(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記散水ろ床の後段に設置され、好気性微生物の生物膜が形成された生物膜ろ過層を有し、前記処理水を曝気処理せず、無曝気状態の前記処理水を前記生物膜ろ過層内に通過させ、前記好気性微生物によって前記処理水を生物処理して得た処理水を流出する生物膜ろ過装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の下水処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明にかかる下水処理システムの好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1にかかる下水処理システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる下水処理システムの概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態1にかかる下水処理システム1は、処理対象の下水W1の固液分離処理を行う固液分離装置2と、固液分離装置2によって得られたろ過水W2の生物処理を行う散水ろ床3と、散水ろ床3によって得られた処理水W3の更なる固液分離処理を行う後段固液分離装置4とを備える。
【0029】
固液分離装置2は、処理対象の下水W1に対する第1段階目の浄水処理を行うためのものである。具体的には、固液分離装置2は、生活排水または工場排水等の下水W1を受け入れ、この下水W1の固液分離処理を行う。この固液分離処理において、固液分離装置2は、風車形状等の特殊な形状のろ材(後述する浮上ろ材)を用いて下水W1をろ過処理する。これによって、固液分離装置2は、下水W1中の固形成分、例えば、夾雑物、SSおよび固形性BODを同時に捕捉する。この結果、固液分離装置2は、下水W1中の固形成分を徹底的に除去して、ろ過水W2を得る。また、固液分離装置2は、天候によって変動する固液分離装置2への下水W1の流入水量に対応して下水W1のろ過速度を変更し、これによって、下水W1に対する高効率の固液分離処理を行う。例えば、雨天時において下水W1の流入水量が晴天時に比して増加した場合、固液分離装置2は、この下水W1の増水に応じてろ過速度を上げて、下水W1の高速ろ過処理を行う。これによって、固液分離装置2は、たとえ雨天時であっても、下水W1中の固形成分とろ過水W2とに下水W1を効率よく分離する。このような固液分離装置2は、得られたろ過水W2を散水ろ床3に送出する。一方、固液分離装置2は、下水W1の固液分離処理を行うために必要なろ過手段を洗浄する逆洗浄機能を有し、所定のタイミングに、この逆洗浄機能を有効にする。
【0030】
散水ろ床3は、処理対象の下水W1に対する第2段階目の浄水処理を行うためのものである。具体的には、散水ろ床3は、固液分離装置2の後段(すなわち下流側)に設置され、固液分離装置2によって得られたろ過水W2を受け入れる。ついで、散水ろ床3は、このろ過水W2を生物処理して、処理水W3を得る。その後、散水ろ床3は、後段固液分離装置4に処理水W3を送出する。また、散水ろ床3は、このろ過水W2の生物処理に必要なろ過手段の洗浄機能を有し、所定のタイミングに、この洗浄機能を有効にする。
【0031】
後段固液分離装置4は、処理対象の下水W1に対する第3段階目の浄水処理を行うためのものである。具体的には、後段固液分離装置4は、散水ろ床3の後段に設置される固液分離手段である。後段固液分離装置4は、散水ろ床3によって得られた処理水W3を受け入れ、この処理水W3中の比較的粗大な固形成分の沈殿処理と、沈殿せずに残る微細な固形性分のろ過処理との二段階の固液分離を行う。この処理水W3の固液分離処理において、後段固液分離装置4は、SS除去率を高めるために、円筒形状等の特殊な形状のろ材を用い、且つ、上述した固液分離装置2に比して低速なろ過処理を行う。これによって、後段固液分離装置4は、処理水W3中の微細な固形成分までをも確実に捕捉除去することができる。一方、後段固液分離装置4は、処理水W3の固液分離処理を行うために必要なろ過手段を洗浄する洗浄機能を有し、所定のタイミングに、この洗浄機能を有効にする。
【0032】
つぎに、
図1に示した固液分離装置2について詳細に説明する。ここでは、まず、固液分離装置2の構成について説明し、その後、固液分離装置2による下水W1の固液分離処理について説明する。
【0033】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる下水処理システムの固液分離装置の一構成例を示す模式図である。
図2に示すように、この固液分離装置2は、処理対象の下水W1を貯留する分配槽20およびろ過水槽21を備える。また、固液分離装置2は、この下水W1の固液分離処理を行うためのろ材充填層22(第1のろ材充填層)と、この固液分離処理によって得られたろ過水W2を貯留する共通ろ過水槽23とを備える。さらに、固液分離装置2は、下水W1を流通するための複数の流入配管21a〜21d、分配管24、弁24a〜24dおよびポンプ24eと、ろ過水W2を散水ろ床3へ流通するための開水路25とを備える。
【0034】
また、固液分離装置2は、ろ材充填層22の逆洗浄機能を実行するための逆洗浄手段として、
図2に示すように、排水槽26と、複数の排水管27a〜27dおよび排水弁28a〜28dと、空気管29とを備える。
【0035】
分配槽20は、外部から下水W1を受け入れる水槽であり、ろ過水槽21側と壁によって隔てられている。ろ過水槽21は、固液分離処理(ろ過処理)を実行する前の下水W1を貯留する水槽である。ろ過水槽21は、ろ材充填層22の下方に配置され、
図2に示すように、流入配管21a〜21d別に複数の水槽に分けられている。
【0036】
複数の流入配管21a〜21dは、上述したろ過水槽21における複数の水槽に各々下水W1を流入する管である。流入配管21a〜21dは、
図2に示すように、ろ過水槽21の各水槽に各々配置される。
【0037】
ろ材充填層22は、ろ過水槽21に貯留された下水W1の固液分離処理を行うためのものである。具体的には、ろ材充填層22は、ろ過水槽21の各水槽の上方に配置され、800mm以下、より好ましくは600mm以下の層厚に形成される。このろ材充填層22の内部には、複数の浮上ろ材(図示せず)が、下水W1中の固形成分を捕捉するに十分な細かさの空隙を形成する状態で充填されている。また、ろ材充填層22の上面にはスクリーン22aが設置される。スクリーン22aは、液体成分を通すとともに、ろ材充填層22内の浮上ろ材の流出を防止する。
【0038】
ここで、ろ材充填層22内の浮上ろ材としては、見掛け比重が0.1〜0.8であり、50%圧縮硬さが0.1MPa以上であり、サイズが4〜10mmである材質のものが用いられる。見掛け比重が0.1未満であると望ましい圧縮強さを得ることができず、0.8を超えると水との比重差が小さくなって、ろ材充填層22から流出するおそれがある。また、50%圧縮硬さを0.1MPa以上としたのは、これよりも軟質であると、下水W1を高速な水流でろ過処理する際に圧密されてしまい、この結果、SS捕捉能力が低下するためである。さらに、サイズが4mm未満であると浮上ろ材相互間の間隙が小さくなって閉塞し易くなり、一方、サイズが10mmとなっても浮上ろ材によるSS捕捉能力が低下するためである。
【0039】
このような特性の浮上ろ材は、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等を用いて、製造することができる。また、浮上ろ材の形状は、風車形状または十字形状等の凹凸のある形状とする。これによって、ろ材充填層22に浮上ろ材を充填した時に、充填された各浮上ろ材の相互間に非直線的な間隙が形成され、この結果、各浮上ろ材によるSS捕捉効果を高めることができる。なお、このろ材充填層22のSS捕捉効果を高めるためには、ろ材充填層22の全容積に対する各浮上ろ材間の空隙容積の比率(すなわち、ろ材充填層22の空隙率)を50%程度に調整することが望ましい。
【0040】
共通ろ過水槽23は、下水W1の固液分離処理によって得られるろ過水W2を貯留するためのものである。具体的には、共通ろ過水槽23は、
図2に示すように、ろ材充填層22の上方に配置され、ろ過水槽21の各水槽内の下水W1を各々固液分離処理して得られた各ろ過水W2を集める共通の水槽である。
【0041】
分配管24、弁24a〜24dおよびポンプ24eは、分配槽20内の下水W1をろ過水槽21の各水槽に分配するためのものである。具体的には、分配管24は、分配槽20と複数の流入配管21a〜21dとを連通する管である。弁24a〜24dは、分配管24の各流水口近傍に各々配置され、ポンプ24eは、この分配管24内に配置される。分配管24は、弁24a〜24dが開状態である際、ポンプ24eの作用によって、分配槽20から複数の流入配管21a〜21dに下水W1を分配流通させ、各流入配管21a〜21dを介して、ろ過水槽21の各水槽に下水W1を各々流通させる。弁24a〜24dは、各々個別に開閉することができる。このため、弁24a〜24dの開閉によって、ろ過水槽21の各水槽のうち、下水W1を流入したい水槽に下水W1を流入できる。なお、
