(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676848
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】ホットメルト型部材及び有機EL表示パネル
(51)【国際特許分類】
C08L 91/06 20060101AFI20150205BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20150205BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20150205BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20150205BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
C08L91/06
C08K3/00
C09K3/10 Q
C09K3/10 Z
H05B33/04
H05B33/14 A
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2008-512078(P2008-512078)
(86)(22)【出願日】2007年4月12日
(86)【国際出願番号】JP2007058040
(87)【国際公開番号】WO2007123039
(87)【国際公開日】20071101
【審査請求日】2010年4月2日
【審判番号】不服2013-23981(P2013-23981/J1)
【審判請求日】2013年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2006-114748(P2006-114748)
(32)【優先日】2006年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松精練株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 重夫
(72)【発明者】
【氏名】魚住 幸之助
(72)【発明者】
【氏名】中山 武俊
(72)【発明者】
【氏名】礒野 敏恵
(72)【発明者】
【氏名】川口 洋平
【合議体】
【審判長】
小野寺 務
【審判官】
大島 祥吾
【審判官】
須藤 康洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−195661(JP,A)
【文献】
特開2002−33187(JP,A)
【文献】
特開2003−144830(JP,A)
【文献】
特開2006−68729(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/122645(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 91/06 - 91/08
C08K 3/22
C08K 5/56 - 5/58
H01L 31/042
H01L 51/50
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分捕捉剤及びワックスを含む電子デバイス(但し、有機太陽電池を除く)用ホットメルト型部材であって、
前記水分捕捉剤は、有機金属化合物を含み、且つ、無機系水分補足剤を含まず、
前記水分捕捉剤が、前記ホットメルト型部材中80〜99重量%含まれる
ホットメルト型部材。
【請求項2】
前記ワックスがマイクロクリスタリンワックスである、請求項1に記載のホットメルト型部材。
【請求項3】
真空下150℃で4時間にわたり減圧乾燥した後の重量減少が0.1%以下である、請求項1に記載のホットメルト型部材。
【請求項4】
前記ホットメルト型部材の厚みが100μm以下の薄膜状である、請求項1に記載のホットメルト型部材。
【請求項5】
電子デバイスが有機EL表示パネル又は有機半導体である、請求項1に記載のホットメルト型部材。
【請求項6】
離型性基材上に請求項1に記載のホットメルト型部材を積層した転写フィルム。
【請求項7】
請求項1に記載のホットメルト型部材を積層した筐体。
【請求項8】
1)基板、2)前記基板上に形成された有機EL素子及び3)前記有機EL素子を封止する筐体を含む有機EL表示パネルであって、前記有機EL素子と前記筐体との間に請求項1に記載のホットメルト型部材が配置されてなる有機EL表示パネル。
【請求項9】
前記有機EL素子と前記筐体との間の空間のすべてが前記ホットメルト型部材により占められている、請求項8に記載の有機EL表示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト型部材及び有機EL表示パネルに関する。特に、有機EL素子用の封止部材と、これを用いた有機EL表示パネルに関するものであり、特に長期にわたって水分や酸素の影響がなく安定した発光特性を維持できる薄型の有機EL表示パネルを高い信頼性で量産可能とした改良技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、ガラス基板上にITO(Indium Tin Oxide)透明電極(陽極)、有機膜(有機正孔輸送層、有機発光層等)、金属電極(陰極)が形成されて構成されている。ところが、このような有機EL素子において、有機膜あるいは金属電極が、水分や酸素あるいは熱及び構成部材から発生する有機ガス(以後「アウトガス」ともいう。)に対して弱いことが知られており、有機EL素子の長寿命化のために、有機EL素子を水分や酸素を排除した雰囲気に置いたり、構成部材からのアウトガスを極力少なくしたり、有機EL素子の発光の際に発生する熱が効率よく逃げ得る構造を採用したりして、水分や酸素や熱及びアウトガスによる劣化を防止する必要がある。
