(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
増分信号ブレンダーを備え、前記増分信号ブレンダーが、前記第1および第2のカウンタの計数を加算して、結果の増分計数を提供する加算器を含む請求項1に記載の装置。
前記基準位置設定器が計数補正値を決定するように構成され、決定された前記計数補正値が、前記結果の増分計数と前記角度反復可能な基準位置の間の関係を提供する請求項2または請求項3に記載の装置。
前記設定期間が、前記装置の電源が入れられたときに始まり、前記第1および第2の読取りヘッドが両方とも基準マーク信号を生成したときに終わる請求項6に記載の装置。
前記エンコーダースケールリーダーが、前記エンコーダースケールに対して予め定められた絶対角度にあるとき、合成された基準マークパルスを出力する手段を備える請求項1乃至請求項7のうちのいずれかに記載の装置。
前記エンコーダースケールが、180°超過の角度にわたって、前記エンコーダースケールリーダーに対して回転可能である請求項1乃至請求項15のうちのいずれかに記載の装置。
前記エンコーダースケールリーダーが、機械の台板に対して固定の間隔を空けた関係を有する請求項1乃至請求項17のうちのいずれかに記載の回転エンコーダー装置を備えた機械。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、回転エンコーダーと、そのような回転エンコーダーを作動させる対応する方法であって、1つ以上の基準マークを含むスケールから絶対位置を決定する改善された手段を有する方法を提供することである。具体的には、絶対位置を決定する代替手段を提供するための条件は、既知の二つの読取りヘッド型回転エンコーダー装置は増分計数からベアリングワンダーの影響を取り除くことができるが、そのような装置は、基準マークを読み取るとき、依然として絶対角度の誤差を被るという本発明の発明者らの認識から派生している。したがって、本発明のさらなる目的は、少なくとも1つの基準マークを使用して絶対位置を決定するとき、ベアリングワンダーなどと関連するあらゆる不利益な影響を緩和する回転エンコーダー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、回転エンコーダー装置は、インクリメンタルスケールおよび1つまたは複数の基準マークを含むエンコーダースケールと、エンコーダースケールの基準マークを通過したとき、基準マーク信号(例えば、パルス)をそれぞれ発生する少なくとも第1および第2の読取りヘッドを含む、エンコーダースケールリーダーとを備え、エンコーダースケールリーダーがエンコーダースケールに対して回転すると、第1の読取りヘッドによって生成された第1の基準マーク信号と第2の読取りヘッドによって生成された第2の基準マークとを使用して、エンコーダースケールリーダーに対するエンコーダースケールの少なくとも1つの角度反復可能な基準位置を決定する、基準位置設定器を備えることを特徴とする。
【0009】
したがって、本発明の回転エンコーダー装置は、エンコーダースケールとスケールリーダーの間の相対移動の増分測定値を、エンコーダースケールに対するエンコーダースケールリーダーの少なくとも1つの絶対角度方向の測定値と組み合わせる。具体的には、絶対角度方向は、第1および第2の読取りヘッドが順に基準マークを通過すると生成される第1および第2の基準マーク信号を使用する、基準位置設定器(より詳細に後述する電子ユニットなど)によって、本発明に従って決定される。特定の時間間隔または角度間隔によって分離された第1および第2の基準マーク信号を使用することによって、ベアリングワンダーの影響などによる影響を受けない絶対位置、すなわち「ホーム」ポジションを決定することが可能になる。
【0010】
したがって、本発明は、より信頼性の高い絶対位置測定値を提供し、これは、単一の読取りヘッドが基準マークを通過すると生成される基準マーク信号から、基準位置、すなわち定位置を決定する、特許文献1および2に記載されているタイプの従来技術のエンコーダーを使用することで可能である。それに加えて、本発明の装置は、第2の基準マーク信号が生成される前に生成される、第1の基準マーク信号を使用することに注目することが重要である。換言すれば、エンコーダースケールは、エンコーダースケールリーダーに対して回転するので、基準マークは最初に第1の読取りヘッドを通過し、それによって第1の基準マーク信号が生成される。次に、エンコーダーがさらに回転することによって、基準マーク(第1の読取りヘッドを通過した際の基準マークと同一であっても異なってもよい)が第2の読取りヘッドを通過し、それによって、第2の基準マーク信号が続いて生成される。これは、ピクセル化CCDアレイを組み込んだ一対の読取りヘッドを使用して、(絶対)コード化トラックから2つの絶対角度測定値が同時に読み取られる、特許文献4の技術とは大きく異なることが分かる。具体的には、本発明の技術は、絶対位置エンコーダーデバイスを提供することに関連する複雑さを伴わずに実現することができ、すなわち、本発明は、コード化位置トラックを増分トラックおよび複雑なCCDベースの検出器アレイのどちらにも隣接させる必要がなく、また、特許文献4において採用されている信号処理配列も必要としない。その代わりに、本発明は、複雑さの比較的低いエンコーダースケールを使用することができ(例えば、スケールは、その最も簡便な形態において、インクリメンタルスケールと、単一の基準マークのみまたは一対の基準マークとを含むことができる)、また、複雑さの比較的低い基準マーク検出器(例えば、スプリットエレメント検出器)を使用することができる。
