特許第5676235号(P5676235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676235
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】車両用シール構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/04 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   B60J1/16 A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2010-285824(P2010-285824)
(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2012-131392(P2012-131392A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】松脇 寛治
(72)【発明者】
【氏名】寺田 功輔
(72)【発明者】
【氏名】村上 真也
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−110555(JP,U)
【文献】 特開昭62−225416(JP,A)
【文献】 実開平01−099708(JP,U)
【文献】 特開平09−076763(JP,A)
【文献】 実開平04−031016(JP,U)
【文献】 実開昭60−189423(JP,U)
【文献】 実開昭62−079614(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体開口部に設けられて、この車体開口部周縁に、ウエザストリップ部材が装着されると共に、この車体開口部で昇降されるガラスパネル部材の周縁部が、前記ウエザストリップ部材に当接された状態で、水密状態を得られるようにシールが行われる車両用シール構造であって、
前記車体開口部周縁に延在されて、車外側面部,車内側面部及びこれらの車外側面部と、車内側面部との間を連結する底面部とを有して、断面略コ字状を呈するリテーナ部材を設け、
前記ウエザストリップ部材は、前記リテーナ部材に嵌着されると共に、該リテーナ部材の車外側面部に装着されて、前記ガラスパネル部材の外側面に弾接される一次シールリップ部と、前記車内側面部に装着されて、前記ガラスパネル部材の内側面に弾接される二次シールリップ部とが、一体成形又は別体成形され、延在方向の少なくとも一部で、離反可能に設置すると共に、前記底面部に対向する位置に、前記ガラスパネル部材の端縁部が弾接される当接面の内部に中空部を有する中空シール部を設け
前記ウエザストリップ部材は、車体開口部周縁の形状に合わせて断面形状を変化させ、前記一次シールリップ部と二次シールリップ部又は中空シール部とにおいて、断面形状が変化する部分を、該ウエザストリップ部材の延設方向で相違させる
ことを特徴とする車両用シール構造。
【請求項2】
前記中空シール部は、内部に中空部を有して、断面略コ字状を呈する前記リテーナ部材の内側面から内向きに突設された一対の係止爪部によって、両側から挟持されて係止されている
ことを特徴とする請求項1記載の車両用シール構造。
【請求項3】
前記リテーナ部材の底面部に対峙する中空部には、前記ガラスパネル部材の端縁部が当接される当接面を有し、該当接面部を該底面部から嵩上げされている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用シール構造。
【請求項4】
前記中空部によって嵩上げされた当接面は、車内側に向かって嵩上げ量を増大させる頭頂部を有する
ことを特徴とする請求項3記載の車両用シール構造。
【請求項5】
前記二次シールリップ部側に、前記中空シール部を一体に設けた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、何れか一項記載の車両用シール構造。
【請求項6】
前記二次シールリップ部の中空部を一部形成する共有隔壁部が、前記中空シール部の中空部を形成する隔壁の一部を用いている
