特許第5676785号(P5676785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5676785カバーレイフィルム、発光素子搭載用基板、及び光源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676785
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】カバーレイフィルム、発光素子搭載用基板、及び光源装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20150205BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20150205BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20150205BHJP
【FI】
   H05K3/28 F
   H05K3/28 C
   H01L23/14 R
   H01L33/00 432
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-557536(P2013-557536)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2013052685
(87)【国際公開番号】WO2013118752
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-26792(P2012-26792)
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 純
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀次
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−120155(JP,A)
【文献】 特開平11−327150(JP,A)
【文献】 特開2009−302110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサンと、酸化チタン又はアルミナとを含有し、γ線により硬化されてなる樹脂層(A)を備えており、
波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であって、260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が5%以下であって、かつ、以下に示す耐光性試験後の反射率の低下率が5%以下であることを特徴とする、プリント配線板の導体回路保護用のカバーレイフィルム。
(耐光性試験);キセノンウェザーメータを用いて、温度63℃(ブラックパネル温度)、湿度50%、放射照度(295〜400nm)60W/mで50時間照射。
【請求項2】
波長350〜400nmにおける平均反射率が40%以上であることを特徴とする請求項1に記載のカバーレイフィルム。
【請求項3】
ポリオルガノシロキサン及び酸化チタンを含有する樹脂層(A)と、ポリオルガノシロキサン及びアルミナを含有する樹脂層(B)とを備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のカバーレイフィルム。
【請求項4】
フィルムの厚みが30μm〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
【請求項5】
少なくとも1つ以上の発光素子を搭載するために用いる基板上に、ポリオルガノシロキサンと、酸化チタン又はアルミナとを含有し、γ線により硬化されてなる樹脂層(A)を有する保護層を形成してなる構成を備え、
該保護層は、波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であって、2であって、かつ、以下に示す耐光性試験後の反射率の低下率が5%以下であることを特徴とする発光素子搭載用基板。
(耐光性試験);キセノンウェザーメータを用いて、温度63℃(ブラックパネル温度)、湿度50%、放射照度(295〜400nm)60W/mで50時間照射。
【請求項6】
基板上に導体回路を形成し、該導体回路上に保護層を積層すると共に、前記基板上発光素子を搭載して前記導体回路と前記発光素子とを導通させ、該発光素子を樹脂封止してなる構成を備えた光源装置において、
前記保護層は、ポリオルガノシロキサンと、酸化チタン又はアルミナとを含有し、γ線により硬化してなる層であって、かつ、波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であって、260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が5%以下であって、かつ、以下に示す耐光性試験後の反射率の低下率が5%以下であることを特徴とする光源装置。
(耐光性試験);キセノンウェザーメータを用いて、温度63℃(ブラックパネル温度)、湿度50%、放射照度(295〜400nm)60W/mで50時間照射。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、特にLED等の発光素子を搭載した基板の表面を保護する、金属配線等の導体回路保護用のカバーレイフィルム、該カバーレイフィルムを積層してなる発光素子搭載用基板、及び光源装置に関する。より詳細には、高反射率を有し、高温熱負荷環境下や耐光性試験環境を経た後においても、反射率低下が抑制され、即ち高い反射率が維持され、蛍光体を分散した封止樹脂を充填する際のダム材としても使用可能なカバーレイフィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板のパターン上にLEDが直接実装され、樹脂封止されたチップタイプLEDは、小型化、薄型化に有利であることから、携帯電話のテンキー照明や、小型液晶ディスプレーのバックライトなど電子機器に幅広く使用されている。
【0003】
近年、LEDの高輝度化技術の向上が著しく、LEDはより高輝度化している。それに伴いLED素子自体の発熱量が増大し、LED素子周辺温度は100℃超となる場合があるなど、プリント配線基板などの構成部品にかかる熱負荷が増大している。また、LED搭載基板の製造工程を見ると、封止樹脂の熱硬化処理や、鉛(Pb)フリー半田による接合後のリフロー処理などにおいて、加熱温度が260〜300℃程度に達するなど、LED素子周辺はその使用中のみならず製造工程に於いても高温熱環境下に晒されるようになっている。
【0004】
従来使用されてきた白色の光硬化性樹脂基板、例えば熱硬化性のソルダーレジストを被覆形成してなる熱硬化系樹脂組成物等の白色プリント配線基板は、前述の様に熱負荷がかかる環境下においては、ソルダーレジストやプリント配線板が黄変するなど白色度が低下して反射効率が低下する傾向が認められた。よって、今後の次世代高輝度LED搭載向け基板を開発する際は、このような反射効率の低下を改良する必要がある。