【0003】
具体的には、
図1に示すようなガラス等の基板1の上に有機EL素子(陽極2、有機層3、陰極4)を積層形成し、基板1上の有機EL素子側からガラスや金属等で構成された封止キャップ5を被せて基板1にシール剤6で貼り合せてシールし、基板1と封止キャップ5で構成した密封容器内に有機EL素子を封入する。そして、この密封容器内には、水分を捉えるための酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)又はこれらを用いたシート状の水分捕捉剤7を封入するという方法が採られている。
【0004】
このような水分捕捉剤を用いた有機EL表示パネルとしては、例えば透明な基板表面に透明な電極材料により形成された透明電極と、この透明電極に積層され、EL材料からなる発光層と、この発光層に積層され、上記透明電極に対向して形成された背面電極と、上記発光層と背面電極の全面を被覆した撥水膜と、この撥水膜とともに上記発光層を封止する絶縁性の保護部材とからなることを特徴とする有機EL素子が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−68047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示した有機EL表示パネルでは、基板1上の有機EL素子を封止する封止キャップ5に水分捕捉剤である粉末状のBaOやCaO又はこれらを用いたシート状の水分捕捉剤7を設けることとされている。ここで、必要量の前記水分捕捉剤を封止キャップ5内に充填すると、その厚さは最低でも0.2mm程度となるため、封止キャップ5の凹部深さは0.3〜0.5mmは必要である。従って、封止キャップ5の厚みは0.7〜1.0mmは必要となり、有機EL表示パネルとしての厚さが大きくなるという問題がある。
【0006】
また、封止キャップ5を用いた有機EL表示パネルでは、発光部分のサイズを大きくすると、密封容器が中空構造であるために有機EL表示パネルとしての強度が低下したり、封止キャップ5がたわみ易くなって陰極に接触する恐れが生じ、発光素子としての信頼性が低下したりするという問題がある。
【0007】
また、透明な水分吸収物質(有機系水分捕捉剤)による薄膜コーティングの例としては、オーレドライ(双葉電子工業)が知られている。しかし、この薄膜は、水分の吸収量が多くなってくると徐々にクラック(ひび割れ)を起こし、有機EL素子にダメージを与えるという物理的な問題がある。また、特殊な液のため、特別な塗工技術を必要としている。
【0008】
さらに、前記の特許文献1は、有機EL素子上に、ワックス、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤等の単一成分からなる撥水膜を形成することにより、水分の付着を防ぎ、有機EL素子の劣化を目的としたものである。水分捕捉剤と併用する場合は、粒子径100〜500μmという比較的大きな粒子径の粒子を用いたり、また、撥水皮膜を形成した後、粒子を振りかけたりと、水分捕捉剤層の形成を主としたものではない。このように、特許文献1においては、水分捕捉剤を併用し、かつ、厚みの薄い有機EL表示パネルに関しては検討されていない。
【0009】
また、前記の特許文献1では、粒子径100〜500μmという比較的大きな水分捕捉剤を粉末のまま使用しているため、実際の工程では使用できないという問題がある。しかも、特許文献1では、撥水層をワックスの蒸着により形成しているので、使用するワックスによっては蒸発したワックスにより有機EL素子の性能が低下してしまうおそれもある。
【0010】
従って、本発明の主な目的は、上述した課題を克服するためになされたものであり、特に、長期にわたって水分や酸素の影響がなく安定した発光特性を維持できる薄型の有機EL表示パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて研究を重ねた結果、特定の組成をもつ部材が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記のホットメルト型部材及び有機EL表示パネルに係るものである。
1. 水分捕捉剤及びワックスを含むホットメルト型部材。
2. 前記ワックスがマイクロクリスタリンワックスである、前記項1に記載のホットメルト型部材。
3. 水分捕捉剤が1)有機金属化合物及び2)平均粒子径90μm以下の粉末状無機酸化物の少なくとも1種である、前記項1に記載のホットメルト型部材。
4. 水分捕捉剤が前記ホットメルト型部材中50〜99重量%含まれる、前記項1に記載のホットメルト型部材。
5. ワックスが前記ホットメルト型部材中1〜50重量%含まれる、前記項1に記載のホッメルト型部材。
6. 真空下150℃で4時間にわたり減圧乾燥した後の重量減少が0.1%以下である、前記項1に記載のホットメルト型部材。
7. 前記ホットメルト型部材の厚みが100μm以下の薄膜状である、前記項1に記載のホットメルト型部材。
8. 筐体で封止された電子デバイスの前記筐体内部で用いられる、前記項1に記載のホットメルト型部材。
9. 電子デバイスが有機EL表示パネル、有機太陽電池又は有機半導体である、前記項8に記載のホットメルト型部材。
10. 離型性基材上に前記項1に記載のホットメルト型部材を積層した転写フィルム。
