する計時部と、
前記出力部から前記同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、前記入力部から前記同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録部と、
前記第1時刻と前記第2時刻を基に、前記第2時刻−(前記第2時刻−前記第1時刻)/2を計算することより前記複数のモジュール全部で一致する基準時刻を算出する第1算出部と、
前記複数のモジュール全部に実行させる処理及び当該処理を実行させる時刻の指定を受け付けた場合に、前記指定された時刻と、前記基準時刻とを基に、前記処理を実行させるまでの時間を示す実行時間を算出する第2算出部と、
前記処理及び前記実行時間を定義したコマンド信号を生成し、前記出力部から前記始端のモジュールに出力させる生成部と、
を備えることを特徴とするモジュール制御装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の複数のモジュールと、
請求項4記載のモジュールと、を有し、
前段のモジュールと、その後段に接続された直近のモジュールとは、
接続された全部のモジュールにおける時刻の同期を行うための同期信号が、前段のモジュールから出力されてから、前記後段に接続された直近のモジュールに入力されるまでを所定の時間で伝送され、かつ、後段に接続された他のモジュール全部を経て戻ってきた前記同期信号が、前記後段に接続された直近のモジュールから出力されてから、前記前段のモジュール入力されるまでを前記所定の時間で伝送されるように接続されることを特徴とするモジュール制御システム。
【請求項6】
同構成の他のモジュールと直列に接続されるモジュールが行う時刻同期方法であって、
接続された全部のモジュールにおける時刻の同期を行うための同期信号を入力すると、当該同期信号を、後段に接続された直近のモジュールに出力する第1入出力ステップと、
後段に接続された他のモジュール全部を経て戻ってきた前記同期信号を入力すると、当該同期信号を、前段に接続された直近のモジュールに出力する第2入出力ステップと、
前記第1入出力ステップで前記同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、前記第2入出力ステップで前記同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録ステップと、
前記第1時刻と前記第2時刻を基に前記接続された全部のモジュールで一致する基準時刻を算出する算出ステップと、
実行すべき処理と、当該処理を実行するまでの時間を示す実行時間とが定義されたコマンド信号が前記第1入出力部に入力された場合に、前記基準時刻に前記実行時間を加えた時刻に前記処理を実行する処理実行ステップと、を備え、
前記第1入出力ステップでは前記同期信号の入力から出力までを所定の時間で処理するとともに、前記第2入出力ステップでは前記同期信号の入力から出力までを前記所定の時間で終了するように処理し、前記算出ステップでは、前記第2時刻−(前記第2時刻−前記第1時刻)/2を計算することより前記基準時刻を算出することを特徴とする時刻同期方法。
【請求項7】
直列に接続された同構成の複数のモジュールのうち、始端のモジュールに接続されるモジュール制御装置が行う時刻同期方法であって、
前記複数のモジュール全部における時刻の同期を行うための同期信号を、前記始端のモジュールに出力する出力ステップと、
前記複数のモジュール全部を経て戻ってきた前記同期信号を入力する入力ステップと、
前記出力ステップで前記同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、前記入力ステップで前記同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録ステップと、
前記第1時刻と前記第2時刻を基に、前記第2時刻−(前記第2時刻−前記第1時刻)/2を計算することより前記複数のモジュール全部で一致する基準時刻を算出する第1算出ステップと、
前記複数のモジュール全部に実行させる処理及び当該処理を実行させる時刻の指定を受け付けた場合に、前記指定された時刻と、前記基準時刻とを基に、前記処理を実行させるまでの時間を示す実行時間を算出する第2算出ステップと、
前記処理及び前記実行時間を定義したコマンド信号を生成し、前記始端のモジュールに出力する生成ステップと、
を備えることを特徴とする時刻同期方法。
【請求項8】
同構成の他のモジュールと直列に接続されるモジュールに実行させるためのプログラムであって、
接続された全部のモジュールにおける時刻の同期を行うための同期信号を入力すると、当該同期信号を、後段に接続された直近のモジュールに出力する第1入出力手順と、