【0005】
また、白色のソルダーレジストを被覆形成してなる、白色のプリント配線板を搭載した製品に関しては、紫外線が照射される環境下においても、前記熱負荷環境下と同様に黄変するなど、白色度が低下して反射率が低下する傾向が見られた。
【0006】
一方、セラミックからなる基板は、耐熱性の点では優れているものの、硬く脆い性質を有しているため、大面積化及び薄型化を図るには限界があった。よって、該セラミックからなる基板は、今後の一般照明用途や、ディスプレー用途に用いる基板としては対応が困難になる可能性がある。そこで、高温熱負荷下でも変色や反射率の低下を生じない、大面積化に対応可能な、耐熱性を有する基板として、カバーレイフィルムを積層してなるプリント配線基板の開発が求められていた。
【0007】
また、プリント配線基板にLEDチップを実装する工程において、その実装部分に蛍光体を分散させた封止樹脂(シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等)を充填することが行われている。この際、封止樹脂が周辺部分に漏れ出さないように、熱硬化樹脂(例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂)からなるダム材を形成することが行われている。
【0008】
この様なダム部材の形成においては、一般的にはディスペンサー等でダム材を形成し熱硬化させるのが通常である。ところが、樹脂を熱硬化させる際に、配線部分を汚染してワイヤボンディング性に影響を及ぼしたり、白色ソルダーレジストやプリント配線基板材料の熱劣化を引き起こしたりすることがあるため、ダム材を形成する際の課題となっていた。更には製造コストがかかるため、金属配線等の導体保護層とダム材を一体化させたカバーレイフィルムや、このようなカバーレイフィルムを積層してなるプリント配線板の開発が求められていた。
【0009】
上述した課題に関しては、従来、例えば、結晶融解ピーク温度260℃以上のポリアリールケトン樹脂と、非晶性ポリエーテルイミド樹脂からなる樹脂組成物100質量部に対して、無機充填剤を5〜100質量部を含有する樹脂組成物を用いることによって、高温熱負荷環境下や、耐光性試験環境下においても反射率低下が抑制されたカバーレイフィルムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
この特許文献1には、熱可塑性樹脂組成物の結晶性を利用して、260℃以下の低温に加熱した際に、プリント配線板の表面との接着に適した特性を示し、比較的短時間で接着可能であり、且つ熱融着後には耐熱温度260℃を示すカバーレイフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−302110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載のフィルムは、初期の反射率や耐光変色性が不充分であった。また、ダム材としても用いることができるなどのように、広範に応用可能な技術については記載も示唆もなかった。
【0012】
本発明の目的は、可視光領域において反射率が高く、耐熱性が高く、高温熱負荷環境下や耐光環境下における反射率の低下が少ないカバーレイフィルムであって、大面積化に対応可能で、特にLED実装用プリント配線基板に使用可能なカバーレイフィルム、並びに、該カバーレイフィルムを積層してなる発光素子搭載用基板及び光源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記反射率の問題点をさらに改良すべく、本発明者らが鋭意検討した結果、熱硬化性樹脂としてポリオルガノシロキサンを用い、この樹脂と無機充填剤を含有する樹脂組成物をγ線等の放射線により硬化させることによって、可視光領域、具体的には波長400〜800nmにおける平均反射率が高く、且つ、紫外線領域である波長350〜400nmにおける反射率も高いばかりでなく、更には、高温熱負荷環境下や耐光環境下においても反射率の低下を抑制できることを見出した。そして、これを用いたプリント配線板の導体回路保護用のカバーレイフィルムが、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
即ち、本発明における第1の発明は、ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂層を備えており、波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であって、かつ260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が5%以下であるプリント配線板の導体回路保護用のカバーレイフィルムである。
【0015】
また第1の発明においては、以下に示す耐光性試験後の波長450nmにおける反射率の低下率が5%以下であることが好ましい。
(耐光性試験);キセノンウェザーメータを用いて、温度63℃(ブラックパネル温度)、湿度50%、放射照度(295〜400nm)60W/mで50時間照射
【0016】
また第1の発明においては、前記樹脂層が放射線により硬化してなることが好ましい。
また第1の発明においては、無機充填剤が酸化チタンであることが好ましい。
【0017】
また第1の発明においては、カバーレイフィルムの厚みが30〜500μmであることが好ましい。
【0018】
また第1の発明においては、波長350〜400nmにおける平均反射率が40%以上であることが好ましい。
【0019】
また第1の発明においては、前記樹脂層(A)と、ポリオルガノシロキサン、及び、樹脂層(A)に含まれる無機充填剤とは異なる無機充填剤を含有する樹脂層(B)とを備えてなることが好ましい。
この際、前記樹脂層(B)に含まれる無機充填剤がアルミナであることが好ましい。
【0020】
本発明における第2の発明は、少なくとも1つ以上の発光素子を搭載するために用いる基板上に、ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂層(A)を有する保護層を形成してなる構成を備え、該保護層は、波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であり、かつ260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が5%以下であることを特徴とする発光素子搭載用基板である。
【0021】
そして本発明における第3の発明は、基板上に導体回路を形成し、該導体回路上に保護層を積層すると共に、前記基板上発光素子を搭載して前記導体回路と前記発光素子とを導通させ、該発光素子を樹脂封止してなる構成を備えた光源装置において、