ことを特徴とする請求項5記載の車両用シール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体開口部に設けられて、車体開口部周縁と、昇降可能に設けられたガラスパネル部材との間の水密に用いられる車両用シール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車体開口部に設けられて、この車体開口部周縁に、ウエザストリップ部材が装着されることにより、昇降されるガラスパネル部材の周縁部を、このウエザストリップ部材に当接させて、水密状態を得られるようにシールが行われる車両用シール構造が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このような従来の車両用シール構造では、外装モールディング部材の内側に、ゴム製のウエザストリップ部材が、設けられている。
【0004】
このウエザストリップ部材には、前記ガラスパネル部材の周縁部の外側面に当接する一次シールリップ部と、内側面側に当接する二次シールリップ部と、このウエザストリップ部材が装着される車体開口部周縁に形成された凹溝部に、嵌着された状態で、底面部に位置する中空シール部とが、一体に成型されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−58389号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の車両用シール構造では、このウエザストリップ部材が装着される車体開口部周縁のうち、ルーフパネル部材近傍の比較的水平に近い部分と、車両上,下方向に延設されるピラー部に沿って設けられる部分との間に、湾曲するコーナ部が設けられている。
【0007】
このため、前記ウエザストリップ部材も、この湾曲するコーナ部の形状に合わせて、断面形状寸法を徐変させているが、変化が大きな断面では、継ぎ目が発生する。
【0008】
つまり、ウエザストリップは、その延在方向に2本以上をお互いの端面をつき合わせて連続に設置する場合があり、ここに継ぎ目が発生する。
【0009】
また、前記ピラー部近傍のシール性を確保する為に、必要とされる当接する奥行き方向への寸法が、ルーフパネル部材近傍よりも比較的大きくなり、前記一次シールリップ部と、前記二次シールリップ部及び中空シール部とを、一体に成型することが困難で、取付時の位置精度を要求されると共に、取付後のシール性に影響を与えてしまう虞があった。
【0010】
そこで、この発明は、取り付けられる位置や建付精度に関わらず、良好なシール性を得ることが出来る車両用シール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の車両用シール構造では、車両の車体開口部に設けられて、この車体開口部周縁に、ウエザストリップ部材が装着されると共に、この車体開口部で昇降されるガラスパネル部材の周縁部が、前記ウエザストリップ部材に当接された状態で、水密状態を得られるようにシールが行われる
この車両用シール構造において、前記車体開口部周縁に延在されて、車外側面部,車内側面部及びこれらの車外側面部と、車内側面部との間を連結する底面部とを有して、断面略コ字状を呈するリテーナ部材を設けた。
また、前記ウエザストリップ部材は、前記リテーナ部材に嵌着されると共に、該リテーナ部材の車外側面部に装着されて、前記ガラスパネル部材の外側面に弾接される一次シールリップ部と、前記車内側面部に装着されて、前記ガラスパネル部材の内側面に弾接される二次シールリップ部とが、一体成形又は別体成形され、延在方向の少なくとも一部で、離反可能に設置すると共に、前記底面部に対向する位置に、前記ガラスパネル部材の端縁部が弾接される当接面の内部に中空部を有する中空シール部を設けた。
そして、前記ウエザストリップ部材は、車体開口部周縁の形状に合わせて断面形状を変化させ、前記一次シールリップ部と二次シールリップ部又は中空シール部とにおいて、断面形状が変化する部分を、該ウエザストリップ部材の延設方向で相違させる
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用シール構造では、前記車体開口部周縁に延在されたリテーナ部材に、嵌着された前記ウエザストリップ部材のうち、一次シールリップ部が、前記ガラスパネル部材の外側面に弾接されて、水密状態とすると共に遮音性を向上させる。
【0013】
