特許第5676591号(P5676591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5676591殺真菌活性を有する酵母および殺真菌剤の組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676591
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】殺真菌活性を有する酵母および殺真菌剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/02 20060101AFI20150205BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20150205BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20150205BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   A01N63/02 C
   A01N43/653 C
   A01N43/40 101A
   A01P3/00
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-516576(P2012-516576)
(86)(22)【出願日】2010年6月22日
(65)【公表番号】特表2012-530742(P2012-530742A)
(43)【公表日】2012年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2010003817
(87)【国際公開番号】WO2010149369
(87)【国際公開日】20101229
【審査請求日】2013年5月15日
(31)【優先権主張番号】09163602.7
(32)【優先日】2009年6月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイビーズ,ピーター・ハワード
(72)【発明者】
【氏名】エビングハウス,デイルク
(72)【発明者】
【氏名】ゲルツ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】カルボンヌ,ステフアンヌ
【審査官】 太田 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−528030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 63/00
A01N 63/02
A01N 43/40
A01N 43/653
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましくない微生物に対して植物または植物部分を保護するための方法であって、
a)化学殺真菌剤を用いた植物または植物部分の処理;および
b)酵母を用いた植物または植物部分の処理
の段階を含み、
段階a)は、核果およびイチゴについては収穫前60日から7日に、または仁果については収穫前100日から14日に行い、段階b)は、収穫前14日から1日に行うことを特徴とし、ここで
段階a)の化学殺真菌剤は、テブコナゾール、フルオピラムから選択され
段階b)の処理は、メチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)NRRL Y−30752株またはこの変異株の生物学的に純粋な培養物を含む、方法。
【請求項2】
段階a)の化学殺真菌剤は、テブコナゾールおよびフルオピラムの混合物である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、植物病原真菌もしくはこの他の望ましくない微生物により引き起こされる、収穫された果実または野菜の損失を低減するとともに、植物および植物部分の総体的な被害を低減するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、生長期間中、収穫期および収穫後に果実および野菜を保護するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵母メチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)、特にNRRL Y−30752株はUS 6,994849 B2により公知である。この酵母は、植物病原真菌に対して植物および植物部分をよく保護する。しかしながら、このような酵母は厳しい病害圧力の状況下では十分に満足の行く働きをしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,994,849号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、a)殺真菌活性を有する酵母(本発明においては、生物学的防除剤とも呼ぶ。)、特にメチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)、極めて特にメチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)NRRL Y−30752株およびb)少なくとも一つの化学殺真菌剤を含む組成物が、殺真菌活性を相乗的に高めることが分かっている。
【0005】
本発明の組成物には、農業的に許容できる有効期間を持つ、安定な単一組成物に製剤化される、または使用時に混合される(例えば、タンク混合)という利点がある。
【0006】
さらに、本発明による組成物は、本発明に記載の生物学的防除剤と殺真菌剤との相乗効果により、植物、植物部分または植物の繁殖材の処理において、驚くほど高い殺真菌活性を示す。
【0007】
種子および/または植物または植物部分を処理する方法も提供する。この方法は、(a)少なくとも一つの生物学的防除剤および少なくとも一つの殺真菌剤を有効量含む組成物を提供し、(b)この組成物を植物に施用する段階を含む。この組成物は、種子被覆、灌注の形態、および/または直接畝間に、および/または葉面噴霧として等の任意の所望の方法で施用してよく、また出芽前もしくは出芽後のいずれか、または両方のときに施用してもよい。言い換えると、この組成物は、種子、植物、または植物の果実に、もしくは植物が生育しているまたは生育が望まれる土壌に施用することができる。
【0008】
好ましくは、本発明による組成物は果実、野菜および花の保護に特に有効である。
【0009】
本発明の前述およびこの他の態様について、以下に記載の詳細な記述および実施例において詳細に説明する。
【0010】
本発明の組成物は、線虫および/または真菌に寄生された環境において、生物学的防除剤または昆虫防除剤のいずれかを単独で施用した場合に予想されるのと比べ、より大きな植物の活力および収量を提供することが分かっている。生物学的防除剤は生菌または休眠等の任意の生理学的状態で供給してよい。休眠酵母は例えば凍結、乾燥または凍結乾燥して供給してよい。
