【実施例】
【0045】
本明細書中に明記され、Climax Molybdenumおよび/またはClimax Molybdenum,Ft.Madison Operationsから入手可能なモリブデン金属およびモリブデン酸ナトリウム粉末14、16を用いて、いくつかの実施例を行った。様々な比率の粉末14および16を脱イオン水と組み合わせてスラリー20を形成した。より具体的には、様々な実施例に利用したスラリー20は約20重量%の水(すなわち液体18)を含み、残りはモリブデン金属およびモリブデン酸ナトリウム粉末であった。モリブデン金属粉末のモリブデン酸ナトリウムに対する比率は様々な実施例で異なっており、モリブデン酸ナトリウムは約3重量%から約15重量%までの範囲であった。より具体的には、実施例は3、7、9および15重量パーセントの量のモリブデン酸ナトリウムを含んでいた。
【0046】
次いで、スラリー20を、本明細書に記述した方式でパルス燃焼噴霧乾燥システム22の中に供給した。高温ガス50の脈動流の温度が約465℃〜約537℃の範囲内にあるように制御した。パルス燃焼システム22によりもたらされた高温ガス50の脈動流は、スラリー20から水を実質的に排除して複合金属粉末製品12を形成した。接触域および接触時間は非常に短く、接触域は約5.1cm程度、および接触の時間は0.2マイクロ秒程度であった。
【0047】
得られた金属粉末製品12は、実質的に中身が詰まっており(すなわち、中空でない)概して球状の形状を有するより小さい粒子の凝集体を含んでいた。9重量%のモリブデン酸ナトリウムを含むスラリー20により製造された“未処理の”ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12のSEM写真を
図4に示す。表IおよびIIのデータは、“未処理”の形の、および明記した温度において明記した時間の間水素雰囲気中で焼結または加熱した後の両方での様々な実施例に関して示している。データは、これも表IおよびIIに示しているように、ふるい分けした未処理の材料(+325メッシュのモリブデン(moly))に関しても示している。
【0048】
表I
【0049】
【表1】
【0050】
表II
【0051】
【表2】
【0052】
上記のように、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を用いて様々な金属物品42、例えばスパッタ標的44を形成または製造することができる。次いで、そのスパッタ標的44を用いて、既に記述した方式で、光電池における使用に適したナトリウムを含むモリブデンフィルム(例えばフィルム32’’’)を堆積させることができる。もちろん、他の適用において同様にそのスパッタ標的44を用いてナトリウムを含むモリブデンフィルムを堆積させることができるであろう。
【0053】
一般的に言って、あらゆるそのようなスパッタ標的44は、標的中の通気孔(interconnected porosity)の存在を低減する、または排除するために、標的の寿命を最大限にするために、および標的を交換して外す操作(target change−out operations)の頻度を低減するために高い密度(例えば理論密度の少なくとも約90%)を有するのが望ましい。加えて、そのようなスパッタ標的44は少なくとも約2.5重量%のナトリウム含有量および約6重量%未満の酸素含有量を有しているべきである。また、一般にそのスパッタ標的44はナトリウム、酸素、およびモリブデンに関して実質的に化学的に均質であるのが好ましい。すなわち、ナトリウム、酸素、およびモリブデンの量は標的44全体に渡って約20%よりも大きく異なっているべきではない。また、一般にあらゆるそのような標的44は硬度に関して実質的に物理的に均質であるのが好ましい。すなわち、材料の硬度は所与の標的44にわたって約20%よりも大きく異なるべきではない。
【0054】
ここで、主に
図2、8a、および8bを参照すると、金属物品42(
図2)、例えばスパッタ標的44(
図2、9、および10)等はある量のナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を(すなわち供給原料材料24として)十分な圧力の下で圧縮して予備成形された金属物品82を形成することにより製造することができる。
