【実施例1】
【0017】
本発明の着底式汚濁防止装置は、
図1に示すように、工事区域の海面部分を矩形状に囲む、海上に浮上した環状の浮体7と、上記浮体7の全周から垂下した汚濁防止カーテン8と、上記汚濁防止カーテン8の下端全周に渡り設けたパイプまたはチェーン9と、上記汚濁防止カーテン8の下端の4隅に設けた着底検知センサ10と、上記汚濁防止カーテン8の長さを調整するための、上記矩形状の浮体7上の各辺にそれぞれ離間して2つづつ設けたエア駆動等のカーテン昇降ウインチ11と、上記昇降ウインチ11の昇降ワイヤー12と、上記昇降ワイヤー12の繰り出し長を計測するロータリエンコーダなどの繰出長計測器13と、工事区域又はその付近に設置した、例えば水圧計などを利用して潮位を計測する潮位計測装置14と、上記着底検知センサ10からの着底・非着底情報と上記潮位計測装置14からの潮位情報とを記憶し、上記情報から上記汚濁防止カーテンの繰出繰入量(伸縮量)を演算せしめる記憶演算処理装置15と、上記潮位計測装置14に設けた送受信装置16と、上記記憶演算処理装置15に設けた送受信機17と、上記着底検知センサ10の着底状況を視覚的に知らせる着底検知灯18とよりなる。
【0018】
また、上記着底検知センサ10は、例えば、
図2に示すように、水底下に潜り込まない程度の大きさの円板部分19と、上記円板部分19の上面中央に固定した、上面開放の円筒状の磁石収納器20と、上記収納器20の底部に固定した磁石21と、その上端が上記汚濁防止カーテン8の下部又は下端に取り付けられ、その下端に近接センサ22を有する円柱状の近接センサ支持具23と、上記円板部分19を、上記近接センサ支持具23の下部で吊り下げた状態に取り付けるための3本のワイヤ24とよりなる。
【0019】
また、上記3本のワイヤ24の取付位置や長さは、上記近接センサ22が上記収納器20内に収まるように調節され、上記近接センサ支持具23が上記円板部分19に対して傾斜しても近接センサ22が磁石20から極度に離れてしまう事を防止する。
【0020】
そして、上記着底検知センサ10は、上記磁石21と上記近接センサ22とが所望量以上離れているときはOFFを示し、所望量より近づいた場合にはONを示すように構成され、カーテンの下端が水中を下降し、最初に上記着底検知センサ10の円板部分19が水底に着底し、カーテンの下端の下降とともに上記ワイヤ24が弛み、上記近接センサ22が磁石20に所望量だけ接近して、上記着底検知センサ10がONとなった時に、汚濁防止カーテンの下端が水底6に着底したと判断する。
【0021】
また、上記着底検知センサ10を、
図3に示すように、例えば、近接する2つの上記昇降ウインチに連動せしめる。即ち、第1着底検知センサ10aからの情報に基づき、第1昇降ウインチ11aと第8昇降ウインチ11hを操作せしめ、第2着底検知センサ10bからの情報に基づき、第2昇降ウインチ11bと第3昇降ウインチ11cを操作せしめ、第3着底検知センサ10cからの情報に基づき、第4ウインチ11dと第5ウインチ11eを操作せしめ、第4着底検知センサ10dからの情報に基づき、第6ウインチ11fと第7ウインチ11gを操作せしめるように設定する。
【0022】
なお、
図8及び
図9は、上記着底検知センサ10の他の実施例を示す。この他の実施例の着底検知センサ10は、上記汚濁防止カーテン8の下端のパイプ又はチェーン9に設けた、鉛直方向において傾動自在な傾動部材25と、上記傾動部材25に固定した傾斜スイッチ26と、上記傾動部材25を所望量以上傾斜しないように規制するストッパー27とよりなる。
【0023】
上記傾動部材25は、上記汚濁防止カーテン8の下端のパイプ又はチェーン9にワイヤーまたはシャックル28を介して設けた取付金具29と、上記取付金具29に鉛直方向において傾動自在に設けたフレーム部30とよりなり、上記取付金具29は断面コ字状に形成され、上記取付金具29の折片29a,29aにはそれぞれ貫通孔31が設けられ、上記取付金具29の水平部29bの上面にはシャックル28取付用の吊金具32を有する。
【0024】