【0011】
有利には、エンコーダースケールリーダーの第1および第2の読取りヘッドはそれぞれ、エンコーダースケールとエンコーダースケールリーダーの間の相対移動を示す増分信号を生成するが、前記増分信号は、基準位置設定器が前記少なくとも1つの絶対基準角度位置を決定するのにも使用される。このように、基準位置設定器は、第1および第2の基準マーク信号を、第1および第2の読取りヘッドからの増分信号と組み合わせて使用して、少なくとも1つの絶対基準角度位置を確立する。
【0012】
好ましい一実施形態では、読取りヘッドは、エンコーダースケールに対する読取りヘッドの移動量を示すインクリメンタルパルスを提供する。したがって、装置は、有利には、第1の読取りヘッドとインクリメンタルスケールの間の相対移動を示す、一連の第1のインクリメンタルパルスを生成するように構成される。第1の読取りヘッドは、読取りヘッドがインクリメンタルスケールを超えて移動すると、同位相(I)正弦波成分および直角位相(Q)正弦波成分を含む信号を生成するように構成された増分センサを含んでもよい。第1の補間器が、IおよびQ正弦波信号をデジタル直角位相(方形波)信号に変換するために設けられてもよい。次に、第1のデコーダが、デジタル直角位相信号を一連の第1のインクリメンタルパルスに変換するために設けられてもよい。装置は、便利には、前記第1のインクリメンタルパルスを計数する第1のカウンタを備えてもよい。インクリメンタルスケールに対する第1の読取りヘッドの回転方向を示し、それによって第1のカウンタが適切に計数を増分または減分する第1の計数方向信号も、第1のデコーダによって提供されてもよい。
【0013】
有利には、装置は、第2の読取りヘッドとインクリメンタルスケールの間の相対移動を示す一連の第2のインクリメンタルパルスを生成するように構成される。第2の読取りヘッドは、読取りヘッドがインクリメンタルスケールを超えて移動すると、同位相(I)正弦波成分および直角位相(Q)正弦波成分を含む信号を生成するように構成された増分センサを含んでもよい。第2の補間器が、IおよびQ正弦波信号をデジタル直角位相(方形波)信号に変換するために提供されてもよい。次に、第2のデコーダが、デジタル直角位相信号を一連の第2のインクリメンタルパルスに変換するために提供されてもよい。装置はさらに、前記第2のインクリメンタルパルスを計数する第2のカウンタを備えてもよい。インクリメンタルスケールに対する第2の読取りヘッドの回転方向を示し、それによって第2のカウンタが適切に計数を増分または減分する第2の計数方向信号も、第2のデコーダによって提供されてもよい。
【0014】
第1および第2の読取りヘッドは、同一のタイプのものであってもよく、あるいは、異なるタイプおよび/または構成のものであってもよい。各読取りヘッドは、関連する補間器、デコーダ、およびカウンタに送られる、処理が施されていない同位相信号および直角位相信号を出力してもよい。あるいは、各読取りヘッドは、補間器、デコーダ、およびカウンタのいずれか1つまたは複数を含んでもよい。有利には、第1および第2の読取りヘッドから導き出される増分計数は同じ分解能を有する。例えば、第1および第2の補間器は、便利には、同じ補間因子(interpolation factor)を使用してもよい。
【0015】
2つ以上の読取りヘッドから導き出される増分計数は、組み合わされて、ベアリングワンダーに耐性をもつ結果の増分計数が生成されてもよい。そのようなベアリングワンダーに対する抵抗は、より詳細に後述するように、ベアリングワンダーの影響が、一方の読取りヘッドにおいて他方の読取りヘッドにおいて減少されるのと同じ量だけ計数を増大させるというものであるために生じる。したがって、装置は、好ましくは増分信号ブレンダーを備え、増分信号ブレンダーは、第1および第2のカウンタの計数を加算して、結果の増分計数を提供する加算器を含む。
【0016】
増分信号ブレンダーは、単純な計数加算機能以上の機能を行ってもよいことに留意されたい。インクリメンタルスケールブレンダーは、便利には、結果の増分計数を、その構成要素である増分計数の合計に対して基準化するように構成されてもよい。例えば、増分信号ブレンダーは、結果の増分計数、すなわち第1および第2の計数の合計の半分を提供してもよい。さらに、信号ブレンダーは、便利には、結果の増分計数を記憶する第3のカウンタを含んでもよい。換言すれば、第1および/または第2のカウンタの計数は、中間デジタル直角位相信号(例えば、同位相および直角位相方形波)に変換され、それが一連のパルスにデコードされ、次に第3のカウンタによって計数されてもよい。より詳細に後述するように、追加のカウンタは、前記第1および第2のカウンタと並列に使用されて、そのような中間デジタル直角位相信号を生成してもよく、そのような構成は、第1および第2のカウンタのロールオーバーおよびリセットと関連する影響を克服する単純な技術を提供する。
