(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラの外部から前記定義情報が書き換えられることにより、前記トリガ前データ数、前記トリガ後データ数及び前記時間間隔の少なくとも1つが変更される、請求項1に記載の作業機械。
前記コントローラの外部から前記定義情報が書き換えられることにより、前記トリガ前データ数、前記トリガ後データ数、前記時間間隔及び前記作業機械情報の種類の少なくとも1つが変更される、請求項3に記載の作業機械。
前記コントローラを複数備え、それぞれの前記コントローラは、個別に前記トリガ前データ数、前記トリガ後データ数、前記時間間隔及び前記作業機械情報の種類が変更可能である、請求項2、3又は5のいずれか1項に記載の作業機械。
作業機械に関する情報としての作業機械情報を記憶することが可能な記憶部と、前記作業機械情報を収集し、かつ前記記憶部に前記作業機械情報の保存を開始するためのトリガ情報に基づいて、少なくとも1種類の前記作業機械情報を前記記憶部に記憶させる処理部と、を含むコントローラを備え、
前記処理部は、前記トリガ情報よりも前に前記処理部が収集した前記作業機械情報のトリガ前データ数、前記トリガ情報よりも後に前記処理部が収集する前記作業機械情報のトリガ後データ数及び前記作業機械情報を収集する時間間隔の少なくとも1つが記述されて前記記憶部に記憶され、かつ前記コントローラの外部から変更可能な定義情報に従って収集された前記作業機械情報を前記記憶部に記憶させ、
前記記憶部は、前記処理部が前記作業機械情報を前記記憶部に保存する動作を実行するための命令が保存されている記憶部とは異なり、
前記コントローラは、前記定義情報のデフォルトの内容を記憶する第2記憶部をさらに含む、作業機械。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態は、作業機械の一例として油圧ショベルを説明するが、以下の実施形態で対象とされる作業機械はこれに限定されるものではない。作業機械は、例えば、フォークリフト、ホイールローダ、ダンプトラック等であってもよい。
【0023】
<作業機械の全体構成>
図1は、本実施形態に係る作業機械1の斜視図である。本実施形態において、作業機械1は油圧ショベルである。作業機械1は、本体部としての車両本体1Bと作業機2とを有する。車両本体1Bは、上部旋回体3と走行装置5とを有する。上部旋回体3は、機関室3EGの内部に、図示しない動力発生装置及び油圧ポンプ等の装置を収容している。機関室3EGは、上部旋回体3の一端側に配置されている。
【0024】
本実施形態において、作業機械1は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関を動力発生装置としているが、作業機械1はこのようなものに限定されない。作業機械1は、例えば、内燃機関と発電電動機と蓄電装置とを組み合わせた、いわゆるハイブリッド方式の動力発生装置を備えるもの等であってもよい。
【0025】
上部旋回体3は、運転室4を有する。運転室4は、上部旋回体3の他端側に載置されている。すなわち、運転室4は、機関室3EGが配置されている側とは反対側に配置されている。運転室4内には、図示しない表示入力装置及び操作装置が配置される。走行装置5は、履帯5a、5bを有している。走行装置5は、図示しない油圧モータが駆動し、履帯5a、5bが回転することにより走行して、作業機械1を走行させる。作業機2は、上部旋回体3の運転室4の側方側に取り付けられている。
【0026】
なお、作業機械1は、履帯5a、5bの代わりにタイヤを備え、図示しないディーゼルエンジンの駆動力を、トランスミッションを介してタイヤへ伝達して走行が可能な走行装置を備えたものであってもよい。例えば、このような形態の作業機械1としてホイール式油圧ショベルであってもよい。また、作業機械1は、このようなタイヤを有した走行装置を備え、さらに車両本体(本体部)に作業機が取り付けられ、
図1のような上部旋回体及びその旋回機構を備えていない構造を有する、例えばバックホウローダであってもよい。すなわち、バックホウローダは、車両本体に作業機が取り付けられ、車両本体の一部を構成する走行装置を備えたものである。
【0027】
上部旋回体3は、作業機2及び運転室4が配置されている側が前であり、機関室3EGが配置されている側が後である。前に向かって左側が上部旋回体3の左であり、前に向かって右側が上部旋回体3の右である。また、作業機械1又は車両本体1Bは、上部旋回体3を基準として走行装置5側が下であり、走行装置5を基準として上部旋回体3側が上である。作業機械1が水平面に設置されている場合、下は鉛直方向、すなわち重力の作用方向側であり、上は鉛直方向とは反対側である。
【0028】
作業機2は、ブーム6とアーム7とバケット8とブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とを有する。ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して車両本体1Bの前部に揺動可能に取り付けられている。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に揺動可能に取り付けられている。アーム7の先端部には、バケットピン15を介してバケット8が揺動可能に取り付けられている。
【0029】
図1に示すブームシリンダ10とアームシリンダ11とバケットシリンダ12とは、それぞれ作動油の圧力(以下、適宜油圧という)によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10はブーム6を駆動して、これを昇降させる。アームシリンダ11は、アーム7を駆動して、アームピン14の周りを回動させる。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動して、バケットピン15の周りを回動させる。ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12等の油圧シリンダと図示しない油圧ポンプとの間には、図示しない比例制御弁が配置されている。比例制御弁が制御されることにより、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12に供給される作動油の流量が制御される。その結果、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12の動作が制御される。
【0030】
<作業機械の情報収集システム>
図2は、作業機械の情報収集システム100を示す図である。作業機械の情報収集システム(以下、適宜情報収集システムという)100は、作業機械1が備える車載システム1Sと、管理施設に備えられる作業機械の管理システム(以下、適宜管理システムという)40とを含む。情報収集システム100は、車載システム1Sと管理システム40とが、通信回線101及びサーバ103を介して情報をやり取りする。情報収集システム100は、管理システム40が通信回線101を介して車載システム1Sから作業機械データMIDを取得する。また、情報収集システム100は、管理システム40を用いて、車載システム1Sのコントローラ20の外部から、コントローラ20の第1記憶部20MAに記憶されている定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDの少なくとも一方の内容を書き換える。本実施形態においては、説明の便宜上、情報収集システム100にそれぞれ1個の作業機械1及び車載システム1Sと管理システム40とが通信回線101及びサーバ103を介して接続されているが、作業機械1及び管理システム40の数は限定されない。情報収集システム100は、サーバ103を有していなくてもよい。この場合、車載システム1Sと管理システム40とは、通信回線101を介して情報をやり取りする。
【0031】
(作業機械1が備える車載システム1S)
作業機械1が備える車載システム1Sは、コントローラ20、21と、各種のセンサ類31と、キースイッチ32と、位置検出装置33と、入出力装置36とが車内通信回線30によって接続されており、互いに通信できるようになっている。キースイッチ32は、運転室4内の運転席近傍に設けられている。作業機械1のオペレータがキースイッチ32を操作することで、作業機械1のエンジンを始動又は停止することができる。キースイッチ32は、例えばイグニッションキーのスイッチを用いることができる。コントローラ20、21は、それぞれ作業機械1の異なる機能を制御する。コントローラ20は、例えば、作業機械1のエンジンを制御するコントローラであり、コントローラ21は、例えば、作業機械1の図示しない油圧ポンプの動作を制御するコントローラである。車載システム1Sは、車内通信回線30に接続されるコントローラの数は2個に限定されるものではなく、コントローラ20、21以外のコントローラが車内通信回線30に接続されていてもよい。