また、上記フレーム部30は、所望の距離離間して互いに対向するように設けた2本のL形鋼33と、これらL形鋼33,33間に設けた棒状部材34と、上記2本のL形鋼33,33と棒状鋼34とを一端側において連結せしめる着底用プレート35と、上記2本のL形鋼33,33と棒状部材34とを他端側において連結せしめるウエイト36と、上記互いに対向する2本のL形鋼33,33の折片33a,33aを連結する、上記取付金具29の貫通孔31の径よりも小さい径の枢支軸37とよりなり、上記棒状部材34に固定バンド38を介して上記傾斜スイッチ26が固定され、上記取付金具29の貫通孔31に上記枢支軸37が挿入され、上記取付金具29に対して、上記傾動部材25が鉛直方向に対して傾動自在に枢支されている。
【0025】
なお、上記枢支軸37の上記L形鋼33の折片33aに対する取付位置は、上記傾動部材25が上記取付金具29に対して傾動自在に枢支せしめたとき、上記傾動部材25の一端側が下方に傾動するように取付ける。
【0026】
また、上記着底用プレート35は、上記傾動部材25の先端が水底に到達したとき、上記L形鋼33または棒状部材34の端部が水底に突き刺さり、上記傾動部材25が傾動しなくなるのを防止するためのもので、水底への突き刺さりを防止できるものであれば他の部材を用いても良い。
【0027】
また、上記傾斜スイッチ26は、上記傾動部材25が所望量以上傾斜している時にはOFFを示し、所望量以下傾斜する時、例えば、水底に対して平行となる場合にONを示すセンサーで、例えば、フロートスイッチなどがある。なお、39は上記傾斜スイッチのON・OFF情報を上記記憶演算処理装置15に伝えるためのケーブルである。
【0028】
また、上記ウエイト36は、着底したときに必ず上記傾動部材25の他端側が下がり傾斜スイッチ26が上がるように、傾動部材25を傾けるためのものであり、着底したときに傾動部材25の他端側が下がる場合には、設けなくてもよい。
【0029】
なお、
図11及び
図12に示すように、上記ストッパー27に加えて、または上記ストッパー27の代わりにワイヤー40aと40bを設けてもよい。上記ワイヤー40aは、上記ワイヤー40aの一端を上記パイプ又はチェーン9に接続し、他端を棒状部材34の一端に接続せしめ、上記傾斜部材25が所望量より傾斜していない時には弛むが、所望量傾斜した時には張るような長さとして、上記傾動部材25が所望量以上傾斜しないようにし、また、前記ワイヤー40bは、上記ワイヤー40bの一端を上記パイプ又はチェーン9に接続し、他端を棒状部材34の他端に接続せしめ、上記傾動部材がその一端が下を向く方向で傾斜している時は弛むが、上記傾動部材25が水平面に対して水平になった時に張るようになる長さとして、上記傾動部材25がその他端が下を向く方向に傾斜しないようにする。
【0030】
上記他の実施例の着底検知センサ10は、上記傾斜スイッチ26、即ち傾動部材25が所望量以上傾斜しているときはOFFを示し、水底に対して、例えば、平行になる場合にはONを示すように構成され、カーテン下端が水中を下降し、最初に上記着底検知センサ10の傾動部材25の一端側が着底し、カーテンの下端の下降とともに上記傾動部材25の傾斜量が少なくなり、上記傾動部材25、即ち傾斜スイッチ26が水底面に対して水平になってONとなった時に、汚濁防止カーテンの下端が水底6に着底しと判断される。
【0031】
また、上記各昇降ウインチ11a〜11hにより調整される各カーテン部分の長さは、例えば、
図4のフローに従い以下のように操作せしめる。
【0032】
まず、上記各昇降ウインチ11a〜11hにより長さ調整が行われるカーテン部分が全て水底に着底していない初期の状態から、
(1)上記記憶演算装置15が、上記潮位計測器14から潮位データが得られているか否かを判断する。
【0033】
(2)上記(1)の判断において、潮位データが得られていないと判断された場合には、上記潮位計測装置14や送受信機16、17などの伝送ラインの作動状況を確認し、これらを正しく作動せしめた後、上記(1)の操作に戻る。
【0034】
(3)上記(1)の判断において、潮位データが得られていると判断された場合には、上記記憶演算処理装置15が、上記各昇降ウインチのウインチエアバルブを操作して、各カーテン部分の長さを長くして、上記各カーテン部分の下端を降下せしめる。
