特許第5676824号(P5676824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676824
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】自家用航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 29/00 20060101AFI20150205BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   B64C29/00 A
   B64D27/24
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-521800(P2014-521800)
(86)(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公表番号】特表2014-520726(P2014-520726A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012047467
(87)【国際公開番号】WO2013013084
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2014年3月17日
(31)【優先権主張番号】61/509,530
(32)【優先日】2011年7月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512070252
【氏名又は名称】ズィー.エアロ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イラン クルー
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07159817(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0031355(US,A1)
【文献】 特開2006−290255(JP,A)
【文献】 米国特許第06293491(US,B1)
【文献】 特表2013−532601(JP,A)
【文献】 特開2001−071998(JP,A)
【文献】 米国特許第01425555(US,A)
【文献】 特開昭49−019599(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0065772(US,A1)
【文献】 特開2004−210266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 29/00
B64D 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自家用航空機であって、
長手方向軸および垂直軸を有する胴体と、
前記胴体に結合され、前記航空機の重力中心の前方に位置する前方翼と、
前記胴体に結合され、前記航空機の前記重力中心の後方に位置する後方翼と、
前記胴体に結合され、前記胴体の前記長手方向軸に対して実質的に平行にその左舷側に沿って配向された左舷推進ブームと、
前記左舷推進ブームに結合され、前方推力をもたらすように適合された左舷プロペラと、
前記左舷推進ブームに結合された第1の複数のロータであって、前記第1の複数のロータは、前記胴体の前記長手方向軸に対して実質的に平行に配置され、各々のロータはモータに結合され、各々のロータは主に前記垂直軸に沿った方向に推力をもたらす、第1の複数のロータと、
前記胴体に結合され、前記胴体の前記長手方向軸に対して実質的に平行にその右舷側に沿って配向された右舷推進ブームと、
前方推力をもたらすために前記右舷推進ブームに結合された右舷プロペラと、
前記右舷推進ブームに結合された第2の複数のロータであって、前記第2の複数のロータは、前記胴体の前記長手方向軸に対して実質的に平行に配置され、各々のロータはモータに結合され、各々のロータは主に前記垂直軸に沿った方向に推力をもたらす、第2の複数のロータと
を備え、
前記複数のロータに結合された各々のモータは、他のモータから独立して制御されるように適合され、
前記第1の複数のロータの少なくとも1つは、垂直軸上ではない第1の方向に推力の非ゼロ成分をもたらす固定された配向で結合され、
前記第1の複数のロータのうち残余のものの少なくとも1つは、垂直軸上ではなく且つ前記第1の方向とは異なる第2の方向に推力の非ゼロ成分をもたらす固定された配向で結合され、
前記第2の複数のロータの少なくとも1つは、垂直軸上ではない第3の方向に推力の非ゼロ成分をもたらす固定された配向で結合され、
前記第2の複数のロータのうち残余のものの少なくとも1つは、垂直軸上ではなく且つ前記第3の方向とは異なる第4の方向に推力の非ゼロ成分をもたらす固定された配向で結合されることを特徴とする自家用航空機。
【請求項2】
前記第1の複数のロータは、少なくとも4つのロータを含み、前記第2の複数のロータは、少なくとも4つのロータを含むことを特徴とする請求項1に記載の自家用航空機。
【請求項3】
前記胴体に結合された飛行コンピュータであって、
前記自家用航空機の現在の配向を決定し、
前記自家用航空機の所望の配向を決定し、
前記ロータに取り付けられた前記複数のモータの各々に、前記自家用航空機の前記現在の配向と前記自家用航空機の前記所望の配向との間の相違にしたがって、独立的に命令するように適合された、飛行コンピュータをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の自家用航空機。
【請求項4】
前記飛行コンピュータは、
前記航空機の位置、高度、姿勢、および速度を指示するセンサデータを受け取るように適合された位置センサインターフェースと、
前記位置センサインターフェースに結合されたロータ制御モジュールであって、