後段に接続された他のモジュール全部を経て戻ってきた前記同期信号を入力すると、当該同期信号を、前段に接続された直近のモジュールに出力する第2入出力手順と、
前記第1入出力手順で前記同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、前記第2入出力手順で前記同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録手順と、
前記第1時刻と前記第2時刻を基に前記接続された全部のモジュールで一致する基準時刻を算出する算出手順と、
実行すべき処理と、当該処理を実行するまでの時間を示す実行時間とが定義されたコマンド信号が前記第1入出力部に入力された場合に、前記基準時刻に前記実行時間を加えた時刻に前記処理を実行する処理実行手順と、を実行させ、
前記第1入出力処理では前記同期信号の入力から出力までを所定の時間で処理するとともに、前記第2入出力処理では前記同期信号の入力から出力までを前記所定の時間で終了するように処理し、前記算出処理では、前記第2時刻−(前記第2時刻−前記第1時刻)/2を計算することより前記基準時刻を算出することを特徴とするプログラム。
【請求項9】
直列に接続された同構成の複数のモジュールのうち、始端のモジュールに接続されるモジュール制御装置に実行させるためのプログラムであって、
前記複数のモジュール全部における時刻の同期を行うための同期信号を、前記始端のモジュールに出力する出力手順と、
前記複数のモジュール全部を経て戻ってきた前記同期信号を入力する入力手順と、
前記出力手順で前記同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、前記入力手順で前記同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録手順と、
前記第1時刻と前記第2時刻を基に、前記第2時刻−(前記第2時刻−前記第1時刻)/2を計算することより前記複数のモジュール全部で一致する基準時刻を算出する第1算出手順と、
前記複数のモジュール全部に実行させる処理及び当該処理を実行させる時刻の指定を受け付けた場合に、前記指定された時刻と、前記基準時刻とを基に、前記処理を実行させるまでの時間を示す実行時間を算出する第2算出手順と、
前記処理及び前記実行時間を定義したコマンド信号を生成し、前記始端のモジュールに出力する生成手順と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他のモジュールとの間で時刻の同期を行うモジュール、モジュール制御装置、モジュール制御システム、時刻同期方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のモジュール間で時刻の同期を行う技術として、例えば
図3に示す構成がある。
図3に示す構成では、1個のモジュールM
0(マスタ)に対し、複数個(n個)のモジュールM
1〜M
n(スレーブ)が接続されている。M
0にはXtal(水晶振動子)が備えられ、M
1〜M
nにはVCXO(voltage-controlled crystal oscillator:電圧制御水晶発振器)が備えられている。このような構成により、M
0は、M
1〜M
nと個々に時刻の同期を行い、モジュール全体の時刻を同期させる。なお、このような構成は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−120484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
図3に示すような、一のマスタ対複数のスレーブで個々に時刻同期を行う構成には、以下のような問題がある。
(1)接続するモジュールが増える場合、モジュール間の結線が複雑になる。
(2)マスタとスレーブとで動作を変える必要がある(少なくとも2種類の動作が必要となる)。
(3)接続するモジュールの数を変更する場合、マスタの動作を変更する必要がある。
(4)例えばデジタル放送の出力等を行うモジュールでは、厳密な時刻の同期が必要となるため、各スレーブにVCXOを備える必要がある。VCXOは、一般的な発振器よりも高価であるので、コスト高となる。
【0005】
