特許第5676311号(P5676311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676311
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】視野計
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/024 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
   A61B3/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-47352(P2011-47352)
(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公開番号】特開2012-183151(P2012-183151A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】滝本 滋
(72)【発明者】
【氏名】島田 賢
(72)【発明者】
【氏名】大内 将義
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−164424(JP,A)
【文献】 実開昭60−182007(JP,U)
【文献】 実開昭61−182703(JP,U)
【文献】 特開2003−164425(JP,A)
【文献】 特開昭58−29447(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0057013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に、投影部材上の異なる箇所に投影した視標を順次視認させることで、該被検眼の視野を測定する視野測定手段、前記被検眼の視野測定時の固視状態を監視する固視状態監視手段を有し、前記固視状態監視手段は、前記被検眼を固視状態の監視に必要な明るさで照明する照明手段を有し、更に、前記被検眼の視度を補正する視度補正手段を設けた視野計において、
前記視度補正手段を、前記投影部材に対して、前記被検眼の測定位置に対応するセット位置と、前記投影部材の外周辺部に待避した収納位置との間で移動自在に設け、
前記視度補正手段が、セット位置に在るか、収納位置に在るかを検出する位置検出手段を設け、
前記位置検出手段が検出した前記視度補正手段の位置に応じて、前記照明手段による前記被検眼に対する照明の明るさを変更する照明制御部を設けて構成した、
ことを特徴とする視野計。
【請求項2】
前記照明手段は、異なる位置にそれぞれ配置された複数の光源から構成されており、
前記照明制御部は、前記セット位置に前記視度補正手段が位置している場合には、前記収納位置に位置している場合よりも多くの前記光源により前記被検眼を照明するように制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の視野計。
【請求項3】
前記照明手段は、少なくとも二つの光源を有し、
それら光源の内、少なくとも一つは、前記視度補正手段を前記セット位置で使用している場合に、前記被検眼を前記視度補正手段に保持された視度補正用レンズを介して照明することが出来る位置に配され、
少なくとも別の一つの光源は、前記視度補正手段を前記セット位置で使用している場合であっても、前記被検眼を前記視度補正手段に保持された視度補正用レンズを介することなく直接照明することが出来る位置に配されている、
ことを特徴とする請求項1記載の視野計。
【請求項4】
前記照明手段は、少なくとも三つの光源を有し、それら光源の内、少なくとも一つは前記投影部材の中央部下方に、少なくとも二つは、前記投影部材の下方両側に配置した、
ことを特徴とする請求項1又は3に記載の視野計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野を測定する視野計に関わり、特に補助レンズを装着可能なレンズホルダーなどの視度補正手段が設けられた視野計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視野計においては、特許文献1に示すように、被検眼の視度を補正するためのレンズなどの視度補正手段を配置する機構が備えられているものが知られている。