【0032】
コントローラ20は、処理部20Cと、記憶部としての第1記憶部20MA、第2記憶部20MB及び第3記憶部20MCとを含む。処理部20Cは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。第3記憶部20MCには、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)が用いられる。第3記憶部20MCは、例えば、作業機械1を制御するための命令が記述されたコンピュータプログラムが記憶される。
【0033】
処理部20Cは、作業機械1に関する情報としての作業機械情報MIを収集する。この場合、処理部20Cは、車内通信回線30を介して作業機械情報MIを収集する。処理部20Cは、収集した作業機械情報MIを、第1記憶部20MA又は第3記憶部20MCへ記憶させる。処理部20Cは、第1記憶部20MAに作業機械情報MIの記憶を開始させるためのトリガ情報が発生したときには、収集した作業機械情報MIを第1記憶部20MAに記憶させる。この場合、処理部20Cは、収集した作業機械情報MIのうち少なくとも1種類又は少なくとも一部を第1記憶部20MAに記憶させる。作業機械情報MIは、作業機械1と何らかの関係を有する情報であればよい。作業機械情報MIは、例えば、各種のセンサ類31が検出する作業機械1の状態に関する情報、作業機械1の車載システム1Sの状態に関する情報、外気温又は気圧等のような作業機械1の作業環境に関する情報及び作業機械1を特定するためのID情報等である。
【0034】
第1記憶部20MAは、情報の記憶と、記憶した情報の書き換えとの両方が可能である。第1記憶部20MAは、作業機械1に搭載された電源(鉛蓄電池又はニッケル−水素蓄電池等の二次電池)37から供給される電気によって、記憶した情報を保持することが可能である。第1記憶部20MAは、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)が用いられる。第1記憶部20MAは、複数の作業機械データMID1、MID2、・・・MIDm、定義情報としての定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDを記憶している。作業機械データMID1、MID2、・・・MIDmを区別しない場合、作業機械データMIDという。本実施形態において、第1記憶部20MAは、m個(mは整数)の作業機械データMIDを記憶できるようになっている。第1記憶部20MAが記憶できる作業機械データMIDの数は限定されるものではない。第1記憶部20MAが記憶する定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDの数も限定されるものではなく、単数又は複数のいずれであってもよい。作業機械データMIDとは、前述したトリガ情報の前後における作業機械情報MIを時系列で記憶したものである。なお、定義ファイルCONFについての詳細は後述するが、定義ファイルCONF及びヘッダ情報の設定によって、作業機械データMIDはトリガ情報の前のみの情報又はトリガ情報の後のみの情報を記憶することもできる。
【0035】
第2記憶部20MBは、記憶した情報を保持することが可能である。第2記憶部20MBは、例えば、ROM(Read Only Memory)である。処理部20Cは、第1記憶部20MAに対しては随時情報を読み出し、記憶させ又は記憶させた情報を書き換えることができるが、第2記憶部20MBに対しては随時情報を読み出すことはできるが情報を記憶させ又は記憶させた情報を書き換えることはできない。第2記憶部20MBは、記憶した情報を書き換えるためには特殊な処理が必要である。第2記憶部20MBは、コンピュータプログラムPG、定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDを記憶している。第2記憶部20MBに記憶されている定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDは、予め記憶されている情報であって、デフォルトの内容を示すものである。コンピュータプログラムPGは、処理部20Cが定義ファイルCONFに記述されている情報を解釈し、その結果に基づいて作業機械データMIDを生成して第1記憶部20MAの所定領域に記憶させるための命令が記述されている。コンピュータプログラムPGは、第3記憶部20MCに記憶されていてもよい。
【0036】
オペレータが作業機械1のエンジンを始動するためにキースイッチ32を操作すると、電源37からコントローラ20に電気が流れ、処理部20Cは、第1記憶部20MAに記憶されている定義ファイルCONFの情報及びヘッダ情報HDが損傷していないか否かのチェックを行う。このチェックは、以下のような内容を実行する。第1記憶部20MAに記憶されている定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDには、予め所定の検査値が設定されている。すなわち、第1記憶部20MAに新たな定義ファイル及びヘッダ情報HDが記憶された時、その定義ファイル及びヘッダ情報HDに固有の検査値も、第1記憶部20MAに記憶される。検査値は、例えば、定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDに含まれる情報の種類の個数である。検査値は、定義ファイル及びヘッダ情報HDが異なれば異なる値である。よって、この検査値は、第2記憶部20MBに記憶されている定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDの検査値とは必ずしも一致しない。そして、キースイッチ32が操作され作業機械1が始動するたびに、第1記憶部20MAに記憶されている定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDの検査値が計算され、得られた検査値が予め記憶された検査値と一致するかがチェックされる。仮に一致しなければ、第1記憶部20MAに記憶されている、定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDが損傷していることを示す。その損傷が検出されたならば、第2記憶部20MBに記憶されている定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDを、処理部20Cが第1記憶部20MAにコピーする。そして、処理部20Cは、作業機械データMIDを生成する場合には、第1記憶部20MAにコピーされた定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDを読み出して使用する。このように検査値を用いたチェックは、巡回冗長検査と呼ばれ、CRC(Cyclic Redundancy Check)と称される手法によるものである。
【0037】
コントローラ21は、コントローラ20と同様の構造であるが、制御する対象がコントローラ20とは異なる。コントローラ21も、コントローラ20と同様に、処理部20Cと、記憶部としての第1記憶部20MA、第2記憶部20MB及び第3記憶部20MCを有している。コントローラ20とコントローラ21とは、車内通信回線30を介して、一方が他方に命令又は情報等を送信したり、他方が一方に命令又は情報等を送信したりする。
【0038】
車内通信回線30には、コントローラ20、21の他に、各種のセンサ類31と、キースイッチ32と、位置検出装置33と、入出力装置36と、サービスコネクタ35とが接続されている。各種のセンサ類31は、作業機械1の状態を検出するためのセンサ類である。各種のセンサ類31は、例えば、エンジンの回転速度(単位時間あたりの回転数)、エンジンの冷却水の温度(エンジン冷却水温)、電源37の電圧、作動油の圧力(作動油圧)、作動油の温度(作動油温)、作業機械1の外気温度、作業機械1の外気の気圧、作業機械1の速度(車速)等である。
【0039】
