(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676454
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】有機セレン材料および有機発光デバイス内でのその使用
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20150205BHJP
C07D 345/00 20060101ALI20150205BHJP
C07D 421/14 20060101ALI20150205BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20150205BHJP
C07F 5/04 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H05B33/22 D
C07D345/00
C07D421/14
C09K11/06 660
C09K11/06 630
C07F5/04 C
【請求項の数】19
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2011-529209(P2011-529209)
(86)(22)【出願日】2009年9月24日
(65)【公表番号】特表2012-503889(P2012-503889A)
(43)【公表日】2012年2月9日
(86)【国際出願番号】US2009058162
(87)【国際公開番号】WO2010036765
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2012年9月18日
(31)【優先権主張番号】61/100,229
(32)【優先日】2008年9月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュアンジュン・シャ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・クウォン
(72)【発明者】
【氏名】ビン・マー
(72)【発明者】
【氏名】チュン・リン
【審査官】
中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/084512(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/072596(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/077888(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/125714(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0100207(US,A1)
【文献】
RUN-FENG CHEN et al.,Structural, Electronic, and Optical Properties of 9-Heterofluorenes: A Quantum Chemical Study,Journal of Computational Chemistry,2007年,Vol.28,pages 2091-2101
【文献】
Arasambattu K.Mohanakrishnan et al.,Synthesis and characterization of 9,9-dialkylfluorene capped benzo[c]thiophene/benzo[c]selenophene analogs as potential OLEDs,Tetrahedron Letters,2008年,Vol. 49,pages 4792-4795
【文献】
Hideaki Ebata et al.,Synthesis, Properties, and Structures of Benzo[1,2-b:4,5-b']bis[b]benzothiophene and Benzo[1,2-b:4,5-b']bis[b]benzoselenophene,ORGANIC LETTERS,2007年,Vol.9,pages4499-4502
【文献】
Kazuo Takamiya et al.,2,7-Diphenyl[1]benzoselenopheno[3,2-b][1]benzoselenophene as a Stable Organic Semiconductor for a High-Performance Field-Effect Transistor,J. AM.CHEM.SOC.,2006年,Vol.128,pages3044-3050
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
H01L 29/78
C07D 345/00
C07D 421/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極層と陰極層の間に位置する有機層を含む有機発光デバイスであって、前記有機層
が有機セレン材料を含んで
おり、前記有機セレン材料が、
【化1】
からなる群から選択され、式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7の各々が、それに関連する部分において可能ないずれかの位置への任意選択により存在していてもよい置換基を表わし、前記置換基は、アルキル、シクロアルキル、アリールキル、及びアリール基からなる群から選択され、
2つの分子部分を連結する各々の線はそれぞれの部分上の可能ないずれかの位置における2つの部分間の連結を表わす、有機発光デバイス。
【請求項2】
前記有機セレン材料が、
【化2】
からなる群から選択される、請求項
1に記載の有機発光デバイス。
【請求項3】
前記有機セレン材料が、
【化3】
である、請求項
2に記載の有機発光デバイス。
【請求項4】
前記有機セレン材料が、
【化4】
である、請求項
2に記載の有機発光デバイス。
【請求項5】
