【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施例1による扉用施錠装置を説明する。まず、本扉用施錠装置が適用されるセルフ給油所用システムを構成する装置である外設機について説明した後、回動フックを備えた施錠機構と、ロッド部材、クレセント部材を備えた閉扉保持機構とについて説明する。
【0027】
[外設機]
図1、
図2Aならびに
図2Bを参照すると、本発明の実施例1による扉用施錠装置は、筐体の開口部に開き扉式の扉を備え、その扉に施錠を必要とする電子機器として、セルフ給油所用システムを構成する装置である外設機100に適用された例である。外設機は、給油条件や給油料金の支払い方法の指定を行うこと、給油料金の決済を行うこと等に用いられる。
【0028】
外設機100は、その筐体110を、セルフ給油所に設置される専用のラック(図示せず)に収容した状態で使用される。このため、外設機100の筐体110の上面、底面、左側面、右側面および背面は、ラックの強固な壁面に囲まれる。一方、前面(正面)110fは、ラックから露出する。
【0029】
ラックから露出する筐体110の前面110fには、開き扉式の扉131が備えられている。本例では特に、第1の扉としての扉131と共に両開き扉(観音扉)を構成する第2の扉としての扉132をさらに有している。尚、扉131および扉132は、粘性の高い金属、例えば、ステンレススチールやメッキ鋼板をプレス加工して製造される。
【0030】
筐体110内には、紙幣取扱装置122U、レシート印刷用プリンタ123U、カードリーダ装置125U等の電子機器が収容されている。また、
図1等に示されているように、扉131には、タッチパネル付きディスプレイ121、レシートの排出口123、カード類の挿入口125が設けられている。扉132には、紙幣投入口122が設けられている。尚、扉131または132には、レシート等に印刷された2次元バーコードの読取口、カード類の挿入口125とは別のカード類の挿入口、インターホン、人感センサ等がさらに設けられてもよい。
【0031】
[施錠機構]
図1、
図2Aおよび
図2Bならびに
図3〜
図8を参照すると、本扉用施錠装置は、回動端壁部10と、対向壁部20と、キーシリンダ30と、回動フック40A、40Bとを有している。尚、
図7では、説明のため、回動フック40A、40Bを覆う部品を省略して図示している。また、
図8は、扉の裏側から見た図であるが、後述する閉扉保持機構については図示していない。
【0032】
図3等に示されているように、回動端壁部10は、扉131の回動端辺131D(
図3)から扉131の内側方向に延在し、第1貫通孔13A、13Bが形成されている。第1貫通孔13A、13Bは、回動端辺131Dに沿って並列するように複数形成されている。尚、
図3中の符号131Pは、扉131の回動基辺を示している。回動基辺131Pは、筐体110の前面110fの開口部に軸支されてヒンジ機構を構成しており、これにより、扉131は、開き扉として開閉可能となっている。
【0033】
図4等に示されているように、対向壁部20は、扉131の閉扉時に回動端壁部10に対向し、第1貫通孔13A、13Bに対応して第2貫通孔23A、23Bが形成されている。本例においては特に、対向壁部20は、扉132の回動端辺132Dから扉132の内側方向に延在するように形成されている。第2貫通孔23A、23Bは、複数の第1貫通孔13A、13Bに対応して回動端辺132Dに沿って並列するように複数形成されている。尚、
図4中の符号132Pは、扉132の回動基辺を示している。回動基辺132Pは、筐体110の前面110fの開口部に軸支されてヒンジ機構を構成しており、これにより、扉132は、開き扉として開閉可能となっている。
【0034】
図5〜
図8を参照すると、キーシリンダ30は、プレート部材を介して扉131に固定され、鍵80による扉131の外側からの開錠/施錠操作に基づいて開錠位置と施錠位置とに回動的に変位する可動子33を扉131の内側に備えている。
【0035】