作業機械1がホイールローダである場合、トルクコンバータの作動油の温度、ブレーキ油の温度等も検出される。つまり、センサ類31は、作業機械1の車格又は種類に応じて異なる。キースイッチ32は、イグニッションキーのスイッチである。位置検出装置33は、例えば、RTK−GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう)を実現するための装置である。位置検出装置33は、RTK−GNSS用のアンテナ33Aを備えている。位置検出装置33は、作業機械1の現在位置を検出する。位置検出装置33も、作業機械1の状態を検出するためのセンサ類の一種である。位置検出装置33として、例えばGPS(Global Positioning System)センサを用いることができ、GPS用のアンテナ33Aを用ることができる。
【0040】
入出力装置36は、車載システム1Sと、車載システム1Sの外部との間で情報の入力と出力とを行う制御装置である。本実施形態において、入出力装置36は、ゲートウェイ36A及び起動時制御部36Bを備えている。ゲートウェイ36Aは、車内通信回線30と作業機械1の外部の通信回線101とを接続するための接続機器である。起動時制御部36Bは、管理システム40からの指令により、車載システム1Sに電源を投入してこれを起動させることができる。キースイッチ32を操作することでも車載システム1Sに、電源を投入することができる。
【0041】
入出力装置36には、作業機械1が備える車載システム1Sに備えられる通信部34が接続されている。通信部34は、通信用アンテナ34Aを備えており、基地局102との間で無線通信を実現できる。無線通信は、地上波通信又は衛星通信等を利用することができる。基地局102は、通信回線101に接続されている。通信回線101には、サーバ103が接続されている。通信部34は、基地局102、通信回線101及びサーバ103を介して、管理システム40と情報をやり取りすることができる。サービスコネクタ35は、車内通信回線30に接続されている。サービスコネクタ35に、例えば、検査装置を接続することにより、コントローラ20、21又は各種のセンサ類31の状態を診断したり、コントローラ20等の第1記憶部20MA、第2記憶部20MB等に記憶された情報を書き換えたり読み出したりすることができる。
【0042】
(管理システム40)
管理システム40は、サーバ103を介して通信回線101に接続されている。管理システム40は、アクセスシステム41と、コンバータ42と、解析ツール43と、定義ジェネレータ44とを含む。これらは、コンピュータである。アクセスシステム41は、データ取り出し部41Aと、定義情報変更部41Bと、定義情報戻し部41Cと、トリガ情報生成部41Dとを含む。
【0043】
なお、本実施形態では、アクセスシステム41、コンバータ42、解析ツール43及び定義ジェネレータ44は、
図2に示すように個別のコンピュータとして相互にデータ通信が可能なようにしている。しかし、一台のコンピュータにアクセスシステム41、コンバータ42、解析ツール43及び定義ジェネレータ44の機能を持たせて管理システム40を構成するようにしてもよい。なお、管理システム40にサーバ103を含めて、管理システム40としてもよい。
【0044】
データ取り出し部41Aは、作業機械1のコントローラ20、21から作業機械データMIDを取り出して、アクセスシステム41が有する記憶装置41Mに保存する。定義情報変更部41Bは、コントローラ20等の第1記憶部20MAに記憶されている定義情報としての定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDを、定義ジェネレータ44が生成した新たな定義情報の内容に書き換える。定義情報変更部41Bの書き換え処理によって、第1記憶部20MAに記憶されている定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDの内容が書き換えられる。このように、定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDは、コントローラ20、21の外部から個別に変更可能である。第1記憶部20MAに複数の定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDが記憶されている場合も同様である。
【0045】
定義情報戻し部41Cは、定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDの内容が初期の状態から書き換えられた場合、必要に応じて定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDの内容をデフォルトの内容に戻す。定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDのデフォルトの内容は、前述したようにコントローラ20等の第2記憶部20MBに記憶されている定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDの内容である。定義情報戻し部41Cは、第2記憶部20MBに記憶されている定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDを、第1記憶部20MAに記憶されている定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDに上書きすることで、これらの内容をデフォルトの内容に戻す。このようにすることで、定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDを書き換えた後であっても容易にデフォルトの内容に戻すことができる。
【0046】
トリガ情報生成部41Dは、各種のセンサ類31又は位置検出装置33等が検出した作業機械情報MIを、第1記憶部20MAに記憶させるためのトリガ情報を生成する。トリガ情報とは、作業機械1に発生した事象(後述するイベント)に相当するものである。アクセスシステム41は、トリガ情報生成部41Dが生成したトリガ情報をコントローラ20等に送信する。そして、アクセスシステム41は、車載システム1Sに定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDを送信する。処理部20Cは、収集した作業機械情報MIから作業機械データMIDを生成させて第1記憶部20MAに記憶させる。
【0047】
コンバータ42は、アクセスシステム41のデータ取り出し部41Aが作業機械1のコントローラ20等の第1記憶部20MAから取得し、記憶装置41Mに記憶させた作業機械データMIDを取得する。コンバータ42は、取得した作業機械データMIDを、管理システム40のオペレータが理解できる形に変換する。このとき、コンバータ42は、例えば、解析ツール43を用いて、作業機械データMIDを解析し、結果を表示装置42Dに表示させる。解析ツール43は、作業機械データMIDをグラフ化して表示装置42Dに表示させたり、作業機械データMIDを統計処理したりするソフトウェアである。
【0048】
定義ジェネレータ44は、定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDの内容を生成する。作業機械1のコントローラ20等が備える処理部20Cは、定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDに記述された内容を解釈することにより、収集した作業機械情報MIから作業機械データMIDを生成する。定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDが変更されることにより、処理部20Cが生成する作業機械データMIDに含まれる作業機械情報MIの種類又はデータ数が変更される。
【0049】
<作業機械情報MIの収集>
図3は、作業機械情報MIと時間tとの関係を示す図である。
図4は、作業機械情報MIを第1記憶部20MAに保存する際の形式の一例を示す図である。
図5は、作業機械情報MIを第1記憶部20MAに記憶させる際の条件を変更した例を示す図である。本実施形態において、作業機械1が備えるコントローラ20等の処理部20Cは、作業機械1の稼働中に、作業機械情報MIを収集して第1記憶部20MAに記憶させる。そして、処理部20Cは、作業機械1に何らかの事象が発生した場合、その事象が発生した前後の作業機械情報MIを定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDに記述された条件に従って作業機械データMIDを生成し、第1記憶部20MAに記憶させる。
【0050】
作業機械1の稼働中とは、キースイッチ32にイグニッションキーを用いるならば、イグニッションキーにより