また、前記車内側面部に装着されて、前記ガラスパネル部材の内側面に弾接される二次シールリップ部が別体成形されている場合は無論のこと、前記一次シールリップ部と一体に成形(一体成形)されている場合でも、延在方向の少なくとも一部で、前記一次シールリップ部から、離反された状態で装着可能であるので、該車体開口部周縁の形状に関わらず、前記ガラスパネル部材の内側面に弾接されて、前記一次シールリップ部から、水滴が漏出しても、車内側に浸入させることなく、該二次シールリップ部を伝わらせて、ドレイン排水出来、水密性を向上させることが出来る。
【0014】
しかも、前記底面部に対向する位置に設けられた中空シール部が、前記ガラスパネル部材の端縁部を、弾接させる際に、弾性変形可能な弾接方向寸法を、内部に形成された中空部によって、底面部から嵩上げして設定可能である。
【0015】
若しくは、二次シールリップ部が前記一次シールリップ部から離反を開始する位置より車体の下方向では、前記底面部に対向する位置に設けられた中空シール部を消滅させることが可能である。
【0016】
このため、シール可能な余裕代を大きく設定出来、更に、取り付けられる位置や建付精度に関わらず、良好なシール性を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態の車両用シール構造で、要部の構成を説明し、ウエザストリップ部材が装着された車体開口部の車両上下方向に沿った一部断面斜視図である。
図2】実施の形態の車両用シール構造で、全体の構成を説明する車両の後部の模式的な側面図である。
図3A】実施の形態の車両用シール構造で、各部の構成を説明し、実線部分は図2中A−A線に沿った位置で延在方向と直交する方向に切断された断面図である。
図3B】実施の形態の車両用シール構造で、各部の構成を説明し、実線部分は図2中B−B線に沿った位置で延在方向と直交する方向に切断された断面図である。
図3C】実施の形態の車両用シール構造で、各部の構成を説明し、実線部分は図2中C−C線に沿った位置で延在方向と直交する方向に切断された断面図である。
図3D】実施の形態の車両用シール構造の一変形例で、各部の構成を説明し、図2中C−C線に沿った位置の図3Cに相当する部分での断面図である。
図4】実施の形態の車両用シール構造で、図1に相当する部分で、実線に示すガラスパネル部材が、二点鎖線で示す様に、車外側に移動して、端縁部を中空シール部に弾接させる様子を示す拡大断面である。
図5】実施の形態の車両用シール構造で、図1に相当する部分で、実線に示すガラスパネル部材が、二点鎖線で示す様に、車内側に移動して、端縁部を中空シール部に弾接させる様子を示す拡大断面である。
図6】実施の形態の車両用シール構造で、図3B相当部材の図3A相当部材に向けた端部を示す一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態の車両用シール構造を、図面に基づいて説明する。
【0019】
まず、図1乃至図6を用いて、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車両用シール構造では、図2に示す様に、車両1の車体後部2には、車幅方向左右一対、立設されたセンタピラー部材3の上端部3aから、車両後方へ向けて延設されるルーフ部材4が設けられている。
【0020】
このルーフ部材4は、略平板状の天井部4cの後端近傍から、円弧状を呈して、下方に向けて屈曲された湾曲部4aを介して、車幅方向左右に一対、面一となるように設けられたリヤピラー部4bと連設されている。
【0021】
また、この車体後部2に設けられた後部ウエスト部5には、昇降可能なガラスパネル部材6が設けられている。
【0022】
そして、このガラスパネル部材6が、前記センタピラー部材3及びルーフ部材4の天井部4c、湾曲部4a、リヤピラー部4b及び、この後部ウエスト部5のウエストカーライン5aによって、囲まれた車体開口部7を、開閉塞可能に昇降されるように構成されている。
【0023】
この車体開口部7の周縁7aのうち、前記ルーフ部材4の天井部4c、湾曲部4a及びリヤピラー部4bの下端までには、ウエザストリップ部材8が装着されている。
【0024】
このウエザストリップ部材8は、前記車体開口部7の周縁7aに延在されて、断面略コ字状を呈する金属材料製のリテーナ部材9に嵌着されている。
【0025】
このリテーナ部材9は、主に、車外側面部9a,車内側面部9b及びこれらの車外側面部9aと、車内側面部9bとの間を連結する底面部9cと、この底面部9c近傍で、断面略コ字状を呈する車外側面部9a,車内側面部9bの内側面から内向きに突設されて、前記ウエザストリップ部材8を両側から挟持して係止する一対の係止爪部9d,9dとを有している。