回動フック40A、40Bは、フック形状を呈し、扉131の内側にてキーシリンダ30の可動子33に、リンク部材51、52を介して、連動するように取り付けられている。尚、
図7中、矢印R80、R33、S51、S52、R40A、R40Bは、施錠前の開錠状態から施錠状態に移行する際の、鍵80、可動子33、リンク部材51、52、回動フック40A、40Bの動作方向をそれぞれ示している。
【0036】
尚、キーシリンダ30を支持するプレート部材、リンク部材51、52、回動フック40A、40Bなどは、粘性の高い金属、例えば、ステンレススチールを鋳物成形して製造される。
【0037】
また、本発明において、回動フックの数は、2個に限定されるものではなく、必要に応じて、1個もしくは3個以上を設けるようにしてもよい。
【0038】
可動子33が開錠位置のときに(
図6(a)、
図7(a)および(b)、
図8(a)および(b))、回動フック40A、40Bは、回動端壁部10の第1貫通孔13A、13Bよりも扉131の内側に退避する。
【0039】
一方、可動子33が施錠位置のときに(
図6(b)、
図7(c)および(d)、
図8(c)および(d))、回動フック40A、40Bは、回動端壁部10の第1貫通孔13A、13Bを介して対向壁部20の第2貫通孔23A、23Bの狭小部に入り込み、扉131ならびに扉132が開扉されることを阻止(禁止)する。このとき、閉扉した扉131と扉132とにおける、回動端壁部10と対向壁部20とは、互いに重なった状態が回動フック40A、40Bによって強固に保持されている。特に、本例において、回動フック40A、40Bはそれぞれ、第1貫通孔13A、13Bを介して対向壁部20の第2貫通孔23A、23Bに入り込んだときに対向壁部20の回動端壁部10と反対側の壁面に対して平行に位置する抜け防止面43Aa、43Abを有する抜け防止鍔部43Aと、抜け防止面43Ba、43Bbを有する抜け防止鍔部43Bを備えており、対向壁部20から回動フック40A、40Bが抜けてしまうことを防止することができるため、回動端壁部10および対向壁部20の保持を崩そうとする力に対して一層強固なものとなっている。尚、抜け防止面43Aa、43Ab、43Ba、43Bbは、施錠された状態で、対向壁20の裏側の面と、僅かな間隔をもって対向する。また、抜け防止鍔部43Aの抜け防止面43Aa、43Abはいずれか一方でもよく、抜け防止鍔部43Bの抜け防止面43Ba、43Bbもいずれか一方でもよい。
【0040】
尚、扉131と扉132との閉扉時であっても、両扉間(回動端壁部10と対向壁部20との間)には、僅かな隙間がある(例えば、3mm程度)。この隙間は、各部材の寸法公差に対するマージンならびに扉の回動時に回動端辺同士が衝突すること回避する目的のために、必要なものである。ところが、この隙間にバール等を挿入される虞がある。したがって、本扉用施錠装置は、扉131の外側面に沿って回動端辺131Dから突出するように設けられ、閉扉時に生じる両扉間(回動端壁部10と対向壁部20との間)の隙間を覆蓋するフランジ部70をさらに有している。尚、フランジ部70は、粘性の高い金属、例えば、ステンレススチールを鋳物成形して製造される。
【0041】
[閉扉保持機構]
本扉用施錠装置は、以上説明した回動フックを備えた施錠機構に加え、
図2A、
図2Bに示されるように、ロッド部材、クレセント部材を備えた閉扉保持機構60をも有している。
【0042】
図9、
図10(a)〜(d)、
図11(a)および(b)、
図12(a)および(b)をもさらに参照すると、本扉用施錠装置における閉扉保持機構60は、サポート金具61と、ロッド部材66とを有している。尚、
図10(d)中、矢印R62b、R62c、L66は、施錠前の開錠状態から施錠状態に移行する際の、クレセント部62b、クランク部62c、ロッド部材66の動作方向をそれぞれ示している。また、
図11(b)中、矢印R30、R62c、L66は、施錠前の開錠状態から施錠状態に移行する際の、キーシリンダ30の可動子、クランク部62c、ロッド部材66の動作方向をそれぞれ示している。また、