【0003】
また、視野測定は測定時間が長時間となるので、測定中に被検眼の固視状態がずれてしまうことがあり、その状態では正しい測定結果を得ることは出来ない。そのために、被検眼の固視状態が安定しているかどうかを検知する固視状態監視手段が、特許文献2及び3に示すように提案されている。更に、特許文献4には、固視状態の検知結果に基づいて測定値の信頼性を判断して、再検査する時の基準とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−164425
【特許文献2】特公昭62−009330
【特許文献3】特公平6−16748
【特許文献4】特開2010−088541
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
視度補正用のレンズを配置する機構などの視度補正手段と、固視状態を検知し、測定値の信頼性を判断する固視状態監視手段は、同一の視野計に併設されることが望ましいが、単に併設すると、補助レンズ又は当該補助レンズを搭載支持するレンズホルダーが、被検眼のある前眼部と固視状態を観察する固視状態監視手段の間に配置されることとなる。すると、固視状態を検知するために配置された固視監視用の光源から前眼部に照射される光により、前眼部に補助レンズ及び/又はレンズホルダーの影が投影されてしまい、それが固視状態の観察の邪魔になり、正確に固視状態を検知することが出来なくなる不都合が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、視度補正用のレンズを配置する機構と、固視状態を検知し、測定値の信頼性を判断する固視状態監視手段を同一の視野計に配置したとしても、補助レンズ又は当該補助レンズを搭載支持するレンズホルダーに邪魔されることなく、正確に固視状態を検知することが出来る、視野計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述する課題を解決するための最初の観点は、被検眼(19)に、投影部材(15)上の異なる箇所に投影した視標(16)を順次視認させることで、該被検眼(19)の視野を測定する視野測定手段(26,27)、前記被検眼の視野測定時の固視状態を監視する固視状態監視手段(18)を有し、前記固視状態監視手段は、前記被検眼を固視状態の監視に必要な明るさで照明する照明手段(20,21,22)を有し、更に、前記被検眼の視度を補正する視度補正手段(7)を設けた視野計(1)において、
前記視度補正手段(7)を、前記投影部材(15)に対して、前記被検眼の測定位置(CT)に対応するセット位置(P1)と、前記投影部材の外周辺部(15b)に待避した収納位置(P2)との間で移動自在に設け、
前記視度補正手段が、セット位置に在るか、収納位置に在るかを検出する位置検出手段(13)を設け、
前記位置検出手段(13)が検出した前記視度補正手段の位置に応じて、前記照明手段による前記被検眼に対する照明の明るさを変更する照明制御部(29)を設けて構成される。
【0008】
また、上述する課題を解決するための二つ目の観点は、前記照明手段は、異なる位置にそれぞれ配置された複数の光源(20,21,22)から構成されており、
前記照明制御部は、前記セット位置(P1)に前記視度補正手段(7)が位置している場合には、前記収納位置(P2)に位置している場合よりも多くの前記光源(20,21,22)により前記被検眼(19)を照明するように制御する点である。
【0009】
また、上述する課題を解決するための三つ目の観点は、前記照明手段は、少なくとも二つの光源を有し、
それら光源の内、少なくとも一つは、前記視度補正手段を前記セット位置で使用している場合に、前記被検眼を前記視度補正手段に保持された視度補正用レンズを介して照明することが出来る位置に配され、
少なくとも別の一つの光源は、前記視度補正手段を前記セット位置で使用している場合であっても、前記被検眼を前記視度補正手段に保持された視度補正用レンズを介することなく直接照明することが出来る位置に配されている点である。
【0010】
また、上述する課題を解決するための4つ目の観点は、前記照明手段は、少なとも3個の光源(20,21,22)を有し、それら光源の内、少なくとも一つは前記投影部材の中央部下方に、少なくとも2つは、前記投影部材の下方両側に配置した点である。