【0017】
便利には、基準位置設定器は、結果の増分計数が前記角度反復可能な位置に直接関連するように構成される。換言すれば、結果の増分計数を生成するとき、ある種の補正値またはオフセットが適用されるので、結果の増分計数値は、エンコーダースケールリーダーに対するエンコーダースケールの絶対角度位置に関連する。例えば、結果の増分計数は、エンコーダースケールが基準位置設定手段によって決定された角度反復可能な基準位置にあるとき、「ゼロ」値を採用するように構成されてもよい。
【0018】
第1および/または第2のカウンタの計数を選択的にリセットすることによって、結果の増分計数と角度反復可能な位置の間に直接関係が確立されてもよい。有利には、基準位置設定器は、第1の読取りヘッドが第1の基準マーク信号を提供したとき、第2のカウンタをゼロにするように構成される。便利には、基準位置設定器は、第2の読取りヘッドが第2の基準マーク信号を提供したとき、第2のカウンタをゼロにするように構成される。さらに、基準位置設定器は、便利には、第1の読取りヘッドが第1の基準マーク信号を提供したとき、第1のカウンタをゼロにするように構成されてもよい。基準位置設定器はまた、有利には、第2の読取りヘッドが第2の基準マーク信号を提供したとき、第1のカウンタをゼロにするように構成されてもよい。
【0019】
好ましい一実施形態では、基準位置設定器は、第1の基準マーク信号が生成されたとき、第1および第2のカウンタをゼロにするように、また、第2の基準マーク信号が生成されたとき、第2のカウンタを(再び)リセットするように構成される。このように、第2の基準マーク信号が生成された瞬間に、第2のカウンタはゼロの値を記憶し、第1のカウンタは、第1の読取りヘッドが基準マークを認識したときと第2の読取りヘッドが基準マークを認識したときとの間で生成される、第1のインクリメンタルパルスの数に等しい計数値を記憶する。この合計の計数値は、角度反復可能な(ベアリングワンダーに耐性をもつ)基準位置に関係する計数値となる。
【0020】
結果の増分計数を実際に補正する代わりに、装置起動と装置起動の間の結果の増分計数を、同じ角度反復可能な基準位置に結び付けることができるように、計数補正値が決定されてもよい。したがって、基準位置設定器は、便利には、結果の増分計数と、基準位置設定手段によって確立される角度反復可能な基準位置との間の関係を提供する、計数補正値を決定するように構成される。
【0021】
有利には、基準位置設定器は、エンコーダースケールリーダーがエンコーダースケールに対して回転したとき、第1の基準マーク信号の生成と第2の基準マーク信号の生成との間の、第1のカウンタおよび第2のカウンタの少なくとも1つの計数の差を決定するように構成される。これは、基準マーク信号が第1および/または第2の読取りヘッドによって生成されたとき、第1および/または第2のカウンタの値を記憶する、1つまたは複数の電子メモリを設けることによって実現されてもよい。
【0022】
このようにして、インクリメンタルスケールおよび1つまたは複数の基準マークを有するエンコーダースケールと、少なくとも2つの読取りヘッドを有するエンコーダースケールリーダーとを備え、エンコーダースケールリーダーが、スケールリーダーとスケールの間の移動を示す一連のインクリメンタルパルスを生成するように構成され、基準位置設定器が提供されて、エンコーダースケールリーダーがエンコーダースケールに対して回転したとき、基準マークを検出する第1の読取りヘッドと基準マークを検出する第2の読取りヘッドとの間の増分計数の数を確立する、回転エンコーダー装置が、本発明に従って提供される。
【0023】
上述の基準位置設定器は、必要なときは常に、角度反復可能な基準位置を確立するのに使用されてもよい。基準位置は継続的に確立することができるが、一般的には、必要なときのみ見出される。例えば、オペレータが要求したとき、または何らかの種類の動作エラーが検出された場合(例えば、増分計数の損失、もしくはその計数におけるエラーの存在)に、周期的に生成されてもよい。
【0024】
有利には、基準位置設定器(基準位置設定手段と称されることもある)は、設定期間の間のみ、角度反復可能な基準位置を確立するように構成される。設定期間は、有利には、装置の電源が入れられたときに始まり、第1および第2の読取りヘッドが両方とも、生成された基準マーク信号を有したときに終わる。換言すれば、角度反復可能な基準位置は、機械を作動させるたびにのみ確立されてもよい。このことは、装置の電源が切られたとき、増分計数は一般的に失われるという理由で便利である。ユーザは、起動時に、エンコーダーを回転させるように指示して、必要な基準マーク信号を生成できるようにしてもよい。LEDまたは他のインジケータが装置上に設けられて、設定ルーチンが要求されていること、かつ/または完了したことを示してもよい。例えば、LEDは、設定前に点滅し、設定ルーチンが完了すると連続して光ってもよい。設定状態を示すため、出力ラインも、または代替物として設けられてもよい。
