(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の発明では、蒸発器において生成されて改質器へ供給される水蒸気量は、蒸発器への蒸発用水の供給量で決まるのではなく、蒸発器へ燃焼器から与えられる燃焼熱量で決まる。つまり、既に蒸発器の内部に貯留されている蒸発用水を気化させる方式が採用されているので、貯留されている蒸発用水に与えられる熱量(即ち、蒸発器へ燃焼器から与えられる燃焼熱量)を大きくすることで発生する水蒸気量が多くなり、蒸発用水に与えられる熱量を小さくすることで発生する水蒸気量が少なくなる。そのため、発生させる水蒸気量の増減を細かく制御するためには、燃焼器で発生する燃焼熱量を細かく制御しなければならないが、実際にはそのような細かな制御は困難である。更に、燃料電池の出力変動時には、改質器へ供給する水蒸気量も即座に変化させなければならないが、燃焼器から蒸発器へ与える燃焼熱量を変化させても、即座に所望の水蒸気量が得られるとは限らず、結果として、応答性が悪くなるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蒸発器で生成される水蒸気量を安定して制御可能な燃料改質装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料改質装置の特徴構成は、
可燃性ガスを燃焼して燃焼熱を発生させる燃焼器と
供給される蒸発用水を、前記燃焼器から伝えられる前記燃焼熱を用いて加熱して蒸発させる蒸発器と、
供給される原燃料ガスを前記蒸発器にて生成された水蒸気を用いて改質処理する改質器とを備える燃料改質装置であって、
前記蒸発器を構成する容器は、前記燃焼熱が直接伝えられる最外郭構造体と、前記燃焼器との間に前記最外郭構造体を挟んで位置し、前記容器の内部に供給される前記蒸発用水が接触する位置に設けられる内部構造体を有
し、
前記内部構造体の、前記蒸発用水が接触する面は、供給される前記蒸発用水が広がる平面状に形成される平面部分を有し、
前記改質器は、前記蒸発器への前記蒸発用水の供給方向に沿って前記蒸発器の下流側に、前記蒸発器に隣接して設けられ、前記蒸発器と前記改質器とは通気性を有する仕切部材で仕切られており、前記平面部分にて生成された水蒸気が前記仕切部材を通して前記改質器に供給される点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、供給される蒸発用水が接触する内部構造体は、燃焼器で発生される燃焼熱が直接伝えられる最外郭構造体よりも燃焼器から離れて設けられる。つまり、内部構造体には燃焼熱が最外郭構造体を介して間接的に伝わるため、内部構造体に伝わる燃焼熱は最外郭構造体に伝わる燃焼熱よりも小さくなる。その結果、最外郭構造体に蒸発用水を接触させる場合に比べて、蒸発用水の気化が瞬間的に激しく行われないようにできる。例えば、最外郭構造体に蒸発用水を接触させた場合には、その蒸発用水の一部が突沸することで瞬間的に気化し、残りはその突沸によって飛散された先で瞬間的に気化されるというように安定した気化が行われない恐れがある。しかし、本特徴構成では、相対的に低温の内部構造体に対して蒸発用水を接触させるので蒸発用水の突沸の発生が抑制され、蒸発用水の蒸発が安定して進行するようにできる。
加えて、蒸発用水の蒸発が安定して進行するため、蒸発器に供給する蒸発用水の量の増減に応じて、蒸発器で発生する水蒸気量を変化させることができる。つまり、燃料電池を出力変動させようとした場合に、蒸発器で生成されて改質器へ供給される水蒸気量を速やかに変化させることもできる。
従って、蒸発器で生成される水蒸気量を安定して制御可能な燃料改質装置を提供できる。
また内部構造体上に滞留する蒸発用水の層が厚くなると、全ての蒸発用水に対して(特に上層部分の蒸発用水に対して)内部構造体の熱が均等に伝わり難くなる。
ところが本特徴構成によれば、内部構造体の平面部分において、供給される蒸発用水が広がるため、内部構造体上に滞留する蒸発用水の層の厚さは薄くなる。つまり、内部構造体から全ての蒸発用水に対して熱が均等に伝わり易くなる。特に、蒸発用水は、内部構造体上に供給されてから徐々に広がる過程で継続して内部構造体から良好に熱を受け続けることができる。
