特許第5676220号(P5676220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676220
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   B41J2/01 109
   B41J2/01 129
   B41J2/01 401
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2010-257611(P2010-257611)
(22)【出願日】2010年11月18日
(65)【公開番号】特開2012-106432(P2012-106432A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小和田 功二
【審査官】 小島 寛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−154436(JP,A)
【文献】 特開2008−200947(JP,A)
【文献】 特開2006−341420(JP,A)
【文献】 特開平07−256960(JP,A)
【文献】 特開2006−130727(JP,A)
【文献】 特開2002−187918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクヘッドユニットが所定の方向を往復移動するとともに、円筒形状の媒体を前記所定の方向に延長する回転軸周りに順次回転することによって、前記インクヘッドユニットから前記媒体に光硬化インクを吐出する走査領域を、前記媒体の回転方向への移動距離に応じた間隔で順次変化しながら、前記媒体に所定の画像の印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
円筒形状の媒体を保持して回転する回転手段と、
前記回転手段により回転する前記媒体に対して光硬化インクを吐出するとともに、前記所定の方向に延設されたガイドレールに摺動自在に配設されたインクヘッドと、前記ガイドレールにおいて前記インクヘッドの前記所定の方向の一方側に配設され、駆動手段の駆動により前記ガイドレールに沿って往復移動可能であり、前記インクヘッドから前記媒体に吐出された光硬化インクに対して光を照射する光照射手段とが、連結手段により分離可能に連結されたインクヘッドユニットと
前記インクヘッドユニットが移動可能な前記所定の方向における他方側端部において、前記インクヘッドを係合・離脱自在に係止する係止手段と、
前記インクヘッドと前記光照射手段とが連結手段により連結した前記インクヘッドユニットを前記所定の方向に移動しながら、前記インクヘッドから前記媒体に光硬化インクを吐出するとともに前記光照射手段から該光硬化インクに対して光を照射して走査領域における印刷を行うよう制御し、前記媒体に所定の画像を印刷すると、前記インクヘッドユニットを前記所定の方向における他方側に移動して前記インクヘッドを前記係止手段に係止した後に、前記光照射手段を前記インクヘッドから離脱し、前記光照射手段を光を照射した状態で前記所定の方向で移動しながら前記所定の画像に光を照射するように制御する制御手段と
を有するようにしたインクジェットプリンタ。
【請求項2】
インクヘッドユニットが所定の方向を往復移動するとともに、円筒形状の媒体を前記所定の方向に延長する回転軸周りに順次回転することによって、前記インクヘッドユニットから前記媒体に光硬化インクを吐出する走査領域を、前記媒体の回転方向への移動距離に応じた間隔で順次変化しながら、前記媒体に所定の画像の印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
円筒形状の媒体を保持して回転する回転手段と、
前記回転手段により回転する前記媒体に対して光硬化インクを吐出するとともに、前記所定の方向に延設されたガイドレールに摺動自在に配設されたインクヘッドと、前記ガイドレールにおいて前記インクヘッドの前記所定の方向の一方側に配設され、駆動手段の駆動により前記ガイドレールに沿って往復移動可能であり、前記インクヘッドから前記媒体に吐出された光硬化インクに対して光を照射する光照射手段とが、連結手段により分離可能に連結されたインクヘッドユニットと、
前記インクヘッドユニットが移動可能な前記所定の方向における他方側端部において、前記インクヘッドを係合・離脱自在に係止する係止手段と、
前記インクヘッドと前記光照射手段とが連結手段により連結した前記インクヘッドユニットを前記所定の方向に移動しながら、前記インクヘッドから前記媒体に光硬化インクを吐出するとともに前記光照射手段から該光硬化インクに対して光を照射せずに走査領域における印刷を行うよう制御し、前記媒体に所定の画像を印刷すると、前記インクヘッドユニットを前記所定の方向における他方側に移動して前記インクヘッドを前記係止手段に係止した後に、前記光照射手段を前記インクヘッドから離脱し、前記光照射手段を光を照射した状態で前記所定の方向で移動しながら前記所定の画像に光を照射するように制御する制御手段と
を有するようにしたインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記制御手段は、前記光照射手段が前記インクヘッドから分離した際に、前記光照射手段の移動速度を光硬化インクに最適な紫外線の照射を行うよう制御する
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関し、さらに詳細には、被印刷物たる記録紙などの媒体上に、紫外線を照射すると硬化するインク(本明細書においては、「紫外線を照射すると硬化するインク」を、単に「紫外線硬化インク」と適宜に称する。)をインクジェット方式により吐出して印刷を行うインクジェットプリンタに関する。
【0002】
なお、本明細書において「媒体」とは、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料やアルミ、鉄、木材のような材料などの各種の材料が含まれるものとする。
【0003】
また、本明細書においてインクジェット方式とは、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの各種の連続方式や、サーマル方式あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、従来より公知の各種の手法によるインクジェット技術による印刷方式を意味するものとする。
【背景技術】
【0004】
従来より、媒体に吐出するインクとして紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化インクを用い、内部に搭載された紫外線照射ランプなどの紫外線を発生させることが可能な光源により媒体上に吐出された紫外線硬化インクに紫外線を照射して、媒体上に吐出された紫外線硬化インクを硬化して印刷を行う紫外線硬化型のインクジェットプリンタが知られている。
【0005】
即ち、こうした紫外線硬化型のインクジェットプリンタは、インクヘッドから被印刷物である媒体に対して紫外線硬化インクを吐出して印刷を行うが、紫外線照射ランプを用いて紫外線硬化インクを吐出された媒体の印刷面に対して紫外線を照射することにより、媒体に吐出された紫外線硬化インクを硬化させて印刷面への固定化を図るようになされている。
【0006】
こうした紫外線硬化インクを用いた従来のインクジェットプリンタによれば、紙以外の各種の媒体への印刷も可能であるという利点があり、紫外線硬化インクを用いたインクジェットプリンタは現在広く使用されている。
【0007】
このため、形状がシート状ではない媒体に対しても用いられ、例えば、円筒、円柱あるいは球などの形状の媒体に対して印刷を行う場合には、円筒、円柱あるいは球などの形状の媒体に対して印刷を行うインクジェットプリンタ(以下、「円筒、円柱あるいは球などの形状の媒体に対して印刷を行うインクジェットプリンタ」を「円筒印刷インクジェットプリンタ」と称することとする。)を使用する。
【0008】