前記有機セレン材料がホスト材料であり、前記有機層がさらにドーパント材料を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項6】
前記有機層が発光層であり、前記ドーパント材料が燐光性または蛍光性ドーパント材料である、請求項5に記載の有機発光デバイス。
【請求項7】
前記ドーパント材料が燐光性ドーパント材料である、請求項6に記載の有機発光デバイス。
【請求項8】
前記ドーパント材料が、
【化5】
からなる群から選択された燐光性ドーパント材料である、請求項
7に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
前記ドーパント材料が
【化6】
からなる群から選択された燐光性ドーパント材料である、請求項
7に記載の有機発光デバイス。
【請求項10】
前記ドーパント材料が
【化7】
からなる群から選択された燐光性ドーパント材料である、請求項
7に記載の有機発光デバイス。
【請求項11】
正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、励起子ブロック層、および電子ブロック層からなる群から選択された1つ以上の有機層をさらに含む、請求項7に記載の有機発光デバイス。
【請求項12】
前記正孔輸送層が有機セレン材料を含む、請求項11に記載の有機発光デバイス。
【請求項13】
前記電子輸送層が有機セレン材料を含む、請求項11に記載の有機発光デバイス。
【請求項14】
前記有機層が正孔輸送層または電子輸送層である、請求項1または2に記載の有機発光デバイス。
【請求項15】
前記有機層が電子輸送層である、請求項3または4に記載の有機発光デバイス。
【請求項16】
【化8】
からなる群から選択され、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7の各々が、関連する部分において可能ないずれかの位置への任意選択により存在していてもよい置換基を表わし、
前記置換基は、アルキル、シクロアルキル、アリールキル、及びアリール基からなる群から選択され、
2つの分子部分を連結する各々の線はそれぞれの部分上の可能ないずれかの位置における2つの部分間の連結を表わす、有機セレン化合物。
【請求項17】
【化9】
からなる群から選択される、請求項
16に記載の有機セレン化合物。
【請求項18】
【化10】
である、請求項
16に記載の有機セレン化合物。
【請求項19】
【化11】
である、請求項
16に記載の有機セレン化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2008年9月25日付出願の米国仮特許出願第61/100,229号の、米国特許法第119条(e)に基づく恩典を請求し、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
請求対象の発明は、大学・企業共同研究協定の以下の当事者のうちの1つ以上により、その利益になるようにおよび/またはそれに関連してなされたものである:ミシガン大学、プリンストン大学、南カリフォルニア大学の評議員そしてユニバーサル・ディスプレイ・コーポレーション(Universal Display Corporation)。この協定は、請求対象発明がなされた日付以前に発効しており、請求対象発明は、協定の範囲内で着手された活動の結果としてなされたものである。
【0003】
本発明は、ジベンゾセレノフェン、ベンゾ[b]セレノフェンまたはベンゾ[c]セレノフェンを含む有機セレン材料、および有機発光デバイス内でのその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
有機材料を使用する光電子デバイスは、数多くの理由で増々望ましいものになっている。このようなデバイスを作るために使用される材料の多くは比較的安価であり、したがって、有機光電子デバイスは、無機デバイスに比べてコスト面で有利である可能性がある。さらに、その可撓性などの有機材料に固有の特性のため、これらのデバイスは、可撓性基板上での製造などの特殊な利用分野に充分適したものとなるかもしれない。有機光電子デバイスの例としては、有機発光デバイス(OLED)、有機フォトトランジスタ、有機光電池、および有機光検出器がある。OLEDについては、有機材料は、従来の材料に比べた性能上の利点を有する可能性がある。例えば、有機発光層が発光する波長は一般に適切なドーパントで容易に調整され得る。
【0005】
OLEDは、デバイスを横断して電圧が印加された場合に光を発する薄い有機フイルムを用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明およびバックライトなどの利用分野において増々有利な技術となりつつある。いくつかのOLED材料および構成は、(特許文献1)、(特許文献2)および(特許文献3)中に記載されており、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0006】
燐光発光分子の1つの利用分野はフルカラーディスプレイである。このようなディスプレイの工業規格は、「飽和」色と呼ばれる特定の色を発光するように適合された画素を要求する。特に、これらの規格は、飽和した赤色、緑色および青色画素を求めている。色は、当該技術分野で周知のCIE座標を用いて測定されてよい。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)
3と記されるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムであり、これは、
【化1】
という構造式Iの構造を有する。
【0008】
本図中そして本明細書中の以下の図において、窒素から金属(ここではIr)への配位結合は直線で表わされている。
【0009】