【発明の効果】
【0011】
上記した最初の観点によれば、照明制御部(29)が、位置検出手段(13)が検出した視度補正手段(7)の位置に応じて、照明手段(20,21,22)による被検眼(19)に対する照明の明るさを変更することができるので、視度補正用のレンズ及び該レンズを配置する機構、即ち視度補正手段(7)と固視状態検知手段を同一の視野計に配置したとしても、視度補正手段に邪魔されることなく、正確に固視状態を検知することが出来る。
【0012】
上記した二つ目の観点によれば、照明制御部は、セット位置(P1)に視度補正手段(7)が位置している場合には、収納位置(P2)に位置している場合よりも多くの前記光源(20,21,22)により被検眼(19)を照明するように制御するので、ある光源に起因して前眼部に投影される視度補正手段の影を、他の光源で打ち消すように照明することが出来、被検眼19を影の少ない均等な状態で照明することが可能となり、固視状態監視装置18による被検眼19の監視をより円滑に行うことが可能となる。
【0013】
上記した三つ目の観点によれば、視度補正手段をセット位置で使用している場合に、少なくとも一つの照明手段により被検眼を視度補正手段に保持された視度補正用レンズを介して照明し、更に、残りの少なくとも一つの照明手段で、視度補正用レンズを介することなく直接、被検眼を照明するので、被検眼に視度補正手段などの影が投影されることを極力防止することが出来る。
【0014】
上記した四つ目の観点によれば、少なくとも3個の光源(20,21,22)を有し、少なくとも一つは投影部材の中央部下方に、少なくとも2つは投影部材の下方両側に配置したので、被検眼19には、方向の異なる少なくとも3方から光線が照射されることとなり、視度補正手段が被検眼19のある前眼部に落とす影を打ち消すように作用し、固視状態監視装置18による被検眼19の固視状態の監視は良好に行われる。また、光源(20,21,22)が、投影部材(15)の下側、従って被検眼(19)の投影部材(15)における視野測定位置(中心CTに対応)の下方に配置されることから、光源(20,21,22)による被検眼(19)に対する照明が、被検眼(19)上部の額部分に邪魔されることなく行うことが出来、好都合である。
【0015】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明が適用される、視野計の一例を示す正面図。
図2図2は、図1の側面図。
図3図3は、図1の視野計に装着されるレンズホルダーの一例を示す正面図。
図4図4は、図3のレンズホルダーのホルダ本体を倒した状態の正面図。
図5図5は、図3のレンズホルダーのセンサ部の拡大図。
図6図6は、図4のレンズホルダーのセンサ部の拡大図。
図7図7は、図1の視野計の視野ドームなどの投影部材を示す正面図。
図8図8は、図7の側面図。
図9図9は、図1の視野計の制御ブロック図。
図10図10は、視野ドームの別の例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0018】
視野計1は、図1及び図2に示すように、全体が箱状に形成された本体2を有しており、本体2の前面2aには、あご載せ3及びひたい当て5が設けられている。本体2の、図1右側には、応答スイッチ6が着脱自在に設けられており、更に、あご載せ3の、図1紙面奥方にはレンズホルダー7が設けられている。レンズホルダー7は、図3に示すように、本体2に装着されるブラケット9を有しており、ブラケット9には、ホルダー本体10が回転軸10aを中心に矢印A,B方向に、図3に示すセット位置P1と収納位置P2との間で往復移動位置決め自在に設けられている。
【0019】
ホルダー本体10には、図1及び図3紙面と直角方向、即ち、後述するレンズホルダー部12に装着される補正レンズの光軸X方向に平行な方向(図8の矢印C,D方向)に移動位置決め自在に設けられた軸部10bを介してステム11が装着されており、ステム11の先端には、レンズホルダー部12が形成されている。また、該レンズホルダー部12の先端には凹部12aが設けられている。凹部12aには被検眼の視度を補正するための図示しない補正レンズを交換自在に装着することができ、また、レンズホルダー部12には、補正レンズが乱視矯正用のレンズの場合に、その設置角度を調整するための角度目盛り12bが設けられている。ホルダー本体10の、図3左側面には、L字型に形成されたプローブ10cが、屈曲した先端10dをブラケット9に配置されたレンズホルダーセンサ13に、レンズホルダー部12の矢印A,B方向の回動に伴って挿抜自在に設けられており、レンズホルダーセンサ13は、図5に示すように、プローブ10cの先端10dがレンズホルダーセンサ13内に挿入されるとON(“1”)信号を出力し、先端10dが、図6に示すように、レンズホルダーセンサ13内から抜き出されると、OFF(“0”)信号を出力することが出来る。