【0012】
本発明に係る燃料改質装置の更に別の特徴構成は、前記内部構造体の前記平面部分の周囲の全部に又は部分的に、前記平面部分に存在する前記蒸発用水を堰き止めることができる堰構造が設けられている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、堰構造を設けることで、蒸発用水が広がる範囲を制限できる。
【0014】
本発明に係る燃料改質装置の更に別の特徴構成は、前記内部構造体の、前記蒸発用水が接触する面に親水化処理が施されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、親水化処理の効果によって、蒸発用水が内部構造体の表面に広がり易くなる。その結果、蒸発器に供給された蒸発用水に対して内部構造体から熱が均等に伝わり易くなるため、蒸発用水の気化が安定して行われるようになる。
【0016】
本発明に係る燃料改質装置の更に別の特徴構成は、前記内部構造体は、供給された前記蒸発用水が下流側の前記改質器に向かう方向に流れるように形成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、蒸発用水を改質器に近い位置に移動させながら気化させることができる。その結果、発生する水蒸気が改質器に供給され易くなる。
【0018】
本発明に係る燃料改質装置の更に別の特徴構成は、前記蒸発器は、前記内部構造体を形成する部材を、前記最外郭構造体を形成する容器の内部の壁面で支持又は当該壁面に接合して構成される点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、適当な形状の内部構造体を、最外郭構造体を形成する容器の内部に設けて支持させる又は接合させることで、蒸発器を得ることができる。つまり、蒸発器を作製するにあたり、最外郭構造体は従来と同様の容器で流用し、内部構造体のみを新たに作製してその容器(最外郭構造体)の内部に設置すればよい。このような構成を採用することで、既存の蒸発器の容器に対しても内部構造体を設置することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の燃料改質装置Rを備える燃料電池発電装置の構成を示す図である。
図2は、第1実施形態の燃料改質装置Rが備える蒸発器2及び改質器3の構成を示す図である。
図3は、蒸発器2の内部の構成を斜め上方から見た透視図である。燃料電池発電装置は、水素を主成分とする改質ガスを生成する燃料改質装置Rと、燃料改質装置Rで生成された改質ガスと酸素(空気)とを用いて発電する燃料電池部21とを装置筐体1の内部に備える。後述するように、第1実施形態の燃料改質装置Rは、燃焼器22と蒸発器2と改質器3とを備える。
【0022】
〔燃料電池部〕
燃料電池部21は、改質ガスが通流する燃料通流部24と空気が通流する空気通流部25とを備えた複数の固体酸化物型のセル26を電気的に直列接続された状態で備えたセルスタックにて構成されている。図示は省略するが、セル26は、燃料極と空気極との間に固体電解質層を備えた固体酸化物型に構成される。燃料通流部24を改質ガスが通流することで燃料極に改質ガスが供給され、空気通流部25を空気が通流することで空気極に空気が供給される。燃料電池部21は、複数のセル26が燃料通流部24の改質ガス排出口24e及び空気通流部25の空気排出口25eが上向きになる姿勢で横方向に並ぶ状態で、装置筐体1の内部に設置されている。尚、セル26としては、燃料通流部24及び空気通流部25を備えた各種の形状や構成のセルが使用可能であり、その形状や構成については上記に限定されるものではない。
【0023】
加えて、燃料電池部21には、改質器3から改質ガス供給路23を通して供給される改質ガスを受け入れるガスマニホールド27が設けられる。複数のセル26は、ガスマニホールド27の上方側に上述のように並ぶ状態で配置され、ガスマニホールド27と複数のセル26における燃料通流部24の下端のガス導入口(図示せず)とが連通接続されている。そして、ガスマニホールド27に供給された改質ガスが複数のセル26夫々の燃料通流部24に対して下端のガス導入口から供給されて、各燃料通流部24を下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排改質ガスは、上端の改質ガス排出口24eから排出される。