図8a参照。次いでその予備成形された金属物品82を、熱間等方圧プレスにおける使用に適した容器または型枠84(示していない)に入れることができる。次いでその型枠84を、例えば型枠84上の蓋またはキャップ86を溶接することにより密封し、密封された容器88を作成することができる。
図8b参照。そのキャップ86は、下記でより詳細に記述する方式でその密封された容器88を排気して(evacuated)予備成形された金属物品82を脱気することを可能にするための流体の導管または管90を備えていてよい。
【0055】
予備成形された金属物品82を形成するために用いられる(すなわち、供給原料24としての)ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は、上記の方式でパルス燃焼噴霧乾燥機からのその回収されたままの、または“未処理の”形で用いられてよい。あるいは、そして上記で既に記述したように、その複合金属粉末12は、予備成形された金属物品82のための供給原料24として用いられる前に、例えば加熱26により、分類28により、および/またはそれらの組み合わせによりさらに加工されてよい。
【0056】
加えて、そして粉末12が(例えば工程26において)加熱されるかどうか、または(例えば工程28において)分類されるかどうかに関わらず、一般にはまずその“未処理の”ナトリウム/モリブデン複合金属粉末製品12を、それに低温加熱工程を施すことにより乾燥させるのが好ましいであろう。そのような未処理のナトリウム/モリブデン複合金属粉末製品12の低温乾燥は、噴霧乾燥プロセスの後に粉末12の中に残存している可能性のあるあらゆる残存する水分および/または揮発性化合物を除去するであろう。粉末12の低温乾燥は粉末12の流動性の増大という追加の利益も提供する可能性があり、それは粉末12がその後にふるい分けまたは分類されるならば有益である可能性がある。もちろん、粉末12が上記の工程26に従って加熱されるのであれば、加熱工程26と関係するより高い温度のため、そのような低温乾燥プロセスを実施する必要は無い。
【0057】
例として、1態様において、その低温乾燥プロセスは乾燥雰囲気、例えば乾燥した空気中でのナトリウム/モリブデン複合金属粉末12の、約100℃〜約200℃の範囲の温度までの、約2時間〜24時間の時間の加熱を含んでいてよい。この低温乾燥プロセスを受けたナトリウム/モリブデン複合金属粉末のロットは、50グラムあたり約35秒〜約40秒の範囲のHall流動性を示した。
【0058】
本明細書で記述される実施例の実行のいくつかにおいて、“未処理の”ナトリウム/モリブデン複合金属粉末製品12を使用し、続いてふるい分けまたは分類し、結果として様々な実施例に関して本明細書で明記されている粉末の大きさをもたらした。しかし、実行2の部品4を製作するために用いた粉末は、まずそれに上記で明記した低温乾燥プロセスを施すことにより乾燥させた(工程26と関係するより高い温度での加熱ではないが)。次いで乾燥した粉末12をふるい分けまたは分類し、結果としてその実施例に関して明記された粉末の大きさをもたらした。
【0059】
より具体的には、実行1のプロセスにおいて予備成形された金属物品82を形成するために用いられる“未処理の”粉末12を、それが約105μm(すなわち−150Tylerメッシュ)より小さい粒子を含むようにふるい分けした。実行2のプロセスに関して、様々な予備成形された金属物品82(すなわち部品番号1〜3)はまた、約105μm(すなわち−150Tylerメッシュ)より小さい粒子を含むようにふるい分けされた“未処理の”粉末12を用いて作られた。実行2のプロセスのための予備成形された金属物品82(すなわち部品番号4)を、約53μm〜約300μm(すなわち−50+270Tylerメッシュ)の範囲の大きさを有する粒子を含むようにふるい分けされた乾燥した粉末12を用いて作った。
【0060】
適切な、および/または望まれる大きさの範囲の供給原料材料24を(例えばその“未処理の”形または乾燥した形のどちらかで)提供した後、次いで供給原料24を含むそのナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を圧縮して予備成形された物品82を形成することができる。製造される金属物品42がスパッタ標的44を構成するためのものである、本明細書で示され、記述された特定の代表的な態様において、予備成形された物品82は、