本明細書中で使用する「有機」という用語は、有機光電子デバイスを製造するのに使用されてよいポリマー材料ならびに小分子有機材料を含んでいる。「小分子」とは、ポリマーでないあらゆる有機材料を意味し、「小分子」は実際にはかなり大きいものであってよい。小分子は、一部の状況において反復単位を含んでいてよい。例えば置換基として長鎖アルキル基を用いても分子が「小分子」の部類から除外されることはない。小分子は同様に、例えばポリマー主鎖上のペンダント基としてかまたは主鎖の一部として、ポリマー内に取込まれてもよい。小分子は同様に、コア部分上に構築された一連の化学的シェルで構成されたデンドリマーのコア部分としても役立ちうる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性または燐光性の小分子発光体であってよい。デンドリマーは「小分子」であってよく、OLEDの分野で現在使用されている全てのデンドリマーは小分子であると考えられている。
【0010】
本明細書中で使用する「トップ」とは、基板から最も遠いことを意味し、一方「ボトム」とは、基板に最も近いことを意味する。第1層が第2層「の上に配置され(disposed over)」と記述されている場合、第1層は基板からさらに離れて配置されている。第1層が第2層「と接触状態(in contact with)」にあると規定されていないかぎり、第1層と第2層の間にその他の層が存在してもよい。例えば、間にさまざまな有機層が存在しても、陰極は陽極「の上に配置(disposed over)」されていると記載されていてよい。
【0011】
本明細書中で使用される「溶液処理可能な」という用語は、溶液または懸濁液のいずれかの形態で、液体媒質中で溶解、分散または輸送させかつ/または液体媒質から堆積させることができることを意味する。
【0012】
配位子は、それが発光材料の光活性特性に直接寄与すると考えられる場合に「光活性」配位子と呼んでよい。配位子は、それが発光材料の光活性特性に寄与しないと考えられる場合に、「補助」配位子と呼んでよいが、補助配位子は光活性配位子の特性を改変し得る。
【0013】
本明細書で使用されているように、そして当業者によって一般に理解されているように、第1の「最高被占分子軌道」(HOMO)または「最低被占有分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、この第1のエネルギー準位が真空エネルギー準位により近い場合に、第2のHOMOまたはLUMO「よりも大きい」または「よりも高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位との関係において負のエネルギーとして測定されることから、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(マイナス度の少ないIP)に相当する。同様にして、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(マイナス度の少ないEA)に相当する。従来のエネルギー準位図上では、真空準位を最上位として、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位よりもこのような図の最上位に近いところに現われる。
【0014】
本明細書で使用されているように、そして当業者により一般に理解されるように、第1の仕事関数がより高い絶対値を有する場合、第1の仕事関数は第2の仕事関数「よりも大きい」かまたは「よりも高い」。仕事関数は一般に真空準位に対して負の数として測定されることから、これは、「より高い」仕事関数がよりマイナスであることを意味する。従来のエネルギー準位図では、真空準位を最上位として、「より高い」仕事関数は、下向き方向に真空準位からさらに離れたものとして示されている。したがって、HOMOおよびLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数と異なる約束事に従う。
【0015】
OLEDについてのさらなる詳細および上述の定義は、(特許文献4)の中に見出すことができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、陽極層と陰極層の間に位置する有機層を含む有機発光デバイスを提供する。有機層は、ジベンゾセレノフェンを含む化合物、ベンゾ[b]セレノフェンを含む化合物およびベンゾ[c]セレノフェンを含む化合物からなる群から選択された有機セレン材料を含む。本発明の有機発光デバイスの中で用いることができる有機セレン化合物は、以下に本明細書中で開示する。本発明は同様にこのような有機セレン化合物をも提供する。
【0018】
一つの態様において、有機セレン材料はホスト材料であり、有機層はさらにドーパント材料を含む。ドーパント材料は燐光性または蛍光性ドーパント材料であり得る。好ましい態様において、ドーパント材料は燐光性ドーパント材料、例えば下の表1に開示された燐光性ドーパント材料のいずれかである。
【0019】
一つの態様において、本発明の有機発光デバイスは、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、励起子ブロック層、および電子ブロック層からなる群から選択された1つ以上の有機層をさらに含む。
【0020】
一つの態様において、正孔輸送層または電子輸送層は有機セレン材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】別個の電子輸送層をもたない反転型有機発光デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一般に、OLEDは、陽極と陰極の間に配置されこれらに電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、有機層(1又は複数層)中に陽極が正孔を注入し、陰極が電子を注入する。注入された正孔および電子は各々、逆に帯電した電極に向かって移動する。電子および正孔が同じ分子上に局在化した場合、励起されたエネルギー状態を有する局在化電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が、光発光機構を介して緩和するときに、光が放出される。一部の場合には、励起子は、エキシマーまたはエキシプレックス上に局在化され得る。熱緩和などの無放射機構も起こりうるが、一般的には望ましくないものと考えられている。