【0011】
生物学的防除剤、特にメチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)は、10cfu/g(g当たりのコロニー形成単位)を超える濃度、好ましくは10cfu/gを超える濃度、さらに好ましくは10cfu/g、最も好ましくは10cfu/gで供給すると、生物学的に有効である。
【0012】
組成物に使用される少なくとも一つの生物学的防除剤の量は、最終剤型ならびに使用される植物または種子の大きさまたは種類に応じて変えることができる。好ましくは、組成物中の少なくとも一つの生物学的防除剤は、配合全体に対して約2%(w/w)から約80%(w/w)存在する。より好ましくは、組成物中の少なくとも一つの生物学的防除剤は、配合全体の約5重量%(w/w)から約65重量%(w/w)、最も好ましくは約10重量%(w/w)から約60重量%(w/w)である。
【0013】
組成物に使用される少なくとも一つの殺真菌剤の量は、最終剤型ならびに処理される植物および種子の大きさに応じて変えることができる。好ましくは、少なくとも一つの殺真菌剤は、配合全体に対して約0.1%(w/w)から約80%(w/w)である。より好ましくは、殺真菌剤は、約1%(w/w)から約60%(w/w)、最も好ましくは約10%(w/w)から約50%(w/w)の量で存在する。
【0014】
本発明で使用される生物学的防除剤の化学殺真菌剤に対する比は、次の通りである。通常、生物学的防除剤の化学殺真菌剤に対する比は1:100から250:1の範囲内である。好ましくは、生物学的防除剤の化学殺真菌剤に対する比は、1:10から100:1の範囲内である。さらにより好ましくは、この比は1:5から50:1の範囲内である。これらの比は全て、10cfu/g以上の酵母調整品を使った場合に適用される。
【0015】
生物学的防除剤、特に酵母、中でも特にメチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)NRRL Y−30752株の好ましい施用量は、0.5から8Kg/haの範囲内である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による組成物は1つ以上の殺真菌剤を含む。これらの殺真菌剤は、以下に挙げるものから選択することができる。
【0017】
(F1)核酸合成阻害剤、例えば、ベナラキシル、ベナラキシル−M、ブピリメート、クロジラコン、ジメチリモール、エチリモール、フララキシル、ヒメキサゾール、メタラキシル、メタラキシル−M、オフラセ、オキサジキシルおよびオキソリン酸。
【0018】
(F2)有糸分裂および細胞分裂の阻害剤、例えば、ベノミル、クロルフェナゾール、ジエトフェンカルブ、エタボキサム、フベリダゾール、ペンシクロン、チオファネート、チオファネート−メチルおよびゾキサミド。
【0019】
(F3)呼吸阻害剤、例えば、CI呼吸阻害剤としてジフルメトリム、CII呼吸阻害剤として、ビキサフェン、ボスカリド、カルボキシン、フェンフラム、フルトラニル、フルオピラム、フラメトピル、フルメシクロックス、イソピラザム(9R成分)、イソピラザム(9S成分)、メプロニル、オキシカルボキシン、ペンチオピラドおよびチフルザミド、CIII呼吸阻害剤として、アミスルブロム、アゾキシストロビン、シアゾファミド、ジモキシストロビン、エネストロブリン、ファモキサドン、フェナミドン、フルオキサストロビン、クレソキシム−メチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、ピリベンカルブおよびトリフロキシストロビン。
【0020】
(F4)例えば、ビナパクリル、ジノカップ、フルアジナムおよびメプチルジノカップのような脱共役剤として作用することができる化合物。
【0021】
(F5)ATP産生阻害剤、例えば、酢酸フェンチン、塩化フェンチン、水酸化フェンチンおよびシルチオファム。
【0022】
(F6)アミノ酸および/またはタンパク質生合成阻害剤、例えば、アンドプリム、ブラストサイジン−S、カスガマイシン、カスガマイシン塩酸塩水和物およびメパニピリム。
【0023】
(F7)シグナル伝達阻害剤、例えば、フェンピクロニルおよびキノキシフェン。
【0024】
(F8)脂質および膜合成阻害剤、例えば、ビフェニル、クロゾリネート、エディフェンホス、エトリジアゾール、ヨードカルブ、イプロベンホス、イソプロチオラン、プロシミドン、プロパモカルブ、プロパモカルブ塩酸塩、ピラゾホス、トルクロホス−メチルおよびビンクロゾリン。
【0025】
(F9)エルゴステロール生合成阻害剤、例えば、アルジモルフ、アザコナゾール、ビテルタノール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジクロブトラゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾール−M、ドデモルフ、酢酸ドデモルフ、エポキシコナゾール、エタコナゾール、フェナリモル、フェンブコナゾール、フェンヘキサミド、フェンプロピジン、フェンプロピモルフ、フルキンコナゾール、フルルプリミドール、フルシラゾール、フルトリアホール、フルコナゾール、ファーコナゾール−シス、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ナフチフィン、ヌアリモール、オキスポコナゾール、パクロブトラゾール、ペフラゾエート、ペンコナゾール、ピペラリン、プロクロラズ、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、ピリブチカルブ、ピリフェノックス、キンコナゾール、シメコナゾール、スピロキサミン、テブコナゾール、テルビナフィン、テトラコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、トリデモルフ、トリフルミゾール、トリホリン、トリチコナゾール、ウニコナゾール、ビニコナゾールおよびボリコナゾール。
【0026】
(F10)細胞壁合成阻害剤、例えば、ベンチアバリカルブ、ジメトモルフ、フルモルフ、イプロバリカルブ、マンジプロパミド、ポリオキシン、ポリオキソリム、プロチオカルブ、バリダマイシンAおよびバリフェナール。
【0027】
(F11)メラニン生合成阻害剤、例えば、カルプロパミド、ジクロシメット、フェノキサニル、フタリド、ピロキロンおよびトリシクラゾール。
【0028】
(F12)例えば、アシベンゾラル−S−メチル、プロベナゾールおよびチアジニルのような、宿主の防御を誘起することができる化合物。
【0029】
(F13)例えば、ボルドー液、カプタホール、キャプタン、クロロタロニル、ナフテン酸銅、酸化銅、塩基性塩化銅、水酸化銅等の銅調製物、硫酸銅、ジクロフルアニド、ジチアノン、ドジン、ドジン遊離塩基、ファーバム、フルオロホルペット、ホルペット、グアザチン、酢酸グアザチン、イミノクタジン、イミノクタジンアルベシル酸塩、イミノクタジン三酢酸塩、マンカッパー、マンコゼブ、マンネブ、メチラム、メチラム亜鉛、オキシン銅、プロパミジン、プロピネブ、多硫化カルシウムを含む硫黄および硫黄調製物、チラム、トリルフルアニド、ジネブおよびジラムのような多部位作用を有することができる化合物。