前記保護層は、ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂層(A)を備えた層であって、波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であり、かつ260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が5%以下であることを特徴とする光源装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカバーレイフィルムは、可視光領域のみならず紫外線領域においても反射率が高く、耐熱性が高く、また高温熱負荷環境下や、耐光性試験環境下における反射率の低下が少ないという効果を得ることができる。よって、本発明のカバーレイフィルムは、プリント配線基板の導体回路保護用のカバーレイフィルムとして有用である。そして、本発明のカバーレイフィルムを用いることより、導体回路保護層が形成された発光素子搭載用基板及び光源装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の発光素子搭載用基板の一実施形態の一例を説明する図である。
図2】本発明の発光素子搭載用基板の一実施形態の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明の範囲がこの実施形態に限定されるものではない。
【0025】
<本カバーレイフィルム>
本発明の第1の実施形態にかかるカバーレイフィルム(「本カバーレイフィルム」と称する)は、ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂層(A)を備えており、波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であって、かつ260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が5%以下であるプリント配線板の導体回路保護用のカバーレイフィルムである。
【0026】
(反射率)
上記のとおり、本カバーレイフィルムは、波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であることを必要とする。これは、可視光領域の反射率が高いほど、基板に搭載するLEDの輝度が高くなる傾向があり、上記範囲であれば、LED搭載向け基板のカバーレイフィルムとして好適に利用可能であるからである。かかる観点から、当該平均反射率は90%以上、特に95%以上であることが好ましい。
【0027】
また、青色LEDの平均波長(450nm)に対応した450nm付近の反射率が高いほど輝度が高くなる傾向があるため、450nmにおける反射率が85%以上であることがより好ましく、中でも90%以上、特に95%以上であることが好ましい。
【0028】
また、現在主流の青色LEDを用いた白色光を得る場合には、450nm付近の反射率が重要になってくる。よって、より高演色性の白色光を得るために、紫外(近紫外)LEDと赤、緑、青色の蛍光体を組み合わせたタイプが開発されている。その場合には、紫外(近紫外)LEDの発光波長に対応して、カバーレイフィルムも350〜400nmの波長の光と可視光領域(400〜800nm)の波長の光の双方を反射することが必要になってくる。
したがって、本カバーレイフィルムは、350〜400nmの平均反射率が40%以上であることが好ましく、中でも60%以上、特に80%以上であることが好ましい。
【0029】
なお、波長400〜800nmにおける平均反射率や、450nmにおける反射率、さらには、紫外(近紫外)領域(350〜400nm)の波長の反射率を、所定の範囲まで高める方法としては、ポリオルガノシロキサンに無機充填剤を含有させて樹脂層(A)を形成することで極めて優れた反射特性を得ると共に、使用する無機充填剤の種類や含有量を適宜調整する方法を挙げることができる。中でも、波長400〜800nmにおける平均反射率や、450nmにおける反射率を高める際には、ポリオルガノシロキサンとの屈折率差が大きいという観点から、無機充填剤として酸化チタンを選択するのが好ましい。他方、紫外(近紫外)領域(350〜400nm)の波長の反射率を高める際には、無機充填剤としてアルミナを選択するのが好ましい。
また、紫外(近紫外)領域(350〜400nm)と可視光領域(400〜800nm)の双方の波長の反射率を高めるためには、それぞれの波長における反射率を付与するために好ましい添加剤をポリオルガノシロキサンに対して別々に配合し、それぞれの樹脂組成物からなる樹脂層を積層化させることも可能である。
但し、これらの方法に限定するものではない。
【0030】
(熱処理後の反射率の低下率)
本カバーレイフィルムは、260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が、該熱処理前の反射率の5%以下であることを必要とする。
【0031】
上記条件の根拠について以下に記載する。
LED搭載基板を製造する際には、導電接着剤やエポキシ、シリコーン樹脂等の封止剤の熱硬化工程(100〜200℃、数時間)、半田付け工程(Pbフリー半田リフロー、ピーク温度260℃、数分間)、ワイヤボンディング工程等、高熱負荷がかかる工程を経る必要がある。また、LEDを搭載した発光装置の使用環境下においても、高輝度LEDの開発が進み、基板への熱負荷は高まる傾向にあり、LED素子周辺温度は100℃超になる場合もある。そのため、今後このような高熱負荷環境下においても、変色することなく、高い反射率を維持することが重要になってきている。
また、波長450nmは青色LEDの平均波長である。
【0032】
したがって、260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が、該熱処理前の反射率の5%以下であれば、製造工程での反射率の低下を抑制することが可能であり、また、実際の使用時の反射率の低下を抑制することが可能であるため、LED搭載基板に好適に使用できる。
かかる観点から、当該低下率は、中でも4%以下であるのが好ましく、特に3%以下であるのがさらに好ましく、中でも特に2%以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
(耐光性試験後の反射率の低下率)
また、本カバーレイフィルムは、次の耐光性試験後の反射率の低下率が、耐光性試験前の反射率の5%以下であるのが好ましい。
(耐光性試験);キセノンウェザーメータを用いて、温度63℃(ブラックパネル温度)、湿度50%、放射照度(295〜400nm)60W/mで50時間照射。
【0034】
上記条件の根拠について以下に記載する。
前述のように、LEDを搭載した発光装置の使用環境下においても、高輝度LEDの開発が進み、基板への耐光性の要求は高まる傾向にある。そこで、今後このような高出力の光が照射される環境下においても、変色することなく、高い反射率を維持することができる耐光性が必要になってくる。
【0035】