【0023】
初期のOLEDは、例えば、全体を参照により援用する米国特許第4,769,292号明細書に開示されているように、その一重項状態から光を発する発光分子(「蛍光」)を用いていた。蛍光発光は一般に、10ナノ秒未満の時間枠内で起こる。
【0024】
より最近、三重項状態から光を発する発光材料(「燐光」)を有するOLEDが実証された。全体を参照により援用する、Baldo et al.,「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」,Nature, vol.395,151−154,1998;(「Baldo−I」)およびBaldo et al.,「Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence」,Appl.Phys.Lett.,vol.75,No.3,4−6(1999)(「Baldo−H」)。燐光は、参照により援用する米国特許第7,279,704号明細書の第5〜6欄にさらに詳細に記載されている。
【0025】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも原寸に比例して描かれていない。デバイス100は基板110、陽極115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロック層130、発光層135、正孔ブロック層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、および陰極160を含んでいてよい。陰極160は、第1の導電層162と第2の導電層164を有する複合陰極である。デバイス100は、記述された層を順次被着させることにより製造できる。これらのさまざまな層の特性および機能ならびに例示材料は、参照により援用する米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されている。
【0026】
これらの層の各々についてより多くの例が入手可能である。例えば、可撓性で透明な基板と陽極の組合せは、全体を参照により援用する米国特許第5,844,363号明細書中で開示されている。pドープ型正孔輸送層の一例としては、全体を参照により援用する米国特許出願公開第2003/0230980号明細書の中で開示されている通りの、50:1のモル比でF
4−TCNQでドープされたMTDATAがある。発光材料およびホスト材料の例は、全体を参照により援用するThompsonらに対する米国特許出願第6,303,238号明細書の中で開示されている。n−ドープされた電子輸送層の一例は、全体を参照により援用する米国特許出願公開第2003/0230980号明細書中で開示されている通り、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenである。全体を参照により援用する米国特許第5,703,436号明細書および米国特許第5,707,745号明細書は、透明で導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層が上に重ねられたMg:Agなどの金属の薄層を有する複合陰極を含む陰極の例を開示している。ブロック層(阻止層)の理論と用途は、全体を参照により援用する米国特許第6,097,147号明細書および米国特許出願公開第2003/0230980号明細書中にさらに詳細に記載されている。注入層の例は、全体を参照により援用する米国特許出願公開第2004/0174116号明細書中で提供されている。保護層の説明は、全体を参照により援用する米国特許出願公開第2004/0174116号明細書中に見出すことができる。
【0027】
図2は、反転型OLED200を示す。このデバイスは、基板210、陰極215、発光層220、正孔輸送層225、および陽極230を含む。デバイス200は、記述された層を順次被着させることによって製造することができる。最も一般的なOLED構成は、陽極の上に配置された陰極を有し、デバイス200は陽極230の下に配置された陰極215を有することから、デバイス200は「反転型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において用いてよい。
図2は、デバイス100の構造からいかにして一部の層を除外できるかの一例を提供している。
【0028】
図1および2で示されている単純な重層構造は非限定的な例として提供されているが、本発明の態様はさまざまなその他の構造に関連して使用してよいことが理解される。記載されている具体的材料および構造は、事実上一例であり、その他の材料および構造を使用してもよい。機能的OLEDは、記述されたさまざまな層を異なるやり方で組合わせることによって達成されることができ、あるいは、層は設計、性能およびコスト因子に基づき完全に省かれてもよい。具体的に記述されていないその他の層が含まれていることもできる。具体的に記述されたもの以外の材料を用いてもよい。本明細書中で提供された実施例の多くは単一材料を含むものとしてさまざまな層を記述しているが、ホストとドーパントの混合物、またはより一般的に混合物、などの材料の組合せを使用してよいことが理解される。同様に、層はさまざまな副層を有していてもよい。本明細書中でさまざまな層に付与されている名称は、厳密に限定的であるように意図されていない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220内に注入するので、正孔輸送層または正孔注入層として記述されてもよい。一つの態様において、OLEDは、陰極と陽極の間に配置された「有機層」を有するものとして記述することができる。この有機層は、単一層を含んでいてよく、あるいは、例えば
図1および2に関して記述された通り、異なる有機材料の多重層をさらに含んでいてよい。
【0029】