【0026】
そして、この車体開口部7で昇降されるガラスパネル部材6の周縁部としての端縁部6a並びにその周辺が、前記ウエザストリップ部材8に当接された状態で、水密状態を得られるようにシールが行われるように構成されている。
【0027】
このウエザストリップ部材8は、主に、前記リテーナ部材9の車外側面部9aに装着されて、前記ガラスパネル部材6の外側面6bに弾接されるリップ本体10aを、弾性変形可能に片持ち支持する一次シールリップ部10と、前記車内側面部9bに装着されて、前記ガラスパネル部材6の内側面6cに弾接されるリップ本体11bを弾性変形可能に突設する二次シールリップ部11とを有している。
【0028】
これらの一次シールリップ部10と、前記二次シールリップ部11とは、延在方向の少なくとも一部で、この実施の形態では、図2に示す様に、前記湾曲部4aから、リヤピラー部4bの下端に至るまで、分離離反されて成型されている。
【0029】
また、前記リテーナ部材9の底面部9cに対向する位置には、前記二次シールリップ部11と一体に形成される中空シール部12が、二次シールリップ部11側の共有隔壁部12dを、一部として偏在されて設けられている。
【0030】
この中空シール部12には、中空部12aが内部に形成されていて、前記ガラスパネル部材6の端縁部6aが弾接されて、シール性を向上させるように、車体開口部7方向に向けて、当接面12bを、頭頂部に稜線12cが形成された略山型形状を呈して、突設されている。
【0031】
更に、この実施の形態の車両用シール構造では、この中空部12aと、前記二次シールリップ部11の根元部を構成して、支持する二次シール側中空部11aとの間には、共有隔壁部12dが、この中空部12aの周壁面の厚さ方向寸法に比して肉厚形状となると共に、二次シール側中空部11aの周壁面の厚さ方向寸法と略同じ厚さ方向寸法を有し、延設方向に沿って、一体に成型されている。
【0032】
そして、この実施の形態の車両用シール構造では、図4及び図5に示す様に、この共有隔壁部12dの中間部より、先端寄り(底面部9c寄り)位置で、前記中空部12aの周壁面の基端部12eが、略直交する方向から接続されている。
【0033】
このため、図4中二点鎖線で示す位置に比して、ガラスパネル部材6の端縁部6aが、前記中空部12aの当接面12bの稜線12cから、実線で示すように車内側にズレて当接しても、前記一次リップシール部10のリップ本体10aが、車室内方向へ追従する為、弾接が維持されると共に、前記基端部12eを回転中心として、図中反時計回りの押圧力F1が加わり、二次シールリップ部11のリップ本体11b先端を、ガラスパネル部材6の内側面6c方向F2へ押し出すように構成されている。
【0034】
また、図5中二点鎖線で示す位置に比して、ガラスパネル部材6の端縁部6aが、前記中空部12aの当接面12bの稜線12cから、実線で示すように車外側にズレた位置で当接しても、この共有隔壁部12dが、前記中空部12aの周壁面の基端部12eによって、下方傾倒方向F3へ押圧されて、二次シールリップ部11のリップ本体11b先端を車外方向F4へ押し出されるように構成されている。
【0035】
更に、この実施の形態では、図3A図3Cに示す様に、車体開口部7の周縁7aの形状に合わせて、延設される断面形状が、前記ウエザストリップ部材8の延設方向では、異なるように設定されている。
【0036】
そして、これらの前記一次シールリップ部10と、二次シールリップ部11又は中空シール部12とでは、各々断面形状が変化する部分を、前記ウエザストリップ部材8の延設方向で、相違する位置となるように構成されている。
【0037】
次に、この実施の形態の車両用シール構造の作用効果について説明する。
【0038】
この実施の形態の車両用シール構造では、前記車体開口部7の周縁7aに延在されたリテーナ部材9に、前記ウエザストリップ部材8が嵌着される際、図2に示す様に、一次シールリップ部10が、例えば、装飾用に設定されたモール部材13の縁部の車内側(すなわち、周縁7a沿い)に覆われて装着され、リヤピラー部4bの下方への移行に伴って二次シールリップ部11から離間させて、図3A図3Cに示す様に、前記二次シールリップ部11及び中空シール部12を延設することが出来る。
【0039】
