特許第5676523号(P5676523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5676523-電動式流量調節弁の制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676523
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】電動式流量調節弁の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20150205BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20150205BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   F16K31/04 H
   F16K47/02 D
   F16K37/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-117962(P2012-117962)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-245707(P2013-245707A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2013年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120802
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】宮田 充
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−161054(JP,A)
【文献】 特開昭64−044515(JP,A)
【文献】 特開2002−196825(JP,A)
【文献】 特開平06−129568(JP,A)
【文献】 特開2000−130622(JP,A)
【文献】 特開2005−299836(JP,A)
【文献】 特開平09−292047(JP,A)
【文献】 特開2004−116608(JP,A)
【文献】 特開2011−190897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00−31/05,
F16K 37/00,
F16K 39/00−51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁筐内の弁座に接離自在な弁体と、弁体を弁座に接近する閉じ側及び弁座から離隔する開き側に移動させるモータとを備える電動式流量調節弁の制御装置であって、
弁体のチャタリングを検出する検出手段を備え、
弁体の移動中であって、流体の流量変更中に検出手段でチャタリングが検出されたときは、モータの回転速度を、チャタリングが検出されない状態で弁体を移動させるときのモータの回転速度である定常回転速度よりも速くすることを特徴とする電動式流量調節弁の制御装置。
【請求項2】
前記モータはステッピングモータで構成され、チャタリングが検出される度にモータの定常回転速度を段階的に一段ずつ速くすることを特徴とする請求項1記載の電動式流量調節弁の制御装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記弁筐内に流れる流体の流量を検出する流量計で構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の電動式流量調節弁の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯用熱源機等で使用する電動式流量調節弁の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式流量調節弁は、弁筐内の弁座に接離自在な弁体と、弁体を弁座に接近する閉じ側及び弁座から離隔する開き側に移動させるモータとを備えている。また、弁筐内に流れる流体の流量を検出する流量計を付設した電動式流量調節弁も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、流量調節弁では、開度が小さいときに、弁体付近の流体の流れが圧力脈動を起こしやすい高速流の状態となって、弁体の振動、即ち、チャタリングが発生し易くなり、チャタリングによる異常音でユーザーに不快感を与えてしまう。尚、弁体の形状、材質を工夫し、チャタリングを発生し難くすることは可能であるが、経年的に弁体が劣化していくと、チャタリングが発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−299836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、チャタリングの発生でユーザーに与える不快感を軽減できるようにした電動式流量調節弁の制御装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、弁筐内の弁座に接離自在な弁体と、弁体を弁座に接近する閉じ側及び弁座から離隔する開き側に移動させるモータとを備える電動式流量調節弁の制御装置であって、弁体のチャタリングを検出する検出手段を備え、弁体の移動中であって、流体の流量変更中に検出手段でチャタリングが検出されたときは、モータの回転速度を、チャタリングが検出されない状態で弁体を移動させるときのモータの回転速度である定常回転速度よりも速くすることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、チャタリング発生時にモータの回転速度を速くすることにより、弁体がチャタリングを生じなくなる位置まで早く変位する。従って、チャタリングによる異常音の持続時間を短縮して、ユーザーに与える不快感を軽減できる。
【0008】
また、本発明においては、モータがステッピングモータで構成され、チャタリングが検出される度にモータの定常回転速度を段階的に一段ずつ速くすることが望ましい。これによれば、チャタリングが何回も繰り返されるほど弁体が劣化したときは、弁体がモータの出力トルク不足(ステッピングモータは回転速度を速くする程出力トルクが減少する)で指示通りには変位しなくなり、流量調節弁の寿命が尽きたと適切に判断できる。