具体的に記載していない構造および材料、例えば全体を参照により援用するFriendらに対する米国特許第5,247,190号明細書の中に記載されているものなどのポリマー材料で構成されたOLED(PLED)も使用されてよい。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用してもよい。例えば全体を参照により援用するForrestらに対する米国特許第5,707,745号明細書中に記載されているように、OLEDを積重ねてもよい。OLED構造は、
図1および
図2に示されている単純な重層構造から逸脱してもよい。例えば、基板は、全体を参照により援用するForrestらに対する米国特許第6,091,195号明細書中に記載されている通りのメサ構造および/またはBulovicらに対する米国特許第5,834,893号明細書中に記載されている通りのピット構造などの、光のアウトカップリング改善用の角度付き反射面を含んでいてよい。
【0030】
別段の規定のないかぎり、さまざまな態様の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積(deposit)されてよい。有機層については、好ましい方法として、例えば全体を参照により援用する米国特許第6,013,982号明細書および米国特許第6,087,196号明細書に記載されているものなどのインクジェット、熱蒸着法;全体を参照により援用するForrestらに対する米国特許第6,337,102号明細書中に記載されているものなどの有機気相堆積法(OVPD);および全体を参照により援用する米国特許出願第10/233,470号明細書中に記載されているものなどの有機蒸気ジェット印刷(OVJP)がある。その他の適切な被着方法としては、スピンコーティングおよびその他の溶液ベースのプロセスが含まれる。溶液ベースのプロセスは好ましくは窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法として、熱蒸発が含まれる。好ましいパターニング方法としては、マスクを通した堆積、全体を参照により援用する米国特許第6,294,398号明細書および米国特許第6,468,819号明細書中に記載されているものなどの冷間圧接、そしてインクジェットやOVJDなどの一部の堆積方法に付随するパターニングが含まれる。その他の方法を使用してもよい。堆積されるべき材料は、それらの特定の堆積(deposition)方法と相性の良いものにするよう修正されてよい。例えば、好ましくは少なくとも3個の炭素を含む、分枝または非分枝のアルキルおよびアリール基などの置換基を小分子に用いて、溶液処理を受けるその能力を高めてもよい。20個以上の炭素原子を有する置換基を用いてもよく、3〜20個の炭素が好適な範囲である。非対称構造をもつ材料は、対称構造をもつものよりも優れた溶液処理能力を有し得るが、それは非対称材料が低い再結晶化傾向をもちうるからである。デンドリマー置換基を用いて、小分子が溶液処理を受ける能力を高めてもよい。
【0031】
本発明の実施態様にしたがって製造されたデバイスは、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、テレビ、広告掲示板、屋内または屋外の照明および/または信号、ヘッドアップディスプレイ、完全透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話、携帯電話、携帯端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ファインダ、超小型ディスプレイ、車両、大面積壁、劇場または競技場のスクリーンまたは表示板を含めた、多様な消費者製品の中に組み込まれることができる。パッシブマトリックスおよびアクティブマトリックスを含め、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御するためにさまざまな制御機構を使用してよい。デバイスの多くは、人間にとって快適な温度範囲、例えば18℃〜30℃、そしてより好ましくは室温(20〜25℃)で使用するように意図されている。
【0032】
本明細書中に記載されている材料および構造は、OLED以外のデバイスにおいて利用されてよい。例えば、有機太陽電池および有機光検出器などのその他の光電子デバイスが、この材料および構造を利用してよい。さらに一般的には、有機トランジスタなどの有機デバイスがこの材料および構造を利用してよい。
【0033】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールキル(アラルキル)、複素環基、アリール、芳香族基、およびヘテロアリールなどの用語は、当技術分野にとって公知であり、参照により本明細書に援用する米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄に定義されている。
【0034】
本発明は、ジベンゾセレノフェン、ベンゾ[b]セレノフェンおよび/またはベンゾ[c]セレノフェンを含む有機セレン化合物を提供する。本発明はまた、例えばホスト材料としてこのような材料を用いたOLEDデバイスも提供している。
【0035】
本発明の有機セレン化合物は、1、2、3、4個またはそれ以上のジベンゾセレノフェン部分(moiety)、ベンゾ[b]セレノフェン部分、ベンゾ[c]セレノフェン部分、またはそれらの混合したものを含むことができる。ジベンゾセレノフェン部分、ベンゾ[b]セレノフェン部分、ベンゾ[c]セレノフェン部分またはそれらの混合したものは、直接、または1つ以上のその他の分子部分を介して、連結されることができる。
【0036】
一実施態様において、有機セレン化合物は、以下のものからなる群から選択される。
【0042】
上記式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7の各々が、関連する部分内において考えられうるいずれかの位置への任意の置換基を表わし、Arは芳香族基を表わし、2つの分子部分を連結する各々の線はそれぞれの部分上で考えられうるいずれかの位置における2つの部分間の連結を表わしている。各々のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7は、複数の置換を表わしてよい。
【0043】