前記複数のロータの各々から必要とされる推力の量を決定して前記所望の配向を達成し、前記複数のモータの各々に独立的に命令して前記決定された必要とされる推力を生成させるように適合された、ロータ制御モジュールと
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の自家用航空機。
【請求項5】
前記飛行コンピュータは、
前記位置センサインターフェースに結合されたプロペラ制御モジュールであって、
各々のプロペラから必要とされる前方推力の量を決定し、前記プロペラに命令して前記必要とされる推力を生成させるように適合された、プロペラ制御モジュール
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の自家用航空機。
【請求項6】
前記飛行コンピュータは、前記航空機の上昇および下降のためにプログラムされた軌道を含むデータベースをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の自家用航空機。
【請求項7】
前記左舷推進ブームおよび前記右舷推進ブームは、複数の支柱によって前記胴体に各々結合されることを特徴とする請求項1に記載の自家用航空機。
【請求項8】
胴体と、
前記胴体に結合され、重力中心の前方に位置する前方翼と、
前記胴体に結合され、前記重力中心の後方に位置する後方翼と、
前記胴体の左舷側の前記前方翼と前記後方翼の間に位置する第1の複数の揚力ロータであって、前記第1の複数の揚力ロータの少なくとも1つは、第1の傾きを有し、且つ前記第1の複数の揚力ロータのうち残余のものの少なくとも1つは、前記第1の傾きとは異なる角度を有する第2の傾きを有する、第1の複数の揚力ロータと、
前記胴体の右舷側の前記前方翼と前記後方翼の間に位置する第2の複数の揚力ロータであって、前記第2の複数の揚力ロータの少なくとも1つは、第3の傾きを有し、且つ前記第2の複数の揚力ロータのうち残余のものの少なくとも1つは、前記第3の傾きとは異なる角度を有する第4の傾きを有する、第2の複数の揚力ロータと、
前方推力をもたらすために前記胴体に結合されたプロペラと、
前記胴体に結合された飛行コンピュータであって、前記第1の複数の各々の揚力ロータおよび前記第2の複数の各々の揚力ロータによってもたらされる推力の量を独立的に制御するように構成された、飛行コンピュータと
を備え、
前記第1、第2、第3及び第4の傾きは固定であることを特徴とする航空機。
【請求項9】
前記第1の複数の揚力ロータ内のロータの数は4つであり、前記第2の複数の揚力ロータ内のロータの数は4つであることを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項10】
前記第1の複数の揚力ロータ内のロータの数は3つであり、前記第2の複数の揚力ロータ内のロータの数は3つであることを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項11】
前記後方翼は、ウィングレット特徴を含むことを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項12】
前記ウィングレットは、実質的に上方垂直方向に配向されることを特徴とする請求項11に記載の航空機。
【請求項13】
前記ウィングレットは、実質的に下方垂直方向に配向されることを特徴とする請求項11に記載の航空機。
【請求項14】
前記揚力ロータは、電気モータによって駆動されることを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項15】
前記前方翼および後方翼は、同一平面上にないことを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項16】
前記翼は折り畳み可能であることを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項17】
オートパイロットが無人運航をもたらすことを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項18】
前記揚力ロータブレードは、固定されたピッチを有することを特徴とする請求項8に記載の航空機。
【請求項19】
胴体と、
前記胴体に結合され、重力中心の前方に位置する前方翼と、
前記胴体に結合され、前記重力中心の後方に位置する後方翼と、
前記胴体の左舷側に結合された第1の装着ブームと、
前記胴体の右舷側に結合された第2の装着ブームと、
第1の複数の揚力ロータであって、各々のロータは、前記胴体の前記左舷側の前記前方翼と前記後方翼の間の前記第1の装着ブーム上に装着され、前記第1の複数の揚力ロータの少なくとも1つは、第1の傾きを有し、且つ前記第1の複数の揚力ロータのうち残余のものの少なくとも1つは、第2の傾きを有し、前記第1の傾きは前記第2の傾きとは異なる角度を有する、第1の複数の揚力ロータと、
第2の複数の揚力ロータであって、各々のロータは、前記胴体の前記右舷側の前記前方翼と前記後方翼の間の前記第2の装着ブーム上に装着され、前記第2の複数の揚力ロータの少なくとも1つは、第3の傾きを有し、且つ前記第2の複数の揚力ロータのうち残余のものの少なくとも1つは、第4の傾きを有し、前記第3の傾きは前記第4の傾きとは異なる角度を有する、第2の複数の揚力ロータと、
前方推力をもたらすために前記第1の装着ブームに結合された第1のプロペラと、
前方推力をもたらすために前記第2の装着ブームに結合された第2のプロペラと、
前記第1の複数の各々の揚力ロータおよび前記第2の複数の各々の揚力ロータによってもたらされる推力の量を独立的に制御するために前記胴体に結合された、飛行コンピュータと
を備え、
前記第1、第2、第3及び第4の傾きは固定であることを特徴とする航空機。
【請求項20】
前記航空機の前記左舷側の第1のフェンスと、前記航空機の前記右舷側の第2のフェンスとをさらに備え、各々のフェンスは、前記装着ブームに対して本質的に平行であり、前記複数のロータの外側に延在するように前記胴体に結合されることを特徴とする請求項19に記載の航空機。