本発明は、上記(1)〜(4)の問題を解決するためになされたものであり、一のマスタ対複数のスレーブで個々に時刻同期を行う構成に比べ、よりシンプルな構成により、他のモジュールとの間で時刻の同期を行うことができるモジュール、モジュール制御装置、モジュール制御システム、時刻同期方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の第1の態様は、同構成の他のモジュールと直列に接続されるモジュールであって、接続された全部のモジュールにおける時刻の同期を行うための同期信号を入力すると、その同期信号を、後段に接続された直近のモジュールに出力する第1入出力部と、後段に接続された他のモジュール全部を経て戻ってきた同期信号を入力すると、その同期信号を、前段に接続された直近のモジュールに出力する第2入出力部と、時刻を計測する計時部と、第1入出力部から同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、第2入出力部から同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録部と、第1時刻と第2時刻を基に基準時刻を算出する算出部と、実行すべき処理と、その処理を実行するまでの時間を示す実行時間とが定義されたコマンド信号が第1入出力部に入力された場合に、基準時刻に実行時間を加えた時刻に処理を実行する処理実行部と、を備え、第1入出力部が同期信号の入力から出力までを所定の時間で処理するとともに、第2入出力部が同期信号の入力から出力までを所定の時間で終了するように処理することを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、直列に接続された同構成の複数のモジュールのうち、始端のモジュールに接続されるモジュール制御装置であって、複数のモジュール全部における時刻の同期を行うための同期信号を、始端のモジュールに出力する出力部と、複数のモジュール全部を経て戻ってきた同期信号を入力する入力部と、時刻を計測する計時部と、出力部から同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、入力部から同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録部と、第1時刻と第2時刻を基に基準時刻を算出する第1算出部と、複数のモジュール全部に実行させる処理及びその処理を実行させる時刻の指定を受け付けた場合に、指定された時刻と、基準時刻とを基に、処理を実行させるまでの時間を示す実行時間を算出する第2算出部と、処理及び実行時間を定義したコマンド信号を生成し、出力部から始端のモジュールに出力させる生成部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様である複数のモジュールと、本発明の第2の態様であるモジュール制御装置と、を有し、前段のモジュールと、その後段に接続された直近のモジュールとは、接続された全部のモジュールにおける時刻の同期を行うための同期信号が、前段のモジュールから出力されてから、後段に接続された直近のモジュールに入力されるまでを所定の時間で伝送され、かつ、後段に接続された他のモジュール全部を経て戻ってきた同期信号が、後段に接続された直近のモジュールから出力されてから、前段のモジュール入力されるまでを所定の時間で伝送されるように接続されるモジュール制御システムであることを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の態様は、同構成の他のモジュールと直列に接続されるモジュールが行う時刻同期方法であって、接続された全部のモジュールにおける時刻の同期を行うための同期信号を入力すると、その同期信号を、後段に接続された直近のモジュールに出力する第1入出力ステップと、後段に接続された他のモジュール全部を経て戻ってきた同期信号を入力すると、その同期信号を、前段に接続された直近のモジュールに出力する第2入出力ステップと、第1入出力ステップで同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、第2入出力ステップで同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録ステップと、第1時刻と第2時刻を基に基準時刻を算出する算出ステップと、実行すべき処理と、その処理を実行するまでの時間を示す実行時間とが定義されたコマンド信号が第1入出力部に入力された場合に、基準時刻に実行時間を加えた時刻に処理を実行する処理実行ステップと、を備え、第1入出力ステップでは同期信号の入力から出力までを所定の時間で処理するとともに、第2入出力ステップでは同期信号の入力から出力までを所定の時間で終了するように処理することを特徴とする。
【0010】