【0025】
有利には、装置は、エンコーダースケールリーダーが、関連するエンコーダースケールに対して予め定められた絶対角度にあるとき、合成基準マークパルスを出力する手段を備えてもよい。換言すれば、装置は、以下、合成基準マークと称されるものを出力するように構成されてもよい。具体的には、結果の増分計数が、位置設定手段によって決定された絶対角度に対応すると分かっている特定の値(例えばゼロ)に達したときに、合成基準マークパルスが生成されてもよい。結果の増分計数から合成基準マークパルスを生成することで、エンコーダースケールにおいて形成された単一の基準マークから、基準マークパルスを生成することに関連する問題が克服され、角度反復可能な合成基準マーク出力が生成される。
【0026】
合成基準マークは、基準マークの検出によって直接生成されないので、必要であれば、ユーザ定義可能にすることができる。したがって、予め定められた絶対基準角度はユーザ定義可能であってもよい。例えば、結果の増分計数が、エンコーダースケールと、エンコーダースケールリーダーの第1および第2の読取りヘッドの光心線との間の、特定の角度関係に対応する選択された値に達したときは常に、合成基準マークが生成されてもよい。
【0027】
ユーザは、合成基準マークパルスが多数のやり方で生成される、予め定められた絶対角度を選択してもよい。例えば、装置は、回転エンコーダーが所望の基準角度にあるとき、ユーザがボタンなどを押すことができるように構成されてもよい。したがって、所望の基準角度における結果の増分計数は、装置によって記憶されてもよい。好ましくは、そのような任意の値は不揮発性メモリに(例えば、フラッシュメモリに)記憶されるので、電源が切られても存続する。このように、ユーザ定義可能であって角度反復可能な合成基準マークを、必要に応じて提供することができる。必要であれば、エンコーダーの1回転ごとに、1つを超える合成基準マークを生成できることに留意されたい。例えば、装置は、必要に応じて、合成された擬似乱数の距離でわけられたマークまたはパラレル出力マークを生成するように構成することができる。
【0028】
エンコーダースケールは、便利には、1つの基準マークを含む。あるいは、エンコーダースケールは、少なくとも2つの基準マークを含んでもよい。2つ以上の基準マークは任意の角度だけオフセットすることができるが、基準マーク間のオフセット角度は、好ましくは、読取りヘッドの分離角度とは異なる。便利には、エンコーダースケールは、5以下、10以下、50以下、または100以下の基準マークを含む。有利には、基準マークは、孤立して、互いから区別不能である。基準マークはまた、好ましくは、エンコーダースケールの回りの複数の別個の距離を空けた位置に構成される。換言すれば、基準マークは、エンコーダースケールの回りで不連続的に構成されてもよく、すなわち、基準マークは、便利には、絶対位置測定値を提供するのに一般的に使用されるタイプの、あらゆる種類の連続的なコード化トラックを形成しない。
【0029】
エンコーダースケールの基準マークはユーザ選択可能であってもよい。例えば、エンコーダースケールは複数の可能な基準マークを提供してもよい。したがって、ユーザが配置可能なステッカーなどが、各読取りヘッドによって基準マークとして認識されるべき、それらの可能な基準マークのみに隣接して配置されてもよい。基準マークは、光学読取り可能であってもよく(例えば、明るい背景上の暗い線または線のパターンを含んでもよい)、その場合、各読取りヘッドは適切な光学基準マークセンサを含む。非光学基準マーク(例えば、磁気、容量性、誘導性、伝導性など)、およびそれに対応する適切なタイプの基準マークセンサが、代わりに提供されてもよい。
【0030】
エンコーダースケールは任意の既知のタイプのものであってもよい。便利には、エンコーダースケールを保持するリングが設けられる。例えば、リングの上に直接エンコーダースケールがマークされてもよい。光学エンコーダースケールは、特許文献5に記載されているように、パルスレーザーによってそのようなリング上にマークされてもよい。スケールは、リングの外縁上にマークされてもよく、または、放射状スケールのマーキングが設けられてもよい。便利には、基準マークはインクリメンタルスケールに埋め込まれる。光学スケールを一例に挙げると、埋込み型の基準マークはインクリメンタルスケールの濃いラインを含んでもよい。このように、隣接するインクリメンタルスケールおよび基準マークスケールを設け、それによってエンコーダースケールのサイズを低減する必要はない。
【0031】