【0024】
装置筐体1には、空気導入口28が設けられる、その空気導入口28には空気供給路29が接続される。ブロア30の作動により、空気が空気供給路29を通して装置筐体1内に供給される。複数のセル26夫々における空気通流部25の下端部近傍には、装置筐体1内と空気通流部25内とを連通する空気供給孔(図示せず)が設けられている。複数のセル26夫々の空気通流部25には装置筐体1内の空気がこの空気供給孔を通して供給されて、各空気通流部25を下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排空気は、上端の空気排出口25eから排出される。
【0025】
燃料電池部21の上方には、各セル26の燃料通流部24の改質ガス排出口24eから排出される排改質ガスと空気通流部25の空気排出口25eから排出される排空気とを燃焼させる燃焼空間が形成される。つまり、燃料電池部21により、燃焼器22が実現される。加えて、後述するように、一体で構成された蒸発器2と改質器3とが、燃焼器22として機能する燃料電池部21の上方の燃焼空間に隣接して設けられている。
【0026】
装置筐体1には、燃焼器22にて発生した燃焼排ガスを外部に排出させる排出部31が下面部等に形成されている。そして、装置筐体1内には、排出部31から外部に排出される燃焼排ガス中の一酸化炭素ガスを除去する燃焼触媒部32(例えば、白金系触媒)が設けられている。
【0027】
〔燃料改質装置〕
燃料改質装置Rは、燃料電池部21により実現される燃焼器22と蒸発器2と改質器3とを備える。
燃焼器22は、可燃性ガスを燃焼して燃焼熱を発生させる。具体的には、上述したように、燃焼器22は、各セル26の燃料通流部24の改質ガス排出口24eから排出される排改質ガス(可燃性ガス)と空気通流部25の空気排出口25eから排出される排空気とを燃焼させて燃焼熱を発生させる。
【0028】
図2に示すように、蒸発器2を構成する容器C1と、改質器3を構成する容器C2とは単一の筐体Cで構成されている。つまり、蒸発器2と改質器3とは、単一の筐体Cの内部空間を、通気性を有する仕切部材33を用いて上流側区域と下流側区域とに仕切り、上流側区域を蒸発器2とし、下流側区域を改質器3として形成される。本実施形態では、上流側区域の蒸発器2の部分における筐体Cの内部空間の断面積と、下流側区域の改質器3の部分における筐体Cの内部空間の断面積とは同一に形成されている。そして、蒸発器2の内部空間には、原燃料ガス(G)が供給される原燃料ガス供給管7と、蒸発用水が供給される蒸発用水供給管6とが、容器C1の外部から引き込まれて内部に突出し、蒸発器2として用いられる上流側区域の内部に、原燃料ガス及び蒸発用水が供給される。
【0029】
蒸発器2は、供給される蒸発用水を、燃焼器22から伝えられる燃焼熱を用いて加熱して蒸発させる。蒸発器2に供給される蒸発用水は、蒸発用水タンク8に貯えられている水である。つまり、蒸発用水タンク8に貯えられている蒸発用水は、蒸発用水タンク8に連結される蒸発用水供給管6を介して蒸発器2に供給される。具体的には、蒸発用水ポンプ9が動作することで蒸発用水タンク8に貯えられている蒸発用水が蒸発用水供給管6を通流して蒸発器2の内部に流入する。
【0030】
改質器3は、供給される原燃料ガスを蒸発器2にて生成された水蒸気を用いて改質処理する。
図2に示すように、改質器3の内部には改質触媒3aが充填されており、この改質触媒3aの触媒作用によって原燃料ガスが改質処理される。改質器3には原燃料ガス供給管7を介して原燃料ガスが供給される。原燃料ガス供給管7には昇圧ポンプ10が設けられている。更に、昇圧ポンプ10の下流側の原燃料ガス供給管7には、原燃料ガス(例えば、都市ガス等)に含まれる硫黄化合物を取り除くための脱硫器11が設けられている。そして、昇圧ポンプ10が動作することで、原燃料ガスが原燃料ガス供給管7を通流し且つ脱硫器11で脱硫された後で蒸発器2の内部に流入する。
【0031】
〔蒸発器の構成〕
次に、蒸発器2の構成について説明する。
図2及び