【請求項21】
前記フェンスは、前記航空機の騒音到達範囲(noise footprint)を低減するように適合されることを特徴とする請求項20に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ロバスト制御を達成しながら安全な運航をもたらすように構成された自家用航空機に関する。特に、説明される実施形態は、垂直の離陸および着陸能力を備え、垂直および水平の推力を制御された形でホバリング、移行、および巡航飛行をもたらす航空機を含む。
【背景技術】
【0002】
滑走路を使用して翼が適切な揚力をもたらすのに十分な速度まで地上で上げる代わりに、垂直に離陸および着陸することは、飛行機が垂直および前方の両方の推力をもたらすことを必要とする。垂直方向に生成された推力は、運航体に揚力をもたらし、水平に生成された推力は、前方の移動をもたらす。垂直離陸および着陸(VTOL)航空機は、垂直および水平の両方の推力を生成することができ、これらの力を釣り合いのとれた形で制御することができる。
【0003】
回転式翼航空機またはヘリコプタは、VTOL航空機の1つの一般的なタイプである。ヘリコプタは、垂直および水平の両方の推力をもたらす大型ロータを有する。ロータが対気速度の範囲にわたってこの二重機能を実行するために、ロータは、一般的にはかなり複雑なものになる。運航体の飛行状態に応じて、ロータブレードは、方位角回転の360°周りでさまざまな配向角度をとって必要とされる推力をもたらさなければならない。したがって、ロータは、ブレード配向角度のコレクティブおよびサイクリックの両方の変動を有する。コレクティブは、360度回転方位角とは独立的に、各々のブレードの角度を同様に変化させる。サイクリックは、360度回転方位角の関数として、ブレード迎え角を変化させる。サイクリック制御は、ロータをさまざまな方向に傾斜させ、したがって、ロータの推力を前方、後方、左または右に向けることを可能にする。こうした方向は、ヘリコプタを水平面で移動させ、突風などの外乱に対処するための制御力をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘリコプタロータは大型のものであり、近接する妨害物に衝突することから保護されていない。加えて、これらは、機械的に複雑なシステムを利用してコレクティブおよびサイクリック両方のブレード角度を制御する。そのようなロータは、機械的に複雑であり、保全作業を必要とする。ロータは、一般に低速度で回転し、この結果、ロータとモータの間に重い変速装置が存在する。この変速装置、またはギアボックスは、運航体の搭載物可能量、ならびに運航体の安全性を低下させる。運航体システム全体にわたって機械的に複雑であるため、数多くの部分が単一障害点となる。冗長性のこうした欠如のため、頻繁な点検および保全作業が、運航体を安全に保つために必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
説明された実施形態は、安全で静かであり、効率的であると共に、制御が容易で、極めてコンパクトであり、前方飛行へのおよびそれからの移行と共に垂直の離陸および着陸を達成することができる構成を備えた自家用航空機を提供する。1つの実施形態では、航空機構成は、離陸、前方飛行へのおよびそれからの移行、ならびに着陸中、揚力および制御のための垂直推力をもたらすように配向された複数のロータを含む。ロータは、固定された非平面の配向で機体に取り付けられる。ロータの配向は、姿勢の変更を必要とせずに、航空機の横方向の、また一部の実施形態では前後の制御をもたらし、航空機が巡航しているときの流れに対する外乱を最小限に抑える。さまざまな実施形態では、ロータは、前方、後方、左、および右の配向を有し、胴体の左舷側および右舷側に沿って長手方向に位置しており、このとき2つまたはそれ以上のロータが各側に位置する。
【0006】
胴体は、可変重量の搭載物を担持する。航空機は、運航体の前部および後部にタンデム翼を有する。この翼は、巡航中に揚力および制御をもたらし、1または複数のプロペラは、前方の推力をもたらす。垂直揚力ロータ、ならびに前部および後部のタンデム翼の組み合わせがロータの境界を画定し、垂直および水平の飛行制御を運航体が維持することを可能にしながらも、航空機の重力中心内での移動を可能にする。前方翼および後部翼はまた、揚力ロータに対する異物損傷(FOD)を回避するための境界をもたらすように位置している。昇降舵および補助翼を含む制御表面は、迎え角および姿勢を変更することに加えて、揚力の中心を調整することによって、飛行中の航空機のCGにおける変化を補償するのに使用可能である。垂直揚力ロータは、CGの周りに配置され、各々のロータの推力は調整可能であり、それによってCGがシフトした場合に垂直飛行における揚力中心を再配置することを可能にする。
【0007】
垂直揚力ロータの複数の数および独立性により、垂直推力は冗長性であり、推力および制御は、どの1つのロータが故障しても利用可能なままとなる。大きな制御力をもたらす複数の垂直ロータが存在するため、ロータはより小さくなり、突風状態でも運航に対する応答速度はより速くなる。1つの実施形態では、別個の電気モータおよび制御器が、各々の垂直揚力ロータに動力供給して、1または複数の揚力ロータの故障からの冗長性を揚力システムにもたらす。他の実施形態では、垂直推力ロータは、これらを隠し、揚力の増大をもたらすダクト内に埋め込まれる。他の実施形態は、比較的開放されるが、このとき保護シュラウドが、他の物体との接触を防止し、ロータに対するFODを防止するガードとして作用する。保護遮蔽体は、1列にならんだ垂直揚力ロータと組み合わせて、効率的な飛行のための低巡航抗力をもたらす。低先端速度垂直揚力ロータは、さまざまな実施形態において使用され、離陸、移行、および着陸中の都市騒音レベルを小さくする。低い前翼およびウィングレット付きの高い後部翼を備えた実施形態は、航空機に対して高い空気力学的効率をもたらしながら偏揺れ安定性ももたらす。一部の実施形態では、翼は折り畳まれ、ホバリングの際、または地上にいる間、コンパクトな運航体占有面積を実現する。翼の一部の実施形態は、翼折り畳み部の内側部分のみに制御表面を有し、それにより、連接する制御リンク機構は必要とされない。垂直揚力に使用される揚力ロータは、前方推力プロペラとは別個のものであるため、各々がその特有の運航状態に対して最適化される。そのような運航体は、乗員サイズまたは搭載物の範囲にわたって、有人型実施形態または無人型実施形態に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】1つの実施形態による自家用航空機運航体の上面図である。