【0020】
レンズホルダー7の、図1紙面の奥方の本体2内には、視標が提示される半球状の視野ドーム15などの投影部材が設けられており、視野ドーム15には、図7及び図8に示すように、後述する公知の視標提示部により視野測定用の視標16が視野ドーム15内の任意の位置に視標16を投影自在に構成されている。視野ドーム15には、ドーム15の、本体前面2aから見て最奥部に、被検眼が固視する際の目標となる固視灯17が設けられており、固視灯17の図7奥方、従って図8右方には、被検眼19の固視状態を監視する、公知の固視状態監視装置18が設けられ、視野測定に際した被検眼19の固視状態を監視することが出来る。
【0021】
視野ドーム15の固視灯17の図7下方、従って、測定すべき被検眼19の図8斜め下方の視野ドーム15上には、3個のLED照明20,21,22が配置されており、LED照明20は、中央の固視灯17の垂直方向下方(即ち視野ドーム15の中央部下方)に、残りの2個のLED照明21,22は、固視灯17の下方の、固視灯17とLED照明20を通る垂直面VLに対して、同一距離L1,L1隔てた左右対称の位置(即ち視野ドーム15の下方両側)に配置されている。
【0022】
また、視野計1の本体2には、図9に示すように、視野計の制御部24が設けられており、制御部24は、主制御部23を有している。主制御部23には、バス線25を介して、視標提示部26,視野判定制御部27、前述のレンズホルダーセンサ13、照明制御部29及び固視状態監視装置18が接続している。なお、図9に示す制御部ブロック図は、本発明と関連の有る部分のみを表示しており、本発明と関連のない視野計1の他の構成部分の図示は行っていない。
【0023】
視野計1は、以上のような構成を有するので、被検眼19についてその視野を測定する場合で、被検眼19がその視度を調整する必要がない場合には、検査者はレンズホルダー7を、図4に示すように、矢印B方向に回転軸10aを中心に回転させて、ステム11及びレンズホルダー部12を収納位置P2に位置決めする。すると、視野計1の図1に示す正面部分からステム11及びレンズホルダー部12が、矢印B方向に回転移動して、それまでの視野ドーム15の開口部15aの中央部のセット位置P1にレンズホルダー部12が配置された状態(図3参照)から、即ち被検眼19が視野測定に際して配置される被検眼の測定位置(視野ドーム15のほぼ中心)に対応する位置から、開口部15aの図1正面の外周縁部15bの下方の収納位置P2に待避収納された状態(図4参照)となり、図1に示すほぼ円形の開口部15aには、図1紙面と直交する方向から見てステム11及びレンズホルダー部12が存在しない(見えない)状態となる。
【0024】
この状態で、被検者に対して、あご載せ3にあごを載せ、更に、ひたい部分をひたい当て5に押圧接触させて、被検者の前眼部の被検眼19を、所定の視野測定位置、即ち、図8に示すように、視野ドーム15のほぼ中心CTに配置されるようにする。この状態で、図示しないキーボードなどの操作部を介して視野計1に対して被検眼19の視野測定の開始を指令すると、制御部24の主制御部23は、視標提示部26を介して、公知の手法で、視標16を、視野ドーム15内の適宜な位置に順次提示してゆく。被検者は当該提示された視標を被検眼19を介して視認した場合には、応答スイッチ6を操作し、視認できなかった場合には、応答スイッチ6の操作は行わないので、応答スイッチ6の操作状態と、その際の視標位置を関連付ける形で、視野判定制御部27は、公知の手法で被検眼の視野を測定してゆく。
【0025】