【0030】
(F14)さらに、例えば、2,3−ジブチル−6−クロロチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン、エチル(2Z)−3−アミノ−2−シアノ−3−フェニルプロパ−2−エノエート、ペンフルフェン(N−[2−(1,3−ジメチルブチル)フェニル]−5−フルオロ−1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド)、N−{2−[1,1’−ビ(シクロプロピル)−2−イル]フェニル}−3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド、3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−N−(3’,4’,5’−トリフルオロビフェニル−2−イル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド、3−(ジフルオロメチル)−N−[4−フルオロ−2−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド、(2E)−2−(2−{[6−(3−クロロ−2−メチルフェノキシ)−5−フルオロピリミジン−4−イル]オキシ}フェニル)−2−(メトキシイミノ)−N−メチルエタンアミド、(2E)−2−{2−[({[(2E,3E)−4−(2,6−ジクロロフェニル)ブタ−3−エン−2−イリデン]アミノ}オキシ)メチル]フェニル}−2−(メトキシイミノ)−N−メチルエタンアミド、2−クロロ−N−(1,1,3−トリメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−4−イル)ピリジン−3−カルボキサミド、N−(3−エチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)−3−(ホルミルアミノ)−2−ヒドロキシベンズアミド、5−メトキシ−2−メチル−4−(2−{[({(1E)−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチリデン}アミノ)オキシ]メチル}フェニル)−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン、(2E)−2−(メトキシイミノ)−N−メチル−2−(2−{[({(1E)−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エチリデン}アミノ)オキシ]メチル}フェニル)エタンアミド、(2E)−2−(メトキシイミノ)−N−メチル−2−{2−[(E)−({1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}イミノ)メチル]フェニル}エタンアミド、(2E)−2−{2−[({[(1E)−1−(3−{[(E)−1−フルオロ−2−フェニルエテニル]オキシ}フェニル)エチリデン]アミノ}オキシ)メチル]フェニル}−2−(メトキシイミノ)−N−メチルエタンアミド、1−(4−クロロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)シクロヘプタノール、メチル1−(2,2−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル)−1H−イミダゾール−5−カルボキシレート、N−エチル−N−メチル−N’−{2−メチル−5−(トリフルオロメチル)−4−[3−(トリメチルシリル)プロポキシ]フェニル}イミドホルムアミド、N’−{5−(ジフルオロメチル)−2−メチル−4−[3−(トリメチルシリル)プロポキシ]フェニル}−N−エチル−N−メチルイミドホルムアミド、O−{1−[(4−メトキシフェノキシ)メチル]−2,2−ジメチルプロピル}1H−イミダゾール−1−カルボチオエート、N−[2−(4−{[3−(4−クロロフェニル)プロパ−2−イン−1−イル]オキシ}−3−メトキシフェニル)エチル]−N−(メチルスルホニル)バリンアミド、5−クロロ−7−(4−メチルピペリジン−1−イル)−6−(2,4,6−トリフルオロフェニル)[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、プロパモカルブ−ホセチル、1−[(4−メトキシフェノキシ)メチル]−2,2−ジメチルプロピル1H−イミダゾール−1−カルボキシレート、1−メチル−N−[2−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2−ブトキシ−6−ヨード−3−プロピル−4H−クロメン−4−オン、2−フェニルフェノールおよび塩、3−(ジフルオロメチル)−1−メチル−N−[2−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]−1H−ピラゾール−4−カルボキシアミド、3,4,5−トリクロロピリジン−2,6−ジカルボニトリル、3−[5−(4−クロロフェニル)−2,3−ジメチルイソオキサゾリジン−3−イル]ピリジン、3−クロロ−5−(4−クロロフェニル)−4−(2,6−ジフルオロフェニル)−6−メチルピリダジン、4−(4−クロロフェニル)−5−(2,6−ジフルオロフェニル)−3,6−ジメチルピリダジン、キノリン−8−オール、キノリン−8−オール硫酸塩(2:1)(塩)、5−メチル−6−オクチル−3,7−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−アミン、5−エチル−6−オクチル−3,7−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−アミン、ベンチアゾール、ベトキサジン、カプシマイシン、カルボン、キノメチオナート、クロロネブ、クフラネブ、シフルフェナミド、シモキサニル、シプロスルファミド、ダゾメット、デバカルブ、ジクロロフェン、ジクロメジン、ジクロラン、ジフェンゾコート、ジフェンゾコートメチルサルフェート、ジフェニルアミン、エコメイト、フェリムゾン、フルメトベル、フルオピコリド、フルオロイミド、フルスルファミド、フルチアニル、ホセチル−アルミニウム、ホセチル−カルシウム、ホセチル−ナトリウム、ヘキサクロロベンゼン、イルママイシン、イソチアニル、メタスルホカルブ、メチル(2E)−2−{2−[({シクロプロピル[(4−メトキシフェニル)イミノ]メチル}チオ)メチル]フェニル}−3−メトキシアクリレート、メチルイソチオシアネート、メトラフェノン、(5−ブロモ−2−メトキシ−4−メチルピリジン−3−イル)(2,3,4−トリメトキシ−6−メチルフェニル)−メタノン、ミルディオマイシン、トルニファニド、N−(4−クロロベンジル)−3−[3−メトキシ−4