図12(b)中、矢印L66は、施錠前の開錠状態から施錠状態に移行する際のロッド部材66の動作方向を示し、矢印P131は閉扉方向を示している。
【0043】
ロッド部材66は、扉131の内側にてキーシリンダ30の可動子にクランク部材としてのクレセント部材62を介してクランク結合され、可動子に連動して直線的に変位する。そして、ロッド部材66は、扉131が閉扉され、かつ、キーシリンダ30の可動子が施錠位置のときに、扉131の閉扉方向を向くように筐体110に形成されたロッド受け面91に先端が接することにより、扉131の閉扉状態(閉扉態勢、閉扉位置)を保持する。
【0044】
ロッド部材66は、
図9に示されるように、弾性を有するステンレススチール等の金属棒材を曲げ加工して成るロッド本体66aと、ロッド本体66aの下端にロッド本体66aと一体に形成されたインサート部66bと、ロッド本体66aの上端にイモネジ、インサートあるいはクリップピン等を用いて取り付けられた金属製のキャップ部66cと、キャップ部66cに回転可能に設けられた金属または樹脂から成る2輪のローラ66dとを備えている。
【0045】
ロッド部材66は、
図9、
図11(a)および(b)に示されたサポート金具61を介して、筐体110や扉131の上下方向に直線的に変位可能に扉131に取り付けられている。サポート金具61は、金属から成り、主部61aと、扉131の内側に対して溶接やネジ留め等される取付部61bと、ロッド部材66のロッド本体66aがスライド可能に挿通される孔付きタブ部61cおよび61dとを備えている。尚、孔付きタブ部61cおよび61dそれぞれの孔は、ロッド本体66aの直径寸法に対して、筐体110や扉131の奥行方向に殆ど隙間が生じない寸法となっている。
【0046】
図12(a)および(b)に示されるように、筐体110の開口部上方には、扉131の閉扉方向を向いたロッド受け面91が設けられている。ロッド受け面91は、
図12(a)に示された開錠時から
図12(b)に示された施錠時にかけて図中下方から上方に向かって変位する(上昇する)ローラ66dの到来を案内する傾斜部91aと、これに連続する平面部91bとを含んでいる。そして、ロッド部材66は、扉131が閉扉され、かつ、キーシリンダ30の可動子が施錠位置のときに、ロッド受け面91の傾斜部91a上を案内されたローラ66dが平面部91bに接することにより、扉131の閉扉状態(閉扉態勢、閉扉位置)を保持する。
【0047】
本扉用施錠装置における閉扉保持機構60は、クレセント部材62をさらに有している。
【0048】
クレセント部材62は、
図9に示されるように、扉131の内側にてキーシリンダ30の可動子に結合され、可動子に連動して回動的に変位する。そして、クレセント部材62は、扉131が閉扉され、かつ、キーシリンダ30の可動子が施錠位置のときに、扉131の閉扉方向を向くように筐体110に形成されたクレセント受け面96に先端が接することにより、ロッド部材66と共に扉131の閉扉状態(閉扉態勢、閉扉位置)を保持する。
【0049】
一方、
図2B、
図10(b)および(d)、
図13(a)および(b)に示されるように、筐体110の開口部下方には、扉131の閉扉方向を向いたクレセント受け面96が設けられている。尚、
図13(b)中、矢印R62b、L66は、施錠前の開錠状態から施錠状態に移行する際の、クレセント部62b、ロッド部材66の動作方向をそれぞれ示し、矢印P131は閉扉方向を示している。
【0050】
クレセント部材62は、
図9に示されるように、弾性を有するステンレススチール等の金属材を板金加工して成り、連結部62aと、円弧フック状のクレセント部62bと、前述したロッド部材66のためのクランク部材としてのクランク部62cとを備えている。クランク部62cの孔には、ロッド部材66のインサート部66bが挿入される。クレセント部材62のクレセント部62bは、クレセント受け面96への到来を案内する傾斜部を含んでいる。そして、クレセント部材62のクレセント部62bは、
図10(b)、
図13(a)に示された開錠時から
図10(d)、