この円筒印刷インクジェットプリンタについて、図1乃至図3を参照しながら、詳細に説明することとする。
【0009】
図1には、円筒印刷インクジェットプリンタの概形構成説明図が示されており、図2には、図1のA矢視図が示されており、図3には、円筒印刷インクジェットプリンタにおける回転ユニットの概略構成斜視説明図が示されている。
【0010】
この円筒印刷インクジェットプリンタ100は、後述する回転ユニット114によって、媒体として幅方向たる走査方向において所定の長さを有する円筒形状の被印刷物200が、走査方向に平行な中心軸Oを中心として所定の方向に回転されるようになされている。
【0011】
こうした円筒印刷インクジェットプリンタ100は、走査方向に延長する固定系のベース部材102と、ベース部材102の左右両端でベース部材102に直交して配設された側方部材104L、104Rと、左右2つの側方部材104L、104Rを上方側で連結するフレーム106と、フレーム106の前方面106aに走査方向に延長して配設されたガイドレール108と、後述するインクヘッド112の左方側に固定的に配設された紫外線照射ランプ110とガイドレール108に摺動自在に配設されるインクヘッド112とにより構成されるインクヘッドユニット140と、ベース部材102上に配設され、円筒形状の被印刷物200を保持するとともに保持した被印刷物200を回転する回転ユニット114と、側方部材104L側に配設されたメンテナンスユニット116とを有して構成されている。
【0012】

このインクヘッドユニット140は、駆動ベルト142に固定的に配設され、駆動ベルトの駆動により、ガイドレール108に摺動して走査方向において行き方向および帰り方向で往復移動する。
【0013】
回転ユニット114は、ベース部材102上に配設される上下方向駆動ユニット120と、上下方向駆動ユニット120の上面120aの左方側に配設される回転軸駆動ユニット122と、上下方向駆動ユニット120の上面120aにおいて回転軸駆動ユニット122の右方側に配設される支持ユニット124と、回転軸駆動ユニット122の右側面122aに設けられた保持部材126と、保持部材126と対をなして支持ユニット124の左側面124aに設けられた保持部材128とを有して構成されている。
【0014】
支持ユニット124は、上下方向駆動ユニット120の上面120a上に走査方向に平行に設けられた溝120b上を摺動自在に設けられており、支持ユニット124を走査方向に移動させて、左側面124aに設けられた保持部材128と回転軸駆動ユニット122の右側面122aに設けられた保持部材126とによって、被印刷物200を保持するようにしている。
【0015】
また、支持ユニット124には、支持ユニット固定部124−1が設けられており、この支持ユニット固定部124−1により上下方向駆動ユニット120に設けられた溝120b上の任意の位置で支持ユニット124を固定することができる。
【0016】
支持ユニット124の左側面124aに設けられた保持部材128は、略円柱形状に形成され、被印刷物200と当接する側面128aが凹んだ形状となっている。
【0017】
また、保持部材128は、側面128aと対向する側面128bの中心部において支持ユニット124の左側面124aに設けられた支持部材124aaに回転可能に支持されている。
【0018】
なお、この支持部材124aaは、後述する回転軸駆動ユニット122に設けられた回転軸122aaと同軸上(図2では、中心軸Oとして示す。)に設けられている。
【0019】
そして、支持部材124aaに回転可能に設けられた保持部材128は、中心軸Oを回転軸として回転するものである。
【0020】
また、回転軸駆動ユニット122は、上下方向駆動ユニット120の上面120aの左方側に固定的に配設されており、右側面122aには保持部材126が設けられている。
【0021】
この保持部材126は、保持部材128と同様の形状であって、略円筒形状に形成され、被印刷物200が当接する側面126aが凹んだ状態となっている。
【0022】
そして、保持部材126は、側面126aと対向する側面126bの中心部において回転軸駆動ユニット122の右側面122aから突出して設けられた回転軸122aaと接続されている。
【0023】
このため、保持部材126は、回転軸駆動ユニット122内に設けられた駆動モーター(図示せず。)により回転する回転軸122aaによって、中心軸Oを回転軸として回転するものである。
【0024】
つまり、保持部材126と保持部材128とは中心軸Oを回転軸として回転するものであり、保持部材126および保持部材128により保持された被印刷物200は、回転軸駆動ユニット122内に設けられた駆動モーター(図示せず。)の駆動により、回転軸122aaが回転することで、中心軸Oを回転軸として回転する。
【0025】
上下方向駆動ユニット120は、脚部130によりベース部材102上に固定的に配設されており、脚部130が設けられた基台部131と、基台部131内に走査方向に延設されたシャフト(図示せず。)上を移動可能に配設された板状部材135と、板状部材135のシャフト(図示せず。)上の移動に伴って昇降する台座部137とを有して構成されている。
【0026】
板状部材135には4つのベアリング133が設けられ、台座部137の下面137aには4つの三角部材139が設けられている(図13(a)(b)を参照する。)。この板状部材135は、4つのベアリング133が回転することにより、シャフト上を移動するものであり、当該4つのベアリング133には、それぞれ台座部137に設けられた4つの三角部材139が当接するようにして基台部131上に台座部137が配設されている。
【0027】
このため、板状部材135が右方側に移動すると台座部137が上昇し、板状部材135が左方側に移動すると台座部137は下降することとなる(図13(c)(d)を参照する。)。
【0028】
なお、こうした板状部材135は、図示しないマイクロコンピューターの制御によって、図示しない駆動モーターおよびネジシャフトによりシャフト(図示せず。)上を移動するものである。
【0029】
また、メンテナンスユニット116は、インクヘッドユニット140が待機状態となったときに位置する側方部材104L側に設けられるとともに、キャップ装置132と、ワイパー装置(図示せず。)と、吸引装置136を備えている。
【0030】
このキャップ装置132は、ノズルキャップ部を備え、インクヘッドユニット140が待機状態となりメンテナンスユニット116上に位置したときに、インクヘッド112の下面に設けられたインクジェットノズル(図示せず。)を被覆するものである。
【0031】
ワイパー装置(図示せず。)は、ブレードを備え、インクヘッドユニット140が待機状態となってメンテナンスユニット116上に位置したときに、当該ブレードがインクヘッド112のインクジェットノズル(図示せず。)の下面に当接し、インクジェットノズル(図示せず。)の下面に残留したインク等を除去するものである。
【0032】
吸引装置134は、吸引ポンプや当該吸引ポンプを駆動する駆動モーターなどを備え、印刷後にインクヘッドユニット140がメンテナンスユニット116上に位置すると、インクヘッド112のインクジェットノズル(図示せず。)から紫外線硬化インクを吸引して、インクジェットノズル(図示せず。)内に残留する紫外線硬化インクを除去するものである。
【0033】
なお、こうしたインクジェットプリンタ100の全体の動作、即ち、インクヘッドユニット140の移動、紫外線照射ランプ110の点灯ならびに消灯、インクヘッド112における紫外線硬化インクの吐出などを含む全体の動作は、図示しないマイクロコンピューターによって制御される。
【0034】