−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)フェニル]プロパンアミド、N−[(4−クロロフェニル)(シアノ)メチル]−3−[3−メトキシ−4−(プロパ−2−イン−1−イルオキシ)フェニル]プロパンアミド、N−[(5−ブロモ−3−クロロピリジン−2−イル)メチル]−2,4−ジクロロピリジン−3−カルボキシアミド、N−[1−(5−ブロモ−3−クロロピリジン−2−イル)エチル]−2,4−ジクロロピリジン−3−カルボキシアミド、N−[1−(5−ブロモ−3−クロロピリジン−2−イル)エチル]−2−フルオロ−4−ヨードピリジン−3−カルボキシアミド、N−{(Z)−[(シクロプロピルメトキシ)イミノ][6−(ジフルオロメトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル]メチル}−2−フェニルアセトアミド、N−{(E)−[(シクロプロピルメトキシ)イミノ][6−(ジフルオロメトキシ)−2,3−ジフルオロフェニル]メチル}−2−フェニルアセトアミド、ナタマイシン、ニッケルジメチルジチオカルバメート、ニトロタール−イソプロピル、オクチリノン、オキサモカルブ、オキシフェンチイン、ペンタクロロフェノールおよび塩、フェナジン−1−カルボン酸、フェノトリン、亜リン酸およびこの塩、プロパモカルブホセチレート、プロパノシン−ナトリウム、プロキナジド、ピロールニトリン、キントゼン、S−プロパ−2−エン−1−イル5−アミノ−2−(1−メチルエチル)−4−(2−メチルフェニル)−3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−カルボチオエート、テクロフタラム、テクナゼン、トリアゾキシド、トリクラミド、5−クロロ−N’−フェニル−N’−プロパ−2−イン−1−イルチオフェン−2−スルホノヒドラジドおよびザリラミドのような化合物。
【0031】
好ましい実施形態においては、殺真菌剤は以下のリストから選択される。
【0032】
メタラキシル、メタラキシル−M、ボスカリド、フルオピラム、ビキサフェン、ペンチオピラド、アゾキシストロビン、ファモキサドン、フェナミドン、クレソキシム−メチル、ピラクロストロビンおよびトリフロキシストロビン。
【0033】
本発明による好ましい組成物は、メチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)、特にNRRL Y−30752株である生物学的防除剤および(F1)から(F14)のリストから選択される少なくとも一つの殺真菌防除剤を含む。
【0034】
本発明による特に好ましい組成物は、メチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)、特にNRRL Y−30752株である生物学的防除剤および以下のリストから選択される少なくとも一つの殺真菌防除剤を含む。メタラキシル、メタラキシル−M、ボスカリド、フルオピラム、ビキサフェン、ペンチオピラド、アゾキシストロビン、ファモキサドン、フェナミドン、クレソキシム−メチル、ピラクロストロビンおよびトリフロキシストロビン。
【0035】
さらに特に好ましい組成物は表1に示すものである。
【0036】
【表1】
【0037】
最も好ましいのは表2による組成物である。
【0038】
【表2】
【0039】
以下に記載する本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、NRRL Y−30752の生物学的に純粋な培養物を同定する特徴を全て有するメチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)の生物学的に純粋な株を含む組成物が提供される。
【0040】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、NRRL Y−30752の生物学的に純粋な培養物を同定する特徴を全て有するメチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)の生物学的に純粋な変異体を含む組成物が提供される。
【0041】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、有害な微生物は、ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)、アスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ペニシリウム・ディギタータム(Penicillium digitatum)、ペニシリウム・エクスパンザム(Penicillium expansum)、リゾプス・ストロニファー(Rhizopus stolonifer)アルターナリア属種(Alternaria spp.)、モリニリア属種(Molinilia spp.)およびフザリウム属種(Fusarium spp.)からなる群から選択される。
【0042】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、酵母は生菌状態および休眠状態からなる群から選択される生理学的状態で供給される。
【0043】
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、酵母の属、メチニコビア属(Metschnikowia)は、NRRL Y−30752として同定される種、メチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)を、またはこの任意の株を、もしくはこの株の任意の変異体を同定する特徴を全て有する。
【0044】
特に好ましいのは、仁果、核果および液果類、特にリンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリーおよびブラックベリーの処理である。
【0045】
特に好ましいのは、柑橘類、特にオレンジ、レモン、グレープフルーツおよびマンダリンの処理である。特に好ましいのは、熱帯果実、特にパパイヤ、パッションフルーツ、マンゴー、スターフルーツ、パイナップルおよびバナナの処理である。
【0046】
特に好ましいのは、ブドウの処理である。
【0047】
さらに好ましいのは、野菜、特にメロン、ウリ、レタスおよびジャガイモの処理である。
【0048】
さらに好ましいのは、花、球根、鉢物および樹木の処理である。
【0049】
本発明による組成物は、生長している植物または植物部分への施用に加え、収穫後の植物または植物部分を保護するために用いることもできる。
【0050】
本出願の範囲内において、「収穫後処理」は極めて広義に理解されるべきである。一方では、収穫後処理とは文字通り、果実および野菜が収穫された後の果実または野菜の処理を意味する。収穫後処理のために、果実または野菜を(例えば、WO2005/009474で開示された方法および装置を使用して)、液体中に浸漬またはダンプタンクもしくは灌注して、または刷毛塗り、燻蒸、塗布、煙霧(温または冷)して処理する。または果実をワックス状のまたは他の組成物で被覆してもよい。