図2に示すキースイッチ32がONになった時点から、OFFになるまでの間である。キースイッチ32がONになった時点には、いわゆるアクセサリーの位置にキースイッチ32を操作したのみでエンジンを始動させることなく、図示しない前照灯などの電装品に電源37から電気を通電させた場合も含まれる。作業機械1に発生した事象(以下、適宜イベントという)とは、例えば、作業機械1に発生した何らかの不具合(ハードウェア、ソフトウェアを問わない)又はエンジン冷却水温若しくは作動油温等が予め設定された所定の閾値を超えたこと等をいう。すなわち、本実施形態において、イベントとは、作業機械1に発生した不具合のみを意味するものではなく、不具合に至らないまでもその兆候が見られるものも含む。本実施形態において、コントローラ20等の処理部20Cは、作業機械1にイベントが発生した場合、イベント発生時の前後における所定時間の作業機械情報MIから作業機械データMIDを生成して、第1記憶部20MAに記憶させる。
【0051】
図3の横軸は時間tを示し、縦軸は作業機械情報MIの物理量の大きさを示す。
図3に示す例では、例えば、時間tiにおいて、作業機械1にイベントが発生している。この例においては、イベントが発生した時間tiの後における作業機械情報MIa、MIb、MIcの物理量が、イベントが発生した時間tiの前の状態と比較して変化している。イベントが発生した時間tiの前後における所定時間の作業機械情報MIを解析することで、イベントの原因を解明することができる。本実施形態において、作業機械1にイベントが発生すると、例えば、コントローラ20等の処理部20Cは、トリガ情報(以下、適宜トリガという)を発生させる。トリガは、車内通信回線30を通じて、車内通信回線30に接続されているすべてのコントローラ20等の処理部20Cが受信することができる。トリガは、イベントの前後における作業機械情報MIのうち少なくとも1種類又は少なくとも一部を第1記憶部20MAに記憶させるための情報である。トリガの発生を受信した処理部20Cは、第1記憶部20MAの定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDに記述された条件に従って作業機械データMIDを生成し、第1記憶部20MAに記憶させる。なお、トリガ後データ数Cを1として、トリガ前データ数Bを複数個とすることで、作業機械データMIDはトリガ情報の前のみの情報を記憶することができる。あるいは、トリガ前データ数Bを1として、トリガ後データ数Cを複数個とすることで、作業機械データMIDはトリガ情報の後のみの情報を記憶することができる。
【0052】
1つの作業機械データMIDは、少なくとも1種類の作業機械情報MIを、少なくとも1個有している。
図4に示すように、作業機械データMIDの大きさは、作業機械情報MIの種類の数(情報種数)Aと、トリガ前データ数Bと、トリガ後データ数Cと、サンプリング時間Dとに基づいて決定される。
図4中に示すtiは、前述のようにイベントが発生した時間である。トリガ前データ数Bは、トリガよりも前に処理部20Cが収集した作業機械情報MIの数(1種類の作業機械情報MIあたりの数)である。トリガ後データ数Cは、トリガよりも後に処理部20Cが収集する作業機械情報MIの数(1種類の作業機械情報MIあたりの数)である。サンプリング時間Dは、処理部20Cが作業機械情報MIを収集する時間間隔である。
【0053】
作業機械データMIDは、第1記憶部20MA内に割り当てられた所定の記憶領域に記憶される。1つの作業機械データMIDに割り当てられている第1記憶部20MAの記憶領域(記憶容量)は有限の大きさである。この大きさを、A×(B+C)とすると、
図5に示すように、サンプリング時間Dの大きさによって、1つの作業機械データMIDに記録される作業機械情報MIを収集した時間(適宜記録時間という)Lの長さが変化する。例えば、サンプリング時間Dが50ms(ミリ秒)の場合、記録時間Lは、6000ms、つまり6秒である。また、
図5に示すように、情報種数Aが多くなれば、トリガ前データ数B及びトリガ後データ数Cの数は少なくなり、情報種数Aが少なくなれば、トリガ前データ数B及びトリガ後データ数Cの数は多くなる。情報種数A、トリガ前データ数B、トリガ後データ数C及びサンプリング時間Dを、便宜上記憶条件という。記憶条件のうち少なくとも1つを変更することにより、作業機械データMIDに含まれる情報の種類の数(情報種数)を変更したり、記録時間Lを変更したり、記録されている作業機械情報MIの密度(単位時間あたりにおける作業機械情報MIの数)を変更したりすることができる。
【0054】
本実施形態において、コントローラ20等は、記憶条件のうち、トリガ前データ数B、トリガ後データ数C及びサンプリング時間Dの少なくとも1つ(情報種数Aを変更できる場合はさらに情報種数Aも含めた中の少なくとも1つ)をコントローラ20等の外部から設定又は変更可能である。これは、前述したように、記憶した情報の書き換えが可能である第1記憶部20MAに、記憶条件を設定するための定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDが記憶されているため、これらの内容をコントローラ20等の外部から容易に書き換えることができるためである。
【0055】
トリガ前データ数B、トリガ後データ数C及びサンプリング時間Dの少なくとも1つをコントローラ20等の外部、例えば、管理システム40から設定又は変更可能とすることで、限られた記憶部の記憶容量、具体的には第1記憶部20MAの記憶容量を有効に利用することができる。すなわち、作業機械情報MIの密度を犠牲にしても記録時間Lを長くしたい場合、
図5に示すように、サンプリング時間Dを大きくすることによって、記録時間Lを長くすることができる。本実施形態において、BとCとの合計個数(B+C)は一定なので、トリガ前データ数Bを多くしたい場合には、これを多くしてトリガ後データ数Cを少なくし、トリガ後データ数Cを多くしたい場合には、これを多くしてトリガ前データ数Bを少なくすればよい。記録時間Lは短くてもよいが、作業機械情報MIの密度を高くしたい場合は、サンプリング時間Dを小さくすればよい。このように、本実施形態は、記憶条件をコントローラ20等の外部から変更できるため、イベントの種類に応じて記憶条件を変更することにより、管理システム40のオペレータは、第1記憶部20MAの記憶容量に制限がある中で、適切な数の作業機械情報MIを適切な記録時間で収集しやすくなる。結果として、作業機械1及びコントローラ20等は、限られたハードウェア資源、具体的には第1記憶部20MAの記憶容量を有効に利用して、作業機械データMIDを有効に活用させることができる。
【0056】
本実施形態においては、さらに情報種数Aが設定又は変更可能とされてもよい。すなわち、情報種数A、トリガ前データ数B、トリガ後データ数C及びサンプリング時間Dのうち少なくとも1つが設定又は変更可能とされていてもよい。例えば、それぞれの作業機械情報MIの個数(B+C)を犠牲にしても多くの種類の作業機械情報MIが得たい場合、情報種数Aを大きくし、トリガ前データ数B及びトリガ後データ数Cの少なくとも一方を小さくすればよい。また、作業機械情報MIの密度を犠牲にしても、多くの種類の作業機械情報MIを長時間にわたって得たい場合、情報種数A及びサンプリング時間Dを大きくし、トリガ前データ数B及びトリガ後データ数Cの少なくとも一方を小さくすればよい。このように、情報種数Aもコントローラ20等の外部から設定又は変更可能とすることにより、管理システム40のオペレータは、第1記憶部20MAの記憶容量に制限がある中で、適切な数及び種類の作業機械情報MIを適切な記録時間で収集しやすくなる。結果として、作業機械1及びコントローラ20等は、限られたハードウェア資源を有効に利用して、作業機械データMIDをさらに有効に活用させることができる。トリガ前データ数B、トリガ後データ数C及びサンプリング時間Dのうち少なくとも1つ(情報種数Aがある場合はこれも含めた中の少なくとも1つ)は、これらが記述されている定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDを書き換えることにより設定又は変更可能である。
【0057】
図6は、作業機械データMIDの構造の一例及び作業機械情報MIを記憶させる領域を示す図である。
図6に示す例は、時間tiでトリガが発生している。本実施形態において、作業機械データMIDは、ヘッダ情報記憶領域HDRと、時系列データ記憶領域TSRとを有したデータの構造となっている。ヘッダ情報記憶領域HDRは、時系列データ記憶領域TSRの先頭に設けられている。ヘッダ情報記憶領域HDRは、ヘッダ情報HDで指定された作業機械情報MIが記憶されている。時系列データは、時間tの経過に従って複数のタイミングで収集される複数種類の作業機械情報MIのうちの少なくとも1種類である。時系列データは、複数種類の作業機械情報MIのうち、複数のタイミングで収集されたものが選択されて第1記憶部20MAに記憶される作業機械情報MIの群である。