図3に示すように、蒸発器2を構成する容器C1は、燃焼器22で発生される燃焼熱が直接伝えられる最外郭構造体2aと、燃焼器22との間に最外郭構造体2aを挟んで位置し、容器C1の内部に供給される蒸発用水が接触する位置に設けられる内部構造体2bを有する。特に、
図3(a)は蒸発器2の内部の構成を説明する斜視図であり、
図3(b)は蒸発器2の断面図である。蒸発器2を構成する容器C1の内部には、原燃料ガス供給管7と蒸発用水供給管6とが引き込まれ、各供給管の先端は容器C1の内部で開口されている。そして、蒸発用水供給管6を介して容器C1の内部に供給される蒸発用水が蒸発用水供給管6の先端から内部構造体2b上に流出することで、内部構造体2bの表面と蒸発用水とが接触する。本実施形態では、蒸発用水供給管6の先端の高さは、内部構造体2bよりも僅かに高い位置にある。つまり、蒸発用水供給管6の先端は内部構造体2bに近い位置で開口されているので、蒸発用水供給管6の先端から流出した蒸発用水を、液滴が間欠的に滴下されるような状態ではなく、まとまったままで連続的に内部構造体2bの表面に到達するような状態で供給することができる。その結果、内部構造体2bの表面に対して、一定量の蒸発用水を連続的に安定供給できる。
【0032】
加えて、蒸発器2は、内部構造体2bを形成する部材を、最外郭構造体2aを形成する容器C1の内部の壁面で支持又はその壁面に接合して構成される。具体的には、内部構造体2bは、例えば金属製の板状部材を折り曲げ加工、プレス加工、切削加工、接合加工等することで作製される。そして、内部構造体2bの、蒸発用水が接触する面は、上方から供給される蒸発用水を受ける盆状に形成されている。
【0033】
内部構造体2bの盆状部分Pは、蒸発器2から改質器3へ向かう方向を前方とした場合、底部Pbの周囲に前端部Pfと後端部Prと側部Psとが設けられた状態で構成される。加えて、内部構造体2bは、蒸発器2から改質器3へ向かう方向に沿った長手状に形成されている。内部構造体2bの盆状部分Pの底部Pbは、供給される蒸発用水が広がる平面状に形成される。つまり、内部構造体2bの蒸発用水が接触する面は平面部分(即ち、底部Pb)を有する。この平面部分としての底部Pb上では、供給される蒸発用水が広がるため、内部構造体2b上に滞留する蒸発用水の層の厚さは薄くなる。つまり、内部構造体2b上に滞留する蒸発用水の層が厚くなると、内部構造体2bの熱が全ての蒸発用水に対して(特に上層部分の蒸発用水に対して)均等に伝わり難くなるが、本実施形態のように内部構造体2b上に滞留する蒸発用水の層の厚さが薄くなると、内部構造体2bから全ての蒸発用水に対して均等に熱が伝わり易くなる。特に、蒸発用水は、内部構造体2bに供給されてから底部Pb上を流れて徐々に広がる過程で継続して内部構造体2bから良好に熱を受け続けることができる。
【0034】
更に具体的に説明すると、蒸発器2において蒸発用水供給管6の先端部は下流側の改質器3の方に向いて開口しているため、蒸発用水は内部構造体2bの後端部Pr側から前端部Pfの方向に流出する。そして、平面部分としての底部Pbは水平となるように設置されているため、内部構造体2bの後端部Prの付近の底部Pbに対して前端部Pfの方向に向けて供給された蒸発用水は、底部Pb上を前端部Pfの方向に流れながら薄く広がる。そして、蒸発用水が内部構造体2bから熱を継続的に受けながら広がりつつ流れる間に、蒸発用水の蒸発が発生する。このように、内部構造体2bの底部Pb上では、後方(後端部Pr側)に蒸発用水が供給されて、前方(前端部Pf)へ行くにつれて蒸発により水量が減少するため、内部構造体2bに供給された蒸発用水は、内部構造体2b上を下流側の改質器3に向かう方向に流れることとなる。
【0035】
更に、内部構造体2bの底部Pb(平面部分)の周囲の全部に、底部Pbに存在する蒸発用水を堰き止めることができる堰構造としての前端部Pfと後端部Prと側部Psとが設けられている。その結果、蒸発用水が広がる範囲を制限できる。特に、蒸発用水が内部構造体2bから溢れないようにできる。加えて、
図2及び
図3に示すように、改質器3に近い前端部Pfは、改質器3から離れた後端部Prよりも、底部Pbから上方への高さが低くなっている。従って、内部構造体2bの盆状部分Pに蒸発用水が貯まったとしても、貯まった蒸発用水は堰の低い前端部Pfから溢れる。