【0051】
本発明によれば、収穫後および貯蔵病害は、例えば以下の真菌によって引き起こされる場合がある。
【0052】
コレトトリクム属種(Colletotrichum spp.)、例えば、コレトトリクム・ムサエ(Colletotrichum musae)、コレトトリクム・グロエオスポリオイダス(Colletotrichum gloeosporioides)、コレトトリクム・コッコデス(Colletotrichum coccodes);フザリウム属種(Fusarium spp.)、例えば、フザリウム・セミテクタム(Fusarium semitectum)、フザリウム・モニリホルメ(Fusarium moniliforme)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum);ベルチシリウム属種(Verticillium spp.)、例えば、ベルチシリウム・テオブロマエ(Verticillium theobromae);ニグロスポラ属種(Nigrospora spp.);ボトリチス属種(Botrytis spp.)、例えば、ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea);ゲオトリクム属種(Geotrichum spp.)、例えば、ゲオトリクム・カンディダム(Geotrichum candidum);ホモプシス属種(Phomopsis spp.)、ホモプシス・ナタレンシス(Phomopsis natalensis);ディプロディア属種(Diplodia spp.)、例えば、ディプロディア・シトリ(Diplodia citri);アルターナリア属種(Alternaria spp.)、例えば、アルターナリア・シトリ(Alternaria citri)、アルターナリア・アルターナタ(Alternaria alternata);フィトフトラ属種(Phytophthora spp.)、例えば、フィトフトラ・シトロフトラ(Phytophthora citrophthora)、フィトフトラ・フラガリエ(Phytophthora fragariae)、フィトフトラ・カクトルム(Phytophthora cactorum)、フィトフトラ・パラジチカ(Phytophthora parasitica);セプトリア属種(Septoria spp.)、例えば、セプトリア・デプレッサ(Septoria depressa);ムコール属種(Mucor spp.)、例えば、ムコール・ピリホルミス(Mucor piriformis);モニリニア属種(Monilinia spp.)、例えば、モニリニア・フルクチゲナ(Monilinia fructigena)、モニリニア・ラクサ(Monilinia laxa);ベンツリア属種(Venturia spp.)、例えば、ベンツリア・イナエクアリス(Venturia inaequalis)、ベンツリア・ピリナ(Venturia pyrina);リゾプス属種(Rhizopus spp.)、例えば、リゾプス・ストロニファー(Rhizopus stolonifer)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae);グロメレラ属種(Glomerella spp.)、例えば、グロメレラ・シングラタ(Glomerella cingulata);スクレロティニア属種(Sclerotinia spp.)、例えば、スクレロティニア・フルイチコラ(Sclerotinia fruiticola);セラトシスチス属種(Ceratocystis spp.)、例えば、セラトシスチス・パラドクサ(Ceratocystis paradoxa);ペニシリウム属種(Penicillium spp.)、例えば、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、ペニシリウム・エクスパンザム(Penicillium expansum)、ペニシリウム・ディギタータム(Penicillium digitatum)、ペニシリウム・イタリカム(Penicillium italicum);グロエオスポリウム属種(Gloeosporium spp.)、例えば、グロエオスポリウム・アルブム(Gloeosporium album)、グロエオスポリウム・ペレナンス(Gloeosporium perennans)、グロエオスポリウム・フルクチゲヌム(Gloeosporium fructigenum)、グロエオスポリウム・シングラタ(Gloeosporium singulata);フィリクテナ属種(Phlyctaena spp.)、例えば、フィリクテナ・バガブンダ(Phlyctaena vagabunda);シリンドロカルポン属種(Cylindrocarpon spp.)、例えば、シリンドロカルポン・マリ(Cylindrocarpon mali);ステムフィリウム属種(Stemphyllium spp.)、例えば、ステムフィリウム・ベシカリウム(Stemphyllium vesicarium);ファシジオピクニス属種(Phacydiopycnis spp.)、例えば、ファシジオピクニス・マリルム(Phacydiopycnis malirum);チエラビオプシス属種(Thielaviopsis spp.)、例えば、チエラビオプシス・パラドキシ(Thielaviopsis paradoxy);アスペルギルス属種(Aspergillus spp.)、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カルボナリウス(Aspergillus carbonarius);ネクトリア属種(Nectria spp.)、例えば、ネクトリア・ガリゲナ(Nectria galligena);およびペジクラ属種(Pezicula spp.)。
【0053】
本発明によれば、収穫後貯蔵病害は、例えば、瘡痂病(scald)、焼け、軟化、老化損傷、皮目斑点、苦痘病、褐変、みつ病、導管損傷、CO障害、CO欠乏およびO欠乏である。
【0054】
本発明により処理される果実、切り花および野菜は、特に以下に挙げるものから選択される。
【0055】
