【文献】
LEE A Y,PHARMACOGENETICS OF COMPLEMENT FACTOR H(Y402H) AND TREATMENT 以下備考,BRITISH JOURNAL OF OPHTHALMOLOGY,英国,2009年 5月 1日,V93 N5,P610-613,OF EXUDATIVE AGE-RELATED MACULAR DEGENERATION WITH RANIBIZUMAB
【文献】
KLEIN ROBERT J,COMPLEMENT FACTOR H POLYMORPHISM IN AGE-RELATED MACULAR DEGENERATION,SCIENCE,2005年 4月15日,V308 N5720,P385-389
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記抗VEGF抗体が、ハイブリドーマATCC(登録商標)HB10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合する請求項1又は2に記載の方法。
上記抗VEGF抗体が、次の重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:CDRH1(GYDFTHYGMN;配列番号1)、CDRH2(WINTYTGEPTYAADFKR;配列番号2)及びCDRH3(YPYYYGTSHWYFDV;配列番号3)を含む重鎖可変ドメインと次の軽鎖CDRアミノ酸配列:CDRL1(SASQDISNYLN;配列番号4)、CDRL2(FTSSLHS;配列番号5)及びCDRL3(QQYSTVPWT;配列番号6)を含む軽鎖可変ドメインを有する請求項3に記載の方法。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、AMDのリスク又は高親和性抗VEGF抗体での治療がAMDの患者に恩恵を与える増加した可能性を予測する遺伝的多型性の同定に部分的に基づくものである。
【0006】
一態様では、本発明は、滲出型AMDの患者が高親和性抗VEGF抗体での治療から恩恵を受ける増加した可能性を有しているかどうかを予測する方法において、rs1064875に対応するマトリックスメタロプロテアーゼ25遺伝子(MMP25)対立遺伝子におけるゲノム多型性について上記患者から単離された試料をスクリーニングすることを含み、該患者が、対応する遺伝子型がAA又はAGを含むならば上記治療から恩恵を受ける増加した可能性を有している方法を提供する。ある実施態様では、遺伝子型はAAを含む。ある実施態様では、遺伝子型はAGを含む。
【0007】
他の態様では、本発明は、滲出型AMDの患者が抗VEGF抗体での治療から恩恵を受ける増加した可能性を有しているかどうかを予測する方法において、rs10917583に対応するジスコイジンドメインレセプターファミリーメンバー2遺伝子(DDR2)対立遺伝子におけるゲノム多型性について上記患者から単離された試料をスクリーニングすることを含み、該患者が、対応する遺伝子型がAA又はACを含むならば上記治療から恩恵を受ける増加した可能性を有している方法を提供する。ある実施態様では、遺伝子型はAAを含む。ある実施態様では、遺伝子型はACを含む。
【0008】
他の態様では、本発明は、滲出型AMDの患者が抗VEGF抗体での治療から恩恵を受ける増加した可能性を有しているかどうかを予測する方法において、rs175714に対応する塩基性ロイシンジッパー転写因子ATF様(BATF)対立遺伝子におけるゲノム多型性について上記患者から単離された試料をスクリーニングすることを含み、該患者が、対応する遺伝子型がAA又はAGを含むならば上記治療から恩恵を受ける増加した可能性を有している方法を提供する。ある実施態様では、遺伝子型はAAを含む。ある実施態様では、遺伝子型はAGを含む。
【0009】
ある実施態様では、抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC(登録商標)HB10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合する。ある実施態様では、VEGF抗体は、次の重鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列:CDRH1(GYDFTHYGMN;配列番号1)、CDRH2(WINTYTGEPTYAADFKR;配列番号2)及びCDRH3(YPYYYGTSHWYFDV;配列番号3)を含む重鎖可変ドメイン及び次の軽鎖CDRアミノ酸配列:CDRL1(SASQDISNYLN;配列番号4)、CDRL2(FTSSLHS;配列番号5)及びCDRL3(QQYSTVPWT;配列番号6)を含む軽鎖可変ドメインを有する。ある実施態様では、抗VEGF抗体はY0317の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを有する。ある実施態様では、抗VEGF抗体はラニビズマブである。