【0035】
(4)所望の時間経過後、上記各着底検知センサがONかOFFかを検知せしめる。
【0036】
(5)上記(4)の判断において、上記着底検知センサがONである判断された着底検知センサがある場合には、上記繰出長計測器13により計測しながら、この時の上記着底検知センサの対応する各昇降ウインチのカーテン部分の長さから、更に波高動揺分(α)だけカーテン部分の長さを長くして、上記対応する昇降ウインチを停止せしめる。
【0037】
(6)上記(4)の判断において、OFFであると判断された着底検知センサがある場合には、この着底検知センサ及びこれに対応する各昇降ウインチについて、所望の時間経過後、再度上記各着底検知センサがONかOFFかを検知せしめ、これをカーテン部分の下端が着底していると判断されるまで繰り返し、着底していると判断された時に、上記繰出長計測器13により計測しながら、この時の上記着底検知センサの対応する各昇降ウインチのカーテン長さから、更に波高動揺分(α)だけカーテン部分の長さを長くして、上記対応する昇降ウインチを停止せしめる。
【0038】
なお、上記αは、潮位変動ではなく、波の動揺により汚濁防止カーテンが持ち上がり、汚濁防止カーテン下端と水底との間に隙間が出来るのを避けるために、波の動揺分だけ、汚濁防止カーテンを下げるものである。
【0039】
また、上記着底検知センサがONと判断された場合に、上記対応する各昇降ウインチを一度停止せしめ、そこから上記着底検知センサの対応する各昇降ウインチを再度操作して、上記繰出長計測器13により計測しながら、波高動揺分(α)だけカーテン部分の長さを長くして、上記対応する昇降ウインチを停止せしめるようにしてもよい。
【0040】
(7)そして、上記(4)、(6)において、上記各着底検知センサ10a〜10dがそれぞれONであると判断した時の各潮位をa(a1、a2、a3、a4)として、上記各着底検知センサ10a〜10dに対応して上記記憶演算処理装置15に記憶せしめる。
【0041】
なお、上記潮位a1は着底検知センサ10aがONであると判断した時の潮位、上記潮位a2は着底検知センサ10bがONであると判断した時の潮位、上記潮位a3は着底検知センサ10cがONであると判断した時の潮位、上記潮位a4は着底検知センサ10dがONであると判断した時の潮位である。
【0042】
但し、潮位変動が少ない場合等には、基準となる着底検知センサがONであると判断した時の潮位aを、他の着底検知センサがONであると判断した時の潮位として用いても良い。
【0043】
(8)次に、所望の時間経過後に,上記各着底検知センサ10a〜10dがそれぞれONかOFFかを検知せしめる。
【0044】
(9)上記(8)の判断において、OFFと判断された着底検知センサがある場合には、この着底検知センサ及びこれに対応する各昇降ウインチにおいて、各昇降ウインチのウインチエアバルブを操作して、各カーテン部分の長さを長くして、上記各カーテン部分の下端を下降せしめる上記(3)の操作に戻る。
【0045】
(10)上記(8)の判断において、ONと判断された着底検知センサがある場合には、この時の潮位をbとして、上記記憶演算処理装置15に記憶せしめる。
【0046】
(11)そして、上記記憶された潮位bから、上記着底検知センサの対応する潮位aを引いた値が、例えば、10cmより大きいか否かを、上記記憶演算処理装置15により演算せしめる。
【0047】
なお、上記10cmは、潮位変動の誤差等を吸収するための一例の値で、海域や時刻等によっては20cmと設定しても良い。
【0048】
(12)上記(11)の判断において、大きいと判断した場合には、上記繰出長計測器13により計測しながら、上記着底検知センサの対応するカーテン部分の長さを(b−a)cmだけ繰り出し(伸ばし)、昇降ウインチを停止せしめ、この時の潮位をaとして、上記着底検知センサに対応して記憶演算処理装置15に記憶し直させ、上記(8)の操作に戻る。
【0049】
(13)上記(11)の判断において、小さいと判断した場合には、上記潮位bから、上記記憶した着底検知センサの対応する潮位aを引いた値が、例えば、−10cmより小さいか否かを、上記記憶演算処理装置15により演算せしめる。