【0036】
以上のように、供給される蒸発用水が接触する内部構造体2bは、燃焼器22で発生される燃焼熱が直接伝えられる最外郭構造体2aよりも燃焼器22から離れて設けられる。つまり、内部構造体2bには燃焼熱が最外郭構造体2aを介して間接的に伝わるため、内部構造体2bに伝わる燃焼熱は最外郭構造体2aに伝わる燃焼熱よりも小さくなる。その結果、最外郭構造体2aに蒸発用水を接触させる場合に比べて、蒸発用水の気化が瞬間的に激しく行われないようにできる。例えば、最外郭構造体2aに蒸発用水を接触させた場合には、その蒸発用水の一部が突沸することで瞬間的に気化し、残りはその突沸によって飛散された先で瞬間的に気化されるというように安定した気化が行われない恐れがある。しかし、本実施形態では、相対的に低温の内部構造体2bに対して蒸発用水を接触させるので蒸発用水の突沸の発生が抑制され、蒸発用水の蒸発が安定して進行するようにできる。
【0037】
加えて、燃焼器22で発生される燃焼熱は最外郭構造体2aを介して内部構造体2bに伝わるので、燃焼器22で発生される燃焼熱量が変動してもその燃焼熱量の変動は最外郭構造体2aで緩和された上で内部構造体2bに伝わる。つまり、燃焼器22での燃焼状態が変動しても、内部構造体2bに伝わる熱はその変動に対して過敏に追従せずに緩やかに変化するため、内部構造体2bで発生する水蒸気量を過敏に変化させないようにできる。
【0038】
更に、内部構造体2bの、蒸発用水が接触する面に親水化処理を施してもよい。親水化処理の効果によって、蒸発用水が内部構造体2bの表面の特定の部位において表面積が小さくなるように集まるのではなく、蒸発用水が内部構造体2bの表面で更に薄く広がり易くなる。その結果、蒸発器2に供給された蒸発用水に対して内部構造体2bから熱が均等に伝わり易くなるため、蒸発用水の気化が安定して行われるようになる。
【0039】
<第2実施形態>
第2実施形態の燃料改質装置は、蒸発器の内部構造体の形状が第1実施形態に示した形状と異なり、他は第1実施形態に示したのと同様である。従って、以下の説明では、第2実施形態の蒸発器の内部構造体の形状のみを説明する。
【0040】
図4(a)は第2実施形態の蒸発器2の内部の構成を説明する斜視図であり、
図4(b)は第2実施形態の蒸発器2の断面図である。
本実施形態でも、内部構造体2bは、燃焼器22との間に最外郭構造体2aを挟んで位置し、容器C1の内部に供給される蒸発用水が接触する位置に設けられる。そして、蒸発用水供給管6を介して容器C1の内部に供給される蒸発用水が蒸発用水供給管6の先端から内部構造体2b上に流出することで、内部構造体2bの表面と蒸発用水とが接触する。加えて、蒸発器2は、内部構造体2bを形成する部材を、最外郭構造体2aを形成する容器C1の内部の壁面で支持又はその壁面に接合して構成される。具体的には、内部構造体2bは、例えば金属製の板状部材を折り曲げ加工、プレス加工、切削加工、接合加工等することで作製される。そして、内部構造体2bの、蒸発用水が接触する面は、上方から供給される蒸発用水を受ける盆状に形成されている。
【0041】
本実施形態の内部構造体2bの盆状部分Pは、蒸発器2から改質器3へ向かう方向を前方とした場合、底部Pbの周囲に前端部Pfと後端部Prと側部Psとが設けられた状態で構成される。本実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、内部構造体2bの盆状部分Pの底部Pbは、供給される蒸発用水が広がる平面状に形成される。つまり、内部構造体2bの蒸発用水が接触する面は平面部分(即ち、底部Pb)を有する。更に、内部構造体2bの側部Psは、底部Pbを基準として上向きの上行側部Ps1と、下向きの下行側部Ps2とで構成される。そして、2つの上行側部Ps1の間に底部Pbが連結され、2つの下行側部Ps2は容器C1の内壁面と接触して支持され又は接合される。例えば、一枚の金属製の板状部材で構成される側部Psを上行側部Ps1と下行側部Ps2とに折り曲げて構成できる。
【0042】
<第3実施形態>
第3実施形態の燃料改質装置は、蒸発器の内部構造体の形状が第1実施形態に示した形状と異なり、他は第1実施形態に示したのと同様である。従って、以下の説明では、第3実施形態の蒸発器の内部構造体の形状のみを説明する。