【0010】
他の態様では、本発明は、滲出型AMDの患者がラニビズマブでの治療から恩恵を受ける増加した可能性を有しているかどうかを予測するためのキットにおいて、rs1064875に対応するMMP25対立遺伝子におけるA/G多型性に対して特異的な第一オリゴヌクレオチド及び第二オリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。ある実施態様では、第一オリゴヌクレオチド及び上記第二オリゴヌクレオチドは、rs1064875に対応するMMP25対立遺伝子におけるA/G多型性を含むMMP25遺伝子の一部を増幅させるために使用されうる。
【0011】
他の態様では、本発明は、滲出型AMDの患者がラニビズマブでの治療から恩恵を受ける増加した可能性を有しているかどうかを予測するためのキットにおいて、rs10917583に対応するDDR2対立遺伝子におけるA/C多型性に対して特異的な第一オリゴヌクレオチド及び第二オリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。ある実施態様では、第一オリゴヌクレオチド及び上記第二オリゴヌクレオチドは、rs10917583に対応するDDR2対立遺伝子におけるA/C多型性を含むDDR2遺伝子の一部を増幅させるために使用されうる。
【0012】
他の態様では、本発明は、滲出型AMDの患者がラニビズマブでの治療から恩恵を受ける増加した可能性を有しているかどうかを予測するためのキットにおいて、rs175714に対応するBATF対立遺伝子におけるA/G多型性に対して特異的な第一オリゴヌクレオチド及び第二オリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。ある実施態様では、第一オリゴヌクレオチド及び上記第二オリゴヌクレオチドは、rs175714に対応するBATF対立遺伝子におけるA/G多型性を含むBATF遺伝子の一部を増幅させるために使用されうる。
【0013】
他の態様では、本発明は、患者が滲出型AMDを発症する増加したリスクを有しているかどうかを決定する方法において、表4又は表5に示された対立遺伝子変異体の一又は複数について患者から単離された試料をスクリーニングすることを含み、ここで、表4又は表5に示される対立遺伝子変異体の存在が、患者が滲出型AMDを発症する増加したリスクを有していることを示す方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施には、別段の記載がない限り、当業者の技量の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学の一般的な技術を用いる。かかる技術は、例えば「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, 2版 (Sambrook等, 1989)」;「Oligonucleotide Synthesis」 (M. J. Gait編, 1984);「Animal Cell Culture」 (R. I. Freshney編, 1987);「Methods in Enzymology」 (Academic Press, Inc.);「Current Protocols in Molecular Biology」(F. M. Ausubel等編, 1987及び定期改訂版);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」, (Mullis等編, 1994)のような文献に十分に説明されている。
【0016】
特に別に定義しない限り、ここで使用される技術及び科学用語は、この発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。Singleton等, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2版, J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994)、及びMarch, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 4版, John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992)は本願において使用される用語の多くに対する一般的なガイドを当業者に提供する。
【0017】
特許出願及び刊行物を含むここで引用する全ての文献はその全体を出典明示により援用する。
【0018】
定義
ここで使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他の定義を指示するものでない限り複数形を含む。例えば「a」細胞はまた「細胞(cells)」を含む。
「含む」なる用語は、組成物及び方法が記載の要素を含むが、他のものを排除しないことを意味するものである。
【0019】
