(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
図1、
図2及び
図6に示されるように、本発明の一実施形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12と、スプール14と、ウェビング16と、回転部材としてのロックギヤ18と、フォースリミッタ機構26を構成する第1荷重付与部材としてのメイントーションシャフト20、トリガ部材としてのトリガワイヤ22、第2荷重付与部材としてのサブトーションシャフト24、及びクラッチ機構56と、切替手段としての切替機構200と、を備えている。
【0022】
図1に示されるように、フレーム12は、車体に固定される板状の背板28を備えている。背板28の幅方向両端部からは脚片30、32が略直角に延出されており、フレーム12は、平面視で略凹形状となっている。なお、脚片32の外側には、制限手段としての周知のロック機構(図示省略)が取付けられている。
【0023】
スプール14は、軸方向に貫通する貫通孔15を有する円筒状に形成されており、フレーム12の脚片30と脚片32との間に配置されている。スプール14は、軸線方向が脚片30と脚片32の対向方向に沿う状態で配置されており、後述するメイントーションシャフト20、サブトーションシャフト24等を介してフレーム12に回転可能に支持されている。
【0024】
ウェビング16は、乗員の身体に装着されるものであり、その長手方向一端部である基端部がスプール14に係止されている。スプール14は、一方の回転方向である巻取方向(
図1等の矢印Aの方向)へ回転することでウェビング16を基端側から巻取って収納する構成となっている。
【0025】
ロックギヤ18は、スプール14の軸方向一方側にスプール14と同軸状に配置されている。このロックギヤ18の外周部にはギヤ部34が形成されている。また、このロックギヤ18の軸心部には、軸方向に貫通する貫通孔36が形成されており、当該貫通孔36の内周部には、スプライン状の被係合部38が形成されている。
【0026】
車両の緊急時(急減速時等の所定の機会)には、上記ロック機構が、車両の加速度(特に減速加速度)が所定加速度以上であること又はウェビング16のスプール14からの引出加速度が特定加速度以上であることを検出して、作動することで、ロック機構のロック部材(図示省略)がロックギヤ18のギヤ部34と係合して、ロックギヤ18の引出方向(
図1等の矢印Bの方向)への回転が規制(ロック)される。
【0027】
メイントーションシャフト20は、スプール14及びロックギヤ18と同軸状に配置されており、スプール14の貫通孔15及びロックギヤ18の貫通孔36にそれぞれ挿入されている。このメイントーションシャフト20には、その長手方向中央部にスプライン状の第一係合部40が形成されると共に、その先端部に同じくスプライン状の第二係合部42が形成されている。
【0028】
そして、第一係合部40がロックギヤ18の被係合部38と係合されることにより、メイントーションシャフト20は、ロックギヤ18に一体回転可能に固定されている。また、第二係合部42がスプール14の内周部における軸線方向中間部に形成された図示しない被係合部と係合されることにより、メイントーションシャフト20がスプール14に一体回転可能に固定(連絡)されている。
【0029】
このメイントーションシャフト20における第一係合部40と第二係合部42との間の部分は、後述する如くウェビング16の引張りに供される乗員の運動エネルギを吸収するための第一エネルギ吸収部44として構成されている。
【0030】
トリガワイヤ22の基端部22Aは、
図1に示されるように、ロックギヤ18における貫通孔36よりも径方向外側の位置に形成された孔部46に挿入されて、ロックギヤ18に係止されている。一方、トリガワイヤ22における基端部22Aよりも先端側は、貫通孔15と並行してスプール14に形成された孔部48に挿入されており、その先端部22Bは、スプール14から軸方向他方側に突出されている。
【0031】
サブトーションシャフト24は、メイントーションシャフト20と同軸状に配置されており、その長手方向中央部よりも基端側は、スプール14の貫通孔15に挿入されている。一方、このサブトーションシャフト24の長手方向中央部よりも先端側は、スプール14から軸方向他方側に突出されている。
【0032】
このサブトーションシャフト24には、その基端部に少なくとも一部がスプライン状の第一係合部50が形成されると共に、その先端部に同じくスプライン状の第二係合部52が形成されている。第一係合部50は、スプール14の内周部における軸線方向中間部に形成された図示しない被係合部と係合されており、これにより、サブトーションシャフト24は、スプール14に一体回転可能に固定(連絡)されている。
【0033】
また、このサブトーションシャフト24における第一係合部50と第二係合部52との間の部分は、後述する如くウェビング16の引張りに供される乗員の運動エネルギを吸収するための第二エネルギ吸収部54として構成されている。
