特許第5676847号(P5676847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝燃料電池システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5676847-燃料電池電源装置 図000002
  • 特許5676847-燃料電池電源装置 図000003
  • 特許5676847-燃料電池電源装置 図000004
  • 特許5676847-燃料電池電源装置 図000005
  • 特許5676847-燃料電池電源装置 図000006
  • 特許5676847-燃料電池電源装置 図000007
  • 特許5676847-燃料電池電源装置 図000008
  • 特許5676847-燃料電池電源装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676847
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】燃料電池電源装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20060101AFI20150205BHJP
   H01M 8/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   H01M8/04 P
   H01M8/04 Z
   H01M8/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2008-324604(P2008-324604)
(22)【出願日】2008年12月19日
(65)【公開番号】特開2010-146922(P2010-146922A)
(43)【公開日】2010年7月1日
【審査請求日】2011年2月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】301060299
【氏名又は名称】東芝燃料電池システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 正徳
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋三
【審査官】 八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−141073(JP,A)
【文献】 特開2001−231176(JP,A)
【文献】 特開2004−178883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00−8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により直流電力を発生する燃料電池と、
前記直流電力の電圧を調節する直流−直流変換器と、
前記直流電力を蓄える直流蓄電装置と、
前記直流電力を直流又は交流電力へ変換して負荷に供給する電力変換装置と、
燃料電池の発電に必要な補機へ電力を供給する補機電力供給装置と、
前記直流−直流変換器、前記直流蓄電装置、前記電力変換装置及び前記補機電力供給装置に接続する直流母線と、
前記負荷の消費電力に応じて前記直流−直流変換器の直流電力の出力設定値を変更する制御装置と、
前記直流蓄電装置の充放電電流を計測する充放電電流計測器と、
前記直流母線の電圧を計測する電圧計測器と、を備え、
前記制御装置は、
前記負荷の平均消費電力量が所定範囲内の場合において、前記負荷と前記補機との合計消費電力量が、当該燃料電池が所定の発電効率を得られる出力電力量より小さい場合は、前記出力設定値を前記燃料電池が所定の発電効率を得られる出力電力量以上の値にまで増やし、その値を新たな出力設定値とし、
前記負荷の平均消費電力量が、前記所定範囲の下限値を下回る場合において、前記直流母線の電圧または前記直流蓄電装置の充電電流の少なくとも一方が、それぞれの上限値を逸脱する場合に、前記直流母線の電圧と前記直流蓄電装置の充電電流の両方がそれぞれの上限値を下回るように前記直流−直流変換器の出力設定値を低下させること、
を特徴とする燃料電池電源装置。
【請求項2】
記負荷の平均消費電力量が、前記所定範囲の上限値を上回る場合において、
前記直流母線の電圧がその下限値を逸脱するか、または前記直流蓄電装置の放電電流がその上限値を逸脱する場合に、
前記制御装置は、前記直流母線の電圧がその下限値以上となると共に、前記直流蓄電装置の放電電流がその上限値以下となるように、前記直流−直流変換器の出力設定値を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池電源装置。
【請求項3】
燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により直流電力を発生する燃料電池と、
前記直流電力の電圧を調節する直流−直流変換器と、
前記直流電力を蓄える直流蓄電装置と、
前記直流電力を直流又は交流電力へ変換して負荷に供給する電力変換装置と、