図8aにおいて最も良く分かるような、概して円柱状の形状の本体を含んでいてよい。本明細書で記述された方式で完全に圧密化された後、次いで最終的な金属物品製品42(すなわち、圧密化されたばかりの予備成形された円柱)を切って複数の円盤の形状の断片または切片にすることができる。その円盤の形状の断片または切片を続いて機械加工して1個以上の円盤の形状のスパッタ標的44を形成することができる。
図2、9、および10参照。あるいは、もちろん、他の形状および外形を有する、ならびに他の用途に関して意図された金属物品を本明細書で提供される教示に従って製造することができ、それは本明細書で提供される教示に馴染んだ後当業者に明らかになるであろう。従って、本発明は本明細書で記述される特定の形状、外形、および意図される用途を有する金属物品に限定されるものと考えられるべきではない。
【0061】
1態様において、その予備成形された物品82は一軸加圧プロセスにより形成することができ、ここでその供給原料材料24(
図2)を円筒状の形状のダイス型(示していない)に入れ、粉末状の供給原料材料24をそれがほぼ固体の塊としてふるまうように加圧または圧縮するために軸圧力をかける。一般的に言って、約69MPa(平方インチあたり約5(ショート)トン(tsi))〜約1,103MPa(約80tsi)の範囲の圧縮圧力は、結果として得られる予備成形された物品82が分解すること無くその後の取り扱いおよび加工に持ちこたえることができるような粉末状の供給原料材料24の十分な圧縮をもたらすであろう。あるいは、そのナトリウム/モリブデン複合金属粉末12は、結果として表IIIにおいて明記した密度を有する予備成形された金属物品82の形成をもたらすように圧縮することができる:
表III
【0062】
【表3】
【0063】
。
代わりの態様において、予備成形された物品82を冷間等方圧プレスプロセスにより形成することができ、ここで供給原料材料24(
図2)を適切な型または型枠(示していない)に入れ、粉末状の供給原料材料24を加圧または圧縮して予備成形された物品82を形成するために“冷”間等方圧をかける。一般的に言って、約138MPa(約10tsi)〜約414MPa(約30tsi)の範囲の等方圧は十分な圧縮をもたらすであろう。
【0064】
予備成形された物品82を(例えば一軸プレスにより、または冷間等方圧プレスにより)作った後、それを本明細書で記述された方式で容器84の内部に密封し、加熱し、等方圧をかけることができる。しかし、場合により、“未処理の”予備成形された物品82を、それを容器84の内部に密封する前に、その予備成形された物品82を加熱することによりさらに乾燥させてよい。そのような加熱プロセスは、予備成形された物品82の中に存在する可能性のあるあらゆる水分または揮発性化合物を排除するのに役立つであろう。一般的に言って、そのような加熱は乾燥した不活性な雰囲気(例えばアルゴン)中で、または単に乾燥した空気中で実施することができるであろう。あるいは、そのような加熱は真空中で実施することができるであろう。例として、1態様において、その予備成形された物品82を乾燥した空気中で約100℃〜約200℃の範囲の温度において(約110℃が好ましい)約8時間〜約24時間の範囲の時間の間(約16時間が好ましい)加熱することができる。あるいは、そのその予備成形された物品82を、それがそれ以上の重量の減少を示さなくなるまで加熱することができる。
【0065】
金属物品42(例えばスパッタ標的44)を製造するためのプロセスまたは方法における次の工程には、その予備成形された物品82を熱間等方圧プレスにおける使用に適した容器または型枠84(示していない)に入れることが含まれる。
図8a参照。本明細書で示され、記述された態様において、その容器84は一般に中空の円筒状の形状の部材を含み、それは実質的に中身の詰まった円柱状の形状の予備成形された物品82をぴったりと受け止めるような大きさである。その後、密封された容器88を作るために、型枠84を、例えばふたまたはキャップ86をそれに溶接することにより密封することができる。
図8b参照。キャップ86は密封された容器88を排気することを可能にするための流体の導管または管90を備えていてよい。
【0066】