図13(b)に示された施錠時にかけて図中12時位置から9時位置に向かって反時計方向に変位する(回動する)が、その際に、クレセント部62bが傾斜部を経てからクレセント受け面96に接することにより、ロッド部材66と共に扉131の閉扉状態(閉扉態勢、閉扉位置)を保持する。
【0051】
さて、施錠機構の欄にて説明したように、扉131は、フランジ部70を有している。フランジ部70は、その第1の回動端辺から突出するように設けられ、扉131および扉132の閉扉時に、扉132の第2の回動端辺に接すると共に覆蓋する。このため、扉131が閉扉保持機構60によって閉扉状態が保持されることにより、扉132も閉扉状態が保持されることになる。
【0052】
さらに、筐体110の開口部の上部には、閉扉された扉131、132が接する箇所に、ウレタンシート160が貼り付けされている。これにより、閉扉時であっても筐体110と扉131、132との間に不可避に存在する隙間から雨水や粉塵等の異物が筐体110内に侵入することが防止される。即ち、閉扉保持機構60を有するのみの場合に比べ、防水性、防塵性が向上する。尚、本実施例においては、とりわけ異物の侵入の可能性が高い筐体110の開口部の上部にウレタンシート160を設けているが、筐体110の開口部の下部や側部、さらには、閉扉時に互いに突き合わされる扉131の回動端辺131D(もしくはフランジ部70)と132の回動端辺132Dとの間にも、ウレタンシートを設けてもよい。また、ウレタンシートに限らず、ゴムシート等、異物の侵入を防ぐことができると共に、扉131、132の閉扉方向の寸法公差を阻害しないように弾力性を持つ素材であれば、他の材料から成るシートを設けてもよい。
【0053】
尚、本実施例において、ロッド部材66にローラ66dを設け、また、ロッド受け面91に傾斜部91aを設けると共にクレセント部材62のクレセント部62bの先端に傾斜部を設けている理由は、次のとおりである。
【0054】
第1に、扉131および132の閉扉後にキー80を用いてキーシリンダ30の施錠操作を行うことにより、キーシリンダ30の可動子に連動し、回動フックを備えた施錠機構が動作する一方、閉扉保持機構60が動作するが、ロッド受け面91の平面部91bとロッド部材66のローラ66dとの筐体110の奥行方向における位置関係、ならびに、クレセント受け面96とクレセント部材62のクレセント部62bとの筐体110の奥行方向における位置関係には、扉の開扉方向へのガタツキを無くす目的上、公差をほぼゼロに設計している。このため、ローラ66dがロッド受け面91上に到来する際、また、クレセント部材62のクレセント部62bがクレセント受け面96上に到来する際に、衝突(引掛かり)が生ずる可能性がある。これに対し、本発明においては、ロッド部材66にローラ66dを設けると共に、ロッド部材66およびクレセント部材62のクレセント部62dそれぞれに関連して傾斜部を設け、ローラ66dをロッド受け面91上に徐々に到来させると共に、クレセント部材62のクレセント部62bをクレセント受け面96上に徐々に到来させているようにし、衝突(引掛かり)を回避している。
【0055】
第2に、ユーザが比較的小さい把持部(モーメントの距離ファクタが比較的小さい)のキー80を摘んで施錠操作を行うことにより、回動フックを備えた施錠機構の動作と、ロッド部材66およびクレセント部材62を備えた閉扉保持機構60の動作とを実行させる必要がある。特に、閉扉保持機構60に関しては、前述したように、ロッド受け面91の平面部91bとロッド部材66のローラ66dとの筐体110の奥行方向における位置関係、ならびに、クレセント受け面96とクレセント部材62のクレセント部62bとの筐体110の奥行方向における位置関係を公差をほぼゼロに設計しているため、比較的大きい摩擦力が発生する。このため、操作を補助する付勢手段、倍力手段あるいは電動機構等を設けない場合には、前述の摩擦力に打ち勝つ比較的大きい操作力が必要とされる。これに対し、ロッド部材66にローラ66dを設けると共に、ロッド部材66およびクレセント部材62のクレセント部62dそれぞれに関連して傾斜部を設け、ローラ66dをロッド受け面91上に徐々に到来させると共に、クレセント部材62のクレセント部62bをクレセント受け面96上に徐々に到来させることにより、いちどきに大きい操作力を必要とすることがないようにしている。最終的には同じ大きさの操作力が必要であっても、その操作力がいちどきに必要な場合よりも、徐々にその操作力を増加させればよい場合の方が、操作性に優れている。