11. 1)基板、2)前記基板上に形成され有機EL素子及び3)前記有機EL素子を封止する筐体を含む有機EL表示パネルであって、前記有機EL素子と前記筐体との間に請求項1に記載のホットメルト型部材が配置されてなる有機EL表示パネル。
12. 前記有機EL素子と前記筐体との間の空間のすべてが実質的に前記ホットメルト型部材により占められている、前記項11に記載の有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明のホットメルト型部材はホットメルト性を有しているため、筐体(以下「封止用筐体」ともいう。)上又は有機EL素子上等に任意の厚み及びパターンにて、有機EL素子に密着して空間のない水分捕捉剤を含むホットメルト型部材層を形成することができ、また、アウトガスの発生も抑制することから長期にわたって水分や酸素、アウトガスの影響がなく安定した発光特性を維持できる電子デバイス(例えば有機EL表示パネル)を提供することができる。
【0014】
特に、有機系水分捕捉剤を単独で用いる場合とは異なり、本発明のホットメルト型部材ではひび割れ等の問題も緩和ないしは解消することができる。この点においても、発光特性の長期安定性に寄与することが可能となる。
【0015】
好ましい形態として、粒子径の小さな粉末状のBaO、CaO等の粉末状無機酸化物又は有機金属化合物(有機金属錯体を含む。以下同じ。)あるいはこれらを用いたシート状(薄膜状)ホットメルト部材を用いるために凹部を有する厚い封止キャップ(封止用筐体)5を用いる必要がなく、平坦な薄板状の封止板を封止用筺体として用いることができる。
【0016】
また、さらに好ましい形態として、基板と封止用筐体との間に本発明の好ましい形態のホットメルト型部材を隙間なく配置することにより有機EL表示パネルとしての厚さを薄くでき、大型化にも問題なく対応することができる。
【0017】
また、本発明のワックスとして透明なワックスを選定すれば透明水分捕捉剤と組み合せることにより、陰極上に水分捕捉機能を有する透明な薄膜層を設けることができ、これにより有機EL発光層より出た光を陰極側からも取り出す(トップエミッション方式)ことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
1.ホットメルト型部材
本発明のホットメルト型部材は、水分捕捉剤(以下「水分ゲッター剤」ともいう。)及びワックスを含むことを特徴とする。
(水分捕捉剤)
水分捕捉剤は、いわゆる水分捕捉剤として知られているものであれば、無機系水分捕捉剤又は有機系水分捕捉剤のいずれでも良く、特に限定されるものではない。例えば、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)等の粉末状無機酸化物のほか、透明な水分ゲッター剤として知られている有機金属化合物が使用可能である。また、これらの水分捕捉剤は1種又は2種以上を配合して使用することができる。これら水分捕捉剤は、市販品を使用することもできる。
【0019】
また、上記の粉末状無機酸化物のように、粉末形態の水分捕捉剤を用いる場合、その平均粒子径は通常100μm未満の範囲とすれば良く、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上10μm以下とすれば良い。平均粒子径が100μm未満であれば、有機EL素子にダメージを与える可能性が低くなり、また、有機EL表示パネルを製造する際に封止用筐体に凹部を設ける必要がなくなる。なお、粒子径が0.01μm未満となると、粒子が飛散したり、粒子製造コストが高くなることがある。
【0020】
これらの水分捕捉剤のうち、本発明では、1)有機金属化合物及び2)平均粒子径90μm以下の粉末状無機酸化物の少なくとも1種を用いることが望ましい。例えば、ワックスとの混合及び有機EL素子等との密着性の観点からは、水分捕捉剤としてワックスと同一の溶剤に溶解する有機金属化合物が好ましい。また、本発明のホットメルト型部材を、有機EL発光層より出た光を陰極からも取り出すトップエミッション方式等の有機EL表示パネル等に用いる場合は、透明な水分捕捉剤を用いることが好ましく、粒子径が100nm以下の微粉末のほか、有機金属化合物を例示することができる。有機金属化合物としては、特開2005−298598号公報に記載されている有機金属化合物等を好適に用いることができる。
【0021】
水分捕捉剤の含有量は、用いる水分捕捉剤の種類等に応じて適宜設定できるが、通常は本発明のホットメルト型部材中50〜99重量%程度、特に80〜99重量%とすることが好ましい。水分捕捉剤の含有量が50重量%を下回ると水分捕捉性能が不足する可能性があり、99重量%を上回るとホットメルト型部材の有機EL素子との密着性・接着性の低下のほか、水分捕捉剤の保持性が低下してしまうおそれがある。
【0022】
(ワックス)
ワックスとしては、本発明のホットメルト型部材にホットメルト機能を付与できるものであれば限定されず、公知又は市販のワックスから適宜選択することができる。例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等を使用することができる。これらは1種又は2種以上を配合して用いても良い。これらのワックスは、製造工程等の見地より融点が60〜100℃であるものが好ましい。ワックスの融点が60℃を下回ると有機物(有機EL素子等)を溶解、膨潤させる可能性があり、融点が100℃を超えるとホットメルト部材を軟化又は溶融させるときに100℃以上の熱が必要となり、有機物(有機EL素子等)にも100℃以上の熱がかかる可能性が生じ、有機物を劣化させる虞がある。