図2では、流入配管21b〜21dの上部側の図示を省略しているが、流入配管21b〜21dは、分配管24と各々連通している。
【0042】
開水路25は、共通ろ過水槽23内のろ過水W2を固液分離装置2の後段に位置する散水ろ床3(
図1参照)に流通させるためのものである。具体的には、開水路25は、上部側が開口している水路であり、共通ろ過水槽23と
図1に示した散水ろ床3とを連通する。開水路25は、共通ろ過水槽23から自然流下してきたろ過水W2を受け入れ、受け入れたろ過水W2を散水ろ床3へ自然流下させる。
【0043】
排水槽26、複数の排水管27a〜27d、排水弁28a〜28dおよび空気管29は、上述したように、固液分離装置2におけるろ材充填層22の逆洗浄機能を実行するための逆洗浄手段を構成する。具体的には、排水槽26は、ろ材充填層22を逆洗浄した後の洗浄済み液体(以下、逆洗排水という)を貯留する。排水管27a〜27dは、ろ過水槽21の各水槽と排水槽26とを各々連通する管である。排水弁28a〜28dは、排水管27a〜27dに各々配置され、各排水管27a〜27dを開閉する。空気管29は、ろ材充填層22の逆洗浄に寄与する空気をろ材充填層22内に噴出する。
【0044】
つぎに、
図2の実線矢印に示される下水W1またはろ過水W2の流れを参照しつつ、固液分離装置2による下水W1の固液分離処理について説明する。下水W1は、まず、生活排水または工場排水等の外部からの汚水として、分配槽20に流入される。この場合、下水W1は、ポンプ等の動力を用いて強制的に流入してもよいし、自然流によって流入してもよい。
【0045】
分配槽20に貯留された下水W1は、分配管24内を流通して各流入配管21a〜21dに各々分配される。つぎに、流入配管21a〜21d内の各下水W1は、自然流下してろ過水槽21に流入し、その後、
図2の実線矢印に示すように、ろ過水槽21の各水槽に各々流入する。
【0046】
ろ過水槽21の各水槽内の下水W1は、上向きの流れでろ材充填層22を通過する。この場合、各水槽内の下水W1は、
図2の実線矢印に示すように、ろ材充填層22の下部から上部に向かってろ材充填層22内を通過する間に、ろ材充填層22によってろ過処理される。すなわち、ろ材充填層22は、上述した内部の各浮上ろ材によって、これら各浮上ろ材間の空隙内を通過中の上向流の下水W1に含まれる夾雑物、SSおよび固形性BOD等の各種固形成分を漏れなく捕捉して、この上向流の下水W1を固形成分とろ過水W2とに徹底的に分離する。このようにして、固液分離装置2による下水W1の固液分離処理が達成される。なお、上述したろ材充填層22による下水W1のろ過速度は、分配槽20への下水W1の流入水量に対応して調整され、これによって、下水W1の高速ろ過処理が可能になる。この結果、固液分離装置2は、下水W1に対して高効率の固液分離処理を行うことができる。
【0047】
上述した固液分離処理によって得られたろ過水W2は、スクリーン22aを通過して共通ろ過水槽23内に流入(合流)する。その後、ろ過水W2は、
図2の実線矢印に示すように、開水路25内に流入して共通ろ過水槽23から散水ろ床3へ流れる。
【0048】
つぎに、
図1に示した散水ろ床3について詳細に説明する。ここでは、まず、散水ろ床3の構成について説明し、その後、散水ろ床3によるろ過水W2の生物処理(ろ過処理)について説明する。
【0049】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる下水処理システムの散水ろ床の一構成例を示す模式図である。
図3に示すように、この散水ろ床3は、微生物を付着したろ材が充填された層(第2のろ材充填層)を内包するろ床本体30と、固液分離装置2によって得られたろ過水W2をろ床本体30の内部に散布する回転式散水装置31と、ろ床本体30の内部と
図1に示した後段固液分離装置4とを連通する流通管32とを備える。また、
図3には特に図示しないが、散水ろ床3は、ろ床本体30内のろ材充填層を洗浄する洗浄機能を実行するための洗浄手段を備える。
【0050】
ろ床本体30は、表面に微生物を付着した複数のろ材が充填された槽であり、
図3に示すように、6つの処理水槽30a〜30fを組み合わせて構成される。処理水槽30a〜30fの各々は、ろ材充填層内の微生物によってろ過水W2を生物処理して浄化する水処理機能と、このろ材充填層を洗浄する洗浄機能とを備える。なお、これら処理水槽30a〜30fの構成の詳細については、後述する。
【0051】
回転式散水装置31は、上述した固液分離装置2から流出されたろ過水W2をろ床本体30の処理水槽30a〜30fの各内部に散布するためのものである。具体的には、回転式散水装置31は、
図2に示した固液分離装置2の開水路25と連通するように配管されている。この回転式散水装置31の配管は、開水路25から、
図3に示すようにろ床本体30の内部を通り、ろ床本体30の中心部Cにおいて上向きに延伸してろ床本体40の上部に露出している。また、この配管の端部には、水流によってろ床本体30の円周方向に回転する回転機構が設けられる。ろ床本体30の上部には、この回転機構からろ床本体30の円周部Aに向けて放射状に、複数(例えば3つ)の散水ノズルが設けられる。これら複数の散水ノズルの各々は、この回転式散水装置31の配管と連通し、この回転機構の作用によって、ろ床本体30の円周方向に回転する。なお、回転式散水装置31の散水ノズルの数は、3つ(
図3参照)に限定されず、1つでもよいし、複数でもよい。このような回転式散水装置31は、配管を介して固液分離装置2からろ過水W2を受け入れ、ろ過水W2の流れによって回転機構とともに各散水ノズルを回転させる。回転式散水装置31は、このように回転する各散水ノズルの散水口から、処理水槽30a〜30f内の各ろ材充填層上面にろ過水W2を一様に散布する。
【0052】
流通管32は、ろ床本体30の処理水槽30a〜30fによってろ過水W2を生物処理して得た処理水W3を、散水ろ床3の後段に位置する後段固液分離装置4(
図1参照)に流通させるためのものである。具体的には、流通管32は、ろ床本体30の下層、すなわち、処理水槽30a〜30fの各下層と後段固液分離装置4とを連通する管である。流通管32は、自然流下またはポンプ等の作用によって、処理水槽30a〜30fの各下層から後段固液分離装置4へ処理水W3を流通させる。
【0053】
つぎに、上述した処理水槽30a〜30fの構成について詳細に説明する。なお、処理水槽30a〜30fの各構成は互いに同様であるため、以下では、処理水槽30aの構成を代表して説明する。
【0054】
図4は、実施の形態1における散水ろ床の処理水槽の一構成例を示す模式図である。
図4に示すように、処理水槽30aは、微生物を付着したろ材35が充填されたろ材充填層33b(第2のろ材充填層)と、上述したろ床本体30の流通管32(
図3参照)と処理水槽30aの内部とを連通する流通管34aと、ろ材35の流出を防止するろ材流出防止網33dとを備える。また、処理水槽30aは、ろ材充填層33bの洗浄機能を実行するための洗浄手段として、弁34b,39bと、送風装置37aと、空気噴出管37bと、邪魔板38と、洗浄排水管39aとを備える。
【0055】
処理水槽30aは、表面に微生物を付着したろ材35が充填された槽であり、ろ材充填層33bと、ろ材充填層33bの上層33aと下層33cとに区分けされる。処理水槽30aの上層33a側は開口しており、この開口によって外部と処理水槽30a内部との通気が可能となっている。また、処理水槽30aの上層33a側には回転式散水装置31の散水ノズルが位置し、処理水槽30aの下層33c側は、流通管34aおよび洗浄排水管39aと連通している。
【0056】
ろ材充填層33bは、固液分離装置2によって得られたろ過水W2の生物処理を行うためのものである。ろ材充填層33bには、上層33a側から下層33c側に向けてろ過水W2が自然流下できる程度の空隙を形成するように、複数のろ材35が充填される。ろ材流出防止網33dは、ろ材充填層33bに配置され、ろ材充填層33b内の複数のろ材35を支持する。また、ろ材流出防止網33dは、液体成分を通すとともに、ろ材充填層33bから下層33cへのろ材35の流出を防止する。なお、ろ材充填層33bによってろ過水W2を生物処理して得られた処理水W3は、このろ材流出防止網33dを通り、ろ材充填層33bの下面側から自然流下して、処理水槽30aの下層33cに流れる。
【0057】
ここで、ろ材35は、ポリウレタンまたはポリプロピレン等の物質の表面に微生物を付着させたものであり、その比重は、水の比重(=1.0)に近似する値、例えば0.9である。また、ろ材35は、例えば