燃料電池の発電に必要な補機へ電力を供給する補機電力供給装置と、
前記直流−直流変換器、前記直流蓄電装置、前記電力変換装置及び前記補機電力供給装置に接続する直流母線と、
前記負荷の消費電力に応じて前記直流−直流変換器の直流電力の出力設定値を変更する制御装置と、
前記直流蓄電装置の充放電電力を計測する充放電電力計測器と、
前記直流母線の電圧を計測する電圧計測器と、を備え、
前記制御装置は、
前記負荷の平均消費電力量が所定範囲内の場合において、前記負荷と前記補機との合計消費電力量が、当該燃料電池が所定の発電効率を得られる出力電力量より小さい場合は、前記出力設定値を前記燃料電池が所定の発電効率を得られる出力電力量以上の値にまで増やし、その値を新たな出力設定値とし、
前記負荷の平均消費電力量が、前記所定範囲の下限値以下の場合において、前記直流蓄電装置の充電電力の積算値がその上限値を逸脱する場合に、前記出力設定値を、前記充電電力の積算値から算出される余剰電力分を差し引いた新たな出力設定値へ変更すること、
を特徴とする燃料電池電源装置。
【請求項4】
記負荷の平均消費電力量が、前記所定範囲の上限値以上の場合において、
前記直流蓄電装置の放電電力の積算値がその上限値を逸脱する場合に、
前記制御装置は、前記出力設定値を、前記放電電力の積算値から算出される不足電力分を加算した新たな出力設定値へ変更することを特徴とする請求項に記載の燃料電池電源装置。
【請求項5】
前記燃料電池の発電効率が所定の最低発電効率を下回る場合には、発電を停止するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の燃料電池電源装置。
【請求項6】
前記直流蓄電装置の蓄電電力量がその下限値を下回った場合に、発電を再開するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の燃料電池電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池及び直流蓄電装置を備えた燃料電池電源装置に係り、特に、燃料電池からの直流電力の電圧を調節する直流−直流交換器を有する燃料電池電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー、CO2排出量削減等への関心の高まりから、燃料電池発電装置が開発され、定置分散電源への適用が進んできている。燃料電池発電システムは、発電出力を急激に変化させることが困難なため、商用電力系統と接続されて運転されることが一般的である。また、商用電力系統と独立して運転する場合は、燃料電池と直流蓄電装置とを組合せて、両者を併用して負荷に電力を供給する燃料電池電源装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−231176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の燃料電池電源装置には、以下に述べるような問題点があった。すなわち、燃料電池の発電効率は発電出力が低いほど効率が悪く、発電出力を高くするにしたがって効率が良くなるという特性があるが、従来の燃料電池電源装置においては、負荷の消費電力に合わせて燃料電池の発電量を決めていたため、負荷の消費電力が減少し、燃料電池の発電出力が減少した場合には、発電効率は低下していた。
【0004】
そのため、負荷の変動にかかわらず、燃料電池が常に高効率な発電運転を行え、負荷の消費電力が低下または増加した場合にも、電源装置の異常を引き起こすことなく、最高の効率で発電運転を行うことができる、信頼性の高い燃料電池電源装置の開発が切望されていた。
【0005】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、負荷の変動にかかわらず、常に高効率な電力を供給することができる、信頼性の高い燃料電池電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の燃料電池電源装置は、燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により直流電力を発生する燃料電池と、前記直流電力の電圧を調節する直流−直流変換器と、前記直流電力を蓄える直流蓄電装置と、前記直流電力を直流又は交流電力へ変換して負荷に供給する電力変換装置と、燃料電池の発電に必要な補機へ電力を供給する補機電力供給装置と、前記直流−直流変換器、前記直流蓄電装置、前記電力変換装置及び前記補機電力供給装置に接続する直流母線と、前記負荷の消費電力に応じて前記直流−直流変換器の直流電力の出力設定値を変更する制御装置と、前記直流蓄電装置の充放電電流を計測する充放電電流計測器と、前記直流母線の電圧を計測する電圧計測器と、を備え、前記制御装置は、前記負荷の平均消費電力量が所定範囲内の場合において、前記負荷と前記補機との合計消費電力量が、当該燃料電池が所定の発電効率を得られる出力電力量より小さい場合は、前記出力設定値を前記燃料電池が所定の発電効率を得られる出力電力量以上の値にまで増やし、その値を新たな出力設定値とし、前記負荷の平均消費電力量が、前記所定範囲の下限値を下回る場合において、前記直流母線の電圧または前記直流蓄電装置の充電電流の少なくとも一方が、それぞれの上限値を逸脱する場合に、前記直流母線の電圧と前記直流蓄電装置の充電電流の両方がそれぞれの上限値を下回るように前記直流−直流変換器の出力設定値を低下させること、を特徴とするものである。