したがって、上記耐光性試験後の反射率の低下率が、耐光性試験前の反射率の5%以下であれば、実際の使用時の反射率の低下を抑制することが可能であるため、LED搭載基板に好適に使用できる。
かかる観点から、当該低下率は、中でも4%以下であるのが好ましく、特に3%以下であるのがさらに好ましく、中でも特に2%以下であるのがさらに好ましい。
【0036】
なお、本カバーレイフィルムにおいて、熱処理後の反射率の低下率並びに耐光性試験後の反射率の低下率を所望の範囲にするためには、樹脂層(A)を形成する際、ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂組成物を、後述するように、放射線により硬化、特にγ線により硬化させるのが好ましい。但し、この方法に限定するものではない。
【0037】
[樹脂層(A)]
本カバーレイフィルムは、ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂層(A)を備えるものである。
【0038】
本カバーレイフィルムに用いるポリオルガノシロキサンとしては、具体的には例えば式(1)に記載のシロキサン骨格を有する物質であり、架橋反応を起こさせることができるものをいう。ポリオルガノシロキサンとしては特に制限は無く、従来公知の任意のものを適宜選択して決定すればよい。
【0039】
【化1】
【0040】
ここで、式(1)中「R」は、メチル基やエチル基等のアルキル基、ビニル基、フェニル基などの炭化水素基、又はフルオロアルキル基などのハロゲン置換炭化水素基などを示す。
具体的には、式(1)中「R」が全てメチル基であるポリジメチルシロキサンや、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部が上記炭化水素基又は上記ハロゲン置換炭化水素基の一種又は複数種によって置換された各種のポリオルガノシロキサンが挙げられる。
本カバーレイフィルムに用いるポリオルガノシロキサンとしては、上記のポリジメチルシロキサンや各種のポリアルキルシロキサンを単独、又は二種類以上混合して用いることができる。
【0041】
樹脂層(A)を形成する際は、ポリオルガノシロキサン樹脂を硬化させればよい。
ポリオルガノシロキサンの硬化手段としては、付加型、縮合型、過酸化物硬化型等、従来公知の任意の方法から適宜選択して決定すればよい。
【0042】
縮合型としては、脱アルコール、脱酢酸、脱オキシム、脱水素型が挙げられる。これらの中でも、硬化の際に副生成物が生じない付加型のポリオルガノシロキサンを用いることが好ましい。
【0043】
ポリオルガノシロキサンを硬化させる方法は、硬化触媒を添加する方法、高温加熱する方法、架橋剤を添加する方法、そして放射線照射による架橋方法などが挙げられる。
硬化触媒としては、例えば、アミノシラン系、ニッケル塩系、アンモニウム塩系の触媒が挙げられる。またAl、Fe、Co、Mn、Znなどのオクチル酸塩、ナフテン酸塩などの金属石鹸類、白金触媒なども挙げられる。
【0044】
高温加熱する場合には、その条件としては一般的に150℃〜250℃、30分〜2時間程度加熱することで硬化することができる。尚、加熱の際に、上記の触媒を添加してもよい。この触媒添加によって、加熱温度を低下させることができる。具体的には、加熱温度を例えば100℃〜180℃とすることができる。そして加熱時間も例えば10分〜30分程度に短縮することができるので、好ましい。
【0045】
中でも、本カバーレイフィルムに用いるポリオルガノシロキサンを含む樹脂層(A)の硬化は、放射線により行うことが好ましい。
放射線による硬化(ポリオルガノシロキサンの架橋)は、ポリオルガノシロキサンに熱が加わらない方法であり、架橋材の残渣等による耐熱、耐光信頼性を損なう懸念がなく、本発明の効果が顕著となるので好ましい。
【0046】
本カバーレイフィルムにおいて、ポリオルガノシロキサンの硬化に用いる放射線としては、例えば電子線、X線、γ線等が挙げられる。これらの放射線は工業的にも広く利用されているものであり、容易に利用可能であり、エネルギー効率の良い方法である。これらの中でも、吸収損失がほとんどなく、透過性が高いγ線を利用することが好ましい。
【0047】
本カバーレイフィルムにおいては、未架橋状態のポリオルガノシロキサンに、例えばγ線を照射することによって架橋反応を起こし、ポリオルガノシロキサンを硬化させる。γ線の照射で架橋反応を進行させることができるので、架橋剤を用いなくても架橋反応を起こすことが出来る。
【0048】
これにより、架橋剤を用いて架橋した際に見られる架橋剤による色変化を避けることができ、また架橋剤の反応による副生成物の残留も防ぐことができるので、より耐熱性、耐光性に優れた樹脂層(A)を得ることが可能である。
【0049】
γ線の照射線量としては、樹脂種や架橋基の量、そして線源の種類により、適宜選択して決定すればよいが、一般に10〜150kGyである。中でも20〜100kGyであることが好ましく、特に30〜60kGyであることが好ましい。
【0050】
また、この照射線量の選定には、ポリオルガノシロキサンの架橋密度の他、熱可塑性樹脂層、工程フィルムとして使用するプラスチックフィルムの耐放射線性も考慮に入れることが好ましい。この点、結晶性ポリエステル系樹脂は、一般に放射線に対する耐性に優れ、本発明の工程フィルムに適合した基材である。
【0051】
[樹脂層(A)に用いる無機充填剤]
前記樹脂層(A)に用いる無機充填剤としては、特に制限は無く、従来公知の任意のものを使用できる。例えばタルク、マイカ、雲母、ガラスフレーク、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、チタン酸塩(チタン酸カリウム等)、硫酸バリウム、アルミナ、カオリン、クレー、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、チタン酸鉛、酸化ジルコン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で添加してもよく、2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
【0052】
前記樹脂層(A)に用いる無機充填剤は、更に、ポリオルガノシロキサンからなる樹脂層(A)への分散性を向上させるために、無機充填剤の表面を、シリコーン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理されたものを使用することができる。その中でもシリコーン系化合物(シロキサンやシランカップリング剤など)で処理されたものが好ましい。
【0053】
前記樹脂層(A)に用いる無機充填剤としては、本カバーレイフィルムの光反射性を考慮し、ポリオルガノシロキサンとの屈折率差が大きいものを用いることが好ましい。中でも屈折率が1.6以上であるものが好ましく、具体的には、例えば上述したものの中では炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、チタン酸塩等が挙げられ、特に酸化チタンが好ましい。