図4に示すように円筒形状に形成された円筒形ろ材である。ろ材35の円筒内外の各表面状態は、平滑であってもよいが、ろ過水W2に対する接触面積の増大に有効な表面状態、例えば、微細な凹凸状態、蛇腹状態、または、これらを組み合わせた状態であることが望ましい。このような円筒形状のろ材35が充填されたろ材充填層33bにおいて、各ろ材35の相互間に非直線的な空隙が形成され、且つ、各ろ材35の円筒中空部分によって空隙が形成される。この場合、ろ材充填層33bの全容積に対する各ろ材35による空隙容積の比率、すなわち、ろ材充填層33bの空隙率は、例えば90%程度になる。ろ材35の外壁面および内壁面は、これら空隙内を流下するろ過水W2と接触することになり、これによって、ろ材35とろ過水W2との接触面積が十分に大きくなる。この結果、ろ材充填層33b(各ろ材35)によるろ過水W2の生物処理能力は、処理水槽30aに対して要望される必要レベル以上に向上する。
【0058】
弁34b,39b、送風装置37a、空気噴出管37b、邪魔板38、および洗浄排水管39aは、処理水槽30aにおけるろ材充填層33bの洗浄機能を実行するための洗浄手段を構成する。弁34bは、処理水槽30a内に洗浄液を流入してろ材充填層33bの洗浄機能を発揮させる期間、流通管34aの開口を閉じて、後段固液分離装置4への処理水W3の流通を遮断する。
【0059】
送風装置37aは、ろ材充填層33b内の各ろ材35の洗浄に必要な空気を空気噴出管37bに送給する。空気噴出管37bは、処理水槽30a内の少なくともろ材充填層33bを冠水させた洗浄液に空気を噴出して、ろ材充填層33b内の各ろ材35を撹拌洗浄する旋回流を、この洗浄液に発生させる。具体的には、空気噴出管37bは、
図4に示すように処理水槽30aの下層33cに配置される。空気噴出管37bは、処理水槽30aの中心壁36aの近傍且つ下層33cから、ろ材充填層33bに向けて、送風装置37aからの空気を噴出して、この洗浄液の上下方向の旋回流を発生させる。なお、ろ材充填層33bは、
図3に示したろ床本体30を代表する処理水槽30a内の層であり、散水ろ床3内のろ材充填層(第2のろ材充填層)の一つに他ならない。
【0060】
邪魔板38は、
図4に示すように、処理水槽30aの中心壁36a側の領域と円周壁36b側の領域とに処理水槽30aの槽内領域を仕切る仕切板である。なお、中心壁36aは、処理水槽30aの側壁のうちの、
図3に示したろ床本体30の中心部C側の側壁である。円周壁36bは、処理水槽30aの側壁のうちの、ろ床本体30の円周部A側の側壁である。邪魔板38は、
図4に示すように、中心壁36aよりも円周壁36b(すなわちろ床本体30の外壁側)に近い位置に設けられ、上述したように処理水槽30aの槽内領域を仕切る。このようにして、邪魔板38は、空気噴出管37bから空気が噴出される領域(以下、中心側領域という)と、空気が噴出されない領域(以下、円周側領域という)とに、処理水槽30aの槽内領域を仕切る。このような邪魔板38は、処理水槽30a内に貯留した洗浄液へ空気噴出管37bから空気を噴出することによって発生した洗浄液流の一部を邪魔し、これによって、この洗浄液の旋回流(具体的には上下方向の旋回流)の発生を促進する。なお、処理水槽30a内の中心側領域は散水ろ床3内における空気の噴出領域であり、処理水槽30a内の円周側領域は散水ろ床3内における空気の非噴出領域である。すなわち、邪魔板38は、散水ろ床3内を噴出領域と非噴出領域とに仕切って、洗浄液の旋回流の発生を促進する仕切板の一つに他ならない。
【0061】
洗浄排水管39aは、各ろ材35の撹拌洗浄後の洗浄液を排出する排出管である。弁39bは、この洗浄排水管39aを開閉するための弁である。洗浄排水管39aは、弁39bによって開放された期間、処理水槽30aの下層33cから、上述した洗浄液の旋回流によって各ろ材35を撹拌洗浄した後の洗浄液を外部に排出する。
【0062】
つぎに、
図4の矢印に示されるろ過水W2または処理水W3の流れを参照しつつ、処理水槽30aによるろ過水W2の生物処理について説明する。ろ過水W2は、上述した固液分離装置2から回転式散水装置31の管内を流通して、処理水槽30a内に流入される。この場合、ろ過水W2は、回転式散水装置31の各散水ノズルから自然流下して、ろ材充填層33bの上面に散布される。
【0063】
ろ材充填層33bの上面に散布されたろ過水W2は、ろ材充填層33bの通気とともに自然流下して、ろ材充填層33bを通過する。例えば、
図4の波線矢印に示されるように、回転式散水装置31から散布されたろ過水W2は、各ろ材35の表面と順次接触しつつ自然流下する。このろ材35とろ過水W2との接触時に、ろ材35表面の微生物が、ろ過水W2中の有機物を分解処理する。
【0064】
このように、ろ材充填層33b内を流下中のろ過水W2は、ろ材35と接触する毎に微生物によって生物処理され続け、この結果、有機物が分解除去された処理水W3として、ろ材流出防止網33dから処理水槽30aの下層33cに流下する。このようにして、処理水槽30aによるろ過水W2の生物処理が達成される。
【0065】
上述した生物処理によって得られた処理水W3は、弁34bを介して、処理水槽30aの下層33cから流通管34aに流出し、その後、流通管34aを通じて流通管32(
図3参照)に流通し、流通管32から後段固液分離装置4へ流れる。この場合、弁34bは開いた状態であるため、処理水W3は、下層33cに流下した後、直ちに流通管34a内に流れる。このため、上述した生物処理の実行時に、処理水W3がろ材充填層33bの上面の高さまで溜まることは、あり得ない。
【0066】
なお、
図3に示したろ床本体30の処理水槽30b〜30fによるろ過水W2の水処理機能は、上述した処理水槽30aの場合と同様である。すなわち、処理水槽30b〜30fの各々は、回転式散水装置31の各散水ノズルからろ材充填層上面に散布されたろ過水W2を、処理水槽30aと同様に各ろ材35表面の微生物によって生物処理し、これによって得られた処理水W3を、流通管32等を通じて後段固液分離装置4へ送出する。
【0067】
つぎに、
図1に示した後段固液分離装置4について詳細に説明する。ここでは、まず、後段固液分離装置4の構成について説明し、その後、後段固液分離装置4による処理水W3の固液分離処理について説明する。
【0068】
図5は、本発明の実施の形態1にかかる下水処理システムの後段固液分離装置の一構成例を示す模式図である。
図5に示すように、この後段固液分離装置4は、散水ろ床3からの処理水W3を受け入れて沈殿処理する沈殿部40と、この沈殿処理後の処理水W3のろ過処理を行うろ過部41と、このろ過処理によって得られた処理水W4を排出するための処理水路43および排水路44と、処理水路43から排水路44への流水経路を開閉する電動ゲート45aおよび駆動部45bとを備える。また、後段固液分離装置4は、処理水W3の沈殿処理によって処理水W3から分離した沈殿物を沈殿部40の沈殿物集積部40aに掻き寄せる往復式掻寄機46aと、往復式掻寄機46aを動作させる駆動部46bとを備える。さらに、後段固液分離装置4は、ろ過部41内に充填された各ろ材42の洗浄機能を実行するための洗浄手段として、
図5に示すように、送風装置47aと、空気噴出管47bと、洗浄排水路48とを備える。また、後段固液分離装置4は、駆動部45b,46bおよび送風装置47aの各動作を制御する制御部49を備える。
【0069】
沈殿部40は、散水ろ床3(
図1,3参照)から処理水W3を受け入れつつ、処理水W3中の汚泥等の固形成分の沈殿処理を行う。具体的には、沈殿部40は、散水ろ床3からの処理水W3中の固形成分を底部に沈殿させる。また、沈殿部40は、汚泥等の固形成分が除去された処理水W3、すなわち沈殿処理後の処理水W3を、処理水W3の流入時の流れを利用して自然に、ろ過部41の下部へ流す。
【0070】
また、沈殿部40は、処理水W3の流入側に沈殿物集積部40aを有する。沈殿物集積部40aは、沈殿部40内において処理水W3から沈殿分離した汚泥等の固形成分を沈殿物として集積する。なお、沈殿物集積部40a内の沈殿物は、所定の期間が経過する都度または所定量の沈殿物を集積する都度、排出管等(図示せず)を通じて沈殿物集積部40aから引き抜かれる。
【0071】
ろ過部41は、上述した沈殿処理後の処理水W3に対して更に固液分離処理(ろ過処理)を行うためのものである。具体的には、ろ過部41は、沈殿部40内の排水路44側に配置され、内壁によって複数(例えば格子状)に分割された各槽内に、複数のろ材42を有する。これら複数のろ材42は、ろ過部41内の各槽に充填され、ろ過部41内において、沈殿処理後の処理水W3中の固形成分(SS等)を捕捉するに十分な細かさの空隙を形成する。ろ過部41は、これら複数のろ材42を用いて、沈殿処理後の処理水W3のろ過処理を行う。このろ過処理において、ろ過部41は、