有利には、第1および第2の読取りヘッドはほぼ正反対に向かい合っている。換言すれば、第1および第2の読取りヘッドは、エンコーダースケールの回りで約180°の角度で分離される。正反対に向かい合った読取りヘッドからの増分計数を混合することで、より詳細に上述したようなベアリングワンダーに対する最適な耐性がもたらされる。
【0032】
2つの読取りヘッド(すなわち、第1および第2の読取りヘッド)を設けることで、奇数次高調波のすべて(すなわち、一次、三次、五次などの高調波)を補償することが可能になるが、偶数次高調波と関連する影響は取り除かれない。しかし、偶数次高調波の影響は、エンコーダースケールの回りでほぼ均等に間隔を空けた追加の読取りヘッド対を設けることによって取り除くことができる。したがって、エンコーダースケールリーダーは、有利には、1つまたは複数の追加の読取りヘッド対を含む。読取りヘッドを一対追加し、そこからの増分計数を第1および第2の読取りヘッドの増分計数と混合することで、二次高調波の影響も取り除かれた、結果の増分計数が得られる。読取りヘッドを二対追加(すなわち、合計6つの読取りヘッド)することで、さらに四次の影響が取り除かれ、読取りヘッドを三対追加(すなわち、合計8つの読取りヘッド)することで、さらに六次の影響が取り除かれ、それ以降も同様である。読取りヘッドの数を増加することで、装置の全体的な精度が改善されるが、4つを超える読取りヘッドを設けることと関連する追加の利益は、非常に高精度のエンコーダーデバイスにおいてコストが追加されるだけの価値しかないことが理解されるであろう。
【0033】
正反対に向かい合った読取りヘッド対を設けることは、一般的に、数学的に単純にするためには好ましいが、エンコーダースケールリーダーは、1つまたは複数の追加の読取りヘッドを含むことができる。例えば、エンコーダースケールリーダーは、120°の角度で間隔を空けた3つの読取りヘッドを含むことができる。有利には、エンコーダースケールリーダーの読取りヘッドはすべて、固定の間隔を空けた関係で維持される。例えば、すべての読取りヘッド(例えば、第1、第2、および任意の追加の読取りヘッド)は、共通の支持部材に固定されてもよい。
【0034】
有利には、エンコーダースケールは、180°超過の角度にわたってエンコーダースケールリーダーに対して回転可能である。例えば、回転エンコーダーは、360°超過の角度にわたって完全に自由に回転可能であってもよい。そのような例では、第1および第2の読取りヘッドが正反対に向かい合う場合、エンコーダースケールは、両方の読取りヘッドによって読み取ることができる基準マークを1つだけ含むことができる。ただし、必要であれば、1つを超える基準マークを設け、それによって、基準マークが各読取りヘッドを通過するのに必要な回転量を低減することができることに留意されたい。
【0035】
エンコーダースケールは、代わりに、180°未満の角度にわたってエンコーダースケールリーダーに対して回転可能であってもよい。例えば、回転エンコーダーは、回転移動がある程度制限される、いわゆるパーシャルロータリー型(partial rotary)デバイスであってもよい。回転量が180°未満の場合、回転したとき、各読取りヘッドが少なくとも1つの基準マークを読み取ることができるように、エンコーダースケール上に十分な基準マークが設けられることが好ましい。そのような例では、基準マークは、好ましくは、読取りヘッドの間の分離角度未満の角度だけオフセットされる。例えば、第1および第2の読取りヘッドが正反対に向かい合う場合、基準マークは約160°だけ分離していてもよい。その結果、基準マークが各読取りヘッドを通過するためには、回転エンコーダーは最低限の20°だけ回転すればよい。
【0036】
本発明によれば、機械(例えば、工作機械、マシニングセンター、座標測定機など)は、上述のような回転エンコーダー装置を備えてもよい。エンコーダースケールリーダーおよび機械の台板は、便利には、固定の間隔を空けた関係を有してもよい。換言すれば、エンコーダースケールリーダーの読取りヘッドは、機械の不動部(例えば、台板またはフレーム)に対して固定位置を有してもよい。そのような例では、エンコーダースケールがエンコーダースケールリーダーに対して、したがって機械の台板に対して回転できるようにするため、軸受が設けられてもよい。エンコーダースケールは、機械の回転(可動)部に対して固定の間隔を空けた関係にあってもよい。あるいは、エンコーダースケールは、機械の台板に対して固定の間隔を空けた関係を有してもよい。そのような例では、エンコーダースケールリーダーの読取りヘッドは、エンコーダースケールに対して回転してもよい。例えば、読取りヘッドを支持する部材は、機械の回転部に取り付けられてもよい。当業者には理解されるように、回転エンコーダーは、エンコーダースケールとエンコーダースケールリーダーの間の相対回転を測定するが、そのような相対回転がどのように提供されるかは無関係である。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、回転エンコーダーのためのインターフェースが提供される。