【0023】
また、本発明では、特に、有機EL素子に悪影響を及ぼすアウトガスの発生を防止できること及びガラス基板等の基板、封止用筐体、有機EL素子との密着性に優れることからマイクロクリスタリンワックスを用いることが好ましい。
【0024】
ワックスの含有量は、用いるワックスの種類等に応じて適宜設定できるが、通常は本発明のホットメルト型部材中1〜50重量%程度、特に1〜10重量%とすることが好ましい。ワックスの含有量が50重量%を超える場合には、水分の捕捉性が不足する可能性がある。また、1重量%未満の場合は、基板等との密着性、接着性や有機金属化合物を水分捕捉剤として用いた際の水分の捕捉に伴う経時的なクラックを抑制する効果が低下するおそれがある。透明なホットメルト部材との観点らは、ホットメルト部材中のワックスの配合量は10重量%以下が好ましい。
【0025】
また、本発明のホットメルト部材を、有機EL発光層より出た光を陰極からも取り出すトップエミッション方式の有機EL表示パネル等にも用いる場合は、透明なワックスを用いることが好ましく、ワックス自体が透明なものの選択やホットメルト部材中のワックスの配合量やホットメルト部材を用いて得られる層の厚みを薄くすると良い。ホットメルト部材としては、ワックスの種類の変更のほか、水分捕捉剤の種類と配合量、これらの組合せにより、有機EL発光層より出た光を陰極からも取り出すトップエミッション方式に適用可能なものとすることもできる。
【0026】
(ホットメルト部材)
本発明のホットメルト型部材は、上記の水分捕捉剤及びワックスの2成分系であっても良いが、その他の成分として必要に応じて各種の添加剤が含まれていても良い。
【0027】
本発明のホットメルト型部材の形状は限定されず、所望の用途に応じて形状を採用することができる。例えば、薄膜状、板状、不定形状等のいずれであっても良い。特に、本発明では、薄膜状として用いることが好ましい。この場合の厚みは限定されないが、一般的には100μm以下、特に5〜50μm程度とすることが好ましい。
【0028】
本発明のホットメルト型部材は、乾燥後(溶剤希釈タイプ)または冷却後(無溶剤タイプ)は通常固形状で電子デバイス用部材として用いられるものであるが、例えば有機EL素子、封止用筐体、離型性基材等の上への積層作業等の使用時には粘調な状態で使用すれば良い。すなわち、使用時に加熱により軟化又は溶融させて使用したり、有機溶媒に溶解して使用することができる。このため本発明のホットメルト型部材を有機EL素子、封止用筐体等の上に密着して積層することができるため、水分捕捉剤が有機EL素子等に密着し、密封容器内に侵入した水分、有機EL素子等が含んでいる水分、アウトガス等から有機EL素子等を保護することができる。
【0029】
使用時に加熱により軟化又は溶融させて粘着又は塗布する場合、軟化又は溶融するまで加熱してホットメルト部材を基板(有機EL素子積層面)、封止用筐体等に貼着又は塗布することにより、薄膜状等の所望の形状にて上記部材を形成することが可能である。また、前記のような薄膜状のホットメルト型部材の場合は、一部を軟化又は溶融させれば基板等に接着(融着)させることができる。
【0030】
加熱により軟化又は溶融させて使用する方法は、例えば塗布(コーティング)により薄膜を形成する場合、コーティングヘッドを約70〜80℃程度に加熱することにより効率的に薄膜を得ることができる。また、コーティング後の乾燥時間を短縮することができる結果、生産性をより高めることができることに加え、アウトガスの発生の危険性を低下させる点からも好ましい。
【0031】
アウトガスの発生を抑制するとの観点からは、下記無溶剤ホットメルト型部材を用い加熱により軟化溶融させ、有機EL素子、封止用筐体等の上への積層作業を行うとさらに良い。
【0032】
(転写フィルム)
特に、本発明では、離型性基材(離型フィルム)上に薄膜上のホットメルト型部材を積層したものは、転写フィルムとして用いることができるので好ましい。すなわち、転写フィルムとして用いれば、有機EL表示パネル、有機太陽電池、有機半導体等の電子デバイスを作製する場合に、転写フィルムとして在庫しておき、必要なときに転写フィルムを取り出し、離型性基材上のホットメルト型部材を離型性基材から有機EL素子等の電子デバイス側に転写することにより、容易に上記部材を有機EL素子等の電子デバイスに取り付けることが可能となる。
【0033】
離型フィルム上のホットメルト型部材の厚みは、100μm以下、特に5〜50μm程度とすることが好ましい。
【0034】
離型性基材は、公知又は市販のものを使用することができるが、好ましくは樹脂フィルム上にアルキッドタイプの離型剤を塗布してあるものが良い。また、離型フィルム上のホットメルト型部材を離型性基材から封止用筺体に転写して用いても良い。
転写フィルムの製造方法は、離型性基材上に加熱又は有機溶剤の使用により溶解した液状のホットメルト型部材を塗布し、冷却又は加熱によって有機溶剤を揮発させることにより、離型性基材上に、薄膜状のホットメルト部材を積層することができる。
(ホットメルト部材の製造方法)
本発明のホットメルト型部材の製造方法は、水分捕捉剤、ワックス、さらに必要に応じて他の添加剤を均一に混合すれば良い。混合方法としては、ヘプタン、トリエタノールアミン等の有機溶剤を添加し混合を行ったり、有機溶剤を用いずに加熱し、ワックスを溶融させて混合することも可能である。混合の観点からは、水分捕捉剤、ワックスともに溶解する溶剤を用いて混合することが好ましい。
【0035】
