特許第5676572号(P5676572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5676572ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法及びポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676572
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法及びポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/00 20060101AFI20150205BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20150205BHJP
   C08F 220/06 20060101ALN20150205BHJP
【FI】
   C08F6/00
   C08J3/12 ZCEY
   !C08F220/06
【請求項の数】20
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2012-509701(P2012-509701)
(86)(22)【出願日】2011年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2011058829
(87)【国際公開番号】WO2011126079
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2012年9月28日
(31)【優先権主張番号】特願2011-31287(P2011-31287)
(32)【優先日】2011年2月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-179515(P2010-179515)
(32)【優先日】2010年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-88993(P2010-88993)
(32)【優先日】2010年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】町田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】白井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】池内 博之
(72)【発明者】
【氏名】阪本 繁
(72)【発明者】
【氏名】舘 幸次
(72)【発明者】
【氏名】中津留 玲子
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−505003(JP,A)
【文献】 特開2000−143722(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/078298(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/095427(WO,A1)
【文献】 特開平11−349687(JP,A)
【文献】 特表2004−522491(JP,A)
【文献】 特開平10−168129(JP,A)
【文献】 特表2007−529295(JP,A)
【文献】 特表2002−527547(JP,A)
【文献】 特開平05−070597(JP,A)
【文献】 特開昭64−026604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
C08J 3/00− 3/28
C08J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))9〜40[J/g]でゲル粉砕した後に、乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、
上記乾燥工程において、使用される乾燥機が通気ベルト型乾燥機であり、熱風の風速が垂直方向に0.8〜2.5[m/s]であり、
更に表面処理を行うことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法。
(ただし、上記ゲル粉砕エネルギー(2)は、以下の式(2)によって算出される値であり、
GGE(2)[J/g]=
{√3×電圧×(ゲル粉砕時の電流−空運転時の電流)×力率×モーター効率}/
{1秒間にゲル粉砕機に投入される含水ゲル状架橋重合体の重量} ・・・式(2)
上記式(2)における「力率」及び「モーター効率」は、ゲル粉砕時での値であり、ゲル粉砕装置の稼動条件等によって0〜1までの値をとる装置固有の値であり、
電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、含水ゲル状架橋重合体の重量の単位は[g/s]であり、
上記式中の「√3」は、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合であり、単相交流電力で駆動する場合は「√3」を「1」に変更して算出される値である)
【請求項2】
記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]でゲル粉砕することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
(ただし、上記ゲル粉砕エネルギー(GGE)は、以下の式(1)によって算出される値であり、
GGE[J/g]=
{√3×電圧×電流×力率×モーター効率}/
{1秒間にゲル粉砕機に投入される含水ゲル状架橋重合体の重量} ・・・式(1)
上記式(1)における「力率」及び「モーター効率」は、ゲル粉砕時での値であり、ゲル粉砕装置の稼動条件等によって0〜1までの値をとる装置固有の値であり、
電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、含水ゲル状架橋重合体の重量の単位は[g/s]であり、
上記式中の「√3」は、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合であり、単相交流電力で駆動する場合は「√3」を「1」に変更して算出される値である)
【請求項3】
記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕し、当該含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加させことを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記ゲル粉砕工程で得られる粒子状の含水ゲル状架橋重合体の重量平均粒子径(D50)が350〜2000μm、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.2〜1.0であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記ゲル粉砕工程で得られる、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル状架橋重合体の樹脂固形分が10〜80重量%である、請求項〜4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記ゲル粉砕工程において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]で含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕する、請求項の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記重合工程がニーダー重合又はベルト重合である、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記ゲル粉砕工程において、下記(a)、(b)又は(c)をゲル粉砕する、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
(a)ゲルCRCが10〜35[g/g]である含水ゲル状架橋重合体
(b)ゲルExtが0.1〜10重量%である含水ゲル状架橋重合体
(c)ゲルCRCが10〜35[g/g]、かつ、ゲルExtが0.1〜10重量%である含水ゲル状架橋重合体
【請求項9】
上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が40〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕する、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
上記ゲル粉砕工程において、下記(d)、(e)又は(f)をゲル粉砕する、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
(d)モノマーの重合率が90モル%以上である含水ゲル状架橋重合体
(e)中和率が45〜90モル%である含水ゲル状架橋重合体
(f)モノマーの重合率が90モル%以上、かつ、中和率が45〜90モル%である含水ゲル状架橋重合体
【請求項11】
上記ゲル粉砕工程において、ゲル温度が40〜120℃の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕する、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
上記ゲル粉砕工程において、ケーシングの一方の端部に多孔板が設置されたスクリュー型押出機を使用する、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
上記ゲル粉砕工程において、含水ゲル状架橋重合体のゲルExtの増加量が5重量%以下である、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
上記ゲル粉砕工程において、含水ゲル状架橋重合体100重量部に対して、水を0〜4重量部添加する、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
上記ゲル粉砕工程で得られる粒子状の含水ゲル状架橋重合体は、下記(g)、(h)及び(i)の何れか1つ以上の物性を満たす、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
(g)ゲルExtが0.1〜10重量%
(h)ゲルCRCが10〜35[g/g]
(i)樹脂固形分が10〜80重量%
【請求項16】
上記乾燥工程において、通気ベルト型乾燥機に投入する際の、粒子状の含水ゲル状架橋重合体の温度が60〜110℃である、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
分級工程を更に含み、
分級後の吸水性樹脂粒子の重量平均粒子径(D50)が250〜500μmであり、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.50である、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
上記表面処理は、表面架橋工程と同時又は別途に、多価金属塩、カチオン性ポリマー又は無機微粒子の何れか1つ以上を添加する添加工程を更に含む、請求項1〜1の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合が95重量%以上であり、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.50であるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であって、
加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上、吸水速度(FSR)が0.30[g/g/s]以上で、かつ、下記式で規定される内部気泡率が0.1〜2.5%である、請求項1〜18の何れか1項に記載の製造方法で得られることを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
(内部気泡率)[%]={(真密度)−(見かけ密度)}/(真密度)×100
【請求項20】
多価金属塩、カチオン性ポリマー又は無機微粒子の何れか1つ以上を更に含む、請求項19に記載の吸水性樹脂との組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法及びポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末に関する。更に詳しくは、紙オムツや生理用ナプキン等の衛生用品等に用いられる吸水性樹脂粉末の製造方法に関するものであり、優れた吸水性能(特に通液性が高く、吸水速度の早い)ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法及びポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent Polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツ、生理用ナプキン等の吸収物品、更には、農園芸用保水剤、工業用止水材等として、主に使い捨て用途に多用されている。このような吸水性樹脂としては、原料として多くの単量体や親水性高分子が提案されているが、特に、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、その吸水性能の高さから工業的に最も多く用いられている(非特許文献1)。
【0003】
かような吸水性樹脂は、重合工程、乾燥工程、必要により未乾燥物の除去工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程等を経て製造される(特許文献1〜5、及び特許文献50)が、主用途である紙オムツの高性能化に伴って、吸水性樹脂についても多くの機能(物性)が要求されている。具体的には、単なる吸水倍率の高さに限らず、ゲル強度、水可溶分、吸水速度、加圧下吸水倍率、通液性、粒度分布、耐尿性、抗菌性、耐衝撃性(耐ダメージ性)、粉体流動性、消臭性、耐着色性(白色度)、低粉塵等が挙げられる。そのため、表面架橋技術、添加剤、製造工程の変更等、数多くの提案がなされている。
【0004】
上述した物性の中でも、近年、紙オムツでの吸水性樹脂の使用量が増加(例えば、50重量%以上)するに従い、通液性がより重要な因子と見られるようになっている。そして、SFC(Saline Flow Conductivity/特許文献6)やGBP(Gel Bed Permeabilty/特許文献7〜9)等の荷重下通液性や無荷重下通液性の改善方法や改良技術が多く提案されている。
【0005】
又、上記物性において、通液性を含めた複数のパラメーターの組み合わせも多く提案され、耐衝撃性(FI)を規定する技術(特許文献10)、吸水速度(FSR/Vortex)等を規定する技術(特許文献11)、液体拡散性能(SFC)及び60分後の芯吸収量(DA60)の積を規定する技術(特許文献12)が知られている。
【0006】
更に、SFCやGBP等の通液性向上方法として、重合前又は重合中に石膏を添加する技術(特許文献13)、スペーサーを添加する技術(特許文献14)、5〜17[モル/kg]のプロトン化可能な窒素原子を有する窒素含有ポリマーを使用する技術(特許文献15)、ポリアミン及び多価金属イオン又は多価陰イオンを使用する技術(特許文献16)、pH6未満の吸水性樹脂をポリアミンで被覆する技術(特許文献17)、ポリアンモニウムカーボネートを使用する技術(特許文献18)が知られている。この他、水可溶分3%以上でポリアミンを使用する技術、吸い上げ指数(WI)やゲル強度を規定する技術(特許文献19〜21)が知られている。又、着色及び通液性を改善するために、重合時の重合禁止剤であるメトキシフェノールを制御した上で多価金属塩を使用する技術(特許文献22、23)も知られている。更に、粒子を研磨して嵩比重を高く制御する技術する技術(特許文献24)も知られている。
【0007】
又、通液性に加えて、吸水速度も吸水性樹脂の重要な基本物性であり、かかる吸水速度を向上させる方法として、比表面積を向上させて吸水速度を向上させる技術が知られている。具体的には、粒子径を細かく制御する技術(特許文献25)、表面積の大きな微粒子を造粒する技術(特許文献26〜28)、含水ゲルを凍結乾燥して多孔質とする技術(特許文献29)、粒子を造粒と同時に表面架橋する技術(特許文献30〜32)、発泡重合する技術(特許文献33〜48)、重合後に発泡及び架橋する技術(特許文献49)等が提案されている。
【0008】
上記発泡重合において、単量体に使用する発泡剤として、具体的には、炭酸塩を使用する技術(特許文献33〜40)、有機溶媒を使用する技術(特許文献41、42)、不活性ガスを使用する技術(特許文献43〜45)、アゾ化合物を使用する技術(特許文献46、47)、不溶性無機粉末を使用する技術(特許文献48)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6576713号明細書
【特許文献2】米国特許第6817557号明細書
【特許文献3】米国特許第6291636号明細書
【特許文献4】米国特許第6641064号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0287631号明細書
【特許文献6】米国特許第5562646号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0256469号明細書
【特許文献8】米国特許第7169843号明細書
【特許文献9】米国特許第7173086号明細書
【特許文献10】米国特許第6414214号明細書
【特許文献11】米国特許第6849665号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2008/125533号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2007/293617号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2002/0128618号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2005/0245684号明細書
【特許文献16】国際公開第2006/082197号パンフレット
【特許文献17】国際公開第2006/074816号パンフレット
【特許文献18】国際公開第2006/082189号パンフレット
【特許文献19】国際公開第2008/025652号パンフレット
【特許文献20】国際公開第2008/025656号パンフレット
【特許文献21】国際公開第2008/025655号パンフレット
【特許文献22】国際公開第2008/092843号パンフレット
【特許文献23】国際公開第2008/092842号パンフレット
【特許文献24】米国特許第6562879号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2007/015860号明細書
【特許文献26】米国特許第5624967号明細書
【特許文献27】国際公開第2005/012406号パンフレット
【特許文献28】米国特許第5002986号明細書
【特許文献29】米国特許第6939914号明細書
【特許文献30】米国特許第5124188号明細書
【特許文献31】欧州特許第0595803号明細書
【特許文献32】欧州特許第0450922号明細書
【特許文献33】米国特許第5118719号明細書
【特許文献34】米国特許第5154713号明細書
【特許文献35】米国特許第5314420号明細書
【特許文献36】米国特許第5399591号明細書
【特許文献37】米国特許第5451613号明細書
【特許文献38】米国特許第5462972号明細書
【特許文献39】国際公開第95/02002号パンフレット
【特許文献40】国際公開第2005/063313号パンフレット
【特許文献41】国際公開第94/022502号パンフレット
【特許文献42】米国特許第4703067号明細書
【特許文献43】国際公開第97/017397号パンフレット
【特許文献44】国際公開第00/052087号パンフレット
【特許文献45】米国特許第6107358号明細書
【特許文献46】米国特許第5856370号明細書
【特許文献47】米国特許第5985944号明細書
【特許文献48】国際公開第2009/062902号パンフレット
【特許文献49】欧州特許第1521601号明細書
【特許文献50】特開平11−349687号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Modern Superabsorbent Polymer Technology(1998)(特にp.197〜199)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように吸水性樹脂の物性向上を目的として、表面架橋技術、添加剤、製造工程の変更等、数多くの提案がなされている。中でも通液性や吸水速度は、吸水性樹脂の基本物性として重要であり、多くの改良技術がこれまで提案されてきた。
【0012】
しかしながら、通液性と吸水速度は相反する物性であり、一方が向上すれば他方は低下する特徴を有する。これまでの改良技術は何れか一方のみの物性を向上させる技術であり、そのため、一方が向上しても他方は低下しない、或いは双方が向上する技術が必要となっている。
【0013】
そこで本発明の目的は、通液性と吸水速度とを両立(特に吸水速度(FSR)を維持した状態で通液性(SFC)を向上)させた、吸水性樹脂粉末の製造方法及び吸水性樹脂粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、含水ゲル状架橋重合体に適切なせん断・圧縮力を加えながらゲル粉砕(ゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]、又は、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))9〜40[J/g]でゲル粉砕、又は、含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量がゲル粉砕前に対して10,000〜500,000[Da]増加)して得た粒子状の含水ゲル状架橋重合体を乾燥することによって、乾燥後の吸水性樹脂の形状が変化し、通液性と吸水速度を両立(特に吸水速度(FSR)を維持した状態で通液性(SFC)を向上)できることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
即ち、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第1の製造方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]でゲル粉砕した後に、乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うことを特徴とする。
【0016】
又、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第2の製造方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))9〜40[J/g]でゲル粉砕した後に、乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うことを特徴とする。
【0017】
更に、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第3の製造方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕し、当該含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加させた後に、乾燥機での乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うことを特徴とする。
【0018】
更に、上記課題を解決するために、特定の重量平均粒子径、粒度分布の対数標準偏差、及び樹脂固形分のすべての物性を有する粒子状の含水ゲル状架橋重合体を、特定条件下で乾燥し、更に表面処理を行うことで、得られる吸水性樹脂粉末の通液性と吸水速度の両立(特に吸水速度(FSR)を維持した状態で通液性(SFC)を向上)が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
即ち、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第4の製造方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程で得られる粒子状の含水ゲル状架橋重合体の重量平均粒子径(D50)が350〜2000μm、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.2〜1.0であり、上記乾燥工程において、通気ベルト型乾燥機に投入する際の、粒子状の含水ゲル状重合体の樹脂固形分が10〜80重量%であり、上記通気ベルト型乾燥機での乾燥温度が150〜250℃、かつ、熱風の風速が垂直方向(上下方向)に0.8〜2.5[m/s]であり、表面処理工程を更に含むことを特徴とする。