【0007】
上記のような構成を有する本発明によれば、負荷の平均消費電力量が所定の通常範囲内の場合、言い換えれば、通常運転時において、常に、負荷と補機が消費する合計消費電力より大きく、且つ、所定の発電効率以上となる電力を出力するように制御することができるので、常に効率の良い運転が可能となる。また、負荷の平均消費電力量が所定の通常範囲の下限値より減少した場合であっても、直流蓄電装置の充電電流又は直流母線の電圧の上限値となる発電出力で発電を継続することができるので、燃料電池電源装置の異常を引き起こすことなく、最高効率の発電運転を可能とすることができる。
【0010】
また、本発明は、請求項1に記載の燃料電池電源装置において、前記負荷の平均消費電力量が、前記所定範囲の上限値を上回る場合において、前記直流母線の電圧がその下限値を逸脱するか、または前記直流蓄電装置の放電電流がその上限値を逸脱する場合に、前記制御装置は、前記直流母線の電圧がその下限値以上となると共に、前記直流蓄電装置の放電電流がその上限値以下となるように、前記直流−直流変換器の出力設定値を上昇させることを特徴とするものである。
【0011】
上記のような構成を有する本発明によれば、負荷の平均消費電力量が所定の通常範囲の上限値より増加した場合であっても、燃料電池電源装置の異常を引き起こすことなく、高効率な発電運転が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、負荷の変動にかかわらず、常に高効率な電力を供給することができる、信頼性の高い燃料電池電源装置を提供することができる。より具体的には、通常時は一定電力で発電を行う燃料電池電源装置において、直流−直流変換器へ出力される出力設定値を適宜変更することにより、負荷の変動によらず、燃料電池は常に高効率な発電運転が可能となる。さらに、負荷の平均消費電力が低下または増加した場合にも、燃料電池電源装置の異常を引き起こすことなく、最高の効率で発電運転が可能となる、信頼性の高い燃料電池電源装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る燃料電池電源装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
(1)第1実施形態
(1−1)構成
図1は、本発明に係る燃料電池電源装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。すなわち、本実施形態の燃料電池電源装置においては、燃料電池1に該燃料電池1の直流電力の電圧を調節する直流−直流変換器6が接続され、その出力ラインである直流母線5には、直流電力を蓄える直流蓄電装置2、直流電力を直流又は交流電力へ変換して負荷に供給する電力変換装置3、及び、燃料電池の発電に必要な補機へ電力を供給する補機電力供給装置12が接続されている。
【0015】
また、前記直流−直流変換器6の出力側には、直流母線5の電圧を計測する電圧計測器10が接続されると共に、前記直流蓄電装置2の入出力部分には、その充放電電流を計測する充放電電流計測器7が接続されている。また、前記電力変換装置3の出力側には負荷4が接続されると共に、電流計測器9または電力計測器11の少なくとも1つが接続されている。また、前記補機電力供給装置12の出力側には補機13が接続されている。
【0016】
また、本実施形態の燃料電池電源装置には、図2に示すような構成を有する制御装置100が設置され、直流−直流変換器6によって出力される直流電力量を適切に制御すべく、直流出力設定値(以下、出力設定値という)を適宜変更することができるように構成されている。
【0017】
すなわち、制御装置100には、図2に示すように、監視対象となる各計測器からの測定値を取得するデータ取得部101、演算部102、判定部103、出力設定値を適切な値に設定変更する設定部104、出力設定値を前記直流−直流変換器6に出力する出力部105及び記憶部106が設けられている。なお、本実施形態においては、前記充放電電流計測器7、電圧計測器10、電流計測器9、電力計測器11が監視対象とされ、これらの測定値が前記データ取得部101に入力されるように構成されている。
【0018】
(1−2)作用
上記のような構成を有する本実施形態の燃料電池電源装置は、以下のように作用する。すなわち、燃料電池1の直流電力の電圧は、後述するような制御装置100による処理によって設定された出力設定値に基づいて、直流−直流変換器6により調節されて、直流母線5へ出力される。
【0019】
また、電力変換装置3は、直流母線5の直流を、負荷が必要とする電圧の交流または直流へ変換して負荷4へ供給する。このとき、負荷4が変動して、直流−直流変換器6の一定出力電力を上回った場合には、直流蓄電装置2から不足分の電力が供給される。一方、負荷4が直流−直流変換器6の一定出力電力を下回った場合には、直流蓄電装置2に余剰電力が蓄えられる。また、補機電力供給装置12は、直流母線5の電圧を、補機が必要とする電圧の直流電力へ変換して、補機13が必要とする電力を供給する。