回転エンコーダーは、少なくとも第1および第2の読取りヘッドを備え、読取りヘッドはそれぞれ、関連するエンコーダースケールの基準マークを通過したとき、基準マーク信号を生成するように構成される。インターフェースは、第1の読取りヘッドによって生成される第1の基準マーク信号と、第2の読取りヘッドによって続いて生成される第2の基準マーク信号とを使用して、エンコーダースケールリーダーに対するエンコーダースケールの角度反復可能な基準位置を確立するように構成される。このタイプのインターフェースは、既存の(例えば、二重読取りヘッド)エンコーダー装置に対するレトロフィットとして提供されてもよく、または、2つ以上の読取りヘッドも含むキット内に提供されてもよい。
【0038】
本発明の第3の態様によれば、回転エンコーダーを作動させる方法は、(a)少なくとも第1および第2の読取りヘッドを含むエンコーダースケールリーダーに対して移動可能な、一連の増分マークおよび少なくとも1つの基準マークを含むエンコーダースケールを有する、回転エンコーダーを受け入れる工程と、(b)1つの基準マークが第1の読取りヘッドを通過し、それによって第1の基準マーク信号を生成するように、エンコーダースケールリーダーに対して前記エンコーダースケールを回転させる工程と、(c)1つの基準マークが第2の読取りヘッドを通過し、それによって第2の基準マーク信号を生成するように、エンコーダースケールリーダーに対して前記エンコーダースケールをさらに回転させる工程と、(d)第1の基準マーク信号および第2の基準マーク信号から、エンコーダースケールリーダーに対するエンコーダースケールの少なくとも1つの絶対基準角度位置を確立する工程とを含む。有利には、工程(c)は、エンコーダースケールリーダーに対して、少なくとも1°、少なくとも5°、少なくとも10°、少なくとも15°、少なくとも30°、または少なくとも45°エンコーダースケールを回転させることを含む。したがって、エンコーダーが回転すると、第1および第2の基準マーク信号が非同時に生成される。
【0039】
便利には、エンコーダースケールリーダーは、エンコーダースケールに対する前記第1および第2の読取りヘッドの回転を示す増分信号(例えば、増分計数)を生成するように構成され、その際、工程(d)は、絶対基準角度位置を設定するとき、前記増分信号を使用することを含む。有利には、エンコーダースケールリーダーは増分計数を提供するように構成され、工程(d)は、第1の基準マーク信号の生成と第2の基準マーク信号の生成との間の増分計数の数を決定することを含む。
【0040】
エンコーダースケールリーダーは、便利には、エンコーダースケールに対する第1の読取りヘッドの移動を示す増分計数を記憶する第1の増分カウンタと、エンコーダースケールに対する第2の読取りヘッドの回転を示す増分計数を記憶する第2の増分カウンタとを含んでもよく、その際、工程(d)は、第1の読取りヘッドが基準マークを通過したとき、第1および第2のカウンタをリセットすることを含む。有利には、工程(d)は、第2の読取りヘッドが基準マークを通過したとき、第1および第2のカウンタの1つをリセットすることを含む。便利には、この方法は、エンコーダースケールリーダーに対して、少なくとも丸1回転だけエンコーダースケールを回転させる工程をさらに含む。次に、便利には、ライン計数を決定する工程が行われてもよい。
【0041】
本発明を、単に一例として添付図面を参照して以下に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図1を参照すると、第1の読取りヘッド4および第2の読取りヘッド6を含むエンコーダー装置2が、示されている。第1および第2の読取りヘッドは、その円周に目盛られたスケールを有する回転可能なリング8に対して正反対に向かい合う位置に配置される。リング8は、軸受(図示なし)上に取り付けられ、中心点12の回りでわずかに回転可能である。また、読取りヘッドの光心線10も、示されている。
【0043】
リング8上に形成されたスケールは、周期的に繰り返される一連の明暗のラインからなるインクリメンタルアンプリチュードスケール(incremental amplitude scale)である。ラインの幅は、必要とされる位置分解能に依存し、代表的に、2〜100μm程度である。本明細書にはアンプリチュードスケールが記載されるが、代わりに、位相スケールを設けることができる。非光学的な構成も、使用することができる。
【0044】
第1の読取りヘッド4および第2の読取りヘッド6は、それぞれ、インクリメンタルオプティカルセンサを含む。インクリメンタルオプティカルセンサは、それぞれ、インクリメンタルスケールのラインを検出し、スケールが読取りヘッドを通過し移動せしめられるとき、直角位相にある2つの正弦波出力信号(すなわち、正弦信号、および、余弦信号)を発生するように構成される。そのような直角位相信号を供給することにより、読取りヘッドの移動量とそのような移動の方向の両方を決定することが可能とされる。代表的には、直角位相信号は、一連のインクリメンタルパルスに変換され、インクリメンタルスケールに対する読取りヘッドの移動量の目安をもたらすようにそのようなインクリメンタルパルスの数が計数される。このタイプのインクリメンタルスケール読取り装置は知られており、他にもより詳細に記載されている(例えば、欧州特許第514081号、および、欧州特許第543513号(特許文献6および7)を参照)。