混合機としては、例えば、攪拌機、ニーダー等を公知の混合装置又は混練装置を用いて実施することができる。各成分を均一に混合した後は、必要に応じて所望の形状に成形することができる。
【0036】
本発明のホットメルト型部材は混合した後、加熱乾燥することにより溶剤成分を除去しておくことが望ましい。その除去程度は、上記部材を真空下150℃で4時間にわたり減圧乾燥した後の重量減少が0.1%以下となるレベルとすることが好ましい。すなわち、真空下150℃で4時間にわたり減圧乾燥した後の重量減少が0.1%以下であるホットメルト型部材が本発明のホットメルト型部材(無溶剤ホットメルト型部材)としてより好ましい。減圧乾燥した後の重量減少が0.1%を超えると、有機EL筐体封止パネルに用いた場合、アウトガスが発生し、有機EL素子を劣化させるおそれがある。
【0037】
本発明のホットメルト型部材は、特に電子デバイス用として好適に用いることができる。より具体的には、上記ホットメルト型部材は、封止用筐体で封止された電子デバイスの前記筐体内部で用いられる。本発明のホットメルト型部材は、いわゆる水分捕捉剤とワックスとを混合したものであり、有機EL表示パネル等の電子デバイスの密封容器内に有機EL素子を封止するための密封用材料として使用することができるほか、密封容器を構成する基板等の構成部材を組立・固着するための接着材料としても使用することができる。また、密封容器内に侵入した水分、有機EL素子等に含まれる水分等を吸着する水分捕捉剤としても機能する。本発明のホットメルト型部材は、これらの機能を併せ持つ多機能材料である。
【0038】
2.有機EL表示パネル
本発明は、1)基板、2)前記基板上に形成され有機EL素子及び3)前記有機EL素子を封止する筐体(部材)を含む有機EL表示パネルであって、前記有機EL素子と前記筐体との間に本発明のホットメルト型部材が配置されてなる有機EL表示パネルを包含する。
【0039】
なお、本発明において、基板とは、有機EL素子を形成するためのガラス板等をいう。有機EL素子とは、陽極と陰極との間に少なくとも有機発光層を挟むようにして形成された積層体をいう。また、本発明において、筐体は、有機EL素子を外気から封止できる部材であれば良く、例えば箱型、プレート型等のいずれでも良く、その形状は特に問われない。
【0040】
本発明の有機EL表示パネルでは、前記ホットメルト型部材が基板と封止用筐体の間に配置されている。また、有機EL素子は、公知の有機EL素子と同様の構成・構造を採用することができる。従って、基本的には、本発明のホットメルト型部材は、従来から知られているすべての構造の有機EL表示パネルにおいて利用可能である。
【0041】
上述したワックスと水分捕捉剤を混合・攪拌することにより、本発明のホットメルト型部材を得ることができるが、このホットメルト型部材を用いた有機EL表示パネルの具体的構造について
図2に基づき説明する。
【0042】
図2において、基板1の上には、有機EL素子として陽極2と有機層3と陰極4が積層され、さらにショート防止層8が積層されている。さらに有機EL素子上には、ワックスに水分捕捉剤を加えたホットメルト型部材が接着剤層9として設けられ、固化されて封止用筺体10を接着している。
【0043】
本発明では、必要に応じてショート防止層を設けることもできる。ショート防止層は、陰極と陽極とのショート(短絡)を防止するために形成されるものであり、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の無機材料、ポリパラキシレン等の有機材料を用いることができる。本発明では、特にポリパラキシレンによるショート防止層(ポリパラシキレン系絶縁層)が好ましい。
【0044】
ポリパラシキレン系絶縁層は、ポリパラキシレン及び/又はその誘導体により構成される。前記誘導体としては、パラキシレンを基本単位とするものであれば限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。好ましい市販品としては、例えば製品名「diX C」、「diX D」「diX F」「diX N」(いずれも第三化成(株)製品)等が挙げられる。
【0045】
ポリパラシキレン系絶縁層は、少なくとも陰極上に形成されている。この場合、少なくとも陰極の上面を覆うようにポリパラシキレン誘導体層を形成すれば良い。特に、陰極の上面及び側面を覆うようにポリパラシキレン系絶縁層を形成することが望ましい。すなわち、陰極がすべて覆われるようにポリパラシキレン系絶縁層を形成することが望ましい。また、陰極及び有機発光層(有機層)のすべてを覆うようにポリパラシキレン系絶縁層を形成することもできる。
【0046】
ポリパラシキレン系絶縁層の厚みは、用いるポリパラシキレン又はその誘導体の種類、有機EL素子の種類・形式等に応じて適宜設定できるが、通常は20nm〜10μm程度、特に50nm〜1μm、さらには50nm〜900nmとすることが好ましい。かかる範囲に設定することにより、より効果的に短絡の発生を防止することができる結果、素子の長寿命化を図ることができる。
【0047】
ポリパラシキレン系絶縁層の形成方法は、上記のような構成が形成できる限り特に制限されず、気相法、液相法又は固相法のいずれも採用することができる。例えば、ポリパラキシレン系絶縁層を形成するための原料(例えばパラキシレン(モノマー)及び/又はパラキシレンオリゴマー)を用い、気相法により形成する方法等が好ましい。すなわち、本発明では、ポリパラシキレン系絶縁層として、ポリパラキシレン誘導体の原料(例えばパラキシレン(モノマー)及び/又はパラキシレンオリゴマー)を用い、気相法により形成されてなるポリパラシキレン系絶縁層を好適に採用することができる。特に、パラキシレンオリゴマー(好ましくはパラキシレンダイマー)を原料として用い、気相法により形成されてなるポリパラシキレン系絶縁層がより好適である。