図6に示す例において、作業機械情報MIgが時系列データに相当する。作業機械情報MIgは、時間tの経過に従って4個収集され、それぞれが取得順に時系列データ記憶領域TSRに記憶されている。
図6は、t1からt2、t3、t4へと時間が経過し、その各々のタイミングで作業機械情報MIgが示す物理量は、8.5、9、6であったことを示している。コントローラ20等へ車内通信回線30を介して入力される入力信号又はコントローラ20等の内部で使用される状態変数等のように、時間tの経過にともなって急激に変化する作業機械情報MIは、時系列データとして、トリガが発生した時間tiの前後における値を時系列で時系列データ記憶領域TSRに記憶される。
図6に示す作業機械情報MIfは、時間tの経過にともなう変化が大きいため、時系列データとして選択されて、作業機械データMIDの時系列データ記憶領域TSRに記憶されることになる。
【0058】
作業機械情報MIは、時系列データを時系列データ記憶領域TSRに記憶し、トリガ時データをヘッダ情報記憶領域HDRに記憶する。トリガ時データは、作業機械情報MIのうちトリガが発生した時点で収集されたものが選択され、かつ1種類あたりの作業機械情報MIの数は、時系列データよりも少ない。気温若しくは作動油温等の温度又は気圧等のような物理量は、時間tの経過によっては短時間で急激に変化しない性質を持った作動機械情報MIである。このような作動機械情報MIは、トリガ時データとして作業機械データMIDのヘッダ情報記憶領域HDRに記憶される。
図6に示す例において、時間tの経過によっては急激に変化しない作業機械情報MId、MIeは、トリガ時データとして選択され、ヘッダ情報記憶領域HDRに記憶される。ヘッダ情報記憶領域HDRは、作業機械データMIDのうち、少なくとも時系列データを解釈するための情報が記述されている領域である。時系列データを解釈するための情報は、例えば、作業機械データMIDを生成するためのソフトウェアが起動した時刻、トリガ前データの有効な数及びトリガ後データの有効な数等である。例えば、
図2に示す管理システム40のコンバータ42は、作業機械データMIDのヘッダ情報記憶領域HDRに記憶されている時系列データを解釈するための情報を参照しながら、時系列データ記憶領域TSRに記憶されている複数の作業機械情報MIを解釈する。
【0059】
図6に示す例では、作業機械情報MId、MIeに対応するトリガ時データの数は、トリガが発生した時点における1個である。作業機械情報MIgに対応する時系列データの数は、時間t1、t2、t3、t4に対応する4個である。すなわち、作業機械情報MIの1種類に対応したトリガ時データの総数は、作業機械情報MIの1種類に対応した時系列データの総数よりも少ない。本実施形態において、処理部20Cは、複数種類の作業機械情報MIのうち、時間tの経過に対する変化が大きい性質のものは作業機械データMIDの時系列データ記憶領域TSRに記憶させ、時間tの経過に対する変化が小さい性質のものは作業機械データMIDのヘッダ情報記憶領域HDRに記憶させる。このようにすることで、作業機械データMIDは、大きな記憶容量が必要な時系列データを記憶する時系列データ記憶領域TSRを大きくすることができる。すなわち、作業機械データMIDは、時間の経過にともなう変化を把握したい作業機械情報MIのために、大きな記憶容量を確保することができるので、トリガが発生した時点の前後における時系列データをより多く記憶して提供することができる。結果として、作業機械1及びコントローラ20等は、限られたハードウェア資源、具体的には第1記憶部20MAを有効に利用して、作業機械データMIDを有効に活用させることができる。なお、後述するヘッダ情報HDを任意に設定することにより、敢えて時間tの経過にともなう変化が小さい性質のものを時系列データとして設定するようにしてもよい。例えば、確認したい作業機械情報MIがあり、その物理量は、時間tの経過にともなう変化が本当に小さい性質を有しているか否かを確認したい場合に、このように設定することで、変化の大小を確認することができる。
【0060】
1種類の作業機械情報MIあたりにおけるトリガ時データの数は、時系列データの数よりも少なければよいが、トリガ発生時における1個とすることがより好ましい。このようにすることで、作業機械データMIDは、時系列データのために、より大きな記憶容量を確保することができるので、限られたハードウェア資源を有効に利用して、作業機械データMIDをさらに有効に活用させることができる。トリガ時データは、時間tの経過に対する変化が小さいものであればよいが、作業機械1が使用される環境における気温、気圧及び作業機械1の位置情報の少なくとも1つを含むことが好ましい。これらは、作業機械1に発生したイベントを解析する際に有用な情報であるとともに、作業機械1にイベントが発生した時点の前後において、短時間ではほとんど変化しない情報だからである。作業機械データMIDは、このような作業機械情報MIをトリガ時データとしてヘッダ情報記憶領域HDRに記憶することで、イベントの解析に有用な作業機械情報MIを確保でき、かつより多くの時系列データを提供できる。なお、作業機械1が特に油圧ショベル又はダンプトラックである場合、それら作業機械1が行う積載作業時若しくは荷下ろし作業時において、作業機械1の位置情報は、時間tの経過によってはほとんど変化しない。
【0061】
ヘッダ情報記憶領域HDRに記憶されるトリガ時データの種類等は、コントローラ20等の外部から第1記憶部20MAに記憶されているヘッダ情報HDが書き換えられることにより設定又は変更可能である。すなわち、ヘッダ情報HDは、時系列データとトリガ時データとを有する作業機械データMIDを生成するための定義情報である。ヘッダ情報HDは、作業機械データMIDのヘッダ情報記憶領域HDRに、時間tの経過に対する変化が小さい作業機械情報MIが記憶されるように設定されている。処理部20Cは、作業機械データMIDを生成する際にはヘッダ情報HDを解釈し、作業機械データMIDのヘッダ情報記憶領域HDRに、ヘッダ情報HDが指定する作業機械情報MIを記憶する。
【0062】
作業機械データMIDのヘッダ情報記憶領域HDRに記憶される作業機械情報MIを変更する場合、例えば、管理システム40が備えるアクセスシステム41の定義情報変更部41Bは、サーバ103、通信回線101、基地局102及び作業機械1の通信部34を介してコントローラ20等の第1記憶部20MAにアクセスする。そして、定義情報変更部41Bは、管理システム40の定義ジェネレータ44が変更した新たなヘッダ情報HDを作業機械1に送信し、第1記憶部20MAに記憶されているヘッダ情報HDに上書きする。このようにすることで、ヘッダ情報記憶領域HDRに記憶されるトリガ時データの種類等が変更される。アクセスシステム41の定義情報変更部41Bは、前述した手法により、トリガ時データの種類のみならず、これ以外のヘッダ情報HDを変更することもできる。なお、ヘッダ情報記憶領域HDRに記憶されるトリガ時データの種類等を、前述した定義ファイルCONFに記述し、これを変更することによって変更されるようにしてもよい。
【0063】
作業機械1は、作業機械データMIDの記憶条件が記述された定義ファイルCONF及びヘッダ情報記憶領域HDRに記憶されるトリガ時データの種類等が記述されたヘッダ情報HDを、記憶した情報の書き換えが可能な第1記憶部20MAに記憶する。作業機械1は、第1記憶部20MAをコントローラ20等の外部からアクセスして書き換えることができるようにしてあるので、作業機械データMIDの記憶条件又はトリガ時データの種類を容易に変更することができる。その結果、例えば、管理システム40がイベントの解析に必要とされる作業機械情報MIを収集する際の自由度が向上するとともに、作業機械1に発生したイベントを解析する際の利便性が向上する。
【0064】
つまり、作業機械1に発生したイベントが故障である場合、その故障の原因を解析するために、作業機械データMIDの記憶条件又はトリガ時データの種類を変更し、得られた作業機械データMIDを解析することで故障原因の特定が容易となる。また、イベントが故障でなかったとしても、作業機械データMIDの記憶条件又はトリガ時データの種類を変更し、得られた作業機械データMIDを解析することで、作業機械1の稼働状態の把握及びメンテナンスの必要性の判断等が容易となる。
【0065】