【0009】
ところで、流量調節弁には、一般的に、弁筐内に流れる流体の流量を検出する流量計が付設されている。そして、弁体のチャタリングが発生すると、流量計の検出流量が脈動変化するため、流量計でチャタリングを検出できる。従って、チャタリングの検出手段を流量計で構成すれば、振動センサ等のチャタリング専用のセンサを設ける必要がなく、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明制御装置の制御対象となる電動式流量調節弁の一例を示す断面図。
図2】チャタリングが発生したときの流量調節弁のモータの回転角度と流量計の検出流量との関係を示すグラフ。
図3】本発明制御装置が行うチャタリング軽減制御の内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、1は、給湯用熱源機の熱交換器に連なる給水路等に介設する電動式流量調節弁を示している。この流量調節弁1は、流入口21と流出口22と内部の弁座23とを有する弁筐2と、弁座23に接離自在な弁体3と、弁体3を弁座23に接近する閉じ側と弁座23から離隔する開き側とに移動するモータ4と、流入口21に装着した、弁筐2内に流れる流体の流量を検出する流量計5とを備えている。
【0012】
弁体3は、モータ4の回転により送りねじ機構6を介して軸方向に進退する弁軸31に外挿されている。送りねじ機構6は、モータ4により回転駆動される雌ねじ部材61と、雌ねじ部材61に螺挿した雄ねじ部材62とで構成され、雄ねじ部材62に弁軸31の尾端部を固定している。また、弁体3をばね32で閉じ側に付勢すると共に、弁軸31の先端に、ばね32の付勢力で弁体3が弁軸31から抜け出ることを阻止する止め輪33を装着している。そして、モータ4の正転と逆転により、弁体3が弁軸31と一緒に閉じ側と開き側とに移動するようにしている。
【0013】
尚、弁筐2内には、弁体3を弁座23と同心状態で摺動自在に支持するガイドスリーブ24が設けられている。また、ガイドスリーブ24の尾端部には、雄ねじ部材62を回り止めした状態で軸方向に摺動自在に支持するガイド部24aが形成されている。
【0014】
流量計5は、流体の流れで回転する、磁気を帯びた複数の羽根部を有する羽根車51と、流入口21の外面に装着したホール素子等の磁気センサ52とで構成されており、羽根車51の各羽根部が磁気センサ52に対向する位置を通過する度に磁気センサ52からパルスが出力される。磁気センサ52は、制御手段たるコントローラ7に接続されており、単位時間当たりの出力パルス数をカウントして、弁筐2内に流れる流体の流量を検出する。
【0015】
ところで、流量調節弁1の低開度領域で発生し易い弁体3のチャタリングは、弁体3の形状、材質を工夫することで抑制することが可能であるが、経年的に弁体3が摩耗等で劣化していくと、チャタリングが発生してしまう。図2は、チャタリングが発生したときの流量調節弁1のモータ4の回転角度と流量計5の検出流量との関係を示している。チャタリングが発生すると、モータ4の回転で弁軸31が変位しても、弁軸31に対し弁体3が振動変位して、モータ4の回転角度が所定範囲に入っている間検出流量が脈動変化する。
【0016】
ここで、チャタリングが発生すると、チャタリングによる異常音でユーザーに不快感を与えてしまう。そこで、本実施形態では、ユーザーに与える不快感を軽減するため、コントローラ7によりチャタリング軽減制御を行っている。以下、この制御について図3を参照して説明する。尚、本実施形態では、モータ4をステッピングモータで構成している。
【0017】
チャタリング軽減制御では、先ず、STEP1で流量を変更する指令が出されたか否かを判別し、流量変更指令が出されたとき、STEP2に進んで、弁体3のチャタリングが検出されたか否かを判別する。具体的には、流量計5の検出流量を監視して、この検出流量が脈動変化したときにチャタリングが検出されたと判別する。
【0018】
チャタリングが検出されないときは、STEP3に進んでモータ4を所定の定常回転速度Ntで回転させる。そして、STEP4で流量計5の検出流量が目標流量になったと判別されたとき、STEP5に進んでモータ4を停止する。
【0019】
一方、チャタリングが検出されたときは、STEP6に進み、モータ4を定常回転速度Ntよりも速いチャタリング対応速度Ncで回転させる。更に、STEP7に進んで、次の流量変更指令が出されたときのモータ4の定常回転速度Ntを現在の定常回転速度Ntよりも所定速度ΔNだけ速い速度に設定した後、STEP4に進む。
【0020】
以上の制御によれば、チャタリング発生時にモータ4の回転速度が速くなって、弁体3がチャタリングを生じなくなる位置まで早く変位する。従って、チャタリングによる異常音の持続時間を短縮して、ユーザーに与える不快感を軽減できる。
【0021】
また、本実施形態のモータ4を構成するステッピングモータは、回転速度を速くする程出力トルクが減少する。そして、上記の制御によれば、チャタリングが検出される度にモータ4の定常回転速度Ntが段階的にΔNずつ速くなるため、チャタリングが何回も繰り返されるほど弁体3が劣化したときは、弁体3がモータ4の出力トルク不足で指示通りには変位しなくなる。この場合は、流量調節弁1の寿命が尽きたと判断して、エラー表示を行う。
【0022】
尚、チャタリング対応速度Ncと定常回転速度Ntとの差Nc−NtはΔN未満であってもよい。但し、ΔNは、チャタリングが然程の回数繰り返されないうちに流量調節弁1の寿命が尽きたと判断されることがないように、あまり大きな値に設定すべきではない。一方、チャタリングによる異常音の持続時間を短縮するにはチャタリング対応速度Ncをできるだけ速くする必要があり、Nc−Nt≧ΔNとすることが望ましい。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、チャタリングの検出手段を流量計5で構成しているが、振動センサでチャタリング検出手段を構成することも可能である。また、モータ4をDCモータ等のステッピングモータ以外のもので構成することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…電動式流量調節弁、2…弁筐、23…弁座、3…弁体、4…モータ、5…流量計、7…コントローラ。
図1
図2
図3