このうち、前記一次シールリップ部10は、リップ本体10aの先端が、前記ガラスパネル部材6の外側面6bに弾接されて、水密状態とすると共に遮音性を向上させることが出来る。
【0040】
また、前記リテーナ部材9の車内側面部9bに装着されて、前記ガラスパネル部材6の内側面6cに弾接される二次シールリップ部11のリップ本体11bの先端が、延在方向のうち、前記湾曲部4aから、リヤピラー部4bの下方へ向かう少なくとも一部で、前記一次シールリップ部10から、離反された状態で装着されている。
【0041】
このため、車体開口部7の周縁7aの湾曲した形状等、意匠に関わらず、前記ガラスパネル部材6の内側面6cに、リップ本体11bの先端が弾接されて、図3A図3Cに示すように、前記一次シールリップ部10と、外側面6bとの間から、水滴h1,h2が漏出しても、車内側に浸入させることなく、この水滴h3,h4を二次シールリップ部11に沿わせて、流下させて、図2中に示す様に、車体後部2の下方に、ドレイン排水Hすることが出来、水密性を向上させることが出来る。
【0042】
しかも、この実施の形態では、図4及び図5に示す様に、前記リテーナ部材9の底面部9cに対向する位置で、凹状溝の内側に設けられた中空シール部12が、前記一対の係止爪部9d,9dによって、この底面部9cから、所定間隔d1離間されている。
【0043】
このため、内部に形成された中空部12aによって嵩上げされる頭頂部の稜線12cまでの高さ方向寸法d2と共に、前記ガラスパネル部材6の端縁部6aが、この中空シール部12の当接面12bに弾接されて、シール性が保たれている状態で、弾性変形可能な弾接方向へのストローク寸法を、前記底面部9cから嵩上げして設定可能である。
【0044】
従って、更に、シール可能な余裕代を大きく設定出来、車体開口部7の周縁7aに、取り付けられる位置や建付精度に関わらず、良好なシール性能を得ることが出来る。
【0045】
また、この実施の形態では、 図3A図3Cに示す様に、車体開口部7の周縁7aの形状に合わせて、延設される断面形状が、前記ウエザストリップ部材8の延設方向では、異なるように設定されている。
【0046】
そして、これらの前記一次シールリップ部10と、二次シールリップ部11又は中空シール部12とでは、各々断面形状が変化する部分が、前記ウエザストリップ部材8の延設方向で、相違する。
【0047】
このため、断面形状が大きく変化するこれら図3A図3B図3Cにおいては、一次シールリップ部10と、二次シールリップ部11又は中空シール部12は、各々が延在方向に連続する部材ではなく、図3A相当部材、図3B相当部材、図3C相当部材の3つの異なる部材で構成されており、各部材の端面同士を突き合わせることで一連のシール構造を形成している。
【0048】
この突き合せ部には継ぎ目が発生するため、車外からの水の浸入路となるが、例えば、図3B相当部材の図3A相当部材に向けた端部を示す図6のように、各部材の突き合せ部において、一次シールリップ部10と、二次シールリップ部11又は中空シール部12の端部は延在方向においてズレて設けられており、同様にこれに突き合わせられる、もう一方の端部も前記突き合せの端部に呼応するように各々のシール部の端部が、ズレて設けられているため、一次シールリップ部10と、二次シールリップ部11又は中空シール部12に発生する継ぎ目が凹凸形状として存在しても、水が浸入し難く水密性に優れている。
【0049】
以上のとおり断面形状が大きく変化する部分が、段差を有して接合されていても、シール性を損なう虞が少ない。
【0050】
更に、この実施の形態では、前記一次シールリップ部10、中空シール部12及び二次シールリップ部11との間が、前記リテーナ部材9の長手方向に沿った方向で、異なる箇所で分割されているが、これに限らず、前記一次シールリップ部10と前記中空シール部12の各々の端部が前記リテーナ部材9の長手方向に沿った方向で異なり、更に前記中空シール部12と前記二次シールリップ部11の各々の端部においても前記リテーナ部材9の長手方向に沿った方向で異なっていると更に水を浸入させ難いため好ましい。
【0051】
このため、前記ウエザストリップ部材8の長手方向では、前記一次シールリップ部10、中空シール部12及び二次シールリップ部11の少なくとも何れか一つが存在して、シール性が必要とされる周縁7aと、端縁部6aとの間で、前記ウエザストリップ部材8が存在しない箇所が、無くなり、何れの箇所でも良好なシール性が保たれる。