【0034】
図1及び
図2に示されるように、クラッチ機構56は、規制部材としてのスリーブ58と、クラッチガイド60と、クラッチベース62と、クラッチカバー64と、結合部材としての一対のクラッチプレート66と、スクリュー68と、一対のコイルスプリング70とを備えている。なお、
図4には、このクラッチ機構56の作動途中の状態が示されており、
図5には、このクラッチ機構56の作動が完了した状態が示されている。
【0035】
スリーブ58は、サブトーションシャフト24と同軸状に配置されている。このスリーブ58の軸心部には、軸方向に貫通する貫通孔72が形成されており、この貫通孔72には、上述のサブトーションシャフト24が遊挿されている。また、このスリーブ58の内周部における先端側には、スプライン状の被係合部74が形成されており、この被係合部74にサブトーションシャフト24の第二係合部52が係合されることにより、スリーブ58は、サブトーションシャフト24に一体回転可能に固定されている。
【0036】
また、このスリーブ58における基端側は、円形状の外形を有する支持部76として構成されており、このスリーブ58における支持部76よりも先端側は、六角形状の外形を有する嵌合部78として構成されている。
【0037】
クラッチガイド60は、樹脂製とされており、軸方向に貫通する貫通孔80を有する環状に形成されている。この貫通孔80には、上述の支持部76が挿入されており、これにより、クラッチガイド60は、スリーブ58に相対回転可能に支持されている。
【0038】
このクラッチガイド60における周方向の二箇所の位置には、
図3に示されるように、コイルスプリング70を収容する一対のコイルスプリング収容部82が形成されている。これらのコイルスプリング収容部82は、クラッチガイド60の中央部を中心とする点対称状に形成されており、それぞれ、クラッチガイド60の周方向に延びる外側壁部83及び内側壁部84と、クラッチガイド60の径方向に延びて外側壁部83と内側壁部84の各端部を連結する連結壁部86とを有する略コの字状に形成されている。
【0039】
また、このクラッチガイド60には、クラッチプレート66を収容する一対のクラッチプレート収容部88が各コイルスプリング収容部82に隣接して形成されている。これらのクラッチプレート収容部88には、連結壁部86から内側壁部84と反対側に向けて延びる第一支持壁部90と、連結壁部86に対する外側壁部83とは反対側に連結壁部86と離間して第二支持壁部92が形成されている。
【0040】
クラッチベース62は、六角形状を成す環状の被嵌合部94を有して構成されている。この被嵌合部94の内側には、スリーブ58の嵌合部78が嵌合(圧入)されており、これにより、クラッチベース62は、スリーブ58に一体回転可能に固定されている。なお、他の実施形態では、スリーブ58とクラッチベース62を一体に形成してもよい。また、このクラッチベース62には、被嵌合部94から外側に突出する一対の係止部96が形成されている。これらの係止部96は、後述するクラッチプレート66に形成されたアーム部106の基端部と係止されている。
【0041】
クラッチカバー64は、スリーブ58と同軸状に配置されると共に、クラッチガイド60に対するスプール14とは反対側にクラッチガイド60と対向して配置されている。このクラッチカバー64は、軸方向に貫通する貫通孔98を有する環状に形成されており、その内周部には、径方向内側に突出する嵌合爪100が複数形成されている。そして、貫通孔98にスリーブ58の嵌合部78が挿入されると共に、複数の嵌合爪100が嵌合部78と嵌合されることにより、クラッチカバー64は、スリーブ58、ひいては、サブトーションシャフト24に一体回転可能に固定されている。また、このクラッチカバー64は、後述する十字爪104がクラッチガイド60に対して周方向に係合するようになっており、クラッチガイド60は、このクラッチカバー64に対して、
図5に示される作動位置と、
図3に示される非作動位置との間で相対回転可能とされている。
【0042】
また、このクラッチカバー64における周方向の二箇所の位置には、径方向外側に開口する軸方向視にて凹形状を成す切欠部102がそれぞれ形成されている。また、このクラッチカバー64には、各切欠部102の内側に位置されるように一対の十字爪104が形成されている。これら一対の十字爪104は、クラッチカバー64の中央部を中心とする点対称状に形成されている。また、これらの十字爪104は、クラッチカバー64の径方向から見てクランク状に屈曲しており、先端側が基端側よりもクラッチガイド60側へ突出している。
【0043】
各十字爪104の先端側には、クラッチガイド60の径方向内側へ突出した内側突出部と、クラッチガイド60の径方向外側へ突出した外側突出部と、クラッチガイド60の周方向一方(巻取方向)へ突出した周方向突出部とが設けられており、各十字爪104の先端側は、クラッチガイド60の軸方向から見て十字状に形成されている。