適切な置換基には、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールキル、複素環基、アリール、およびヘテロアリールが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、置換基は、複素環基、アリール、芳香族基、およびヘテロアリールからなる群から選択される。一実施態様において、置換基は、ベンゼンおよび置換ベンゼンを含む(ただしこれらに限定されない)芳香族基;ベンゾシクロプロペン、ベンゾシクロプロパン、ベンゾシクロブタジエンおよびベンゾシクロブテン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、トリフェニレン、ヘリセン類、コラヌレン、アズレン、アセナフチレン、フルオレン、クリセン、フルオランテン、ピレン、ベンゾピレン、コロネン、ヘキサセン、ピセン、ペリレンなどの多環芳香族基;およびフラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ピロール、インドール、イソインドール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゾ[c]チオフェン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピラゾール、インダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、キノキサリン、アクリジン、ピリミジン、キナゾリン、ピリダジン、シンノリンなどの複素環式芳香族基;そしてそれらの誘導体である。
【0044】
2つの分子部分を連結する線が示す2つの分子部分の間の連結は、単結合または多重結合であり得る。一実施態様において、連結は、それぞれの分子部分内の2つの原子間の単結合である。別の実施態様において、連結は、多重結合、例えば縮合した環を介したものである。
【0045】
別の実施態様において、本発明は、以下のものからなる群から選択される有機セレン化合物、及びその誘導体を提供する。
【化7】
【0060】
ここで、誘導体とは、例えば、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールキル、複素環基、アリール、およびヘテロアリールを含む(ただしこれらに限定されない)置換基により置換された化合物を意図している。
【0061】
一実施態様において、有機セレン化合物は、
【化22】
またはその誘導体、例えば、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールキル、複素環基、アリール、およびヘテロアリールを含む(ただしこれらに限定されない)置換基により置換された化合物である。
【0062】
さらに別の実施態様において、有機セレン化合物は、以下の化合物及びその誘導体からなる群から選択される。
【化23】
【0064】
ここで誘導体とは、例えば、ハロ、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールキル、複素環基、アリール、およびヘテロアリールを含む(ただしこれらに限定されない)置換基により置換された化合物を意図している。
【0065】
本発明の有機セレン化合物は、以下の実施例において示されている方法を含めて(ただしこれに限定されない)、当技術分野において公知の方法によって調製することができる。
【0066】
本発明の有機セレン化合物を含む有機発光デバイスも同様に提供される。このデバイスは、陽極、陰極、および陽極と陰極の間に配置された有機発光層を含むことができる。有機発光層は、ホストおよび燐光性ドーパントを含んでいてよい。一実施態様では、このデバイスは、発光層中のホスト材料として本発明の有機セレン材料を含む。下の表1の中に列挙されているドーパントのいずれでも、ホスト材料としての有機セレン材料と併せて発光層中で用いてよい。好ましい実施態様においては、ドーパントは、表1中の赤色ドーパントのリストから選択された赤色ドーパントである。別の好ましい実施態様においては、ドーパントは、表1中の緑色ドーパントのリストから選択された緑色ドーパントである。さらに別の実施態様においては、ドーパントは、表1中の青色ドーパントのリストから選択された青色ドーパントである。
【0067】
発光層中のドーパントの濃度は、使用される特定のドーパントおよびデバイスの必要条件に基づいて当業者により決定されることができる。
【0068】
有機発光デバイスはさらに、正孔輸送層(HTL)または電子輸送層(ETL)を含むことができる。好ましい実施形態においては、正孔輸送層または電子輸送層は、本発明の有機セレン材料を含む。
【0069】
その他の材料との組合せ
有機発光デバイス内の特定の層のために有用なものとして本明細書中に記載されている有機セレン材料は、デバイス内に存在する多様なその他の材料と組合せた状態で使用されてよい。例えば、本発明の有機セレン材料を発光層のホストとして、表1中で開示された1つ以上の発光性ドーパントと共に用いることができる。
【0070】
この有機セレン材料は、輸送層、ブロック層、注入層、電極、およびOLED内に存在しうるその他の層の中で、表1に開示されているその他の多様なホスト材料と併用されてもよい。
【0071】
以下に記載または言及される材料は、本明細書中に開示されている化合物と組合わせて有用でありうる材料の非限定的な例であり、当業者であれば、文献を調べて、組合せた形で有用でありうるその他の材料を容易に特定することができる。
【0072】
本明細書中に開示した材料に加えておよび/またはそれとの組合せで、数多くの正孔注入材料、正孔輸送材料、ホスト材料、ドーパント材料、励起子/ホールブロック層材料、電子輸送および電子注入材料をOLEDに用いることができる。本明細書中で開示されている材料と組合せてOLEDにおいて用いることができる材料の非限定的な例を、下の表1に列挙している。表1は、非限定的な材料の群、各群についての非限定的な化合物例、そしてその材料を開示している参考文献を列挙している。
【実施例】
【0096】
実施例1:化合物H−1