【0020】
上記第1〜4の製造方法を言い換えれば、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体を下記(1)〜(4)の少なくとも一つを満たすゲル粉砕、
(1)ゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]でゲル粉砕、
(2)ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))9〜40[J/g]でゲル粉砕、
(3)含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加、
(4)得られる粒子状の含水ゲル状架橋重合体の重量平均粒子径(D50)が350〜2000μm、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.2〜1.0となるまでゲル粉砕、
を行った後に、乾燥機での乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うことを特徴とする。
【0021】
ただし、ゲル粉砕が上記(4)の場合、通気ベルト型乾燥機に投入する際の、粒子状の含水ゲル状重合体の樹脂固形分が10〜80重量%であり、上記通気ベルト型乾燥機での乾燥温度が150〜250℃、かつ、熱風の風速が垂直方向(上下方向)に0.8〜2.5[m/s]である。
【0022】
ここで、本発明のゲル粉砕は、上記(1)〜(4)の何れか1つ以上を必須に満たし、好ましくは2つ以上、更には3つ以上、特に4つ以上が満たされる。又、乾燥工程では、ゲル粉砕が上記(4)に限らず、好ましくは上記(1)〜(3)のゲル粉砕においても上記通気ベルト型乾燥機での乾燥及びその乾燥条件(熱風の風速等)が適用される。又、更に好ましくは表面架橋、特に後述の共有結合性表面架橋剤及びイオン結合性表面架橋剤が併用される。
【0023】
また、上記課題(吸水性樹脂粉末の通液性と吸水速度の両立(特に吸水速度(FSR)を維持した状態で通液性(SFC)を向上))を解決するために、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末は、粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合が95重量%以上であり、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.50であるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末であって、加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上、吸水速度(FSR)が0.30[g/g/s]以上で、かつ、下記式で規定される内部気泡率が0.1〜2.5%であることを特徴とする。
【0024】
(内部気泡率)[%]={(真密度)−(見かけ密度)}/(真密度)×100
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上記(1)〜(4)のゲル粉砕の少なくとも1つのゲル粉砕によって、含水ゲル状架橋重合体に適切なせん断・圧縮力を与えた後、乾燥し、更に表面処理を行うことによって、通液性能(例えば、SFC)と吸水速度(例えば、FSR)の双方が優れた吸水性樹脂を得ることができる。
【0026】
また、例えば、上記(4)のゲル粉砕等、含水ゲル状架橋重合体に適切なせん断・圧縮力を与えることにより得られる、特定の重量平均粒子径、粒度分布の対数標準偏差、及び樹脂固形分を有する粒子状の含水ゲル状架橋重合体を、特定条件下で乾燥し、更に表面処理を行うことで、従来の製造方法で得られた吸水性樹脂に比べて、通液性(SFC)と吸水速度(FSR)の双方が優れた吸水性樹脂粉末を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程で用いられるスクリュー式押出機の構成を示す概略図である。
図2図2は、吸水性樹脂粉末における、独立気泡(Closed−Cell)と連続気泡(Open−Cell)を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の真密度測定のための、(例えば、粒度850〜150μmの割合が95重量%以上の)吸水性樹脂粉末を45μm未満へ微粉砕する操作を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法及びポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0029】
〔1〕用語の定義
(1−1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。尚、「水膨潤性」とは、ERT442.2−02で規定するCRC(無加圧下吸水倍率)が5[g/g]以上であることをいい、「水不溶性」とは、ERT470.2−02で規定するExt(水可溶分)が0〜50重量%であることをいう。
【0030】
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜設計可能であり、特に限定されるものではないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体であることが好ましい。又、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記性能を維持する範囲内において、表面架橋されたものや添加剤等を含んだ組成物であってもよい。
【0031】
又、本発明では、上記親水性架橋重合体を粉砕し粉末状とした吸水性樹脂であり、便宜上、表面処理又は表面架橋を行う前の吸水性樹脂を「吸水性樹脂粒子」、表面処理又は表面架橋を行った後の吸水性樹脂を「吸水性樹脂粉末」と称する。更に、各工程で得られる形状が異なる吸水性樹脂(形状として、例えば、シート状、繊維状、フィルム状、ゲル状等が挙げられる)であっても、添加剤等を含有した吸水性樹脂組成物であっても、「吸水性樹脂」と総称する。
【0032】
(1−2)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、任意にグラフト成分を含み、繰り返し単位として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、アクリル酸(塩)と称することがある)を主成分とする重合体を意味する。具体的には、重合に用いられる総単量体(内部架橋剤を除く)のうち、アクリル酸(塩)を必須に50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%含む重合体をいう。又、重合体としてポリアクリル酸塩を用いる場合は、必須に水溶性塩を含み、中和塩の主成分として一価塩が好ましく、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩がより好ましく、アルカリ金属塩が更に好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0033】
(1−3)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Assoiations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recommended Test Metods)の略称である。尚、本発明においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に準拠して測定を行う。
【0034】
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(以下、「吸水倍率」と称することもある)を意味する。具体的には、不織布袋中の0.200gの吸水性樹脂を、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して30分間自由膨潤させた後、更に遠心分離機で水切りした後の吸水倍率(単位;[g/g])である。尚、含水ゲル状架橋重合体のCRC(以下、「ゲルCRC」と称する)は、試料を0.4g、自由膨潤時間を24時間にそれぞれ変更して測定を行った。
【0035】
(b)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、0.900gの吸水性樹脂を、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して1時間、2.06kPa(0.3psi、21[g/cm])での荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;[g/g])である。尚、ERT442.2−02では、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的に同一内容である。又、本発明及び実施例では、荷重条件を4.83kPa(0.7psi、49[g/cm])に変更して測定を行った。
【0036】
(c)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.000gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、16時間攪拌した後の溶解ポリマー量(単位;重量%)である。溶解ポリマー量の測定はpH滴定を用いて行う。尚、含水ゲル状架橋重合体の水可溶分(以下、「ゲルExt」と称する)は、試料を5.0g、攪拌時間を24時間にそれぞれ変更して測定を行った。
【0037】
(d)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される粒度分布を意味する。尚、重量平均粒子径(D50)及び粒子径分布幅は欧州特許第0349240号明細書7頁25〜43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。尚、含水ゲル状架橋重合体のPSDの測定方法については後述する。又、粒度測定で使用する標準篩(目開き)は、対象物の粒度によって適宜追加してもよい。例えば、目開きが710μm、600μm等の標準篩を追加すればよい。又、上記欧州特許第0349240号に開示のない測定条件等については、欧州特許第1594556号を適宜参照してもよい。
【0038】
(e)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」は、吸水性樹脂中に残存する単量体(モノマー)量(以下、「残存モノマー」と称する)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、35mmのスターラーチップを用いて500rpmで1時間攪拌した後の溶解したモノマー量(単位;ppm)をいう。溶解モノマー量の測定はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて行う。尚、含水ゲル状架橋重合体の残存モノマーは、試料を2g、攪拌時間を3時間にそれぞれ変更して測定を行い、得られた測定値を含水ゲル状架橋重合体の樹脂固形分当りの重量に換算した値(単位;ppm)とする。
【0039】
(f)「Moisture Content」(ERT430.2−02)
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の含水率を意味する。具体的には、吸水性樹脂1gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;重量%)である。尚、本発明では乾燥温度を180℃に変更し、測定は1サンプルに付き5回行い、その平均値を採用した。又、含水ゲル状架橋重合体の含水率は、試料を2g、乾燥温度を180℃、乾燥時間を16時間にそれぞれ変更して測定を行った。更に、{100−含水率(重量%)}で算出される値を、本発明では「樹脂固形分」とし、吸水性樹脂及び含水ゲル状架橋重合体の双方に適用することができる。
【0040】
(g)「Density」(ERT460.2−02)
「Density」は、吸水性樹脂の嵩比重を意味する。具体的には、吸水性樹脂100gをEDANA規定の装置に投入し、100mL容器に、該吸水性樹脂を自由落下させて充填させた時の、吸水性樹脂の重量(単位;[g/ml])である。
【0041】
(h)「Flow Rate」(ERT450.2−02)
「Flow Rate」は、吸水性樹脂の流下速度を意味する。具体的には、吸水性樹脂100gをEDANA規定の装置に投入した後、該装置最下部の排出口から吸水性樹脂を排出する際、その排出に要した時間(単位;sec)である。
【0042】
(1−4)「通液性」
本発明における「通液性」とは、荷重下又は無荷重下での膨潤ゲルの粒子間を通過する液の流れ性のことをいい、代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity/生理食塩水流れ誘導性)や、GBP(Gel Bed Permeability/ゲル床透過性)がある。
【0043】
「SFC(生理食塩水流れ誘導性)」は、荷重2.07kPaでの吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、米国特許第5669894号に開示されたSFC試験方法に準じて測定される。又、「GBP」は、荷重下又は自由膨張での吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、国際公開第2005/016393号に開示されたGBP試験方法に準じて測定される。
【0044】
(1−5)「FSR」
本発明における「FSR」とは、Free Swell Rateの略称であり、吸水速度(自由膨潤速度)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1gが0.9重量%塩化ナトリウム水溶液20gを吸水する際の速度(単位;[g/g/s])である。
【0045】
(1−6)「ゲル粉砕」
本発明における「ゲル粉砕」とは、重合工程(好ましくは水溶液重合、無攪拌水溶液重合(静置水溶液重合)、特に好ましくはベルト重合)で得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥を容易にすることを目的に、せん断、圧縮力を加えて大きさを小さくし表面積を高くする操作のことをいう。具体的には、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕して、その重量平均粒子径(D50)を300〜3000μm、より好ましくは当該重量平均粒子径(D50)を350〜2000μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)を0.2〜1.0となるように、含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕することをいう。
【0046】
尚、重合機の形式によって得られる含水ゲル状架橋重合体の形状が異なる場合がある。例えば、重合後にゲル粉砕が行われる無攪拌水溶液重合(静置水溶液重合、特にベルト重合)に対してニーダー重合の場合、重合とゲル粉砕が同一装置内で連続的に行われるが、乾燥工程に供給される粒子状の含水ゲル状架橋重合体の重量平均粒子径(D50)が後述した範囲となっていればよく、重合中又は重合後の何れかでゲル粉砕が行われてもよい。
【0047】
(1−7)「水可溶分の重量平均分子量」
本発明における「水可溶分の重量平均分子量」とは、吸水性樹脂を水溶媒に添加した際に溶解する成分(水可溶分)の重量平均分子量について、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した値(単位;daltons/以下、[Da]と略記する。)をいう。即ち、上記(1−3)(c)「Ext」に記載した測定方法で得た溶液をGPC測定した結果である。尚、含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量は、粒子径を5mm以下、更には1〜3mmに細粒化した試料を5.0g、攪拌時間を24時間にそれぞれ変更して測定を行った。
【0048】
(1−8)「ゲル粉砕エネルギー」(GGE,GGE(2))
本発明における「ゲル粉砕エネルギー」とは、含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕する際、ゲル粉砕装置が必要とする単位重量(含水ゲル状架橋重合体の単位重量)あたりの機械的エネルギーをいい、ジャケットを加熱冷却するエネルギーや投入する水・スチームのエネルギーは含まれない。尚、「ゲル粉砕エネルギー」は、英語表記の「Gel Grinding Energy」から「GGE」と略称する。GGEは、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合、以下の式(1)によって算出される。
【0049】
【数1】
【0050】
上記、「力率」及び「モーター効率」は、ゲル粉砕装置の稼動条件等によって変化する装置固有の値であり、0〜1までの値をとる。これらの値は、装置メーカー等への問い合わせ等で知ることができる。又、ゲル粉砕装置が単相交流電力で駆動する場合、GGEは、上記式中の「√3」を「1」に変更して算出することができる。尚、電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、含水ゲル状架橋重合体の重量の単位は[g/s]である。
【0051】
又、本発明においては、含水ゲル状架橋重合体に対して加えられる機械的エネルギーが重要であるため、ゲル粉砕装置が空運転時の電流値を差し引いて、上記ゲル粉砕エネルギーを計算することが好ましい。特に複数の装置でゲル粉砕を行う場合、空運転時の電流値の合計が大きくなるため、空運転時の電流値を差し引いて計算する方法が好適である。この場合のゲル粉砕エネルギーは以下の式(2)によって算出される。尚、上記GGEと区別するため、GGE(2)と表記する。
【0052】
【数2】
【0053】
上記GGE(2)における「力率」及び「モーター効率」は、ゲル粉砕時での値を採用する。尚、空運転時の力率及びモーター効率の値は、空運転時の電流値が小さいこともあり、近似的に上記式(2)のように定義する。上記式(1)及び式(2)における「1秒間にゲル粉砕機に投入される含水ゲル状架橋重合体の重量[g/s]」とは、例えば、含水ゲル状架橋重合体が連続的に定量フィーダーで供給される場合、その供給量が[t/hr]であれば、[g/s]に換算した値をいう。
【0054】
(1−9)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上Y以下」を意味する。又、重量の単位である「t(トン)」は、「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、更に、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」を意味する。又、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」、「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。更に、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0055】
〔2〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法
(2−1)重合工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分とする水溶液を重合して、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称することがある)を得る工程である。
【0056】
(単量体)
本発明で得られる吸水性樹脂粉末は、その原料(単量体)として、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体を使用し、通常、水溶液状態で重合される。単量体水溶液中の単量体(モノマー)濃度としては、10〜80重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、30〜70重量%が更に好ましく、40〜60重量%が特に好ましい。
【0057】
又、上記単量体水溶液の重合により得られる含水ゲルは、吸水性能や残存モノマーの観点から、重合体の酸基の少なくとも一部が中和されていることが好ましい。かかる部分中和塩としては特に限定されないが、吸水性能の観点から、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩から選ばれる一価塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩から選ばれるアルカリ金属塩が更に好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。従って、上記中和に用いられる塩基性物質としては特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)カリウム等の炭酸(水素)塩等の一価の塩基性物質が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0058】
上記中和は、重合前、重合中又は重合後でのそれぞれの形態・状態で行うことができ、例えば、未中和又は低中和(例えば、0〜30モル%)のアクリル酸を重合して得られる含水ゲルを中和、特にゲル粉砕と同時に中和を行うこともできるが、生産性や物性向上等の観点から、重合前のアクリル酸に対して中和を行うことが好ましい。即ち、中和されたアクリル酸(アクリル酸の部分中和塩)を単量体として使用することが好ましい。
【0059】
尚、上記中和における中和率は、特に限定されないが、最終的な吸水性樹脂として10〜100モル%が好ましく、30〜95モル%がより好ましく、45〜90モル%が更に好ましく、60〜80モル%が特に好ましい。又、中和温度についても特に限定されないが、10〜100℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。その他の中和処理条件については、欧州特許第574260号に開示された条件が、本発明に好ましく適用される。尚、中和率が上記範囲である含水ゲルを、下記ゲル粉砕工程において、ゲル粉砕することが好ましい。
【0060】
又、本発明で得られる吸水性樹脂粉末の物性改善を目的として、澱粉、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂又は吸水性樹脂;炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の各種発泡剤;界面活性剤;添加剤等の任意成分を、単量体水溶液、含水ゲル、乾燥重合体又は吸水性樹脂等、本発明の製造工程の何れかにおいて添加することができる。これら任意成分の添加量は、上記水溶性樹脂又は吸水性樹脂の場合、単量体に対して、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0〜3重量%である。一方、上記発泡剤、界面活性剤又は添加剤の場合は0〜5重量%が好ましく、0〜1重量%がより好ましい。尚、上記水溶液樹脂又は吸水性樹脂の添加によって、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物が得られるが、これら澱粉−アクリル酸重合体、PVA−アクリル酸重合体等も本発明ではポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂として扱う。
【0061】
更に、本発明で得られる吸水性樹脂粉末の色調安定性(高温高湿下で長期間保存した際の色調安定性)や耐尿性(ゲル劣化防止)の向上を目的として、キレート剤、α−ヒドロキシカルボン酸化合物、無機還元剤を使用することができ、中でもキレート剤が特に好ましい。これらの使用量としては、吸水性樹脂に対して10〜5000ppmが好ましく、10〜1000ppmがより好ましく、50〜1000ppmが更に好ましく、100〜1000ppmが特に好ましい。尚、上記キレート剤として、米国特許第6599989号や国際公開第2008/090961号に開示される化合物が本発明に適用され、中でも、アミノカルボン酸系金属キレート剤や多価リン酸系化合物が好ましい。
【0062】
又、本発明においては、アクリル酸(塩)を主成分として使用する際、アクリル酸(塩)以外の親水性又は疎水性の不飽和単量体(以下、「他の単量体」を称する)を併用してもよい。かような他の単量体としては特に限定されないが、例えば、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、及びこれらの塩等が挙げられる。他の単量体を使用する場合、その使用量は、得られる吸水性樹脂粉末の吸水性能を損なわない範囲で適宜決定され、特に限定されないが、全単量体の重量に対して、0〜50モル%が好ましく、0〜30モル%がより好ましく、0〜10モル%が更に好ましい。
【0063】
(内部架橋剤)
本発明において、得られる吸水性樹脂粉末の吸水性能の観点から、架橋剤(以下「内部架橋剤」と称することもある)を使用することが好ましい。該内部架橋剤としては特に限定されないが、例えば、アクリル酸との重合性架橋剤、カルボキシル基との反応性架橋剤、又はこれらを併せ持った架橋剤等が挙げられる。