【0044】
クラッチプレート66は、クラッチカバー64とクラッチガイド60との間に配置されている。このクラッチプレート66は、アーム部106と、このアーム部106の先端部に形成された円弧部108とを有している。アーム部106の基端部には、クラッチカバー64側に突出すると共にサブトーションシャフト24の軸方向に沿って延びる回動軸110が形成されている。そして、この回動軸110がクラッチカバー64に形成された孔部112に挿入されることにより、クラッチプレート66は、クラッチカバー64に回動可能に支持されている。また、円弧部108の外周部(クラッチプレート66の先端部)には、平歯状のローレット歯66Aが形成されている。
【0045】
スクリュー68は、ネジ部114と、このネジ部114よりも大径の押え部116とを有して構成されている。ネジ部114は、サブトーションシャフト24の先端部に形成されたネジ孔118に螺合されており、これにより、スクリュー68は、サブトーションシャフト24の先端部に固定されている。また、このように、スクリュー68がサブトーションシャフト24の先端部に固定された状態では、スリーブ58の先端部に押え部116が当接される。そして、これにより、スリーブ58のサブトーションシャフト24に対する抜き方向への移動が規制されている。なお、この状態では、クラッチガイド60は、クラッチカバー64とスプール14とによって軸方向の移動を制限されている。
【0046】
また、上述のクラッチガイド60及びクラッチカバー64には、孔部120、122がそれぞれ形成されている。これらの孔部120、122は、クラッチガイド60がクラッチカバー64に対して非作動位置に配置された状態で互いに対向するように形成されており、これらの孔部120、122には、トリガワイヤ22の先端部22Bがそれぞれ挿入されている。これにより、クラッチガイド60は、非作動位置に配置された状態でスプール14及びクラッチカバー64に対する相対回転を規制されている(クラッチガイド60が非作動位置に拘束されている)。
【0047】
またさらに、上述の如くクラッチガイド60が非作動位置に拘束された状態では、クラッチガイド60の各コイルスプリング収容部82における開口部付近に、クラッチカバー64の各十字爪104が位置される。そして、各十字爪104の周方向突出部は、各コイルスプリング収容部82に収容されたコイルスプリング70の軸方向一端部から当該コイルスプリング70の内側に挿入されており、各十字爪104の内側突出部及び外側突出部は、コイルスプリング70の軸方向一端部に当接している。これにより、コイルスプリング70の軸方向一端部が各十字爪104に係止されている。また、このコイルスプリング70の軸方向他端部は、コイルスプリング収容部82の連結壁部86(
図3参照)に係止されている。
【0048】
また、この状態では、十字爪104と連結壁部86との間隔がコイルスプリング70の自由状態での全長よりも短くなり、これにより、コイルスプリング70が圧縮状態とされる。そして、これにより、クラッチガイド60に対しては巻取方向の付勢力が付与されており、クラッチガイド60は作動位置へと付勢されている。
【0049】
一方、この状態では、クラッチカバー64の孔部112(クラッチプレート66の回動軸110)と連結壁部86との間隔が十分に確保された状態となり、クラッチプレート66は、ローレット歯66Aがクラッチガイド60の外周部よりも内側に納まるように、クラッチプレート収容部88に収容される。また、この状態では、円弧部108の先端に連結壁部86が当接されている。
【0050】
図6〜
図8に示されるように、切替機構200は、箱状のボデー202を備えており、ボデー202は、フレーム12の脚片30外側に固定されている。ボデー202の上部には、略直方体形箱状のケース204が形成されており、ケース204は、脚片30とは反対側に突出されると共に、下部内に長尺円柱状の支持軸206が一体に形成されている。
【0051】
ボデー202内は、脚片30側へ開放されており、ボデー202の脚片30側は、板状のシート207によって閉鎖されている。シート207には、クラッチ機構56が貫通されており、ボデー202の内部には、クラッチ機構56が挿入されている。
【0052】
ボデー202の内部は、配置部材としての円環板状のロックリング208が回転自在に支持されており、ロックリング208は、クラッチ機構56の外周側において、クラッチ機構56と同軸上に配置されている。また、ロックリング208の内周部には、平歯状のローレット歯208Aが形成されている。
【0053】
ロックリング208の上部には、ロック部としての断面三角形状のロック孔210が貫通形成されており、ロック孔210は、ロックリング208の外周外側へ開放されている。ロック孔210の巻取方向側の面は、ロック面210Aにされて、ロックリング208の周方向に対し垂直に配置されており、ロック孔210の引出方向側の面は、載置面210Bにされて、ロックリング208の回転接線方向に対し傾斜されている。