以上の構成において、円筒形状の被印刷物200に印刷を行う場合には、まず、作業者が被印刷物200の一方の側面200aを保持部材126の側面126aに当接させる。
【0035】
そして、被印刷物200の長さに合わせて支持ユニット124を移動させ、被印刷物200の他方の側面200bを保持部材128の側面128aに当接させた状態で、支持ユニット固定部124−1により支持ユニット124を固定し、被印刷物200を回転ユニット114に保持させる。
【0036】
次に、作業者により被印刷物200への印刷の開始が指示されると、駆動ベルト142の駆動に伴って、インクヘッドユニット140が回転ユニット114に保持された被印刷物200上を走査方向に行き方向および帰り方向に往復移動する。
【0037】
また、被印刷物200は、回転軸駆動ユニット122の回転軸122aaの回転(図1では矢印I方向に回転し、図2では手前方向に回転する。)によって、回転するようになされている。
【0038】
そして、インクヘッドユニット140の往復移動によって、走査方向における行き方向もしくは帰り方向において紫外線硬化インクを吐出する単方向印刷や、走査方向における行き方向および帰り方向において紫外線硬化インクを吐出する双方向印刷において、一回の行き方向もしくは帰り方向での移動で被印刷物200の印刷面200c上にインクヘッド112から紫外線硬化インクを吐出する領域たる走査領域は、被印刷物200が順次回転することによって、当該回転方向への回転量に応じた間隔で変化するものである。
【0039】
つまり、インクヘッドユニット140が走査方向における行き方向および帰り方向に往復移動しつつ、かつ、被印刷物200が順次回転することによって、走査領域が回転方向への移動距離に応じた間隔で順次変化することとなる。
【0040】
そして、各走査領域においてマイクロコンピューターの制御によりインクヘッドユニット140におけるインクヘッド112のインクジェットノズル(図示せず。)から被印刷物200の印刷面200cへ向けて紫外線硬化インクを吐出する。
【0041】
これにより、被印刷物200の印刷面200cに紫外線硬化インクを塗布する。この塗布した紫外線硬化インクを紫外線照射ランプ110による紫外線の照射により硬化することによって、被印刷物200に対して印刷が行われることになる。
【0042】

ところで、こうした円筒印刷インクジェットプリンタ100においては、シート状の被印刷物に対して印刷を行うインクジェットプリンタと同様に、インクヘッドユニット140が被印刷物200の印刷面200cにおける走査領域上を移動する際に、インクヘッド112から吐出された紫外線硬化インクに対して、紫外線照射ランプ110により紫外線を照射するとき、当該紫外線硬化インクには紫外線照射ランプ110により複数回紫外線の照射が行われるものである。
【0043】

ここで、図4を参照しながら、インクジェットプリンタ150においてシート状の被印刷物250に対して印刷を行う場合について説明する。
【0044】
なお、以下の説明においては、上記した円筒印刷インクジェットプリンタ100と同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いて示すことにより、その詳細な構成ならびに作用の説明を適宜に省略することとする。
【0045】

インクジェットプリンタ150によりシート状の被印刷物250に印刷を行う場合には、まず、インクヘッドユニット140が主走査方向を行き方向および帰り方向に往復移動することにより、所定の走査領域上を移動してインクヘッド112から紫外線硬化インクの吐出を行うとともに紫外線照射ランプ110から当該紫外線硬化インクへの紫外線の照射を行う。
【0046】
次に、被印刷物250が給紙装置(図示せず。)により副走査方向に搬送されるとともに、インクヘッドユニット140が主走査方向の行き方向および帰り方向に往復移動して、インクヘッドユニット140が当該所定の走査領域の次の走査領域上を移動し、当該次の走査領域に対してインクヘッド112から紫外線硬化インクの吐出を行うとともに紫外線照射ランプ110から当該紫外線硬化インクへの紫外線の照射を行うものである。
【0047】
こうした動作を繰り返して、シート状の被印刷物250に対して所望の画像を印刷するものであるが、こうした走査領域に吐出される紫外線硬化インクに対しては、下記のようにして硬化に十分な紫外線が照射されるものである。
【0048】
即ち、インクヘッドユニット140が所定の走査領域上を移動しながらインクヘッド112から紫外線硬化インクを吐出した後、当該インクヘッド112の左方側に設けられた紫外線硬化ランプ110により1回目の紫外線が照射される(図5(a)を参照する)。
【0049】
そして、所定の走査領域に吐出された紫外線硬化インクへの紫外線の照射を終えると、図示しない給紙装置によりシート状の被印刷物250が所定量だけ移動して、インクヘッドユニット140は所定の走査領域の次の走査領域状を移動可能な状態とする。
【0050】
インクヘッドユニット140が所定の走査領域の次の走査領域上を移動するときには、当該次の走査領域にインクヘッド112から紫外線硬化インクを吐出するとともに、紫外線照射ランプ110により当該次の走査領域に吐出された紫外線硬化インクに1回目の紫外線が照射される。
【0051】
このとき、紫外線照射ランプ110から照射された紫外線は、所定の走査領域に吐出された紫外線硬化インクにも照射され、所定の走査領域上に吐出された紫外線硬化インクには2回目の紫外線が照射されることとなる(図5(b)を参照する。)。
【0052】
そして、当該次の走査領域に吐出された紫外線硬化インクへの紫外線の照射を終えると、図示しない給紙装置によりシート状の被印刷物250が所定量だけ移動して、インクヘッドユニット140が当該走査領域の次の走査領域上を移動可能な状態とする。
【0053】
インクヘッドユニット140が所定の走査領域の次の走査領域の次の走査領域上を移動するときには、移動した走査領域上にインクヘッド112から紫外線硬化インクを吐出するとともに、紫外線照射ランプ110により当該紫外線硬化インクに1回目の紫外線が照射される。
【0054】
このとき、紫外線照射ランプ110から照射された紫外線は、所定の走査領域に吐出された紫外線硬化インクおよび当該所定の走査領域の次の走査領域に吐出された紫外線硬化インクにも照射され、所定の走査領域に吐出された紫外線硬化インクには3回目の紫外線が照射されることとなるとともに、当該所定の走査領域の次の走査領域に吐出された紫外線硬化インクには2回目の紫外線が照射されることとなる(図5(c)を参照する。)。
【0055】
こうした動作を繰り返して、各走査領域に吐出された紫外線硬化インクには複数回紫外線照射ランプ110から紫外線が照射されるものである。
【0056】
なお、こうしたインクジェットプリンタ150においては、メンテナンスユニット116は、側方部材104L近傍の基台部102内に設けられている。
【0057】