「VEGF」及び「VEGF-A」なる用語は交換可能に用いられ、Leung等 Science, 246:1306 (1989)、及びHouck等 Mol. Endocrin., 5:1806 (1991)により記載されているような、165アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子及び/又は関連する121、189、及び206アミノ酸の血管内皮細胞増殖因子を、その天然に生じる対立遺伝子及び加工型と共に、意味する。
【0020】
「抗VEGF抗体」は十分な親和性と特異性をもってVEGFに結合する抗体である。好ましくは、本発明の抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患又は症状を標的としそれを妨害する点で治療剤として使用することができる。抗VEGF抗体は通常はVEGF-B又はVEGF-Cのような他のVEGF相同体、あるいはP1GF、PDGF又はbFGFのような他の増殖因子に結合しない。好ましい抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC(登録商標)HB10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体であり、高親和性抗VEGF抗体である。「高親和性抗VEGF抗体」はモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1よりもVEGFに対して少なくとも10倍良好な親和性を有している。好ましくは、抗VEGF抗体は、Y0317のCDR及び/又は可変領域を含む抗体を含む、国際公開第98/45331号に従って生成された組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体断片である。より好ましくは、抗VEGF抗体はラニビズマブ(ルセンティス(Lucentis)(登録商標))として知られている抗体断片である。
【0021】
「抗体」なる用語は、最も広義に使用され、モノクローナル抗体(完全長又はインタクトモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物学的活性を示す限り、抗体断片を含む。
【0022】
「治療」は、治療的処置及び予防措置又は防止措置の両方を指す。治療を必要とする者としては、既にその疾患を有する者並びにその疾患が防止又は遅延されるべき者を含む。
【0023】
「多型性」なる用語は、集団内で変動する遺伝子の配列中の位置を意味する。多型性は異なった「対立遺伝子」から構成される。そのような多型性の位置は、遺伝子中のその位置と、そこに見出される異なったアミノ酸又は塩基によって特定されうる。例えば、Y402H CFHは、CFH遺伝子におけるアミノ酸位402においてチロシン(Y)とヒスチジン(H)の間の変異が存在することを示している。このアミノ酸変化は、二つの異なった対立遺伝子である、二つの可能な変異体塩基C及びTの結果である。遺伝子型は二つの別個の対立遺伝子からなるので、幾つかの可能な変異体の任意のものは何れか一の個々に観察されうる(例えばこの例では、CC、CT、又はTT)。個々の多型性にはまた当業者に知られ、例えばNCBIウェブサイトで利用できるヌクレオチド配列変異の一塩基多型データベース(dbSNP)において使用されている独特の識別子(「リファレンスSNP」、「refSNP」又は「rs#」)があてがわれる。
【0024】
「遺伝子型」なる用語は細胞又は組織試料中のある種の遺伝子の特定の対立遺伝子を意味する。上記の例では、CC、CT、又はTTがY402H CFH多型での可能な遺伝子型である。
【0025】
「試料」なる用語は患者から採取された細胞又は組織試料を含む。例えば、試料は皮膚試料、頬細胞試料、又は血液細胞を含みうる。
【0026】
試料における特定の遺伝子型の同定は、当業者によく知られた多くの方法の何れかによって実施することができる。例えば、多型の同定は当該技術分野でよく知られた技術を使用して対立遺伝子をクローニングし、それをシークエンシングすることによって達成することができる。あるいは、遺伝子配列を、ゲノムDNAから、例えばPCRを使用して増幅させ、生成物を配列決定することができる。与えられた遺伝子座における変異について患者のDNAを分析するための幾つかの非限定的方法を以下に記載する。
【0027】