【実施例2】
【0056】
本発明の実施例2による扉用施錠装置は、片開き式の扉を有する電子機器に適用され、対向壁部が筐体の開口部に具備されている点が、実施例1と異なっている。このため、実施例1と同一または同様の部分については、実施例1における説明および図面を援用することとし、詳細な説明は省略する。
【0057】
図示はしないが、本発明の実施例2による扉用施錠装置は、実施例1と同様に、扉に施錠を必要とする電子機器として、セルフ給油所用システムを構成する装置である外設機に適用された例である。ただし、本例において、外設機は、その筐体の開口部に片開き式の扉を備えている。
【0058】
セルフ給油所において専用ラックから露出する筐体の前面には、片開き扉式の扉が備えられている。尚、扉は、粘性の高い金属、例えば、ステンレススチールやメッキ鋼板をプレス加工して製造される。
【0059】
本発明の実施例2による扉用施錠装置は、実施例1と同様に、施錠機構として、回動端壁部と、対向壁部と、キーシリンダと、回動フックとを有している。
【0060】
回動端壁部は、扉の回動端辺から扉の内側方向に延在し、第1貫通孔が形成されている。第1貫通孔は、回動端辺に沿って並列するように複数形成されている。
【0061】
対向壁部は、扉の閉扉時に回動端壁部に対向し、第1貫通孔に対応して第2貫通孔が形成されている。
【0062】
本例においては特に、対向壁部は、筐体の前面の開口部の開口辺から筐体の内部に向かって延在するように形成されている。第2貫通孔は、複数の第1貫通孔に対応して開口辺に沿って並列するように複数形成されている。
【0063】
キーシリンダは、プレート部材を介して扉に固定され、鍵による扉の外側からの開錠/施錠操作に基づいて開錠位置と施錠位置とに回動的に変位する可動子を扉の内側に備えている。
【0064】
回動フックは、フック形状を呈し、扉の内側にてキーシリンダの可動子に、リンク部材を介して、連動するように取り付けられている。
【0065】
尚、キーシリンダを支持するプレート部材、リンク部材、回動フックなどは、粘性の高い金属、例えば、ステンレススチールを鋳物成形して製造される。
【0066】
そして、可動子が開錠位置のときに、回動フックは、回動端壁部の第1貫通孔よりも扉の内側に退避する。
【0067】
一方、可動子が施錠位置のときに、回動フックは、回動端壁部の第1貫通孔を介して筐体に形成された対向壁部の第2貫通孔の狭小部に入り込み、開扉されることを阻止(禁止)する。このとき、回動端壁部と対向壁部とは、互いに重なった状態が回動フックによって強固に保持されている。
【0068】
本例においても、回動フックは、第1貫通孔を介して対向壁部の第2貫通孔に入り込んだときに対向壁部の回動端壁部と反対側の壁面に対して平行に位置する抜け防止面を有する抜け防止鍔部を備えていてもよい。その場合、回動端壁部および対向壁部の保持を崩そうとする力に対して一層強固なものとなる。尚、抜け防止面は、施錠された状態で、対向壁の裏側の面と、わずかな間隔をもって対向する。
【0069】
また、扉の閉扉時であっても、扉と筐体の開口部との間(回動端壁部と対向壁部との間)には、僅かな隙間がある(例えば、1.5mm程度)。この隙間は、各部材の寸法公差に対するマージンならびに扉の回動時に回動端辺同士が衝突すること回避する目的のために、必要なものである。ところが、この隙間にバール等を挿入される虞がある。したがって、本扉用施錠装置は、扉の外側面に沿って回動端辺から突出するように設けられ、閉扉時に生じる回動端壁部と対向壁部との間の隙間を覆蓋するフランジ部を有していてもよい。尚、フランジ部は、粘性の高い金属、例えば、ステンレススチールを鋳物成形して製造される。