【0054】
ボデー202の内部には、ロックリング208の上側において、切替部材としての略矩形板状のパウル212が基端部において回動自在に支持されており、パウル212は金属製にされている。パウル212は、回動されて、第1位置又は第2位置としてのロック位置(
図9参照)と第2位置又は第1位置としての解除位置(
図10参照)とに配置可能にされている。パウル212の先端部には、長尺の回動孔214が貫通形成されており、回動孔214の長手方向は、パウル212の回動径方向に平行にされている。また、パウル212の先端面は、当接面212Aにされて、パウル212の回動径方向に略垂直に配置されている。
【0055】
ボデー202の内部には、ロックリング208の上側において、連絡部材としての樹脂製のリンクレバー216が配置されている。リンクレバー216には、円筒状の支持筒218が形成されており、支持筒218がケース204内の支持軸206に回転自在に支持されることで、リンクレバー216がボデー202に回転自在に支持されている。
【0056】
リンクレバー216の上部には、板状の連絡板220が形成されており、連絡板220は、支持筒218と一体にされている。連絡板220には、長尺の連絡孔222が貫通形成されており、連絡孔222は、上側に開放されている。
【0057】
リンクレバー216の下部には、L字形板状の回動板224が形成されており、回動板224は、連絡板220に比し薄肉にされている。回動板224の基端は、支持筒218と一体にされており、回動板224の基端側部分(上側部分)は、リンクレバー216の回転径方向に延伸されると共に、回動板224の先端側部分(下側部分)は、リンクレバー216の回転接線方向に延伸されている。回動板224には、長手方向中間部において、L字形棒状のリブ224Aが形成されており、リブ224Aは、回動板224を補強している。
【0058】
回動板224の先端部(リンクレバー216の下端部)は、パウル212のボデー202側に配置されている。回動板224の先端には、円柱状の連絡軸226が突出形成されており、連絡軸226は、パウル212の回動孔214に挿入されている。これにより、リンクレバー216が回転されて、回動板224が回動されることで、パウル212が回動される。また、回動板224の先端部は、回動板224にリブ224Aの下側において重合されている。
【0059】
リンクレバー216の支持筒218には、配置手段としてのリターンスプリング228(捩りコイルスプリング)が保持されており、リターンスプリング228は、一端がリンクレバー216の連絡板220に係止されると共に、他端がボデー202に係止されている。リターンスプリング228は、リンクレバー216を回動板224がロックリング208側へ回動する方向(以下「ロック方向」といい、反対方向を「解除方向」という)へ付勢して、パウル212をロックリング208側へ回動させる方向(以下「ロック方向」といい、反対方向を「解除方向」という)へ付勢している。これにより、パウル212が、ロックリング208の外周面にロック孔210の引出方向側端において当接されて、ロック位置と解除位置との間に配置されている。
【0060】
ボデー202のケース204内には、作動手段としてのソレノイド230が固定されており、ソレノイド230内には、作動部材としての金属製柱状のプランジャ232が設けられている。プランジャ232の先端部は、ソレノイド230から突出されており、プランジャ232の先端近傍は、径が他の部位に比し小さくされて、小径部232Aが形成されている。プランジャ232は、小径部232Aにおいて、リンクレバー216の連絡板220の連絡孔222に貫通されており、これにより、連絡板220がプランジャ232の先端から離間された状態で、プランジャ232がリンクレバー216に連絡されている。ソレノイド230は、制御手段としての車両の制御装置(図示省略)に電気的に接続されており、制御装置の制御によりソレノイド230が作動された際には、プランジャ232がソレノイド230内に吸引(移動)されることで、プランジャ232の先端によってリンクレバー216の連絡板220が押圧されて、リンクレバー216が解除方向へ回転される。また、ソレノイド230が作動された際には、ソレノイド230からのプランジャ232の突出距離が小さい程、プランジャ232のソレノイド230内への吸引力(移動力)が大きくなる(
図11参照)。
【0061】
制御装置は、衝突予知手段と体格検出手段とに電気的に接続されている。衝突予知手段は、例えば、車両の加速度(特に急減速)を検知する加速度センサや車両前方の障害物までの距離を検出する測距センサ等によって、車両の衝突を予知する。また、体格検出手段は、例えば、車両の座席に作用する荷重を検出する荷重センサや
図1に示されるスプール14からのウェビング16の引出量を検出するベルトセンサ等によって、座席に着座した乗員の体格を検出する。
【0062】