DNAマイクロアレイ技術、例えばDNAチップ装置及びハイスループットのスクリーニングの適用のための高密度マイクロアレイ及び低密度マイクロアレイを使用することができる。マイクロアレイの製造方法は当該技術分野で知られており、様々なインクジェット及びマイクロジェット沈着又はスポッティング技術及びプロセス、インサイツ又はオンチップフォトリソグラフィーオリゴヌクレオチド合成プロセス、及び電子DNAプローブアドレッシングプロセスを含む。DNAマイクロアレイハイブリダイゼーション法は、遺伝子発現解析及び点突然変異、一塩基多型(SNP)、及びショートタンデムリピート(STR)の遺伝子型判定の分野で成功裏に適用されてきている。更なる方法は、干渉RNAマイクロアレイ及びマイクロアレイと他の方法、例えばレーザーキャプチャー法(LCM)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)及びクロマチン免疫沈降 (ChiP)との組み合わせを含む。例えばHe等(2007) Adv. Exp. Med. Biol. 593:117-133及びHeller (2002) Annu. Rev. Biomed. Eng. 4:129-153を参照のこと。他の方法は、PCR、xMAP、インベーダーアッセイ、質量分析、及び ピロシーケンス法を含む(Wang等(2007) Microarray Technology and Cancer Gene Profiling Vol 593 of book series Advances in Experimental Medicine and Biology, pub. Springer New York)。
【0028】
他の検出方法は、多型部位にオーバーラップし多型領域の廻りに約5、あるいは代わりに10、又は代わりに20、又は代わりに25、又は代わりに30のヌクレオチドを有するプローブを使用するアレル特異的ハイブリダイゼーションである。例えば、対立遺伝子変異体に特異的にハイブリダイズ可能な幾つかのプローブを固相支持体、例えば「チップ」に取り付ける。オリゴヌクレオチドはリソグラフィーを含む様々な方法によって固体支持体に結合されうる。「DNAプローブアレイ」とも名付けられたオリゴヌクレオチドを含むこれらチップを使用する突然変異検出分析法は、例えばCronin等(1996) Human Mutation 7:244に記載されている。
【0029】
他の検出方法では、対立遺伝子変異体を同定する前に少なくとも遺伝子の一部を最初に増幅させることが必要である。増幅は、例えばPCR及び/又はLCR又は当該技術分野でよく知られている他の方法によって実施することができる。
【0030】
ある場合には、被験者からのDNA中における特定の対立遺伝子の存在が制限酵素分析によって示されうる。例えば、特異的ヌクレオチド多型は、別の対立遺伝子変異体のヌクレオチド配列からは不在である制限部位を含むヌクレオチド配列を生じうる。
【0031】
更なる実施態様では、切断剤(例えばヌクレアーゼ、ヒドロキシルアミン又は四酸化オスミウム及びピペリジン)からの保護を使用して、 RNA/RNA DNA/DNA、又はRNA/DNA ヘテロ二本鎖におけるミスマッチ塩基を検出することができる(例えばMyers等(1985) Science 230:1242を参照)。一般に、「ミスマッチ切断」の技術は、組織試料から得られた例えばRNA又はDNAのような試料核酸と、遺伝子の対立遺伝子変異体のヌクレオチド配列を含む場合によっては標識された例えばRNA又はDNAであるコントロール核酸をハイブリダイズさせることによってヘテロ二本鎖を提供することによって開始される。二重鎖である二本鎖は、例えばコントロール及び試料ストランド間の塩基対ミスマッチに基づいて形成された二本鎖のような二本鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理される。例えば、RNA/DNA二本鎖がリボヌクレアーゼで処理され、DNA/DNA ハイブリッドが S1ヌクレアーゼで処理されてミスマッチ領域を酵素的に消化させる。別法では、DNA/DNA又はRNA/DNA二本鎖の何れかを、ミスマッチ領域を消化させるためにヒドロキシルアミン又は四酸化オスミウムとピペリジンで処理することができる。ミスマッチ領域の消化後、得られる物質をついで変性ポリアクリルアミドゲルでサイズによって分離し、コントロール及び試料核酸が同一のヌクレオチド配列を持っているかどうか、又はどのヌクレオチドでそれらが異なっているかを決定する。例えば米国特許第6455249号;Cotton等(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397;Saleeba等(1992) Meth. Enzymol. 217:286-295を参照のこと。
【0032】
電気泳動移動度の変化をまた使用して特定の対立遺伝子変異体を同定することができる。例えば、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)を使用して変異体及び野生型核酸間の電気泳動移動度の差を検出することができる(Orita等(1989) Proc Natl. Acad. Sci USA 86:2766; Cotton (1993) Mutat. Res. 285:125-144及びHayashi (1992) Genet. Anal. Tech. Appl. 9:73-79)。試料及びコントロール核酸の一本鎖DNA断片を変性させ、また再生させる。一本鎖核酸の二次構造は配列に従って変化し、得られた電気泳動移動度の変化により一塩基の変化さえ検出できる。DNA断片は標識されるか又は標識されたプローブで検出されうる。アッセイの感度は、(DNAよりも)二次構造が配列変化に更に感受性であるRNAを使用して向上させることができる。他の好ましい実施態様では、主題の方法は、ヘテロ二本鎖分析を利用して、電気泳動移動度の変化に基づいて二本鎖のヘテロ二本鎖分子を分離する(Keen等(1991) Trends Genet. 7:5)。