密封された容器88を構成する様々な構成要素(例えば84、86、および90)は、意図される適用に適した広い範囲の材料のいずれを含んでいてもよい。しかし、個々の材料の選択においては、最終的な金属物品製品42(例えばスパッタ標的44)の中に不必要な混入物または不純物を導入する可能性のある材料を避けるように注意を払うべきである。本明細書で記述したナトリウム/モリブデン粉末12を供給原料24として利用する態様では、その容器の材料は軟(すなわち低炭素)鋼またはステンレス鋼を含んでいてよい。どちらの場合でも、型枠84およびキャップ86からの不純物の拡散を妨げるために、特にそれらが低炭素鋼から製作されている場合に、型枠84およびキャップ86の内側部分をバリヤ材料で裏打ちするのが有益である可能性がある。適切なバリア材料はモリブデン箔(示していない)を含んでいてよいが、他の材料を用いることもできるであろう。
【0067】
予備成形された金属物品82を容器88内部に密封した後、場合によりそれを、容器88を排気して容器88または金属物品82の内部に含まれている可能性のあるあらゆる不必要な水分または揮発性化合物を除去するため、管90を適切な真空ポンプ(示していない)に接続することにより脱気することができる。排気のプロセスの間に容器88を加熱して脱気の手順を促進することができる。脱気プロセスの間に適用することができる真空および温度の程度は特に重要ではなく、例として、1態様において、密封された容器88を約1ミリtorr〜約1,000ミリtorrの範囲の圧力(約750ミリtorrが好ましい)まで排気することができる。一般に、その温度はモリブデンの酸化温度より下(例えば約395〜400℃)であるのが好ましい。例として、1態様において、その温度は約100℃〜約400℃の範囲(約250℃が好ましい)であってよい。その真空および温度は、約1時間〜約4時間の範囲の期間(約2時間が好ましい)の間適用されてよい。一度脱気プロセスが完了したら、混入物が密封された容器88に再度入るのを防ぐため、管90を縮れさせ(crimped)、または別の状況では密封してよい。
【0068】
次いで、密封された容器88の内部に提供された予備成形された金属物品82をさらに加熱し、一方でその密封された容器88に等方圧をかけることもできる。一般的に言って、その予備成形された金属物品82の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な時間の間、その容器88をモリブデン粉末構成要素の最適焼結温度未満である温度(例えば、約1250℃未満の温度等)まで加熱し、一方でそれに等方圧をかけるべきである。例えば、約102メガパスカル(MPa)(約7.5tsi)〜約205MPa(約15tsi)の範囲内であり、約4時間〜約8時間の範囲内の期間の間適用される等方圧は、理論密度の少なくとも約90%、およびより好ましくは理論密度の少なくとも約97%の密度レベルを達成するのに十分であろう。
【0069】
加熱し、等方圧をかけた後、最終的な圧縮された物品を密封された容器88から取り外して最終的な形へと機械加工することができる。本明細書で示され、記述された特定の態様において、モリブデン金属の機械加工に一般的に適用可能な技法および手順に従ってその圧縮された物品を機械加工することができる。しかし、圧縮された物品中に含まれるモリブデン酸ナトリウムは水を吸収すると考えられるため、機械加工の間の水に基づく着色剤および/または潤滑剤の使用は避けるべきである。
【0070】
一般的に言って、そして特に金属物品42を光電池の製作における使用のためにナトリウムを含むモリブデンフィルムを堆積させる目的でスパッタ標的44として用いる予定である場合、その密封された容器88を供給原料材料24のナトリウムを含む構成要素(例えばモリブデン酸ナトリウム)の融解温度のすぐ下の温度にさらし、一方でより高い等方圧も用いるのが好ましいであろう。例えば、実行1のプロセスに従って(すなわち、約1250℃の温度および約102MPaの圧力で)製造されるスパッタ標的44は、
図9において最も良く分かるように、暗い斑点または変色した領域92の形の複数の不均質性を含むことが分かった。その不均質性92は、概してその材料の大部分の全体に渡って存在していた。その後の分析は、その不均質性92が高いレベルの酸素および炭素を含んでいたことを明らかにした。例えば、実行1のプロセスにより製造される試料物質において、その暗い斑点または不均質性は約4.1重量%の酸素(O
2として)および約507重量百万分率(ppm)の炭素を含んでいた。これは、斑点の無い領域94における約2.1重量%の酸素レベルおよび約147ppmの炭素レベルと比較される。
【0071】