ここで、本実施形態に係るウェビング巻取装置10では、次の如く動作する構成とされている。
【0063】
すなわち、スプール14、ロックギヤ18、メイントーションシャフト20、サブトーションシャフト24、及びクラッチ機構56(スリーブ58、クラッチベース62、クラッチプレート66及びスクリュー68を含む)は、一体に巻取方向及び引出方向へ回転可能にされている。
【0064】
ウェビング16がスプール14から引出されることで、ウェビング16が車両の乗員の身体に装着される。
【0065】
ウェビング16が車両の乗員の身体に装着された状態で、例えば、車両が急減速状態になり、ロック機構が作動すると、ロックギヤ18の引出方向への回転が規制される。
【0066】
そして、これにより、このロックギヤ18にメイントーションシャフト20を介して連結されたスプール14の引出方向への回転が制限されて、スプール14からのウェビング16の引出しが制限される。従って、これにより、車両前方へ移動しようとする乗員の身体がウェビング16によって拘束される。
【0067】
また、ロックギヤ18の引出方向への回転が規制された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウェビング16を引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール14の回転力がメイントーションシャフト20の第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重(耐変形荷重)を上回ると、フォースリミッタ機構26が作動されて、第一エネルギ吸収部44の捩れ(変形)により、スプール14のフォースリミッタ荷重(第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重)以上での引出方向への回転が許容される。
【0068】
従って、第一エネルギ吸収部44の捩れによりスプール14が引出方向へ回転されてスプール14からウェビング16が引出されることで、ウェビング16による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、第一エネルギ吸収部44の捩れ分だけウェビング16の引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
【0069】
一方、上述のように、ロックギヤ18に対してスプール14が引出方向に回転されるということは、相対的にはスプール14に対してロックギヤ18が巻取方向に回転されると言うことである。従って、ロックギヤ18がスプール14に対して巻取方向に相対回転されると、トリガワイヤ22における基端部22Aよりも先端側がスプール14の孔部48に挿入されたまま、このトリガワイヤ22の基端部22Aがメイントーションシャフト20の周方向に移動されるので、このトリガワイヤ22における基端部22Aよりも先端側が孔部48に対してロックギヤ18側に引張られる。
【0070】
これにより、トリガワイヤ22の先端部22Bがクラッチガイド60の孔部120とクラッチカバー64の孔部122から引抜かれて、スプール14及びクラッチカバー64に対するクラッチガイド60の相対回転規制が解消される。
【0071】
そして、コイルスプリング70の付勢力により、クラッチガイド60が非作動位置から作動位置へと回転されると、クラッチカバー64の孔部112(クラッチプレート66の回動軸110)とクラッチガイド60の連結壁部86との間隔が短くなり、クラッチプレート66の円弧部108の先端が連結壁部86によってクラッチガイド60の接線方向に押圧(案内)される。これにより、クラッチプレート66がロックリング208側へ回動され(
図4の矢印R参照)、クラッチプレート66のローレット歯66Aがロックリング208のローレット歯208Aと噛合う(
図5図示状態)。これにより、クラッチプレート66とロックリング208とが結合される。また、このときには、クラッチベース62に形成された係止部96がクラッチプレート66のアーム部106の基端部を引出方向へ押すことにより、クラッチプレート66がロックリング208に押し付けられ、両者の結合状態が維持される。これにより、クラッチ機構56(スリーブ58、クラッチベース62及びクラッチプレート66)の引出方向への回転と一体に、ロックリング208が引出方向へ回転される。
【0072】
制御装置が、体格検出手段からの信号に基づき、乗員の体格が予め定められた基準値以上であると判定した場合には、ロック機構の作動前(衝突予知手段が車両の衝突を予知した際又は体格検出手段が乗員の座席への着座を検出した際)に、ソレノイド230が作動されない。このため、上述の如くロックリング208が引出方向へ回転されることで、リターンスプリング228の付勢力によって、リンクレバー216がロック方向へ回転されて(リンクレバー216の連絡板220がプランジャ232の小径部232Aをプランジャ232先端側へ移動されて)、パウル212がロック方向へ回動される。これにより、パウル212が、ロックリング208のロック孔210に挿入されて、ロック位置に配置されることで、パウル212が、ロック孔210の載置面210Bに載置された(面接触された)状態で、当接面212Aにおいてロック孔210のロック面210Aに当接される(