【0052】
また、前記ウエザストリップ部材8の中空シール部12は、内部に中空部12aを有して、容易に弾性変形可能である。
【0053】
このため、前記リテーナ部材9への取付時に、従来デッドスペースであった断面略コ字状を呈する底面部9c近傍に、このリテーナ部材9の内側面から内向きに突設された一対の係止爪部9d,9dによって、両側から挟持されて係止される。
【0054】
従って、良好なスペース効率を達成しながら、前記本体開口部7の周縁7aの例えば、前記湾曲部4aのコーナカーブ形状に容易に追従させながら、確実に装着させることが出来、組み付け作業性も良好である。
【0055】
そして、この実施の形態では、図4に示す様に、前記ウエザストリップ部材8の中空シール部12は、底面部9cから、所定間隔d1離間されて、この底面部9cから嵩上げされている。
【0056】
また、内部に形成された中空部12aによって嵩上げされた当接面12bの頭頂部の稜線12cまでの高さ方向寸法d2が加えられた寸法(d1+d2)で、略底面部9cに底付きするまで、シール性が保たれている状態を保持出来る。
【0057】
この間、前記ガラスパネル部材6の端縁部6aが、この中空シール部12の当接面12bに弾接されているので、車体後部2の設計及び造形の自由度を向上させて、ガラスパネル部材6の昇降軌跡の自由度を増大させることが出来る。
【0058】
更に、この実施の形態では、前記当接面12bの頭頂部に位置する稜線12cによって、車内側に向かって嵩上げ量が増大するように構成されているので、図4中、実線で示すように、車内側へガラスパネル部材6の端縁部6aが、移動しても、中空シール部12のラップ代を増加させることが出来る。
【0059】
この為、端縁部6aの車室内側への位置ヅレが生じて、前記一次シールリップ部10によるシール性が低下する前に、前記中空シール部12のシール性を向上させて、全体のシール性を維持出来る。
【0060】
しかも、この際、第二シールリップ部11に、ガラスパネル部材6の内側面6cが弾接して、車外側へ押し戻されるので、更に、シール性を損なう虞が減少する。
【0061】
この為、昇降装置を含むガラスパネル部材6の建付許容代及びルーフ部材4の寸法精度の許容代を増大させることができる。
【0062】
そして、この実施の形態では、リテーナ部材9の底面部9cに対向する位置には、前記二次シールリップ部11と一体に形成される中空シール部12が、二次シールリップ部11側の共有隔壁部12dを、一部として偏在されて設けられている。
【0063】
このため、前記一次シールリップ部10の弾性変形による軌跡に、中空シール部12が、干渉しにくく、前記一次シールリップ部10及び中空シール部12によるシール性を、車両上下方向(Z方向)の断面形状を増大させることなく、良好なシール性を確保出来る。
【0064】
また、この実施の形態では、二次シールリップ部11の中空部11aを一部形成する共有隔壁部12dが、共通の隔壁として、リテーナ部材9の底面部9cの前記中空シール部12の中空部12aを一部形成する為に用いられている。
【0065】
すなわち、この実施の形態の車両用シール構造では、図4及び図5に示す様に、この共有隔壁部12dの中間部より、先端寄り(底面部9c寄り)位置で、前記中空部12aの周壁面の基端部12eが、略直交する方向から接続されている。
【0066】
このため、図4中二点鎖線で示す位置に比して、ガラスパネル部材6の端縁部6aが、前記中空部12aの当接面12bの稜線12cから、実線で示すように車内側にズレて当接しても、前記一次リップシール部10のリップ本体10aが、車室内方向へ追従する為、弾接が維持されると共に、前記基端部12eを回転中心として、図中反時計回りの押圧力F1が加わり、二次シールリップ部11のリップ本体11b先端が、ガラスパネル部材6の内側面6c方向F2へ押し出される。
【0067】
従って、二次シールリップ部11のリップ本体11bの先端が、ガラスパネル部材6の内側面6cに弾接されて、車外方向に押し戻し、前記一次リップシール部10の先端に、前記ガラスパネル部材6の外側面6bを近接させて、当接させる。
【0068】
このため、更に、シール性を向上させることができる。
【0069】