1. ジベンゾセレノフェンの合成
【化25】
(J.Am.Chem.Soc.1950,72,5753−5754)にしたがって合成された)1,2−ジ(ビフェニル−2−イル)ジセラン10g(21.5mmol)、臭素3.45g(21.5mmol)およびニトロベンゼン30mLの混合物を、3.5時間110℃で加熱した。その後、反応混合物を冷却し、ニトロベンゼンを減圧蒸留によって除去した。その残渣を、溶離剤としてヘキサン中10%の塩化メチレンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製した。9.8gの白色固体を生成物として得て、これをMSによって確認した。
【0097】
2. ジベンゾセレノフェン−4−イルボロン酸
【化26】
4.0g(17.3mmol)のジベンゾセレノフェンと150mLの無水エーテルを窒素下で250mLの3口フラスコ中に添加した。その混合物に対して、11.5mLのBuLi(ヘキサン中1.6M)を室温でゆっくりと添加した。その後、反応混合物を5時間、加熱して還流させた。反応混合物を−78℃まで冷却し、ホウ酸トリメチル5mLを添加した。次にそれを一晩室温で撹拌した。約50mLの1MのHClをその反応混合物に添加した。有機相を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。一緒に合わせた有機相を乾燥するまで蒸発させ、ヘキサン中30%酢酸エチル100mLを、8時間室温で撹拌しながらその固体に添加した。この懸濁液を濾過し、固体をヘキサンで洗浄し、乾燥させて、生成物として白色固体2を得て、これをNMRで確認した。
【0098】
3. 化合物H−1の合成
【化27】
1.0g(3.6mmol)のジベンゾセレノフェン−4−イルボロン酸、1.51g(3.3mmol)のトリフェニレンフェニルトリフレート(以下の実施例3で開示される方法に従って合成されたもの)、0.15g(0.16mmol)のPd
2(dba)
3、0.27g(0.66mmol)のジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、4.2gのK
3PO
4、90mLのトルエン、および10mLの水を、250mLの3口フラスコ中に添加した。この反応混合物を20分間窒素でバブリングし、窒素下で一晩加熱し還流させた。この反応混合物を乾燥させ、溶離剤としてヘキサン中15%塩化メチレンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製した。約1.35gの白色固体を生成物として得て、これをNMRにより確認した。
【0099】
実施例2:化合物H−2
1. 化合物H−2の合成
【化28】
1.67g(6.0mmol)のジベンゾセレノフェン−4−イルボロン酸、1.20g(2.6mmol)のビフェニル−4,4’−ジイルビス(トリフルオロメタンスルホネート)、0.025g(0.027mmol)のPd
2(dba)
3、0.045g(0.11mmol)のジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、1.7gのK
3PO
4、90mLのトルエンおよび10mLの水を、250mLの3口フラスコ中に添加した。この反応混合物を20分間窒素でバブリングし、その後、窒素下で一晩加熱し還流させた。反応混合物を乾燥させ、残渣を、溶離剤としてヘキサン中10%塩化メチレンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製した。約1.31gの白色固体を生成物として得て、これをNMRにより確認した。
【0100】
実施例3:3−(トリフェニレン−2−イル)フェニルトリフルオロメタンスルホネート(トリフェニレンフェニルトリフレート)の調製方法
【化29】
トリフェニレン(19.0g、83mmol)を600mLのニトロベンゼンに添加した。トリフェニレン全てが溶解した後、鉄粉(0.07g、1.25mmol)を添加した。反応フラスコを氷浴中に入れた。50mLのニトロベンゼン中の臭素(20.0g、125mmol)を、添加用漏斗からゆっくりと添加した。その後、反応物を氷浴中で5時間撹拌した。HPLCを行って反応を監視した(TLCは、トリフェニレンとブロモトリフェニレンの分離を示さなかった)。トリフェニレン:2−ブロモトリフェニレン:ジブロモトリフェニレンの比が2:7:1(254nm)に達した時点で、Na
2SO
3溶液を添加することによって反応を止めた。次に混合物をCH
2Cl
2で抽出した。一緒にした有機抽出物をMgSO
4上で乾燥させ、rotovap(回転蒸発)によりCH
2Cl
2を除去した。残ったニトロベンゼンを減圧蒸発により除去して、粗製ブロモトリフェニレン生成物を得て、これをさらに精製することなく用いた。
【0101】
【化30】
【0102】
未反応のトリフェニレン、モノブロモおよびジブロモトリフェニレンの2:7:1の混合物を含む12g(39mmol)のブロモトリフェニレン混合物、13g(86mmol)の3−フェニルボロン酸、0.6g(1.56mmol)2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、および25g(117mmol)三塩基性リン酸カリウム(K
3PO
4)を、丸底フラスコ内で秤量した。150mLのトルエンおよび80mLの水を溶媒としてフラスコに添加した。溶液を窒素でパージし、0.4g(0.39mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)[Pd
2(dba)
3]を添加した。この溶液を12時間、加熱し還流させた。冷却して、有機層を分離し、MgSO
4で乾燥させた。溶離剤としてヘキサン/ジクロロメタン(1/0から3/2への勾配)を用いて、カラムクロマトグラフィにより、トリフェニレンおよびジ−(3−メトキシフェニル)置換トリフェニレンから生成物が容易に分離された。溶媒を回転蒸発によって除去し、生成物である2−(3−メトキシフェニル)トリフェニレンを一晩真空下で乾燥させた。
【0103】
【化31】
【0104】