穀類、例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、イネ、モロコシなど;ビート類、例えば、テンサイおよび飼料用ビート;仁果、核果および液果類、例えば、リンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリーおよびブラックベリー;マメ科植物、例えば、インゲンマメ、ヒラマメ、エンドウマメ、ダイズ;油糧植物、例えば、アブラナ、カラシナ、ケシ、オリーブ、ヒマワリ、ココナッツ、ヒマ、カカオ、ラッカセイ;ウリ科、例えば、カボチャ(pumpkins)、ガーキン、メロン、キュウリ、スカッシュ(squashes);繊維植物、例えば、綿花、アマ、アサ、ジュート;柑橘類果実、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、マンダリン;熱帯果実、例えば、パパイヤ、パッションフルーツ、マンゴー、スターフルーツ、パイナップル、バナナ;野菜、例えば、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツおよびカブ等のアブラナ科、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、トウガラシおよびアマトウガラシ;月桂樹様植物(laurel−like plants)、例えば、アボカド、シナモンおよびクスノキ;または、トウモロコシ、タバコ、ナッツ、コーヒー、サトウキビ、チャ、ブドウ、ホップ、ゴム料植物等の植物、ならびに観賞植物、例えば、切り花、バラ、ガーベラおよび球根、灌木、針葉樹等の落葉樹および常緑樹。栽培植物をここに列挙したのは、本発明を例証することが目的であり、本発明をこれらに限定するものではない。
【0056】
本発明の別の好ましい実施形態においては、植物または植物部分の処理は2つの段階
a)化学殺真菌剤を用いた段階、および
b)酵母を用いた段階
で行われ、2つの施用a)およびb)の間の時間間隔は以下の通りとする。
【0057】
【表3】
全ての場合において、化学殺真菌剤は植物生長段階(BBCH)50から85で施用され、酵母は収穫後を含む植物生長段階(BBCH)80以降で施用されるものとする。
【0058】
段階a)の化学殺真菌剤は、好ましくは
フェンヘキサミド、テブコナゾール、フルキンコナゾール、トリアジメノール、トリアジメホン、ジフェンコナゾール、エポキシコナゾール、ペンコナゾール、ビテルタノール、プロピコナゾール、ミクロブタニル、イマザリル、プロクロラズ、スピロキサミン、トリデモルフ、フェンプロピモルフ、フェンプロピジン、トリフロキシストロビン、アゾキシストロビン、クレソキシム−メチル、ピラクロストロビン、フェナミドン、フェノキサドン、ピリメタニル、シプロジニル、メパニピリム、ジカルボキシアミド類、イプロジオン、プロピネブ、マンコゼブ、ホセチル−アルミニウム、ジメトモルフ、フルアジナム、イプロバリカルブ、カルベンダジム、チオファネートメチル、チアベンダゾール、フルオピコリド、メタラキシル、メタラキシル−M、フルオピラム、ビキサフェン、ボスカリド、イソピラザム、ペンチオピラドおよびジチオカルバメートから選択される。
【0059】
段階a)の特に好ましい化学殺真菌剤は、フルオピラム、テブコナゾール、フェンヘキサミドおよびトリフロキシストロビンである。
【0060】
本実施形態の段階a)を行うために最も好ましい化学殺真菌剤は、フルオピラムまたはテブコナゾールである。
【0061】
さらには、段階a)における化学殺真菌剤は、好ましくは以下の化学殺真菌剤の2つ、3つ、またはそれ以上を含む混合物から選択される。
フェンヘキサミド、テブコナゾール、フルキンコナゾール、トリアジメノール、トリアジメホン、ジフェンコナゾール、エポキシコナゾール、ペンコナゾール、ビテルタノール、プロピコナゾール、ミクロブタニル、イマザリル、プロクロラズ、スピロキサミン、トリデモルフ、フェンプロピモルフ、フェンプロピジン、トリフロキシストロビン、アゾキシストロビン、クレソキシム−メチル、ピラクロストロビン、フェナミドン、フェノキサドン、ピリメタニル、シプロジニル、メパニピリム、ジカルボキシアミド類、イプロジオン、プロピネブ、マンコゼブ、ホセチル−アルミニウム、ジメトモルフ、フルアジナム、イプロバリカルブ、カルベンダジム、チオファネートメチル、チアベンダゾール、フルオピコリド、メタラキシル、メタラキシル−M、フルオピラム、ビキサフェン、ボスカリド、イソピラザム、ペンチオピラドおよびジチオカルバメート。
【0062】
段階b)の酵母は、好ましくは植物または植物部分に定着することができる酵母である。特に好ましくは、メチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)種の酵母であり、極めて特に好ましくはメチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)NRRL Y−30752株の酵母である。
【0063】
最も好ましくは、段階a)はフルオピラムまたはテブコナゾールを用いて行われ、段階b)はメチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)NRRL Y−30752を用いて行われる。
【0064】
BBCHは植物の生長段階を示し、「Growth stages of mono−and dicotyledonous plants」、BBCH Monograph,2nd Edition, 2001, Uwe Meier Ed., Federal Biological Research Centre for Agriculture and Forestryに記載されている。
【0065】
驚くべきことに、この方法により、望ましくない微生物に対する植物または植物部分の極めて高いレベルでの防除が達成される。化学殺真菌剤のみ、または生物学的殺真菌剤のみのいずれかを使用する、この分野における処理の状況と比較して、この方法は、望ましくない微生物を高レベルで防除することと、処理された植物または植物部分における化学殺真菌剤の残留を極めて低レベルにすることとを兼ね備えている。
【0066】
本発明は、土壌(即ち畝間)、植物の一部(即ち灌注)または播種前の種子(即ち種子被覆または種子粉衣)のいずれかに、通常用いられる様々な剤型のうち任意の剤型で、有効量を施用することにより植物を処理する方法も提供する。通常用いられる剤型としては、溶液(SL)、乳剤(EC)、水和剤(WP)、懸濁剤(SCおよびFS)、水和剤(WP)、水溶剤(SP)、粒剤(GR)、乳懸濁剤(SE)、活性化合物を含浸した天然および合成物およびポリマー物質中の超微粒徐放性(CR)カプセルが挙げられる。一実施形態においては、昆虫防除剤および生物学的防除剤は、即時使用可能な剤型として利用できる、または使用時に一緒に混合される粉剤として製剤化される。いずれの実施形態でも、粉剤は播種前または播種時に土壌と混合してよい。代替の実施形態においては、生物学的防除剤または昆虫防除剤のいずれか一つまたは両方は、処理時に一緒に混合される液剤である。当業者であれば、本発明の組成物の有効量は、組成物の最終剤型ならびに処理する植物の大きさまたは種子の大きさに応じて決まることを理解する。
【0067】
最終剤型および施用方法に応じて、この組成物に1つ以上の好適な添加物を導入することもできる。粉剤、粒剤またはラテックス剤のカルボキシメチルセルロースならびに天然および合成ポリマー、例えばアラビアゴム、キチン、ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニル等、ならびにセファリンおよびレシチン等の天然リン脂質および合成リン脂質等の固着剤をこの組成物に添加することができる。
【0068】