図2に示した固液分離装置2に比して低速な流れで、沈殿処理後の処理水W3をろ過部41内へ上向きに通過させる。これによって、ろ過部41は、複数のろ材42の空隙内、具体的には各ろ材42の表面に、この沈殿処理後の処理水W3中のSS等の固形成分を捕捉するとともに、処理水W3から固形成分を除去した処理水W4を上面の処理水路43内へ流出する。
【0072】
ここで、ろ過部41内のろ材42は、その表面に生物膜が形成されていない点等を除き、上述した散水ろ床3のろ材35(
図4参照)と略同様の構成を有する。すなわち、ろ材42は、円筒形状に形成された円筒形ろ材であり、上述したろ材35に比して小さく、ろ材42の比重は、水の比重に近似する値、例えば0.9である。また、ろ材42の円筒内外の各表面状態は平滑であってもよいし、他の状態、例えば微細な凹凸状態や蛇腹状態等であってもよい。このような円筒形状のろ材42は、ろ過部41内において、
図4に示したろ材充填層33b内のろ材35と同様に、ろ材相互間に非直線的な空隙を形成するとともに、円筒中空部分による空隙を形成する。このようなろ材42が充填されたろ過部41内のろ材充填層の空隙率は、例えば90%程度になる。これによって、ろ材42と処理水W3との接触面積は十分に大きくなり、この結果、各ろ材42による処理水W3のろ過処理能力は、ろ過部41に対して要望される必要レベル以上に向上する。
【0073】
一方、ろ過部41の上面にはスクリーン41aが配置され、ろ過部41の下面にはスクリーン41bが配置される。スクリーン41a,41bは、液体成分を通すとともに、ろ過部41内からのろ材42の流出を防止する。
【0074】
処理水路43は、ろ過部41によって得られた処理水W4の排水経路を形成するものであり、ろ過部41の上面に配置される。
図6は、ろ過部上の処理水路の一構成例を示す模式図である。
図5,6に示すように、処理水路43は、上部側が開口した水路であり、ろ過部41の上部において、排水路44に繋がる複数の排水経路を形成する。このような処理水路43は、スクリーン41aを通じてろ過部41の上部に溢れ出た処理水W4を受け入れ、沈殿部40の側壁に形成された開口部を介して、この処理水W4を排水路44へ自然流下させる。なお、処理水路43の側壁は、洗浄排水路48に比して低い。このため、ろ過部41の上部に溢れ出た処理水W4は、電動ゲート45aが処理水路43から排水路44への排水経路を開放している期間、すなわち処理水W3のろ過処理を実施している期間、洗浄排水路48内へ流入せずに処理水路43内へ流入する。
【0075】
排水路44は、後段固液分離装置4の外部へ処理水W4を排水するためのものである。具体的には、排水路44は、上部側が開口した水路であり、沈殿部40の側壁の開口部を介して処理水路43と後段固液分離装置4の外部とを連通する。排水路44は、処理水路43から自然流下してきた処理水W4を受け入れ、受け入れた処理水W4を外部へ自然流下させる。これによって、排水路44は、後段固液分離装置4の外部への処理水W4の排水を達成する。
【0076】
電動ゲート45aおよび駆動部45bは、上述した処理水路43と排水路44との連通経路を開閉するためのものである。具体的には、電動ゲート45aは、沈殿部40の側壁に形成された開口部に配置される。駆動部45bは、電動ゲート45aの開閉動作の駆動源である。すなわち、電動ゲート45aは、駆動部45bの作用によって、この開口部の開閉動作を行い、これによって、処理水路43と排水路44との連通経路を開閉する。この連通経路の開放によって、処理水路43から排水路44への処理水W4の流通が可能となり、この連通経路の閉鎖によって、処理水路43から排水路44への処理水W4の流通が停止する。
【0077】
往復式掻寄機46aおよび駆動部46bは、沈殿部40の底部に溜まった沈殿物を沈殿物集積部40a内へ掻き寄せるためのものである。具体的には、往復式掻寄機46aは、楔形等の所定形状をなす複数のスクレーパを備え、沈殿物集積部40aからろ過部41の下部に向けて延伸した構造を有する。駆動部46bは、駆動軸等を介して往復式掻寄機46aと接続され、往復式掻寄機46aの駆動源として機能する。往復式掻寄機46aは、沈殿部40底部の沈殿物に複数のスクレーパを接触させつつ、駆動部46bの作用によって、往復式掻寄機46aの延伸方向(
図5の太線両側矢印参照)に往復動作する。この結果、往復式掻寄機46aは、沈殿部40底部の沈殿物を沈殿物集積部40a内へ順次掻き寄せる。
【0078】
送風装置47a、空気噴出管47b、および洗浄排水路48は、ろ過部41内に充填された複数のろ材42の洗浄機能を実行するための洗浄手段を構成する。なお、これら複数のろ材42の洗浄機能が発揮される期間、電動ゲート45aは、処理水路43と排水路44との連通経路を閉じて、後段固液分離装置4の外部への処理水流通を遮断する。
【0079】
送風装置47aは、ろ過部41内に充填された複数のろ材42の洗浄に必要な空気を空気噴出管47bに送給する。空気噴出管47bは、ろ過部41内に流入した沈殿処理後の処理水W3に空気を噴出して、これら複数のろ材42を撹拌洗浄する旋回流を、ろ過部41内に発生させる。具体的には、空気噴出管47bは、
図5に示すように、ろ過部41を構成する複数の槽に対応して分岐する多孔管である。空気噴出管47bの空気噴出口は、これら複数の槽の各内部のうち、ろ材42の充填層の下部であり且つ槽側壁部の近傍に配置される。空気噴出管47bは、各ろ材42の充填層に対し、その下層側から上方に向けて送風装置47aからの空気を噴出して、ろ過部41内の処理水W3に上下方向の旋回流を発生させる。
【0080】
洗浄排水路48は、各ろ材42の撹拌洗浄後の洗浄排水を排出するための排水路である。具体的には
図6に示すように、洗浄排水路48は、上部側が開口した水路であり、上述した処理水路43に比して高い側壁を有して、ろ過部41の上部に洗浄排水の排水経路を形成する。このような洗浄排水路48は、上述した旋回流によってスクリーン41aからろ過部41の上部に溢れ出た洗浄排水、すなわち、各ろ材42の洗浄に用いた処理水W3を受け入れ、外部または沈殿部40に向けて、この処理水W3を流通する。
【0081】
制御部49は、電動ゲート45aの駆動部45b、往復式掻寄機46aの駆動部46b、および送風装置47aの各動作を制御する。具体的には、制御部49は、沈殿部40内の処理水W3がろ過部41によってろ過処理される期間、電動ゲート45aの開動作によって処理水路43から排水路44への連通経路を開放するように、駆動部45bを制御する。また、制御部49は、ろ過部41内の各ろ材42の洗浄機能が発揮される期間、電動ゲート45aの閉動作によって処理水路43から排水路44への連通経路を閉鎖するように、駆動部45bを制御する。さらに、この期間、制御部49は、空気噴出管47bに空気を送給するように送風装置47aを制御する。一方、制御部49は、所定の期間、連続的または断続的に往復式掻寄機46aを往復動作させるように駆動部46bを制御する。
【0082】
つぎに、
図5,6の実線矢印に示される処理水W3,W4の流れを参照しつつ、後段固液分離装置4による処理水W3の固液分離処理について説明する。処理水W3は、まず、上述した散水ろ床3の流通管32内を流通して、沈殿部40内に自然流下する。
【0083】
図5の実線矢印に示すように、沈殿部40に流入した処理水W3は、その自然流下時の流入力を利用して、沈殿部40の入側(沈殿物集積部40a側)からろ過部41の下部に向けて流れる。この期間、処理水W3中の汚泥等の固形成分は、処理水W3から分離して、沈殿部40の底部に沈殿する。また、ろ過部41の下部側から溢れた処理水W3は、沈殿部40内において循環し、最終的に、ろ過部41の下部に流れる。この場合においても、処理水W3中からの固形成分の沈殿分離は継続される。このようにして、後段固液分離装置4による処理水W3の固液分離処理のうちの一つ、すなわち、処理水W3の沈殿処理が達成される。なお、沈殿部40の底部に沈殿した固形成分、すなわち、処理水W3から分離した沈殿物は、往復式掻寄機46aによって沈殿物集積部40a内に掻き寄せられる。
【0084】
上述した沈殿処理後の処理水W3は、ろ過部41の下部に到達した後、
図5の実線矢印に示すように、上向きの流れでスクリーン41bおよびろ過部41内を順次通過する。この場合、沈殿処理後の処理水W3は、
図2に示した固液分離装置2のろ過処理に比して低速な流れで、複数のろ材42の空隙内を通過する。このように沈殿処理後の処理水W3がろ材42の空隙内を通過する間、この処理水W3中の固形成分は、各ろ材42の表面に付着する。このような各ろ材42への固形成分の付着によって、ろ過部41は、この処理水W3中のSS等の固形成分を漏れなく捕捉して、この処理水W3を固形成分と処理水W4とに分離する。このようにして、後段固液分離装置4による処理水W3の固液分離処理のうちの一つ、すなわち、処理水W3のろ過処理が達成される。