【0043】
図5(a)は第3実施形態の蒸発器2の内部の構成を説明する斜視図であり、
図5(b)は第3実施形態の蒸発器2の断面図である。
本実施形態の内部構造体2bの盆状部分Pは、蒸発器2から改質器3へ向かう方向を前方とした場合、底部Pbの前方及び後方に前端部Pfと後端部Prとが夫々設けられた状態で構成される。本実施形態でも、上記実施形態と同様に、内部構造体2bの盆状部分Pの底部Pbは、供給される蒸発用水が広がる平面状に形成される。つまり、内部構造体2bの蒸発用水が接触する面は平面部分(即ち、底部Pb)を有する。そして、底部Pbの左右側方部分は、容器C1の内壁面に対して直接接合されている。つまり、本実施形態では、内部構造体2bの底部Pb(平面部分)の周囲は、堰構造としての前端部Pfと後端部Prとで部分的に囲まれているだけである。但し、内部構造体2bの底部Pbの、前端部Pfと後端部Prとで囲まれていない部分は容器C1の内壁面で直接接合されているため、その容器C1の内壁面が、蒸発用水を堰き止めることができる堰構造として実質的に機能する。その結果、内部構造体2bの底部Pbの周囲が、前端部Pfと後端部Prと容器C1の内壁面とで囲まれ、その囲まれた部分で蒸発用水の広がりが制限される。
【0044】
<第4実施形態>
第4実施形態の燃料改質装置は、蒸発器の内部構造体の形状が第1実施形態に示した形状と異なり、他は第1実施形態に示したのと同様である。従って、以下の説明では、第4実施形態の蒸発器の内部構造体の形状のみを説明する。
【0045】
図6(a)は第3実施形態の蒸発器2の内部の構成を説明する斜視図であり、
図6(b)は第3実施形態の蒸発器2の断面図である。
本実施形態の内部構造体2bの盆状部分Pは、蒸発器2から改質器3へ向かう方向を前方とした場合、底部Pbの周囲に前端部Pfと後端部Prと側部Psとが設けられた状態で構成される。本実施形態でも、上記実施形態と同様に、内部構造体2bの盆状部分Pの底部Pbは、供給される蒸発用水が広がる平面状に形成される。つまり、内部構造体2bの蒸発用水が接触する面は平面部分(即ち、底部Pb)を有する。更に、底部Pbの下方には2つの脚部Plが連結されて、底部Pbを下方から支えている。そして、2つの脚部Plが容器C1の内壁面に対して接合されている。
【0046】
<第5実施形態>
第5実施形態の燃料改質装置は、蒸発器の構造が第1実施形態に示した構造と異なり、他は第1実施形態に示したのと同様である。従って、以下の説明では、第5実施形態の蒸発器の構造のみを説明する。
【0047】
図7(a)は第5実施形態の燃料改質装置Rが備える蒸発器2及び改質器3の内部の構成を側方から見た透視図であり、
図7(b)は第5実施形態の蒸発器2の断面図である。
本実施形態では、蒸発器2の容器C1を二重底構造としている。そして、二重底構造の内側を内部構造体2dとして機能させ、外側を最外郭構造体2cとして機能させる。加えて、内部構造体2bは、蒸発器2から改質器3へ向かう方向に沿った長手状に形成されている。具体的には、
図7(b)に示すように、断面視でU字型の金属性又はセラミック製等の部材(即ち、最外郭構造体2c)を内部構造体2dの外側底面に接合することで、最外郭構造体2cが内部構造体2dの下方を覆うように構成してある。その結果、その最外郭構造体2cに対して燃焼器22の燃焼熱が直接伝わり、他方で、内部構造体2dに対して燃焼器22の燃焼熱が直接伝わらないようにしている。
【0048】
このように、蒸発用水供給管6を介して容器C1の内部に供給される蒸発用水が蒸発用水供給管6の先端から内部構造体2d上に流出することで、内部構造体2dの表面と蒸発用水とが接触する。そして、供給される蒸発用水が接触する内部構造体2dは、燃焼器22で発生される燃焼熱が直接伝えられる最外郭構造体2cよりも燃焼器22から離れて設けられる。つまり、相対的に低温の内部構造体2dに対して蒸発用水を接触させるので蒸発用水の突沸の発生が抑制され、蒸発器2で生成される水蒸気量を安定して推移させることが可能となる。
【0049】