本発明の第5の態様は、直列に接続された同構成の複数のモジュールのうち、始端のモジュールに接続されるモジュール制御装置が行う時刻同期方法であって、複数のモジュール全部における時刻の同期を行うための同期信号を、始端のモジュールに出力する出力ステップと、複数のモジュール全部を経て戻ってきた同期信号を入力する入力ステップと、出力ステップで同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、入力ステップで同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録ステップと、第1時刻と第2時刻を基に基準時刻を算出する第1算出ステップと、複数のモジュール全部に実行させる処理及びその処理を実行させる時刻の指定を受け付けた場合に、指定された時刻と、基準時刻とを基に、処理を実行させるまでの時間を示す実行時間を算出する第2算出ステップと、処理及び実行時間を定義したコマンド信号を生成し、始端のモジュールに出力する生成ステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第6の態様は、同構成の他のモジュールと直列に接続されるモジュールに実行させるためのプログラムであって、接続された全部のモジュールにおける時刻の同期を行うための同期信号を入力すると、その同期信号を、後段に接続された直近のモジュールに出力する第1入出力手順と、後段に接続された他のモジュール全部を経て戻ってきた同期信号を入力すると、その同期信号を、前段に接続された直近のモジュールに出力する第2入出力手順と、第1入出力手順で同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、第2入出力手順で同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録手順と、第1時刻と第2時刻を基に基準時刻を算出する算出手順と、実行すべき処理と、その処理を実行するまでの時間を示す実行時間とが定義されたコマンド信号が第1入出力部に入力された場合に、基準時刻に実行時間を加えた時刻に処理を実行する処理実行手順と、を実行させ、第1入出力処理では同期信号の入力から出力までを所定の時間で処理するとともに、第2入出力処理では同期信号の入力から出力までを所定の時間で終了するように処理することを特徴とする。
【0012】
本発明の第7の態様は、直列に接続された同構成の複数のモジュールのうち、始端のモジュールに接続されるモジュール制御装置に実行させるためのプログラムであって、複数のモジュール全部における時刻の同期を行うための同期信号を、始端のモジュールに出力する出力手順と、複数のモジュール全部を経て戻ってきた同期信号を入力する入力手順と、出力手順で同期信号が出力された時の時刻を第1時刻として記録するとともに、入力手順で同期信号が入力された時の時刻を第2時刻として記録する記録手順と、第1時刻と第2時刻を基に基準時刻を算出する第1算出手順と、複数のモジュール全部に実行させる処理及びその処理を実行させる時刻の指定を受け付けた場合に、指定された時刻と、基準時刻とを基に、処理を実行させるまでの時間を示す実行時間を算出する第2算出手順と、処理及び実行時間を定義したコマンド信号を生成し、始端のモジュールに出力する生成手順と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一のマスタ対複数のスレーブで個々に時刻同期を行う構成に比べ、よりシンプルな構成により、他のモジュールとの間で時刻の同期を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複数のモジュールが直列に接続された構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る複数のモジュールで算出される基準時間の概念を示す図である。
【
図3】一のマスタモジュールと複数のスレーブモジュール個々との間で時刻の同期を行う構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
本実施形態では、複数のモジュールをデイジーチェーン接続し、複数のモジュール間に所定の信号(パルス)を往復させ、各モジュールにおいて信号の行きと帰りの時刻の中間時刻を算出し、それを基準時刻とみなすことで、全てのモジュールの基準時刻が一致することを特徴とする。この特徴について、以下に具体的に説明する。
【0017】
図1を用いて、本実施形態の構成について説明する。本実施形態の構成は、
図1に示すように、PC(Personal Computer)と、複数(n個)のモジュールM
1〜M
nとを有する。モジュールM
1〜M
nは、直列に接続(デイジーチェーン接続)されており、全てが同じ構成のものである。よって、モジュールM
1〜M
nには、マスタ、スレーブの区別はない。モジュールM
1〜M
nのうち、M
1が始端のモジュール、M