例えば、イベントが発生した作業機械1が試験運転する場合、作業機械1の停止中、すなわちエンジンが停止している間に作業機械データMIDの記憶条件又はトリガ時データの種類を変更することにより、管理システム40は、多くの作業機械データMIDを収集することができる。また、同じく作業機械1が試験運転をする場合、ある程度解析が進んでイベントの発生に影響の大きい作業機械情報MIが分かってきたら、そのような作業機械情報MIについてはサンプリング時間Dを小さくしてより詳細に解析する場合も、記憶条件をコントローラ20等の外部から変更できるため、容易に解析を行うことができる。
【0066】
<定義ファイルCONF>
図7は、定義ファイルCONFの一例を示す図である。
図7に示すように、定義ファイルCONFは、複数(この例では4個)の領域RC1、RC2、RC3、RC4を有している。本実施形態において、定義ファイルCONFは、項目に示すように3つの種類の記憶条件等についての定義C1、C2、C3が記述される。定義ファイルCONFに記述される各定義C1、C2、C3の数は限定されるものではなく、単数であっても複数であってもよい。領域RC1の領域は、作業機械情報MI及び作業機械データMIDが記憶される第1記憶部20MAのワークエリアを設定している。領域RC1のTGM1、TGM2は、コントローラ20等がトリガを生成するための条件を設定する。
【0067】
図7で、定義C1又は定義C2の場合、TGM1はNOと示されているが、これは、いずれのイベントが発生してもトリガ時として認識させることを意味する。また、
図7で、定義C3の場合、TGM1が指定とされているが、これは指定したエラーコードが発生した場合、それをイベントとしてトリガー時と認識させることを意味する。したがって、TGM1がNOの時は、TGM2には何も記述されないが、TGM1が指定とされた場合は、TGM2には、その指定されたエラーコードが記述される。そのエラーコードとして、例えば「E02」といった英数字の組合わせが用いられ、
図7のTGM2には、そのエラーコードが記述される。TGM1、TGM2を変更することにより、例えば、エラーコードを受け付けたときにトリガ時であると認識させたり、作業機械情報MIが所定の閾値を超えた場合にトリガ時であると認識させたりするように設定することができる。
【0068】
領域RC2には、作業機械データMIDの記憶条件が記述されている。モードは、第1記憶部20MAに作業機械データMIDを記憶させる際のモードを設定する。例えば、第1記憶部20MAの作業機械データMIDを記憶する領域が一杯になったら、古い作業機械データMIDから上書きする上書きモード又は作業機械データMIDを記憶する領域が一杯になっても上書きしない保護モード等である。領域RC2の情報種数A、トリガ前データ数B、トリガ後データ数C及びサンプリング時間Dが書き換えられることにより、これらが変更される。情報種数A、トリガ前データ数B、トリガ後データ数C及びサンプリング時間Dは、
図2に示す管理システム40の定義ジェネレータ44が生成して、ワークエリアに収まる値か否かをチェックする。
【0069】
領域RC3及びRC4には、作業機械情報MIの具体的な変数名または変数アドレスが定義される。つまり、領域RC3には、作業機械データMIDに記憶されるそれぞれの作業機械情報MIの種類が記述されている。作業機械情報MIの種類は変更可能である。本例において、定義ファイルCONFは、最大k個(kは整数)の作業機械情報MIを設定することができる(
図8参照)。作業機械情報MIとしては、例えば、エンジンの回転速度、作動油圧、電源37の電圧又は車速等があげられる。この他にも、作業機械情報MIとしては、アクセサリー電源の電圧、オルタネータの出力電圧、コントローラ20等への入力又はコントローラ20等の出力指令等があげられる。領域RC4は、作業機械データMIDが生成されるときに、作業機械情報MIが存在するメモリアドレスが記述してある。このメモリアドレスは、第2記憶部20MB又は第3記憶部20MCに記憶されているコンピュータプログラムPGに記述されている変数のアドレスである。処理部20Cは、作業機械データMIDの生成時において、定義ファイルCONFのそれぞれの領域RC1〜RC4に記述された情報に基づいて作業機械データMIDを生成し、第1記憶部20MAの所定のアドレスに記憶させる。
【0070】
1つの作業機械データMIDに対して、情報種数Aとトリガ前データ数Bとトリガ後データ数Cとサンプリング時間Dとの組合せは1つである。すなわち、1つの作業機械データMIDは、複数の作業機械情報MIを含むことはできるが、作業機械情報MI同士においては、トリガ前データ数Bとトリガ後データ数Cとサンプリング時間Dとの組合せを変更することはできない。しかし、トリガ前データ数Bとトリガ後データ数Cとサンプリング時間Dとの組合せは、異なる作業機械データMIDの間においては変更することができる。本実施形態において、第1記憶部20MAは、前述したように複数の作業機械データMID及び定義ファイルCONFを記憶することができる。このため、処理部20Cは、同一種類の作業機械情報MIに対して、トリガ前データ数Bとトリガ後データ数Cとサンプリング時間Dとの組合せを異ならせた、複数の異なる作業機械データMIDを生成することができる。
【0071】
例えば、同一種類の作業機械情報MIについて、1つの定義ファイルCONFはサンプリング時間Dを小さくし、他の定義ファイルCONFではサンプリング時間Dを大きくする。処理部20Cは、作業機械データMIDを生成する際には、前述したような2種類の定義ファイルCONFそれぞれに従って作業機械データMIDを生成する。得られた1つの作業機械データMIDは、トリガ前後における詳細な情報を記憶し、他の作業機械データMIDは、記録時間Lが長くなる。その結果、同一種類の作業機械情報MIについて、同一の時刻で発生した同一の事象を、異なるデータ密度で観測することができる。前述した例は、サンプリング時間Dを異ならせたものであるが、複数の定義ファイルCONFを利用した作業機械データMIDの生成は、前述した例に限定されるものではない。
【0072】
定義ファイルCONFは、例えば、同じ車格の作業機械1であっても、これらが使用される環境(気候、住宅地での使用又は山間部での使用等)に応じて記憶条件及び作業機械情報MIの種類又は数の設定を変更してもよい。また、作業機械1の出荷ロット毎に、記憶条件及び作業機械情報MIの種類又は数の設定を変更してもよい。このようにすることで、作業機械1が使用される環境に応じて必要とされる作業機械情報MIが異なる場合であっても、容易に対応することができる。ヘッダ情報HDについても定義ファイルCONFと同様である。
【0073】
前述した例において、定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDは、管理システム40のアクセスシステム41を介して変更された。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、サービスコネクタ35に情報書き換え装置を接続し、車内通信回線30を介して第1記憶部20MAに記憶されている定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDを書き換えてもよい。このようにすることで、作業機械1と管理システム40とが、無線通信又は通信回線101による通信ができない環境であっても、定義ファイルCONF又はヘッダ情報HDを容易に変更することができる。
【0074】
<作業機械データMID>
図8は、作業機械データMIDの一例を示す図である。本実施形態において、作業機械データMIDは、3つの種類の記憶条件等についての定義C1、C2、C3に対してそれぞれ記憶条件等が記述される。作業機械データMIDに記述される3つの種類の記憶条件等についての定義C1、C2、C3の数は限定されるものではなく、単数であっても複数であってもよい。
図8に示す例において、それぞれの3つの種類の記憶条件等についての定義C1、C2、C3に対応する各項目は空欄であるが、実際の作業機械データMIDは、前述した空欄に処理部20Cが収集した作業機械情報MIが記述される。
【0075】
作業機械データMIDは、ヘッダ情報記憶領域HDRと、時系列データ記憶領域TSRとを有している。ヘッダ情報記憶領域HDRは、第1領域HDR1、第2領域HDR2及び第3領域HDR3を有している。第1領域HDR1には、例えば、トリガ前データの有効な数ED_BT、トリガ後データの有効な数ED_AT、作業機械データMIDの生成を開始するためのコンピュータプログラムPGが起動した時間ON_TIME及びトリガ前データ数Bとトリガ後データ数Cとの区切りのタイミングを示す時間B_SC等が記述されている。
【0076】