【0033】
対立遺伝子変異体の同一性はまたある勾配の変性剤を含むポリアクリルアミドゲル中での多型領域を含む核酸の移動を分析することによって得ることができ、それは、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)を使用してアッセイされる(Myers等(1985) Nature 313:495)。分析方法としてDGGEが使用される場合、DNAは修飾され、例えばPCRによりおよそ40bpの高融解GCリッチDNAのGCクランプを添加することによってそれが完全に変性しないようにされる。更なる実施態様では、コントロール及び試料DNAの移動度の差を特定するために変性剤勾配の代わりに温度勾配が使用される(Rosenbaum及びReissner (1987) Biophys. Chem. 265:1275)。
【0034】
2核酸間の少なくとも一つのヌクレオチドの差を検出するための技術の例は、限定しないが、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、又は選択的プライマー伸長法を含む。例えば、既知の多型ヌクレオチドが中央に位置させられ(アレル特異的プローブ)、ついで完全なマッチが見出される場合のみハイブリダイゼーションを許容する条件下で標的DNAにハイブリダイズさせるオリゴヌクレオチドプローブが調製されうる(Saiki等(1986) Nature 324:163);Saiki等(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230)。このようなアレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技術は遺伝子の多型領域におけるヌクレオチド変化の検出に使用することができる。例えば、特異的対立遺伝子変異体のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドをハイブリダイズ膜に付着させ、ついでこの膜を標識された試料核酸とハイブリダイズさせる。ついで、ハイブリダイゼーションシグナルの分析により、試料核酸のヌクレオチドの同一性が明らかになる。
【0035】
別法では、選択的PCR増幅に依存するアレル特異的増幅技術を本発明との関連で使用してもよい。特異的増幅用のプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは分子の中心に(そのため、増幅はディファレンシャルハイブリダイゼーションに依存する)(Gibbs 等(1989) Nucl. Acids Res. 17:2437-2448)又は、適切な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を防止又は低減しうる一プライマーの極3’端に(Prossner (1993) Tibtech 11:238 及びNewton等(1989) Nucl. Acids Res. 17:2503)対象の対立遺伝子変異体を有しうる。この技術は、PRobe Oligo Base Extensionから「PROBE」とも呼ばれる。また、切断ベースの検出を得るために変異の領域に新規な制限部位を導入することが望ましい場合がある(Gasparini等(1992) Mol. Cell. Probes 6:1)。
【0036】
他の実施態様では、対立遺伝子変異体の同定は、例えば米国特許第4998617号及びLaridegren, U.等Science 241:1077-1080 (1988)に記載されているように、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を使用して実施される。OLAプロトコールは、標的の一本鎖の隣接配列にハイブリダイズ可能なように設計された二つのオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドの一つは例えばビオチン化された分離マーカーに連結され、他方が検出可能に標識される。正確な相補配列が標的分子に見出されるならば、オリゴヌクレオチドはその末端が隣接し、ライゲーション基質を作るようにハイブリダイズする。ついで、ライゲーションにより、標識されたオリゴヌクレオチドをアビジン又は他のビオチンリガンドを使用して回収することが可能になる。Nickerson, D. A.等はPCRとOLAの特質を組み合わせる核酸検出アッセイを記載している(Nickerson, D. A.等 (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8923-8927)。この方法では、PCRを使用して標的DNAの指数関数的増幅が達成され、ついでこれをOLAを使用して検出する。