また、低波長域の反射率を高めることができる観点からは、アルミナが好ましい。
【0054】
酸化チタンは他の無機充填剤に比べて顕著に屈折率が高く、ベース樹脂となるポリオルガノシロキサンとの屈折率差を大きくすることができるため、他の充填剤を使用した場合よりも、少ない配合量で優れた反射性を得ることができるので好ましい。
【0055】
前記樹脂層(A)において、ポリオルガノシロキサンに配合する酸化チタンとしては、アナターゼ型やルチル型のような結晶型の酸化チタンが好ましく、中でもポリオルガノシロキサンとの屈折率差が大きくなる観点から、ルチル型の酸化チタンが好ましい。
【0056】
また、半導体発光素子として紫外(近紫外)LEDと赤、緑、青色の蛍光体を組み合わせたタイプの素子を使用する基板へ適用するカバーレイフィルムの場合には、カバーレイフィルムにも紫外(近紫外)LEDの発光波長に対応した、350〜400nmの波長の光を反射することと、可視光領域(400〜800nm)の波長の光を反射することが必要になってくるため、400nm域の光吸収が少ないアナターゼ型の方が好ましい。
【0057】
酸化チタンの製造方法は、一般的に塩素法と硫酸法があるが、本発明に用いる酸化チタンの製造方法としては、白色度の点から塩素法で製造された酸化チタンを使用することが好ましい。
【0058】
酸化チタンは、その表面が不活性無機酸化物で被覆処理されたものが好ましい。酸化チタンの表面を不活性無機酸化物で被覆処理することにより、酸化チタンの光触媒活性を抑制することができ、本発明のカバーレイフィルムの劣化を抑制できるので好ましい。
【0059】
不活性無機酸化物としては、具体的には例えば、シリカ、アルミナ、及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種類を用いることが好ましい。これらの不活性無機酸化物を用いることによって、高い反射性を損なうことなく、高温溶融時に、樹脂の分子量低下や黄変を抑制することができるので好ましい。
【0060】
更に酸化チタンは、樹脂組成物中における分散性を高めるために、その表面がシロキサン化合物、シランカップリング剤等からなる群から選ばれる少なくとも1種類の無機化合物や、ポリオール、ポリエチレングリコール等からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機化合物で表面処理されたものが好ましい。特に耐熱性の点からは、シランカップリング剤で処理されたものが好ましく、分散性の点からは、シロキサン化合物で処理されたものが好ましい。
【0061】
前記樹脂層(A)に用いる無機充填剤の粒径は任意であり、本発明のカバーレイフィルムの用途や厚みに応じて適宜選択して決定すればよい。一般的にはカバーレイフィルム厚み以下の粒径を有するものを用い、具体的には例えば平均粒径として0.05〜50μmであることが好ましく、中でも0.1〜30μmであり、特に0.15〜15μmであることが好ましい。
【0062】
無機充填剤の粒径が0.05μm〜50μmであれば、樹脂への分散性が良好となり、樹脂との界面が緻密に形成され、高い反射性を付与することができるので好ましい。
【0063】
中でも、前記樹脂層(A)に用いる無機充填剤として酸化チタンを用いる場合には、その粒径は0.1μm〜1.0μmであることが好ましく、中でも0.2μm〜0.5μmであることが好ましい。酸化チタンの粒径が上記範囲であれば、樹脂への分散性が良好となり、樹脂との界面が緻密に形成され、高い反射性を付与することができるので好ましい。
【0064】
前記樹脂層(A)に用いる無機充填剤の含有量は、ポリオルガノシロキサン100質量部に対し、10〜1000質量部であることが好ましく、中でも20〜500質量部、さらには25〜200質量部、特に30〜100質量部であることが好ましい。この範囲内とすることで、良好な反射特性を得られ、またフィルムの厚みが薄くなっても良好な反射特性を得ることが可能となるので好ましい。
【0065】
[樹脂層(B)]
本カバーレイフィルムは、前記樹脂層(A)とは別に、ポリオルガノシロキサンと、樹脂層(A)に含まれる無機充填剤とは異なる無機充填剤とを含有する樹脂層(B)を備えることもできる。
例えば、樹脂層(A)を、可視光領域(400〜800nm)において高反射率を有する層とし、樹脂層(B)を、紫外(近紫外)領域(350〜400nm)において高反射率を有する層とするなど、異なる作用を有する樹脂層(A)(B)を組み合わせることができる。
【0066】
前記樹脂層(B)のポリオルガノシロキサンは、上述した樹脂層(A)と同様に、特に制限は無く、従来公知の任意のものを適宜選択して決定すればよい。また、ポリオルガノシロキサンの硬化手段も上述した樹脂層(A)と同様の手段を用いることができる。
【0067】
[樹脂層(B)に用いる無機充填剤]
前記樹脂層(B)に用いる無機充填剤としては、前記樹脂層(A)に含まれる無機充填剤とは異なる無機充填剤であれば特に制限はない。例えばタルク、マイカ、雲母、ガラスフレーク、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、チタン酸塩(チタン酸カリウム等)、硫酸バリウム、アルミナ、カオリン、クレー、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、チタン酸鉛、酸化ジルコン、酸化アンチモン、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で添加してもよく、2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
【0068】
例えば、樹脂層(A)に用いる無機充填剤が酸化チタンである場合、特にルチル型酸化チタンである場合には、紫外(近紫外)領域(350〜400nm)において光吸収が生じるため、樹脂層(B)に用いる無機充填剤としては、400nm域の光吸収が少ないアナターゼ型酸化チタンもしくはアルミナを選択することが好ましい。
【0069】
さらに、上記の樹脂層(A)(B)からなるカバーレイフィルムを、後述の「本発光素子搭載用基板」に用いる際には、無機充填剤として400nm域の光吸収が少ないアナターゼ型酸化チタンもしくはアルミナを使用した樹脂層(B)が使用面となるように(暴露される側となるように)、金属層と積層することが好ましい。このことにより、紫外(近紫外)領域(350〜400nm)の光は樹脂層(B)反射され、可視光領域(400〜800nm)の光は、樹脂層(B)とルチル型酸化チタンが含まれる樹脂層(A)の両方で反射されるため、広い波長領域で反射率を高めることが可能となる。
【0070】
前記樹脂層(B)に用いる無機充填剤の粒径は任意であり、本発明のカバーレイフィルムの用途や厚みに応じて適宜選択して決定すればよい。一般的にはカバーレイフィルム厚み以下の粒径を有するものを用い、例えば平均粒径として0.05〜50μmであることが好ましく、中でも0.1μm以上或いは30μm以下であり、その中でも特に0.15μm以上或いは15μm以下であることがさらに好ましい。