第2領域HDR2には、ヘッダ情報HDに従って、トリガの発生時点における作業機械情報MI、すなわちn個(nは整数)のトリガ時データHV1、HV2、・・・HVnが記述される。第3領域HDR3には、トリガ時データHV1、HV2、・・・HVnを処理部20Cが収集した時点における時間HVT1、HVT2、・・・HVTnが記述される。時系列データ記憶領域TSRには、処理部20Cによって収集された作業機械情報MI(MI1、MI2、・・・MIk)が定義ファイルCONFに従って記述される。
【0077】
図7に示す定義ファイルCONFの領域RC3、RC4に記述された作業機械情報MIの種類及びメモリアドレスがコントローラ20等の外部から書き換えられることにより、
図8に示す時系列データ記憶領域TSRに記憶される作業機械情報MIが変更される。また、ヘッダ情報HDが指定する作業機械情報MIが、コントローラ20等の外部から書き換えられることにより、作業機械データMIDのヘッダ情報記憶領域HDRに記憶される作業機械情報MIが変更される。
【0078】
作業機械1が複数のコントローラ20、21を有する場合、それぞれのコントローラ20、21は、個別に記憶条件、定義情報としての定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDを設定又は変更可能である。このようにすることで、それぞれのコントローラ20、21は、それぞれの制御対象に応じた作業機械情報MIを、それぞれの制御対象に対して適切な条件で取得して作業機械データMIDを生成することができる。
【0079】
<作業機械情報MIを収集する条件の変更>
図9は、作業機械情報MIを収集する条件を変更する手順の一例を示すフローチャートである。この例では、第1記憶部20MAに記憶されている定義ファイルCONFが書き換えられることにより記憶条件等が変更される例を説明するが、ヘッダ情報HDも同様である。ステップS101において、管理システム40のオペレータが作業機械データMIDを解析した結果、作業機械1が有するコントローラ20の記憶条件等を変更する必要が生じたとする。この場合、ステップS102に進み、オペレータは、
図2に示す管理システム40の定義ジェネレータ44を操作して、新たな定義ファイルCONFを作成する。ステップS103において、アクセスシステム41の定義情報変更部41Bは、新たな定義ファイルCONFを、通信回線101及び作業機械1の通信部34を介した無線通信により、コントローラ20に送信する。このように無線通信を利用することで、管理システム40と作業機械1との距離が離れていても、容易に定義ファイルCONFの内容を書き換えることができる。
【0080】
次に、ステップS104において、新たな定義ファイルCONFを受信したコントローラ20の処理部20Cは、第1記憶部20MAに記憶されているこれまでの定義ファイルCONFに、新たな定義ファイルCONFを上書きする。処理部20Cが新たな定義ファイルCONFを上書きするにあたって、コントローラ20の電源がONになっている、すなわち、キースイッチ32がONになっている必要がある。キースイッチ32がONになっていない場合、作業機械1の入出力装置36が備える起動時制御部36Bは、アクセスシステム41からのアクセスを検知したら、車内通信回線30を介してキースイッチ32をONにして、コントローラ20の電源をON(投入)にする。
【0081】
コントローラ20の電源が投入された状態で定義ファイルCONFが書き換えられても、新たな定義ファイルCONFの内容はまだ有効ではない。ステップS105において、新たな定義ファイルCONFに書き換えられた後、一旦コントローラ20の電源がOFFになり、再びONになったら、新たな定義ファイルCONFの内容が有効になる。ステップS106において、処理部20Cは、新たな定義ファイルCONFの内容に従って作業機械データMIDを作成する。このようにして、定義ファイルCONFの内容が書き換えられる。
【0082】
作業機械1が使用されていないときに定義ファイルCONFを書き換える場合、起動時制御部36Bは、アクセスシステム41から定義ファイルCONFを書き換えるためのアクセスを検知したら、車内通信回線30を介してキースイッチ32をONにして、コントローラ20の電源をON(投入)にする。コントローラ20の処理部20Cは、新たな定義ファイルCONFを受信し、この新たな定義ファイルCONFを第1記憶部20MAに記憶されているこれまでの定義ファイルCONFに上書きし、置換する。上書きが完了したら、起動時制御部36Bは、車内通信回線30を介してキースイッチ32をOFFにして、コントローラ20の電源をOFFにする。このようにすることで、次に作業機械1のキースイッチ32がONになったときに、新たな定義ファイルCONFの内容を有効にすることができる。
【0083】
<コントローラ20等の動作>
図10は、作業機械1が備えるコントローラ20等の動作例を示すフローチャートである。
図11は、作業機械情報MI及び作業機械データMIDを第1記憶部20MAに記憶させる際の処理フラグFの遷移例を示す図である。ステップS201において、
図2に示すキースイッチ32がONになっていない場合(ステップS201、No)、作業機械1は稼働していないので、コントローラ20等は作業機械情報MIを収集せず、作業機械データMIDも生成しない。
【0084】
ステップS201において、
図2に示すキースイッチ32がONになってコントローラ20等の電源が投入された場合(ステップS201、Yes)、作業機械1は稼働中である。この場合、処理部20Cは、作業機械データMIDを生成するためのコンピュータプログラムPGを起動させる。ステップS202において、処理部20Cは、収集した作業機械情報MIを記憶させるためのワークエリアを選択する。ワークエリアは、トリガが発生する前に作業機械情報MIが記憶される、第1記憶部20MAの領域である。処理部20Cは、キースイッチ32がONになったら、第1記憶部20MAに記憶されているヘッダ情報HDを解釈して、前述したワークエリアを選択する。ワークエリアが選択された状態において、
図11に示すように、処理フラグFは00になっている。
【0085】
次に、ステップS203に進み、処理部20Cは、作業機械情報MIの収集を開始する。作業機械情報MIの収集を開始したら、処理部20Cは、
図11に示す処理フラグFを00から01に変更する。処理フラグF=01である場合、処理部20Cは、作業機械情報MIを収集している状態、すなわち、トリガの発生前の状態である。このとき、処理部20Cは、収集した作業機械情報MIを記憶させるためのワークエリアが一杯になったら、そのワークエリアの先頭から順に古い作業機械情報MIを消去し、新たに収集した作業機械情報MIを順に記憶していく。トリガが発生しなければ、作業機械情報MIは収集され続けるため、処理部20Cはこのような処理を実行する。
【0086】
ステップS204においてトリガが発生していない場合(ステップS204、No)、処理部20Cは、ステップS203及びステップS204を繰り返す。ステップS204においてトリガが発生した場合(ステップS204、Yes)、ステップS205において、処理部20Cは、概略情報を管理システム40に送信する。概略情報は、イベントに関する概略の情報であり、イベントの発生時刻及びイベントがエラーである場合にはエラーコード等を含む。このようにすると、
図10に示すように、トリガが発生した後にステップS205に示す、概略情報を管理システム40に送信する処理が実行されるので、作業機械1のイベントを管理システム40側のオペレータが迅速に把握でき、作業機械1の管理においては好適である。
【0087】
次に、ステップS206に進み、処理部20Cは、トリガ後の作業機械情報MIを収集する。また、処理部20Cは、
図11に示すように、処理フラグFを01から10に変更する。処理フラグF=10である場合、処理部20Cは、トリガが発生した後における作業機械情報MIを収集し、第1記憶部20MAのワークエリアに記憶させている状態である。
【0088】
次に、ステップS207において、処理部20Cは、定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDに基づいて作業機械データMIDを生成して、第1記憶部20MAの所定の領域に記憶する。作業機械データMIDが第1記憶部20MAに記憶されたら、処理フラグFを10から11に変更する。処理フラグF=11である場合、少なくとも1つの作業機械データMIDが第1記憶部20MAに記憶されている状態である。処理部20Cは、複数の作業機械情報M1が記憶され、ワークエリアが一杯になっていた場合、最も古い作業機械情報MIに最新の作業機械情報MIを上書きする。