【0085】
上述した固液分離処理(沈殿処理およびろ過処理)によって得られた処理水W4は、
図5の実線矢印に示すように、スクリーン41aを通過してろ過部41の上部に溢れ出る。続いて、処理水W4は、処理水路43内に流入し、
図6の実線矢印に示すように、処理水路43から排水路44内へ自然流下する。その後、処理水W4は、排水路44内を自然流下して、外部環境に排出される。
【0086】
つぎに、上述した固液分離装置2の逆洗浄機能について説明する。
図7は、固液分離装置が逆洗浄機能を実行している状態を示す模式図である。なお、
図7において、実線矢印は、液体の流れを示す。
【0087】
図7に示すように、固液分離装置2は、上部側の共通ろ過水槽23から下部側のろ過水槽21に向けて強制的に流水することによって、通常の固液分離処理時とは逆方向の流水状態をろ材充填層22に発生させて、ろ材充填層22を逆洗浄する。
【0088】
具体的には、逆洗浄機能を有効にする際、まず、排水弁28a〜28dを開状態にし、排水管27a〜27dを介して、ろ過水槽21の各水槽内の下水W1を排水槽26に導く。ついで、排水弁開放から所定の時間(例えば10〜30秒)が経過後に、
図7に示すように、空気管29からろ過水槽21の各水槽に空気を導入する。
【0089】
この状態において、共通ろ過水槽23内のろ過水W2は、下向きの流れでろ材充填層22を通過、すなわち逆流する。これとともに、空気管29は、ろ材充填層22の下面側から、ろ材充填層22内の各浮上ろ材に向けて空気を放出する。これらの作用の相乗効果によって、ろ材充填層22内の各浮上ろ材は、層内においてばらけるとともに転回または揺動等の動作を起こし、この結果、各浮上ろ材表面の微細粒子またはSS等の固形成分が剥がれる。
【0090】
この各浮上ろ材表面から剥がれた固形成分は、ろ過水槽21内の下水W1またはろ材充填層22内を逆流してきたろ過水W2とともに、排水管27a〜27d内を流通して排水槽26内に流入する。排水槽26は、上述した固形成分を含む下水W1およびろ過水W2を逆洗排水として貯留する。
【0091】
ここで、ろ材充填層22内の浮上ろ材は、上述したように、0.1〜0.8の範囲内の見掛け比重を有する。このため、浮上ろ材は、ろ材充填層22の上面からろ過水W2が逆流した場合であっても、ろ材充填層22の内部において動作するにとどまり、ろ材充填層22から流出することはない。
【0092】
上述したようにして、固液分離装置2の逆洗浄機能が達成される。なお、固液分離装置2は、上述した逆洗浄機能を所定のタイミングで実行する。例えば、固液分離装置2は、ろ材充填層22のろ過抵抗が所定の閾値以上である場合に逆洗浄を実行してもよいし、所定の時間が経過する毎に逆洗浄を実行してもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0093】
この場合、固液分離装置2は、ろ材充填層22のろ過抵抗を測定する測定部と、この測定部の測定結果に基づいて排水弁28a〜28dの開閉駆動を制御する制御部とを備えてもよいし、経過時間を測定する計時部と、この計時部の出力に基づいて排水弁28a〜28dの開閉駆動を制御する制御部とを備えてもよい。または、固液分離装置2は、上述した測定部、計時部および制御部を備えてもよい。
【0094】
つぎに、上述した散水ろ床3のろ材充填層の洗浄機能について説明する。
図8は、散水ろ床を構成する処理水槽がろ材充填層の洗浄機能を実行している状態を示す模式図である。この
図8において、実線矢印は、液体の流れを示す。なお、散水ろ床3のろ材充填層の洗浄機能は、散水ろ床3を構成する複数の処理水槽30a〜30f(
図3参照)の各々において同様である。このため、以下では、散水ろ床3の洗浄機能の一例として、
図4に示した処理水槽30aのろ材充填層33bの洗浄機能を代表して説明する。
【0095】
図8に示すように、処理水槽30aは、その内部に洗浄液を十分に貯留し、下層33c側からろ材充填層33bへの空気噴出によって、ろ材充填層33b内の各ろ材35を強制的に撹拌し、この撹拌後の洗浄液を洗浄排水管39aから排出することによって、ろ材充填層33bを洗浄する。
【0096】
具体的には、ろ材充填層33bの洗浄機能を有効にする際、まず、弁34b,39bを閉状態にし、処理水W3の排出を止める。ついで、ろ材充填層33bの洗浄液としての洗浄水W5を、回転式散水装置31の各散水ノズルから処理水槽30aに流入して、処理水槽30aの内部に洗浄水W5を貯留する。なお、洗浄水W5は、散水ノズルを用いずに処理水槽30aの上部開口から処理水槽30aに流入してもよい。
【0097】
洗浄水W5は、弁34b,39bが閉じているため、処理水槽30aの内部において順次増水し、最終的には、少なくともろ材充填層33bを冠水させる。すなわち、処理水槽30a内の洗浄水W5の液面は、下層33cからろ材充填層33bに順次達し、ついには、上層33a内の高さまで達する。
【0098】
洗浄水W5の液面が処理水槽30aの上層33aに達した状態において、処理水槽30aへの洗浄水W5の供給が停止し、ついで、送風装置37aが、空気噴出管37bに空気を送給する。空気噴出管37bは、
図8に示すように、処理水槽30aの中心壁36aの近傍且つ下層33cから、処理水槽30a内の洗浄水W5に送風装置37aからの空気を噴出する。この空気噴出管37bからの空気は、
図8の実線矢印に示すように、洗浄水W5が邪魔板38の周りを上下方向に旋回する旋回流を発生させる。すなわち、この噴出空気の作用によって、洗浄水W5は、処理水槽30a内の中心側領域において上向きに流れ、上層33aにおいて、中心壁36a側から円周壁36b側へ向けて横向きに流れる。また、洗浄水W5は、処理水槽30a内の円周側領域において下向き流れ、ろ材流出防止網33dの上部および下層33cにおいて、円周壁36b側から中心壁36a側へ向けて横向きに流れる。洗浄水W5の旋回流は、これら一連の流れの組み合わせによって成り立つ。
【0099】
また、上述したような噴出空気の作用による洗浄水W5の旋回流の発生は、邪魔板38によって促進される。すなわち、邪魔板38は、処理水槽30a内の中心側領域において、洗浄水W5の上向流以外の流れを邪魔しつつ上向流に変化させ、これによって、洗浄水W5の上向流を強化する。これと同時に、邪魔板38は、処理水槽30a内の円周側領域において、洗浄水W5の下向流以外の流れを邪魔しつつ下向流に変化させ、これによって、洗浄水W5の下向流を強化する。
【0100】
なお、処理水槽30a内の中心側領域および円周側領域は、上述したように、邪魔板38によって仕切られた処理水槽30a内の領域である。詳細には、中心側領域は、中心壁36aと邪魔板38との間の領域であって、空気噴出管37bから空気が噴出される噴出領域である。円周側領域は、円周壁36bと邪魔板38との間の領域であって、空気が噴出されない非噴出領域である。
【0101】
上述したように強化された旋回流の洗浄水W5は、ろ材充填層33bに充填された複数のろ材35を撹拌洗浄する。具体的には、これら複数のろ材35の各々は、
図8の実線矢印に示すように、洗浄水W5の旋回流によってばらけるとともに、洗浄水W5とともに強制的に邪魔板38の周りを上下方向に旋回する。これと同時に、各ろ材35は、洗浄水W5の作用によって強制的に転回または揺動等の動作を起こす。この結果、各ろ材35表面に付着していた生物膜、ろ床ハエの卵および幼虫、その他ろ過水W2から除去した汚物等の付着物は、各ろ材35表面から剥がれ、洗浄汚物として洗浄水W5中に漂う。なお、このような洗浄水W5の旋回流による各ろ材35の撹拌洗浄は、各ろ材35の洗浄に十分な時間、実施される。
【0102】
各ろ材35の撹拌洗浄後、弁39bを開状態にして洗浄排水管39aを開放する。上述した撹拌洗浄後の洗浄水W5は、洗浄排水として、洗浄汚物とともに、ろ材流出防止網33dを通過して洗浄排水管39aから外部に排出される。ここで、ろ材35の比重は、上述したように水の比重に近似する値に設定されている。また、ろ材流出防止網33dによって、ろ材充填層33bから下層33cへのろ材35の流出が阻止される。このため、ろ材35は、上述した撹拌洗浄後に、ろ材充填層33bの内部に留まる。なお、送風装置37aの空気送給は、撹拌洗浄後の洗浄水W5の排出期間中に継続してもよいし、弁39bの開放時に停止してもよい。
【0103】
上述したようにして、処理水槽30aのろ材充填層33bの洗浄機能が達成される。このような処理水槽30aは、ろ材充填層33bの水処理能力が所定の閾値以下に低下した場合にろ材35の洗浄を実行してもよいし、所定の時間が経過する毎にろ材35の洗浄を実行してもよいし、これらの組み合わせでもよい。なお、
図3に示した処理水槽30b〜30fの各ろ材洗浄機能は、上述した処理水槽30aの場合と同様である。
【0104】
つぎに、上述した後段固液分離装置4のろ材洗浄機能について説明する。