これに対して、円筒印刷インクジェットプリンタ100においては、被印刷物200が円筒形状であるため、被印刷物200の円筒形状の外径が大きいほど、被印刷物200の印刷面200cにおけるインクヘッドユニット140が移動する走査領域は曲率が小さい曲面、つまり、平面に近い状態となる。
【0058】
従って、この場合には、シート状の被印刷物250に対して印刷を行うインクジェットプリンタ150と同様に、所定の走査領域に吐出された紫外線硬化インクは、当該所定の走査領域の次以降の走査領域上をインクヘッドユニット140が移動する際にも、紫外線照射ランプ110により紫外線が照射され、硬化に十分な紫外線を照射することが可能となる。
【0059】

しかしながら、被印刷物200の円筒形状の外径が小さいほど、被印刷物200の印刷面200cにおけるインクヘッドユニット140が移動する走査領域は曲率が大きい曲面となる。
【0060】
従って、この場合には、所定の走査領域に吐出された紫外線硬化インクは、当該所定の走査領域の次の走査領域上をインクヘッドユニット140が移動する際には、紫外線照射ランプ110により照射される紫外線が十分に照射されない状態となる。
【0061】
そして、当該次の走査領域の次の走査領域では、紫外線硬化インクに紫外線が全く照射されなくなる(図6(a)(b)(c)を参照する。)。
【0062】
つまり、所定の走査領域の次以降の走査領域においては、紫外線硬化インクに紫外線が十分に照射されなくなり、紫外線硬化インクの硬化不良などの不具合が生じることとなる。
【0063】

このため、円筒印刷インクジェットプリンタ100において、円筒形状の外径が小さい被印刷物を印刷する際には、走査領域に吐出した紫外線硬化インクを硬化するために、インクヘッドユニット140を当該走査領域上を移動しながらインクヘッド112から紫外線硬化インクを吐出した後に、当該走査領域上で、紫外線照射ランプ110により紫外線が照射された状態のインクヘッドユニット140を往復移動させて、当該紫外線硬化インクに対して硬化に十分な紫外線を照射するようにしていた。
【0064】

しかしながら、円筒印刷インクジェットプリンタ100において、所定の走査領域への紫外線硬化インクの吐出後に、紫外線照射ランプ110により紫外線が照射された状態のインクヘッドユニット140を当該所定の走査領域上で複数回往復移動させて当該紫外線硬化インクに硬化に十分な紫外線を照射するようにすると、インクヘッドユニット140の移動によりインクヘッド112に設けられたインクジェットノズル(図示せず。)において紫外線硬化インクが乾燥してしまう。
【0065】
さらに、こうしたインクヘッドユニット140の移動により、紫外線照射ランプ110による紫外線照射時の紫外線の反射光によって、インクヘッド112に設けられたインクジェットノズル(図示せず。)において紫外線硬化インクが硬化してしまうことがあり、インクヘッド112において紫外線硬化インクの吐出不良が生じてしまうといった問題点が指摘されていた。
【0066】

こうした問題点を解決するために、インクヘッドユニット140が各走査領域上を移動する毎に、インクヘッドユニット140が使用されていないときに位置するインクヘッドユニット140の待機位置に設けられたメンテナンスユニット116において紫外線硬化インクを少量排出して、インクジェットノズル(図示せず。)が紫外線硬化インクにより塞がれないようにする手法が用いられている。
【0067】

しかしながら、こうした手法では、インクジェットノズル(図示せず。)において紫外線硬化インクの乾燥および硬化を防止することができるものであるが、インクジェットノズル(図示せず。)近傍においては紫外線硬化インクが乾燥あるいは硬化してしまう。
【0068】
こうしたインクジェットノズル(図示せず。)近傍において乾燥あるいは硬化した紫外線硬化インクは、メンテナンスユニット116に設けられたワイパー装置(図示せず。)により除去できずに吐出不良を生じる要因となる。
【0069】
このため、紫外線硬化インクの吐出不良を十分に抑制することができるものではなかった。
【0070】
さらに、この手法では、インクヘッドユニット140が走査領域上を移動する毎に紫外線硬化インクをメンテナンスユニット116において排出するため、紫外線硬化インクの損失が大きくなるとともに印刷時間が長くなり、コスト高を招来するといった新たな問題点が発生してしまっていた。
【0071】

なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明でないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0072】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、この目的とするところは、コスト高を招来することなくインクの吐出不良を抑制することが可能なインクジェットプリンタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0073】
上記目的を達成するために、本発明は、紫外線を照射する紫外線照射ランプを紫外線硬化インクを吐出するインクヘッドから分離可能な構成とし、紫外線照射ランプのみを駆動できるようにした。
【0074】
即ち、本発明は、インクヘッドユニットが所定の方向を往復移動するとともに、円筒形状の媒体を上記所定の方向に延長する回転軸周りに順次回転することによって、上記インクヘッドユニットから上記媒体に光硬化インクを吐出する走査領域を、上記媒体の回転方向への移動距離に応じた間隔で順次変化しながら、上記媒体に所定の画像の印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、円筒形状の媒体を保持して回転する回転手段と、上記回転手段により回転する上記媒体に対して光硬化インクを吐出するとともに、上記所定の方向に延設されたガイドレールに摺動自在に配設されたインクヘッドと、上記ガイドレールにおいて上記インクヘッドの上記所定の方向の一方側に配設され、駆動手段の駆動により上記ガイドレールに沿って往復移動可能であり、上記インクヘッドから上記媒体に吐出された光硬化インクに対して光を照射する光照射手段とが、連結手段により分離可能に連結されたインクヘッドユニットと上記インクヘッドユニットが移動可能な上記所定の方向における他方側端部において、上記インクヘッドを係合・離脱自在に係止する係止手段と、上記インクヘッドと上記光照射手段とが連結手段により連結した上記インクヘッドユニットを上記所定の方向に移動しながら、上記インクヘッドから上記媒体に光硬化インクを吐出するとともに上記光照射手段から該光硬化インクに対して光を照射して走査領域における印刷を行うよう制御し、上記媒体に所定の画像を印刷すると、上記インクヘッドユニットを上記所定の方向における他方側に移動して上記インクヘッドを上記係止手段に係止した後に、上記光照射手段を上記インクヘッドから離脱し、上記光照射手段を光を照射した状態で所定の速度で移動しながら上記所定の画像に光を照射するように制御する制御手段とを有するようにしたものである。
【0075】
また、本発明は、インクヘッドユニットが所定の方向を往復移動するとともに、円筒形状の媒体を上記所定の方向に延長する回転軸周りに順次回転することによって、上記インクヘッドユニットから上記媒体に光硬化インクを吐出する走査領域を、上記媒体の回転方向への移動距離に応じた間隔で順次変化しながら、上記媒体に所定の画像の印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、円筒形状の媒体を保持して回転する回転手段と、上記回転手段により回転する上記媒体に対して光硬化インクを吐出するとともに、上記所定の方向に延設されたガイドレールに摺動自在に配設されたインクヘッドと、上記ガイドレールにおいて上記インクヘッドの上記所定の方向の一方側に配設され、駆動手段の駆動により上記ガイドレールに沿って往復移動可能であり、上記インクヘッドから上記媒体に吐出された光硬化インクに対して光を照射する光照射手段とが、連結手段により分離可能に連結されたインクヘッドユニットと、上記インクヘッドユニットが移動可能な上記所定の方向における他方側端部において、上記インクヘッドを係合・離脱自在に係止する係止手段と、上記インクヘッドと上記光照射手段とが連結手段により連結した上記インクヘッドユニットを上記所定の方向に移動しながら、上記インクヘッドから上記媒体に光硬化インクを吐出するとともに上記光照射手段から該光硬化インクに対して光を照射せずに走査領域における印刷を行うよう制御し、上記媒体に所定の画像を印刷すると、上記インクヘッドユニットを上記所定の方向における他方側に移動して上記インクヘッドを上記係止手段に係止した後に、上記光照射手段を上記インクヘッドから離脱し、上記光照射手段を光を照射した状態で所定の速度で移動しながら上記所定の画像に光を照射するように制御する制御手段とを有するようにしたものである。
【0076】
また、本発明は、上記した発明において、前記制御手段は、前記光照射手段が前記インクヘッドから分離した際に、前記光照射手段の移動速度を光硬化インクに最適な紫外線の照射を行うよう制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0077】
本発明は、以上説明したように構成されているので、コスト高を招来することなくインクの吐出不良を抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1図1は、従来の技術による円筒印刷インクジェットプリンタを示す概略構成斜視説明図である。
図2図2は、図1のA矢視図である。
図3図3は、回転軸駆動ユニットを示す概略構成斜視説明図である。
図4図4は、従来の技術によるシート状の被印刷物に対して印刷を行うインクジェットプリンタを示す概略構成斜視説明図である。
図5図5は、従来の技術によるシート状の被印刷物に対して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化インクへの紫外線の照射を説明するためのインクヘッドユニットと被印刷物とが示された説明図であり、図5(a)は、所定の走査領域に吐出されたインクに対して紫外線を照射した状態を示す説明図であり、また、図5(b)は、所定の走査領域の次の走査領域に吐出されたインクに対して紫外線を照射した状態を示す説明図であり、また、図5(c)は、所定の走査領域の次の走査領域の次の走査領域に吐出されたインクに対して紫外線を照射した状態を示す説明図である。
図6図6は、従来の技術による円筒印刷インクジェットプリンタにおいて、円筒形状の被印刷物の外径が小さい場合における紫外線硬化インクへの紫外線の照射を説明するためのインクヘッドユニットと被印刷物とが示された説明図であり、図6(a)は、所定の走査領域に吐出されたインクに対して紫外線を照射した状態を示す説明図であり、また、図6(b)は、所定の走査領域の次の走査領域に吐出されたインクに対して紫外線を照射した状態を示す説明図であり、また、図6(c)は、所定の走査領域の次の走査領域の次の走査領域に吐出されたインクに対して紫外線を照射した状態を示す説明図である。
図7図7は、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタを示す概略構成斜視説明図である。
図8図8は、図7のB矢視図である。
図9図9(a)は、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタにおけるインクヘッドと紫外線照射ランプとの連結状態を示す説明図であり、また、図9(b)は、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタにおけるインクヘッドと紫外線照射ランプとの分離状態を示す説明図である。
図10図10は、本発明によるシート状の被印刷物に対して印刷を行うインクジェットプリンタを示す概略構成斜視説明図である。
図11図11は、図10のC矢視図である。
図12図12は、連結部の変形例を示す説明図である。
図13図13(a)は、上下方向駆動ユニットにおける台座部を示す概略構成斜視説明図であり、また、図13(b)は上下方向駆動ユニットにおける板状部材を示す概略構成斜視説明図であり、図13(c)(d)は、上下方向駆動ユニットにおいて台座部を上昇させる際の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるインクジェットプリンタの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0080】
なお、以下の説明においては、図1乃至図4を参照しながら説明した従来の技術によるインクジェットプリンタと同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いて示すことにより、その詳細な説明ならびに作用の説明を適宜に省略することとする。
【0081】

ここで、図7には、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタの概略構成斜視説明図が示されており、また、図8には、図7のB矢視図が示されており、また、図9(a)には、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタにおけるインクヘッドと紫外線照射ランプとの連結状態を示す説明図が示されており、また、図9(b)には、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタにおけるインクヘッドと紫外線照射ランプとの分離状態を示す説明図が示されている。
【0082】