【0064】
上記重合性架橋剤としては、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アリロキシアルカン等分子内に重合性二重結合を少なくとも2個有する化合物が挙げられる。又、上記反応性架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル;プロパンジオール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール等の共有結合性架橋剤、アルミニウム塩等の多価金属化合物等のイオン結合性架橋剤が挙げられる。これらの中でも、吸水性能の観点から、アクリル酸との重合性架橋剤がより好ましく、アクリレート系、アリル系、アクリルアミド系の重合性架橋剤が特に好ましい。これらの内部架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。尚、上記重合性架橋剤と共有結合性架橋剤とを併用する場合、その混合比率は10:1〜1:10が好ましい。
【0065】
又、上記内部架橋剤の使用量は、物性の観点から架橋剤を除く上記単量体に対して、0.001〜5モル%が好ましく、0.002〜2モル%がより好ましく、0.04〜1モル%が更に好ましく、0.06〜0.5モル%が特に好ましく、0.07〜0.2モル%が最も好ましい。更に本発明の特に好ましい形態では、上記重合性架橋剤を好ましくは0.01〜1モル%、より好ましくは0.04〜0.5モル%、更に好ましくは0.07〜0.1モル%使用する。
【0066】
(重合開始剤)
本発明において使用される重合開始剤は、重合形態によって適宜選択され、特に限定されないが、例えば、光分解型重合開始剤、熱分解型重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。
【0067】
上記光分解型重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。又、上記熱分解型重合開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド等のアゾ化合物等が挙げられる。又、上記レドックス系重合開始剤としては、例えば、上記過硫酸塩や過酸化物に、L−アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウム等の還元性化合物を併用した系が挙げられる。更に上記光分解型重合開始剤と熱分解型重合開始剤との併用も、好ましい態様として挙げられる。
【0068】
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体に対して、0.0001〜1モル%が好ましく、0.0005〜0.5モル%がより好ましい。上記重合開始剤の使用量が1モル%を超える場合、吸水性樹脂の色調が悪化する虞がある。又、上記重合開始剤の使用量が0.0001モル%未満の場合、残存モノマーの増加が懸念されるため、好ましくない。
【0069】
(重合方法)
本発明に係る吸水性樹脂粉末の製造方法において、その重合方法は、噴霧液滴重合や逆相懸濁重合で粒子状含水ゲルを得てもよいが、得られる吸水性樹脂粉末の通液性(SFC)及び吸水速度(FSR)並びに重合制御の容易性等の観点から、水溶液重合が採用され、当該水溶液重合はタンク式(サイロ式)の無攪拌重合でもよいが、好ましくはニーダー重合又はベルト重合、より好ましくは連続水溶液重合、更に好ましくは高濃度連続水溶液重合、特に好ましくは高濃度・高温開始連続水溶液重合が採用される。尚、攪拌重合とは、含水ゲル(特に重合率10モル%以上、更には50モル%以上の含水ゲル)を攪拌、特に攪拌及び細分化してながら重合することを意味する。又、無攪拌重合の前後において、単量体水溶液(重合率が0〜10モル%未満)を適宜攪拌してもよい。
【0070】
上記連続水溶液重合として、例えば、米国特許第6987171号、同第6710141号等に記載の連続ニーダー重合や、米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に記載の連続ベルト重合が挙げられる。これらの水溶液重合によって、高生産性で吸水性樹脂粉末を製造することができる。
【0071】
尚、高濃度連続水溶液重合においては、単量体濃度(固形分)を35重量%以上とすることが好ましく、40重量%以上がより好ましく、45重量%以上(上限は飽和濃度)が更に好ましい。又、高温開始連続水溶液重合においては、重合開始温度を30℃以上とすることが好ましく、35℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましく、50℃以上(上限は沸点)が特に好ましい。更に、高濃度・高温開始連続水溶液重合はこれらを組み合わせたものである。
【0072】
上記高濃度・高温開始連続水溶液重合については、米国特許第6906159号、同第7091253号等に開示されているが、該重合方法によって、白色度の高い吸水性樹脂粉末が得られ、更に工業的なスケールでの生産が容易なため、好ましい。
【0073】
従って、本発明に係る製造方法における重合方法は、1ライン当りの生産量が多い巨大スケールでの製造装置に好ましく適用される。尚、上記生産量としては、0.5[t/hr]以上が好ましく、1[t/hr]以上がより好ましく、5[t/hr]以上が更に好ましく、10[t/hr]以上が特に好ましい。
【0074】
又、上記重合は、空気雰囲気下でも実施できるが、着色防止の観点から水蒸気、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気(例えば、酸素濃度1容積%以下)下で実施することが好ましい。更には単量体又は単量体を含む溶液中の溶存酸素を不活性ガスで置換(脱気)(例えば、酸素1[mg/L]未満)した後に、重合することが好ましい。このような脱気を行っても単量体の安定性に優れ、重合前のゲル化が起らず、より高物性で高白色の吸水性樹脂粉末を提供することができる。
【0075】
(2−2)ゲル粉砕工程
本工程は、上述した重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体を細分化して、粒子状の含水ゲル状架橋重合体(以下、「粒子状含水ゲル」と称することもある)を得る工程である。尚、下記(2−4)粉砕工程・分級工程での「粉砕」と区別して、本工程は「ゲル粉砕」という。
【0076】
(ゲル粉砕前の含水ゲルの物性)
本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第1の製造方法)ではゲル粉砕エネルギー(GGE)が一定範囲に制御される。当該製造方法では、ゲル温度、樹脂固形分、ゲルCRC、ゲルExt及び水可溶分の重量平均分子量の何れか1つ以上の物性を、以下の範囲に制御した含水ゲル状架橋重合体(ポリアクリル酸(塩)架橋重合体)をゲル粉砕することが好ましい。
【0077】
即ち、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第1の製造方法)は、例えば、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]でゲル粉砕した後に、乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法である。
【0078】
又、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第2の製造方法)ではゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))が一定範囲に制御される。当該製造方法では、ゲル温度、樹脂固形分、ゲルCRC、ゲルExt及び水可溶分の重量平均分子量の何れか1つ以上の物性を、以下の範囲に制御した含水ゲル状架橋重合体(ポリアクリル酸(塩)架橋重合体)をゲル粉砕することが好ましい。
【0079】
即ち、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第2の製造方法)は、例えば、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))9〜40[J/g]でゲル粉砕した後に、乾燥機での乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法である。
【0080】
尚、従来のゲル粉砕技術は、米国特許第7694900号、同第6565768、及び同第6140395等に開示されているように、できるだけせん断力を与えない技術が主流であったが、本発明は、従来以上のせん断力を与え、水可溶分の重量平均分子量を増加させる程度までせん断することに特徴がある。
【0081】
(a)ゲル温度
ゲル粉砕前の含水ゲルの温度(ゲル温度)は、粒度制御や物性の観点から、40〜120℃が好ましく、60℃〜120℃がより好ましく、60〜110℃がさらに好ましく、65℃から110℃が特に好ましい。上記ゲル温度が40℃未満の場合、含水ゲルの特性上、硬度が増すため、ゲル粉砕時に粒子形状や粒度分布の制御が困難になる虞がある。又、上記ゲル温度が120℃を超える場合、逆に含水ゲルの軟度が増し、粒子形状や粒度分布の制御が困難になる虞がある。かようなゲル温度は、重合温度や重合後の加熱、保温又は冷却等で適宜制御することができる。
【0082】
(b)樹脂固形分
ゲル粉砕前の含水ゲルの樹脂固形分は、物性の観点から、10〜80重量%であり、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜60重量%であり、特に好ましくは50〜60重量%である。上記樹脂固形分が10重量%未満の場合、含水ゲルの軟度が増し、逆に上記樹脂固形分が80重量%を超える場合、含水ゲルの硬度が増すため、粒子形状や粒度分布の制御が困難になる虞があるため、好ましくない。かような含水ゲルの樹脂固形分は、重合濃度や重合中の水分蒸発、重合工程への吸水性樹脂微粉の添加(微粉リサイクル工程)、必要により重合後の水添加や部分乾燥等で適宜制御することができる。
【0083】
尚、ゲル粉砕前の樹脂固形分は、ハサミやカッター等を使用して一辺が5mm以下、好ましくは1〜3mmに切断・細粒化してから、上記(1−3)(f)で述べた乾燥減量によって求められる。また、上記ハサミやカッター等による切断時におけるゲル粉砕エネルギーは、実質的に0である。
【0084】
(c)ゲルCRC
ゲル粉砕前の含水ゲルのCRC(ゲルCRC)は、10〜35[g/g]が好ましく、10〜32[g/g]がより好ましく、10〜30[g/g]がさらに好ましく、15〜30[g/g]が特に好ましい。上記ゲルCRCが10[g/g]未満又は35[g/g]を超える場合、ゲル粉砕時の粒子形状や粒度分布の制御が困難になるため、好ましくない。かようなゲルCRCは、重合時の架橋剤添加量、その他重合濃度等で適宜制御することができる。尚、高CRCを有する吸水性樹脂が好ましいことは周知の事実であるが、本発明において上記ゲルCRCが35[g/g]を超える場合、粒子形状や粒度分布の制御が困難であることが見出された。
【0085】
尚、ゲル粉砕前のゲルCRCは、ハサミやカッター等を使用して一辺が5mm以下、好ましくは1〜3mmに切断・細粒化してから、下記〔実施例〕(a)で述べた測定方法によって求められる。
【0086】
(d)ゲルExt
ゲル粉砕前の含水ゲルの水可溶分(ゲルExt)は、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜8重量%がより好ましく、1〜5重量%が更に好ましい。上記ゲルExtが10重量%を超える場合、ゲル粉砕によるせん断によって増加する水可溶分の重量平均分子量が過剰になり、所望する通液性が得られない虞がある。当該ゲルExtは小さい方が好ましいが、上記(c)ゲルCRCとのバランスや、ゲルExt低減に必要な製造コスト、生産性の低下等の観点から下限値は上記範囲である。
【0087】
尚、ゲル粉砕前のゲルExtは、ハサミやカッター等を使用して一辺が5mm以下、好ましくは1〜3mmに切断・細粒化してから、下記〔実施例〕(b)で述べた測定方法によって求められる。
【0088】
(e)水可溶分の重量平均分子量
ゲル粉砕前の含水ゲルにおける水可溶分の重量平均分子量は、50,000〜450,000[Da]が好ましく、100,000〜430,000[Da]がより好ましく、150,000〜400,000[Da]が更に好ましい。
【0089】
上記水可溶分の重量平均分子量が50,000[Da]未満の場合、ゲル粉砕後に得られる粒子状含水ゲルの粒子径が細かくなり、所望する物性の吸水性樹脂粉末を得ることができない虞がある。又、上記水可溶分の重量平均分子量が450,000[Da]を超える場合、架橋点が少なく必要以上にせん断によるダメージを受けるため、ゲル粉砕後の水可溶分量の増加等、性能低下を招く虞がある。かような水可溶分の重量平均分子量は、重合時の架橋剤添加量や重合濃度、その他必要により連鎖移動剤等で適宜制御することができる。
【0090】
尚、ゲル粉砕前の水可溶分の重量平均分子量は、ハサミやカッター等を使用して一辺が5mm以下、好ましくは1〜3mmに切断・細粒化してから、下記〔実施例〕(c)で述べた測定方法によって求められる。
【0091】
(ゲル粉砕機)
本工程で使用されるゲル粉砕装置としては、特に限定されず、バッチ型又は連続型の双腕型ニーダー等、複数の回転撹拌翼を備えたゲル粉砕機や、1軸押出機、2軸押出機、ミートチョッパー、特にスクリュー型押出機等が挙げられる。
【0092】
中でも、ケーシングの一方の端部に多孔板が設置されたスクリュー型押出機が好ましく、例えば、特開2000−63527号公報に開示されたスクリュー型押出機が挙げられる。以下、図1を用いて説明する。
【0093】
図1に図示したスクリュー型押出機は、ケーシング11、台12、スクリュー13、供給口14、ホッパー15、押出口16、多孔板17、回転刃18、リング19、逆戻り防止部材20、モーター21、筋状突起22等から構成されている。ケーシング11は円筒状であり、その内部にスクリュー13が配置されている。ケーシング11の一方の端部には、含水ゲルを押し出してゲル粉砕する押出口16、その手前に多孔板17が設置され、もう一方の端部は、スクリュー13を回転させるモーター21や駆動系等が配置されている。ケーシング11の下方には台12があり、これによってスクリュー式押出機を安定的に設置することができる。一方、ケーシング11の上方には、含水ゲルを供給する供給口14があり、含水ゲルを供給し易くするため、ホッパー15が備えられている。上記ケーシング11の形状や大きさは、スクリュー13の形状に対応するような円筒状の内面を有していればよく、特に限定されるものではない。又、スクリュー13の回転数は、スクリュー押出機の形状によって異なるため、特に限定されるものではないが、後述するように、スクリュー13の回転数を変化させることが好ましい。又、押出口16の近傍に逆戻り防止部材20や、スクリュー13に配設した筋状突起22等を有することもできる。これらの構成、部材の材質、サイズ、逆戻り部材20やスクリュー13に付属する各種回転刃の素材、その他スクリュー押出機に関連する全ての構成は、上記特開2000−63527号公報に開示された方法に準じて選択することができる。
【0094】
例えば、逆戻り防止部材20は、押出口16近傍での含水ゲルの逆戻りを防止できる構造であれば特に限定されるものではなく、ケーシング11の内壁に設置した螺旋状や同心円状の帯状突起、又はスクリュー13と平行に設置した筋状、粒状、球状若しくは角状の突起等が挙げられる。ゲル粉砕の進行に伴って押出口16付近の圧力が高まると、含水ゲルは供給口14方向に逆戻りしようとするが、逆戻り防止部材20を設置することで、逆戻りを防止しながら含水ゲルをゲル粉砕することができる。
【0095】
(多孔板)
上記ゲル粉砕機の円筒状胴体(ケーシング)部分の出口に備え付けられた多孔板に関して、その厚みや孔径、開孔率は、ゲル粉砕機の単位時間当りの処理量や含水ゲルの性状等によって適宜選択でき、特に限定されないが、多孔板の厚みは3.5〜40mmが好ましく、6〜20mmがより好ましい。又、多孔板の孔径については、3.2〜24mmが好ましく、7.5〜24mmがより好ましい。更に、多孔板の開孔率は、20〜80%が好ましく、30〜55%がより好ましい。尚、孔径(mm)が異なる複数の多孔板を使用する場合は、各多孔板の孔径の単純平均値をそのゲル粉砕機における多孔板の孔径とする。又、当該孔の形状は円形が好ましいが、円形以外の形状(例えば、四角形、楕円形、スリット形等)の場合、その開孔面積を円に換算して孔径(mm)とする。
【0096】
上記多孔板の厚みが3.5mm未満、孔径が24mm超、開孔率が80%超の何れか1つ以上に該当する場合、含水ゲルに十分なせん断・圧縮力を与えることができない虞がある。逆に、上記多孔板の厚みが40mm超、孔径が3.2mm未満、開孔率が20%未満の何れか1つ以上に該当する場合、含水ゲルに過剰なせん断・圧縮力を与えてしまい、物性低下を招く虞があるため、好ましくない。
【0097】
(ゲル粉砕エネルギー(GGE)/ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE2))
本発明に係る吸水性樹脂粉末の製造方法では、ゲル粉砕エネルギー(GGE/Gel Grinding Energey)が一定範囲に制御される。ここで、GGEの制御方法としては、例えば、上記の手法で行え、ゲル粉砕前の含水ゲルの物性、特に樹脂固形分10〜80重量%(更には上記(b))に加えて、ゲル温度、ゲルCRC、ゲルExt及び水可溶分の重量平均分子量の何れか1つ以上の物性を上記範囲に制御した含水ゲル(ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体)をゲル粉砕することが好ましい。かようなゲル粉砕によって、本発明の第1〜3の製造方法におけるGGEやGGE(2)、水可溶分の重量平均分子量の増加幅に加えて、同時又は別途に行われる、本発明の第4の製造方法によって後述する粒度を有する粒子状含水ゲルが得られる。
【0098】
本発明において、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(GGE)は、上限値として、60[J/g]以下が好ましく、50[J/g]以下がより好ましく、40[J/g]以下が更に好ましい。又、下限値としては、18[J/g]以上が好ましく、20[J/g]以上がより好ましく、25[J/g]以上が更に好ましい。例えば、本発明において、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(GGE)は、18〜60[J/kg]であり、好ましくは20〜50[J/g]であり、より好ましくは25〜40[J/kg]である。当該GGEを上記範囲内に制御することで、適切なせん断・圧縮力を含水ゲルに与えながらゲル粉砕することができる。尚、上記ゲル粉砕エネルギー(GGE)は、ゲル粉砕機の空運転時のエネルギーを含んで規定される。
【0099】
また、本発明の第2の製造方法において、ゲル粉砕機の空運転時のエネルギーを除外したゲル粉砕エネルギー(2)によって規定することもできる。即ち、本発明においては、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は、上限値として、40[J/g]以下が好ましく、32[J/g]以下がより好ましく、25[J/g]以下が更に好ましい。又、下限値としては、9[J/g]以上が好ましく、12[J/g]以上がより好ましく、15[J/g]以上が更に好ましい。例えば、本発明において、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は、9〜40[J/kg]であり、好ましくは12〜32[J/g]であり、より好ましくは15〜25[J/kg]である。当該GGEを上記範囲内に制御することで、適切なせん断・圧縮力を含水ゲルに与えながらゲル粉砕することができる。
【0100】
ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを特定条件下で乾燥することで、吸水性樹脂の形状の改善ができ、高通液性と吸水速度の両立を図ることができる。尚、ニーダー重合後でのスクリュー押出機の使用や、複数のスクリュー押出機の使用等、ゲル粉砕が複数の装置で行われる場合には、それぞれの装置で消費されたエネルギーの合計をゲル粉砕エネルギー(GGE)又はゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))とする。
【0101】
(ゲル粉砕領域)
本発明において上記ゲル粉砕は、重合中又は重合後に行われ、より好ましくは重合後の含水ゲルに対して行われるが、ニーダー重合等、重合中にゲル粉砕を行う形態の場合、単量体水溶液が「十分にゲル化」した状態をもって、ゲル粉砕工程とする。
【0102】
例えば、ニーダー重合を採用する場合、重合時間の経過とともに単量体水溶液が含水ゲルに変化していく。即ち、重合開始時の単量体水溶液の攪拌領域、重合途中での一定粘度を有する低重合度の含水ゲルの攪拌領域、重合の進行に伴い一部の含水ゲルのゲル粉砕開始領域、そして、重合後半又は終盤でのゲル粉砕領域が連続的に行われる。従って、重合開始時の「単量体水溶液の攪拌」と終盤での「ゲル粉砕」とを明確に区別するため、「十分にゲル化」した状態をもって判断する。
【0103】
上記「十分にゲル化」とは、重合温度が最大となった時点(重合ピーク温度)以降において、せん断力をかけて含水ゲルを細分化できる状態のことをいう。或いは、単量体水溶液中のモノマーの重合率(別称;転化率。重合率は含水ゲルのpH滴定から算出されるポリマー量と、残存モノマー量とから算出される。)が好ましくは90モル%以上、より好ましくは93モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは97モル%以上となった時点以降において、せん断力をかけて含水ゲルを細分化できる状態のことをいう。即ち、本発明のゲル粉砕工程において、モノマーの重合率が上記範囲である含水ゲルがゲル粉砕される。尚、上記重合ピーク温度を示さない重合反応(例えば、常に一定温度で重合が進行する場合や重合温度が上昇し続ける場合等)の場合、上記モノマーの重合率をもって、「十分にゲル化」を規定する。
【0104】
従って、バッチ式ニーダー重合を採用する場合は、上記重合ピーク温度或いは上記転化率以降でのニーダー重合におけるGGEを測定すればよい。又、連続式ニーダー重合を採用する場合は、重合工程全体での全GGEを、全重合時間に対する上記重合ピーク温度或いは上記転化率以降の重合時間の割合で乗することから求められる(式(3)参照)。
【0105】
【数3】
【0106】
尚、上述したようにバッチ式又は連続式のニーダー重合機を採用した場合であっても、該ニーダー重合後に別途ゲル粉砕を行ってもよい。この場合、別途ゲル粉砕が行われる装置で消費されるエネルギー及び上述したニーダー重合におけるGGE又はGGE(2)との合計を、本発明のGGE又はGGE(2)として評価する。
【0107】
又、上記重合工程がベルト重合の場合、ゲル粉砕を行う前に、重合中又は重合後の含水ゲル、好ましくは重合後の含水ゲルを数10cm程度の大きさに切断又は粗砕することができる。この操作によって、ゲル粉砕装置に含水ゲルを充填し易くなり、ゲル粉砕工程をより円滑に実施することができる。尚、上記切断又は粗砕する手段としては、含水ゲルを練らないように切断又は粗砕できるものが好ましく、例えば、ギロチンカッター等が挙げられる。又、上記切断又は粗砕で得られる含水ゲルの大きさや形状は、ゲル粉砕装置に充填できればよく、特に限定されない。又、粗砕されたゲル片1つの重量が「1秒間にゲル粉砕機に投入される含水ゲル状架橋重合体の重量」の10分の1以下の場合には、粗砕時のエネルギーも粉砕時のGGEとして加算することとする。
【0108】
(ゲル粉砕装置の稼働条件)
本発明のゲル粉砕工程で使用されるゲル粉砕装置が、スクリュー押出機である場合、そのスクリュー押出機のスクリュー軸回転数は、その円筒状胴体(ケーシング)部の内径によって回転羽根の外周速度が変わるため、一概に規定できないが、軸回転数は90〜500rpmが好ましく、100〜400pmがより好ましく、120〜200rpmが更に好ましい。上記軸回転数が90rpm未満の場合、ゲル粉砕に必要なせん断・圧縮力が得られず、又、上記軸回転数が500rpmを超える場合、含水ゲルに与えるせん断・圧縮力が過剰となり、物性低下を招いたり、ゲル粉砕機にかかる負荷が大きくなり破損したりする虞があるため、好ましくない。又、この時の回転羽根の外周速度は0.5〜5[m/s]が好ましく、0.5〜4[m/s]がより好ましい。又、本発明におけるゲル粉砕装置の温度は、含水ゲルの付着等を防ぐために、好ましくは40〜120℃、より好ましくは60〜100℃に加熱又は保温される。
【0109】
(水の使用)
本発明のゲル粉砕工程において、含水ゲルに水を添加してゲル粉砕することもできる。尚、本発明において、「水」は固体、液体、気体の何れかの形態を含むものとする。
【0110】
上記水の添加について、添加方法や添加時期に制限はなく、含水ゲルがゲル粉砕装置内に滞留している間に装置内に水が供給されればよい。又、予め含水ゲルに水を添加したものをゲル粉砕装置に投入してもよい。更に、上記水は「水単独」に限らず、他の添加剤(例えば、界面活性剤、中和用塩基、架橋剤、無機塩等)や水以外の溶媒を加えてもよい。但し、この場合、水含有量を90〜100重量%とすることが好ましく、99〜100重量%がより好ましく、実質100重量%が更に好ましい。
【0111】
本発明において、上記水は、固体、液体、気体の何れの形態でも使用できるが、取り扱い性の観点から、液体及び/又は気体が好ましい。水の供給量としては、含水ゲル100重量部に対して、0〜4重量部が好ましく、0〜2重量部がより好ましい。上記水の供給量が4重量部を超える場合、乾燥時での未乾燥物発生等、不具合が生じる虞がある。