また、図5中二点鎖線で示す位置に比して、ガラスパネル部材6の端縁部6aが、前記中空部12aの当接面12bの稜線12cから、実線で示すように車外側にズレた位置で当接しても、この共有隔壁部12dが、前記中空部12aの周壁面の基端部12eによって、下方傾倒方向F3へ押圧されて、二次シールリップ部11のリップ本体11bの先端が車外方向F4へ押し出される。
【0070】
このため、リップ本体11bの先端が、車体側にズレた位置で当接しているガラスパネル部材6の内側面6c方向へ向けて追従して、弾接し、更に、シール性を向上させることができる。
【0071】
また、図2中A−A断面とB−B断面は図3A図3Bと同じとし、図2中C−C断面を図3Cに替えて図3Dのようにしても良い。
【0072】
つまり図2中C−C断面において、リテーナ部材9の底面部に、これに対峙する中空部12aが形成されておらず、シールリップ11の付け根からリテーナ部材9の車内側面部から底面部9cに沿って、肉厚一定の壁部が形成されている。
これによれば、図2中A−A断面と図2中B−B断面では、上記したとおりの良好なシール性を保つことができ、図2中C−C断面では、底面部9cに沿って、厚み方向の寸法が抑えられて、添着されている為、前記ガラスパネル部材6の端縁部6aの自由度を、中空部12aが形成されているものよりも、更に向上させることが出来る。
従って、特に、ガラスパネル部材6の昇降軌跡において、ガラスパネル部材6の端縁部6aが、図2中C−C断面付近で、ガラスパネル部材6の延長方向に大きな空間を必要とする場合、開閉移動に伴う干渉を減少させて、非常に有効である。
また、中空シール部12aを無くしてリテーナ部材9の底面部9cに沿った肉厚一定の壁部を設けるだけでなく、リテーナ部材9の車外側面部及び車内側面部を図2中A−A断面又は図2中B−B断面における構成と比較して長くすると、さらにガラスパネル部材6の延長方向に大きな空間を設けることが可能である。
ここで、C−C断面におけるシール性は、ガラスパネル部材6の端縁部6aに当接するシール部位を省略し、ガラスパネル部材6の車内外側側面のみへの一次シールリップ部と二次シールリップ部の構成となっているが、この部位においては、ウエザストリップの延在方向が車両の上下方向(Z方向)に近いため、シールリップ部に達した水はウエザストリップの延在方向に流れて車外へ排出されるため、室内へは侵入し難い。また、各断面を換言しておくと、A−A断面はルーフ部材4の略平板状の天井部4cであり、B−B断面は前記天井部4cの後端近傍から、円弧状を呈して、下方に向けて屈曲された湾曲部4aであり、C−C断面はリヤピラー部4bに相当する。
【0073】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の車両用シール構造に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0074】
即ち、前記実施の形態の車両用シール構造では、前記ウエザストリップ部材8の一次シールリップ部10と、二次シールリップ部11又は中空シール部12とでは、各々断面形状が変化する部分が、前記ウエザストリップ部材8の延設方向で、相違する位置に形成されているが、特にこれに限らず、段差を有すること無く、一連で円滑に一体形成されていても良く、ウエザストリップ部材8の断面形状で、中空シール部12が設けられている物であれば、断面形状の変化する部分が、複数の段差を、如何なる位置に有して接合されていても良く、形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
前記実施の形態では、この発明の車両用シール構造として、車両1の車体開口部の車両用シール構造に適用したものを用いて説明してきたが、例えば、車体の前,後部或いは、コーナ部や中央部等、どのような自動車の車体開口部又は、ドア開口部に用いられる車両用シール構造であっても良く、また、車両1の駆動源も内燃機関によるものに限定されること無く、電気自動車或いは、ハイブリッドカー等であってもよいことは当然である。
【符号の説明】
【0076】
6 ガラスパネル部材
6a 端縁部
6b 外側面
6c 内側面
7 車体開口部
7a 周縁
8 ウエザストリップ部材
9 リテーナ部材
9a 車外側面部
9b 車内側面部
9c 底面部
10 一次シールリップ部
11 二次シールリップ部
12 中空シール部
12a 中空部
12b 当接面
12c 稜線(頭頂部)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6