図9参照)。
【0073】
これにより、ロックリング208の引出方向への回転がロック(規制)されることで、クラッチ機構56(スリーブ58、クラッチベース62及びクラッチプレート66)の引出方向への回転が規制される。
【0074】
そして、スリーブ58の引出方向への回転が規制された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウェビング16を引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール14の回転力がメイントーションシャフト20の第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重(耐変形荷重)とサブトーションシャフト24の第二エネルギ吸収部54の耐捩れ荷重(耐変形荷重)との合計を上回ると、第一エネルギ吸収部44及び第二エネルギ吸収部54の捩れ(変形)により、スプール14のフォースリミッタ荷重(第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重と第二エネルギ吸収部54の耐捩れ荷重との合計)以上での引出方向への回転が許容される。
【0075】
従って、第一エネルギ吸収部44及び第二エネルギ吸収部54の捩れによりスプール14が引出方向へ回転されてスプール14からウェビング16が引出されることで、ウェビング16による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、第一エネルギ吸収部44及び第二エネルギ吸収部54の捩れ分だけウェビング16の引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
【0076】
一方、制御装置が、体格検出手段からの信号に基づき、乗員の体格が予め定められた基準値未満であると判定した場合には、ロック機構の作動前(衝突予知手段が車両の衝突を予知した際又は体格検出手段が乗員の座席への着座を検出した際)に、制御装置の制御によりソレノイド230が作動される。このため、プランジャ232がソレノイド230内に吸引されて、プランジャ232によってリンクレバー216が解除方向へ回転されることで、パウル212が解除方向へ回動されて解除位置に配置される(
図10参照)。
【0077】
これにより、パウル212がロックリング208の外周面から上側に離間されて、ロックリング208の引出方向への回転が許容されることで、クラッチ機構56(スリーブ58、クラッチベース62及びクラッチプレート66)及びスプール14と共にロックリング208が引出方向へ回転可能にされる。このため、第二エネルギ吸収部54に捩れは生じないため、第一エネルギ吸収部44の捩れ(変形)により、スプール14のフォースリミッタ荷重(第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重)以上での引出方向への回転が許容される。
【0078】
すなわち、乗員の体格が予め定められた基準値以上である場合には、フォースリミッタ荷重が第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重と第二エネルギ吸収部54の耐捩れ荷重との合計にされて高荷重にされる。一方、乗員の体格が予め定められた基準値未満である場合には、フォースリミッタ荷重が第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重にされて低荷重にされる。このため、乗員を体格に応じて適切に保護できる。
【0079】
ここで、切替機構200では、パウル212が、ロックリング208の外周面に当接されて、ロック位置と解除位置との間に配置されている。このため、ソレノイド230の作動(プランジャ232のソレノイド230内への吸引及びリンクレバー216の解除方向への回転)によって、パウル212をロック位置と解除位置との間から解除位置に回動させればよい。これにより、ソレノイド230の作動によるパウル212の回動角度を小さくでき、ソレノイド230の作動によるリンクレバー216の回転角度ひいてはプランジャ232の移動ストロークを小さくできて、ソレノイド230を小型化、軽量化、低電力化(低供給電流化)、及び低コスト化できる。
【0080】
さらに、リンクレバー216の連絡板220がプランジャ232の先端から離間されている。また、ソレノイド230が作動された際には、ソレノイド230からのプランジャ232の突出距離が小さい程、プランジャ232のソレノイド230内への吸引力が大きくなる。このため、ソレノイド230が作動された際には、プランジャ232がソレノイド230内への吸引力を大きくされた状態で先端を連絡板220に当接させてリンクレバー216の回転を開始させることができる。これにより、ソレノイド230を一層小型化、軽量化、低電力化(低供給電流化)、及び低コスト化できる。