【0112】
上記水を液体で供給する場合、供給時の温度は10〜100℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。又、水を気体で供給する場合、供給時の温度は100〜220℃が好ましく、100〜160℃がより好ましく、100〜130℃が更に好ましい。尚、水を気体で供給する際、その調製方法については特に限定されず、例えば、ボイラーの加熱によって発生する水蒸気を利用する方法、超音波で水を振動させて、水表面から発生する気体状の水を利用する方法等が挙げられる。本発明において、水を気体で供給する場合、大気圧より高圧の水蒸気が好ましく、ボイラーで発生する水蒸気がより好ましい。
【0113】
(添加剤の使用)
上述したように、含水ゲルに水を添加してゲル粉砕することが好ましいが、水以外に他の添加剤や中和剤等を含水ゲルに添加・混練してゲル粉砕することもでき、こうして得られた吸水性樹脂を改質してもよい。具体的には、ゲル粉砕時に、上記(2−1)で述べた塩基性物質を含む水溶液(例えば、10〜50重量%の水酸化ナトリウム水溶液)を添加して中和(特に前述した中和率の範囲内)してもよいし、吸水性樹脂微粉(0.1〜30重量%(対樹脂固形分))を添加して微粉リサイクルを行ってもよい。更に、重合開始剤や還元剤、キレート剤を0.001〜3重量%(対樹脂固形分)、ゲル粉砕時に添加・混合して、残存モノマーの低減や着色改善、耐久性を付与してもよい。
【0114】
(ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルの物性)
本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第3の製造方法)は、含水ゲルのゲル粉砕の際、ゲル粉砕エネルギー(GGE)を18〜60[J/g]とする製造方法を達成手段のひとつとして、含水ゲルの水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]に増加させてなる。
【0115】
即ち、本発明の課題を解決するために、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第3の製造方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕し、当該含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加させた後に、乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法である。
【0116】
又、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第4の製造方法)は、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルの重量平均粒子径(D50)を350〜2000μm、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)を0.2〜1.0とし、更に樹脂固形分を10〜80重量%とする。
【0117】
即ち、本発明の課題を解決するために、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法(第4の製造方法)は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程で得られる粒子状の含水ゲル状架橋重合体の重量平均粒子径(D50)が350〜2000μm、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.2〜1.0であり、上記乾燥工程において、通気ベルト型乾燥機に投入する際の、粒子状の含水ゲル状重合体の樹脂固形分が10〜80重量%であり、上記通気ベルト型乾燥機での乾燥温度が150〜250℃、かつ、熱風の風速が垂直方向に0.8〜2.5[m/s]であり、表面処理工程を更に含むポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法である。
【0118】
(a)粒度
上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)は、上述した本発明のゲル粉砕が適用されるゲル粉砕機(ニーダー、ミートチョパー、スクリュー型押出機等)を用いて粉砕され粒子状にされる。尚、ゲル粒子径は分級や調合等によって制御することができるが、好ましくは本発明のゲル粉砕によってゲル粒子径が制御される。
【0119】
上記ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルの重量平均粒子径(D50)(篩分級で規定)は350〜2000μmであり、より好ましくは400〜1500μm、更に好ましくは500〜1000μmである。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は0.2〜1.0であり、より好ましくは0.2〜0.8、更に好ましくは0.2〜0.7とされる。
【0120】
上記重量平均粒子径が2000μmを超える場合、含水ゲルが受けるせん断・圧縮力が不均一であったり不十分であったりする場合がある。更に、含水ゲルの内部と表面部では乾燥のされ方が異なるため、乾燥後の粉砕によって物性が不均一な粒子が生成し全体として物性が低下する虞がある。又、上記重量平均粒子径が350μm未満の場合、含水ゲルの表面積が高くなり、極端に乾燥され易くなるため、乾燥工程における残存モノマーの低減が不十分となり、後述する(3−5)の残存モノマーが増加する。又、乾燥後の粉砕によって多量の微粉が生成し、上記(2−4)の粒度制御が困難となるだけでなく、通液性(SFC)等の物性が低下する虞がある。尚、含水ゲルの重量平均粒子径を350μm未満にまでゲル粉砕するには、通常のゲル粉砕操作だけでは達成が困難で、別途、特殊な操作、例えば、粉砕後のゲルの分級(例えば、特開平6−107800号公報等)や、ゲル粉砕前の重合時の粒度制御(例えば、逆相懸濁重合でのシャープな粒度のゲル粒子を得る手法;欧州特許第0349240号等)を必要とする。従って、ゲル粉砕に加えて、上述したような特殊な手法の付加は、重合や分級に多量の界面活性剤や有機溶媒が必要となったり、生産性(コストアップ)や物性の悪化(残存モノマーの増加や微粉の増加)等を招いたりし、新たな問題点が生じるため、重量平均粒子径が350μm未満の粒子状含水ゲルとすることは困難であるだけでなく、好ましくない。
【0121】
又、上記対数標準偏差(σζ)は小さい程、均一な乾燥が得られるという観点から好ましいが、上述した重量平均粒子径と同様に、対数標準偏差(σζ)を0.2未満とするには、粉砕後のゲルの分級や、ゲル粉砕前の重合時の粒度制御等、特殊な操作を必要とする。従って、生産性やコストを考慮すると、対数標準偏差(σζ)が0.2未満の粒子状含水ゲルとすることは好ましくなく、実質的にできない。上記粒度に制御する方法として、本発明のゲル粉砕が挙げられ、上記粒度を示すような条件下、特にスクリュー押出機でゲル粉砕すればよい。
【0122】
(b)ゲル粉砕後のゲルCRC
本発明において、ゲル粉砕後における粒子状含水ゲルのゲルCRCは10〜35[g/g]が好ましく、10〜32[g/g]がより好ましく、15〜30[g/g]が更に好ましい。尚、ゲル粉砕後のゲルCRCは、ゲル粉砕前のゲルCRCに対して−1〜+3[g/g]とされることが好ましく、0.1〜2[g/g]がより好ましく、0.3〜1.5[g/g]が更に好ましい。尚、ゲル粉砕時に架橋剤の使用等によってゲルCRCを減少させてもよいが、上記範囲でゲルCRCを上昇させることが好ましい。
【0123】
(c)ゲル粉砕後のゲルExt
本発明において、ゲル粉砕後における粒子状含水ゲルのゲルExtは、0.1〜20重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、0.1〜8重量%がさらに好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましい。又、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルのゲルExt増加量(ゲル粉砕前のゲルExtに対する増加量)は、5重量%以下が好ましく、4重量%以下がより好ましく、3重量%以下が更に好ましく、2重量%以下が特に好ましく、1重量%以下が最も好ましい。又、下限値はマイナス(例えば、−3.0重量%、更には−1.0重量%)でもよいが、通常は0重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上である。具体的には、好ましくは0〜5.0重量%、より好ましくは0.1〜3.0重量%等、上述した上限値と下限値の任意の範囲内となるように、ゲルExtを増加するまでゲル粉砕すればよい。尚、ゲル粉砕時に架橋剤の使用等によってゲルExtを減少させてもよいが、上記範囲でゲルExtを上昇させることが好ましい。ここで、ゲルExt増加量の有効数字は小数点以下1桁であるが、例えば、5重量%と5.0重量%は同義語として扱う。
【0124】
(d)ゲル粉砕後の水可溶分の重量平均分子量
本発明において、ゲル粉砕による、含水ゲルの、水可溶分の重量平均分子量の増加量として、下限値は10,000[Da]以上が好ましく、20,000[Da]以上がより好ましく、30,000[Da]以上がさらに好ましい。また、上限値は、500,000[Da]以下が好ましく、400,000[Da]以下がより好ましく、250,000[Da]以下がさらに好ましく、100,000[Da]以下が特に好ましい。例えば本発明において、ゲル粉砕前の含水ゲルに対する、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルの、水可溶分の重量平均分子量の増加量は、10,000〜500,000[Da]であり、好ましくは20,000〜400,000[Da]、より好ましくは30,000〜250,000[Da]、更に好ましくは100,000[Da]以下である。
【0125】
従来の公知技術によるゲル粉砕では、水可溶分の重量平均分子量の増加は10,000[Da]未満である場合が多いが、本発明では、より多くのゲル粉砕エネルギー(GGE)、即ち、より多くのせん断力、圧縮力を含水ゲルに与えることにより、ポリマー主鎖部分を切断し、水可溶分の重量平均分子量の増加を大きくすることに特徴がある。但し、ゲル粉砕による水可溶分の重量平均分子量の増加が500,000[Da]を超える場合、含水ゲルに過剰な機械的外力が作用し、架橋重合鎖が切断されて過度に水可溶分が増加し、物性が低下するため、好ましくない。
【0126】
(e)ゲル粉砕後の樹脂固形分
本発明において、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルの樹脂固形分は、物性の観点から、10〜80重量%が好ましく、30〜80重量%がより好ましく、50〜80重量%、45〜85重量%、又は45〜70重量%が更に好ましく、50〜60重量%又は45〜60重量%が特に好ましい。ゲル粉砕後の粒子状含水ゲルの樹脂固形分を上記範囲とすることで、乾燥によるCRCの上昇が制御しやすく、又、乾燥によるダメージ(水可溶分の増加等)が少ないため、好ましい。尚、ゲル粉砕後の樹脂固形分は、ゲル粉砕前の樹脂固形分や必要により添加する水、更にはゲル粉砕時の加熱による水分蒸発等によって、適宜制御することができる。
【0127】
(測定点数)
上記ゲル粉砕前の含水ゲル或いはゲル粉砕後の粒子状含水ゲルの物性を評価するには、製造装置から必要量及び頻度でサンプリング及び測定を行う必要がある。本発明では、ゲル粉砕前の含水ゲルの、水可溶分の重量平均分子量を基準にして評価を行うが、この値が十分に平均化された数値となるようにする必要がある。そこで、例えば、連続ニーダーやミートチョッパー等による連続式のゲル粉砕で吸水性樹脂粉末の生産量が1〜20[t/hr]又は1〜10[t/hr]の場合、含水ゲル100kg毎に2点以上、合計で少なくとも10点以上のサンプリング及び測定を行えばよく、又、バッチ式のゲル粉砕(例えば、バッチ式ニーダー)の場合、バッチサンプルから少なくとも10点以上のサンプリング及び測定を行い、粒子状含水ゲルの物性を評価すればよい。
【0128】
(2−3)乾燥工程(本発明の第1〜4の製造方法)
本工程は、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを乾燥し、乾燥重合体を得る工程であり、以下、本発明で好ましく適用される乾燥方法について説明する。下記乾燥方法は、本発明の第1〜4の製造方法に適用することができ、特に第4の製造方法では特定の乾燥温度と熱風の風速が使用されるが、かかる乾燥温度と熱風の風速は第1〜3の製造方法にも好ましく適用され、吸水速度の向上に寄与できる。
【0129】
本発明の乾燥工程における乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水乾燥、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の乾燥方法が採用されるが、好ましくは熱風乾燥、特に露点が40〜100℃の、より好ましくは露点が50〜90℃の、熱風乾燥が採用される。
【0130】
又、乾燥工程で使用される乾燥装置としては、より好ましい態様ではベルト型乾燥機が用いられ、その他必要により、伝熱伝導型乾燥機、輻射伝熱型乾燥機、熱風伝熱型乾燥機、誘電加熱型乾燥機等の1種又は2種以上を併用することができる。中でも、乾燥速度の観点から熱風伝熱型乾燥機(以下、「熱風乾燥機」という)が好ましい。該熱風乾燥機として、通気ベルト(バンド)式、通気回路式、通気縦型式、平行流ベルト(バンド)式、通気トンネル式、通気溝型攪拌式、流動層式、気流式、噴霧式等の熱風乾燥機が挙げられる。本発明では、物性制御の観点から通気ベルト式熱風乾燥機が好ましい。
【0131】
本発明において、粒子状含水ゲルの乾燥方法は上述した種々の方法を採用できるが、本発明の第4の製造方法やその他、第1〜3の製造方法においても、より好ましい態様では通気ベルト型乾燥機の使用が好適であり、通気ベルト式熱風乾燥機が好ましく使用される。かかる通気ベルト式熱風乾燥機を使用する場合、該乾燥機で使用される熱風の風向は、通気ベルト上に積層され静置された含水ゲル層に対して垂直方向(例えば、上下方向の併用、又は上向き方向、下向き方向)が必須である。通気ベルト型乾燥機を使用しない場合や垂直方向の熱風を使用しない場合、均一な乾燥を行えず、通液性等の物性低下を招く虞がある。即ち、横方向の熱風やその他の乾燥機(流動層乾燥、攪拌乾燥等)の使用では、本発明の課題を解決しない。尚、上記「垂直方向」とは、ゲル層(パンチングメタルや金属網上に積層された厚さ10〜300mmの粒子状含水ゲル)に対して、上下(ゲル層の上から下、或いはゲル層の下から上)に通気する状態を指し、上下方向に通気する限り厳密な垂直方向に限定されない。例えば、斜め方向の熱風を用いてもよく、この場合、垂直方向に対して30°以内であり、好ましくは20°以内、より好ましくは10°以内、更に好ましくは5°以内、特に好ましくは0°の熱風が用いられる。
【0132】
以下、本発明の乾燥工程における乾燥条件等について述べる。下記の乾燥条件で乾燥を行うことによって、得られる乾燥重合体を表面処理した吸水性樹脂粉末の通液性及び吸水速度を向上させることができる。
【0133】
(乾燥温度)
本発明の乾燥工程(好ましくは、上記通気ベルト型乾燥機)での乾燥温度は、100〜300℃であり、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜220℃、更に好ましくは170〜200℃である。該乾燥温度を100〜300℃とすることで、乾燥時間の短縮と得られる乾燥重合体の着色低減の両立が可能となる。更に、得られる吸水性樹脂粉末の通液性や吸水速度が向上する傾向が見られた。尚、乾燥温度が300℃を超えると、高分子鎖がダメージを受け、物性が低下する虞がある。又、乾燥温度が100℃未満では、吸水速度に変化はなく、未乾燥物が生成し、後の粉砕工程時に詰まりが生じた。
【0134】
(乾燥時間)
本発明の乾燥工程(好ましくは、上記通気ベルト型乾燥機)での乾燥時間は、粒子状含水ゲルの表面積及び乾燥機の種類等に依存し、目的とする含水率となるように適宜設定すればよいが、好ましくは1分〜10時間、より好ましくは5分〜2時間、更に好ましくは10〜120分間、特に好ましくは20〜60分間である。
【0135】
又、上記(2−2)のゲル粉砕工程から排出された粒子状含水ゲルが乾燥工程に導入されるまでの時間、即ち、粒子状含水ゲルがゲル粉砕機出口から乾燥機入口まで移動する時間は、吸水性樹脂粉末での着色の観点から短い方がよく、具体的には、2時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、30分以内が更に好ましく、10分以内が特に好ましく、2分以内が最も好ましい。
【0136】
(風速)
本発明の乾燥工程において、本発明の課題をより解決するために、上記通気乾燥機、特にベルト型乾燥機での熱風の風速は、垂直方向(上下方向)に、0.8〜2.5[m/s]であり、1.0〜2.0[m/s]が好ましい。上記風速を上記範囲とすることで、得られる乾燥重合体の含水率を所望の範囲に制御できるだけでなく、吸水速度が向上する。上記風速が0.8[m/s]未満の場合、乾燥時間が遅延し、得られる吸水性樹脂粉末の通液性及び吸水速度が劣っていたことが見いだされた。又、上記風速が2.5[m/s]を超える場合、乾燥期間中に粒子状含水ゲルが舞い上がり安定した乾燥が困難であった。
【0137】
尚、上記風速の制御は、本発明の効果を損なわない範囲で行えばよく、例えば、乾燥時間の70%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の範囲で制御すればよい。又、上記風速は、通気ベルト型乾燥機を例として、水平移動するバンド面に対して垂直方向に通過する熱風の平均流速で表す。従って、熱風の平均流速は、該通気ベルト乾燥機に送風される風量を通気ベルトの面積で除すればよい。
【0138】
上記ゲル粉砕工程で得られた特定の粒子径を有する粒子状含水ゲルを、特定の温度及び風速の通気ベルト型熱風乾燥機で乾燥することで、吸水性樹脂粉末の通液性及び吸水速度が向上することが見いだされた。即ち、熱風の風速を上記範囲とすることで、得られる乾燥重合体の吸水速度が向上する。
【0139】
尚、上記特許文献50には、吸水性樹脂のゲル粒子径と乾燥について、水可溶分の低減や乾燥効率等の観点から、平均粒径が0.8〜5mm、好ましくは1〜3mmの範囲内で、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が1.5以下、好ましくは0.8以下となるようにゲル粉砕された粒状(角状)の含水ゲル状重合体を乾燥する技術が開示されている。
【0140】
しかし、当該特許文献50は、竪型切断機による平滑面からなる多面体形状(角状)の含水ゲルについてのゲル制御技術であって、本発明のゲル粉砕とは異なる。更に、得られる吸水性樹脂の吸水速度(FSR)や通液性(SFC)や、乾燥時の特定風速(0.8〜2.5[m/s])、後述する特定の表面架橋(特にイオン結合性架橋剤の併用)について、何ら開示も示唆もない。即ち、本発明は、特許文献50には開示のない乾燥時の特定風速や表面架橋、更にはゲル粉砕エネルギー(GGE、GGE(2))やゲルExtの重量平均分子量の増加[Da]が、得られる吸水性樹脂の吸水速度(FSR)や通液性(SFC)に多大な影響を及ぼすことを見出した。
【0141】
(熱風の露点)
本発明の乾燥工程において、上記通気ベルト型乾燥機で用いられる熱風は、少なくとも水蒸気を含有し、かつ露点が好ましくは30〜100℃、より好ましくは30〜80℃であることが好ましい。熱風の露点や更に好ましくはゲル粒径を上記範囲に制御することで残存モノマーを低減することができ、更に、乾燥重合体の嵩比重の低下を防止することができる。尚、上記露点は、粒子状含水ゲルの含水率が少なくとも10重量%以上、好ましくは20重量%以上の時点での値とする。
【0142】
更に、本発明の乾燥工程において、残存モノマー、吸水性能及び着色等の観点から、乾燥機出口付近(又は、乾燥の終期;例えば、乾燥時間の50%以降)の露点より、乾燥機入口付近(又は、乾燥の初期;例えば、乾燥時間の50%以前)の露点が高いことが好ましい。具体的には、露点が好ましくは10〜50℃、より好ましくは15〜40℃高い熱風を粒子状含水ゲルに接触させることが好ましい。露点を上記範囲に制御することで、乾燥重合体の嵩比重の低下を防止することができる。
【0143】
本発明の乾燥工程において、粒子状含水ゲルを乾燥する場合、該粒子状含水ゲルは通気ベルト型乾燥機のベルト上に、層状となるように連続的に供給され、熱風乾燥される。このとき使用される通気ベルト型乾燥機のベルトの幅は、特に限定されないが、0.5m以上が好ましく、1m以上がより好ましい。又、上限は10m以下が好ましく、5m以下がより好ましい。更に、ベルトの長さは20m以上が好ましく、40m以上がより好ましい。又、上限は100m以下が好ましく、50m以下がより好ましい。
【0144】
又、ベルト上の粒子状含水ゲルの層長(ゲル層の厚み)は、本発明の課題解決の観点から、10〜300mmが好ましく、50〜200mmがより好ましく、80〜150mmが更に好ましく、90〜110mmが特に好ましい。
【0145】
又、ベルト上での粒子状含水ゲルの移動速度は、ベルト幅、ベルト長、生産量、乾燥時間等により適宜設定すればよいが、ベルト駆動装置の負荷、耐久性等の観点から、0.3〜5[m/min]が好ましく、0.5〜2.5[m/min]がより好ましく、0.5〜2[m/min]が更に好ましく、0.7〜1.5[m/min]が特に好ましい。
【0146】
本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法は連続運転に適しており、上述した乾燥工程での各条件を上記範囲に設定することにより、生産性や得られる吸水性樹脂粉末の物性等の向上において、大きな効果を発現する。
【0147】
本発明の乾燥工程で使用される通気ベルト型乾燥機の構造、構成として、以下の仕様のものが好ましい。即ち、通気ベルトとして、金網(例えば、目開き45〜1000μm)やパンチングメタルが例示されるが、好ましくはパンチングメタルが使用される。パンチングメタルの孔の形状としては、特に限定されず、例えば、丸穴、楕円穴、角穴、六角穴、長丸穴、長角穴、菱穴、十字穴やそれら複数形状の併用が例示でき、孔の並び方も千鳥状でも並列状でもよい。更に、ルーバー(出窓)等立体的な孔を形成してもよいが、好ましくは平面状の孔である。又、ピッチ方向は、ベルトの進行方向に対して縦向きでも横向きでも斜め向きでもよく、これらの併用でもよい。
【0148】
更に本発明を達成する上で、乾燥温度、熱風の露点、風量を多段階に変化させることが好ましく、そのため、乾燥機が好ましくは5室以上、より好ましくは6室以上、更に好ましくは8室以上を有する通気ベルト型乾燥機であることが好ましい。上限は生産量等、装置の大きさによって適宜設定されるが、通常、20室程度で十分である。
【0149】
(樹脂固形分)
上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルは、本乾燥工程で乾燥され、乾燥重合体とされるが、その乾燥減量(粉末又は粒子1gを180℃で3時間加熱)から求められる樹脂固形分は、好ましくは80重量%を超え、より好ましくは85〜99重量%、更に好ましくは90〜98重量%、特に好ましくは92〜97重量%である。
【0150】
(粒子状含水ゲルの表面温度)
上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルについて、通気ベルト型乾燥機に投入される直前の粒子状含水ゲルの表面温度は、40〜110℃が好ましく、60〜110℃がより好ましく、60〜100℃が更に好ましく、70〜100℃が特に好ましい。40℃に満たない場合、乾燥時に風船状乾燥物ができ、粉砕時に微粉が多く発生し、物性低下を招く虞がある。乾燥前の粒子状含水ゲルの表面温度が110℃を超える場合、乾燥後の吸水性樹脂の劣化(例えば、水可溶分の増加等)や着色が生じる虞がある。
【0151】
(2−4)粉砕工程、分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を、粉砕・分級して、吸水性樹脂粒子を得る工程である。尚、上記(2−2)ゲル粉砕工程とは、粉砕時の樹脂固形分、特に粉砕対象物が乾燥工程を経ている点(好ましくは、上記樹脂固形分まで乾燥)で異なる。又、粉砕工程後に得られる吸水性樹脂粒子を粉砕物と称することもある。
【0152】
上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を、そのまま吸水性樹脂粉末として使用することもできるが、後述する表面処理工程、特に表面架橋工程での物性向上のため、特定粒度に制御することが好ましい。粒度制御は、本粉砕工程、分級工程に限らず、重合工程、微粉回収工程、造粒工程等で適宜実施することができる。以下、粒度は標準篩(JIS Z8801−1(2000))で規定する。
【0153】
粉砕工程で使用できる粉砕機は、特に限定されないが、例えば、振動ミル、ロールグラニュレーター、ナックルタイプ粉砕機、ロールミル、高速回転式粉砕機(ピンミル、ハンマーミル、スクリューミル)、円筒状ミキサー等を挙げることができる。これらの中でも、粒度制御の観点から、多段のロールミル又はロールグラニュレーターを使用することが好ましい。