本実施形態でも、上記実施形態と同様に、内部構造体2bの、蒸発用水が接触する底部2eは、供給される蒸発用水が広がる平面状に形成される。つまり、内部構造体2bの蒸発用水が接触する面は平面部分(即ち、底部2e)を有する。蒸発器2において蒸発用水供給管6の先端部は下流側の改質器3の方に向いて開口しているため、蒸発用水は前方の改質器3の方向に流出する。そして、平面部分としての底部2eは水平となるように設置されているため、内部構造体2bの底部2eに対して前方の改質器3の方向に向けて供給された蒸発用水は、底部2e上を前方に流れながら薄く広がる。そして、蒸発用水が内部構造体2bから熱を継続的に受けながら広がりつつ流れる間に、蒸発用水の蒸発が発生する。このように、内部構造体2bの底部2e上では、後方に蒸発用水が供給されて前方で蒸発が行われて水量が減少するため、内部構造体2bに供給された蒸発用水は、内部構造体2b上を下流側の改質器3に向かう方向に流れることとなる。
【0050】
更に、
図7に例示した二重底の構造(特に、最外郭構造体2c及び内部構造体2dの構造)を他の構造に変更してもよい。例えば、
図8(a)は別の燃料改質装置Rが備える蒸発器2及び改質器3の内部の構成を側方から見た一部切欠き透視図であり、
図8(b)はその蒸発器2の断面図である。
本例でも、蒸発器2の容器C1を二重底構造とし、二重底構造の内側を内部構造体2dとして機能させ、外側を最外郭構造体2cとして機能させる。この例でも、内部構造体2bの、蒸発用水が接触する底部2eは、供給される蒸発用水が広がる平面状に形成される。つまり、内部構造体2bの蒸発用水が接触する面は平面部分(即ち、底部2e)を有する。更に、
図8(b)に示すように、最外郭構造体2cとなる金属性又はセラミック製等の部材(即ち、最外郭構造体2c)を、内部構造体2dの外側側面に接合することで、最外郭構造体2cが内部構造体2dの下方から側方を覆うように構成してある。その結果、その最外郭構造体2cに対して燃焼器22の燃焼熱が直接伝わり、他方で、内部構造体2dに対して燃焼器22の燃焼熱が直接伝わらないようにしている。
【0051】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態において、蒸発器2の内部空間への蒸発用水供給管6の引き込み方を変更してもよい。例えば、
図9は、蒸発器2の内部の構成を側方から見た透視図である。
図9(a)に示すように、蒸発用水供給管6が容器C1の側壁を斜めに貫通するように引き込んでもよい。また、
図9(b)に示すように、蒸発用水供給管6が容器C1の側壁を垂直に貫通するように引き込んだ後、斜め下方向に屈曲させてもよい。
図9(a)及び
図9(b)に示した何れの例でも、蒸発用水供給管6の先端が内部構造体2bの非常に近くで開口されるので、蒸発用水供給管6の先端から流出した蒸発用水を、液滴が間欠的に滴下されるような状態ではなく、まとまったままで連続的に内部構造体2bの表面に到達するような状態で供給することができる。
【0052】
<2>
上記実施形態において、最外郭構造体2a、2c及び内部構造体2b、2dの形状を例示したが、上述した以外の形状に構成してもよい。
【0053】
<3>
上記実施形態において、内部構造体2bの平面部分としての底部Pb、2eが水平となるように設置する例を説明したが、例えば、底部Pbを下流側に向けて傾斜させる(即ち、改質器3に近い側が低くなるように傾斜させる)ように設置してもよい。このように底部Pb、2eを下流側に向けて傾斜させておくことで、供給された蒸発用水を下流側の改質器3に向かう方向に強制的に流すことができる。
【0054】
<4>
上記実施形態において、内部構造体2bの、蒸発用水が接触する面は、供給される蒸発用水が広がる平面状に形成される平面部分(上述した底部Pb、2e)を有する例を説明したが、それら底部Pb、2eが完全な平面でなくてもよい。例えば、底部Pb、2eが下に凸の形状で僅かに湾曲していてもよい。或いは、底部Pb、2eの表面に微細な凹凸があってもよい。
【0055】
<5>
上記実施形態において、内部構造体2bの後端部Prを設けず、蒸発器2を構成する容器C1の側壁でその後端部Prの役割を兼用してもよい。具体的には、内部構造体2bの底部Pbを容器C1の上流側の側壁(即ち、蒸発用水供給管6が貫通して引き込まれている側壁)に接合することで、容器C1の側壁が蒸発用水を堰き止めることができる堰構造として機能するように構成してもよい。