驚いたことに、その暗い斑点または不均質性92は、温度を下げる、および等方圧を増大させることによりかなり低減する、または完全に排除することができる。意味深いことに、これは結果として得られる金属物品42の密度を低減すること無く行うことができる。実際、表IVおよびVIにおいて示す試験データにより明示されるように、実行2のプロセスにより製造される金属物品42の密度は、一般に実行1のプロセスにより製造される物品の密度と同等である、そして時にはわずかにそれよりも大きい。
図10において最も良く分かるように、実行2のプロセスにより製造される金属物品42(例えばスパッタ標的44)は視覚的に検出可能な暗い斑点または不均質性を全く示さなかった。
【0072】
さらに、その後の分析は、実行2のプロセスにより製造される金属物品スパッタ標的44はナトリウム、酸素、およびモリブデンに関して実質的に化学的に均質であることを示している。本明細書で記述される個々の実施例の態様において、ナトリウム、酸素、およびモリブデンのレベルは材料全体に渡って約13%未満異なっている。金属物品スパッタ標的44は硬度に関しても実質的に物理的に均質であり、(Rockwell硬度“A”尺度での)硬度変動性は一般に約10%未満である。
【0073】
金属物品スパッタ標的44のナトリウム濃度は一般に2.5重量%以上であり、これは誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)により決定され、酸素レベルは一般に約6重量%未満である(ICPにより決定される)。また、意味深いことに、(すなわち、光電池の製造のためのナトリウムを含むモリブデンフィルムを製造することを意図したスパッタ標的に関して)たとえナトリウムのレベルが少なくとも約2.5重量%であっても、鉄のレベルは約50ppm未満である。スパッタ標的44の純度は、グロー放電質量分析法(GDMS)により決定されるように、ガス(C、O、N、およびH)およびナトリウムを除いて約99.9%を超える。
【0074】
金属物品の実施例
複数の金属物品42を(例えばスパッタ標的44として)本明細書で記述されるナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を用いて製造した。より具体的には、金属物品42を、“実行1”および“実行2”と呼ばれる2種類の異なるプロセスを用いて製造した。実行1のプロセスは、密封された容器88中に配置された予備成形された金属物品82を、約102MPa(約7.5tsi)の等方圧および約1250℃の温度に約8時間の期間の間さらすことを含んでいた。1250℃の温度は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12のモリブデン粉末構成要素の最適焼結温度より下である。
【0075】
実行2のプロセスは、密封された容器88中に配置されたいくつかの予備成形された金属物品82(すなわち部品1〜4)を、約205MPa(約15tsi)の等方圧および約660℃の温度に約4時間の期間の間さらすことを含んでいた。660℃の温度は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12のナトリウムを含む構成要素(例えばモリブデン酸ナトリウム)の融点より下である。
【0076】
上記のように、実行1のプロセスにより製造された金属物品42(例えばスパッタ標的44)は、
図9において最も良く分かるように、材料全体に渡って(例えば暗い斑点の形で)かなりの不均質性92を示した。対照的に、実行2のプロセスにより製造された金属物品42(例えばスパッタ標的44)は、
図10において最も良く分かるように、視覚的に識別可能な不均質性を全く示さなかった。
【0077】
実行1のプロセス:
実行1のプロセスに関して用いられた予備成形された金属物品82は、本明細書で提供された教示に従って製造された“未処理の”ナトリウム/モリブデン金属粉末12から形成された。その未処理のナトリウム/モリブデン金属粉末12は、粒径が約105μm(−150Tylerメッシュ)未満であるようにふるい分けされた。次いでそのふるい分けされた粉末を約225MPa(約16.5tsi)〜約275MPa(約20tsi)の範囲の一軸圧力の下でコールドプレスして予備成形された円柱または物品82をもたらした。次いでその予備成形された円柱82を低炭素鋼の容器84に入れ、本明細書で記述した方式で密封した。
【0078】
密封された容器88内に置いた後(