【0154】
本分級工程は、以下の粒度となるように分級操作をするが、表面架橋を行う場合には、分級操作は表面架橋工程前に実施するのが好ましく(第1分級工程)、更に表面架橋後にも分級操作(第2分級工程)を実施してもよい。尚、該分級操作は、特に限定されないが、篩を用いた篩い分けでは以下のようにして分級する。即ち、吸水性樹脂粒子の粒子径分布を150〜850μmに設定する場合、例えば、先ず、目開き850μmの篩で上記粉砕物を篩い分け、該篩を通過した粉砕物を目開き150μm又は150μmを超える篩(例えば、200μm)で更に篩い分ける。そして、目開き150μm等の篩上に残存した粉砕物が、所望の粒子径分布を有する吸水性樹脂粒子となる。篩分級以外にも気流分級等、各種の分級機を使用することもできる。
【0155】
本発明で得られる吸水性樹脂粉末の物性向上の観点から、分級後の吸水性樹脂粒子の重量平均粒子径(D50)は、250〜500μmが好ましく、300〜500μmがより好ましく、350〜450μmが更に好ましい。又、目開き150μmの篩(JIS標準篩)を通過する微細な粒子は少ないほどよく、吸水性樹脂粒子全体に対して、通常0〜5重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%が更に好ましい。又、目開き850μm以上(或いは710μm以上)(JIS標準篩)を通過しない巨大な粒子も少ないほどよく、吸水性樹脂粒子全体に対して、通常0〜5重量%が好ましく、0〜3重量%がより好ましく、0〜1重量%が更に好ましい。又、本発明では、粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合、更には150μm以上710μm未満である粒子の割合が、吸水性樹脂粒子全体に対して、好ましくは95重量%以上、より好ましくは98重量%以上(上限は100重量%)に調整される。更に、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、0.20〜0.50が好ましく、0.25〜0.50がより好ましく、0.25〜0.45がさらに好ましく、0.30〜0.40が特に好ましい。これらの粒度は、欧州特許第0349240号明細書7頁25〜43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。尚、粒度測定で使用する標準篩(目開き)は、対象物の粒度によって適宜追加してもよい。例えば、目開きが710μm、600μm等の標準篩を追加すればよい。上記表面架橋前の粒度は、好ましくは表面架橋後、更には最終製品にも適用される。
【0156】
(内部気泡率)
本発明のゲル粉砕、更に好ましくは特定の温度及び風速での乾燥によって得られる吸水性樹脂粉末は、特定の内部気泡率とすることができる。当該吸水性樹脂粉末の内部気泡率及びその好ましい範囲については〔3〕で後述するが、上記粉砕・分級で得られる吸水性樹脂粒子についても同様に適用される。即ち、表面架橋前の吸水性樹脂粒子は、好ましくは、粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合が95重量%以上であり、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.50であって、下記式で規定される内部気泡率が0.1〜2.5%が好ましく、0.2〜2.0%がより好ましく、0.3〜1.7%が更に好ましく、0.5〜1.5%が特に好ましい。上述した内部気泡率や粒度分布を有する吸水性樹脂粒子を表面架橋、特に加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上となるまで表面架橋を行うことによって、吸水速度(FSR)と通液性(SFC)を両立させた吸水性樹脂粉末を提供することができ、本発明の課題をより解決する。
【0157】
(内部気泡率)[%]={(真密度)−(見かけ密度)}/(真密度)×100
尚、表面架橋前の吸水性樹脂として、かかる内部気泡率や粒度分布に限定されるものではないが、以下、本発明の表面架橋について説明する。
【0158】
(2−5)表面処理工程
本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法は、吸水性能(圧力に対する吸収性、通液性、吸収速度等)向上のため、好ましくは表面処理工程を更に含む。表面処理工程は、公知の表面架橋剤及び表面架橋方法を用いて行う表面架橋工程を含み、更に必要に応じてその他の添加工程を含む。
【0159】
(共有結合性表面架橋剤)
本発明で用いることのできる表面架橋剤としては、種々の有機又は無機架橋剤を例示できるが、有機表面架橋剤が好ましく使用できる。物性面で好ましくは、表面架橋剤として、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物又はそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、(モノ、ジ、又はポリ)オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物であり、特に高温での反応が必要な、多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物からなる脱水反応性架橋剤が使用できる。脱水反応性架橋剤を使用しない場合、より具体的には、米国特許第6228930号、同第6071976号、同第6254990号等に例示されている化合物を挙げることが出来る。例えば、モノ,ジ,トリ,テトラ又はプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドール等のエポキシ化合物;エチレンカボネート等のアルキレンカーボネート化合物;オキセタン化合物;2−イミダゾリジノンのような環状尿素化合物等が挙げられる。
【0160】
(溶媒等)
表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部程度で適宜決定される。表面架橋剤に合わせて、水が好ましく使用される。使用される水の量は、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。無機表面架橋剤と有機表面架橋剤とを併用する場合も、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、それぞれ、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量で併用される。
【0161】
また、この際、親水性有機溶媒を使用してもよく、その使用量は、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは0〜10重量部、より好ましくは0〜5重量部の範囲である。又、吸水性樹脂粒子への架橋剤溶液の混合に際し、本発明の効果を妨げない範囲、例えば、好ましくは0〜10重量部、より好ましくは0〜5重量部、更により好ましくは0〜1重量部で、水不溶性微粒子粉体や界面活性剤を共存させてもよい。用いられる界面活性剤やその使用量は米国特許7473739号等に例示されている。
【0162】
(混合)
上記表面架橋剤溶液を吸水性樹脂粒子に混合すると、表面架橋剤溶液中の水等により吸水性樹脂粒子は膨潤する。該膨潤した吸水性樹脂粒子は、加熱により乾燥される。このとき、加熱温度としては80〜220℃であることが好ましい。又、加熱時間は10〜120分であることが好ましい。
【0163】
又、表面架橋剤の混合には、縦型又は横型の高速回転攪拌型の混合機が好適に使用される。該混合機の回転数は100〜10000rpmが好ましく、300〜2000rpmが好ましい。又、滞留時間は180秒以内が好ましく、0.1〜60秒がより好ましく、1〜30秒が更に好ましい。
【0164】
(その他表面架橋方法)
本発明で用いられる表面架橋方法として、上記の表面架橋剤を用いる表面架橋に代わって、ラジカル重合開始剤を用いる表面架橋方法(米国特許第4783510号、国際公開第2006/062258号)や、吸水性樹脂の表面で単量体を重合する表面架橋方法(米国出願公開第2005/048221号、同第2009/0239966号、国際公開第2009/048160号)を用いてもよい。
【0165】
上記表面架橋方法において、好ましく用いられるラジカル重合開始剤は過硫酸塩であり、任意に好ましく用いられる単量体としてアクリル酸(塩)やその他前記した架橋剤があり、好ましく用いられる溶媒として水であり、これらが吸水性樹脂の表面に添加されたのち活性エネルギー線(特に紫外線)や加熱によって、吸水性樹脂表面で架橋重合またはラジカル重合開始剤での架橋反応を行うことで表面架橋が行われる。
【0166】
(イオン結合性表面架橋剤)
本発明では、上述した表面架橋工程と同時又は別途に、多価金属塩、カチオン性ポリマー又は無機微粒子の何れか1つ以上を添加する添加工程を更に含む。即ち、上記有機表面架橋剤以外に無機表面架橋剤を使用又は併用して通液性・吸水速度等を向上させてもよい。上記有機表面架橋剤と同時又は別途使用できる。使用される無機表面架橋剤は2価以上、好ましくは3価若しくは4価値の多価金属の塩(有機塩又は無機塩)又は水酸化物が例示できる。使用できる多価金属としてはアルミニウム、ジルコニウム等が挙げられ、乳酸アルミニウムや硫酸アルミニウムが挙げられる。好ましくは硫酸アルミニウムを含む水溶液である。これら無機表面架橋は有機表面架橋剤と同時又は別途に使用される。多価金属による表面架橋は国際公開第2007/121037号、同第2008/09843号、同第2008/09842号、米国特許第7157141号、同第6605673号、同第6620889号、米国特許出願公開第2005/0288182号、同第2005/0070671号、同第2007/0106013号、同第2006/0073969号に示されている。
【0167】
又、カチオン性ポリマー、特に重量平均分子量5,000〜1,000,000程度を同時又は別途で使用して通液性等を向上させてもよい。使用されるカチオン性ポリマーは、例えば、ビニルアミンポリマー等が好ましく、米国特許第7098284号、国際公開2006/082188号、同第2006/082189号、同第2006/082197号、同第2006/111402号、同第2006/111403号、同第2006/111404号等に例示されている。
【0168】
又、同様に無機微粒子を用いても良い。例えば、二酸化ケイ素等が好ましく、米国特許第7638570号等に例示されている。
【0169】
本願の製法において好ましいのは、上記多価金属、カチオン性ポリマー、無機微粒子の何れか1つ以上を添加する工程を含む吸水性樹脂の製造方法である。これらの添加剤は、上記共有共有結合性表面架橋剤に対して、同時又は別途に併用されることが好ましく、本発明の課題(通液性、吸水速度)をより解決することができる。
【0170】
(表面架橋後の物性)
本発明のゲル粉砕、更に好ましくは特定の温度及び風速での乾燥によって得られる吸水性樹脂粉末は、特定の内部気泡率とすることができる。かかる吸水性樹脂粉末に限定されるものではないが、本発明において好ましくは、表面架橋後の加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上、更には後述の(3−1)の範囲となるまで、又、表面架橋後の無加圧下吸水倍率(CRC)が後述の(3−3)の範囲となるまで、反応温度や反応時間等を適宜調整する等して表面架橋される。
【0171】
本発明のゲル粉砕(第1〜4の製造方法)、更に好ましくは乾燥重合体の粒度制御及び表面架橋によって、吸水速度(FSR)と通液性(SFC)を両立した吸水性樹脂粉末を提供することができ、本発明の課題をより解決する。尚、上述した製造方法を製法の一例とする、本発明の新規な吸水性樹脂粉末については〔3〕において、詳述する。
【0172】
尚、本発明の製造方法では、表面架橋前の吸水性樹脂として、かかる内部気泡率や粒度分布に限定されるものではない。
【0173】
(2−6)その他の工程(微粉リサイクル工程等)
上記工程以外に、必要により、蒸発モノマーのリサイクル工程、造粒工程、微粉除去工程、微粉リサイクル工程等を設けてもよく、経時色調の安定性効果やゲル劣化防止等のために、上記各工程の何れか一部又は全部に、以下の添加剤を必要により使用してもよい。即ち、水溶性又は水不溶性のポリマー、滑剤、キレート剤、消臭剤、抗菌剤、水、界面活性剤、水不溶性微粒子、酸化防止剤、還元剤等を、吸水性樹脂に対して、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0.01〜10重量%を添加混合することができる。これらの添加剤は、表面処理剤として使用することもできる。
【0174】
又、本発明の製造方法において、微粉リサイクル工程を含むことができる。該微粉リサイクル工程とは、乾燥工程及び必要により粉砕工程、分級工程で発生する微粉(特に粒子径150μm以下の粉体を70重量%以上含む微粉)を分離した後、そのままの状態で、或いは水和して、重合工程や乾燥工程にリサイクルする工程をいい、米国特許出願公開第2006/247351号や米国特許第6228930号等に記載された方法を適用することができる。
【0175】
更に、目的に応じて、酸化剤、酸化防止剤、水、多価金属化合物、シリカや金属石鹸等の水不溶性無機又は有機粉末、消臭剤、抗菌剤、高分子ポリアミン、パルプや熱可塑性繊維等を吸水性樹脂中に0〜3重量%、好ましくは0〜1重量%添加してもよい。
【0176】
(2−7)まとめ
上記第1〜4の製造方法を言い換えれば、本発明の吸水性樹脂粉末の製造方法は、アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体を下記(1)〜(4)の少なくとも一つを満たすゲル粉砕、
(1)ゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]でゲル粉砕、
(2)ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))9〜40[J/g]でゲル粉砕、
(3)含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加、
(4)得られる粒子状の含水ゲル状架橋重合体の重量平均粒子径(D50)が350〜2000μm、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.2〜1.0となるまでゲル粉砕、を行った後に、乾燥機での乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うことを特徴とする。
【0177】
ただし、ゲル粉砕が上記(4)の場合、乾燥には通気(ベルト型)乾燥機が用いられ、通気(ベルト型)乾燥機に投入する際の、粒子状の含水ゲル状重合体の樹脂固形分が10〜80重量%であり、上記通気ベルト型乾燥機での乾燥温度が150〜250℃、かつ、熱風の風速が垂直方向(上下方向)に0.8〜2.5[m/s]である。
【0178】
ここで、本発明のゲル粉砕は、上記(1)〜(4)の何れか1つ以上を必須に満たし、好ましくは2つ以上、更には3つ以上、特に4つ以上が満たされる。又、乾燥工程では、ゲル粉砕が上記(4)に限らず、好ましくは上記(1)〜(3)のゲル粉砕においても上記通気ベルト型乾燥機での乾燥及びその乾燥条件(熱風の風速等)が適用される。又、更に好ましくは表面架橋、特に後述の共有結合性表面架橋剤及びイオン結合性表面架橋剤が併用される。
【0179】
吸水性樹脂の通液性(SFC)及び吸水速度(FSR)は、いずれも吸水性樹脂の表面積に大きく依存し、これらは相反する性質を有する。即ち、SFCは表面積が小さいほうが好適であり、FSRは表面積が大きい方が好適である。したがって、これまでの技術ではこれらの物性を両立させることが困難であった。
【0180】
しかしながら、本発明に係る製造方法は、下記に示したFSR及びSFCの範囲、特にFSRが0.30[g/g/sec]以上、更には下記(3−6)の高吸水速度、及び、SFCが70[×10−7・cm・s・g−1]以上、更には下記(3−2)の高通液性を両立することができ、かかるFSR及びSFCの吸水性樹脂の製造方法に好適に使用することができる。尚、好ましい物性は〔3〕に記載する。
【0181】
従来、吸水性樹脂の吸水速度や通液性等の改善には、上記特許文献1〜50等が知られているが、本発明では特定のゲル粉砕(1)〜(4)の少なくとも1つによって、吸水速度(例えばFSR)や通液性(例えばSFC)の改善及びそれらの両立が可能であることを見いだした。
【0182】
〔3〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の物性
(新規な吸水性樹脂)
本発明に係る上記製造方法(第1〜4の製造方法)を好適な製造方法の一例として、得られたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合が95重量%以上であり、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.50であって、加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上、吸水速度(FSR)が0.30[g/g/s]以上で、かつ、下記式で規定される内部気泡率が0.1〜2.5%である。
【0183】
(内部気泡率)[%]={(真密度)−(見かけ密度)}/(真密度)×100
本発明における「真密度」とは、十分に乾燥(含水率が好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満)されたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂について、化学組成(高分子の繰り返し単位や、架橋剤等の微量原料、任意に使用されるグラフト成分等)によって一義的に決定される密度(単位;[g/cm])を意味する。従って、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、その中和率や塩の種類(例えば、中和率75モル%のポリアクリル酸ナトリウム等)、微量原料によって若干の差は見られるが、ほぼ一定の値を示す。
【0184】
一方、本発明における「見かけ密度」とは、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の粒子内部に存在する空隙(内部気泡、独立気泡とも称する)を考慮した密度(単位;[g/cm])を意味する。例えば、発泡重合により得られた吸水性樹脂や造粒工程を経た吸水性樹脂は図2に示すようにその内部に外部と繋がっていない空間(空隙;内部気泡、独立気泡;閉細孔)が存在する。このため、吸水性樹脂の密度を乾式密度測定により測定した場合、閉細孔には導入気体が到達できないため、測定された密度は閉細孔(独立気泡)を含んだ体積から求めた見かけ密度となる。尚、非特許文献1のp.197〜199には、40〜60メッシュ−カット後の吸水性樹脂の見かけ密度について、メタノールを使用する湿式測定方法が開示されているが、本発明は全粒度について乾式測定を行うことを特徴とし、当該見かけ密度で規定される内部気泡率が吸水性樹脂の物性向上に重要であることを見出した。
【0185】
吸水性樹脂の密度(真密度及び見かけ密度)測定は、所定のガスを用いる乾式密度測定で正確に行うことができる。尚、固体の乾式密度測定の測定原理は定容積膨張法において周知であり、固体の体積を特定のガスで求める方法である。具体的には、試料室の体積VCELLと膨張室の体積VEXPが既知であるとき、圧力(ゲージ圧)P1g及びP2gの測定によって試料の体積VSAMPが求められる。別途、試料の重量を測定し、その重量を体積で除すれば密度が求められる(参考;島津製作所;http://www.shimadzu.co.jp/powder/lecture/middle/m04.html)。
【0186】
上記真密度は、化学組成(主に高分子の繰り返し単位)で一義的に決定されるため、既知の値をそのまま使用しても良いが、微量原料等の影響により若干の変化があるため、既知の値が不明の場合は後述する方法で求めることができる。又、吸水性樹脂中の独立気泡を粉砕によって破壊又は連続気泡化することで、実質的に独立気泡のない状態となるため、当該粉砕後の吸水性樹脂の密度を真密度とみなすことができる。尚、上記「連続気泡」とは、外部と通じた気泡を意味し、乾式密度測定では吸水性樹脂の体積としてカウントされない。従って、独立気泡と連続気泡は乾式密度測定によって容易に判別できる。
【0187】
ところで、未公開の先願PCT/JP2010/073254号(国際出願日2010年12月24日)には、単量体水溶液中に界面活性剤を添加して重合することにより、微細な気泡(独立気泡)が導入された吸水性樹脂を得ることが記載されている。当該国際出願では、吸水性樹脂中の独立気泡の存在割合を評価する手法として内部気泡率が記載され、その好ましい範囲が2.8〜6.6%であることが記載されている。そして、内部気泡率をこの範囲内とすることで、相反する物性である吸水速度(FSR)と通液性(SFC)を向上させることができることが記載されている。
【0188】
一方、本発明の製造方法(特定条件でのゲル粉砕、乾燥、及び表面処理)は、上記先願には何ら開示のない製造方法であり、当該製造方法を製法の一例として得られる本発明の吸水性樹脂粉末についても上記先願には何ら開示がない。即ち、上記の先願等これまでの知見では、内部気泡率が0.1〜2.5%、吸水速度(FSR)が0.30[g/g/s]以上、かつ、加圧下吸水倍率が20[g/g]以上である吸水性樹脂粉末は知られていなかった。
【0189】
本発明の吸水性樹脂粉末は、内部気泡率が0.1〜2.5%の範囲内で、AAP(加圧下吸水倍率)を20[g/g]以上、かつ、吸水速度(FSR)を0.30[g/g/s]以上とするが、上述した物性である吸水性樹脂粉末を得ることによって、吸水速度(FSR)が維持した状態で通液性(SFC)が大きく向上するという新たな効果が見いだされた。
【0190】
本発明の吸水性樹脂粉末は、上記国際出願(先願)で規定される内部気泡率の範囲より小さい値を示す。当該内部気泡率は0%に近くなるほど、真密度と見かけ密度の差が小さくなるため、その分、吸水性樹脂中に独立気泡が存在しないことを意味する。従って、表面積が小さくなる方向であるため、表面積に依存する吸水速度(FSR)も低下すると考えられる。ところが、本発明の吸水性樹脂粉末においては、吸水速度(FSR)の低下が見られていない。
【0191】
この理由として、独立気泡に起因する表面積の増加とは異なった形態での表面積の増加が考えられる。例えば、吸水性樹脂表面が平面ではなく凹凸である状態や、部分的に孔があいている状態等が考えられる。このような形状で、更に高いAAP、つまり十分な加圧下のゲル強度が組み合わされることによって、膨潤後の吸水性樹脂粉末間の隙間が増加し、加圧下での通液性であるSFCが向上したと考えられる。
【0192】
尚、本発明における吸水性樹脂の内部気泡率は、0.1〜2.5%であり、0.2〜2.0%が好ましく、0.3〜1.7%がより好ましく、0.5〜1.5%が更に好ましい。内部気泡率を上記範囲内に制御することで、本発明で規定する吸水速度と通液性を有する吸水性樹脂が得られる。内部気泡率は、本発明の製造方法におけるゲル粉砕エネルギーや水可溶分分子量の増加幅等で制御できるが、その他、発泡重合や乾燥時の発泡等の手法を採用(併用)してもよい。
【0193】
(更なる物性)
本発明の製造方法で得られる吸水性樹脂は、下記の物性を更に満たすことが好ましい。ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とし、衛生材料、特に紙オムツへの使用を目的とする場合、上述した重合方法や表面架橋方法等によって、下記(3−1)〜(3−8)に挙げられた各物性のうち、少なくとも1以上の物性を制御することが好ましく、更にはAAPを含めた2以上、特に3以上の物性を制御することが好ましい。吸水性樹脂が下記の各物性を満たさない場合、吸水性樹脂濃度が40重量%以上の高濃度オムツでは十分な性能を発揮しない虞がある。
【0194】
(3−1)AAP(圧力に対する吸収性)
本発明で得られる吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)は、紙オムツでのモレを防止するため、上記重合を達成手段の一例として、4.8kPaの加圧下におけるAAPとして、20[g/g]以上が好ましく、22[g/g]以上がより好ましく、24[g/g]以上が更に好ましい。AAPの上限値は、特に限定されないが、他の物性とのバランスから、35[g/g]以下が好ましく、30[g/g]以下がより好ましく、28[g/g]以下が更に好ましい。尚、当該AAPは、粒度制御後の表面架橋によって向上させることができ、上記範囲となるまで表面架橋を行うことによって、本発明の新規な吸水性樹脂が得られると共に、吸水速度(FSR)を維持した状態で通液性(SFC)を向上させることができる。
【0195】
(3−2)SFC(生理食塩水流れ誘導性)
本発明で得られる吸水性樹脂のSFC(生理食塩水流れ誘導性)は、紙オムツでのモレを防止するため、上記製法、特に本発明のゲル粉砕後、好ましくは上記粒度制御の後、表面架橋によって向上させることができ、上述したAAPの範囲となるまでの表面架橋を達成手段の一例として、加圧下での液の通液特性である0.69%塩化ナトリウム水溶液流れ誘導性(SFC)として、1[×10−7・cm・s・g−1]以上が好ましく、20[×10−7・cm・s・g−1]以上がより好ましく、50[×10−7・cm・s・g−1]以上が更に好ましく、70[×10−7・cm・s・g−1]以上が特に好ましく、100[×10−7・cm・s・g−1]以上が最も好ましい。SFCは周知の測定法であり、例えば、米国特許第5562646号で規定できる。本発明では通液性の向上、中でもSFC向上、特に上記範囲のSFCへ、特にSFC20[×10−7・cm・s・g−1]以上へのより顕著に効果を発揮するため、かかる高通液性の吸水性樹脂の製法に好適に適用できる。