好ましい実施形態においては、組成物は単一の安定な溶液または乳液または懸濁液に製剤化される。溶液では、活性化合物(即ち昆虫防除剤)は生物学的防除剤を添加する前に溶媒に溶解させる。好適な液体溶媒としては、キシレン、トルエンまたはアルキルナフタレン等の石油系芳香族化合物、シクロヘキサンまたはパラフィン類等の脂肪族炭化水素類、例えば、石油留分、鉱物油および植物油、ブタノールまたはグリコール等のアルコール類ならびにこれらのエーテル類およびエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシド等の高極性溶媒が挙げられる。乳液または懸濁液では、液体媒体は水である。一実施形態においては、昆虫防除剤および生物学的防除剤は、個別の液体で懸濁され、施用時に混合される。懸濁液の好ましい実施形態においては、昆虫防除剤および生物学的防除剤は、少なくとも2年の有効期間の、即時使用可能な剤型で混合される。使用の際には、液体を葉面に、または作物の植え付け時に畝間に散布または噴霧することができる。液体組成物は、以下に限定されないが、細流灌漑、スプリンクラー、土壌注入または土壌灌注等の種々の技術を利用して、種子の発芽前の土壌に、または根に接触している土壌に直接導入することができる。
【0069】
場合により、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、ならびにクエン酸およびアスコルビン酸等の有機酸、塩酸または硫酸等の無機酸等の安定化剤および緩衝液を添加することができる。殺生物剤を添加することもできる。殺生物剤としては、ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド放出剤およびp−ヒドロキシ安息香酸等の安息香酸誘導体を挙げることができる。
【0070】
一実施形態においては、固形または液体組成物は、活性炭、栄養素(肥料)等の選択的除草剤の有害な影響から種子を保護することができる機能性薬剤、ならびに発芽および生産物の品質またはこれらの両方を改善することができるこの他の薬剤をさらに含有する。
【0071】
特に好ましい実施形態においては、本発明の組成物は種子処理剤として製剤化される。種子処理剤は、少なくとも一つの昆虫防除剤および少なくとも一つの生物学的防除剤を含む。本発明によれば、種子処理用製品を種子に正確に、安全に、効率よく施用するために特別に設計および製造された処理施用装置を使用し、混合、散布またはこれらを組み合わせた従来の方法を用いて、種子は本明細書で開示された組成物の1つ以上の層で、実質的に均一に被覆される。このような装置は、回転式塗布機、ドラム式塗布機、流動層技術、噴流層、回転式噴霧機またはこれらの組み合わせ等の様々な種類の被覆技術を使用する。本発明の処理剤等の液体種子処理剤は、回転「噴霧」盤または噴霧パターンで動きつつ種子に種子処理剤を均一に吹き付ける噴霧ノズルのいずれかによって施用することができる。好ましくは、次に種子は、追加時間を設けて混ぜられ、またはひっくり返されて、さらなる散布処理および乾燥が実施される。発芽および出芽の均一性を向上させるために、種子は、本発明の組成物で被覆する前に、シードプライミングをしてもよいし、しなくてもよい。代替の実施形態においては、乾燥粉剤を移動中の種子上に計量供給し、完全に行き渡るまで混合させることができる。
【0072】
種子は、バッチ式または連続被覆法によって被覆してよい。連続被覆法の実施形態においては、連続流通装置が、種子流量および種子処理用製品の両方を、同時に計測する。スライドゲート、コーン(cone)および開口部、シードホイール(seed wheel)または計量装置(ベルト式またはダイバータ式)が、種子流量を調整する。一旦処理装置を通過する種子流速が決まると、種子処理剤の流速は、種子が種子処理装置を通過する際に、所望量が種子に供給されるように、種子流速に較正される。さらに、コンピューターシステムを用いて種子の被覆装置への流入をモニターすることにより、適切な種子量の一定の流量を維持してもよい。
【0073】
バッチ式被覆法の実施形態においては、バッチ処理装置が所定量の種子を計量し、密閉処理容器またはボウル内に種子を投入し、次いで相当量の種子処理剤が施用される。次に、このバッチは、次のバッチ処理の準備のために、処理容器から放出される。コンピューター制御システムにより、このバッチ処理は自動化され、バッチ処理段階を連続的に繰り返すことができる。
【0074】
いずれの実施形態においても、種子被覆機器は使用者の関与なしで、種々の装置を始動および停止させるプログラム可能な論理制御器により、任意に操作することができる。このシステムの構成部品は、Gustafson Equipment社(Shakopee、MN)等の複数の供給元から市販されている。
【0075】
本発明の組成物を含む種子処理剤には種々の添加剤を加えることができる。結合剤を添加することができ、結合剤としては、好ましくは被覆する種子に対し植物毒性がない、天然または合成の接着性ポリマーからなるものが挙げられる。任意の種々の着色剤を用いてもよく、着色剤としては、ニトロソ、ニトロ、モノアゾ、ビスアゾおよびポリアゾを含むアゾ、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、キサンテン、メチン、アクリジン、チアゾール、チアジン、インダミン、インドフェノール、アジン、オキサジン、アントラキノンおよびフタロシアニンに分類される有機発色団が挙げられる。添加できるこの他の添加剤としては、鉄、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、モリブデンおよび亜鉛の塩等の微量栄養素が挙げられる。種子表面への処理を保持するため、ポリマーまたはこの他の防塵剤を施用することができる。
【0076】
この他の従来の種子処理用添加剤としては、以下に限定されるものではないが、被覆剤、湿潤剤、緩衝剤および多糖類が挙げられる。少なくとも一つの農業的に許容できる担体を水、固形剤または乾燥粉剤等の種子処理剤に添加することができる。乾燥粉剤は、炭酸カルシウム、石膏、バーミキュライト、タルク、腐植土、活性炭および種々の亜リン酸化合物等の、種々の物質から誘導することができる。
【0077】
一実施形態においては、種子被覆組成物は、有機または無機の、天然または合成の成分である少なくとも一つの賦形剤を含むことができ、活性成分を賦形剤に結合させて、種子への施用を容易にすることができる。好ましくは、賦形剤は、粘土、天然または合成のケイ酸塩、シリカ、樹脂、ワックス、固形肥料(例えば、アンモニウム塩)等の不活性固体、カオリン、粘土、タルク、石灰、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイトまたは珪藻土等の天然の土壌鉱物、またはシリカ、アルミナもしくはケイ酸塩、特にケイ酸アルミニウムまたはケイ酸マグネシウム等の合成鉱物である。
【0078】