【0048】
気相法は、例えばCVD法、PVD法等が採用できる。この中でも、CVD法、特に熱CVD法を好ましく採用することができる。この場合の,熱分解温度条件は600〜700℃程度とすることが好ましい。また、雰囲気は1.0Pa以下の真空雰囲気とすることが好ましい。堆積速度は1〜2nm/分程度とすれば良い。熱CVD法は、公知又は市販の装置を用いて実施することができる。
【0049】
なお、前記の原料あるいはポリパラシキレン又はその誘導体は、公知又は市販の製品を用いることができる。
【0050】
ホットメルト型部材の周囲にはUV硬化型シール剤6が設けられて固化されている。ホットメルト型部材は、封止用筺体10に直接塗布、又は離型フィルム上にシート状(薄膜状)に塗布した転写フィルムを用い、封止用筺体10に転写し、有機EL素子を積層した基板1(基板の有機EL素子形成面)と封止用筐体上のホットメルト型部材とを真空貼り合せを行うことにより、高信頼性で量産可能な薄型の有機EL筺体封止パネルを製造できる。
【0051】
また、
図2に示すように、この構造の場合には、封止用筺体10の上にホットメルト型部材を適量塗布し、さらに基板と真空貼り合せすることによりホットメルト型部材が有機EL素子を覆い、基板と封止用筺体10(例えばガラス基板)の間に空間が生じないようにすることもできる。すなわち、前記有機EL素子と前記筐体との間の空間のすべてが実質的に前記ホットメルト型部材により占められている構成とすることが望ましい。ホットメルト型部材が基板と封止用筐体10の間に隙間なく有機EL素子に直接密着して配置されていることにより、水分、酸素、アウトガスと有機EL素子との接触を防ぎ、有機EL表示パネルの強度を高めることができると同時に、ダークスポット防止性能、乱反射防止性能等を高めることが可能となる。この際、密着性を上げるために封止用筐体として用いるガラス基板等を加温して真空貼り合せを行う。さらに、ホットメルト型部材の周囲にUV硬化型シール剤(エポキシシール剤)を設けて固化させれば、有機EL素子の密封状態をさらに向上させることができる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明のホットメルト型部材及びこれを用いた有機EL表示パネルについて、実施例及び比較例を示しながらさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0053】
本実施例及び比較例に係る有機EL表示パネルは、
図2に示すように、基板1上に陽極であるITO透明電極2が形成され、この透明電極2上に有機発光層を含む有機膜3が形成され、さらに有機膜3上には陰極として金属電極4が形成されている。有機膜3は、例えば正孔輸送層と有機発光層との積層から構成され、あるいは、有機発光層と金属電極4との間に更に電子輸送層が設けられた積層膜である。金属電極4は、MgAgやLiFとAlとを積層したものが用いられている。ショート防止層8としては、酸化ケイ素SiO
2、酸化アルミニウムAl
2O
3、炭化ケイ素SiC、窒化ケイ素Si
3N
4等のほか、パラキシレン等を用いることができる。
【0054】
具体的には、次のような工程により、基板上に有機EL素子を形成し、有機EL表示パネルを作製した。なお、有機EL表示パネルの作製にあたっては、清浄度がクラス1000(1000個/フィート
3)程度のクリーンな環境下で実施した。有機EL表示パネルの製造工程中においては、素子要素は、大気には曝されず全て高真空中で搬送を行った。
【0055】
1)工程1
基板1としては、陽極2となるITOが既にパターンニングされているガラス基板を用いた。この基板1を有機アルカリ洗浄剤「セミコクリーン56(フルウチ化学(株)製)」、超純水、アセトン、イソプロピルアルコールをこの順に用いて超音波洗浄した後、基板1を窒素ブローで乾燥した。
【0056】
2)工程2
その後、ITO透明電極2の表面の有機汚染物質を除去するために、UVオゾン処理を行い、すばやく予備排気室にセットした。
【0057】
3)工程3
次に、基板1を真空状態にした成膜室中に搬送し、ここで基板1の上に有機膜用のシャドウマスクを装着した。アルミナ坩堝を加熱することにより、有機膜3として、正孔輸送材料[トリフェニルアミン誘導体](厚み50nm)、発光材料[キノリノールアミン錯体(Alq)](厚み20nm)の順で、それぞれ2〜4nm/分の成膜レートで各材料を成膜した。この場合、好ましくは、特開2006−24432号公報に記載の構造を採用することもできる。
【0058】
4)工程4
真空を維持したまま、上記有機膜用シャドウマスクを陰極用シャドウマスクに交換し、アルミナ坩堝を抵抗加熱し、フッ化リチウムを1nm成膜し、陰極4として、アルミニウムを200nm成膜した。成膜速度は10〜15nm/minとし、成膜は、4×10
-4Pa以下の圧力(真空中)で行った。また、上記陽極2、有機膜3及び陰極4の積層構造からなる有機EL素子の発光面積は、20mm×30mmとした。
【0059】
なお、以下の実施例での封止用筐体は、水分捕捉剤を保持するための凹部を有さない平坦なガラス板を用いた。
【0060】
実施例1
(1)無機酸化物水分捕捉剤含有ホットメルト型部材の作製