【0071】
無機充填剤の粒径が0.05μm〜50μmであれば、樹脂への分散性が良好となり、樹脂との界面が緻密に形成され、高い反射性を付与することができるので好ましい。
【0072】
樹脂層(B)に用いる無機充填剤の含有量は、ポリオルガノシロキサン100質量部に対し、10〜1000質量部であることが好ましく、中でも20質量部以上或いは500質量部以下、その中でも30質量部以上或いは300質量部以下、その中でも特に50質量部以上或いは200質量部以下であることがさらに好ましい。この範囲内とすることで、良好な反射特性を得られ、またフィルムの厚みが薄くなっても良好な反射特性を得ることが可能となるので好ましい。
【0073】
(添加剤等)
前記樹脂層(A)および樹脂層(B)は、その性質を損なわない程度に、他の樹脂や無機充填剤以外の各種添加剤を含有してもよい。例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を適宜配合してもよい。
【0074】
(カバーレイフィルムの厚み)
本カバーレイフィルムの厚みは特に制限はなく、適宜選択して決定すればよい。一般的には1μm〜1000μmであり、本カバーレイフィルムに於いては10μm〜1000μmであることが好ましい。中でも10μm〜800μm、さらには20μm〜500μm、とりわけ20μm〜300μm、特に30μm〜200μmであることが好ましい。
また、本発明の効果である反射率の低下率が少ないという効果を高い反射率の領域に於いて求める場合には、本カバーレイフィルムの厚みを50μm以上、特に100μmとすることが好ましく、その上限は通常、1000μm、中でも500μmであることが好ましい。
【0075】
かかる範囲であれば、薄型が要求される携帯電話用バックライトや、液晶ディスプレー用バックライト用の面光源として使用されるチップLED搭載基板の導体回路保護用カバーレイフィルムとして、反射率を確保できるため、好適に使用することができる。また、ダム材として使用する際にも、LEDチップや金ワイヤを封止するのには充分な厚さである。
【0076】
(カバーレイフィルムの製造方法)
前記樹脂層(A)および樹脂層(B)を形成するための樹脂組成物、すなわち、ポリオルガノシロキサンを含有する樹脂層を形成する樹脂組成物の調製方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、(a)各種添加剤をポリオルガノシロキサンなどの適当なベース樹脂に高濃度(代表的な含有量としては10〜90重量%)に混合したマスターバッチを別途作製しておき、これを使用する樹脂に濃度を調整して混合し、ニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法を挙げることができる。また、(b)使用する樹脂に直接各種添加剤をニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法などを挙げることができる。
これらの方法の中では、分散性や作業性の点から、(a)のマスターバッチを作製して混合する方法が好ましい。
【0077】
次に、上記樹脂組成物を製膜する方法としては、公知の製膜方法、例えばポリオルガノシロキサンと無機充填剤とを混合して得られる樹脂組成物を用いて、Tダイを使用した押出キャスト法やカレンダー法、または基材フィルム(PETフィルム等)上にコーティングする方法等により成膜する方法を挙げることができる。
このように成膜したフィルムを、熱硬化や放射線硬化等により未架橋状態のポリオルガノシロキサンを硬化させればよい。
【0078】
(カバーレイフィルムの用途)
本カバーレイフィルムは、プリント配線基板の導体回路保護用のカバーレイフィルムとして使用することができる。例えば、基板上に導体回路を形成し、前記導体回路上に本カバーレイフィルムを積層する一方、前記基板上に発光素子を搭載して前記導体回路と当該発光素子とを導通させるようにして使用することができる。この際、当該カバーレイフィルムを積層することで、導体回路に傷が入って断線するのを防止することができると共に、発光素子を実装する際のはんだ付着による短絡を防止することができ、さらには、電源端子部に指などが触れて感電するのを防止するなどの機能を発揮することができる。
【0079】
<本発光素子搭載用基板>
本発明の第2の実施形態に係る発光素子搭載用基板(「本発光素子搭載用基板」と称する)は、少なくとも1つ以上の発光素子を搭載するために用いる基板上に、ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂層(A)を有する保護層を備え、該保護層は、波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であって、かつ260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が5%以下であることを特徴とする発光素子搭載用基板である。
【0080】
本発光素子搭載用基板においては、上述した条件を満たせば特に、基板等の形状や材料に特に制限は無く、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には、例えば「発光素子を搭載するために用いる基板」としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂からなる樹脂製基板材料の少なくとも片面に金属層を積層させてなる樹脂/金属積層体や、前記樹脂製基板材料の少なくとも片面に配線パターン(導体回路)を形成してなる構成のものを挙げることができる。
【0081】
このような「発光素子を搭載するために用いる基板」上に、上述の特定物性を備えた、ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂層を有する保護層を形成すれば、即ち上記の本カバーレイフィルムを積層すれば、導体回路を保護することが可能となる。そして当該保護層は、高い反射率を有することからリフレクターとしての機能をも発揮し、該基板の反射率の向上にも寄与するという、優れた効果を奏する。
【0082】
(金属層)
本発光素子搭載用基板に用いる樹脂/金属積層体における金属層としては、例えば金属種としては銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、錫等が挙げられる。また金属層の厚さは任意で有り、適宜選択して決定すればよいが、通常1μm〜100μm、中でも好ましくは5μm〜70μmである。
【0083】
中でも金属種としては銅や銅合金が好ましく、更に表面を黒色酸化処理等の化成処理を施したものが好ましい。この金属層である導体箔は、接着効果を高めるために、カバーレイフィルムとの接触面(重ねる面)側を、予め化学的又は機械的に粗化したものを用いることが好ましい。表面粗化処理された導体箔の具体例としては、具体的には例えば電解銅箔を製造する際に電気化学的に処理された粗化銅箔などが挙げられる。