この際、主制御部23は、視野測定を適正に行うために、固視状態監視装置18により被検眼19が測定中に常に固視灯17を固視しているかを、即ち固視状態が維持されているかを監視させている。この固視状態の監視手法は、既に公知の手法なので、ここではその詳細な説明は省略するが、この固視状態の監視時に、主制御部23は照明制御部29を介して、固視状態監視装置18による固視状態の監視が適正に行われるように、3個のLED照明20、21、22を駆動して、視野測定を行っている被検眼19が、当該視野測定に必要な固視状態に有るか否かを監視する固視監視に適した明るさで照明されるようにその駆動状態を制御している。
【0026】
即ち、照明制御部29は、レンズホルダーセンサ13の出力状態を監視し、レンズホルダーセンサ13の出力がOFF信号の場合、即ち、図4に示すように、レンズホルダー7のレンズホルダー部12が、収納位置P2に収納されている場合には、図7の中央のLED照明20を低輝度で駆動し、両側のLED照明21,22は、非駆動状態とする。すると、被検眼19は、固視灯17の垂直下方のLED照明20のみにより低輝度で照明されることとなるが、すでに述べたように、レンズホルダー部12は、ステム11と共に、図1の視野ドーム15の周縁部15b下方の、本体前面2aの裏側に収納された収納位置P2に有るので、レンズホルダー7が固視状態監視装置18の監視の障害となることが無く、低輝度で発光を制御されたLED照明20の照明でも、十分に被検眼19の固視状態を監視することが出来る。
【0027】
次に、被検眼19がその視度を調整する必要がある場合には、検査者はレンズホルダー7を、図3に示すように、矢印A方向に回転軸10aを中心に回転させて、ステム11及びレンズホルダー部12を、それまでの収納位置P2からセット位置P1に位置決めする。すると、レンズホルダー7は、図1及び図8に示すように、視野ドーム15の前面の、図1正面から見たドーム中心(補正レンズの光軸Xと一致)にレンズホルダー部12の凹部12aを配置させる形で位置決めされる。この状態で、レンズホルダー部12の凹部12aに、被検眼19の視度に適した視度補正用レンズ(図示せず)を装着保持させ、更に、被検眼19の視度に合わせて、軸部10Bを図8矢印C、D方向に移動調整すると共に、視度補正用レンズを凹部12a内で角度目盛り12bを参照しつつ回転させてその設置角度を調整して、被検眼19から視標16を明瞭に認識できるように設定する。
【0028】
なお、レンズホルダー7が、セット位置P1に位置決めされると、プローブ10cの先端10dが、図5に示すように、レンズホルダーセンサ13の内部に挿入され、レンズホルダーセンサ13からは、ON(“1”)信号が出力されることとなる。この状態で、図示しないキーボードなどの操作部を介して視野計1に対して被検眼19の視野測定の開始を指令すると、制御部24の主制御部23は、視標提示部26を介して、公知の手法で、視標16を、視野ドーム15内の適宜な位置に順次提示してゆく。
【0029】
この際も、主制御部23は、視野測定を適正に行うために、固視状態監視装置18により被検眼19が測定中に常に固視灯17を固視しているかを、即ち固視状態が維持されているかを監視させている。しかし、今回は、被検眼19の直前に視度補正用レンズが装着されたレンズホルダー7が配置されているので、レンズホルダー7が収納位置P2にある場合と異なって、中央部のLED照明20を低輝度で駆動するだけでは、レンズホルダー7のステム11やレンズホルダー部12更には、レンズホルダー部12に装着された視度補正用レンズが被検眼19の前眼部に影を落とし、固視状態監視装置18による被検眼19の固視状態の監視が十分に出来なくなるおそれが生じる。
【0030】
そこで、照明制御部29は、レンズホルダーセンサ13の出力がON(“1”)信号となった時点、即ち、レンズホルダー7がセット位置P1に位置決めされた時点で、3個のLED照明20、21,22を、中央部のLED照明20については高輝度で駆動し(即ち、レンズホルダー7が収納位置P2にあった時よりも明るい状態とする)、両側のLED照明21,22については、それまでの非駆動状態から駆動状態に切り換え、視野ドーム15を覗き込む被検眼19を、中央下方、中央両側下方の3カ所から照明する。これにより、被検眼19には、方向の異なる3方から光線が照射されることとなり、レンズホルダー7のステム11やレンズホルダー部12、更には視度補正用レンズが被検眼19のある前眼部に落とす影を打ち消すように作用し、固視状態監視装置18による被検眼19の固視状態の監視は良好に行われる。
【0031】