無機酸化物水分捕捉剤として酸化バリウム(平均粒子径20μm)、ワックスとしてマイクロクリスタリンワックス(製品名「Hi−Mic−1070」、融点79℃、炭素数30〜60程度、分子量500〜800程度)を用いた。これらを酸化バリウム:60重量%に対し、マイクロクリスタリンワックス:30重量%、ヘプタン10重量%で混合し、ホットメルト型部材とした。
【0061】
(2) 封止用筺体(ガラス板)への塗布
窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内にて、予め洗浄しUVオゾン洗浄を行った封止用筐体(ガラス板)に本例のホットメルト型部材を50μmの厚みでディスペンサーを用いて塗工した。塗工の方法としては封止用筐体(ガラス板)上に枚葉方式で塗工できれば良い。その後、ホットプレートを用い150℃、5分間乾燥し、溶剤を揮発させ、さらに封止用筐体(ガラス板)の外周部分にUV硬化型シール剤を塗布した。
【0062】
(3)基板と封止用筺体の貼り合せ
前記基板を大気に曝すことなく、窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内に移動させ、大気圧下で、前記基板上の有機EL素子と前記封止用筺体上のホットメルト型部材と接するように密着させ、基板側から150WのUVランプで紫外線を照射し、UV硬化型シール剤を硬化させ、封止を行うことにより有機EL表示パネルを得た。上記の有機EL表示パネルにおいては、基板と封止用筐体との間にホットメルト型部材が空間無く配置され、ホットメルト型部材が有機EL素子に直接密着するように構成されている。
【0063】
実施例2
・ 透明水分捕捉剤含有ホットメルト型部材の作製
透明水分捕捉剤として双葉電子工業(株) 製のオーレドライ(商標)(有機金属化合物)、ワックスとして日本精鑞(株)製のマイクロクリスタリンワックス(製品名「Hi−Mic−1070」、融点79℃、炭素数30〜60程度、分子量500〜800程度)を用いた。これらをオーレドライ:80重量%に対し、マイクロクリスタリンワックス:8重量%、ヘプタン:12重量%の割合で混合し、ホットメルト型部材とした。
【0064】
・ 封止用筺体(ガラス板)への塗布
窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内にて、予め洗浄しUVオゾン洗浄を行った封止用筺体(ガラス板)に本例のホットメルト型部材を40μm(乾燥後)の厚みでスロットダイにて塗工した。塗工の方法としては封止用筐体(ガラス板)上に枚葉方式でパターン塗工できれば良い。他にはグラビアコーティングやスクリーンプリント等が挙げられる。その後、ホットプレートを用い150℃、5分間乾燥し、溶剤を揮発させ、さらに封止用筺体上のホットメルト型部材の外周にUV硬化型シール剤を塗布した。
【0065】
・ 基板と封止用筺体の貼り合せ
前記基板を大気に曝すことなく、窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内に移動させ、前記基板上の有機EL素子と予め90℃まで加熱しておいた前記封止用筺体上のホットメルト型部材と接するように密着させ、基板側から150WのUVランプで紫外線を照射し、UV硬化型シール剤を硬化させることにより封止を行うことによって有機EL筺体封止パネルを得た。上記の有機EL表示パネルにおいては、基板と封止用筐体との間にホットメルト型部材が空間無く配置され、ホットメルト型部材が有機EL素子に直接密着するように構成されている。
【0066】
実施例3
(1) 透明水分捕捉剤含有ホットメルト型部材の作製
実施例2と同様にした。
【0067】
(2) 封止用筺体(ガラス板)への転写(離型フィルム使用)
窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内にて、離型フィルム上に本例のホットメルト型部材を40μmの厚み(乾燥後)でスロットダイにて塗工した。塗工の方法としては離型フィルム上に連続的にパターン塗工できれば良い。他の塗工方法としては、グラビアコーティング、スクリーンプリント等が例示される。その後、ホットプレートで溶剤を乾燥することによりホットメルト型部材付離型フィルム(転写フィルム)とした。さらに60℃に加熱しながら予め洗浄しUVオゾン洗浄を行ったガラス製の封止用筺体に離型フィルム上のホットメルト部材を接線貼り合せで転写し、20℃以下に冷却後、離型フィルムを剥離した。さらに封止用筺体上のホットメルト型部材の外周にUV硬化型シール剤を塗布した。
【0068】
(3) 基板と封止用筺体の貼り合せ
前記基板を大気に曝すことなく、窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内に移動させ、前記基板上の有機EL素子と予め90℃まで加熱しておいた前記封止用筺体上のホットメルト型部材と密着するように真空貼り合わせを行った。その後、基板側から150WのUVランプで紫外線を照射し、UV硬化型シール剤を硬化させて封止を行うことにより有機EL表示パネルを得た。上記の有機EL表示パネルにおいては、基板と封止用筐体との間にホットメルト型部材が空間無く配置され、ホットメルト型部材が有機EL素子に直接密着するように構成されている。
【0069】
実施例4
(1) 透明水分捕捉剤含有ホットメルト型部材の作製
実施例2と同様にした。
【0070】
(2) 封止用筺体(ガラス板)への塗布
実施例2と同様にした。
【0071】
(3) 基板と封止用筺体の貼り合せ
前記基板を大気に曝すことなく、熱CVD装置にセットし、パラキシレン系絶縁層をショート防止層として陰極4を覆う(