図9は、後段固液分離装置のろ材洗浄機能を説明するための模式図である。この
図9において、実線矢印は、液体の流れを示す。以下、上述した
図5,6および
図9を参照しつつ、後段固液分離装置4によるろ過部41の各ろ材42の洗浄機能を詳細に説明する。
【0105】
後段固液分離装置4は、沈殿部40への処理水W3の流入と、沈殿物集積部40aへの沈殿物の掻き寄せとを継続しつつ、処理水W3をろ材洗浄液として用いて、ろ過部41内の各ろ材42を洗浄する。
【0106】
具体的には、ろ過部41のろ材洗浄機能を有効にする際、まず、電動ゲート45aを閉状態にして、排水路44への処理水流出を止める。この状態において、ろ過部41内の各ろ材42は、処理水W3中に冠水する。
【0107】
ついで、後段固液分離装置4は、ろ過部41内への処理水W3の流入を継続しつつ、送風装置47aおよび空気噴出管47bを用いて、ろ過部41内の処理水W3へ空気を噴出する。すなわち、送風装置47aは、制御部49の制御に基づいて、空気噴出管47bに空気を送給する。空気噴出管47bは、
図9に示すように、ろ過部41の側壁近傍且つ下部側から、ろ過部41内の処理水W3に送風装置47aからの空気を噴出する。
【0108】
この空気噴出管47bからの空気は、
図9の実線矢印に示すように、ろ過部41内において処理水W3が上下方向に旋回する旋回流を発生させる。すなわち、この噴出空気の作用によって、処理水W3は、ろ過部41内の空気噴出領域において上向きに流れるとともに、ろ過部41内の空気非噴出領域において下向き流れる。この結果、ろ過部41内の処理水W3は、
図9に示すように、各槽中央を旋回中心として旋回する。なお、空気噴出領域は、空気噴出管47bから空気が噴出される領域であり、空気非噴出領域は、空気が噴出されない領域である。
【0109】
上述したような旋回流の処理水W3は、ろ過部41内に充填された複数のろ材42を撹拌洗浄する。具体的には、これら複数のろ材35の各々は、
図9の実線矢印に示すように、処理水W3の旋回流によってばらけるとともに、ろ過部41内において処理水W3とともに強制的に上下方向に旋回する。これと同時に、各ろ材42は、この処理水W3の作用によって強制的に転回または揺動等の動作を起こす。この結果、各ろ材42表面に付着していたSS等の付着物は、各ろ材42表面から容易に剥がれ、洗浄汚物として処理水W3中に漂う。なお、このような処理水W3の旋回流による各ろ材42の撹拌洗浄は、各ろ材42の洗浄に十分な時間、実施される。
【0110】
また、上述した各ろ材42の撹拌洗浄が実施される期間、
図9に示すように、処理水W3は、スクリーン41bを通過してろ過部41の下部からろ過部41内へ順次、追加流入する。既に各ろ材42の撹拌洗浄に用いられたろ過部41内の処理水W3は、このろ過部41内への処理水W3の追加流入に伴い、洗浄汚物とともにスクリーン41aを通過してろ過部41の上部に溢れ出る。このようにろ過部41の上部に溢れ出た処理水W3は、洗浄汚物とともに洗浄排水路48内へ流入する。洗浄排水路48は、
図6に示したように、ろ過部41の上部において処理水路43と異なる排水路を形成している。洗浄排水路48は、洗浄汚物を伴ってろ過部41の上部に溢れ出た処理水W3を、洗浄排水として、後段固液分離装置4の外部槽(汚物処理槽等)へ流通する。なお、洗浄排水路48は、このような洗浄排水を沈殿部40へ流通してもよい。
【0111】
上述した各ろ材42の撹拌洗浄を所定の時間実施した後、送風装置47aは、制御部49の制御に基づいて、空気噴出管47bへの空気の送給を停止する。この結果、ろ過部41内の処理水W3および各ろ材42の旋回流は減衰し、最終的に、この旋回流は停止する。制御部49は、この旋回流の停止後から所定時間が経過するまで、駆動部45bの制御を通して電動ゲート45aの閉状態を維持する。これによって、制御部49は、ろ過部41の上部に溢れ出た処理水W3中の洗浄汚物の濃度(例えばSSの濃度)が所定値以下に安定して減少するまで、排水路44への処理水流出を阻止する。制御部49は、この処理水W3中の洗浄汚物の濃度が所定値以下に安定して減少したタイミングに、電動ゲート45aの開放するように駆動部45bを制御する。
【0112】
上述したようにして、ろ過部41内の各ろ材42の洗浄機能が達成される。後段固液分離装置4は、沈殿部40の水位が所定のレベル以上に上昇した場合にろ材42の洗浄を実行してもよいし、所定の時間が経過する毎にろ材42の洗浄を実行してもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0113】
以上、説明したように、本発明の実施の形態1では、散水ろ床法による下水処理システムにおいて、散水ろ床の前段に、従来の最初沈殿池の代わりに固液分離装置を設置し、この固液分離装置が、処理対象の下水中のSSおよび固形性BOD等の固形成分を捕捉している。このため、散水ろ床に処理対象の液体を流入する前の段階において、この処理対象の液体に本来含まれる固形成分を徹底的に除去することができる。この結果、散水ろ床の前段において、処理対象の下水を固形成分とろ過水とに徹底的に固液分離できるとともに、得られたろ過水中の有機物の殆どを溶解性有機物にすることができる。これによって、後段の散水ろ床への有機物負荷を低減できることから、散水ろ床の小型化を促進でき、この結果、最初沈殿池に比して極めて狭いスペースに、散水ろ床法による下水処理システムを設置できて、システム設置の省スペース化を図れる。さらには、散水ろ床に処理対象の液体を散布する散水ノズルの目詰まりを防止することができる。
【0114】
また、散水ろ床の前段の固液分離装置によって処理対象の液体中の固形成分を除去しているため、散水ろ床の前段において固液分離処理をしない場合よりもコンパクトな散水ろ床法の下水処理システムを構築できる。この結果、標準活性汚泥法に比して維持管理が容易であり且つ標準活性汚泥法と同等以上の浄水処理能力を有する下水処理システムを実現できるとともに、そのシステム設置の省スペース化を実現できる。
【0115】
さらに、散水ろ床の前段の固液分離装置によって処理対象の液体中のSSおよび固形性BOD等を除去しているため、散水ろ床のろ材充填層の悪臭発生を抑制できる。さらには、散水ろ床にろ材充填層の洗浄機能を付加したため、所望のタイミングに散水ろ床内の各ろ材を洗浄することができる。これによって、散水ろ床のろ材充填層の腐敗および虫の卵または幼虫の付着を抑制でき、この結果、散水ろ床の悪臭発生をより一層抑制できるとともに、ろ床ハエの発生を防止できる。
【0116】
また、散水ろ床の後段に後段固液分離装置を設置し、この後段固液分離装置が、散水ろ床からの処理水に対して沈殿処理および低速ろ過処理を行っている。このため、散水ろ床からの処理水から汚泥等の固形成分を沈殿分離できるとともに、この沈殿処理後の処理水からSS等の固形成分を捕捉除去できる。これによって、処理水中の固形成分(特にSS)の除去率を可能な限り向上することができ、この結果、より透明度の高く清浄な処理水を外部環境に排出することができる。
【0117】
さらに、上述した散水ろ床および後段固液分離装置のろ過部のろ材として、円筒形ろ材を用いている。このため、容易にろ材製造できるとともに、水処理時における処理対象水とろ材表面との接触面積およびろ材充填層の空隙率を可能な限り増大できる。この結果、ろ材に要するコストを低減できるとともに、散水ろ床および後段固液分離装置の各水処理効率を向上できる。
【0118】
また、後段固液分離装置において、沈殿部内にろ過部を設置しているため、後段固液分離装置の小型化を促進できる。この結果、散水ろ床法による下水処理システムの小型化且つシステム設置の省スペース化に寄与できる。さらに、沈殿部内に流入した処理対象水の流入力を利用して、ろ過部内にろ過対象水を自然流入している。このため、ろ過対象水の流入ポンプをろ過部に設置する必要がなく、この結果、後段固液分離装置の装置構成を簡易化できるとともに、後段固液分離装置の製造コストおよび設置コストを可能な限り低減できる。
【0119】
さらに、後段固液分離装置のろ過部の洗浄液として、沈殿部内の貯留水(上述した処理水W3)を用いているため、ろ過部洗浄のための洗浄液を別途準備する必要がなく、且つ、沈殿部内への処理対象水の流入を継続しつつ、ろ過部を洗浄できる。これによって、洗浄液の流入ポンプ等のろ過部洗浄用設備が不要になるとともに、沈殿部内における処理対象水の沈殿処理を継続しつつ、ろ過部を洗浄できる。この結果、ろ過部洗浄に要するコストを可能な限り低減できるとともに、ろ過部の洗浄時であっても、処理対象水の沈殿処理効率を高く維持できる。
【0120】
また、各ろ材を冠水させた洗浄液に空気を噴出することによって、この洗浄液に旋回流を発生させ、この旋回流によって各ろ材を撹拌洗浄している。このため、各ろ材表面からSS等の付着物を簡易に除去することができる。