特に、LED照明20,21,22がいずれも斜め下方から被検眼19を照射するので、視野ドーム15のほぼ中心CTに配置される視度補正用レンズやレンズホルダー部12の影が同様に視度補正用レンズの光軸Z上に位置する前眼部に投影されることが極力防止され、都合がよい。また、LED照明20,21,22が、視野ドーム15の下側、従って被検眼19の視野ドーム15における視野測定位置(中心CTに対応)の下方に配置されることから、LED照明20,21,22による被検眼19に対する照明が、被検眼19上部の額部分に邪魔されることなく行うことが出来、好都合である。なお、このことは、被検眼19を照明するLED照明を、被検眼19の視野ドーム15における視野測定位置の上方側に配置することを妨げるものではない。
【0032】
なお、被検眼19のLED照明20,21,22などによる照明手段の照射光としては、可視光線ばかりではなく、赤外線を用いても良く、可視光線と赤外線を併用しても良い。また、各LED照明20,21,22の輝度は、調整可能であり、固視状態監視装置18による被検眼19の捕捉状態(被検眼19の画像のコントラスト、プルキニエ像の反射状態など)に応じて、照明制御部29が、自動的に、又は検査者が手動でその輝度を調整して、被検眼19に対する照明の明るさを調整するようにすることも出来る。更に、LED照明を4個以上配置し、レンズホルダー7がセット位置P1にある場合に、被検眼19を照明するLED照明の輝度をより自在に調節可能とするように構成することも可能である。
【0033】
また、LED照明20,21,22など、異なる位置にそれぞれ配置された複数の光源から構成される照明手段がある場合、照明制御部29は、セット位置P1にレンズホルダー7等の視度補正手段が位置している場合には、収納位置P2に位置している場合よりも多くの光源により被検眼19を照明するように制御すると、ある光源に起因して前眼部に投影される視度補正手段の影を、他の光源で打ち消すように照明することが出来るので、被検眼19を影の少ない均等な状態で照明することが可能となり、固視状態監視装置18による被検眼19の監視をより円滑に行うことが可能となる。
【0034】
更に、レンズホルダー7をセット位置P1で使用した際には、レンズホルダーセンサ13の出力に基づいて、視野判定制御部27や固視状態監視装置18による測定データに、レンズホルダー7の使用、従って測定に際して視度補正用レンズを使用したことが属性データとして記録される。
【0035】
また、固視灯17の下方に配置されたLED照明20を、図10に示すように、より固視灯17側、従って視野ドーム15の中央部よりに配置し、レンズホリダー7がセット位置P1に位置決めされた際に、LED照明20から照射される光30が、レンズホルダー部12に保持された視度補正用レンズを通して被検眼19を照明するように構成することも出来る。この際、LED照明20からの光30は、図10に示すように、水平よりもやや斜め下方からに視度補正用レンズを介して被検眼19に照射されるので、LED照明20からの光30が視度補正用レンズに一部が反射されたとしても、反射した光30は図10のやや斜め上方に進行し、固視状態監視装置18に直接入射することが防止されるので、固視状態監視装置18の固視状態の監視がLED照明20からの反射光で妨害されることもない。
【0036】
また、この時、図10下方のLED照明21,22は、レンズホルダー部12に保持された視度補正用レンズの下方から、視度補正用レンズを介することなく直接被検眼19を照明することが出来るので、LED照明20によりレンズホルダー7や視度補正用レンズの影が被検眼19に投影されたとしても、下方からのLED照明21,22による照明で当該影を打ち消す形で照明することが出来るので、好都合である。
【符号の説明】
【0037】
1……視野計
7……視度補正手段(レンズホルダー)
13……位置検出手段(レンズホルダーセンサ)
15……投影部材(視野ドーム)
16……視標
18……固視状態監視手段(固視状態監視装置)
19……被検眼
20,21,22……照明手段(LED照明)
26……視野測定手段(視標提示部)
27……視野測定手段(視野判定制御部)
29……照明制御部
P1……セット位置
P2……収納位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10