この図7に示す円筒印刷インクジェットプリンタ10は、インクヘッドユニット140に設けられた紫外線照射ランプ110およびインクヘッド112に代えて、駆動ベルト142に固定的に配設されるとともに後述するインクヘッド14の左方側においてガイドレール108に摺動自在に配設される紫外線照射ランプ12と、右側側壁14bにフック20が設けられるとともにガイドレール108に摺動自在に配設されるインクヘッド14とを備え、さらに、側方部材104Rに固定的に配設された係合フック22を備えている点において、従来の技術による円筒印刷インクジェットプリンタ100と異なっている。
【0083】
より詳細には、インクヘッド14は、ガイドレール108上で紫外線照射ランプ12の右方側に位置するように並設されており、このインクヘッド14の左側側壁14aに設けられたマグネット18と紫外線照射ランプ12の右側側壁12aに設けられたマグネット16とにより両者が適宜に連結または離脱できるようになされている。
【0084】
なお、これらマグネット16とマグネット18とによって連結部24が構成されている。
【0085】

また、インクヘッド14の右側側壁14bにはフック20が設けられており、このフック20が側方部材104Rに設けられた係合フック22に係合・離脱されるようになっている。
【0086】
このフック20と係合フック22との係合・離脱は図示しないマイクロコンピューターにより制御されるものであり、フック20と係合フック22とが係合した状態(図9(b)に示す状態である。)の保持力は、紫外線照射ランプ12とインクヘッド14とを連結したマグネット16とマグネット18との吸着力より強くなるように設定されている。
【0087】
なお、フック20と係合フック22とによって係止部26が構成されている。
【0088】

さらに、紫外線照射ランプ12とインクヘッド14とは、インクヘッド14により紫外線硬化インクを所定の走査領域に吐出する場合には、図示しないマイクロコンピューターの制御により、マグネット16とマグネット18とを吸着させて連結し、紫外線照射ランプ12とインクヘッド14とが一体的に移動する。
【0089】
一方、紫外線硬化インクの所定の走査領域への吐出が終了し、当該紫外線硬化インクにさらなる紫外線を照射しようとする場合などには、図示しないマイクロコンピューターの制御により、インクヘッド14に設けられたフック20を側方部材104Rに設けられた係合フック22に係止させた後に、マグネット16とマグネット18とを引き離して、紫外線照射ランプ12のみを移動する。
【0090】

以上の構成において、円筒印刷インクジェットプリンタ10により円筒形状の被印刷物200の印刷面200cに印刷を行う場合について説明する。
【0091】
例えば、紫外線硬化インクを吐出ながら当該紫外線硬化インクに紫外線を照射して所定の画像を形成し、その後、当該紫外線硬化インクにさらに紫外線を照射するような場合には、まず、被印刷物200を回転ユニット114に保持させる。
【0092】
具体的には、まず、作業者が被印刷物200の一方の側面200aを保持部材126の側面126aに当接させる。
【0093】
そして、被印刷物200の長さに合わせて支持ユニット124を移動させ、被印刷物200の他方の側面200bを保持部材128の側面128aに当接させた状態で、支持ユニット固定部124−1により支持ユニット124を固定し、被印刷物200を回転ユニット114に保持させる。
【0094】
次に、作業者により被印刷物への印刷の開始が指示されると、待機状態(つまり、メンテナンスユニット116の上方側に位置した状態)の紫外線照射ランプ12および紫外線照射ランプ12と連結されたインクヘッド14が駆動ベルト142の駆動に伴って、被印刷物200の印刷面200c上の所定の走査領域上を走査方向の行き方向で移動する。
【0095】
このとき、インクヘッド14は所定の走査領域に紫外線硬化インクを吐出し、紫外線照射ランプ12は吐出された紫外線硬化インクに対して紫外線を照射する。
【0096】
つまり、紫外線照射ランプ12およびインクヘッド14が走査方向の行き方向で移動する際に、紫外線硬化インクを吐出するとともに、吐出直後の紫外線硬化インクの硬化を開始することとなる。
【0097】
所定の走査領域への紫外線硬化インクの吐出および当該紫外線硬化インクの硬化が終わると、駆動ベルト142の駆動により、紫外線照射ランプ12とインクヘッド14とが左方側(走査方向の帰り方向)に移動してインクヘッド14により被印刷物200の左端部から紫外線硬化インクの吐出が可能な位置に移動するとともに、回転ユニット114において被印刷物200が所定量だけ回転する。これにより、紫外線照射ランプ12およびインクヘッド14が所定の走査領域の次の走査領域上を移動可能な状態となる。
【0098】
そして、同様にして、所定の走査領域の次の走査領域において紫外線硬化インクの吐出および当該紫外線硬化インクの硬化が行われる。
【0099】
当該次の走査領域において紫外線硬化インクの吐出および当該紫外線硬化インクの仮硬化が終了すると、紫外線照射ランプ12とインクヘッド14とが左方側に移動してインクヘッド14により被印刷物200の左端部から紫外線硬化インクの吐出が可能な位置に移動するとともに、回転ユニット114において被印刷物200が所定量だけ回転する。
【0100】
これにより、紫外線照射ランプ12およびインクヘッド14が所定の走査領域の次の走査領域の次の走査領域上を移動可能な状態となる。
【0101】

このように、各走査領域において紫外線硬化インクの吐出および当該紫外線硬化インクの硬化を行うとともに、紫外線硬化インクの吐出および当該紫外線硬化インクの硬化が終了すると、次の走査領域において紫外線硬化インクの吐出および当該紫外線硬化インクの仮硬化を行うことで、被印刷物200の印刷面200cに所定の画像を形成する。
【0102】
こうして被印刷物200の印刷面200cにおいて、紫外線硬化インクの吐出および当該紫外線硬化インクの硬化により所定の画像を形成すると、紫外線照射ランプ12およびインクヘッド14が側方部材104Rまで移動する。
【0103】
そして、インクヘッド14の右側側壁14bに設けられたフック20を側方部材104Rに設けられた係合フック22に係合させて、側方部材104Rにインクヘッド14を固定する。
【0104】
その後、駆動ベルト142により紫外線照射ランプ12を左方側に移動させて、紫外線照射ランプ12をインクヘッド14から引き離す。
【0105】

次に、回転ユニット114において被印刷物200を回転して、紫外線照射ランプ12が所定の走査領域上を移動可能な状態とする。
【0106】
そして、インクヘッド14から引き離された紫外線照射ランプ12は、紫外線を照射した状態で駆動ベルト142の駆動により所定の走査領域上を往復移動して、当該所定の走査領域上において硬化された紫外線硬化インクに対してその硬化を十分に行うための紫外線を照射する。
【0107】
つまり、紫外線照射ランプ12のみを走査方向において往復移動させながら、仮硬化された紫外線硬化インクの硬化を確実にための処理を行う。
【0108】