図2】1つの実施形態による自家用航空機運航体の第2の図である。
図3】1つの実施形態による自家用航空機運航体の前面図である。
図4】1つの実施形態による自家用航空機運航体の左側の図である。
図5】1つの実施形態による飛行コンピュータを示すブロック図である。
図6】1つの実施形態による、垂直離陸から前方飛行に移行するための方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、1つの実施形態による自家用航空機100を示している。航空機100は、固定された配向を有する垂直揚力ロータ組立体101aおよび101b(全体的には101)と、前方飛行プロペラ103と、前方翼104と、ウィングレット106aおよび106b(全体的には106)を有する後部翼105と、フェンス110aおよび110b(全体的には110)と、コックピット領域112と、胴体107とを含む。胴体107はまた、着陸ギア、飛行コンピュータ、および動力供給源(図示せず)を含み、その各々は、以下でさらに説明される。図2は、推進ブーム114、左舷側主要着陸ギア202、および前方着陸ギア204を含む、自家用航空機100の第2の図を示している。図3は、左舷着陸ギア202a、右舷着陸ギア202bおよび機首ギア204を見ることができる、自家用航空機100の前面図を示している。図4は、1つの実施形態による航空機100の左(左舷)側の図を示している。
【0010】
さまざまな実施形態では、航空機100は、1人のパイロットおよび自家用貨物を収容するようにサイズ設定される。たとえば、さまざまな実施形態では、機首からその最も後方の表面までの航空機の長さは、15フィート(4.57m)から20フィート(6.1m)の間であり、その翼幅は、15フィート(4.57m)から20フィート(6.1m)の間である。代替的実施形態では、航空機は、当業者によって理解されるように、本明細書で説明された原理から逸脱することなく、これより長くても短くても、広くても狭くてもよい。
【0011】
航空機100は、さまざまな実施形態では主に複合材料で構築される。胴体107および翼104、105は、炭素繊維複合材料から作製される。代替的実施形態では、翼は、炭素繊維複合翼外板の内側および外側に取り付けられた金属継手およびリブを有することができる。一部の実施形態では、翼外板は、Kevlarなどの他の複合材料と組み合わされた炭素繊維から作製された複合材料を含むことができる。他の代替的実施形態では、胴体は、鋼またはアルミニウムから作製された金属トラスを含むことができ、このとき複合外板はこのトラスを覆う。この実施形態における複合胴体外板は、炭素繊維、Kevlar、または当業者によって理解されるような他の複合材料から作製され得る。1つの実施形態のコックピット窓は、ポリカーボネートであるが、他の軽量透明プラスチックが使用されてもよい。フェンス110は、Kevlarおよび炭素繊維複合材から作製される。
【0012】
ロータ組立体101はロータを含み、ロータは、1つの実施形態では16インチ(40.64cm)半径を有し、炭素繊維複合材料から作製され、代替的実施形態では、アルミニウムハブに取り付けられた炭素繊維複合ブレードから作製される。他の実施形態では、ロータは、アルミニウムハブに取り付けられた木製ブレードから、または炭素繊維複合ハブに取り付けられた木製ブレードから作製される。ロータは、モータ組立体上にボルト留めした単一体でよい。ロータ組立体101は、以下でさらに説明される。
【0013】
航空機100は、前方翼104および後方翼105を含む。最小限の長さおよび幅を維持し、ロータシステムの中心にCGを有するために、前方翼および後方翼は、幅において類似のものである。後方翼は、後方に広げられ、その端部にウィングレット106を有する。ウィングレットは、横方向の安定性をもたらし、後方翼上の揚力による抗力を低下させる。翼を後方に広げることは、航空機のピッチ安定性を向上させ、横方向の安定性に関するウィングレットの利点を増大させる。一部の実施形態では、後方翼は折り畳むことができ、したがって広げられない後方翼を備えた航空機と同じ運航体全長を維持することができる。加えて、後方翼を広げることは、ロータを中に適合(fit)するスペースをより多くもたらす。前方翼104はまた、胴体107に、さまざまな実施形態では後方翼105より実質的に低い点で取り付けられる。非平面の翼浮揚システムは、翼が巡航飛行中に効率的に揚力を上げることを可能にする。1つの実施形態では、2つの翼間の垂直分離は、胴体への取り付けの制約を前提にして、できるだけ大きくなるように選択される。翼の垂直分離を最大化することにより、前部翼および後部翼間の負の空気力学的相互作用が、低減される。したがって、運航体の揚力による抗力は、単一の平面内の翼浮揚システムと比較して、たとえば15〜20%ほど大きく低下される。
【0014】
ウィングレット106は、後部翼105の先端部に位置して、後部翼上の揚力による抗力の低下、および偏揺れまたは方向の安定性および制御をもたらす。特定のウィングレット形状は、当業者に理解されるように、適切な安定性に合わせて確立される。一部の実施形態では、図3に示されるように、ウィングレットは下方向に延び、航空機の横滑り角度と、空気流が航空機上に生成する偏揺れモーメントとの間の結合を低減することによって制御性の向上をもたらす。
【0015】
1つの実施形態では、タンデム翼システムは、各々の翼の翼先端部が折り畳まれる接合部を有し、それによって航空機100を限られた空間内に適合(fit)させることを可能にする。たとえば、1つの実施形態では、翼を折り畳むことは、航空機100を8’(2.44m)×7’(2.13m)×16’(4.88m)の空間、または一般的な1台用の車庫によってもたらされる空間内に格納することを可能にする。1つの実施形態では、後部翼105は、8.4度の上反角を有する。他の実施形態では、この上反は、−10から10度の間の範囲である。
【0016】
垂直揚力ロータ組立体101は、航空機100の各側に装着される。1つの実施形態では、推進ブーム114(図2)は、胴体107の各側に固定される。この実施形態では、前方飛行プロペラ103は、ブーム114の後端部に取り付けられ、垂直揚力ロータ組立体101は、ブーム114の上部に設置される。推進ブーム114は、支柱116を用いて胴体107に取り付けられる。支柱116は、ロータからの吹き下ろしが支柱上にぶつからない位置に置かれる。一部の実施形態では、各々のブームを胴体に連結する3本の支柱が存在する。代替的実施形態では、各々のブームを胴体に連結する1本または2本の支柱が存在する。他の実施形態では、支柱は、前方、後方、上、または下に掃引(swept)されてブームの胴体への取り付けを向上させることができる。たとえば、代替的実施形態では、垂直に配向された支持構造は、ホバリング中、垂直揚力ロータ負荷からの曲げ剛性の増大をもたらす。
【0017】
各々の垂直揚力ロータ組立体101は、ロータおよびモータを含む。ロータは、ハブに取り付けられたブレードを備えることができ、または一体的なハブを備えた単一体として製造されてよい。ハブは、ブレードが連結する中央構造をもたらし、一部の実施形態では、モータを包含する形状で作製される。モータは、回転部分および固定部分を含む。1つの実施形態では、回転部分は、固定部分に対して同心であり、径方向磁束モータとして知られている。この実施形態では、固定部分は、モータの外側リングを形成することができ、インランナーモータとして知られおり、または固定部分は、モータの内側リングを形成することができ、アウトランナーモータとして知られている。他の実施形態では、回転および固定部分は、平坦であり、互いに対向して配置され、軸方向磁束モータとして知られている。一部の実施形態では、モータ部分は低プロファイルのものであり、それにより、モータ全体はロータのハブ内に嵌合し、前方に飛行する際、空気流に対してより小さい抵抗性を有する。ロータは、モータの回転部分に取り付けられる。モータの固定部分は、推進ブーム114に取り付けられる。一部の実施形態では、モータは、永久磁石モータであり、電子モータ制御器によって制御される。電子モータ制御器は、正確なシーケンスでモータに電流を送り、ロータが所望の速度または所望のトルクで回転することを可能にする。
【0018】
留意されるように、航空機100は、片側につき複数のロータ組立体101を含む。垂直揚力ロータは、水平巡航中、前方飛行プロペラ103によって発生させられた推力とは独立した推力を発生させる。垂直揚力ロータは、航空機を地上から浮揚させ、制御を維持するのに十分な推力をもたらす。1つの実施形態では、各々のロータは、ホバリングするのに必要とされるものより大きい、たとえば40%大きい推力を発生させて、飛行エンベロープのすべての部分における制御を維持する。ロータは、直径、ブレード翼弦、およびブレード入射角分布を選択することによって、ホバリングおよび低速飛行状態において最小限の消費動力で必要とされる推力をもたらすように最適化される。さまざまな実施形態では、ロータの半分は一方の方向に回転し、他の半分は反対方向に回転して航空機上の反作用トルクの釣り合いをとる。一部の実施形態では、航空機の左舷側および右舷側上に互いから真向かいにあるロータは、反対方向の回転を有する。他の実施形態では、互いから真向かいにあるロータは、同じ方向の回転を有する。一部の実施形態では、ロータは、ロータ間、または機体とロータの間のさまざまな相互作用を考慮するために個々に調節され得る。そのような実施形態では、調節は、ブレード上の入射角または翼弦分布を調整して好ましいまたは不利な相互作用を考慮し、ロータからの必要なパフォーマンスを達成することを含む。図1に示される実施形態では、片側につき4つの垂直揚力ロータ組立体101が示されている。代替的実施形態では、これより多いまたは少ない垂直揚力ロータが、垂直揚力および制御をもたらす。片側につき少なくとも2つのロータが存在するとき、重力中心周りの平衡を有する垂直力を生成する能力は、1つのロータが故障したときでも保持される。これは、故障したロータの反対の四半分上の推力を低下させることによって達成される。片側につき3つのロータが存在するとき、飛行の3軸の周り、または3方向周りすべての制御が利用可能である。片側あたりのロータの数が増大するにつれて、いかなる1つのロータが損失しても、垂直推力の全体損失は低下する結果となる。しかし、ロータの対が追加されるごとに、複雑性および結果として故障が生じる可能性を増大させると共に、コストおよび重量も増大させる。
【0019】
1つの実施形態では、片側につき2つの垂直揚力ロータ組立体101が、CGの前方に位置し、2つがCGの後に位置する。この方法では、ホバリングにおけるロータの揚力の中心は、航空機100の重力中心と同一場所にされる。この配置は、胴体107内の搭載物の長手方向の位置決めまたは横方向の位置決めの変動を可能にする。飛行コンピュータ500は、各々の垂直揚力ロータによって独立的に生成された推力を変更して、釣り合いがとれた垂直揚力、または代替的には制御をもたらす不釣り合いの揚力をもたらす。
【0020】