窒素下にて丸底フラスコ中で、25mLの無水ジクロロメタンに1.8g(5.4mmol)の2−(3−メトキシフェニル)トリフェニレンを溶解させた。この溶液を−78℃まで冷却し、4g(1.5mL、16mmol)の三臭化ホウ素を、注射器からゆっくりと添加した。この溶液を室温まで温め、一晩撹拌した。氷を注意深く添加して、未反応のBBr
3を失活させた。氷の添加によって、3−(トリフェニレン−2−イル)フェノール中間体が沈殿し、ジクロロメタンを加えて溶かした。有機層を分離し、MgSO
4で乾燥させ、回転蒸発によってジクロロメタンを除去し、生成物を真空下で乾燥させた。
【0105】
1.7g(5.3mmol)の3−(トリフェニレン−2−イル)フェノールを、0.84g(10.5mmol)の無水ピリジンおよび100mLの無水ジクロロメタンと共に、窒素下でフラスコに添加した。この溶液を氷浴中で冷却し、注射器からゆっくりと2.97g(10.5mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸無水物(Tf
2O)を添加した。この溶液を室温まで温め、一晩撹拌した。この溶液を水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、溶媒を回転蒸発により除去した。溶離剤としてヘキサン/ジクロロメタンを用いて(1/0から1/1への勾配)カラムクロマトグラフィにより、生成物である3−(トリフェニレン−2−イル)フェニルトリフルオロメタンスルホネートを精製した。
【0106】
合成方法の記載は、全体を参照により本明細書に援用する2008年7月8日出願の国際出願PCT/US08/72452号に対応する米国仮特許出願第60/963,944号明細書の中にも見出すことができる。
【0107】
実施例4:デバイス例
全ての例示デバイスは、高真空(<10
−7Torr)熱蒸着により作製した。陽極電極は1200Åのインジウムスズ酸化物(ITO)である。陰極は、10ÅのLiFとそれに続く1,000ÅのAlで構成した。全てのデバイスは、作製直後に窒素グローブボックス(1ppm未満のH
2OおよびO
2)内で、エポキシ樹脂で封止されたガラス製のフタを用いて封入し、パッケージの内部には水分ゲッターを組み込んだ。
【0108】
デバイス例の有機積層は、ITO表面から順に、正孔注入層(HIL)としての100Åの化合物A、正孔輸送層(HTL)としての300Åの4,4’−ビス[N−(l−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、発光層(EML)としての10または15質量%のIr燐光性化合物でドープされた300Åの本発明の化合物、ETL2としての50ÅのHPTまたは100Åの本発明の化合物、そしてETL1としての450または400ÅのAlq
3(トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)で構成した。
【0109】
比較例1および2は、CBPをホストとして使用するという点を除いてデバイス例と同様に作製した。
【0110】
デバイスの構造およびデータは表2および3にまとめられており、ここで表2は、デバイス構造を示し、表3はこれらのデバイスについて対応する測定結果を示す。本明細書で使用される化合物AおよびB、そしてHPTは、以下の構造を有する:
【化32】
【0111】
【表24】
【0112】
【表25】
【0113】
デバイス例1〜8から、緑色燐光性OLEDにおけるホストとしての化合物H−1およびH−2が高いデバイス効率(1000cd/m
2でLE>40cd/A)を示すことがわかり、これは、ビフェニルまたはトリフェニレンなどのアリールビルディングブロックと連結されたジベンゾセレノフェンが高効率緑色エレクトロホスホレッセンスにとって充分高い三重項エネルギーを有することを表わしている。ホストとして化合物H−1およびH−2を組み込んでいるデバイスの高い安定性は、注目に値する。デバイス例1および比較例2は、ホストが異なるだけである。デバイス例1はホストとして化合物H−1を用い、一方比較例2は、一般的に使用されるホストCBPを用いている。寿命T
80%(これは室温で40mA/cm
2の定電流密度で初期輝度L
oがその値の80%まで低下するまでにかかる時間として定義される)は、それぞれ140時間と105時間であり、デバイス例1はわずかに高いL
oを有する。同様にして、ホストとして化合物H−2を用いたデバイス例5は、比較例2よりもさらに安定している。化合物が強化層(エンハンスメント層)材料(ETL2)としてもうまく機能し得るということも注目に値する。例えばデバイス例8とデバイス例4は共に、それぞれホストおよびETL2層として化合物H−1およびH−2を有する。これらはそれぞれ185および175時間というT
0.8を有し、これは、化合物H−1およびH−2の、強化層材料しての優れた性能を示している。
【0114】
データは、ジベンゾセレノフェンが、燐光性OLEDのための優れたホストおよび強化層(エンハンスメント層)材料であり、ホストとして一般に用いられているCBPに比べて少なくとも同じ効率と安定性の向上をもたらす、ということを示唆している。トリフェニレン含有ベンゾセレノフェンのより共役度の高いバージョン、p−フェニレン(例えば4,4’−ビフェニルなど)を介して連結されたトリフェニレンおよびジベンゾセレノフェン単位は、より低エネルギーの(黄色から赤色の)燐光性OLEDに非常に適しうる。トリフェニレン含有基は、ベンゾセレノフェンのいずれの位置に連結されてもよい。
【0115】
本明細書中に記載されたさまざまな実施態様が単なる一例にすぎず、本発明の範囲を制限するように意図されていない、ということが理解される。例えば、本明細書中に記載された材料および構造は、本発明の精神から逸脱することなくその他の材料および構造で置換されてよい。したがって、特許請求の範囲に記載の本発明は、当業者には明らかであるように、本明細書中に記載された特定の実施例および好ましい実施態様からの変形形態を含んでいてよい。本発明が機能する理由に関するさまざまな理論は、限定することが意図されたものではないということが理解される。