【0089】
なお、ステップS205とステップS206及びステップS207とが実行される順序は、前述した順序の反対でもよい。すなわち、ステップS206、ステップS207、ステップS205は、この順序で実行されてもよい。これらの一連の手順が終了したら、処理部20Cは、作業機械データMIDを生成するためのコンピュータプログラムPGを一旦終了させる。そして、処理部20Cは、スタートに戻ってステップS201からステップS207を順次実行する。
【0090】
<情報収集システム100の処理例1>
図12は、情報収集システム100の処理例を示すフローチャートである。ステップS301〜ステップS304B及びステップS308は、作業機械1の処理であり、ステップS305〜ステップS307、ステップS309及びステップS310は、管理システム40の処理である。ステップS301は、前述したステップS201と同様なので説明を省略する。ステップS302、ステップS303において、作業機械1の処理部20Cは、作業機械情報MIを収集しつつ、トリガが発生するまで待機する。トリガが発生したら(ステップS303、Yes)、処理部20Cは、処理をステップS304A及びステップS304Bに進める。
【0091】
ステップS304Aにおいて、処理部20Cは、定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDに基づいて作業機械データMIDを生成して、第1記憶部20MAの所定の領域に記憶する。ステップS304Bにおいて、処理部20Cは、概略情報を管理システム40に対して送信する。概略情報は前述した通りである。処理部20Cは、概略情報を送信した後は、ステップS301からステップS304Bを繰り返す。
【0092】
概略情報を受信したアクセスシステム41は、例えば、少なくとも一台の作業機械1から送信された概略情報を表示装置42D等に表示する。複数台の作業機械1から概略情報が送信されたならば、表示装置42D等は、それらの概略情報を一覧表示する。ステップS305において、作成された作業機械データMIDが必要か否かが概略情報に基づいて判断される。本実施形態では、アクセスシステム41によって概略情報を確認したオペレータが、作業機械データMIDが必要であるか否かを判断するが、すべての作業機械データMIDをアクセスシステム41が取得するようにしてもよい。また、アクセスシステム41は、概略情報に記述されているエラーコードに基づき、作業機械データMIDを取得してもよい。例えば、緊急に対応する必要があるエラーコードが概略情報に含まれていた場合、アクセスシステム41は、作業機械データMIDを取得してもよい。
【0093】
ステップS306において、作業機械データMIDが必要でない場合(ステップS306、No)、アクセスシステム41は、次の概略情報がコントローラ20等から送信されてくるまで、ステップS305及びステップS306を繰り返す。作業機械データMIDが必要である場合(ステップS306、Yes)、ステップS307において、アクセスシステム41は、通信回線101及びサーバ103を介して、コントローラ20等に対して作業機械データMIDの送信を要求する。
【0094】
ステップS308において、作業機械データMIDの送信を要求することを示す信号を受信したコントローラ20等は、要求された作業機械データMIDを要求元のアクセスシステム41に送信する。ステップS309において、アクセスシステム41は、コントローラ20等から送信された作業機械データMIDを取得する。そして、ステップS310において、管理システム40のコンバータ42は、取得された作業機械データMIDを解析する。
【0095】
<情報収集システム100の処理例2>
図13は、情報収集システム100の処理例を示すフローチャートである。ステップS401〜ステップS405は作業機械1の処理であり、ステップS406〜ステップS408は、管理システム40の処理である。ステップS401〜ステップS403は、前述した処理例1のステップS301〜ステップS303と同様なので説明を省略する。
【0096】
トリガが発生した後(ステップS403、Yes)、ステップS404において、処理部20Cは、定義ファイルCONF及びヘッダ情報HDに基づいて作業機械データMIDを生成して、第1記憶部20MAの所定の領域に記憶する。ステップS405において、処理部20Cは、概略情報及び作業機械データMIDを管理システム40、より具体的にはアクセスシステム41に対して送信する。処理部20Cは、概略情報及び作業機械データMIDを送信した後は、ステップS401からステップS405を繰り返す。
【0097】
概略情報及び作業機械データMIDを受信したアクセスシステム41は、例えば、少なくとも一台の作業機械1から送信された概略情報を表示装置42D等に表示する。複数台の作業機械1から概略情報が送信されたならば、表示装置42D等は、それらの概略情報を一覧表示する。また、アクセスシステム41は、受信した作業機械データMIDを、記憶装置41Mに一時的に記憶させる。ステップS406において、コントローラ20等から送信されてきた作業機械データMIDが必要か否かが、概略情報及び作業機械データMIDの少なくとも一方から判断される。ステップS407において、作業機械データMIDが必要でない場合(ステップS407、No)、アクセスシステム41は、次の概略情報及び作業機械データMIDがコントローラ20等から送信されてくるまで、ステップS406及びステップS407を繰り返す。アクセスシステム41は、記憶装置41Mに記憶されている不要な作業機械データMIDを消去してもよい。作業機械データMIDが必要である場合(ステップS407、Yes)、コンバータ42は、アクセスシステム41の記憶装置41Mから作業機械データMIDを取得する。ステップS408に進み、コンバータ42は、取得した作業機械データMIDを解析する。
【0098】
本実施形態は、作業機械データMIDが生成される際に、記憶条件及び作業機械データMIDのヘッダ情報記憶領域HDRに記憶させる作業機械情報MIの種類をコントローラ20等の外部から設定又は変更可能とした。このようにすることで、イベントの種類に応じて記憶条件及びヘッダ情報記憶領域HDRに記憶させる作業機械情報MIの種類の少なくとも一方を変更することができる。すると、第1記憶部20MAの記憶容量に制限がある中で、適切な数の作業機械情報MIを適切な記録時間で収集しやすくなる。結果として、作業機械1及びコントローラ20等は、限られたハードウェア資源、具体的には第1記憶部20MAの記憶容量を有効に利用して、作業機械データMIDを有効に活用させることができる。
【0099】
また、本実施形態において、作業機械データMIDは、ヘッダ情報記憶領域HDRに記憶する作業機械情報MIについて、1種類あたりのデータの数が時系列データ記憶領域TSRに記憶する作業機械情報MIよりも少なくなるように、好ましくはトリガ時における1個としている。そして、作業機械データMIDは、ヘッダ情報記憶領域HDRには、時間に対する変化が小さい作業機械情報MIを記憶する。このようにすることで、作業機械データMIDは、時間の経過にともなう変化を把握したい作業機械情報MIのために、大きな記憶容量を確保することができるので、トリガが発生した時点の前後における時系列データをより多く記憶して提供することができる。
【0100】
あるいは、トリガが発生した時点の前だけの時系列データ又はトリガが発生した時点の後だけの時系列データを収集するように設定した場合も、作業機械データMIDは、時間の経過にともなう変化を把握したい作業機械情報MIのために、大きな記憶容量を確保することができる。このため、トリガが発生した時点の前又は後における時系列データをより多く記憶して提供することができる。結果として、作業機械1及びコントローラ20等は、限られたハードウェア資源、具体的には第1記憶部20MAを有効に利用して、作業機械データMIDを有効に活用させることができる。
【0101】
また、本実施形態においては、複数のコントローラ20、21がそれぞれ別個に作業機械情報MIを収集し、作業機械データMIDを生成する。このようにすると、それぞれのコントローラ20、21から作業機械情報MIを順次収集して作業機械データMIDを生成する装置が不要になるので、作業機械情報MIを収集する際の時間遅れを低減することができる。その結果、複数のコントローラ20、21間における作業機械情報MI及び作業機械データMIDの同時性を確保することもできる。
【0102】
以上、本実施形態を説明したが、上述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。