【0121】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、上述した実施の形態1における散水ろ床3の後段に生物膜ろ過装置を設置し、散水ろ床3からの処理水W3を生物膜ろ過装置によって生物処理している。
【0122】
図10は、本発明の実施の形態2にかかる下水処理システムの概略構成を示すブロック図である。
図10に示すように、本実施の形態2にかかる下水処理システム11は、上述した実施の形態1にかかる下水処理システム1の後段固液分離装置4に代えて生物膜ろ過装置5を備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0123】
生物膜ろ過装置5は、本実施の形態2において、処理対象の下水W1に対する第3段階目の浄水処理を行うためのものである。具体的には、生物膜ろ過装置5は、散水ろ床3の後段に設置され、散水ろ床3によって得られた処理水W3を受け入れる。ついで、生物膜ろ過装置5は、この処理水W3を更に生物処理して、処理水W6を得る。その後、生物膜ろ過装置5は、川や池等の外部環境に処理水W6を排出する。
【0124】
つぎに、本実施の形態2における生物膜ろ過装置5について詳細に説明する。ここでは、まず、生物膜ろ過装置5の構成について説明し、その後、生物膜ろ過装置5による処理水W3の生物処理(ろ過処理)について説明する。
【0125】
図11は、本発明の実施の形態2にかかる下水処理システムの生物膜ろ過装置の一構成例を示す模式図である。
図11に示すように、この生物膜ろ過装置5は、散水ろ床3からの処理水W3を受け入れて生物処理する生物処理槽50と、この生物処理によって得られた処理水W6を排出する排水管54とを備える。
【0126】
生物処理槽50は、
図11に示すように、上層51と、散水ろ床3からの処理水W3の生物処理を実行する生物膜ろ過層52と、生物膜ろ過層52を支持する支持砂利層53とを備える。生物処理槽50は、上層51側に散水ろ床3の流通管32が接続され、この流通管32と連通している。生物処理槽50は、流通管32内を通って流入する処理水W3を上層51内に受け入れる。
【0127】
生物膜ろ過層52は、散水ろ床3によって得られた処理水W3の生物処理を行うためのものである。生物膜ろ過層52には、上層51内に散布された処理水W3が自然流下できる程度に、各ろ材の相互間において空隙を形成した状態でろ材が充填される。
【0128】
ここで、生物膜ろ過層52に充填されるろ材の表面には、少なくとも好気性の微生物が付着されている。なお、この生物膜ろ過層52内のろ材の形状は、生物膜ろ過層52内を自然流下中の処理水W3とろ材表面との接触面積が大きくなるような形状に形成されればよい。
【0129】
支持砂利層53は、生物膜ろ過層52内のろ材に比してサイズが大きい砂利が充填された層である。支持砂利層53は、上述した生物膜ろ過層52を下方から支持するとともに、生物膜ろ過層52から自然流下した処理水W6を下流側に流す。
【0130】
排水管54は、生物膜ろ過層52によって処理水W3を生物処理して得られた清浄な処理水W6を川や池等の外部環境に排出するためのものである。具体的には、排水管54は、生物処理槽50の下部であって支持砂利層53の下流側に配置され、支持砂利層53と連通する。排水管54は、支持砂利層53から自然流下した処理水W4を外部環境へ排出する。
【0131】
つぎに、
図11の実線矢印に示される処理水W3,W4の流れを参照しつつ、生物膜ろ過装置5による処理水W3の生物処理について説明する。処理水W3は、まず、上述した散水ろ床3の流通管32内を流通して、生物処理槽50の上層51内に自然流下する。
【0132】
上層51内に流入した処理水W3は、生物膜ろ過層52内に自然流下する。生物膜ろ過層52内に流入した処理水W3は、生物膜ろ過層52内の各ろ材表面と順次接触しつつ自然流下し、このろ材表面と接触する毎に微生物によって生物処理され続ける。
【0133】
ここで、生物膜ろ過層52内を通過中の処理水W3は、上述した散水ろ床3によって通気されつつ生物処理されて得られた処理水であるため、溶存酸素量(Dissolved Oxygen:DO)が例えば4〜8[mg/l]の値に高く保たれる。このため、生物処理槽50は、処理水W3を生物処理する際に、生物膜(特に好気性微生物)に酸素を供給する曝気処理を行う必要がない。すなわち、生物処理槽50は、処理水W3を曝気処理せず、無曝気状態の処理水W3を生物膜ろ過層52内に通過させる。この結果、生物膜ろ過層52内の好気性微生物は、無曝気状態で処理水W3を生物処理できる。
【0134】
生物膜ろ過層52は、上述したようにDOが高い処理水W3を無曝気環境下で生物処理し、この結果、この処理水W3中の有機物(例えば有機性汚濁物質等)を分解処理するとともに、この処理水W3中のSSを捕捉除去する。このようにして、生物膜ろ過装置5による処理水W3の生物処理が達成される。
【0135】
その後、生物膜ろ過層52は、上述したように処理水W3を生物処理して得られた処理水W6を下流側の支持砂利層53に自然流出する。支持砂利層53に到達した処理水W6は、支持砂利層53内を自然流下しつつ、排水管54の開口部に向けて流れる。その後、処理水W6は、排水管54内を自然流下して、外部環境に排出される。なお、処理水W6は、上述した実施の形態1における処理水W4と同様に透明度が高く清浄なものである。
【0136】
以上、説明したように、本発明の実施の形態2では、後段固液分離装置に代えて生物膜ろ過装置を散水ろ床の後段に配置し、この生物膜ろ過装置が、散水ろ床による処理水を生物処理するように構成し、その他は実施の形態1と同様に構成している。このため、実施の形態1の場合と略同様の作用効果を享受するとともに、この生物膜ろ過装置にDOが高い処理水を供給することができる。これによって、この生物膜ろ過装置は、散水ろ床からの処理水に曝気処理する必要がなく、無曝気環境下において処理水の生物処理を行うことができる。この結果、散水ろ床からの処理水に含まれる有機性汚濁物質およびSS等を捕捉除去でき、これによって、実施の形態1の場合と同様に透明度の高く清浄な処理水を外部環境に排出することができる。
【0137】
(変形例)
つぎに、上述した散水ろ床3の変形例について説明する。本発明の実施の形態1,2における散水ろ床3は、弁によって開放された洗浄排水管から洗浄排水を自然流出させていたが、散水ろ床3の変形例では、サイフォンの原理を利用して洗浄排水を排出している。
図12は、本発明における散水ろ床の一変形例を示す模式図である。
図12に示すように、本変形例にかかる散水ろ床は、実施の形態1,2における洗浄排水管39aおよび弁39bに代えて洗浄排水管39cを備える。その他の構成は実施の形態1,2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0138】
すなわち、本変形例にかかる散水ろ床のろ床本体は、実施の形態1,2と同様に複数の処理水槽30a〜30fによって構成されるが、本変形例において、処理水槽30a〜30fの各々は、洗浄排水管39aおよび弁39bに代えて洗浄排水管39cを備える。なお、
図12には、これら複数の処理水槽30a〜30fのうちの処理水槽30aが図示されているが、本変形例において、処理水槽30aの構成および機能(水処理機能およびろ材洗浄機能)は、残りの処理水槽30a〜30fと同様である。また、この処理水槽30aの水処理機能は、実施の形態1,2と同様である。以下では、
図12を参照しつつ、本変形例における処理水槽30aの構成および洗浄機能を代表して説明する。
【0139】
図12に示すように、本変形例における処理水槽30aは、ろ材充填層33bの洗浄機能を実行するための洗浄手段として、実施の形態1と同様の弁34b、送風装置37a、空気噴出管37b、および邪魔板38と、洗浄排水管39cとを備える。その他の構成は、上述したように、実施の形態1,2と同じである。
【0140】
洗浄排水管39cは、コの字型またはU字型等の断面形状に形成された排水管である。洗浄排水管39c内の流通経路の折り返し位置は、
図12に示すように、処理水槽30aの上層33a側に形成され、洗浄排水管39cの排水口は下層33c側に形成される。このような洗浄排水管39cは、後述するように、この折り返し位置の頂部の高さまで処理水槽30a内部に洗浄液が貯留された場合に、サイフォンの原理によって、この処理水槽30a内部の洗浄液を管内に流通させて外部に排出する。
【0141】
なお、上述した固液分離装置2からのろ過水W2を生物処理して処理水W3を得る期間、弁34bは開いた状態である、このため、処理水W3は、下層33cに流下した後、直ちに流通管34a内に流れる。したがって、ろ過水W2の生物処理の実行時に、処理水W3がろ材充填層33bの上面の高さまで溜まることは殆どなく、勿論、処理水W3が洗浄排水管39cの折り返し位置の頂部の高さまで溜まることは、あり得ない。
【0142】