nが終端のモジュールである。始端のモジュールM
1には、PC(モジュール制御装置の一例)が接続される。
【0018】
図1に示す各矢印は、信号の流れを示している。信号の例としては、同期信号やコマンド信号が挙げられる。同期信号とは、モジュールM
1〜M
n全部における時刻の同期を行うための信号である。また、コマンド信号とは、モジュールM
1〜M
nが実行すべき処理と、その処理を実行するまでの時間(実行時間という)とが定義された信号である。
【0019】
このような信号はまず、PCから始端のモジュールM
1に出力される。その後、信号は、M
1からM
2、M
2からM
3というように出力されていき、M
nに到達する。このように、図中の右方向を示す各矢印に沿って流れる信号を、本明細書では「行きの信号」という。例えば、信号が同期信号である場合は、「行きの同期信号」という。一方、M
nに到達した信号は、行きの信号とは逆の流れで出力される。すなわち、信号は、M
nから出力された後、M
3からM
2、M
2からM
1というように出力されていき、PCに到達する。このように、図中の左方向を示す矢印に沿って流れる信号を、本明細書では「帰りの信号」という。例えば、信号が同期信号である場合は、「帰りの同期信号」という。
【0020】
本明細書では、
図1に示す所定のモジュールを基準とした場合、図中の左側に位置するものを「前段」といい、図中の右側に位置するものを「後段」という。例えばモジュールM
2の場合、前段に位置するものはM
1、PCとなり、後段に位置するものはM
3〜M
nとなる。またその場合において、前段に位置するもののうち直近のもの(直接接続されたもの)はM
1となり、後段に位置するもののうち直近のもの(直接接続されたもの)はM
3となる。
【0021】
また、
図1に示すモジュールM
1〜M
nにおける構成条件は、以下のようになる。以下に記すx、yは、所定の正の整数である。
【0022】
M
xは、入力部A
x、C
xと、出力部B
x、D
xとを備える。入力部A
xに行きの信号が入力されると、その行きの信号は、出力部B
xに出力され、出力部B
xから後段に接続された直近のモジュールM
x+1に出力される(第1入出力部の一例)。入力部C
xに帰りの信号が入力されると、その帰りの信号は、出力部D
xに出力され、出力部D
xから前段に接続された直近のモジュールM
x-1又はPCに出力される(第2入出力部の一例)。
【0023】
M
xにおいて、行きの信号が入力部A
xに入力されてから、出力部B
xに出力される(出力部B
xから後段に接続された直近のモジュールに出力される)までの時間と、帰りの信号が入力部C
xに入力されてから、出力部D
xに出力される(出力部D
xから前段に接続された直近のモジュール又はPCに出力される)までの時間とは等しいとする(0でもよい)。但し、他のモジュール間における時間(A
x→B
xの時間とA
y→B
yの時間、x≠y)は必ずしも等しい必要はない。
【0024】
M
x-1とM
xにおいて、出力部B
x-1と入力部A
x、入力部C
x-1と出力部D
xがそれぞれ接続される。すなわち、出力部B
x-1から出力される行きの信号は、入力部A
xに入力される。また、出力部D
xから出力される帰りの信号は、入力部C
x-1に入力される。
【0025】
M
x-1とM
xにおいて、行きの信号が出力部B
x-1から出力されてから入力部A
xに入力されるまでの時間と、帰りの信号が出力部D
xから出力されてから入力部C
x-1に入力されるまでの時間とは無視する。無視できない場合は等長配線し、一定(等しい)とみなす。但し、他のモジュール間における時間(B
x-1→A
xの時間とB
y-1→A
yの時間、x≠y)は必ずしも等しい必要はない。
【0026】
終端のM
nは、B
nとC
nが接続される。すなわち、行きの信号は出力部B
nから出力された後、入力部C
nに入力され、以降、帰りの信号として出力部D
nに出力される。
【0027】
次に、上述した構本実施形態の構成における動作について、
図1、
図2を用いて説明する。本実施形態では、モジュールM
1〜M
nを小型の表示モジュールとし、それらモジュールM
1〜M
nにて所定の時刻に所定の画像を同時に表示する処理を行う場合を例として説明する。
【0028】
ユーザは、まず、
図1に示すように、画像表示に使用するモジュールM
1〜M
nを直列に接続し、始端とするモジュールM
1にPCを接続する。各モジュール間の接続は、上述した構成条件を満たせば、有線又は無線のいずれであってもよい。
【0029】
次に、ユーザは、PCに対して、モジュールM
1〜M
nにおける時刻同期の実行を指示する。この指示を受けたPCは、同期信号を生成し、後段に接続された始端のモジュールM