【0045】
回転エンコーダー装置に使用される軸受は、ある程度の位置合わせ不良、および、時間が経つにつれて、または、使用に伴って増大することがある固有のワンダー(wander)を有するだろう。したがって、リング8の回転軸線が、回転エンコーダーの使用中、予測不可能な方法で変わることがある。エンコーダーが単一の読取りヘッドのみからなる場合、リングの回転によってインクリメンタルスケールのラインが読取りヘッドを通過しているのか、あるいは、ベアリングワンダーによってリングの直線移動が、読取りヘッドを通過したのかを見分ける方法がない。しかし、二つの読取りヘッドのシステムを用意することにより、ベアリングワンダーによって影響されない第1および第2の読取りヘッドの増分計数から、平均増分計数(C
u)を導き出すことが可能になる。平均増分計数(C
u)は、次式によって得られる。
C
u=(C
a+C
b)/2 (1)
【0046】
式中、C
aおよびC
bは、それぞれ、第1の読取りヘッド4および第2の読取りヘッド6からの瞬間増分計数である。式(1)は、分母に「2」を含むが、その分母は、あらゆる値を取り得ることに留意されたい(例えば、1以上のあらゆる整数であり得る)。
【0047】
次に、図
1Aから図
1Cをそれぞれ順に参照するに、ベアリングワンダーの影響に対する平均インクリメンタルパルス計数(C
u)の抵抗度が、説明されるだろう。換言すれば、公称の中心点12から離れるリング8の回転軸線における移動に対する平均インクリメンタルパルス計数(C
u)の復元度が概説されるだろう。図
1Aは、読取りヘッドの光心線10に実質的に垂直な方向に「x」μmの移動が生じるベアリングワンダーの第1の例を示す。そのような実施例では、第1の読取りヘッド4の計数は「x」μmだけ増大し、第2の読取りヘッド6の計数は「x」μmだけ減少する。従って、第1および第2の読取りヘッドの平均計数は、そのようなベアリングワンダーに影響されないことが分かる。図
1Bを参照すると、「x」μmの移動が読取りヘッドの光心線10に実質的に平行な方向に生じるベアリングワンダーの第2の例が示される。したがって、各読取りヘッドの増分計数は影響されない。図
1Cを参照すると、ベアリングワンダーの第3の例が示される。この例では、「x」μmの移動が、読取りヘッドの光心線10に対してψ°の角度で生じる。第1の読取りヘッド4の増分計数は、xSinψμmだけ減少し、第2の読取りヘッド6の増分計数は、xSinψμmだけ増大する。第1および第2の読取りヘッドの平均増分計数(C)は、また、零であり、すなわち、ベアリングワンダーによって影響されない。
【0048】
上記に概説したように、増分計数(平均増分計数Cuを含む)は、読取りヘッドとインクリメンタルスケールとの間の相対的な移動に関する情報をもたらす。しかし、増分計数は、スケールに対する読取りヘッドの絶対的な位置に関する情報をもたらすことはできない。それゆえに、絶対位置、すなわち、「ホーム」ポジションを与えるために少なくとも1つの基準マークを設けることが知られている。したがって、そのエンコーダー装置は、インクリメンタルスケールに加えて、絶対位置のインジケータの働きをする少なくとも1つの基準マークを有するスケールを備えてもよい。その場合、読取りヘッドは、読取りヘッドが基準マークを通過したとき、基準マーク信号(例えば、基準マークパルス)をもたらすように基準マークの検出器を含んでもよい。これにより、スケールに対する読取りヘッドの絶対位置を決定することが可能になる。単一の基準マークのみが必須であるが、必要であれば、多数のそのような基準マークが設けられ得る。例えば、ユーザ選択可能な基準マーク、またはコード化角度の(angle coded)基準マークをリングの回りに配置することができる。さらに、基準マークは、必要であれば、欧州特許第1360461号(特許文献8)に記載されているように、インクリメンタルスケールに結合するか、埋め込まれることができる。
【0049】
2つの読取りヘッドからの平均増分計数を使用することによって、ベアリングワンダーの影響が増分計数から排除されるが、それは、基準マークの測定された角度位置に対するベアリングワンダーの影響を解消するものではないことが、わかる。これは、絶対基準角度位置が決定可能とされる精度が、ベアリングワンダーの量によって表されることを意味する。換言すれば、大量のベアリングワンダーを有する回転エンコーダーに対して決定される「ゼロ」基準位置には著しい誤差があり得る。
【0050】
次に図
2A、図2Bを参照すると、基準マークの測定角度位置に対するベアリングワンダーの影響が示されている。
【0051】