【0084】
また、本発光素子搭載用基板に用いる基板である樹脂/金属積層体は、複数を積層したものであってもよい。この積層方法は、接着層を介することのない熱融着方法として、加熱、加圧による方法であれば公知の方法を採用することができ、例えば、熱プレス法や熱ラミネートロール法、押出した樹脂にキャストロールで積層する押出ラミネート法、又はこれらを組み合わせた方法を好適に採用することができる。
【0085】
また、「発光素子を搭載するために用いる基板」としては、上述の様樹脂/金属積層体に代えて、より放熱性が要求される場合には、銅板、アルミ板等の金属材料、窒化アルミなどのセラミック、又は黒鉛板等の熱伝導率の高い材料と複合化することにより放熱性を向上させることも可能である。
【0086】
例えば、アルミ板との複合基板の構成としては、アルミ板全面に、上記のような金属積層体を積層する場合や、該金属積層体にキャビティー(凹部)構造用の窓枠を抜き、積層する場合が挙げられる。使用するアルミについては、樹脂との密着性を考慮すると粗化されていることが望ましいが、キャビティー構造を考慮した場合には、LEDからの光を効率よく反射させるために、高反射アルミを用いることが好ましい。
【0087】
高反射アルミとしては、表面を研磨したもの、アルマイト処理したもの、またチタン、シリカ等の無機酸化物の他、銀等の金属を蒸着した増反射膜処理をしたものが挙げられる。そしてこのアルミの反射率は、波長400〜800nmの平均反射率が80%以上であることが好ましく、中でも90%以上、特に95%以上であることが好ましい。
【0088】
(発光素子搭載用基板の製造方法)
本発光素子搭載用基板の製造方法は任意であり、特に制限されるものではない。ここでは先ず、本発光素子搭載用基板の具体的な製造方法として、基板の両面に金属層を積層してなる両面基板の製造方法を、図1に基づいて説明する。
【0089】
図1に示すように、(a):まず、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基板(100)と、金属層となる2枚の銅箔(10)とを用意し、(b):熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基板(100)の両面に銅箔(10)を真空プレスにより積層して樹脂/金属積層体を製造する。
【0090】
(c):そして銅箔(10)をエッチング又は銅上にメッキして配線パターン(20)を形成し、「発光素子を搭載するために用いる基板」を作製する。(d):この基板に、実装する箇所を窓抜き加工した、ポリオルガノシロキサンに無機充填剤を含有してなる樹脂層(30)とを備えてなる保護層(200)を積層し(なお、ここでは本カバーレイフィルムを、積層している。)、発光素子搭載用基板とする。
【0091】
(e):その後、金メッキ加工して、LED(300)を実装させ、ボンディングワイヤ(40)により配線パターン(20)と接続させ、所定の樹脂で封止(図示せず)して、光源装置とすることができる。
【0092】
なお、窓抜き加工する方法は任意であり、特に制限されることはない。具体的には例えばビク型を用いる方法や、ルーター加工する方法、レーザー加工する方法等を用いることができる。また保護層の形成において、上記以外にも、ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂層(30)を塗工させて保護層を形成してもよい。
【0093】
次に、アルミ複合基板としての本発光素子搭載用基板の製造方法を、図2に基づいて説明する。
例えば、図2に示すように、(a):熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基板(100)の片面に銅箔(10)を積層して金属積層体を製造する。そして(b):銅箔(10)をエッチングして配線パターン(20)を形成し金メッキ加工を施し、さらに基板(100)をビク型を用いてキャビティー枠に打ち抜く(50)。
【0094】
次に(c):窓抜き加工した保護層(200)と配線パターン(20)が形成された面とは反対面にアルミ板(400)を真空プレスにより積層して発光素子搭載用基板とする。この基板に、(d):LED(300)を実装させ、ボンディングワイヤ(40)により配線パターン(20)と接続させ、所定の樹脂で封止(図示せず)して、光源装置とすることができる。
【0095】
なお、キャビティー枠に打ち抜く方法としては、上記ビク型を用いる方法に制限されるものではなく、例えばルーター加工や、レーザーを用いて形成することもできる。なお、上記製造方法においては、片面銅箔付きフィルム(図2中(b))、保護層及びアルミ板の積層を一括して行っているが、これらを逐次的に積層させ、その後に枠抜き及び導体パターンを形成してもよい。
【0096】
<本光源装置>
本発明の第3の実施形態に係る光源装置(「本光源装置」と称する)としては、上記の本発光素子搭載用基板に導体回路を形成して、該基板と該基板に搭載された発光素子とを導通させ、該発光素子を樹脂封止してなるものであれば特に制限されるものではない。具体的には、基板上に導体回路を形成し、該導体回路上に保護層を積層すると共に、前記基板上発光素子を搭載して前記導体回路と前記発光素子とを導通させ、該発光素子を樹脂封止してなる構成のものを挙げることができる。
【0097】
本光源装置における保護層は、上記樹脂層(A)の特性を備えているため、例えば波長400〜800nmにおける平均反射率が85%以上であり、かつ260℃で10分間熱処理した後の波長450nmにおける反射率の低下率が5%以下であるなどの特性を備えたものとなる。よって、このように保護層が形成されていることにより、導体回路を効果的に保護することが可能となり、高温熱負荷環境下や、耐光性試験環境下においても、反射率の低下を引き起こすことがないので、本発明の光源装置は、照明用、プロジェクタ光源、液晶表示装置等のバックライト装置、車載用途、携帯電話用途等の各種用途に用いることができる。
【0098】
<語句の説明>
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0099】
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0100】
以下、実施例及び比較例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本明細書中に示されるフィルム等についての種々の測定値及び評価は以下のようにして求めた。
【0101】
(平均反射率)
分光光度計(「U−4000」、株式会社日立製作所社製)に積分球を取りつけ、アルミナ白板の反射率が100%としたときの反射率を、波長400nm〜800nmにわたって、0.5nm間隔で測定した。得られた測定値の平均値を計算し、この値を平均反射率とした。そして波長350〜400nmの平均反射率も同様に測定した。
【0102】
(加熱処理後の反射率)