【0037】
本発明は、MMP25、DDR2及びBATFにおける一塩基多型(SNP)を検出する方法を提供する。一塩基多型にインバリアント配列の領域が隣接するので、その分析には一変異塩基の同一性の決定だけを要するものであり、各患者に対する完全な遺伝子配列を決定することは不要である。SNPの分析を容易にするために幾つかの方法が開発されている。
【0038】
一塩基多型は、例えば米国特許第4656127号に開示されたようにして、特殊化されたエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを使用して検出することができる。該方法によれば、多型部位に3’が直ぐの対立遺伝子配列に相補的なプライマーが特定の動物又はヒトから得られた標的分子にハイブリダイズすることが許容される。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体に相補的であるヌクレオチドを含むならば、その誘導体はハイブリダイズされたプライマーの末端に導入される。そのような導入はプライマーをエキソヌクレアーゼ耐性にし、よってその検出を可能にする。試料のエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の同一性が既知であるので、プライマーがエキソヌクレアーゼに耐性になったことの発見は、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドが反応に使用されるヌクレオチド誘導体のものと相補的であったことを明らかにしている。この方法は、多量の無関係な配列データの決定を必要としないという利点を有している。
【0039】
溶液ベース法(solution-based method)をまた多型部位のヌクレオチドの同一性の決定に使用することができる(国際公開第91/02087号)。上述のように、多型部位に3’が直ぐの対立遺伝子配列に相補的なプライマーが用いられる。該方法は、多型部位のヌクレオチドに相補的ならばプライマーの末端に導入されることになる標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を使用してその部位のヌクレオチドの同一性を決定する。
【0040】
代替方法は国際公開第92/15712号に記載されている。この方法は、多型部位の配列3’に相補的であるプライマー及び標識ターミネーターの混合物を使用する。導入される標識ターミネーターは、よって、評価されている標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドによって決定され、それに相補的である。該方法は通常、プライマー又は標的分子が固相に固定される不均一相アッセイである。
【0041】
DNAにおける多型部位をアッセイするための多くの他のプライマーガイドのヌクレオチド導入手順が記載されている(Komher, J. S.等(1989) Nucl. Acids. Res. 17:7779-7784;Sokolov, B. P. (1990) Nucl. Acids Res. 18:3671;Syvanen, A.-C.等(1990) Genomics 8:684-692;Kuppuswamy, M. N.等(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1143-1147;Prezant, T. R.等(1992) Hum. Mutat. 1: 159-164;Ugozzoli, L.等(1992) GATA 9:107-112;Nyren, P.等(1993) Anal. Biochem. 208:171-175)。これらの方法は全て多型部位の塩基を判別するための標識デオキシヌクレオチドの導入に依存する。
【0042】
更に、遺伝子又は遺伝子産物又は多型変異体中の変化を検出するための上記方法の何れかを使用して処置の過程又は治療法をモニターすることができることは理解されるであろう。
【0043】
ここに記載された方法は、例えば、個体がAMDを発症する増加した可能性を有しているかどうか、又は滲出型AMD患者が抗VEGF抗体での治療から恩恵を受ける増加した可能性を有しているかどうかを判定するために簡便に使用されうる、少なくとも一つのプローブ又はプライマー核酸を含む、以下に記載されたもののような、予め包装された診断キットを例えば利用することにより、実施することができる。
【0044】
上述の診断及び予後方法に使用される試料核酸は被験者の任意の細胞型又は組織から得ることができる。例えば、被験者の体液(例えば血液)を既知の技術によって得ることができる。あるいは、核酸試験を乾燥した試料(例えば毛髪又は皮膚)で実施することができる。
【0045】