発芽して、線虫および/または病原真菌による攻撃を受けやすい植物となる任意の植物の種子は、本発明による処理を受けることができる。好適な種子としては、アブラナ属の作物、野菜、果実、樹木、繊維作物、油料作物、塊茎作物、コーヒー、草花、マメ科植物、穀類ならびにこの他の単子葉種および双子葉種植物の種子が挙げられる。好ましくは、被覆する作物の種としては、以下に限定されるものではないが、ダイズ、ピーナッツ、タバコ、イネ科牧草類、コムギ、オオムギ、ライムギ、モロコシ、イネ、ナタネ、テンサイ、ヒマワリ、トマト、コショウ、インゲンマメ、レタス、ジャガイモおよびニンジンの種が挙げられる。最も好ましくは、綿花またはトウモロコシ(スイートコーン、飼料用トウモロコシ、種トウモロコシまたはポップコーン)の種がこの組成物により被覆される。
【0079】
本発明による組成物は、農業的に有効な量の少なくとも一つの環境に優しい生物学的防除剤および少なくとも一つの昆虫防除剤を組み合わせることにより、総体的な植物の活力および収量を予想外に改善させる。これらの予想外の結果は生物学的防除剤の殺線虫性および/または殺真菌性ならびに昆虫防除剤の塊根増強性の組み合わせによるものである。
【0080】
さらなる利点は、個々の活性化合物それぞれと比較して、本発明の薬剤の殺虫性および/または殺真菌性活性は相乗的に増加していることであり、これは個別に活性化合物を施用した場合の両方の活性の合計を超える。このように、施用される活性化合物の量を最適化することが可能である。
【0081】
本発明の組み合わせは、特に遺伝子組換え種子に用いることもでき、これによりこの種子から出芽した植物は、害虫および病原菌に対抗するタンパク質を発現することができることも利点であると考えられる。このような種子を本発明の薬剤で処理することにより、ある特定の害虫および病原菌を、例えば殺虫性タンパク質の発現により予め防除することができ、さらに驚くべきことには、本発明の薬剤により、相乗的活性が補われる。このことにより、害虫および病原菌の寄生に対する保護の効率性がなお一層改善される。
【0082】
本発明の薬剤は、既述したように、農業、温室、森林、造園またはぶどう園において使用される全ての種類の植物品種の種子の保護に適している。特に、これは、トウモロコシ、ピーナッツ、キャノーラ、アブラナ、ケシ、オリーブ、ココナッツ、カカオ、ダイズ、綿花、ビート(例えば、テンサイおよび飼料用ビート)、イネ、キビ、コムギ、オオムギ、オートムギ、ライムギ、ヒマワリ、サトウキビまたはタバコの種子に関する。本発明の薬剤は、既述したように果樹植物および野菜の種の処理にも適している。特に重要なのは、トウモロコシ、ダイズ、綿花、コムギおよびキャノーラまたはアブラナの種子の処理である。従って、例えば(1)の組み合わせは特にトウモロコシの種子の処理に適している。
【0083】
既述したように、本発明の薬剤で遺伝子組換え種子を処理することは特に重要である。 これは、特別な殺虫特性を有するポリペプチドの発現を制御する少なくとも一つの異種遺伝子を一般的に含む植物の種子に関する。遺伝子組換え種子の異種遺伝子は、バチルス属(Bacillus)、リゾビウム属(Rhizobium)、シュードモナス属(Pseudomonas)、セラチア属(Serratia)、トリコデルマ属(Trichoderma)、クラビバクター属(Clavibacter)、グロムス属(Glomus)またはグリオクラディウム属(Gliocladium)等の微生物を由来とすることができる。本発明は特に、バチルス属種(Bacillus sp.)由来で、この遺伝子産物がヨーロッパ原産マツマダラメイガおよび/またはウエスタンコーンルートワーム(western corn rootworm)に対する活性を示す少なくとも一つの異種遺伝子を含む遺伝子組換え種子の処理に適している。特に好ましいのは、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来の異種遺伝子である。
【0084】
細菌胞子は、驚くべきことに化学昆虫防除剤の存在下でこの殺線虫性および/または殺真菌性を保持するだけでなく、植物根系に定着する能力が増強される。この能力が増強されることにより、殺線虫性および/または殺真菌性活性が増幅され、この結果活力が改善し、収量の改善につながる。
【0085】
本発明の発明対象を開示してきたが、本発明の多くの改変、置換および変形が可能であることは、この内容を踏まえれば明らかである。本発明は、具体的に記載されたものとは異なる方法によっても実施できることは理解されるべきである。このような改変、置換および変形は本発明の範囲内で行われるものとする。以下の請求項で用いられるように、「a」「the」等の冠詞は、これに続く対象語が単数または複数であることを示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0086】
この組成物の驚くべき活性および方法を以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0087】
Shemer(商標)は酵母メチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)NRRL Y−30752を含む56%WG剤型(顆粒水和剤)の商品である。この調整品は、メチニコビア・フルクチコラ(Metschnikowia fructicola)NRRL Y−30752を1.6×1010cfu/g(cfu/g=製品1g当たりのコロニー形成単位)以上含む。
【0088】
2008年7月および8月に、イタリアとフランスにおいてモモの樹木に施用した。テブコナゾールおよびフルオピラム200+200g SC剤(懸濁剤)を含む組成物を、3地点で約7日間の間隔をおき、BBCH81から85で、収穫前日数(PHI)7日で施用した。Shemer(商標)は、4地点でBBCH81から87で、PHI1日で施用した。3回目の施用計画においては、BBCH81で2回テブコナゾールおよびフルオピラムを施用した後、BBCH 85およびBBCH 87でShemerを2回施用した。全て7日間間隔で行い、Shemer(商標)の最終施用からのPHIは1日とした。
【0089】
全ての製剤は、モーター駆動散布器を用いて400L/haの水量で施用した。
【0090】
テブコナゾールおよびフルオピラムは150+150g ai/haで施用した。Shemer(商標)は、0.2%で施用した。これは0.8kg/haに相当する。Shemerは、1.6×1010cfu/g以上の有効成分を含むため、1ha当たり最小で1.3×1013cfuが施用された。
【0091】
果実の評価が行われ、200個の果実検体からモニリニア・フルクチゲナ(Monilinia fructigena)に感染した果実数を決定した。結果を処理当たりの%感染に換算し、未処理のプロットと比較して%コントロールを決定した。
【0092】
評価は最終施用後9日と13日に行った。Shemer(商標)では、平均28%病害コントロールとなった。テブコナゾールおよびフルオピラムでは75%コントロールであった。テブコナゾール+フルオピラムの施行2回の後Shemerの施行2回の計画では、89%コントロールであった。