【0196】
(3−3)CRC(無加圧下吸水倍率)
本発明で得られる吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸水倍率)は、10[g/g]以上が好ましく、20[g/g]以上がより好ましく、25[g/g]以上が更に好ましく、30[g/g]以上が特に好ましい。CRCの上限値は、特に限定されないが、他の物性のバランスから、50[g/g]以下が好ましく、45[g/g]以下がより好ましく、40[g/g]以下が更に好ましい。当該CRCは、重合時の架橋剤量及びその後の表面架橋(2次架橋)によって適宜制御できる。
【0197】
(3−4)Ext(水可溶分)
本発明で得られる吸水性樹脂のExt(水可溶分)は、液溶出分の影響で紙オムツでの使用時のべとつき等を防ぐため、35重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、15重量%以下が更に好ましく、10重量%以下が特に好ましい。当該Extは、重合時の架橋剤量及びその後のゲル粉砕での水可溶分量増加によって適宜制御できる。
【0198】
(3−5)Residual Monomers(残存モノマー)
本発明で得られる吸水性樹脂のResidual Monomers(残存モノマー)は、安全性の観点から、上記重合を達成手段の一例として、通常、500ppm以下、好ましくは0〜400ppm、より好ましくは0〜300ppm、特に好ましくは0〜200ppmに制御される。当該残存モノマーは、重合時の重合開始剤及びその後の乾燥条件等によって適宜制御できる。
【0199】
(3−6)FSR(吸水速度)
本発明で得られる吸水性樹脂のFSR(吸水速度)は、紙オムツでのモレを防止するため、上記重合を達成手段の一例として、通常0.2[g/g/s]以上であり、0.25[g/g/s]以上が好ましく、0.30[g/g/s]以上がより好ましく、0.35[g/g/s]以上が更に好ましく、0.40[g/g/s]以上が特に好ましく、0.45[g/g/s]以上が最も好ましい。又、FSRの上限値としては、1.00[g/g/s]以下である。FSRの測定法は、国際公開第2009/016055号で規定できる。当該FSRは、本発明の第1〜4の製造方法及び乾燥後の上記粒度制御で調整することができる。
【0200】
本発明では吸水速度の向上、中でもFSR向上、特に上記範囲のFSRへ、特にFSR0.30[g/g/s]以上へのより顕著に効果を発揮するため、かかる高吸水速度の吸水性樹脂の製法に好適に適用できる。
【0201】
(3−7)ダメージ前後の微粉増加量
本発明で得られる吸水性樹脂の、実施例の測定法で規定されるダメージ前後の微粉増加量(150μm通過物の増加量)は、0〜3重量%が好ましく、0〜1.5重量%がより好ましい。かような範囲とすることで紙オムツ製造等、実使用に物性低下の問題がない。当該微粉増加量は、本発明の第1〜4の製造方法(ゲル粉砕)によって、低く制御される。
【0202】
(3−8)嵩比重
本発明で得られる吸水性樹脂の嵩比重(ERT460.2−02で規定)は、0.50〜0.80[g/cm]であることが好ましく、0.60〜0.70[g/cm]がさらに好ましい。嵩比重が上記範囲を満たさない場合、物性が低下したり、粉化したりすることがある。当該嵩比重は、本発明の第1〜4の製造方法(ゲル粉砕)によって低く制御することができる。
【0203】
(3−9)表面架橋
本発明の課題を解決するためには、吸水性樹脂は好ましくは表面架橋されてなり、特にイオン架橋性表面架橋剤(例えば、多価金属)と共有結合性表面架橋剤で併用して架橋されてなる。尚、本発明において、表面架橋された吸水性樹脂を吸水性樹脂粉末と称する場合がある。
【0204】
〔4〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の用途
本発明に係る製造方法で得られる吸水性樹脂粉末の用途は特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の吸収性物品に使用される。これまで原料由来の臭気や着色等が問題になっていた高濃度オムツ(紙オムツ1枚当りの吸水性樹脂使用量が多い紙オムツ)、特に上記吸収性物品の吸収体上層部に使用した場合に、優れた性能を発揮する。
【0205】
これら吸収性物品における、他の吸収性材料(パルプ繊維等)を任意に含む吸収体中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度)は、30〜100重量%が好ましく、40〜100重量%がより好ましく、50〜100重量%が更に好ましく、60〜100重量%が更により好ましく、70〜100重量%が特に好ましく、75〜95重量%が最も好ましい。例えば、本発明に係る製造方法で得られる吸水性樹脂粉末を上記濃度で、特に吸収体上部に使用した場合、高通液性によって尿等の吸収液の拡散性に優れるため、効率的に液分配がなされ、吸収性物品全体の吸収量が向上する。更に吸収体が衛生感のある白色状態を維持する吸収性物品を提供することができる。
【0206】
すなわち、本願には以下の発明が含まれる。
〔1〕アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体を下記(1)〜(4)の少なくとも一つを満たすゲル粉砕、
(1)ゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]でゲル粉砕、
(2)ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))9〜40[J/g]でゲル粉砕、
(3)含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加、
(4)得られる粒子状の含水ゲル状架橋重合体の重量平均粒子径(D50)が350〜2000μm、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.2〜1.0となるまでゲル粉砕、
を行った後に、乾燥機での乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法。
【0207】
ただし、ゲル粉砕が上記(4)の場合、乾燥は通気ベルト型乾燥機で行われ、通気ベルト型乾燥機に投入する際の、粒子状の含水ゲル状重合体の樹脂固形分が10〜80重量%であり、上記通気ベルト型乾燥機での乾燥温度が150〜250℃、かつ、熱風の風速が垂直方向(上下方向)に0.8〜2.5[m/s]である。
〔2〕アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]でゲル粉砕した後に、乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法。
〔3〕アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))9〜40[J/g]でゲル粉砕した後に、乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法。
〔4〕アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が10〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕し、当該含水ゲル状架橋重合体の水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加させた後に、乾燥温度が150〜250℃で乾燥し、更に表面処理を行うことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法。
〔5〕上記ゲル粉砕工程で得られる、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル状架橋重合体の樹脂固形分が10〜80重量%である、〔2〕〜〔4〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔6〕上記乾燥工程において、使用される乾燥機が通気ベルト型乾燥機であり、熱風の風速が垂直方向に0.8〜2.5[m/s]である、〔2〕〜〔5〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔7〕アクリル酸(塩)系単量体水溶液の重合工程と、重合中又は重合後の含水ゲル状架橋重合体のゲル粉砕工程と、ゲル粉砕後の乾燥工程とを含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、
上記ゲル粉砕工程で得られる粒子状の含水ゲル状架橋重合体の重量平均粒子径(D50)が350〜2000μm、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.2〜1.0であり、
上記乾燥工程において、通気ベルト型乾燥機に投入する際の、粒子状の含水ゲル状重合体の樹脂固形分が10〜80重量%であり、上記通気ベルト型乾燥機での乾燥温度が150〜250℃、かつ、熱風の風速が垂直方向に0.8〜2.5[m/s]であり、
表面処理工程を更に含むことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法。
〔8〕上記ゲル粉砕工程において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)18〜60[J/g]で含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕する、〔4〕〜〔7〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔9〕上記重合工程がニーダー重合又はベルト重合である、〔1〕〜〔8〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔10〕上記ゲル粉砕工程において、下記(a)、(b)又は(c)をゲル粉砕する、〔1〕〜〔9〕の何れか1項に記載の製造方法。
(a)ゲルCRCが10〜35[g/g]である含水ゲル状架橋重合体
(b)ゲルExtが0.1〜10重量%である含水ゲル状架橋重合体
(c)ゲルCRCが10〜35[g/g]、かつ、ゲルExtが0.1〜10重量%である含水ゲル状架橋重合体
〔11〕上記ゲル粉砕工程において、樹脂固形分が40〜80重量%の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕する、〔1〕〜〔10〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔12〕上記ゲル粉砕工程において、下記(d)、(e)又は(f)をゲル粉砕する、〔1〕〜〔11〕の何れか1項に記載の製造方法。
(d)モノマーの重合率が90モル%以上である含水ゲル状架橋重合体
(e)中和率が45〜90モル%である含水ゲル状架橋重合体
(f)モノマーの重合率が90モル%以上、かつ、中和率が45〜90モル%である含水ゲル状架橋重合体
〔13〕上記ゲル粉砕工程において、ゲル温度が40〜120℃の含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕する、〔1〕〜〔12〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔14〕上記ゲル粉砕工程において、ケーシングの一方の端部に多孔板が設置されたスクリュー型押出機を使用する、〔1〕〜〔13〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔15〕上記ゲル粉砕工程において、含水ゲル状架橋重合体のゲルExtの増加量が5重量%以下である、〔1〕〜〔14〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔16〕上記ゲル粉砕工程において、含水ゲル状架橋重合体100重量部に対して、水を0〜4重量部添加する、〔1〕〜〔15〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔17〕上記ゲル粉砕工程で得られる粒子状の含水ゲル状架橋重合体は、下記(g)、(h)及び(i)の何れか1つ以上の物性を満たす、〔1〕〜〔16〕の何れか1項に記載の製造方法。
(g)ゲルExtが0.1〜10重量%
(h)ゲルCRCが10〜35[g/g]
(i)樹脂固形分が10〜80重量%
〔18〕上記乾燥工程において、通気ベルト型乾燥機に投入する際の、粒子状の含水ゲル状架橋重合体の温度が60〜110℃である、〔1〕〜〔17〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔19〕分級工程を更に含み、
分級後の吸水性樹脂粒子の重量平均粒子径(D50)が250〜500μmであり、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.50である、〔1〕〜〔18〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔20〕上記表面処理は、表面架橋工程と同時又は別途に、多価金属塩、カチオン性ポリマー又は無機微粒子の何れか1つ以上を添加する添加工程を更に含む、〔1〕〜〔19〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔21〕粒子径が150μm以上850μm未満である粒子の割合が95重量%以上であり、かつ、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.50であるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であって、
加圧下吸水倍率(AAP)が20[g/g]以上、吸水速度(FSR)が0.30[g/g/s]以上で、かつ、下記式で規定される内部気泡率が0.1〜2.5%であることを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
【0208】
(内部気泡率)[%]={(真密度)−(見かけ密度)}/(真密度)×100
〔22〕多価金属塩、カチオン性ポリマー又は無機微粒子の何れか1つ以上を更に含む、〔21〕に記載の吸水性樹脂。
【0209】
〔実施例〕
以下、実施例に従って発明を説明するが、本発明は実施例に限定され解釈されるものではない。又、本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性は、特に記載のない限り、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、EDANA法及び以下の測定法に従って求めた。更に、実施例及び比較例に提示される電気機器は、200V又は100V、60Hzの電源を使用した。尚、便宜上「リットル」を「L」、「重量%」を「wt%」と記することがある。
【0210】
(a)CRC及びゲルCRC
CRC(無加圧下吸水倍率)の測定はERT441.2−02に準じて行った。即ち、吸水性樹脂0.200gを秤量し、不職布製の袋(60×60mm)に均一に入れヒートシールした後、25±3℃に調温した0.9重量%塩化ナトリウム水溶液1000mL中に浸漬した。30分経過後、袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製遠心機、形式;H−122)を用いて、250G、3分間の条件で水切りを行った。その後、袋の重量W1[g]を測定した。同様の操作を、吸水性樹脂を入れずに行い、そのときの袋の重量W2[g]を測定した。次式(4)にしたがってCRC(無加圧下吸水倍率)を算出した。
【0211】
【数4】
【0212】
一方、ゲルCRCは、含水ゲル0.4gを用い、自由膨潤時間を24時間とした以外は上記と同様の操作を行った。更に、別途、含水ゲルの樹脂固形分を測定し、上記0.4gの含水ゲル中の吸水性樹脂重量を求め、次式(5)に従ってゲルCRCを算出した。尚、1サンプルにつき5回測定し、その平均値を採用した。
【0213】
【数5】
【0214】
尚、ここで、
msi;測定前の含水ゲルの重量[g]
mb;自由膨潤して水切り後のBlank(不織布のみ)の重量[g]
mwi;自由膨潤して水切り後の含水ゲルの重量[g]
Wn;含水ゲルの固形分[重量%]
である。
【0215】
(b)Ext及びゲルExt
Ext(水可溶分)の測定はERT470.2−02に準じて行った。即ち、容量250mLの蓋付きプラスチック容器に、吸水性樹脂1.000gと0.90重量%塩化ナトリウム水溶液200mlとを入れ、長さ3.5cm×直径6mmの円筒型スターラーで400rpm、16時間攪拌を行い、吸水性樹脂中の水可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙(ADVANTEC東洋株式会社、品名:JIS P 3801、No.2、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)1枚を用いて濾過し、得られた濾液50.0gを測定液とした。
【0216】
次いで、上記測定液がpH10となるまで0.1N−NaOH水溶液で滴定した後、pH2.7となるまで0.1N−HCl水溶液で滴定した。このときの滴定量([NaOH]mL、[HCl]mL)を求めた。又、同様の操作を、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液のみに対して行い、空滴定量([bNaOH]mL、[bHCl]mL)を求めた。本発明の吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量から、次式(6)にしたがって、Ext(水可溶分)を算出した。
【0217】
【数6】
【0218】
一方、ゲルExtは、ハサミで一辺1〜5mm程度に裁断した含水ゲル5.0gを用い、攪拌時間を24時間とした以外は上記と同様の操作を行った。更に、別途、含水ゲルの樹脂固形分を測定し、上記5.0gの含水ゲルの吸水性樹脂重量を求め、次式(7)に従ってゲルExtを算出した。
【0219】
【数7】
【0220】
尚、ここで、
HCl.s;溶解したポリマーを含む濾液をpH10からpH2.7にするのに必要なHCl量[ml]
HCl.b;Blank(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)をpH10からpH2.7にするのに必要なHCl量[ml]
HCl;HCl溶液の濃度[mol/l]
Mw;アクリル酸(塩)ポリマー中のモノマーユニットの平均分子量[g/mol]
(例えば、中和率73モル%の場合のMwは、88.1[g/mol])
dil;溶解したポリマーを含む濾液の希釈度
ms;測定前の含水ゲルの重量[g]
Wn;含水ゲルの固形分[重量%]
である。
【0221】
(c)水可溶分の重量平均分子量
水可溶分の重量平均分子量は、上述したExt及びゲルExtの測定操作で溶解したポリマーの重量平均分子量をGPCで測定した値であり、以下、該GPC測定について説明する。
【0222】
GPCはビスコテック社製TDA302(登録商標)を使用した。該装置は、サイズ排除クロマトグラフィー、屈折率検出器、光散乱検出器、及びキャピラリー粘度計から構成される装置である。又、測定装置及び測定条件は以下の通りとした。
【0223】
ポンプ・オートサンプラー:ビスコテック社製GPCmax
ガードカラム:SHODEX GF−7B
カラム:TOSOH GMPWXL を2本直列につないで使用
検出器:ビスコテック社製TDA302(系内温度は30℃で保持)
溶媒:リン酸2水素ナトリウム2水和物60mM・リン酸水素2ナトリウム12水和物20mM水溶液
流速:0.5ml/min
注入量 :100μl
装置校正はポリオキシエチレングリコール(重量平均分子量(Mw)22396、示差屈折率(dn/dc)=0.132、溶媒屈折率1.33)を標準サンプルとして用いて行った。
【0224】
被測定物質が、アクリル酸(塩)を99モル%以上含む単量体を重合して得られた吸水性樹脂である場合、分析対象となるポリマーの示差屈折率(dn/dc)を0.12として測定を行った。又、アクリル酸(塩)以外の単量体含有率が1モル%以上の共重合吸水性樹脂の場合は、その高分子に固有の溶媒中での示差屈折率(dn/dc)を測定し、その数値を用いて測定した。更に、屈折率、光散乱強度、粘度のデータ収集及び解析は、Viscotek OmniSEC3.1(登録商標)ソフトウェアで行った。屈折率及び光散乱強度から得られたデータより、重量平均分子量(Mw)を計算した。
【0225】
(d)重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)
吸水性樹脂の重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)の測定は欧州特許第0349240号に記載された測定方法に準じて行った。一方、含水ゲルの重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は以下の方法で測定した。
【0226】
即ち、温度20〜25℃の含水ゲル(固形分α重量%)20gを、0.08重量%エマール20C(界面活性剤、花王株式会社製)を含む20重量%塩化ナトリウム水溶液(以下、「エマール水溶液」と称する)500g中に添加して分散液とし、長さ50mm×直径7mmのスターラーチップを300rpmで60分間攪拌した(高さ21cm、直径8cmの円柱のポリプロピレン製 約1.14L容器を使用)。
【0227】
攪拌終了後、回転盤の上に設置したJIS標準の篩(直径21cm、篩の目開き;8mm/4mm/2mm/1mm/0.60mm/0.30mm/0.15mm/0.075mm)の中央部に、上記分散液を投入した。エマール水溶液100gを使用して全含水ゲルを篩上に洗い出した後、上部からエマール水溶液6000gを、篩を手で回転させながら(20rpm)、30cmの高さからシャワー(孔72個あき、液量;6.0[L/min])を使って注水範囲(50cm)が篩全体にいきわたるよう満遍なく注ぎ、含水ゲルを分級した。分級した一段目の篩上の含水ゲルを約2分間水切り後、秤量した。二段目以降の篩についても同様の操作で分級し、水切り後にそれぞれの篩の上に残留した、含水ゲルを秤量した。
【0228】
各篩の上に残留した含水ゲルの重量から下記式(8)より、重量%割合を算出した。水切り後の篩の目開きは下記の式(9)に従い、含水ゲルの粒度分布を対数確率紙にプロットした。プロットの積算篩上%Rが50重量%に相当する粒子径を、含水ゲルの重量平均粒子径(D50)とした。又、上記プロットから、積算篩上%R=84.1%(これをX1とする)と積算篩上%R=15.9%(これをX2とする)の粒径を求め、下記の式(10)により、対数標準偏差(σζ)を求めた。σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0229】
【数8】
【0230】
【数9】
【0231】
尚、ここで、
X;分級、水切り後に各篩上に残留した含水ゲルの重量% [%]
w;分級、水切り後に各篩上に残留した含水ゲルのそれぞれの重量 [g]
W;分級、水切り後に各篩上に残留した含水ゲルの総重量 [g]
R(α);固形分α重量%の含水ゲルに換算したときの篩の目開き [mm]
r;20重量%塩化ナトリウム水溶液中で膨潤した含水ゲルが分級された篩の目開き [mm]
である。
【0232】
【数10】
【0233】
X1はR=84.1%、X2はR=15.9%の時の、それぞれの粒子径である。
【0234】
(e)見かけ密度
吸水性樹脂の水分を除去した後、樹脂内部に存在する気泡(内部気泡)を考慮した見かけ密度を乾式密度計で測定(所定重量の吸水性樹脂についてその体積を乾式測定)した。
【0235】
即ち、底面の直径が約5cmのアルミカップに吸水性樹脂6.0gを量り取った後、180℃の無風乾燥機中で乾燥させた。当該吸水性樹脂の含水率が1重量%以下となるまで3時間以上静置させ、十分に乾燥させた。乾燥後の吸水性樹脂5.00gについて、乾式自動密度計(AccuPycII 1340TC−10CC;株式会社島津製作所製/キャリアガス;ヘリウム)を用いて見かけ密度(単位;[g/cm])を測定した。測定値が連続して5回以上同一となるまで測定を繰り返した。
【0236】
(f)真密度
吸水性樹脂内部に存在する内部気泡(独立気泡)の径は通常1〜300μmであるが、粉砕時には、独立気泡に近い部分から優先的に粉砕される。そこで、粒子径が45μm未満となるまで吸水性樹脂を粉砕すると、得られた吸水性樹脂には独立気泡がほとんど含まれない(図3参照)。従って、45μm未満まで粉砕された吸水性樹脂の乾式密度を本発明では真密度として評価した。
【0237】
即ち、ボールミルポット(株式会社テラオカ製;型番No.90/内寸;直径80mm、高さ75mm、外寸;直径90mm、高さ110mm)に吸水性樹脂15.0g及び円柱状磁製ボール(径13mm、長さ13mm)400gを入れた後、60Hzで2時間稼動させることで、目開き45μmのJIS標準篩を通過する(粒子径が45μm未満の)吸水性樹脂を得た。当該粒子径が45μm未満の吸水性樹脂6.0gについて、上記[見かけ密度]と同様に180℃にて3時間以上乾燥させた後、乾式密度を測定した。得られた測定値を本発明でいう「真密度」とした。
【0238】
(g)内部気泡率