つぎに、本変形例にかかる散水ろ床の洗浄機能の一例として、処理水槽30aのろ材充填層33bの洗浄機能を説明する。本変形例におけるろ材充填層33bの洗浄機能は、サイフォンの原理を用いて洗浄水W5の下向流を発生させるとともに洗浄排水管39cから洗浄排水を排出すること以外、実施の形態1,2と同様である。以下では、
図12を参照しつつ、この洗浄機能に関する本変形例と実施の形態1,2との相違点を説明する。なお、
図12において、実線矢印は、液体の流れを示す。
【0143】
図12に示すように、処理水槽30aは、空気噴出管37bによる下層33cからの空気噴出によって各ろ材35を強制的に撹拌しつつ、回転式散水装置31の各散水ノズルから自然流下する洗浄水W5を順次受け入れる。処理水槽30a内の洗浄水W5は、空気噴出管37bから噴出された空気によって旋回流を起こしつつ、新たな洗浄水W5の追加流入によって順次増量される。この状態において、処理水槽30a内の洗浄水W5の液面は、ろ材充填層33bよりも上方に達し、ついには、上層33aの高さまで達する。
【0144】
この洗浄水W5の流入に伴い、洗浄水W5は、
図12に示すように、洗浄排水管39cの内部に流入する。この場合、洗浄排水管39c内に流入した洗浄水W5の液面は、処理水槽30a内の洗浄水W5の液面と略同じ高さとなる。
【0145】
その後、洗浄排水管39c内の洗浄水W5の液面は、処理水槽30a内への洗浄水W5の流入に伴って上昇し、最終的に、洗浄排水管39cの折り返し位置の頂部の高さHに到達する。この際、
図12に示すように、処理水槽30a内の洗浄水W5の液面も、この高さHに到達している。
【0146】
この状態において、洗浄水W5は、洗浄排水管39cを用いたサイフォンの原理によって、
図12の実線矢印に示すように洗浄排水管39cの排水口から排出される。これに伴って、処理水槽30a内の洗浄水W5は、ろ材流出防止網33dを通過後に洗浄排水管39cを通って強制的に排出される。この洗浄水W5の強制的な排出現象は、処理水槽30a内において旋回中の洗浄水W5に下向流を強制的に発生させる。すなわち、処理水槽30a内の洗浄水W5には、空気噴出等による旋回流とサイフォンの原理による下向流とが同時に発生する。処理水槽30a内の洗浄水W5は、このような旋回流と下向流との相乗作用によって、より一層強力に各ろ材35を撹拌洗浄する。この結果、各ろ材35表面に付着していた生物膜、ろ床ハエの卵および幼虫、その他ろ過水W2から除去した汚物等の付着物は、より確実に各ろ材35表面から剥がれ、洗浄汚物として洗浄水W5中に漂う。
【0147】
上述した撹拌洗浄後の洗浄水W5は、洗浄排水として、洗浄汚物とともに、ろ材流出防止網33dを通過して洗浄排水管39cから外部に排出される。一方、ろ材35は、上述したようにサイフォンの原理によって洗浄水W5が洗浄排水管39cの排水口から排出された場合であっても、ろ材流出防止網33dの作用等によって、撹拌洗浄後にろ材充填層33bの内部に留まる。したがって、ろ材35は、洗浄排水管39cに流入することはない。上述したようにして、本変形例におけるろ材充填層33bの洗浄機能が達成される。
【0148】
以上、説明したように、本変形例では、各ろ材の洗浄手段のうちの洗浄排水管としてサイフォン管を用い、サイフォンの原理を利用して、各ろ材の撹拌洗浄の水流を強化するとともに洗浄排水を排出するように構成し、その他を実施の形態1,2と同様に構成している。このため、実施の形態1,2の場合と同様の作用効果を享受するとともに、サイフォンの原理による下向流を洗浄水の旋回流に追加して、各ろ材の撹拌力を高めることができ、この結果、ろ材洗浄能力を高めて、より確実に各ろ材を洗浄することができる。
【0149】
なお、上述した実施の形態1,2および変形例では、散水ろ床3の後段に、後段固液分離装置4または生物膜ろ過装置5を設置していたが、これに限らず、散水ろ床3の後段に、後段固液分離装置4以外の固液分離装置(例えば沈殿部内にろ過層を備えていない固液分離装置)を備えてもよいし、生物膜ろ過装置5以外の生物膜ろ過装置(例えば曝気式の生物膜ろ過装置)を設置してもよいし、通常の最終沈殿池を設置してもよい。
【0150】
或いは、散水ろ床3を最終浄水手段にして散水ろ床の後段に浄水処理施設を設置せず、散水ろ床3による処理水を外部環境に排出してもよい。なお、上述した散水ろ床3による処理水W3は、後段固液分離装置4による処理水W4または生物膜ろ過装置5による処理水W6に比して透明度は劣るものの、外部環境に流出しても環境上問題ない程度に浄化処理されている。
【0151】
また、上述した実施の形態1,2および変形例では、ろ材充填層の洗浄機能を有する散水ろ床を用いた下水処理システムを例示していたが、これに限らず、ろ材充填層の洗浄機能を有していない散水ろ床を用いた下水処理システムであってもよい。
【0152】
さらに、上述した実施の形態1,2および変形例では、散水ろ床3のろ材充填層33bを洗浄するために洗浄水W5を用いたが、これに限らず、固液分離装置2によって処理されたろ過水W2を処理水槽30aに流入し、このろ過水W2によってろ材充填層33bを洗浄してもよい。このことは、残りの処理水槽30b〜30fについても同様である。
【0153】
また、上述した実施の形態1,2および変形例では、固液分離装置2においてポンプ24eを動作させて下水W1を流通させていたが、これに限らず、ポンプ24eを用いなくてもよい。すなわち、ポンプ等の動力を用いずに、高低差(位置エネルギー)を利用して下水W1を分配槽20またはろ過水槽21に自然に流入してもよい。
【0154】
さらに、上述した実施の形態2では、生物膜ろ過装置5の上部から処理水W3を自然流下させていたが、これに限らず、生物膜ろ過装置5の側部から処理水W3を流入してもよいし、生物膜ろ過層52を生物処理槽50の上部側に配置して生物膜ろ過装置5の下部から処理水W3を流入してもよい。何れの場合であっても、無曝気環境下で生物膜ろ過層52に処理水W3を流入すればよい。
【0155】
また、上述した実施の形態1,2および変形例では、固液分離装置2のろ過水槽21を4分割していたが、これに限らず、固液分離装置2は、上向きの流れで下水W1がろ材充填層22を通過するための水槽が1以上備わっているろ過水槽であればよい。
【0156】
さらに、上述した実施の形態1,2および変形例では、散水ろ床または後段固液分離装置のろ材として、円筒形ろ材を用いていたが、これに限らず、ろ材の形状は、ろ材と処理対象水との接触面積を大きくする形状であれば、多角形状または十字形状等の所望の形状であってもよい。
【0157】
また、上述した変形例では、散水ろ床の各ろ材を洗浄する際、噴出空気による旋回流とサイフォンの原理による下向流とを組み合わせて各ろ材を撹拌洗浄していたが、これに限らず、噴出空気による旋回流を用いず、サイフォンの原理による下向流を利用して各ろ材を撹拌洗浄してもよい。この場合、送風装置および空気噴出管等の空気供給手段と邪魔板とを散水ろ床に設けなくてもよい。また、散水ろ床による処理水W3をサイフォンの原理によって流出してもよい。この場合、流通管34aの代わりにサイフォン管を設け、このサイフォン管から処理水W3を流出してもよいし、このサイフォン管として洗浄排水管39cを用いてもよい。
【0158】
さらに、上述した実施の形態1,2および変形例では、6つの処理水槽30a〜30fを組み合わせてなるろ床本体30を備えた散水ろ床3を例示したが、ろ床本体30を構成する処理水槽の数は、6つに限定されない。すなわち、ろ床本体30は、単一の処理水槽によって構成されてもよいし、複数の処理水槽によって構成されてもよい。
【0159】
また、上述した実施の形態1,2および変形例では、散水ろ床の各処理水槽内に邪魔板を配置していたが、これに限らず、散水ろ床内に邪魔板を配置せず、空気噴出のみによって洗浄液に旋回流を発生させてもよい。この場合、散水ろ床に要望されるろ材洗浄能力に応じて、散水ろ床内に邪魔板を配置するか否かを決定してもよい。
【0160】
さらに、上述した実施の形態1では、後段固液分離装置4のろ過部41を複数の槽に分割していたが、これに限らず、ろ過部41は、単一の槽であってもよい。すなわち、本発明において、ろ過部41の槽数は、特に問わない。
【0161】
また、上述した実施の形態1では、後段固液分離装置4の沈殿部40における沈殿物を往復式掻寄機46aによって沈殿物集積部40aに掻き寄せていたが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、沈殿物集積部40aに沈殿物を集めることができれば、チェーンフライト式掻寄機等、往復式以外の装置であってもよい。
【0162】
また、上述した実施の形態1,2および変形例により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施の形態1,2または変形例に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。