図8b)、その予備成形された円柱82を、それを既に記述した方式で動的真空(dynamic vacuum)(例えば約750ミリtorr)下で約400℃の温度まで加熱することにより脱気した。次いで、その脱気された密封された容器88に、約1250℃の温度において約8時間の時間の間約102MPa(すなわち、7.375tsi)の等方圧をかけた。次いで得られた圧縮された金属製品(例えば製品42)を薄く切って6枚の円盤の形状の物品にし、続いてそのそれぞれを機械加工して最終的なスパッタ標的製品44を形成した。圧縮された円柱の最上部付近から円盤番号1を得て、圧縮された円柱を下に向かって続く円盤番号2〜6を得た。代表的な機械加工された円盤(すなわちスパッタ標的44)を
図9で描写する。
【0079】
図9に関して分かるように、実行1のプロセスに従って製造された円柱から作られたスパッタ標的44は複数の不均質性92を含んでおり、それは暗い領域または斑点のように見える。その不均質性92は一般にその材料の大部分の全体に渡って存在する。その後の分析は、その不均質性92が高いレベルの酸素および炭素を含んでいたことを明らかにした。加えて、その暗い斑点または不均質性92のレーザーアブレーションICP(誘導結合プラズマ発光分光法)は、タングステンおよびカリウムの、より明るい領域94中に含まれるタングステンおよびカリウムのレベルと比較してより低いレベルを示した。円盤1〜6からのデータを表IVおよびVに示す。
【0080】
より具体的には、表IVはその円盤の密度を立方センチメートルあたりのグラム(g/cc)の単位で示す。表IVにおいて示した密度は、機械加工された円盤の寸法を測定して円盤の体積を算出することにより決定された。次いで測定されたそれぞれの機械加工された円盤の質量をそれの測定された体積で割って密度に行き着いた。理論密度の百分率として表される見かけ密度も示す。表IVは、円盤の外径から約15ミリメートル(mm)の距離における、Rockwell硬度“A”尺度(HRA)で表された暗い斑点92および明るい領域94両方の硬度も示す。
【0081】
表IV
【0082】
【表4】
【0083】
表Vは、実行1のプロセスにより製造された機械加工された円盤(すなわちスパッタ標的44)の様々な化学的特性を示す。より具体的には、円盤1、3、および5の化学的特性を、円盤の異なる外側、中間および内側の位置で、具体的には円盤の外径からそれぞれ約5ミリメートル(mm)、約15mm、および約25mmの位置で決定した。それぞれの位置におけるナトリウム含有量を、原子吸光(AA)およびICP分析技法の両方により決定した。グロー放電質量分析法(GDMS)により決定された鉄、マンガン、タングステン、および銅の量を、重量百万分率(ppm)の単位で表す。
【0084】
表V
【0085】
【表5】
【0086】
実行2のプロセス:
4個(すなわち部品番号1〜4)の予備成形された金属物品82を、実行2のプロセスのために用いた。より具体的には、予備成形された金属物品の部品番号1〜3は、粒径が約105μm(−150Tylerメッシュ)未満であるようにふるい分けされた“未処理の”ナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を用いて作られた。予備成形された金属物品の部品番号4は、乾燥したナトリウム/モリブデン複合金属粉末12を次いでふるい分けして結果として約53μm〜約300μm(−50+270Tylerメッシュ)の大きさの範囲の粒子を有する粒子の混合物をもたらしたものを用いて作られた。
【0087】
予備成形された金属物品部品1を含む密封された容器88はステンレス鋼から製作された。部品2を含む密封された容器は低炭素鋼から製作され、モリブデン箔で裏打ちされた。部品3および4を含む密封された容器は低炭素鋼から製作され、裏打ちされなかった。
【0088】
予備成形された金属物品82(すなわち、部品番号1〜4に対応する)を製作するために用いられた様々な粉末は、約225MPa(約16.5tsi)〜約275MPa(約20tsi)の範囲の一軸圧力の下でコールドプレスされ、上記で示した表IIIにおいて提供した密度を有する予備成形された円柱(例えば、予備成形された金属物品82)をもたらした。具体的には、表IIIにおいて確認される円柱2、5、9、および13を実行2のプロセスにおいて用いた。
【0089】