1に同期信号を出力する。このモジュールM
1への同期信号の出力の時、PCは、PC内時刻T
STARTを記録して保持する(記録部の一例)。すなわち、PC内時刻T
STARTは、同期信号をモジュールM
1へ出力した時刻となる。なお、PCは、計時機能(計時部の一例)を有しており、この機能によりPC内時刻(PC自身で計測している時刻)を認識できる。
【0030】
モジュールM
1は、PCから出力された同期信号を、入力部A
1から入力して出力部B
1に出力し、出力部B
1から、後段に接続された直近のモジュールM
2に出力する。このモジュールM
2への同期信号の出力の時、モジュールM
1は、モジュール内時刻T
B1を記録して保持する(記録部の一例)。すなわち、モジュール内時刻T
B1は、同期信号をモジュールM
2へ出力した時刻となる。なお、モジュールM
1は、計時機能(計時部の一例)を有しており、この機能によりモジュール内時刻(モジュール自身で計測している時刻)を認識できる。
【0031】
上述したモジュールM
1における動作は、モジュールM
2、M
3においても同様に行われ(説明は省略)、同期信号は終端のモジュールM
nに到達する。このように、行きの同期信号は、PCからモジュールM
nまで伝送されることになる。
【0032】
終端のモジュールM
nは、前段に接続された直近のモジュールM
n-1から出力された同期信号を、入力部A
nから入力して出力部B
nに出力し、出力部B
nから入力部C
nに出力する。この同期信号の出力の時、モジュールM
nは、モジュール内時刻T
Bnを記録して保持する(記録部の一例)。
【0033】
終端のモジュールM
nは、出力部B
nから出力された同期信号を入力部C
nに入力する。この同期信号の入力の時、モジュールM
nは、モジュール内時刻T
Cnを記録して保持する(記録部の一例)。すなわち、モジュール内時刻T
cnは、同期信号を入力部C
nにて入力した時刻となる。その後、モジュールM
nは、入力部C
nから入力した同期信号を出力部D
nに出力し、出力部D
nから、前段に接続された直近のモジュールM
n-1に出力する。
【0034】
そして、全てのモジュールM
xでは、モジュール内時刻T
Bxとモジュール内時刻T
Cxを基に、T
xを算出する(算出部の一例)。T
xは、以下の式で算出される。
T
x=T
Cx−(T
Cx−T
Bx)/2
【0035】
このようにして算出されたT
xは、全てのモジュールM
1〜M
nにおける基準時刻T
REFとなる(
図2参照)。
【0036】
上記T
xの算出について、例えばモジュールM
1を例に説明する。モジュールM
1は、後段に接続された直近のモジュールM
2から出力された同期信号を入力部C
1に入力する。この同期信号の入力の時、モジュールM
1は、モジュール内時刻T
C1を記録して保持する(記録部の一例)。すなわち、モジュール内時刻T
c1は、同期信号をモジュールM
2から入力部C
1にて入力した時刻となる。その後、モジュールM
1は、入力部C
1から入力した同期信号を出力部D
1に出力し、出力部D
1から、前段の直近に接続されたPCに出力する。また、モジュールM
1は、モジュール内時刻T
B1とモジュール内時刻T
C1を基に、T
1を算出する(算出部の一例)。T
1は、上述した式と同様である。算出されたT
1は、全てのモジュールM
1〜M
nにおける基準時刻T
REFとなる(
図2参照)。
【0037】
出力部D
1から出力された同期信号はPCに到達する。このように、帰りの同期信号は、モジュールM
nからPCまで伝送される。PCに帰りの同期信号が入力されれば、全てのモジュールで算出されたT
1〜T
nが基準時刻T
REFとして一致する(
図2参照)。
【0038】
PCは、後段に接続された直近のモジュールM
1から出力された同期信号の入力の時、PC内時刻T
ENDを記録して保持する(記録部の一例)。すなわち、PC内時刻T
ENDは、同期信号をモジュールM
1から入力した時刻となる。
【0039】
そして、PCは、上記各モジュールと同様に、PC内時刻T
STARTとPC内時刻T
ENDを基に、基準時刻T
REFの算出を行う(第1算出部の一例)。この算出は以下の式で行われる。
T
REF=T
END−(T
END−T
START)/2
【0040】
次に、ユーザは、PCに対して、モジュールM
1〜M
nに実行させる処理(例えば画像表示処理)と、その処理を実行させる時刻(実行時刻という。例えば16時)とを指定して、実行時刻に処理を実行するように指示を行う(この指示は、上記時刻同期の実行指示の時に行われてもよい)。
【0041】
PCは、上記指定及び指示を受け付けると、指定された実行時刻と、算出した基準時刻T