【0020】
続いて、制御装置100による出力設定値の設定変更処理について、通常時(負荷4の平均消費電力が予め設定された通常範囲内にある場合)、負荷4の平均消費電力が通常範囲より減少した場合、負荷4の平均消費電力が通常範囲より増加した場合に分けて説明する。
【0021】
(1−2−1)通常時の動作
初めに、通常時における動作について説明する。
図4に示すように、燃料電池1は、制御装置100の設定部104から直流−直流変換器6へ出力される出力設定値に基づいて直流電力を出力する(ステップ401)。なお、燃料電池1の起動時における出力設定値は、初期電力設定値として、高効率な発電が可能となるように燃料電池電源装置ごとに予め設定された値、または、記憶部106に蓄積されている過去の負荷電力から、余剰または不足電力が発生しないと判断される発電出力により決定される値である。
【0022】
この初期電力設定値に基づいて燃料電池による発電が継続されている状態において、データ取得部101によって、監視対象とされている充放電電流計測器7、電圧計測器10、電流計測器9、電力計測器11の測定値が取得される(ステップ403)。続いて、演算部102において、電流計測器9または電力計測器11の計測値から負荷4の平均消費電力が算出される(ステップ404)。
【0023】
続いて、判定部103において、負荷4の平均消費電力が所定の通常範囲内か否かが判断され(ステップ405)、通常範囲内であると判断された場合には、ステップ406に進み、演算部102において、負荷4の平均消費電力と燃料電池内部補機13が通常時に消費する消費電力との合計値が算出される。なお、燃料電池内部補機13の消費電力は、発電出力によりほぼ一定の値となることから、固定の数値、あるいは発電出力に応じて決まる関数とすることができるため、電流計測器あるいは電力計測器による計測値を使用する必要はない。
【0024】
続いて、判定部103において、前記合計消費電力が、図3に示す所定の発電効率T1となる時の発電出力P1より大きいか否かが判断され(ステップ407)、P1より大きい場合には、効率の良い運転がされていることを意味するので、ステップ402に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0025】
一方、前記合計消費電力が、所定の発電効率T1となる時の発電出力P1より小さいと判断された場合には、設定部104により、出力設定値を例えば100W増やして新たな出力設定値として(ステップ408)、ステップ402に戻り、上述した処理が繰り返される。
【0026】
ここで、燃料電池の発電効率と発電出力の関係について説明する。すなわち、図3に示すように、一般的に、燃料電池の発電効率は発電出力が低い程低くなり、発電出力を高くしていくにつれて高くなることから、出力設定値は、発電効率T1となる発電出力P1以上であることが好ましい。この観点から、本実施形態においては、前記合計消費電力が、発電効率T1となる時の発電出力P1より大きいか否かを判断し、常に、所定の発電効率T1以上を維持することができるように構成されている。
【0027】
(1−2−2)負荷4の平均消費電力が減少した場合の動作
次に、負荷4の平均消費電力が通常範囲の下限値より減少した場合の動作について説明する。すなわち、図4のステップ405において、負荷4の平均消費電力が通常範囲内ではないと判断された場合には、図5のステップ409に進み、負荷4の平均消費電力が通常範囲の下限値より減少しているか否かが判断される。このように負荷4の平均消費電力が通常範囲の下限値より減少すると、余剰電力が増加し、直流蓄電装置2の充電電流が増加すると共に、直流母線5の電圧が上昇することになる。
【0028】
ステップ409で、負荷4の平均消費電力が通常範囲の下限値より減少していると判断された場合には、充放電電流計測器7で計測している充電電流がその上限値を上回っているか否かが判断され(ステップ410)、続いて、電圧計測器10で計測している直流母線5の電圧がその上限値を上回っているか否かが判断される(ステップ411)。
【0029】
ステップ410、ステップ411において、直流蓄電装置2の充電電流又は直流母線5の電圧がそれぞれの上限値を上回っていた場合には、設定部104によって、その上限値を下回るように出力設定値を下げ(ステップ412)、ステップ402に戻る。
【0030】
上記のような本ロジックによれば、図3に示す特性に従って、燃料電池の発電出力の低下に伴い発電効率は若干低下するが、直流蓄電装置2の充電電流又は直流母線5の電圧の上限値となる発電出力で発電を継続することができるので、電源装置の異常を引き起こすことなく、最高効率の発電運転を可能とすることができる。
【0031】
(1−2−3)負荷4の平均消費電力が増加した場合の動作
次に、負荷4の平均消費電力が通常範囲の上限値より増加した場合の動作について説明する。なお、負荷4の平均消費電力が通常範囲の上限値より増加すると、直流蓄電装置2の残存容量が減少していくことになる。