ここに記載された発明は、それぞれrs1064875、rs10917583及びrs175714のMMP25、DDR2及びBATF対立遺伝子を含む幾つかの対立遺伝子に存在する対立遺伝子を決定し同定するための方法及び組成物に関する。プローブを試料の遺伝子型を直接決定するために使用することができ、または増幅と同時に又は増幅の後で使用することができる。「プローブ」なる用語は天然に生じるか又は組換え一本鎖又は二本鎖核酸又は化学合成された核酸を含む。それらはニックトランスレーション、クレノウフィルイン反応、PCR又は当該技術分野で知られている他の方法によって標識されうる。本発明のプローブ、その調製及び/又は標識化は上掲のSambrook等(1989)に記載されている。プローブは本発明の多型領域を含む核酸への選択的ハイブリダイゼーションに適した任意の長さのポリヌクレオチドでありうる。使用されるプローブの長さは、部分的には、使用されるアッセイの性質及び用いられるハイブリダイゼーション条件に依存するであろう。
【0046】
標識プローブはまた多型の増幅との関連で使用することができる。(Holland等(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280)。米国特許第5210015号は、PCRの間に増幅産物のリアルタイムの測定を提供する蛍光ベースのアプローチ法を記載している。このようなアプローチは、存在する二本鎖DNAの量を示すために挿入染料(例えば臭化エチジウム)を用いているか、又はそれらは蛍光−クエンチャー対を含むプローブを用いており(また「TaqMan(登録商標)」アプローチとも称される)、ここでプローブは増幅中に切断されて、その濃度が存在する二本鎖DNAの量に比例する蛍光分子を放出する。増幅中、プローブは、標的配列にハイブリダイズされたときにポリメラーゼのヌクレアーゼ活性によって消化され、蛍光分子をクエンチャー分子から分離させ、それによってレポーター分子から蛍光を出現させる。TaqMan(登録商標)アプローチは、多型を含む標的ポリヌクレオチドの領域に特異的にアニールするレポーター分子−クエンチャー分子対を含むプローブを使用する。
【0047】
プローブは「遺伝子チップ」としての使用のために表面に添付することができる。かかる遺伝子チップを使用して、当業者に知られている多くの技術によって遺伝子変異を検出することができる。一技術では、オリゴヌクレオチドは、例えば米国特許第6025136号及び第6018041号に概説されたもののようなハイブリダイゼーションアプローチによるシークエンシングによってDNA配列を決定するために遺伝子チップに整列される。本発明のプローブはまた遺伝子配列の蛍光検出に使用することができる。かかる技術は例えば米国特許第5968740号及び第5858659号に記載されている。プローブはまた米国特許第5952172号及びKelley, S. O.等(1999) Nucl. Acids Res. 27:4830-4837に記載されているような核酸配列の電気化学的検出の電極面に添付することができる。
【0048】
また、プローブ又はプライマーとして使用される単離された核酸を修飾させてより安定にすることができる。修飾される例示的核酸分子は、DNAのホスホロアミデート、ホスホロチオエート及びメチルホスホネートアナログを含む(また米国特許第5176996号;第5264564号及び第5256775号を参照のこと)。
【0049】
ここに記載されたように、本発明はMMP25、DDR2又はBATFに存在する多型領域の対立遺伝子変異体のタイプを決定するための診断方法をまた提供する。幾つかの実施態様では、該方法は、MMP25、DDR2又はBATFの多型領域に相補的であるヌクレオチド配列を含むプローブ又はプライマーを使用する。従って、本発明はこれらの方法を実施するためのキットを提供する。
【0050】
ある実施態様では、本発明は、滲出型AMDの患者が、高親和性抗VEGF抗体を含む抗VEGF抗体での治療から恩恵を受ける増加した可能性を有しているかどうかを判定するためのキットを提供する。そのようなキットはここに記載された組成物の一又は複数と使用のための指示書を含む。単に一例として、本発明は、滲出型AMDの患者が、ラニビズマブでの治療から恩恵を受ける増加した可能性を有しているかどうかを判定するためのキットにおいて、MMP25rs1064875SNPにおけるAG多型性に対して特異的な第一オリゴヌクレオチド及び第二オリゴヌクレオチドを含むキットをまた提供する。遺伝子座に「特異的な」オリゴヌクレオチドは、遺伝子座の多型領域に結合するか又は遺伝子座の多型領域に隣接して結合する。増幅のためのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドでは、プライマーは、それらが多型領域を含むポリヌクレオチドを産生するために使用されるのに十分に近いならば、隣接している。一実施態様では、オリゴヌクレオチドは、それらが多型から約1−2kb以内、例えば1kb未満で結合するならば隣接している。特異的オリゴヌクレオチドは配列にハイブリダイズすることができ、適切な条件下で一塩基だけ異なる配列に結合しない。