【0070】
さらに、本実施例においても、実施例1と同様に、以上説明した回動フックを備えた施錠機構に加え、ロッド部材、クレセント部材を備えた閉扉保持機構を有している。
【0071】
本扉用施錠装置における閉扉保持機構は、サポート金具と、ロッド部材とを有している。
【0072】
ロッド部材は、扉の内側にてキーシリンダの可動子にクランク部材としてのクレセント部材を介してクランク結合され、可動子に連動して直線的に変位する。そして、ロッド部材は、扉が閉扉され、かつ、キーシリンダの可動子が施錠位置のときに、扉の閉扉方向を向くように筐体に形成されたロッド受け面に先端が接することにより、扉の閉扉状態(閉扉態勢、閉扉位置)を保持する。
【0073】
ロッド部材は、弾性を有するステンレススチール等の金属棒材を曲げ加工して成るロッド本体と、ロッド本体の下端に形成されたインサート部と、ロッド本体の上端に取り付けられた金属製のキャップ部と、キャップ部に回転可能に設けられた金属または樹脂から成る2輪のローラとを備えている。
【0074】
ロッド部材は、サポート金具を介して、筐体や扉の上下方向に直線的に変位可能に扉に取り付けられている。サポート金具は、金属から成り、主部と、扉の内側に対して溶接やネジ留め等される取付部と、ロッド部材のロッド本体がスライド可能に挿通される孔付きタブ部とを備えている。尚、孔付きタブ部の孔は、ロッド本体の直径寸法に対して、筐体や扉の奥行方向に殆ど隙間が生じない寸法となっている。
【0075】
筐体の開口部上方には、扉の閉扉方向を向いたロッド受け面が設けられている。ロッド受け面は、開錠時から施錠時にかけて下方から上方に向かって変位する(上昇する)ローラの到来を案内する傾斜部と、これに連続する平面部とを含んでいる。そして、ロッド部材は、扉が閉扉され、かつ、キーシリンダの可動子が施錠位置のときに、ロッド受け面の傾斜部上を案内されたローラが平面部に接することにより、扉の閉扉状態(閉扉態勢、閉扉位置)を保持する。
【0076】
本扉用施錠装置における閉扉保持機構は、クレセント部材をさらに有している。
【0077】
クレセント部材は、扉の内側にてキーシリンダの可動子に結合され、可動子に連動して回動的に変位する。そして、クレセント部材は、扉が閉扉され、かつ、キーシリンダの可動子が施錠位置のときに、扉の閉扉方向を向くように筐体に形成されたクレセント受け面に先端が接することにより、ロッド部材と共に扉の閉扉状態(閉扉態勢、閉扉位置)を保持する。
【0078】
一方、筐体の開口部下方には、扉の閉扉方向を向いたクレセント受け面が設けられている。
【0079】
クレセント部材は、弾性を有するステンレススチール等の金属材を板金加工して成り、連結部と、円弧フック状のクレセント部と、前述したロッド部材のためのクランク部材としてのクランク部とを備えている。クランク部の孔には、ロッド部材のインサート部が挿入される。クレセント部材のクレセント部は、クレセント受け面への到来を案内する傾斜部を含んでいる。そして、クレセント部材のクレセント部は、開錠時から施錠時にかけて反時計方向に変位する(回動する)が、その際に、クレセント部が傾斜部を経てからクレセント受け面に接することにより、ロッド部材と共に扉の閉扉状態(閉扉態勢、閉扉位置)を保持する。
【0080】
筐体の開口部の上部には、閉扉された扉が接する箇所に、ウレタンシートまたはゴムシート等が貼り付けされている。これにより、閉扉時であっても筐体と扉との間に不可避に存在する隙間から雨水や粉塵等の異物が筐体内に侵入することが防止される。即ち、閉扉保持機構を有するのみの場合に比べ、防水性、防塵性が向上する。尚、ウレタンシート等は、筐体の開口部の下部や側部、さらには、閉扉時に互いに突き合わされる扉の回動端辺(もしくはフランジ部)と筐体の開口部辺との間にも、ウレタンシート等を設けてもよい。また、ウレタンシート等は、異物の侵入を防ぐことができると共に、扉の閉扉方向の寸法公差を阻害しないように弾力性を持つ素材であれば、ウレタン、ゴム以外の他の材料から成るシートを設けてもよい。