得られた白色フィルムを固定冶具で固定し、熱風循環式オーブンに、260℃で10分間加熱処理し、加熱処理後の反射率を上記の方法と同様に測定して、450nmにおける反射率を読みとった。
【0103】
(キセノンウェザーメータによる試験)
得られたカバーレイフィルムをスガ試験機社製のキセノンウェザーメータ(型式:SX−75)を用いて、温度63℃(ブラックパネル温度)、湿度50%、放射照度(295〜400nm)60W/mで50時間照射し、その後上記の方法と同様に反射率を測定し、450nmにおける反射率を読みとった。
【0104】
<実施例1>
ポリオルガノシロキサン(TSE2571−5U、モメンティブ社製)100質量部と、ルチル型の酸化チタン(R105、デュポン社製、平均粒径0.31μm)67質量部をプラネタリミキサーで混合して得られた樹脂組成物を、押出機を用いて設定温度100℃で、離型PETフィルム上に厚さ100μmのカバーレイフィルム前駆体を得た。その後、γ線により50kGyの照射線量にて硬化させて得られた樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを、上述した方法により評価した。結果を表1に記した。
【0105】
<実施例2>
ポリオルガノシロキサン(TSE2571−5U、モメンティブ社製)100質量部に対して熱架橋材としての加硫剤(TC−12、モメンティブ社製)を1.5質量部、酸化チタン(R105、デュポン社製、平均粒径0.31μm)67質量部をプラネタリミキサーで混合して得られた樹脂組成物を、押出機を用いて設定温度100℃で、離型PETフィルム上に厚さ100μmのカバーレイフィルム前駆体を得た。その後、125℃にて15分間、次いで200℃にて4時間熱処理することにより硬化させて得られた樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを、評価した。結果を表1に記した。
【0106】
<実施例3>
厚さを300μmとした以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。
【0107】
<実施例4>
酸化チタンを400質量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。
【0108】
<実施例5>
酸化チタンを25質量部とした以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。
【0109】
<実施例6>
厚さ50μmとした以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。
【0110】
<実施例7>
酸化チタンとして、アナターゼ型の酸化チタン(SA−1、堺化学工業社製、平均粒径0.3μm)25質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。
【0111】
<実施例8>
ポリオルガノシロキサンとして、ポリオルガノシロキサン(TSE2913−U、モメンティブ社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。
【0112】
<実施例9>
酸化チタンに代えて、アルミナ(AA04、住友化学社製、平均粒径0.4μm)150質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。
【0113】
<実施例10>
厚みを150μmとした以外は、実施例8と同様の方法にて樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。
【0114】
<実施例11>
厚みを150μmとした以外は、実施例9と同様の方法にて樹脂層(A)からなるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。
【0115】
<実施例12>
実施例8と同様の方法にて、厚さ100μmの樹脂層(A)からなるカバーレイフィルム前駆体を得た後、実施例9と同様の方法にて厚さ50μmの樹脂層(B)からなるカバーレイフィルム前駆体を作成し、両前駆体のカバーレイフィルム面を貼りあわせた後、γ線で硬化させた積層構成によるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。なお、反射率の測定は樹脂層(B)からなる面を測定した。
【0116】
<実施例13>
樹脂層(B)の厚さを100μmとした以外は、実施例12と同様の方法にて積層構成によるカバーレイフィルムを作製し、評価した。結果を表1に記した。なお、反射率の測定は樹脂層(B)からなる面を測定した。
【0117】
<比較例1>
ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK450G、Tm=335℃)40質量%、及び非晶性ポリエーテルイミド樹脂(Ultem 1000)60質量%からなる樹脂組成物100質量部に対して、ルチル型の酸化チタン(R108、デュポン社製、平均粒径0.23μm)67質量部を混合して得られた組成物を溶融混練し、Tダイを備えた押出機を用いて設定温度380℃で、厚さ100μmのカバーレイフィルムを作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に記した。
【0118】
【表1】
【0119】
表1に示した結果から分かるように、本発明の実施例1〜13においては、反射率特性が良好で有り、加熱試験後や耐光性試験(キセノンウェザーメータ試験)後においても反射率変化の少ない、優れたカバーレイフィルムを得ることができた。例えば実施例9、11ではポリオルガノシロキサンにアルミナを充填しているため、比較例に対して可視光域での反射率も高いが、紫外光域(350〜400nm)での反射率が格段に向上している。一方、比較例1においては可視光域での反射率、耐光性試験後の反射率が劣るものであった。
【0120】
また、実施例1〜8、10は、ポリオルガノシロキサンに酸化チタンを充填しているため、特に可視光域(400〜800nm)においても、特に高い反射率を示した。そして実施例7はアナターゼ型の酸化チタンを充填しているため、紫外光域の反射率がルチル型を充填した実施例1〜6、8、10に比べて、高い反射率を示した。
【0121】
さらに、実施例12、13においては、ポリオルガノシロキサンにルチル型の酸化チタンを充填した樹脂層(A)と、ポリオルガノシロキサンにアルミナを充填した樹脂層(B)の積層構成とすることにより、紫外光域(350〜400nm)と可視光域(400〜800nm)の両方において高い反射率を示した。
【符号の説明】
【0122】
10 銅箔
20 配線パターン
30 ポリオルガノシロキサン及び無機充填剤を含有する樹脂層
40 ボンディングワイヤ
100 熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基板
200 保護層
300 LED
400 アルミ板
図1
図2