【0050】
なお、上記−10cmは、潮位変動の誤差等を吸収するための一例の値で、海域や時刻等によっては−20cmと設定しても良い。
【0051】
(14)上記(13)の判断において、小さいと判断した場合には、上記繰出長計測器13により計測しながら、上記着底検知センサの対応するカーテン部分の長さを(a―b)cmだけ繰り入れて(短くして)、昇降ウインチを停止せしめ、この時の潮位をaとして、上記着底検知センサに対応して記憶演算処理装置15に記憶し直させ、上記(8)の操作に戻る。
【0052】
(15)上記(13)の判断において、大きいと判断した場合には、この時の潮位をaとして、上記着底検知センサに対応して記憶演算処理装置15に記憶し直させ、上記(8)の操作に戻る。
【0053】
本発明の着底式汚濁防止装置は上記のような構成であるから、例えば、
図3及び
図5に示すように、傾斜した海底面6bがあり、海底面6aと海底面6cとの間に高低差がある場合には、まず全ての昇降ウインチ11a〜11hが操作されて、各カーテン部分の下端が下り、最初に第3着底検知センサ10cと第4着底検知センサ10dが着底を検知して、上記第3着底検知センサ10cを挟む第4昇降ウインチ11dと第5昇降ウインチ11eと、上記第4着底検知センサ10dを挟む第6昇降ウインチ11fと第7昇降ウインチ11gが停止(STOP)する。
【0054】
また、上記第1着底検知センサ10aを挟む第8昇降ウインチ11hと第1ウインチ11aと、上記第2着底検知センサ10bを挟む第2昇降ウインチ11bと第3昇降ウインチ11cは、対応する上記第1着底検知センサ10aと第2着底検知センサ10bが着底するまで駆動(RUN)して、対応するカーテン部分の下端が下がり、上記第1着底検知センサ10aと第2着底検知センサ10bが着底を検知したときに、上記第8昇降ウインチ11h、第1昇降ウインチ11a、第2昇降ウインチ11b、第3昇降ウインチ11cが停止するようになる。
【0055】
なお、
図6及び
図7は、着底検知センサ10をカーテンの下端の4隅に加えて、カーテンの下端の各辺の中間部に更に着底検知センサ10を設けて、計8個の着底検知センサ11a〜11hとした場合を示す。
【0056】
この場合も上記と同様に、上記各着底検知センサ11a〜11hに応じて、対応する各昇降ウインチが作動され、例えば、第5着底検知センサ10e付近の海底が掘削により沈下した場合には、上記第5着底検知センサ10eが着底検知しなくなるから、上記第5着底検知センサ10eを挟む第1昇降ウインチ11aと第2昇降ウインチ11bのみが駆動(RUN)して、上記昇降ウインチ11a,11bに対応するカーテン部分の下端が下降し、上記第5着底検知センサ10eが着底を検知したときに、上記第1昇降ウインチ11aと第2昇降ウインチ11bが停止する。
【0057】
本発明の着底式汚濁防止装置によれば、潮位や、海底面の形状に応じて、自動で、着底式汚濁防止装置の下端が水底に着底して、汚濁の外部への拡散を常時防ぐことができるので、作業員が常時、潮位を監視することが不要になるという大きな利益がある。
【0058】
また、海底面に傾斜があっても、自動で、汚濁防止カーテンの全域における下端が水底に着底でき、また、海底の掘削を行っている途中で、一部の海底が崩れても、自動でカーテンの下端が水底に着底するようになる。また、カーテンがだぶついて、グラブに巻きつくことがない。
【0059】
なお、上記浮体7に上記記憶演算処理装置15を設ける代わりに、船や地上に設置し、上記浮体7に送受信機を設けて、各昇降ウインチを操作せしめるようにしても良い。
【0060】
また、上部浮体7を環状とせずに、工事区域の一部のみを囲むような形状としても良い。
【0061】
また、各着底検知センサの数や各昇降ウインチの数を増減して、各着底検知センサと各昇降ウインチを任意の組み合わせで連動せしめて、上記着底検知センサの情報に基づいて、複数の各昇降ウインチを所望量昇降せしめても良い。
【0062】
なお、浮体7が矩形の場合には、カーテン下端の少なくとも4隅に着底検知センサを設けるのが好ましい。