図2)ように形成した。続いて、窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内に移動させ、ショート防止層を形成した前記基板上の有機EL素子と予め90℃まで加熱しておいた前記封止用筺体上のホットメルト型部材と密着するように真空貼り合わせを行った。その後、基板側から150WのUVランプで紫外線を照射し、UV硬化型シール剤を硬化させ、封止を行うことにより有機EL表示パネルを得た。上記の有機EL表示パネルにおいては、基板と封止用筐体との間にホットメルト型部材が空間無く配置され、ホットメルト型部材がショート防止層を含む有機EL素子に直接密着するように構成されている。
【0072】
実施例5
(1) 透明水分捕捉剤含有ホットメルト型部材の調製(無溶剤タイプ)
水分捕捉剤として市販の透明水分捕捉剤「オーレドライ(商標)」(双葉電子工業(株)製、有機金属化合物)を用い、ワックスとして日本精鑞(株)製のマイクロクリスタリンワックス(製品名「Hi−Mic−1070」、融点79℃、炭素数30〜60程度、分子量500〜800程度)を用いた。前記透明水分ゲッター剤97重量%に対してマイクロクリスタリンワックス3重量%の割合で混合した後、得られた混合物を真空下150℃、減圧乾燥し、真空下150℃で4時間にわたり減圧乾燥した後の重量減少率が0.01%以下であるホットメルト型部材(無溶剤ホットメルト型部材)を得た。
【0073】
(2) 封止用筺体(ガラス板)への塗布
窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内にて、予め洗浄しUVオゾン洗浄を行った封止用筺体(ガラス板)に本例のホットメルト型部材(無溶剤)を80℃に加熱しながらスロットダイにて30μmの厚みで塗工した。塗工の方法としては封止用筺体(ガラス板)上に枚葉方式で塗工できれば良い。そのほかにも、グラビアコーティング、スクリーンプリント等が挙げられる。さらに封止用筺体上のホットメルト型部材の外周にUV硬化型シール剤を塗布した。
【0074】
(3) 基板と封止用筺体の貼り合せ
前記基板を大気に曝すことなく、窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内に移動させ、前記基板上の有機EL素子と予め90℃まで加熱しておいた前記封止用筺体と密着するように真空貼り合わせを行った。その後、基板側から150WのUVランプで紫外線を照射し、UV硬化型シール剤を硬化させ、封止を行うことにより有機EL表示パネルを得た。上記の有機EL表示パネルにおいては、基板と封止用筐体との間にホットメルト型部材が空間無く配置され、ホットメルト型部材が有機EL素子に直接密着するように構成されている。
【0075】
比較例1
(1) 透明水分捕捉剤含有樹脂部材の作製
透明水分捕捉剤として双葉電子工業(株) 製のオーレドライ(商標)(有機金属化合物)、ベース樹脂としてアクリル変性ウレタンを使用した。これらをオーレドライ:50重量%に対し、アクリル変性ウレタン:25重量%、MEK:25重量%の割合で混合し、樹脂部材とした。
【0076】
(2) 封止用筺体(ガラス板)への塗布
実施例2と同様にした。
【0077】
(3) 基板と封止用筺体の貼り合せ
前記基板を大気に曝すことなく、窒素ガスで露点−70℃まで置換したグローブボックス内に移動させ、前記基板上の有機EL素子と前記封止用筺体の樹脂部材とが密着するように真空貼り合せを行った。その後、基板側から150WのUVランプで紫外線を照射し、UV硬化型シール剤を硬化させて封止を行うことにより有機EL表示パネルを得た。
【0078】
試験例1
各実施例及び比較例で作製した有機EL表示パネルの放置寿命特性を調べた。具体的には、各有機EL表示パネル(実施例1〜5及び比較例1)を、60℃/90%RHの高温高湿環境下及び100℃の高温環境下に置き、加速放置寿命試験を行った。60℃/90%RHの高温高湿環境下では、実施例1〜5の1000時間経過後の発光状態は、試験前とほぼ同等であり、非発光部の発生と成長は抑えられており、実施例のホットメルト型部材が十分に機能していることが確認された。これに対し、比較例1は、アウトガス等の影響で100時間経過時にすでにダークスポットの成長が認められた。また、100℃の高温環境下では実施例5が500時間経過後も発光状態に変化がなく、アウトガスの影響をより受けやすい高温環境下の試験でも好ましい結果が得られた。また、実施例では、透明水分捕捉剤のひび割れによるダメージも全く発生していないことが確認された。
【0079】
以上の結果から、本発明のホットメルト型部材によれば、封止用筺体上又は、離型フィルム上に任意の厚み及びパターンのホットメルト型部材を形成することができ、特に長期にわたって水分や酸素の影響がなく安定した発光特性を維持できる有機EL素子を高い信頼性で量産可能な薄型の有機EL表示パネルとして構成することができることがわかる。また、実施例3のように、離型フィルム上にホットメルト型部材のみを製膜することにより、連続生産可能になり生産性の向上が期待できる。また、ユーザーへの輸送が簡易的にできること、サイズの変更が比較的容易であること等、ユーザーでの使用を含めて自由な設計が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】従来の有機EL素子の断面構造を示す概略図である。
【
図2】本発明の有機EL素子の一例の断面構造を示す概略図である。
【0081】
1 基板
2 陽極又はITO透明電極
3 有機層又は有機膜
4 陰極又は金属電極
5 封止キャップ
6 UV硬化型シール剤
7 水分捕捉剤
8 ショート防止層
9 接着剤層(ホットメルト部材)
10 封止用筺体