REFとを基に、指定された処理を実行させるまでの時間を示す実行時間を算出する(第2算出部の一例)。実行時間は、実行時刻と基準時刻T
REFとの差分(例えば、何分後、何時間後)である。
【0042】
次に、PCは、指定された処理と、算出した実行時間とを定義したコマンド信号を生成し、始端のモジュールM
1に出力する(生成部の一例)。例えば、コマンド信号は、「40分後に画像表示処理を行いなさい」という内容となる。
【0043】
モジュールM
1は、PCから出力されたコマンド信号を入力部A
1にて入力すると、その内容と、自分自身が算出した基準時刻T
REFとに基づいて処理を実行する(処理実行部の一例)。例えば、コマンド信号の内容が「40分後に画像表示処理を行いなさい」という場合、モジュールM
1は、自分自身が算出した基準時刻T
REFに40分を加えた時刻に、画像表示を行う。入力部A
1に入力されたコマンド信号は、出力部B
1から、後段に接続された直近のモジュールM
2に出力される。このコマンド信号は、行きの同期信号と同様に、PC〜M
nまで伝送される。
【0044】
上述したモジュールM
1における動作は、モジュールM
2〜M
nにおいても同様に行われる。
【0045】
以上のようにして、モジュールM
1〜M
nでは、ユーザにより指定された時刻(例えば16時)に同時に、ユーザにより指定された処理(例えば画像表示処理)が行われることになる。
【0046】
なお、上記実施形態においては、例えば、各モジュールがPCから基準時刻T
REFのコマンドを受け取るのではなく、予め各モジュール内に基準時刻T
REFのタイムテーブルを備えるようにし、時刻の同期後、そのタイムテーブルに従って各モジュールがそれぞれ独立して動作する(時刻同期しているので外部からは各モジュールの動作が連動しているように見える)ようにしてもよい。その場合、入力部A
1へ入力される信号は、例えば、パワーオンリセット後に一度だけ出力されるような簡単な信号でよい。
【0047】
また、上記実施形態において、PCと各モジュールからなるシステムは、長時間連続稼働するものであるので、時刻同期後に各モジュールの持っている時計がずれてくることが問題になる場合は、PCは一定時間毎に時刻同期プロセスを発動する(入力部A
1へ信号を送る)。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、一のマスタ対複数のスレーブで個々に時刻同期を行う構成に比べ、よりシンプルな構成により、他のモジュールとの間で時刻の同期を行うことができる。すなわち、マスタとスレーブの区別をつける必要なく、全てのモジュールが同一の動作を行うことで、時刻の同期を実現できる。また、モジュールの数を変更する場合でも、モジュールの動作を変更する必要なく、単純に、接続又は接続の解除を行うだけでよい。また、モジュール数が増える場合でも、終端のモジュールに接続すればよいため、モジュール間の結線が複雑にならない。また、厳密な時刻同期を必要とする場合には、高価なVCXOを備える必要なく、一般的な発振器を備えるだけでよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0050】
例えば、上述した実施形態における動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成によって実行することも可能である。
【0051】
ソフトウェアによる処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリにインストールして実行させてもよい。あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させてもよい。
【0052】
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto Optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することが可能である。
【0053】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送してもよい。または、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送してもよい。コンピュータでは、転送されてきたプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることが可能である。
【0054】
また、上記実施形態で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
M モジュール
A、C 入力部
B、D 出力部