(例えば、明記されたように、ステンレス鋼または低炭素鋼から製作され、モリブデン箔で裏打ちされた、または裏打ちされていない)様々な容器84の中に入れる前に、予備成形された円柱82の中に含まれた可能性のある残存量の水分および/または揮発性構成要素を除去するために、その予備成形された円柱82を乾燥空気雰囲気中で約16時間の期間の間約110℃の温度に加熱した。次いで、その乾燥した円柱82をそれらのそれぞれの容器に入れ、本明細書で記述した方式で密封した。次いで、その密封された容器88を、本明細書で記述した方式で、その密封された容器を約400℃の温度に加熱して一方でそれらを動的真空(約750ミリtorr)にさらすことにより脱気した。次いで、その脱気された、密封された容器88に約205MPa(すなわち14.875tsi)の等方圧を約4時間の時間の間、約660℃の温度でかけた。
【0090】
次いで、得られた圧縮された金属の円柱(すなわち部品1〜4)を密封された容器88から取り外した。しかし、部品3をその密封された容器から分離するのは不可能であった。それらのそれぞれの容器88からうまく分離された圧縮された金属の円柱(例えば、部品1、2、および4)を、次いで薄く切って複数の円盤の形状の物品を形成した。圧縮された円柱の最上部付近から円盤番号1を得て、それに続く円盤は、円柱を下に向かって下りて増加する円盤の番号を付けた。次いでその円盤を機械加工して最終的なスパッタ標的44を形成した。部品番号2(モリブデン箔で裏打ちされた低炭素鋼の缶の中で製造されたもの)からの代表的な円盤(すなわちスパッタ標的44)を、
図10で描写する。意味深いことに、実行2のプロセスに従って製造された物品42(例えばスパッタ標的円盤44)はいずれも、実行1のプロセスにより製造された物品と関係し、
図9において図説されている不均質性を示さなかった。
【0091】
表VIは、異なる部品番号1、2、および4から作られた円盤の(g/ccの単位での)密度を示す。表VIで示した密度は、機械加工された円盤の寸法を測定してその円盤の体積を算出することにより決定された。次いでそれぞれの機械加工された円盤の測定された質量をその測定された体積で割って密度に行き着いた。理論密度の百分率として表される見かけ密度も示す。表VIは、円盤の外径から約13ミリメートル(mm)の距離における、Rockwell硬度“A”尺度(HRA)で表された円盤の硬度も示す。
【0092】
表VI
【0093】
【表6】
【0094】
表VIIは、実行2のプロセスにより製造された部品1、2、および4から得られた特定の円盤の様々な化学的特性を示す。より具体的には、表VIIは圧縮された円柱の最上部および中間部分から得られた円盤の化学的特性をリストしており、それらは表VIIにおいてそれぞれ(最上部に関して)円盤“T”および(中間に関して)円盤“M”として確認される。最上部“T”および中間“M”の円盤に関する化学的特性を、それぞれの円盤上の2種類の位置、外側の位置“O”および中央の位置“C”において測定した。外側の位置“O”は円盤の外径から約5mm〜約10mmの範囲の位置にあり、一方中央の位置“C”は円盤の外径から約25mm〜約35mmの範囲の位置にあった。それぞれの位置におけるナトリウムおよび酸素含有量をICP分析技法により決定し、それを重量パーセントに換算して示す。グロー放電質量分析法(GDMS)により決定された鉄、タングステン、ケイ素、クロム、コバルト、およびニッケルの量を、重量百万分率の単位で示す。
【0095】
表VII
【0096】
【表7】
【0097】
本明細書で記述されたナトリウム/モリブデン複合金属粉末を用いた金属物品の製造に関して、さらに他の変形が可能である。例えば、別の態様において、閉じたダイス型をナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物で満たすことができる。次いでその粉末を、結果として得られる金属物品の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な温度および圧力において軸方向に加圧することができる。さらにまた別の変形は、ナトリウム/モリブデン複合金属粉末の供給物を提供し、その粉末を圧縮して予備成形された金属物品を形成することを含むことができる。次いでその物品を密封された容器に入れ、モリブデン酸ナトリウムの融点より低い温度まで加熱することができる。次いでその密封された容器を、その物品の密度を理論密度の少なくとも約90%まで増大させるのに十分な縮小率(reduction ratio)で押し出すことができる。
【0098】
本明細書において本発明の好ましい態様を述べたが、適切な修正をそれに加えることができると予想され、それはなお本発明の範囲内に留まるであろう。従って、本発明は以下の特許請求の範囲に従ってのみ解釈されるものとする: