特許第5676828号(P5676828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5676828
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20150205BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20150205BHJP
   F01P 5/06 20060101ALI20150205BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   B60K11/04 F
   B60K11/04 E
   F01P11/10 B
   F01P5/06 510Z
   E02F9/00 M
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-534290(P2014-534290)
(86)(22)【出願日】2014年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2014059425
【審査請求日】2014年7月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】矢部 充男
(72)【発明者】
【氏名】大澤 昭浩
(72)【発明者】
【氏名】新谷 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】松木 照幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 良明
(72)【発明者】
【氏名】山越 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】多造 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】北岡 博之
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−283801(JP,A)
【文献】 特開昭60−079155(JP,A)
【文献】 特開2004−169518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
E02F 9/00
F01P 5/06
F01P 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームと、
前記エンジンルームの後方であって、車両後部に設けられた冷却室と、
前記冷却室に収容されたラジエータと、
前記エンジンルームと前記冷却室とを仕切る隔壁と、
前記冷却室に収容され、前記ラジエータの後方に配置され、前記冷却室内から車両後方に排気する冷却ファンと、
前記エンジンルーム内に位置する第1端部、及び前記冷却室内において前記ラジエータの前方且つ前記冷却室の上端部に位置する第2端部を有する第1ダクト本体部と、
前記隔壁の後方且つ前記ラジエータの前方であって上面に形成された外気吸入口を有し、前記エンジンルームと前記冷却室を画定する車体カバーと、
を備えた、作業車両。
【請求項2】
前記隔壁は、上端に切欠部を有し、
前記第2端部は、前記切欠部に設けられる、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記第2端部は、背面視において、前記ラジエータと対向しない位置に配置される、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記エンジンルーム内に位置する第3端部、及び前記冷却室内において前記ラジエータ及び前記冷却ファンの前方に位置する第4端部、を有する第2ダクト本体部、
をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項5】
前記第4端部は、背面視において、前記ラジエータと対向しない位置に配置される、
請求項に記載の作業車両。
【請求項6】
前記第2端部は、前記冷却室の上端部、且つ車幅方向の中心に対して第1側方に位置し、
前記第4端部は、前記冷却室の上端部、且つ車幅方向の中心に対して第2側方に位置する、
請求項又はに記載の作業車両。
【請求項7】
前記第2端部は、前記冷却室の上端部且つ第1側端部に位置し、
前記第4端部は、前記冷却室の上端部且つ第2側端部に位置する、
請求項からのいずれかに記載の作業車両。
【請求項8】
前記車体カバーは、前記エンジンルームの上面を画定する天板を有し、
前記外気吸入口は、前記天板に形成される、
請求項1からのいずれかに記載の作業車両。
【請求項9】
前記エンジンルーム内に配置される第1冷却対象部材と、
前記第1ダクト本体部の第1端部から前記第1冷却対象部材に向かって延びる第1吸入部と、
をさらに備える、請求項1からのいずれかに記載の作業車両。
【請求項10】
前記第1吸入部は、前記第1ダクト本体部の第1端部に取り外し可能に取り付けられる、
請求項に記載の作業車両。
【請求項11】
前記エンジンルーム内に配置される第2冷却対象部材と、
前記第1ダクト本体部の第1端部から前記第2冷却対象部材に向かって延びる第2吸入部と、
をさらに備える、請求項又は10に記載の作業車両。
【請求項12】
前記第1ダクト本体部における流路面積は、前記第1吸入部の流路面積よりも大きく、第2吸入部の流路面積よりも大きい、
請求項11に記載の作業車両。
【請求項13】
前記第1ダクト本体部の第2端部は、下方に開口する、
請求項1から12のいずれかに記載に作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業車両は、エンジンルームを備えている。このエンジンルーム内には、エンジンが収容されている。また、エンジン以外の各種装置がエンジンルーム内に収容されることもある。例えば、特許文献1に開示された作業車両は、エンジンからの排出ガスを処理するための排出ガス後処理装置がエンジンルーム内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−025254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンルーム内に収容されたエンジン、又は各種装置が作動時において発熱すると、エンジンルーム内の温度が上昇してしまうという問題が生じるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、エンジンルーム内の温度が過度に上昇することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係る作業車両は、エンジンルームと、冷却室と、ラジエータと、冷却ファンと、隔壁と、第1ダクト本体部と、車体カバーとを備える。ラジエータは、冷却室に収容されている。冷却ファンは、冷却室に収容され、冷却室内から後方に排気する。隔壁は、エンジンルームと冷却室とを仕切る。第1ダクト本体部は、第1端部と第2端部とを有する。第1端部は、エンジンルーム内に位置する。第2端部は、冷却室内においてラジエータ及び冷却ファンの前方に位置する。車体カバーは、冷却室を画定する。車体カバーは、外気吸入口を有する。外気吸入口は、ラジエータ及び冷却ファンの前方に形成されている。
【0007】
この構成によれば、第1ダクト本体部の第2端部は、冷却室に位置している。この冷却室は、冷却ファンが作動すると負圧になる空間である。このため、第1ダクト本体部は、第1端部から空気を吸引し、第2端部から空気を排出する。この結果、エンジンルーム内の熱気を冷却室へと排出して、エンジンルーム内の温度が過度に上昇することを抑制することができる。なお、エンジンルーム内の熱気を冷却室へと排出することによってエンジンルーム内が負圧となるため、エンジンルーム内に外気が流れ込み、エンジンルーム内を冷却することができる。
【0008】
また、第2端部及び外気吸入口は、ラジエータ及び冷却ファンの前方に位置している。このため、第2端部から排出された熱気は、外気吸入口から冷却室内に吸入された外気と混ざった状態で、ラジエータへと流れる。すなわち、第2端部から排出された熱気のみが直接的にラジエータへと流れることを抑制できる。このため、ラジエータにおける冷却効率が第2端部からの熱気によって低下することを抑制することができる。
【0009】
好ましくは、第2端部は、背面視において、ラジエータと対向しない位置に配置される。この構成によれば、第1ダクト本体部の第2端部から排出された熱気が、ラジエータに直接的に流れることを抑制することができる。この結果、ラジエータにおける冷却効率が第2端部からの熱気によって低下することを、より抑制することができる。
【0010】
好ましくは、作業車両は、第2ダクト本体部をさらに備える。第2ダクト本体部は、第3端部と第4端部とを有する。第3端部は、エンジンルーム内に位置する。第4端部は、冷却室内においてラジエータ及び冷却ファンの前方に位置する。この構成によれば、第1ダクト本体部だけではなく、第2ダクト本体部によっても、エンジンルーム内の熱気を冷却室へ排出することができる。このため、エンジンルーム内の温度が過度に上昇することをより抑制することができる。
【0011】
好ましくは、第4端部は、背面視において、ラジエータと対向しない位置に配置される。この構成によれば、第2ダクト本体部の第4端部から排出された熱気が、ラジエータに直接的に流れることを抑制することができる。この結果、ラジエータにおける冷却効率が第4端部からの熱気によって低下することを、より抑制することができる。
【0012】
好ましくは、第2端部は、冷却室の上端部に位置している。また、第2端部は、車幅方向の中心に対して第1側方に位置している。第4端部は、冷却室の上端部に位置している。また、第4端部は、車幅方向の中心に対して第2側方に位置する。この構成によれば、第2端部及び第4端部をラジエータの中心部から離すことができる。この結果、第2及び第4端部から排出された熱気は、外気吸入口から冷却室内に吸入された外気と十分に混ざった状態で、ラジエータの中心部へと流れる。
【0013】
好ましくは、第2端部は、冷却室の上端部且つ第1側端部に位置する。そして、第4端部は、冷却室の上端部且つ第2側端部に位置する。
【0014】
好ましくは、車体カバーは、エンジンルームの上面を画定する天板を有する。外気吸入口は、天板に形成される。
【0015】
好ましくは、作業車両は、第1冷却対象部材と、第1吸入部とをさらに備える。第1冷却対象部材は、エンジンルーム内に配置される。第1吸入部は、第1ダクト本体部の第1端部から第1冷却対象部材に向かって延びる。
【0016】
好ましくは、第1吸入部は、第1ダクト本体部の第1端部に取り外し可能に取り付けられる。この構成によれば、第1ダクト本体部を取り外す際に、第1吸入部をエンジンルーム内に残しておくことができる。このため、第1吸入部をエンジンルーム内の入り組んだ空間内に配置することができる。この結果、第1冷却対象部材が入り組んだ空間に配置されている場合であっても、第1吸入部を第1冷却対象部材の近傍まで延ばして第1冷却対象部材を冷却することができる。
【0017】
好ましくは、作業車両は、第2冷却対象部材と、第2吸入部とをさらに備える。第2冷却対象部材は、エンジンルーム内に配置される。第2吸入部は、第1ダクト本体部の第1端部から第2冷却対象部材に向かって延びる。この構成によれば、第1冷却対象部材と第2冷却対象部材とが互いに離れて配置されている場合であっても、両方を冷却することができる。
【0018】
好ましくは、第1ダクト本体部における流路面積は、第1の流路面積よりも大きく、第2吸入部の流路面積よりも大きい。
【0019】
好ましくは、第1ダクト本体部の第2端部は、下方に開口する。この構成によれば、雨水が冷却室内に浸入した場合であって、その雨水が第1ダクト本体部を介してエンジンルームへと浸入することを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エンジンルーム内の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ホイールローダの斜視図。
図2】後部車体の側面断面図。
図3】排出ガス後処理装置の斜視図。
図4】天板を裏側から見た斜視図。
図5】天板の側面図。
図6】後部車体の斜視図。
図7】第2端部及び第4端部とラジエータとの位置関係を示す概略図。
図8】エンジンルームの内部を示す斜視図。
図9】変形例4に係る後部車体の側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る作業車両の一例であるホイールローダの実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、左後方から見たホイールローダ100の外観斜視図である。なお、以下の説明において、「右」、「左」、「上」、及び「下」は、運転室から前方を見た状態を基準とした方向を示す。「車幅方向」は「左右方向」と同義である。また、「前後方向」は、車体の前後方向を意味する。
【0023】
図1に示すように、ホイールローダ100は、作業機110、車体120、前輪130、及び後輪140を有する。このホイールローダ100は、前輪130及び後輪140が回転駆動されることにより自走可能であり、作業機110を用いて所望の作業を行う。
【0024】
作業機110は、油圧ポンプによって加圧された作動油によって駆動される機構であり、車体120の前方に配置される。作業機110は、バケット111、ブーム(図示省略)、リフトシリンダ(図示省略)、及びバケットシリンダ112を有する。バケット111は、ブームの先端に取り付けられる。ブームは、バケット111を持ち上げるための部材であり、後述する前部車体120aの前部に装着される。リフトシリンダは、作業機用ポンプから吐出される圧油によってブームを駆動する。バケットシリンダ112は、作業機用ポンプから吐出される圧油によってバケット111を駆動する。
【0025】
車体120は、前部車体120a及び後部車体120bを有する。前部車体120aと後部車体120bとは互いに左右方向に揺動可能に連結される。前部車体120aには作業機110及び前輪130が設けられ、後部車体120bには後輪140が設けられる。
【0026】
後部車体120bは、車体フレーム150、キャブ160、作動油タンク170、エンジンルーム2、冷却室3、及び冷却ファン5(図2参照)を有する。車体フレーム150は、後部車体120bを主に構成するフレームであり、後輪140、キャブ160、作動油タンク170、及びエンジン11などを支持する。
【0027】
キャブ160は、内部に運転室が設けられるとともに、各種の操作部材及び操作盤が設けられる。キャブ160の後方には、作動油タンク170が配置され、作動油タンク170の下方には複数の油圧ポンプ(図示省略)が配置される。作動油タンク170内には作業機110などを駆動するための作動油が貯留され、油圧ポンプによって作動油を作業機110などに供給する。
【0028】
図2は、左側から見た後部車体120bの側面断面図である。図2に示すように、エンジンルーム2は、作動油タンク170の後方に配置され、車体カバー8によって画定されている。
【0029】
図1に示すように、車体カバー8は、天板81と、第1側板82と、第2側板83(図2参照)とを有している。天板81は、エンジンルーム2の上面を画定している。第1および第2側板82、83は、エンジンルーム2の側面を画定している。詳細には、第1側板82はエンジンルーム2の左側面を画定しており、第2側板83はエンジンルーム2の右側面を画定している。
【0030】
図2に示すように、エンジンルーム2内には、エンジン11及び排出ガス後処理装置12などが収容されている。エンジン11は、エンジンルーム2の下部に配置され、クランク軸が前後方向に延びる、いわゆる縦置きエンジンである。
【0031】
排出ガス後処理装置12は、エンジンルーム2の上部に配置される。すなわち、排出ガス後処理装置12は、エンジン11の上方に配置される。図3は、左後方から見た排出ガス後処理装置12の斜視図である。図3に示すように、排出ガス後処理装置12は、排出ガスが流れる順に、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121、接続管122、及び選択触媒還元装置123を備える。接続管122に、尿素水噴射装置13が取り付けられる。
【0032】
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121は、配管124を介してエンジン11と接続されている。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121は、エンジン11から排出される排出ガスを処理する装置である。具体的には、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121は、エンジン11から排出される排出ガス中の煤等の粒子状物質をフィルタによって捕集する装置である。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121は、捕集した粒子状物質をフィルタに付設されるヒータによって焼却する。なお、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121は、車体フレーム150に取り付けられる支持部材151によって支持される。
【0033】
接続管122は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121と選択触媒還元装置123とを接続する管である。接続管122は、全体としてS字状に形成され、第1屈曲部125、直線部126、及び第2屈曲部127を有する。第1屈曲部125は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121の排出ガス導出口128と接続する。第2屈曲部127は、選択触媒還元装置123の排出ガス導入口129と接続する。直線部126は、第1屈曲部125と第2屈曲部127との間を延びる。
【0034】
第1屈曲部125に、尿素水噴射装置13が取り付けられる。尿素水噴射装置13は、尿素水溶液を接続管122内に噴射する装置である。この尿素水溶液は、尿素水溶液タンク(図示省略)からポンプ(図示省略)によって吸い上げられて、配管(図示省略)を介して尿素水噴射装置13に供給される。接続管122内に噴射された尿素水溶液は、排出ガスの熱で加水分解されてアンモニアとなる。このアンモニアは排出ガスとともに接続管122を介して選択触媒還元装置123に供給される。
【0035】
選択触媒還元装置123は、上述したアンモニアを還元剤として使用し、排出ガス中の窒素酸化物を還元浄化する装置である。選択触媒還元装置123は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121と同様に、支持部材151によって支持されている。
【0036】
ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121及び選択触媒還元装置123は、それぞれ並列に配置される。具体的には、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121及び選択触媒還元装置123は、共に実質的に円筒形状である。ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121及び選択触媒還元装置123は、中心軸が車幅方向に互いに概ね平行に延びるように配置される。また、接続管122の直線部126も、実質的に円筒形状であり、中心軸が車幅方向に延びる。すなわち、接続管122の直線部126の中心軸は、ディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121及び選択触媒還元装置123の中心軸と概ね平行に配置される。
【0037】
図2に示すように、冷却室3は、エンジンルーム2の後方に配置されている。エンジンルーム2と冷却室3とは、隔壁6によって仕切られている。冷却室3は、エンジンルーム2と同様に、車体カバー8によって画定されている。詳細には、冷却室3の上面は天板81によって画定され、冷却室3の側面は第1及び第2側板82,83によって画定される。
【0038】
詳細には、天板81の前部はエンジンルーム2の上面を画定し、天板81の後部は冷却室3の上面を画定する。また、第1及び第2側板82,83の前部はエンジンルーム2の側面を画定し、第1及び第2側板82,83の後部は冷却室3の側面を画定する。
【0039】
冷却室3内にはラジエータ4及び冷却ファン5が収容される。ラジエータ4は、エンジン11の冷却水を冷却する。冷却ファン5は、冷却室3内の空気を冷却室3の外部へと排出する。詳細には、冷却ファン5は、冷却室3内の空気を、グリル31を介して冷却室3の外部に排出するように回転する。すなわち、冷却ファン5は、冷却室3内の空気を後方に排出するように回転する。すなわち、冷却ファン5は、後方に向かう気流を生成する。冷却ファン5は、ラジエータ4の後方に配置されている。グリル31は、冷却室3の後面を画定している。
【0040】
図4は天板81の裏側を示す斜視図、図5は天板81の側面図である。図4及び図5に示すように、天板81は、取り外し可能な部材である。詳細には、天板81は、車体フレーム150に取り外し可能に支持されている。特に限定されるものではないが、天板81は、ボルトなどの締結部材によって車体フレーム150に取り付けられる。天板81の前部はエンジンルーム2の上面を画定し、天板81の後部は冷却室3の上面を画定する。
【0041】
天板81の前部は、上方に突出するように形成されている。天板81の後部には、第1外気吸入口84が形成されている。第1外気吸入口84は、外気を冷却室3内に吸入するための開口部である。冷却室3は、第1外気吸入口84を介して外部と連通している。
【0042】
天板81を車体フレーム150に取り付けた状態では、第1外気吸入口84は、前後方向において、ラジエータ4及び冷却ファン5の前方に位置している。また、天板81を車体フレーム150に取り付けた状態において、第1外気吸入口84は、冷却室3の上面に位置し、冷却室3と外部とを連通する。前後方向において、第1外気吸入口84の前端は隔壁6の後方に位置し、第1外気吸入口84の後端はラジエータ4の前方に位置している。なお、第1外気吸入口84は、複数の貫通孔によって構成されている。また、第1外気吸入口84は、平面視が略矩形状である。
【0043】
図6は、天板81を取り外した状態の後部車体を示す斜視図である。図6に示すように、車体カバー8の一部である第1側板82には、第2外気吸入口87が形成されている。第2外気吸入口87は、外気を冷却室3内に吸入するための開口部である。冷却室3は、第2外気吸入口87を介して外部と連通している。
【0044】
第2外気吸入口87は、前後方向において、ラジエータ4及び冷却ファン5の前方に位置している。詳細には、第2外気吸入口87の少なくとも一部がラジエータ4の前方に位置している。第2外気吸入口87は、冷却室3の左側面(第1側面の一例)に位置し、冷却室3と外部とを連通する。第2外気吸入口87は、複数の貫通孔によって構成されている。なお、冷却室3の右側面(第2側面の一例)を画定する第2側板83には第3外気吸入口89(図2参照)が形成されている。この第3外気吸入口89は、第2外気吸入口87と同じ構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0045】
図5に示すように、天板81は、天板本体部85と、複数の脚部86とを有している。天板本体部85は、エンジンルーム2及び冷却室3の上面を画定する部分である。各脚部86は、天板本体部85の側縁部から下方に延びる部分である。後述する第1ダクト本体部7の下端は、各脚部86の下端よりも上方に位置する。このため、天板81を取り外して地面に置いた場合、各脚部86が地面と接触し、第1ダクト本体部7は、地面と接触しない。なお、第2ダクト本体部9の下端も、各脚部86の下端よりも上方に位置する。このため、天板81を取り外して地面に置いた場合、各脚部86が地面と接触し、第2ダクト本体部9は、地面と接触しない。
【0046】
図6に示すように、ホイールローダ100は、第1及び第2ダクト本体部7、9をさらに備えている。第1及び第2ダクト本体部7,9は、エンジンルーム2と冷却室3とに亘って延びている。すなわち、第1及び第2ダクト本体部7,9は、隔壁6を貫通して延びている。
【0047】
第1ダクト本体部7は、第1及び第2端部71,72を有している。第1ダクト本体部7の第1端部71は、エンジンルーム2内に位置している。第1ダクト本体部7の第2端部72は、冷却室3内に位置している。また、第2端部72は、前後方向において、ラジエータ4及び冷却ファン5の前方に位置している。詳細には、第2端部72は、隔壁6の近傍に位置している。
【0048】
図7に示すように、第2端部72は、背面視において、ラジエータ4と対向しない位置に配置される。具体的には、第2端部72は、冷却室3内において、上端部に位置するとともに、車幅方向中心よりも左側(第1側方)に位置している。より詳細には、第2端部72は、冷却室3内において、上端部且つ左側端部(第1側端部の一例)に位置している。すなわち、第2端部72は、第1外気吸入口84及び第2外気吸入口87の近傍に位置する。なお、図7は、背面視におけるラジエータ4と各ダクト本体部との位置関係を示す概略図である。
【0049】
図4に示すように、第1ダクト本体部7は、天板81に取り付けられている。詳細には、第1ダクト本体部7は、取付金具又は溶接などの固定手段によって、天板81に取り付けられている。天板81を車体フレーム150から取り外すことによって、第1ダクト本体部7は天板81と一体的に取り外される。
【0050】
詳細には、第1ダクト本体部7の後端部は、梁部88によって支持されている。なお、梁部88は、天板本体部85に固定されている。梁部88は、車幅方向に延びており、詳細には、天板本体部85の左側端部(第1側端部の一例)から右側端部(第2側端部の一例)まで延びている。
【0051】
梁部88は、前後方向に貫通する第1及び第2貫通孔881,882を有している。なお、第1貫通孔881は左側端部に形成されており、第2貫通孔882は右側端部に形成されている。第1ダクト本体部7は、第1貫通孔881を貫通することによって梁部88に支持されている。第1ダクト本体部7の左側面の一部は、天板81の内側面と溶接されている。
【0052】
第1ダクト本体部7は、エンジンルーム2内において、左側端部(第1側端部の一例)に配置される。第1ダクト本体部7は、長手方向と垂直な断面が矩形状である。第1ダクト本体部7は、実質的に前後方向に延びている。また、第1ダクト本体部7は、前方に行くにつれて、車幅方向の中央に近付いている。
【0053】
図8は、後方から見たエンジンルーム2の内部を示す斜視図である。図8に示すように、第1ダクト本体部7の第1端部71には、第1吸入部74と、第2吸入部75とが接続されている。
【0054】
第1吸入部74は、第1ダクト本体部7の第1端部71から第1冷却対象部材21に向かって延びる。すなわち、第1吸入部74は、第1冷却対象部材21の周辺の空気を吸い込むように配置されている。第1冷却対象部材21は、エンジンルーム2内に配置されている。なお、本実施形態において、第1冷却対象部材21は、NOxセンサを含む。NOxセンサは、選択触媒還元装置123内におけるNOx濃度を測定する。
【0055】
第1吸入部74は、第1ダクト本体部7の第1端部71に取り外し可能に取り付けられている。詳細には、第1吸入部74は、可撓性の配管76を介して第1ダクト本体部7の第1端部71に取り付けられている。バンド部材77を取り外すことによって、配管76と第1吸入部74とを取り外すことができる。第1吸入部74は、取付金具などによって、エンジンルーム2内に固定されている。
【0056】
第1吸入部74は、略L字状である。すなわち、第1吸入部74は、下方に延びる第1部741と、車幅方向に延びる第2部742とを有している。第1部741は、第1ダクト本体部7の第1端部71から下方に延びている。第2部742は、第1部741の下端部から右側(第2側の一例)に向かって延びている。第2部742の先端部から、第1冷却対象部材21の周辺の空気を吸い込む。
【0057】
第2吸入部75は、第1ダクト本体部7の第1端部71から第2冷却対象部材22に向かって延びている。すなわち、第2吸入部75は、第2冷却対象部材22の周辺の空気を吸い込むように配置されている。第2吸入部75は、第1ダクト本体部7の第1端部71から右側(第2側の一例)に向かって延びている。第2吸入部75は、取付金具などによって、天板81に固定されている。このため、第2吸入部75は、天板81と一体的に取り外される。
【0058】
第2冷却対象部材22は、エンジンルーム2内に配置されている。本実施形態において、第2冷却対象部材22は、温度センサを含む。この温度センサは、選択触媒還元装置123の温度を測定する。第1ダクト本体部7における流路面積は、第1吸入部74の流路面積よりも大きく、また、第2吸入部75の流路面積よりも大きい。
【0059】
図6に示すように、第2ダクト本体部9は、第3及び第4端部91、92を有している。第3端部91は、エンジンルーム2内に位置している。第4端部92は、冷却室3内に位置している。第4端部92は、前後方向において、ラジエータ4及び冷却ファン5の前方に位置している。
【0060】
図7に示すように、第4端部92は、背面視において、ラジエータ4と対向しない位置に配置されている。具体的には、第4端部92は、冷却室3内において、上端部に位置するとともに、車幅方向中心よりも右側(第2側方)に位置している。より詳細には、第4端部92は、冷却室3内において、上端部且つ右側端部(第2側端部の一例)に位置している。すなわち、第4端部92は、第1外気吸入口84及び第3外気吸入口89の近傍に位置する。
【0061】
図4に示すように、第2ダクト本体部9は、天板81に取り付けられている。詳細には、第2ダクト本体部9は、取付金具又は溶接などの固定手段によって、天板81に取り付けられている。天板81を車体フレーム150から取り外すことで、第2ダクト本体部9は天板81と一体的に取り外される。
【0062】
詳細には、第2ダクト本体部9の後端部が、梁部88によって支持されている。第2ダクト本体部9は、第2貫通孔882を貫通することによって梁部88に支持されている。第2ダクト本体部9の右側面の一部は、天板81の内側面と溶接されている。
【0063】
第2ダクト本体部9は、エンジンルーム2内において、右側端部(第2側端部の一例)に配置される。第2ダクト本体部9は、長手方向と垂直な断面が矩形状である。第2ダクト本体部9は、実質的に前後方向に延びている。第2ダクト本体部9の第3端部91は、尿素水噴射装置13に向かって開口する。すなわち、第2ダクト本体部9は、主に天板81に沿って延びており、第3端部91側の一部が前方且つ下方を向くように構成されている。
【0064】
図6に示すように、隔壁6は、ダクト本体部7,9を通すための切り欠き部61,62が上端部に形成されている。詳細には、隔壁6の上端部に、第1及び第2切り欠き部61、62が形成されている。
【0065】
第1切り欠き部61は、隔壁6の上端部且つ左側端部(第1側端部の一例)に形成されている。そして、第1ダクト本体部7が、第1切り欠き部61を介して、エンジンルーム2と冷却室3とに亘って延びる。
【0066】
第2切り欠き部62は、隔壁6の上端部且つ右側端部(第2側端部の一例)に形成されている。そして、第2ダクト本体部9が、第2切り欠き部62を介して、エンジンルーム2と冷却室3とに亘って延びる。
【0067】
[特徴]
本実施形態に係るホイールローダ100は、次の特徴を有する。
【0068】
第1ダクト本体部7の第2端部72は、冷却室3内に位置している。この冷却室3は、冷却ファン5が作動すると負圧になる空間である。このため、第1ダクト本体部7は、第1端部71から空気を吸引し、第2端部72から空気を排出する。この結果、エンジンルーム2内の熱気を冷却室3へと排出して、エンジンルーム2内の温度が過度に上昇することを抑制することができる。なお、エンジンルーム2内の熱気を冷却室3へと排出することによってエンジンルーム2内が負圧となるため、エンジンルーム2内に外気が流れ込み、エンジンルーム2内を冷却することができる。なお、天板81の前部には、エンジンルーム2内に外気を取り入れるための吸入口811が形成されている。
【0069】
また、第2端部72、第1外気吸入口84、第2外気吸入口87、及び第3外気吸入口89は、前後方向において、ラジエータ4及び冷却ファン5の前方に位置している。このため、第2端部72から冷却室3内に排出された熱気は、第1、第2、及び第3外気吸入口84,87、89から冷却室3内に吸入された外気と混ざった状態で、ラジエータ4へと流れる。すなわち、第2端部72から排出された熱気のみが直接的にラジエータ4へと流れることを抑制できる。このため、ラジエータ4における冷却効率が第2端部72からの熱気によって低下することを抑制することができる。
【0070】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0071】
変形例1
上記実施形態では、第1及び第2ダクト本体部7,9は天板81に取り付けられているが、特にこれに限定されない。すなわち、第1及び第2ダクト本体部7、9は、天板81から独立しており、天板81と一体的に取り外される構成でなくてもよい。
【0072】
変形例2
上記実施形態では、第1外気吸入口84の全体がラジエータ4及び冷却ファン5の前方に位置しているが、特にこれに限定されない。例えば、前後方向において、第1外気吸入口84の少なくとも一部がラジエータ4及び冷却ファン5の前方に位置していれば、第1外気吸入口84の後端部がラジエータ4の後方に位置していてもよい。
【0073】
変形例3
上記実施形態では、2本のダクト本体部7,9が設置されているが、特にこれに限定されない。すなわち、第1及び第2ダクト本体部7,9のどちらか一方のみを設置してもよい。
【0074】
変形例4
図9に示すように、第1ダクト本体部7の第2端部72は、下方に開口するように構成されていてもよい。この構成によれば、冷却室3内に入り込んだ雨水などが第1ダクト本体部7を介してエンジンルーム2内に入り込むことを防ぐことができる。なお、第1ダクト本体部7の第1端部71は、エンジンルーム2内において隔壁6の近傍に位置している。また、第1ダクト本体部7は、隔壁6を貫通している。
【0075】
変形例5
上記実施形態では、3つの外気吸入口84、87、89が形成されていたが、外気吸入口の数は特に限定されない。例えば、第1、第2、及び第3外気吸入口84,87、89のいずれか1つだけが形成されていてもよい。
【0076】
変形例6
上記実施形態におけるディーゼル微粒子捕集フィルタ装置121の代わりに、ディーゼル用酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst: DOC)を用いてもよい。
【0077】
変形例7
上記実施形態では、本発明を適用したホイールローダ100を説明したが、本発明は、モータグレーダなどの他の作業車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
2 エンジンルーム
3 冷却室
4 ラジエータ
5 冷却ファン
6 隔壁
7 第1ダクト本体部
71 第1端部
72 第2端部
8 車体カバー
81 天板
84 第1外気吸入口
87 第2外気吸入口
【要約】
ホイールローダ(100)は、エンジンルーム(2)と、冷却室(3)と、ラジエータ(4)と、冷却ファン(5)と、隔壁(6)と、第1ダクト本体部(7)と、天板(81)とを備える。第1ダクト本体部(7)の第1端部(71)は、エンジンルーム(2)内に位置する。第1ダクト本体部(7)の第2端部(72)は、冷却室(3)内においてラジエータ(4)及び冷却ファン(5)の前方に位置する。天板(81)に形成された第1外気吸入口(84)は、ラジエータ(4)及び冷却ファン(5)の前方に形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9