【0051】
キットは、MMP25、DDR2又はBATFの多型領域に特異的にハイブリダイズ可能な少なくとも一つのプローブ又はプライマーと使用のための指示書を含みうる。キットは通常は上述の核酸の少なくとも一つを含む。MMP25、DDR2又はBATFの少なくとも一部を増幅させるためのキットは、少なくとも一つが対立遺伝子変異体配列にハイブリダイズすることができる二つのプライマーを一般に含む。そのようなキットは、例えば蛍光検出、電気化学的検出、又は他の検出法による遺伝子型の検出に適している。
【0052】
プローブとして使用されようと又はプライマーとして使用されようと、キットに含まれるオリグヌクレオチドは、検出可能に標識されうる。標識は、例えば蛍光標識のように直接的に、又は間接的に検出されうる。間接的な検出は、ビオチン−アビジン相互作用、抗体結合等を含む当業者に知られた任意の検出方法を含みうる。蛍光標識されたオリゴヌクレオチドは消光分子をまた含みうる。オリゴヌクレオチドは表面に結合されうる。幾つかの実施態様では、表面はシリカ又はガラスである。幾つかの実施態様では、表面は金属電極である。
【0053】
本発明の更に他のキットは、アッセイを実施するのに必要な少なくとも一種の試薬を含む。例えば、キットは酵素を含みうる。あるいは、キットはバッファー又は任意の他の必要な試薬を含みうる。
【0054】
キットはMMP25、DDR2又はBATFの多型領域における被験者の遺伝子型を判定するためにここに記載された陽性コントロール、陰性コントロール、試薬、プライマー、シークエンシングマーカー、プローブ及び抗体の全て又は幾らかを含みうる。
【0055】
次の実施例は単に本発明の実施を例証するためのもので、限定のために供されるものではない。
【実施例】
【0056】
実施例1 遺伝子多型性及びAMD発症及び治療成績とのその関連性
試料及び遺伝子型判定
HORIZON拡張治験のDAWN遺伝子サブ治験に参加したルセンティス(登録商標)ピボタル治験(MARINA、ANCHOR、及びFOCUS)からの250名の非特定の被験者からの末梢血試料を集め、ゲノムDNAを単離した。分析に使用された全ての試料は、「白人」として列挙された自己特定の人種を有しており、血管新生AMDの確認された診断を有していた。試料は104名の男性と146名の女性からなり、ベースラインでの平均年齢は75.7歳であった。文書でのインフォームドコンセントが治験における全ての個人から得られ、治験プロトコルが治験審査委員会によって承認された。
【0057】
上述の試料に加えて、102の試料がDAWN治験の一部として集められ、全体で352の合計試料となった。その352の試料についてIllumina(登録商標)550K Human HapMapビードアレイを使用して遺伝子型を判定した。我々はストリンジェントな品質管理(QC)基準を使用して、高品質のデータが最終分析に含められるようにした。すなわち、我々は、a)>5%の欠測データを有していた個体を除外し、b)潜在的関連性に基づき個体を除外し、IBS状態に基づき試料を複製した(PI_Hat>0.15,このデータセットで誰も検出されず)。我々は、a)<5%の欠測データ、b)HWE p値>1×10
−6、及びc)MAF>0.01%のSNPのみを含めた。全てのQC試験はPLINK(Purcell等(2007) Am. J. Hum. Genet. 81, 559-75)を使用して実施した。
【0058】
ルセンティス(登録商標)治療への応答に対する全ゲノム相関スキャン
DAWN試料を、MARINA、ANCHOR及びFOCUS治験中の処置状態に基づいて2つの群に分離した。ルセンティス(登録商標)治療群は0.3mg、0.5mg又は0.5mg+PDTの容量を投与された個体を含んでいた(N=242)。SHAM/PDT群は、モック注射(SHAM)又は光線力学的治療(PDT)のみを受けた個体から構成された(N=110)。我々は、ルセンティス(登録商標)治療から12ヶ月後に全ゲノム相関スキャンを実施して、視力変化に有意に関連した遺伝子変異体を同定した(表1)。VAの平均変化に関連した上位の遺伝子座のリストから、我々は創傷治癒に所定の役割を果たす可能性のある遺伝子を含む3遺伝子座を同定し(表2)、MMP25(rs1064875)、DDR2(rs10917583)及びBATF(rs175714)遺伝子座からの各個体によって保持されるリスク対立遺伝子の数を合計することによって「遺伝子スコア」を作成した(
図1)。
【0059】
ベースライン臨床表現型に対する全ゲノム相関スキャン
352の全てのDAWN試料において、我々は、ベースラインでの視力(表3)、未処置の僚眼におけるCNVの存在(表4)、及びCNV分類(predominantly classic型対minimally classic型及びoccult型分類、表5)を含む幾つかのベースライン表現型との相関についての全ゲノム試験を実施した。