上記[見かけ密度]に記載した方法で測定した見かけ密度(これをρ1[g/cm]とする)、及び上記[真密度]に記載した方法で測定した真密度(これをρ2[g/cm]とする)を用いて、吸水性樹脂の内部気泡率を下記式(11)に従って算出した。
【0239】
【数11】
【0240】
[製造例1]
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造装置として、重合工程、ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、冷却工程、整粒工程、及び各工程間を連結する輸送工程から構成される連続製造装置を用意した。該連続製造装置の生産能力は約3500[kg/hr]であり、上記工程はそれぞれ1系列又は2系列以上であってもよい。2系列以上の場合、生産能力は各系列の合計量で示す。該連続製造装置を用いて、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末を連続的に製造した。
【0241】
先ず、アクリル酸193.3重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液64.4重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)1.26重量部、0.1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液52重量部、脱イオン水134重量部からなる単量体水溶液(1)を作成した。
【0242】
次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(1)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液97.1重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(1)の液温は85℃まで上昇した。
【0243】
更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液8.05重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが約7.5mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(1)を得た。該帯状の含水ゲル(1)は、CRC28.0[g/g]、樹脂固形分53.0重量%、水可溶分4.0重量%、水可溶分の重量平均分子量218,377[Da]であった。
【0244】
[比較例1]
製造例1に引き続いてポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末を連続的に製造した。
【0245】
即ち、製造例1で得られた帯状の含水ゲル(1)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が約300mmとなるように等間隔に連続して切断した。
【0246】
上記切断長が約300mmの含水ゲル(1)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、先端部に直径340mm、孔径22mm、孔数105個、開孔率52%、厚さ20mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の直径が152mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を96rpmとした状態で、含水ゲル(1)を132800[g/min]、同時に、70℃の温水を855.8[g/min]かつ水蒸気を3333[g/min]でそれぞれ供給した。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は17.9[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は8.7[J/g]であった。又、ゲル粉砕時の当該ミートチョッパーの電流値は89.6Aであった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は90℃であり、ゲル粉砕後の比較粉砕ゲル、即ち比較粒子状含水ゲル(1)の温度は110℃に上昇していた。
【0247】
上記ゲル粉砕工程で得られた比較粒子状含水ゲル(1)は、CRC28.2[g/g]、樹脂固形分49.4重量%、水可溶分4.3重量%、水可溶分の重量平均分子量225,674[Da]、重量平均粒子径(D50)1041μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.74であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、比較粒子状含水ゲル(1)の物性を表2に示す。
【0248】
次に、上記比較粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気ベルト上に散布(この時の比較粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、比較乾燥重合体(1)246重量部(乾燥工程での総排出量)を得た。上記通気ベルトの移動速度は1[m/min]、又、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であった。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター6162で測定した。
【0249】
次いで、上記乾燥工程で得られた約60℃の比較乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに連続供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の比較吸水性樹脂粒子(1)を得た。比較吸水性樹脂粒子(1)は、重量平均粒子径(D50)350μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.33であり、CRC31.6[g/g]、水可溶分6.8重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.6重量%であった。
【0250】
次に、上記比較吸水性樹脂粒子(1)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、208℃で40分間程度、得られる比較吸水性樹脂粉末(1)のCRCが26.6〜27.4[g/g]の範囲内となるように加熱処理した。その後冷却を行い、27.5重量%硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1.17重量部、60重量%乳酸ナトリウム水溶液0.196重量部及びプロピレングリコール0.029重量部からなる(イオン結合性)表面架橋剤溶液溶液を均一に混合した。
【0251】
その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕(整粒工程)し、比較吸水性樹脂粉末(1)を得た。比較吸水性樹脂粉末(1)の諸物性を表3に示す。
【0252】
[実施例1]
製造例1で得られた帯状の含水ゲル(1)について、切断長を200mmとし、温水及び水蒸気の供給をせず、ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を115rpmに変更してゲル粉砕した以外は比較例1と同様の操作を行い、粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(1)、吸水性樹脂粒子(1)、吸水性樹脂粉末(1)を得た。実施例1において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は27.8[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は15.5[J/g]であった。又、ゲル粉砕時の当該ミートチョッパーの電流値は104.7Aであった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は90℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃に低下していた。更に乾燥機導入時の粒子状含水ゲル(1)の温度は75℃であった。
【0253】
得られた粒子状含水ゲル(1)は、CRC28.3[g/g]、樹脂固形分50.8重量%、水可溶分4.4重量%、水可溶分の重量平均分子量253,596[Da]、重量平均粒子径(D50)750μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.79であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(1)の物性を表2に示す。
【0254】
又、吸水性樹脂粒子(1)は、重量平均粒子径(D50)340μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC32.0[g/g]、水可溶分6.9重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.7重量%であった。尚、吸水性樹脂粉末(1)の諸物性は表3に示す。
【0255】
[実施例2]
製造例1で得られた帯状の含水ゲル(1)について、切断長を200mmとし、温水及び水蒸気の供給をせず、ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を134rpmに変更してゲル粉砕した以外は比較例1と同様の操作を行い、粒子状含水ゲル(2)、吸水性樹脂粒子(2)、吸水性樹脂粉末(2)を得た。実施例2において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は28.2[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は15.8[J/g]であった。又、ゲル粉砕時の当該ミートチョッパーの電流値は105.6Aであった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(2)の温度は90℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(2)の温度は86℃に低下していた。更に乾燥機導入時の粒子状含水ゲル(2)の温度は76℃であった。
【0256】
得られた粒子状含水ゲル(2)は、CRC28.3[g/g]、樹脂固形分51.8重量%、水可溶分4.4重量%、水可溶分の重量平均分子量258,606[Da]、重量平均粒子径(D50)676μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.87であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(2)の物性を表2に示す。
【0257】
又、吸水性樹脂粒子(2)は、重量平均粒子径(D50)331μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC31.9[g/g]、水可溶分6.9重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.6重量%であった。尚、吸水性樹脂粉末(2)の諸物性は表3に示す。
【0258】
[実施例3]
製造例1で得られた帯状の含水ゲル(1)について、切断長を200mmとし、温水及び水蒸気の供給をせず、ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を153rpmに変更してゲル粉砕した以外は比較例1と同様の操作を行い、粒子状含水ゲル(3)、吸水性樹脂粒子(3)、吸水性樹脂粉末(3)を得た。実施例3において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は19.2[J/g]であった。又、ゲル粉砕時の当該ミートチョッパーの電流値は115.8Aであった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は90℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(3)の温度は87℃に低下していた。更に乾燥機導入時の粒子状含水ゲル(3)の温度は77℃であった。
【0259】
得られた粒子状含水ゲル(3)は、CRC28.3[g/g]、樹脂固形分51.2重量%、水可溶分4.7重量%、水可溶分の重量平均分子量267,785[Da]、重量平均粒子径(D50)705μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.85であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(3)の物性を表2に示す。
【0260】
又、吸水性樹脂粒子(3)は、重量平均粒子径(D50)356μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34であり、CRC31.5[g/g]、水可溶分6.4重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.6重量%であった。尚、吸水性樹脂粉末(3)の諸物性は表3に示す。
【0261】
[実施例4]
製造例1で得られた帯状の含水ゲル(1)について、温水及び水蒸気の供給をせずにゲル粉砕した以外は比較例1と同様の操作を行い、粒子状含水ゲル(4)、吸水性樹脂粒子(4)、吸水性樹脂粉末(4)を得た。実施例4において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は23.5[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は13.2[J/g]であった。又、ゲル粉砕時の当該ミートチョッパーの電流値は106.0Aであった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は90℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(4)の温度は87℃に低下していた。更に乾燥機導入時の粒子状含水ゲル(4)の温度は77℃であった。
【0262】
得られた粒子状含水ゲル(4)は、CRC28.3[g/g]、樹脂固形分52.2重量%、水可溶分4.7重量%、水可溶分の重量平均分子量263,313[Da]、重量平均粒子径(D50)892μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.98であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(4)の物性を表2に示す。
【0263】
又、吸水性樹脂粒子(4)は、重量平均粒子径(D50)351μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.33であり、CRC31.6[g/g]、水可溶分6.4重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.5重量%であった。尚、吸水性樹脂粉末(4)の諸物性は表3に示す。
【0264】
[実施例5]
比較例1で得られた比較粒子状含水ゲル(1)について、更に別のスクリュー押出機に供給し、再度ゲル粉砕を行った。該スクリュー押出機として、先端部に直径68mm、孔径11mm、厚さ8mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の直径が21.0mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を96rpmとした状態で、比較粒子状含水ゲル(1)を360[g/min]で供給し、粒子状含水ゲル(5)を得た。尚、実施例5では、再ゲル粉砕において温水及び水蒸気の供給はしなかった。又、再ゲル粉砕前の比較粒子状含水ゲル(1)の温度は105℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(5)の温度は95℃に低下していた。更に乾燥機導入時の粒子状含水ゲル(5)の温度は85℃であった。実施例5において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は34.3[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は18.3[J/g]であった。
【0265】
上記再ゲル粉砕で得られた粒子状含水ゲル(5)は、CRC28.5[g/g]、樹脂固形分49.1重量%、水可溶分4.4重量%、水可溶分の重量平均分子量269,885[Da]、重量平均粒子径(D50)772μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.91であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(5)の物性を表2に示す。
【0266】
次いで、得られた粒子状含水ゲル(5)について、比較例1と同様の操作(乾燥、粉砕、分級、表面架橋等)を行い、吸水性樹脂粒子(5)及び吸水性樹脂粉末(5)を得た。
【0267】
上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(5)は、重量平均粒子径(D50)360μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.33であり、CRC31.7[g/g]、水可溶分7.3重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.6重量%であった。尚、吸水性樹脂粉末(5)の諸物性は表3に示す。
【0268】
[実施例6]
比較例1で得られた比較粒子状含水ゲル(1)について、更に別のスクリュー押出機に供給し、再度ゲル粉砕を行った。該スクリュー押出機として、先端部に直径68mm、孔径7.5mm、厚さ8mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の直径が21.0mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を172rpmとした状態で、比較粒子状含水ゲル(1)を360[g/min]で供給し、粒子状含水ゲル(6)を得た。尚、実施例6では、再ゲル粉砕において温水及び水蒸気の供給はしなかった。又、再ゲル粉砕前の比較粒子状含水ゲル(1)の温度は105℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(6)の温度は96℃に低下していた。更に乾燥機導入時の粒子状含水ゲル(6)の温度は86℃であった。実施例6において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は39.8[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は23.8[J/g]であった。
【0269】
上記再ゲル粉砕で得られた粒子状含水ゲル(6)は、CRC29.1[g/g]、樹脂固形分49.8重量%、水可溶分5.4重量%、水可溶分の重量平均分子量326,424[Da]、重量平均粒子径(D50)367μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.71であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(6)の物性を表2に示す。
【0270】
次いで、得られた粒子状含水ゲル(6)について、比較例1と同様の操作(乾燥、粉砕、分級、表面架橋等)を行い、吸水性樹脂粒子(6)及び吸水性樹脂粉末(6)を得た。
【0271】
上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(6)は、重量平均粒子径(D50)390μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36であり、CRC32.5[g/g]、水可溶分8.6重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.5重量%であった。尚、吸水性樹脂粉末(6)の諸物性は表3に示す。
【0272】
[実施例7]
比較例1で得られた比較粒子状含水ゲル(1)について、更に別のスクリュー押出機に供給し、再度ゲル粉砕を行った。該スクリュー押出機として、先端部に直径68mm、孔径7.5mm、厚さ8mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の直径が21.0mmのミートチョッパーを使用した。又、実施例7では、孔径を7.5mmから順に6.2mm、4.7mm、3.2mmに順次変更して、ゲル粉砕を繰り返し行った。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を172rpmとした状態で、比較粒子状含水ゲル(1)を360[g/min]で供給し、粒子状含水ゲル(7)を得た。尚、実施例7では、2回目以降の再ゲル粉砕において温水及び水蒸気の供給はしなかった。実施例7において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は72.5[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は36.1[J/g]であった。
【0273】
上記再ゲル粉砕で得られた粒子状含水ゲル(7)は、CRC29.5[g/g]、樹脂固形分50.3重量%、水可溶分6.3重量%、水可溶分の重量平均分子量553,670[Da]、重量平均粒子径(D50)1990μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.94であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(7)の物性を表2に示す。
【0274】
次いで、得られた粒子状含水ゲル(7)について、比較例1と同様の操作(乾燥、粉砕、分級、表面架橋等)を行い、吸水性樹脂粒子(7)及び吸水性樹脂粉末(7)を得た。
【0275】
上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(7)は、重量平均粒子径(D50)336μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34であり、CRC32.2[g/g]、水可溶分10.7重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.7重量%であった。尚、吸水性樹脂粉末(7)の諸物性は表3に示す。
【0276】
[製造例2]
製造例1において、単量体水溶液の組成を以下に変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、帯状の含水ゲル(2)を得た。即ち、アクリル酸193.3重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液163.03重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.659重量部、0.1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液52重量部、脱イオン水134重量部からなる単量体水溶液(2)を作成した以外は、製造例1と同様の操作を行い、帯状の含水ゲル(2)を得た。該帯状の含水ゲル(2)は、CRC33.2[g/g]、樹脂固形分53.0重量%、水可溶分8.0重量%、水可溶分の重量平均分子量468,684[Da]であった。
【0277】
[比較例2]
製造例2で得られた帯状の含水ゲル(2)について、比較例1と同様のゲル粉砕を行って比較粒子状含水ゲル(2’)を得た後、更に別のスクリュー押出機に供給し、再度ゲル粉砕を行った。該スクリュー押出機として、先端部に直径68mm、孔径3.2mm、厚さ8mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の直径が20.8mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を172rpmとした状態で、上記比較粒子状含水ゲル(2’)を500[g/min]で供給し、比較粒子状含水ゲル(2)を得た。尚、比較例2では、再ゲル粉砕において温水及び水蒸気の供給はしなかった。比較例2において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は66.2[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は50.2[J/g]であった。
【0278】
上記再ゲル粉砕で得られた比較粒子状含水ゲル(2)は、CRC35.1[g/g]、樹脂固形分52.8重量%、水可溶分15.2重量%、水可溶分の重量平均分子量1,091,000[Da]、重量平均粒子径(D50)484μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.25であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、比較粒子状含水ゲル(2)の物性を表2に示す。
【0279】