【0032】
すなわち、図5のステップ409において、負荷4の平均消費電力が通常範囲の上限値より増加していると判断された場合には、ステップ413に進み、充放電電流計測器7で計測している放電電流がその上限値を上回っているか否かが判断され(ステップ413)、続いて、電圧計測器10で計測している直流母線5の電圧がその下限値を下回っているか否かが判断される(ステップ414)。
【0033】
そして、ステップ413、ステップ414において、直流蓄電装置2の放電電流がその上限値を上回っていた場合には、その上限値を下回るように、また、直流母線5の電圧がその下限値を下回っていた場合には、その下限値を上回るように、設定部104によって、出力設定値を増加させ(ステップ415)、ステップ402に戻る。
【0034】
上記のような本ロジックによれば、燃料電池の発電出力は増加の方向であることから、図3に示すように発電効率は上昇する方向となるため、電源装置の異常を引き起こすことなく、高効率な発電運転が可能となる。
【0035】
(1−3)効果
以上述べたように、本実施形態によれば、通常の運用において、直流−直流変換器6へ出力される出力設定値を、所定の発電効率以上となる一定値とすることが可能になり、負荷4の変動によらず燃料電池1は常に高効率な発電運転が可能となる。さらに、負荷4の平均消費電力が低下または増加した場合にも、電源装置の異常を引き起こすことなく、最高の効率での発電運転が可能となる。また、通常時は一定電力で発電を行なうため、燃料電池発電装置の運転の信頼性が向上する。
【0036】
(2)第2実施形態
(2−1)構成
本実施形態は上記第1実施形態の変形例であって、図6に示すように、直流蓄電装置2の出力部に、充放電電力計測器8を設置したものである。なお、本実施形態においては、前記充放電電力計測器8、電圧計測器10、電流計測器9、電力計測器11が監視対象とされ、これらの測定値が前記制御装置100のデータ取得部101に入力されるように構成されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0037】
(2−2)作用
(2−2−1)通常時の動作
通常時の動作は、上記第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0038】
(2−2−2)負荷4の平均消費電力が減少した場合の動作
図7のステップ409で、負荷4の平均消費電力が通常範囲の下限値より減少していると判断された場合には、演算部102によって、充放電電力計測器8で計測している充電電力量の積算値が算出される(ステップ420)。続いて、この充電電力量の積算値が所定の上限値を上回っているか否かが判断される(ステップ421)。
【0039】
ステップ421において、直流蓄電装置2の充電電力量の積算値が所定の電力量を超えて増加していると判断された場合には、直流蓄電装置2において余剰電力が発生していることを示していることから、設定部104において、出力設定値を前記充電電力量の積算値から算出される平均余剰電力を差し引いた値へ変更し(ステップ422)、ステップ402に戻る。
【0040】
この結果、直流蓄電装置2の入力電圧および充電電流の上限値を逸脱することを防止することができる。さらに、図3に示す特性に従って、燃料電池の発電出力の低下に伴い発電効率は若干低下するが、余剰電力の増加による電源装置の異常を防止することができるので、信頼性の高い発電運転を継続することができる。
【0041】
(2−2−3)負荷4の平均消費電力が増加した場合の動作
図7のステップ409で、負荷4の平均消費電力が通常範囲の上限値より増加していると判断された場合には、演算部102によって、充放電電力計測器8で計測している放電電力量の積算値が算出される(ステップ423)。続いて、この放電電力量の積算値が所定の上限値を上回っているか否かが判断される(ステップ424)。
【0042】
ステップ424において、直流蓄電装置2の放電電力量の積算値が所定の電力量を超えて増加していると判断された場合は、直流蓄電装置2において不足電力が発生していることを示していることから、設定部104において、出力設定値を、前記放電電力の積算値から算出される不足電力分を加算した値へ変更し(ステップ425)、ステップ402に戻る。
【0043】
この結果、直流蓄電装置6の入力電圧の下限値または放電電流の上限値を逸脱することを防止することができる。さらに、図3に示す特性に従って、燃料電池の発電出力の増加に伴い発電効率が向上するので、通常時の運転と同等またはそれ以上の高効率な運転が可能となる。
【0044】
(2−3)効果
以上述べたように、本実施形態によれば、負荷4の減少状態が長時間継続した場合に生じる余剰電力を検知し、直流−直流変換器6へ出力される出力設定値を、充電電力の積算値から算出される余剰電力を差し引いた値へ変更することにより、直流蓄電装置の入力電圧および充電電流の上限値を逸脱することを防止できる。その結果、電源装置の異常とならない条件下における最高の効率で発電運転が可能となる。
【0045】