一部の実施形態では、ロータ配向は、姿勢の変更を必要とすることなく、航空機の横方向および長手方向の制御をもたらす。ロータ組立体101は、外方向、内方向、前方、または後方に傾くように各々装着されるため、ロータ推力の適正な組み合わせの結果、水平面内の正味力、および必要とされる垂直揚力が生じる。これは、たとえば地上近くで操縦しているときに役立つ。加えて、ブレードが損傷されるまたは分離するロータの故障の場合、この異なる傾き角度は、別のロータが損傷される可能性を小さくし、したがってその設計をより故障に耐性のあるものにする。この配向はまた、航空機が巡航しているときの流れに対する外乱を最小限に抑えるように選択される。一部の実施形態では、ロータの配向は、前方、後方、左および右で変化し、それによって姿勢を変更することなく航空機を任意の方向に操縦することを可能にする。他の実施形態では、この配向は、左および右だけに変化し、巡航中の流れに対する外乱を最小限に抑えるが、これは、航空機が、姿勢を変更することなく、前方および後方ではなく左右にだけ操縦できることを意味する。片側につき4つのロータを備えた1つの実施形態では、ロータは、前から後に、10°外、10°内、10°内、および10°外に配向される。
【0021】
前方飛行プロペラ103は、前方飛行への移行、高度上げ、下降および巡航のための推力をもたらす。1つの実施形態では、2つまたはそれ以上の前方推力プロペラ103は、後部翼105の幅に沿って装着される。代替的実施形態では、単一の前方推力プロペラが、胴体107の後方部分上の、幅の中心のところに装着される。他の実施形態では、1または複数のプロペラが、翼または推進ブームの前部にけん引プロペラとして装着される。プロペラは、これらを回転させるのに必要とされるトルクが、航空機上の正味トルクを生成しないように反対方向に回転され得る。また、2つのプロペラの推力は、さまざまに変化して偏揺れ制御モーメントをもたらすことができる。翼上に配置した結果、プロペラに対する流入外乱が小さくなる。胴体上の単一プロペラの使用は、構成要素をより少なくし、重量を減少させることを可能にするが、異なったサイズのモータを伴い、また、胴体からの外乱を含む流入を伴う。1つの実施形態では、前方プロペラは固定されたピッチのものである。翼弦および入射角分布は、運航体がゆっくりと移動しており、ロータの推力によって空気中で支持されるとき、および航空機がすばやく移動しており、翼の揚力によって十分支持されているときの両方において加速および高度上げのための適正な推力をもたらすように最適化される。加えて、翼弦および入射角分布は、航空機の巡航速度において効率的な推力をもたらすように選択される。他の実施形態では、前方プロペラは、各々のブレードの入射角を飛行状態に応じて調整することを可能にする可変ピッチ機構を利用する。
【0022】
垂直揚力ロータおよび前方プロペラは、動力システムによって動力供給される電気モータによって駆動される。1つの実施形態では、動力システムは、モータごとに1つのモータ制御器に取り付けられるバッテリを含む。1つの実施形態では、バッテリは、航空機の胴体内に位置する1または複数のモジュールを備える。他の実施形態では、バッテリモジュールは、推進ブーム内に位置している。バッテリは、DC電圧および電流を供給し、モータ制御器がそれらを、モータを回転させるAC信号に変換する。一部の実施形態では、バッテリは、平行および直列に互いに連結されたリチウムポリマーセルを備えて、必要とされる電圧および電流を発生させる。あるいは、他の化学的性質のセルが使用されてよい。1つの実施形態では、セルは、93個のセル直列ストリングになるように連結され、これらのストリングのうち6個は、平行に連結される。他の実施形態では、セルは、これより多いまたは少ないセルを直列にして、またこれより多いまたは少ないセルを平行にして連結される。代替的実施形態では、ロータおよびプロペラは、小さい炭化水素ベース燃料エンジンおよびより小さいバッテリを備えたハイブリッド電気システムを含む動力システムによって動力供給される。炭化水素エンジンは、前方飛行により大きな範囲をもたらし、バッテリシステムを充電することができる。
【0023】
さまざまな実施形態における垂直揚力ロータ組立体101は、偶発的なブレードの衝突を回避するために保護フェンス110によって保護される。一部の実施形態では、保護フェンスは、増分的揚力をもたらすことによってフェンス近くでロータすべての推力を最大化するように設計される。この実施形態では、フェンス110は、ロータシステム101によって誘発されたフェンスの上の流れが、フェンス110上に上方向力を作り出すように成形される。これは、上方向力を発生させるフェンスの横断面形状、およびその垂直部に対する角度を選択することによって達成される。一部の実施形態では、フェンスは、第三者をロータの騒音から遮蔽することによってロータシステムの明らかな騒音を低減するように設計される。これらの実施形態では、フェンスは、従来の消音材料で充填され、または、従来の音吸収材料でコーティングされる。一部の実施形態では、航空機100はフェンス100を含まない。
【0024】
留意されるように、複数の独立的に制御されるロータの使用は、冗長性の揚力システムをもたらす。たとえば、6つまたはそれ以上のロータを含むシステムは、1つまたはいくつかの個々の構成要素が故障しても、前進対気速度を有することなく安全運航でホバリングおよび垂直の上昇および下降を可能にする。
【0025】
図5は、1つの実施形態による飛行コンピュータ500のブロック図である。飛行コンピュータ500は、航空機100上に、通常は胴体107内に位置している。飛行コンピュータ500は、ロータ制御モジュール502、プロペラ制御モジュール504、位置センサインターフェース506、およびデータベース508を含む。位置センサインターフェース506は、航空機の計器に通信可能に結合され、1つの実施形態では、航空機の位置、高度、姿勢、および速度を含むセンサデータを受け取る。ロータ制御モジュール502は、位置センサインターフェース506からおよびコックピット内の制御入力からデータを受け通り、命令された応答を達成するためにどれだけの推力が垂直揚力ロータ101の各々から必要とされるかを決定する。ロータ制御モジュール502は、各々のロータ組立体101に独立的に命令して、決定された必要とされる推力を生成させる。ロータ故障が発生した場合、ロータ制御モジュール502は、推力要求事項を調整して損失したロータ分を補償する。プロペラ制御モジュール504は、位置センサインターフェース506からおよびコックピット内の制御入力からデータを受け取り、どれだけの前方推力がプロペラ103の各々から必要とされるかを決定し、プロペラに命令して必要とされる推力を生成させる。データ508は、移行中使用される上昇および下降のためのプログラムされた軌道を含み、さらに、当業者によって理解されるように、航空機100のナビゲーションおよび制御に使用される追加の特徴を含むこともできる。飛行コンピュータ500はまた、ナビゲーションおよび飛行運航を実行する、当業者に知られている他の構成要素およびモジュールを含むが、本説明では深く係るものではない。
【0026】
図6は、1つの実施形態による、垂直飛行から前方飛行に移行するための方法を示している。開始するために、飛行コンピュータ500のロータ制御モジュール502は、動力をロータにかける602。1つの実施形態では、この離陸の初期段階中、ロータの各々には等しい動力がかけられる。代替的実施形態では、傾斜地からのまたは横風の中の離陸を容易にするために、離陸の初期段階中、ロータの各々には異なる動力がかけられる。位置センサインターフェース506は、航空機計器から姿勢および高度データを受け取る604。最低高度、たとえば地上レベルから200フィート(61m)上空に到達した後606、プロペラ制御モジュール504は、前方プロペラを動作化し608、一部の実施形態では、コックピットの内側でその制御入力を有効にする。これは、地上の妨害物が危害を与え得る高度において、航空機を動力下で前方に加速させることを防止する。代替的実施形態では、動力供給される前方推進には、最低高度は必要とされない。他の実施形態では、最低高度は、調整可能でありかつ/または無効にすることができる。たとえば、高木のために、加速を開始する前により高い初期上昇を求めることがある。
【0027】
一部の実施形態では、パイロットは、初期高度を飛行コンピュータ500にプログラムする。あるいは、パイロットは、飛行制御入力を使用して、より高い高度が望まれることを指示する。さらなる高度が必要とされる場合610、位置センサインターフェース502は、航空機の姿勢および速度を決定し612、ロータ制御モジュール502は、垂直推力および水平配向を維持する必要に応じて、ロータへの動力を個々に調整する614。
【0028】
航空機100が所望の初期高度に達したとき610、位置センサインターフェース506は、航空機の前進速度が、揚力を発生させるのに十分な大きさであるか、すなわち航空機速度は、そのストール速度より大きいかを決定する616。そうでない場合、飛行コンピュータ500は、どれだけの揚力がロータから必要とされるかを決定し618、必要とされる動力をかける620。1つの実施形態では、必要とされる揚力の量は、エアフォイルによって発生させられた揚力の観点からの、航空機の高度を維持するのに必要とされる量である。速度が増すにつれて、翼は揚力を上げ、垂直揚力ロータの必要とされる推力は、低下される。1つの実施形態では、ロータからの推力は、移行中、最適な軌道を維持し、相互作用または突風などの環境影響によるいかなる外乱も拒絶するように調整される。1つの実施形態では、最適な軌道は、飛行に先立って決定され、飛行コンピュータ500によってデータベース508内に記憶される。飛行コンピュータ500は、引き続き航空機の姿勢、高度、および速度を決定し622、所望の速度に到達するまで、または揚力の最低レベルが、エアフォイルによって発生させられている状態になるまでロータ動力を調整する。速度が、ストール速度より大きくなった後616、すなわち、航空機の全重量を翼が支持することができるほどの大きさになった後、または代替的実施形態では、異なる最低速度に到達した後、垂直揚力ロータは完全に非動作化される624。
【0029】
航空機100を前方飛行から垂直飛行に移行させるために、プロペラ制御モジュール504は、前方プロペラ103の推力を低減して速度を低減する。飛行機100の速度が低減されるにつれて、ロータ制御モジュール502は、自動的にロータに命令して垂直揚力の発生を開始させる。垂直揚力ロータの必要とされる推力は、翼上の揚力が低下するにつれて増大する。ロータからの推力は、位置センサインターフェース506からの読み取りに応答してロータ制御モジュール502によって調整されて、移行中、飛行コンピュータによって、たとえばデータベース508内に記憶された軌道に基づいて決定された最適な軌道を維持し、相互作用または突風などの環境影響によるいかなる外乱も拒絶する。最終的には、前進速度はゼロになり、またはゼロに近付き、垂直揚力ロータは全揚力をもたらす。運航体はこのとき、パイロットからの下降命令によって、または飛行コンピュータ500が自動的に個々のロータへの動力を低減して所望の下降速度およびレベル配向を維持することによって、地上へと下降する。
【0030】
留意されるように、翼104および105は、一部の実施形態では折り畳まれる。一部の実施形態は、より軽量のヒンジを可能にするために、負荷が小さい場所、たとえば幅の50%外側に位置決めされた翼折り畳み部を有する。他の実施形態では、前方翼は折り畳まれない。他の実施形態では、翼が折り畳まれることで、航空機は、一般的な1台分の車庫などの8’(2.44m)幅の空間内に嵌合することができる。代替的実施形態はまた、前方翼を、胴体の下方に、または胴体の側部に沿ってはさみ運動などの他の方法で折り畳むことも含む。このはさみ状の折り畳みは、前部翼の中心にある、後方回転をその中心ピボット点の周りで可能にするピボットおよびピンによって達成される。この実施形態は、単一点の周りの翼連接を可能にして、翼の構造深さが最大である場所において重量を低減すると共に、前部翼を電子機械アクチュエータによって運航体の側部へと完全に折り畳んで、ホバリング中または地上にいる間、パイロット視認性をより良好に増進させることができる。はさみ状折り畳み前部翼を含む実施形態では、着陸ギアは、単一の前部ホイール204および2つの主要後部着陸ギアホイール202を含む。