【0081】
また、ロックリング208がパウル212をロック位置と解除位置との間に配置させており、ソレノイド230が作動されない際には、ロックリング208が引出方向へ回転されることで、パウル212がロックリング208のロック孔210に挿入されてロック位置に配置される。このため、簡単な構成で、パウル212をロック位置と解除位置との間に配置できると共に、ソレノイド230が作動されない際にパウル212をロック位置に配置できる。
【0082】
さらに、ソレノイド230が作動されない際に、リターンスプリング228の付勢力によってパウル212がロック位置に配置される。このため、パウル212をロック位置に確実に配置できる。
【0083】
また、金属製のパウル212がソレノイド230の金属製のプランジャ232に樹脂製のリンクレバー216を介して連絡されている。このため、パウル212をプランジャ232に直接連絡するために大型のものにする場合と異なり、ロックリング208の引出方向への回転をロックするための強度を有する範囲でパウル212を小型化できる。これにより、パウル212を軽量化できて、ソレノイド230の駆動対象(パウル212及びリンクレバー216)を軽量化でき、ソレノイド230を一層小型化、軽量化、低電力化(低供給電流化)、及び低コスト化できる。
【0084】
しかも、パウル212がソレノイド230のプランジャ232にリンクレバー216を介して連絡されているため、リンクレバー216の大きさ等を調整することで、ソレノイド230によるパウル212の駆動荷重及び回動ストロークを容易に調整できる。
【0085】
さらに、リンクレバー216の回動板224の先端側部分(下側部分)が、リンクレバー216の回転接線方向に延伸されている。このため、リンクレバー216がパウル212を回動させる際には、回動板224の先端側部分にパウル212から回動板224の長手方向への荷重が作用する(パウル212から回動板224の長手方向に沿わない荷重が作用することが抑制される)ため、リンクレバー216の回転によってパウル212を良好に回動させることができると共に、回動板224の特に薄肉部分(リブ224Aが形成されない部分)の破損を抑制できる。しかも、回動板224の先端部における当該薄肉部分に回動板224が重合されているため、省スペース化を図ることができる。
【0086】
また、パウル212の駆動装置がソレノイド230にされている。このため、ソレノイド230を作動させた後には、ソレノイド230を交換しなくても再度作動させることができる。これにより、衝突予知手段が車両の衝突を予知してソレノイド230が作動された後に車両の衝突が回避された場合に、ソレノイド230を交換しなくても、再度衝突予知手段が車両の衝突を予知した際には、制御装置がソレノイド230を作動させることができる。従って、パウル212の駆動装置を作動後に交換する必要がある場合と異なり、車両の衝突を予知した際にパウル212を駆動してフォースリミッタ荷重を切替えることができる。しかも、パウル212の駆動装置の構成を簡単にできて、低コスト化及び軽量化できる。
【0087】
なお、本実施の形態では、リターンスプリング228の付勢力によって、パウル212をロックリング208の外周面に当接させてロック位置と解除位置との間に配置させると共に、ソレノイド230が作動されない際にパウル212をロックリング208のロック孔210に挿入してロック位置に配置させる。しかしながら、リターンスプリング228を設けずに、パウル212の自重によって、パウル212をロックリング208の外周面に当接させてロック位置と解除位置との間に配置させると共に、ソレノイド230が作動されない際にパウル212をロックリング208のロック孔210に挿入してロック位置に配置させてもよい。
【0088】
また、本実施の形態では、ソレノイド230を作動させない際にパウル212をロック位置に配置すると共に、ソレノイド230を作動させた際にパウル212を解除位置に配置する。しかしながら、ソレノイド230を作動させない際にパウル212を解除位置に配置すると共に、ソレノイド230を作動させた際にパウル212をロック位置に配置してもよい。
【0089】
さらに、本実施の形態では、パウル212をロック位置に配置した際にフォースリミッタ荷重を高荷重にすると共に、パウル212を解除位置に配置した際にフォースリミッタ荷重を低荷重にする。しかしながら、パウル212をロック位置に配置した際にフォースリミッタ荷重を低荷重にすると共に、パウル212を解除位置に配置した際にフォースリミッタ荷重を高荷重にしてもよい。
【0090】
また、本実施の形態では、パウル212をロック位置と解除位置との間に配置した。しかしながら、パウル212をロック位置又は解除位置に配置してもよい。