一方、負荷4の増加状態が長時間継続した場合に生じる不足電力を検知し、直流−直流変換器6へ出力される出力設定値を、放電電力の積算値から算出される不足電力分を加算した値へ変更することにより、直流蓄電装置の入力電圧の下限値または放電電流の上限値を逸脱することを防止できる。その結果、通常時の運転と同等、またはそれ以上の高効率な運転が可能となる。
【0046】
(3)第3実施形態
(3−1)構成
本実施形態は、上記第1実施形態の変形例であって、上記第1実施形態においては、負荷4の平均消費電力が通常範囲の下限値より減少した場合に、直流蓄電装置2の充電電流および直流母線5の電圧がそれぞれの上限値を下回るように出力設定値を低下させているが、本実施形態においては、さらに発電効率を考慮したものである。
【0047】
すなわち、本実施形態においては、燃料電池が発電に使用する都市ガスやプロパンガスなどの原燃料ガスの消費量と、負荷4の消費電力を用いて演算部102で算出される発電効率が、所定の最低発電効率を下回る場合には、発電を停止するように構成されている。なお、本実施形態の燃料電池電源装置の構成は上記第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0048】
(3−2)作用
通常時の動作及び負荷4の平均消費電力が通常範囲の上限値より増加した場合の動作は、上記第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0049】
次に、負荷4の平均消費電力が通常範囲の下限値より減少した場合の動作について説明する。すなわち、図8に示したように、第1実施形態と同様に、ステップ410において充放電電流計測器7で計測している充電電流がその上限値を上回った場合、または、ステップ411において電圧計測器10で計測している直流母線5の電圧がその上限値を上回った場合には、直流蓄電装置2の充電電流および直流母線5の電圧がその上限値を下回るように、出力設定値を低下させる処理が行われる(ステップ412)。
【0050】
本実施形態においては、この処理に続いて、燃料電池が発電に使用する都市ガスやプロパンガスなどの原燃料ガスの消費量と前記負荷の消費電力を用いて、演算部102で発電効率が算出される(ステップ430)。続いて、この発電効率が所定の最低発電効率より大きいか否かが判断され(ステップ431)、大きい場合には、図4のステップ402に戻る。一方、この発電効率が所定の最低発電効率より小さい場合には、効率の良い運転ができないので、発電を停止する(ステップ432)。
【0051】
このようにして発電が停止された後も、直流蓄電装置2の蓄電電力量を監視し、判定部103により、この蓄電電力量が所定の電力量を下回ったか否かが判断される(ステップ433)。蓄電電力量が所定の電力量を下回ったと判断された場合には、発電を再開させる(ステップ434)。この場合、発電出力を所定の発電効率以上の一定値として、直流蓄電装置2へ充電を行なう。
【0052】
なお、前記「最低発電効率」とは、省エネルギー性を考慮して算出される効率である。また、発電再開を決めるための「所定の電力量」とは、燃料電池の再起動に必要とされる電力量と負荷の消費電力量の合計電力から算出される電力量である。
【0053】
(3−3)効果
以上述べたように、本実施形態によれば、負荷4の減少状態が長時間継続した場合には出力設定値を低下させるが、燃料電池が発電に使用する都市ガスやプロパンガスなどの原燃料ガスの消費量と前記負荷の消費電力から算出される発電効率が、所定の最低発電効率を下回る場合は発電を停止することにより、省エネ性の低下を防止することが可能となる。また、直流蓄電装置2の蓄電電力量が所定の電力量を下回った場合には発電を再開させ、発電出力を所定の発電効率以上の一定値で発電することにより、高効率の発電運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明に係る燃料電池電源装置の第1実施形態の構成を示すブロック図。
図2】制御装置の構成を示すブロック図。
図3】燃料電池発電装置における発電出力と発電効率の関係を示す図。
図4】第1実施形態の制御装置における処理の流れ(前半部)を示すフローチャート。
図5】第1実施形態の制御装置における処理の流れ(後半部)を示すフローチャート。
図6】本発明に係る燃料電池電源装置の第2実施形態の構成を示すブロック図。
図7】第2実施形態の制御装置における処理の流れ(後半部)を示すフローチャート。
図8】第3実施形態の制御装置における処理の流れ(後半部)を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0055】
1…燃料電池
2…直流蓄電装置
3…電力変換装置
4…独立負荷
5…直流母線
6…直流−直流変換器
7…充放電電流計測器
8…充放電電力計測器
9…電流計測器
10…電圧計測器
11…電力計測器
12…補機電力供給装置
13…補機
100…制御装置
101…データ取得部
102…演算部
103…判定部
104…設定部
105…出力部
106…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8