次いで、得られた比較粒子状含水ゲル(2)について、比較例1と同様の操作(乾燥、粉砕、分級、表面架橋等)を行い、比較吸水性樹脂粒子(2)及び比較吸水性樹脂粉末(2)を得た。
【0280】
上記操作で得られた比較吸水性樹脂粒子(2)は、重量平均粒子径(D50)392μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36であり、CRC38.3[g/g]、水可溶分19.7重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.6重量%であった。尚、比較吸水性樹脂粉末(2)の諸物性は表3に示す。
【0281】
[製造例3]
特開2004−339502号公報の実施例1、実施例2及び比較例1に準じて吸水性樹脂粉末の製造を行った。即ち、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液を5.83[g/s]、アクリル酸を7.24[g/s]、内部架橋剤として30重量%ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量487)水溶液を0.0287[g/s]、脱イオン水を3.32[g/s]、及び水溶液(A)(20重量%アクリル酸水溶液97.4重量部に、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン0.989重量部及び45重量%ジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液1.08重量部を溶解した溶液)を0.0893[g/s]の流量で分散機に供給し、単量体水溶液(3)を調製した。尚、アクリル酸、脱イオン水、内部架橋剤、水溶液(A)は攪拌機で均一にした後、分散機に供給した。得られた単量体水溶液(3)の温度は約95℃で安定していた。
【0282】
次いで、管径6mmの配管に長さ18.6mm、直径6mmの1.5回転ひねりが加わったエレメントを挿入したスタティックミキサーを用いて、上記単量体水溶液(3)を攪拌した後、該エレメント最後部から下流側に約3cmの位置から重合開始剤として2重量%過硫酸ナトリウム水溶液を0.151[g/s]の流量で添加した。その後、長さ3.8m、幅60cmのフッ素コーティングされたエンドレスベルトを有するベルト重合装置に連続的に供給して重合を行い、帯状の含水ゲル(3)を得た。尚、上記ベルト重合装置は、UVランプがベルト上部に設置され、底面及び周囲が約100℃に加熱、保温され、更に蒸発水を回収するための吸気配管が重合装置中央部に設置されている。又、上記重合開始剤の添加後、重合装置への投入口までの管路長は30cmであった。得られた帯状の含水ゲル(3)は、CRC32.5[g/g]、樹脂固形分58.0重量%、水可溶分5.2重量%、水可溶分の重量平均分子量551,353[Da]であった。
【0283】
[比較例3]
製造例3に引き続いてポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末を連続的に製造した。
【0284】
即ち、製造例3で得られた約50℃の帯状の含水ゲル(3)を連続的にスクリュー押出機に供給し、同時に水供給口から水蒸気を注入しながらゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、特開2000−63527号公報の図1に示されたミートチョッパーに水供給口を設置したものを使用した。上記ゲル粉砕操作で得られた比較粒子状含水ゲル(3)は、ミートチョッパーから排出された際、湯気を発し、さらさらした流動性の高いものであった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(3)の温度は50℃であり、ゲル粉砕後の比較粒子状含水ゲル(3)の温度は55℃に上昇していた。更に乾燥機導入時の比較粒子状含水ゲル(3)の温度は45℃であった。比較例3において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は15.3[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は7.2[J/g]であった。
【0285】
又、比較粒子状含水ゲル(3)は、CRC32.4[g/g]、樹脂固形分56.5重量%、水可溶分5.5重量%、水可溶分の重量平均分子量555,210[Da]、重量平均粒子径(D50)2125μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)2.22であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、比較粒子状含水ゲル(3)の物性を表2に示す。
【0286】
次に、上記比較粒子状含水ゲル(3)を180℃の熱風乾燥機で35分間乾燥を行った後、ロールミルで粉砕(粉砕工程)し、その後更に分級を行い、不定形破砕状の比較吸水性樹脂粒子(3)を得た。上記熱風乾燥機における熱風の平均風速は、粒子状含水ゲルの置かれている平面に対して垂直方向に1.0[m/s]であった。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター6162で測定した。比較吸水性樹脂粒子(3)は、重量平均粒子径(D50)351μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34であり、CRC37.0[g/g]、水可溶分12.0重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)3.1重量%であった。
【0287】
次に、上記比較吸水性樹脂粒子(3)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、208℃で40分間程度、得られる比較吸水性樹脂粉末(1)のCRCが26.6〜27.4[g/g]の範囲内となるように加熱処理した。その後冷却を行い、27.5重量%硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1.17重量部、60重量%乳酸ナトリウム水溶液0.196重量部、及びプロピレングリコール0.029重量部からなる(イオン結合性)表面架橋剤溶液溶液を均一に混合した。
【0288】
その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕(整粒工程)し、比較吸水性樹脂粉末(3)を得た。比較吸水性樹脂粉末(3)の諸物性を表3に示す。
【0289】
[比較例4]
製造例3で得られた帯状の含水ゲル(3)について、水蒸気を80℃の温水に変更してゲル粉砕した以外は比較例3と同様の操作を行い、比較粒子状含水ゲル(4)、比較吸水性樹脂粒子(4)、比較吸水性樹脂粉末(4)を得た。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(3)の温度は50℃であり、ゲル粉砕後の比較粒子状含水ゲル(4)の温度は52℃に上昇していた。更に乾燥機導入時の比較粒子状含水ゲル(4)の温度は42℃であった。比較例4において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は16.4[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は8.4[J/g]であった。
【0290】
得られた比較粒子状含水ゲル(4)は、CRC32.5[g/g]、樹脂固形分55.0重量%、水可溶分5.5重量%、水可溶分の重量平均分子量556,205[Da]、重量平均粒子径(D50)2304μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)2.39であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、比較粒子状含水ゲル(4)の物性を表2に示す。
【0291】
又、比較吸水性樹脂粒子(4)は、重量平均粒子径(D50)350μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34であり、CRC37.0[g/g]、水可溶分12.0重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)2.7重量%であった。尚、比較吸水性樹脂粉末(4)の諸物性は表3に示す。
【0292】
[比較例5]
製造例3で得られた帯状の含水ゲル(3)について、水供給口から何も注入せずにゲル粉砕した以外は比較例3と同様の操作を行い、比較粒子状含水ゲル(5)、比較吸水性樹脂粒子(5)、比較吸水性樹脂粉末(5)を得た。尚、ミートチョッパーから排出された比較粒子状含水ゲル(5)は連なり気味であった。又、ゲル粉砕前の含水ゲル(3)の温度は50℃であり、ゲル粉砕後の比較粒子状含水ゲル(5)の温度は45℃に低下していた。更に乾燥機導入時の比較粒子状含水ゲル(5)の温度は40℃であった。比較例5において、ゲル粉砕エネルギー(GGE)は62.3[J/g]、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は54.1[J/g]であった。
【0293】
得られた比較粒子状含水ゲル(5)は、CRC33.1[g/g]、樹脂固形分58.0重量%、水可溶分13.1重量%、水可溶分の重量平均分子量1,087,542[Da]、重量平均粒子径(D50)1690μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.53であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、比較粒子状含水ゲル(5)の物性を表2に示す。
【0294】
又、比較吸水性樹脂粒子(5)は、重量平均粒子径(D50)347μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34であり、CRC36.0[g/g]、水可溶分21.0重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)3.5重量%であった。尚、比較吸水性樹脂粉末(5)の諸物性は表3に示す。
【0295】
[比較例6]
比較例1で得られた比較粒子状含水ゲル(1)について、粒子径が約2mmの比較粒子状含水ゲル(1)を選別し、これを比較粒子状含水ゲル(6)とした。尚、乾燥機導入時の比較粒子状含水ゲル(6)の温度は80℃であった。
【0296】
上記比較粒子状含水ゲル(6)は、CRC28.0[g/g]、樹脂固形分49.2重量%、水可溶分4.3重量%、水可溶分の重量平均分子量220,518[Da]、重量平均粒子径(D50)2046μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.91であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、比較粒子状含水ゲル(6)の物性を表2に示す。
【0297】
次に、上記比較粒子状含水ゲル(6)を比較例1と同様の操作(乾燥、粉砕、分級等)を行い、不定形破砕状の比較吸水性樹脂粒子(6)を得た。比較吸水性樹脂粒子(6)は、重量平均粒子径(D50)398μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36であり、CRC32.5[g/g]、水可溶分6.8重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.6重量%であった。
【0298】
次に、上記比較吸水性樹脂粒子(6)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.6重量部、及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、208℃で40分間程度、得られる比較吸水性樹脂粉末(1)のCRCが26.6〜27.4[g/g]の範囲内となるように加熱処理した。その後冷却を行い、27.5重量%硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1.17重量部、60重量%乳酸ナトリウム水溶液0.196重量部、及びプロピレングリコール0.029重量部からなる(イオン結合性)表面架橋剤溶液溶液を均一に混合した。
【0299】
その後、目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕(整粒工程)し、比較吸水性樹脂粉末(6)を得た。比較吸水性樹脂粉末(6)の諸物性を表3に示す。
【0300】
[実施例8]
実施例1で得られた粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気ベルト上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(8)を得た。上記通気ベルトの移動速度は1[m/min]、又、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に0.5[m/s]であった。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター6162で測定した。
【0301】
次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(8)を3段ロールミルに連続供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(8)を得た。吸水性樹脂粒子(8)は、重量平均粒子径(D50)350μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.33であり、CRC28.9[g/g]、水可溶分6.4重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.7重量%であった。
【0302】
次に、吸水性樹脂粒子(8)について、比較例6の比較吸水性樹脂粒子(6)と同様の表面架橋処理及び整粒を行い、吸水性樹脂粉末(8)を得た。吸水性樹脂粉末(8)の諸物性を表3に示す。
【0303】
[実施例9]
実施例1で得られた粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気ベルト上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(9)を得た。上記通気ベルトの移動速度は1[m/min]、又、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に3.0[m/s]であった。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター6162で測定した。
【0304】
次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(9)を3段ロールミルに連続供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(9)を得た。吸水性樹脂粒子(9)は、重量平均粒子径(D50)330μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35であり、CRC33.8[g/g]、水可溶分7.9重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)1.5重量%であった。
【0305】
次に、吸水性樹脂粒子(9)について、比較例6の比較吸水性樹脂粒子(6)と同様の表面架橋処理及び整粒を行い、吸水性樹脂粉末(9)を得た。吸水性樹脂粉末(9)の諸物性を表3に示す。
【0306】
[比較例7]
実施例1で得られた粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気ベルト上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、130℃で30分間乾燥を行い、比較乾燥重合体(7)を得た。上記通気ベルトの移動速度は1[m/min]、又、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であった。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター6162で測定した。
【0307】
次いで、上記乾燥工程で得られた比較乾燥重合体(7)を3段ロールミルに連続供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の比較吸水性樹脂粒子(7)を得た。比較吸水性樹脂粒子(7)は、重量平均粒子径(D50)370μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.34であり、CRC27.8[g/g]、水可溶分6.4重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.7重量%であった。
【0308】
次に、比較吸水性樹脂粒子(7)について、比較例6の比較吸水性樹脂粒子(6)と同様の表面架橋処理及び整粒を行い、比較吸水性樹脂粉末(7)を得た。比較吸水性樹脂粉末(7)の諸物性を表3に示す。
【0309】
[比較例8]
実施例1で得られた粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気ベルト上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、260℃で30分間乾燥を行い、比較乾燥重合体(8)を得た。上記通気ベルトの移動速度は1[m/min]、又、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であった。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター6162で測定した。
【0310】
次いで、上記乾燥工程で得られた比較乾燥重合体(8)を3段ロールミルに連続供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の比較吸水性樹脂粒子(8)を得た。比較吸水性樹脂粒子(8)は、重量平均粒子径(D50)390μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36であり、CRC32.0[g/g]、水可溶分9.1重量%、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.9重量%であった。
【0311】
次に、比較吸水性樹脂粒子(8)について、比較例6の比較吸水性樹脂粒子(6)と同様の表面架橋処理及び整粒を行い、比較吸水性樹脂粉末(8)を得た。比較吸水性樹脂粉末(8)の諸物性を表3に示す。
【0312】
[製造例4]
製造例1と同様、連続製造装置を用いて、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末を連続的に製造した。即ち、アクリル酸193.3重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液64.4重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)1.26重量部、0.1重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液52重量部、脱イオン水134重量部からなる単量体水溶液(1)を作成した。
【0313】
次に、42℃に調温した上記単量体水溶液(1)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液97.1重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(1)の液温は87℃まで上昇した。
【0314】
更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液8.05重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが約7.5mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(4)を得た。該帯状の含水ゲル(4)は、CRC27.7[g/g]、樹脂固形分53.3重量%、水可溶分3.8重量%、水可溶分の重量平均分子量221,156[Da]であった。
【0315】
[比較例9]
製造例4に引き続いて、比較例1と同様の操作を行い、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末を連続的に製造した。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、比較粒子状含水ゲル(9)の物性を表2に示す。又、こうして得られた比較吸水性樹脂粉末(9)の諸物性を表3に示す。
【0316】
[比較例10、11]
未公開の先願PCT/JP2010/073254号(国際出願日2010年12月24日)の比較例17、18に記載されている市販の紙オムツから取り出した吸水性樹脂粉末について、物性を測定した。
【0317】
即ち、2010年7月にインドネシアで購入した紙オムツ(ユニ・チャーム株式会社製:商品名「Mamy Poko(登録商標)」から取り出した吸水性樹脂(比較吸水性樹脂粉末(10)とする)、及び、2010年6月にドイツで購入した紙オムツ(dm社製;商品名「babylove aktiv plus」から取り出した吸水性樹脂(比較吸水性樹脂粉末(11)とする)について、内部気泡率、CRC(無加圧下吸水倍率)、FSR(吸水速度)及び加圧下吸水倍率(AAP)を測定した。その結果を表3に示す。
【0318】
[実施例10]
実施例3において、(共有結合性)表面架橋剤溶液を炭酸エチレン0.5重量部、脱イオン水3.0重量部からなる溶液に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行い、吸水性樹脂粉末(10)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(10)の諸物性を表3に示す。
【0319】
【表1】
【0320】
【表2】
【0321】
【表3】
【0322】
尚、表には記載しないが、得られた吸水性樹脂粉末の形状は表面架橋前の吸水性樹脂粒子と同様に粒子状(粉体)であり、表面架橋後の粒度もほぼ同程度か若干増加する程度であった。
【0323】
(まとめ)
上述した実施例及び比較例、並びに表1〜3に示すように、本発明のゲル粉砕(1)〜(4)の少なくとも1つ、即ち、ゲル粉砕エネルギー(GGE)が18〜60[J/g]の条件、又はゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))が9〜40[J/g]の条件で含水ゲルをゲル粉砕した後に乾燥し表面処理すること、或いは、含水ゲルの水可溶分の重量平均分子量を10,000〜500,000[Da]増加させた後に乾燥し表面処理すること、更に粒子状含水ゲルの重量平均粒子径(D50)を350〜2000μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)を0.2〜1.0、樹脂固形分を10〜80重量%となるようにゲル粉砕し、かつ、特定条件下で乾燥し表面処理することで、通液性(SFC)と吸水速度(FSR)を両立させた吸水性樹脂粉末を製造することができる。尚、ゲル粉砕工程において、ゲル粉砕を複数回行う場合(例えば、実施例7)、空運転エネルギーが大きくなるため、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))で評価する方が好ましい場合がある。
【0324】
以上、吸水性樹脂の表面積に大きく依存し相反する性質のため、両立が困難であった通液性(SFC/表面積が小さい方が好適)と吸水速度(FSR/表面積が大きい方が好適)について、本発明に係る製造方法では高く両立させることができる。特に、本発明の製造方法は、上記実施例が示すように、特にFSRが0.30[g/g/s]以上の高吸水速度、及び、SFCが70[×10−7・cm・s・g−1]以上の高通液性を両立することができる製造方法である。本発明は、かかる衛生材料等に好適な高SFC及び高FSRの吸水性樹脂の製造方法に好適に使用できる。
【0325】
従来、吸水性樹脂の吸水速度や通液性等の改善には、上記特許文献1〜50等が知られているが、本発明では特定のゲル粉砕(1)〜(4)の少なくとも1つによって、吸水速度(例えばFSR)や通液性(例えばSFC)の改善及びそれらの両立が可能であることを見いだした。
【産業上の利用可能性】
【0326】
本発明の製造方法により製造された吸水性樹脂粉末は、紙オムツ、生理用ナプキン及び医療用保血剤等の衛生用品に有用である。又、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤及び青果物等の鮮度保持剤、肉類及び魚介類のドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物や土壌等の保水剤、結露防止剤、止水剤やパッキング剤、並びに人工雪等の種々の用途にも使用できる。
【符号の説明】
【0327】
11 ケーシング
12 台
13 スクリュー
14 供給口
15 ホッパー
16 押出口
17 多孔板
18 回転刃
19 リング
20 逆戻り防止部材
20a 帯状突起(逆戻り防止部材)
21 モーター
22 筋状突起
図1
図2
図3