【0031】
1つの実施形態では、航空機100は、前部翼および後部翼が折り畳まれた状態で離陸および着陸することができる。垂直飛行における、翼が折り畳まれた状態での離陸および着陸は、風揚力パフォーマンスを低下させ、翼幅を短くすることによって不安定な風状態による運航体の突風応答を低下させる。風揚力は、ホバリング飛行中ではなく、前方飛行にのみ必要とされるため、地上から離れて十分な高度が達成されるまで翼を広げるのを待機することが可能である。地上で翼を広げることを回避することは、地上における利用可能な離陸および着陸スペースならびに風状態が好ましくない場合の一部の運航において有利である。電気機械アクチュエータは、前方飛行を始める前に翼を広げる作動力をもたらす。
【0032】
1つの実施形態では、制御表面は、前部翼折り畳み部301および後部翼折り畳み部302の内側部分に位置して、折り畳みヒンジ機構の外側に必要とされる制御線を有さずに折り畳むことを可能にし、可動部分をより少なくすることによってより小さい機械的複雑性をもたらす。制御表面は、前方飛行中のピッチ、ロールおよび偏揺れの制御を空気力学的にもたらし、それにより、垂直揚力ロータは、低速のまたはゼロの前進速度以外の制御には必要とされない。より大きい前方飛行制御応答性を必要とする他の実施形態はまた、翼折り畳み機構の外側にも制御表面を有する。他の実施形態は、翼の外側セクション上にのみ制御表面を有する。
【0033】
着陸ギア202、204にはホイールが設けられ、航空機が地上にいる間移動することを可能にする。1つの前方204着陸ギアおよび2つの後部202主要着陸ギアは、前部翼上に抗力の低下および揚力干渉の減少をもたらす。他の実施形態では、着陸ギアはスキッドであり、ホイールを有さないが、これは、航空機が前方移動無しで離陸および着陸することができるためである。代替的実施形態は、2つの前方着陸ギアおよび1つの後部主要着陸ギアを含み前部着陸ギアが地上における安定性のために大きく分離されることを可能にする。一部の実施形態では、ホイールの一部またはすべてには、ホイールを駆動することを可能にする電気モータが嵌合される。そのようなモータは、地上にいる間、運航体を自己推進させることを可能にする。
【0034】
上記で詳細に説明された実施形態に加えて、当業者は、本発明が他の実施形態でもさらに実施され得ることを理解するであろう。たとえば、代替的実施形態では、航空機100は、2人またはそれ以上の乗員を収容するように設計される。そのような実施形態では、翼幅はより大きく、ロータはより大きい直径を有し、胴体107はより幅広である。代替的実施形態では、航空機100は、パイロットまたは乗客を有さずに飛行することができる無人運航体である。乗客を有さない実施形態は、地上リンクによってまたは所定の飛行路軌道を通じて、パイロットの代わりに指令用制御入力をもたらす追加の制御システムを有する。
【0035】
本説明は、特有の実施形態の文脈で提供されてきたが、当業者は、数多くの代替的実施形態が、提供された教示から推測されてよいことを理解するであろう。さらには、この記述された説明においては、構成要素の特定の名前付け、用語の大文字化、その属性、データ構造、または任意の他の構造的またはプログラミング態様は、別途指摘されない限り必須ではなく、または重要ではなく、説明された本発明またはその特徴を実施する機構は、さまざまな名前、書式、またはプロトコルを有することができる。さらに、飛行コンピュータ500の構成要素を含むシステムの一部の態様は、ハードウエアおよびソフトウエアの組み合わせによってまたはハードウエア要素において全面的に実施されてよい。また、本明細書で説明されたさまざまなシステム構成要素間の機能性の特定の分割は必須ではなく、単一モジュールまたはシステム構成要素によって実行される機能は、その代わりに複数の構成要素によって実行されてよく、複数の構成要素によって実行される機能は、その代わりに単一構成要素によって実行されてよい。同様に、方法ステップが実行される順序は、別途指摘されない限り、または論理的に必要でない限り必須ではない。
【0036】
別途指示されない限り、「選択する」または「算出する」または「決定する」などの用語を利用する論議は、コンピュータシステム、またはコンピュータシステムメモリもしくはレジスタまたは他のそのような情報記憶装置内の物理的(電子)量として表されたデータを操作し、変換する類似の電子算出装置、送信装置または表示装置の動作および処理を示す。
【0037】
説明された実施形態の電子構成要素は、必要とされる目的に合わせて特別に構築されてよく、または1または複数の汎用目的コンピュータであって、コンピュータ内に記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に動作化されまたは再構成される、コンピュータを備えてよい。そのようなコンピュータプログラムは、それだけに限定されないが、フロッピー(登録商標)ディスク、光学ディスク、DVD、CD−ROM、磁気光学ディスクを含む任意のタイプのディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気または光学カード、アプリケーション固有内蔵回路(ASIC)、または電子指示を記憶するのに適し、各々がコンピュータシステムバスに結合された任意のタイプの媒体などのコンピュータ可読記憶媒体内に記憶されてよい。
【0038】
最後に、本明細書で使用される言語は、基本的には、読みやすさおよび指示目的で選択されており、本発明の主題を正確に記述するまたは制限するように選択され得ないことに留意されたい。したがって本開示は、本発明の範囲を限定せずに例示的になるよう意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6