そして、所定の走査領域において、紫外線硬化インクのさらなる硬化が終了すると、紫外線照射ランプ12を左方側に移動して被印刷物200の左端部から紫外線の照射が可能な位置に移動するとともに、回転ユニット114において被印刷物200を所定量だけ回転し、紫外線照射ランプ12が所定の走査領域の次の走査領域上を移動可能な状態となる。
【0109】

その後、当該次の走査領域において、同様にして、硬化された紫外線硬化インクに対してさらなる硬化を行い、当該次の走査領域における硬化された紫外線硬化インクのさらなる硬化が終了すると、紫外線照射ランプ12を左方側に移動して被印刷物200の左端部から紫外線の照射が可能な位置に移動するとともに、回転ユニット114において被印刷物200を回転し、紫外線照射ランプ12が当該次の走査領域の次の走査領域上を移動することが可能となる。
【0110】
このようにして、各走査領域における紫外線硬化インクのさらなる硬化を行うとともに、当該紫外線硬化インクのさらなる硬化が終了すると、次の走査領域の紫外線硬化インクのさらなる硬化を行うことで、被印刷物200の印刷面200cに形成された所定の画像を確実に固定化して画像印刷を完了する。
【0111】
そして、画像印刷が完了すると、図示しないマイクロコンピューターの制御により、紫外線照射ランプ12は、側方部材104Rに固定されたインクヘッド14と連結し、その後、係合フック22が動作してインクヘッド14と側方部材104Rとの係止状態が解除される。
【0112】
インクヘッド14と側方部材104Rとの係止状態が解除されると、駆動ベルト142の駆動により、紫外線照射ランプ12とインクヘッド14とが左方側に移動して待機位置に移動し、印刷処理を終了する。
【0113】
こうした印刷方法においては、紫外線硬化インクを吐出するとともに最初の硬化を行い、その後、当該硬化された紫外線硬化インクのさらなる硬化を行うことにより、印刷後の画像の画質が向上するとともに、紫外線硬化インクの被印刷物200の印刷面200cへの密着性が向上するものである。
【0114】

以上において説明したように、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタ10は、紫外線照射ランプ12がインクヘッド14と分離されて駆動することが可能な構成であるため、走査領域上に吐出された紫外線硬化インクに対してさらなる紫外線を照射する場合にも、紫外線照射ランプ12のみを駆動することが可能となる。
【0115】
このため、インクヘッド14におけるインクジェットノズル(図示せず。)や当該インクジェットノズル近傍において紫外線硬化インクが乾燥あるいは硬化し難くなる。
【0116】
従って、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタ10においては、インクジェットノズル(図示せず。)や当該インクジェットノズル近傍における紫外線硬化インクの乾燥あるいは硬化によるインクの吐出不良が生じにくくなる。
【0117】
また、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタ10においては、インクジェットノズル(図示せず。)および当該インクジェットノズル近傍において紫外線硬化インクが乾燥あるいは硬化し難いため、紫外線硬化インクの排出を抑制することができ、従来の技術による円筒印刷インクジェットプリンタ100に比べて、印刷時間を短縮できるとともに、コスト高を押さえることが可能となる。
【0118】
さらに、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタ10においては、紫外線照射ランプ12のみを駆動することができるため、紫外線照射ランプ12の走査方向における移動速度を調整して、使用する紫外線硬化インクに最適な紫外線の照射を行うことが可能となる。
【0119】
さらにまた、本発明による円筒印刷インクジェットプリンタ10においては、必要に応じて紫外線照射ランプ12をインクヘッド14から分離することが可能であるため、インクヘッド14によるインク吐出時以外においては紫外線照射ランプ12のみを駆動することとなり、駆動ベルト142に生じるイナーシャ(慣性)が小さくなり、駆動ベルト142に生じる負荷が小さくなって、駆動ベルト142の寿命が長くなる。
【0120】

なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(6)に示すように変形することができるものである。
【0121】
(1)上記した実施の形態においては、円筒形状の被印刷物200に対して印刷を行う円筒印刷インクジェットプリンタ10において、紫外線照射ランプ12がインクヘッド14から分離して駆動する構成を有するようにしたが、こうした構成をシート状の被印刷物250に対して印刷を行うインクジェットプリンタに備えるようにしてもよいことは勿論である(図10および図11を参照する。)。
【0122】
(2)上記した実施の形態においては、紫外線照射ランプ12をインクヘッド14から引き離した後に、回転ユニット114において被印刷物200を回転するようにしていたが、これに限られるものではないことは勿論であり、回転ユニット114において被印刷物200を回転した後に、紫外線照射ランプ12をインクヘッド14から引き離すようにしてもよい。
【0123】
あるいは、回転ユニット114において被印刷物200を回転しながら、紫外線照射ランプ12をインクヘッド14から引き離すようにしてもよい。
【0124】
(3)上記した実施の形態においては、円筒印刷インクジェットプリンタ10により被印刷物200に印刷を行う場合について、被印刷物200の印刷面200c上に紫外線硬化インクを吐出しながら当該紫外線硬化インクに紫外線を照射して仮硬化し、その後、当該紫外線硬化インクに紫外線硬化インクを照射して本硬化を行う場合を例として説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0125】
例えば、被印刷物200の印刷面200c上に紫外線硬化インクを吐出して所望の画像を形成し、その後、当該紫外線硬化インクに紫外線を照射する場合には、まず、上記のようにして回転ユニット114に被印刷物200を保持させる。
【0126】
その後、作業者により被印刷物200への印刷の開始が指示されると、待機状態の紫外線照射ランプ12および紫外線照射ランプ12と連結されたインクヘッド14が駆動ベルト142の駆動に伴って、被印刷物200の印刷面200c上の所定の走査領域上を走査方向の行き方向で移動する。
【0127】
このとき、インクヘッド14は所定の走査領域に紫外線硬化インクを吐出するが、この吐出された紫外線硬化インクには、紫外線照射ランプ12により紫外線が照射されない。
【0128】
次に、所定の走査領域へのインクの吐出が終了すると、駆動ベルト142の駆動により、紫外線照射ランプ12とインクヘッド14とが左方側(走査方向の帰り方向)に移動してインクヘッド14により被印刷物200の左端部から紫外線硬化インクの吐出が可能な位置に移動するとともに、回転ユニット114において被印刷物200が所定量だけ回転する。
【0129】
これにより、紫外線照射ランプ12およびインクヘッド14が所定の走査領域の次の走査領域上を移動可能な状態となる。
【0130】
そして、同様にして、所定の走査領域の次の走査領域において紫外線硬化インクが吐出される。
【0131】
当該次の走査領域において紫外線硬化インクの吐出が終了すると、紫外線照射ランプ12とインクヘッド14とが左方側に移動してインクヘッド14により被印刷物200の左端部から紫外線硬化インクの吐出が可能な位置に移動するとともに、回転ユニット114において被印刷物200が所定量だけ回転する。
【0132】
これにより、紫外線照射ランプ12およびインクヘッド14が当該次の走査領域の次の走査領域上を移動可能な状態となる。
【0133】
このように、各走査領域において紫外線硬化インクの吐出を行うとともに、紫外線硬化インクの吐出が終了した後に、次の走査領域において紫外線硬化インクの吐出を行うことで、被印刷物200の印刷面200cに所定の画像を形成する。
【0134】
こうして被印刷物200の印刷面200cにおいて、紫外線硬化インクを吐出して所定の画像を形成すると、紫外線照射ランプ12およびインクヘッド14が側方部材104Rまで移動する。
【0135】
そして、インクヘッド14の右側側壁14bに設けられたフック20を側方部材104Rに設けられた係合フック22に係合させて、側方部材104Rにインクヘッド14を固定する。
【0136】
その後、駆動ベルト142により紫外線照射ランプ12を左方側に移動さえて、紫外線照射ランプ12をインクヘッド14から引き離す。
【0137】
次に、回転ユニット114において被印刷物200を回転して、紫外線照射ランプ12およびインクヘッド14が所定の走査領域上を移動可能な状態とする。
【0138】
そして、インクヘッド14から引き離された紫外線照射ランプ12は、紫外線を照射した状態で駆動ベルト142の駆動により所定の走査領域上を往復移動して、当該所定の走査領域上において吐出された紫外線硬化インクに対して硬化に十分な紫外線を照射する。
【0139】
つまり、紫外線照射ランプ12のみを走査方向において往復移動させながら、当該所定の走査領域上に吐出された紫外線硬化インクの硬化を行うものである。
【0140】
そして、所定の走査領域において、吐出された紫外線硬化インクの硬化が終了すると、紫外線照射ランプ12を左方側に移動して被印刷物200の左端部から紫外線の照射が可能な位置に移動するとともに、回転ユニット114において被印刷物200を所定量だけ回転し、紫外線照射ランプ12が所定の走査領域の次の走査領域上を移動可能な状態とする。
【0141】
その後、当該次の走査領域において、同様にして、吐出された紫外線硬化インクを硬化し、当該次の走査領域における紫外線硬化インクの硬化が終了すると、紫外線照射ランプ12を左方側に移動して被印刷物200の左端部から紫外線の照射が可能な位置に移動するとともに、回転ユニット114において被印刷物200を回転し、紫外線照射ランプ12が当該次の走査領域の次の走査領域上を移動可能な状態とする。
【0142】
このようにして、各走査領域における紫外線硬化インクの硬化を行うとともに、当該紫外線硬化インクの硬化が終了すると、次の走査領域の紫外線硬化インクの硬化を行うことで、被印刷物200の印刷面200cに形成された所定の画像を固定化して画像印刷を完了する。
【0143】
そして、画像印刷が完了すると、図示しないマイクロコンピューターの制御により、紫外線照射ランプ12は、側方部材104Rに固定されたインクヘッド14と連結し、その後、係合フック22が動作してインクヘッド14と側方部材104Rとの係止状態が解除される。
【0144】
インクヘッド14と側方部材104Rとの係止状態が解除されると、駆動ベルト142の駆動により、紫外線照射ランプ12とインクヘッド14とが左方側に移動して待機位置に移動し、印刷処理を終了する。
【0145】
こうした印刷方法においては、紫外線硬化インクを吐出して所定の画像を形成した後に、吐出された紫外線硬化インクを硬化させることで、吐出された紫外線硬化インクに対し、一定時間経過後に紫外線を照射することとなる。
【0146】
このため、被印刷物200の印刷面200cに吐出された紫外線硬化インクは、表面状態が平滑になった後に硬化されることとなり、被印刷物200の印刷面200c上に印刷された印刷結果に光沢感が得られることとなる。
【0147】
(4)上記した実施の形態においては、被印刷物200の印刷面200c上に紫外線を照射する紫外線照射ランプ12と紫外線硬化インクとを用いるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0148】
即ち、紫外線とは異なる放射線の可視光や電子線あるいはその他の光を照射する光照射手段を用い、被印刷物200の印刷面200c上に照射される光によって固化あるいは増粘する特性を有する各種インクを用いるようにしてもよい。
【0149】
(5)上記した実施の形態においては、マグネット16およびマグネット18により連結部24を構成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、紫外線照射ランプ12の右側側壁12aにマグネット18に吸着する板金部材30を設けて連結部24を構成するようにしてもよい(図12(a)を参照する。)。
【0150】
また、インクヘッド14の左側側壁14bにマグネット16に吸着する板金部材30を設けて連結部24を構成するようにしてもよい(図12(b)を参照する。)。
【0151】
なお、こうしたマグネット16、18は、永久磁石により構成してもよいし、あるいは、電磁石により構成するようにしてもよい。
【0152】
また、紫外線照射ランプ12の右側側壁12aに高さ方向に沿って移動自在な凸部を備えた第1の部材32を設けるとともに、インクヘッド14の左側側壁14bに第1の部材32の凸部が挿入可能な孔部を備えた第2の部材34とを設けて連結部24を構成するようにしてもよい(図12(c)を参照する。)。
【0153】
または、逆に、インクヘッド14の左側側壁14bに高さ方向に沿って移動自在な凸部を備えた第1の部材32を設けるとともに、紫外線照射ランプ12の右側側壁12aに第1の部材32の凸部が挿入可能な孔部を備えた第2の部材34とを設けて連結部を構成するようにしてもよい(図12(d)を参照する。)。
【0154】
(6)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(5)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、紫外線硬化インクなどの被印刷物上に照射される光によって固化あるいは増年する特性を有する光硬化型インクを用いたインクジェットプリンタに利用することができる。
【符号の説明】
【0156】
10、100、150 インクジェットプリンタ、12、110 紫外線照射ランプ、14、112 インクヘッド14 16、18 マグネット、20 フック、22 係合フック、104L、104R 側方部材、108 ガイドレール、114 回転ユニット、142 駆動ベルト、200、250 被印刷物、
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