図2aは、第1の読取りヘッド4、第2の読取りヘッド6と、それに形成された基準マーク20を有する回転可能なリング8とを有する回転エンコーダーを示す。また、第1および第2の読取りヘッドの光心線10も示される。リング8が読取りヘッド4および6に対して回転せしめられる場合、基準マーク20は、各読取りヘッドを1回転ごとに一度通過する。従って、一方の読取りヘッドを通過する基準マークは、他方の読取りヘッドで同時に生じる対応したイベントを伴わないことが分かる。したがって、上述のタイプの平均化方式を、基準マークに対する増分計数に適用することは不可能である。要するに、基準マークの角度位置は、ベアリングワンダーによって影響されることが分かる。
【0052】
基準マークにおける測定された角度位置に対するベアリングワンダーの影響をより良く理解するため、公称の中心点12に取り付けられた、すなわち、リング8の回転の真の中心に取り付けられるレーザー(laser)を検討する。ベアリングワンダーがない状態では、基準マークおよびレーザーは、両方とも、遠く離れた(例えば、ほぼ無限大)単一の遠隔地点22を正確に指し、このことは
図2aに示されている。ここで、
図2bを参照すると、ある量、xだけのベアリングワンダーの場合、第1の読取りヘッド4は、公称の中心点12に対して以前と異なる角度でマークする基準マーク20を検出する。したがって、そのレーザーは、最早、地点22に向かず、大きな距離Yだけ遠隔地点22を外れるだろう(通り過ぎて向く)。この例では、Yは、地点22までの(無限大近傍)距離に、Tanθ
ε(θ
εは角度変化)を掛けたものである。この問題は、角度の非反復性と称することができる。
【0053】
上述のことに従って、既知の回転エンコーダーは、スケールに形成された物理的な基準マークを単に読み取ることによって、反復可能な角度方向を決定することができないことが分かる。絶対位置、すなわち、基準位置を画定するためにそのような基準マークを使用することは、角度の非反復性の要因が常にもたらされる。これは、読取りヘッドによって発生される基準マーク信号が、そのシステムがゼロに戻されたり電源を入れられたりするごとに、異なる角度で生成されることにつながり得る。このことは、回転エンコーダーによってもたらされる角度測定値が絶対項の形で反復不能であることにつながる。
【0054】
単一の読取りヘッドによって発生される基準マーク信号のみに依存することなく、絶対位置の指示をもたらすために両方の読取りヘッドによって発生される基準マーク信号を使用して結果として得られる(ベアリングワンダーの抵抗度)増分計数を絶対方位角に関連させることができることがわかる。結果として得られる増分計数が絶対角度と関連させられるならば、それから、結果として得られる増分計数から合成基準マーク信号が形成され得る。このように、反復可能な角度の合成基準マーク信号が発生可能とされる。
【0055】
上述の例を採用すると、これによって、リング上のマークがある遠隔地点を向いているときは常に、合成基準マークを形成することが可能になる。たとえその軸受が引き続いて動いても、合成基準マークが出力される角度は、同じである。システム全体がベアリングワンダーと等しい量だけシフトされるとしても、リングの角度は、正確に、元のとおりのままである。このことが遠隔地点で想像上のレーザーポインティング(laser pointing)に及ぼす影響は、ベアリングワンダーの量xに等しい無視できる量だけレーザードットを移動させるということである。
【0056】
図
3A、図3Bを参照すると、反復可能な角度の合成基準マークをもたらすように2つの読取りヘッドによって作られる基準マーク信号を使用する装置が示される。
【0057】
図
3Aは、第1の読取りヘッド4、第2の読取りヘッド6と、第1の基準マーク32および第2の基準マーク34を有する半径Rの回転可能なリング30とを含む回転エンコーダー装置を示す。第1の読取りヘッド4および第2の読取りヘッド6は、実質的に正反対の位置にあり、(視差および他の設置誤差は無視する)、上述のような耐ベアリングワンダーをもつ増分計数の利点を付与する。第1の基準マーク32および第2の基準マーク34は、完全に正反対の位置になく、180°から角度θ
sだけ、より正確にはC
sの増分計数分だけオフセットされる。
【0058】
図
3Bは、回転中心が光心線10の右へxμmのところにあるようにその軸受が移動した後の図
3Aの装置を示す。そのリングが時計回り方向に回転せしめられたとき、第1の基準マーク32は第1のヘッド4によって検出され、そのリングは、ベアリングワンダーがなかったとき(すなわち、図
3Aに示されるように)と同じ角度にはないことが分かる。換言すれば、第1の基準マークは、角度θ
εだけ「早く」第1の読取りヘッド4によって検出される。角度θ
εは、増分計数C
εとして表すこともできる。xは未知数なのでθ
εは幾何学的に計算できないことに留意されたい。
【0059】
ベアリングワンダーがない(すなわち、図
3Aに示されるように)場合、第2の基準マーク34は、第1の基準マーク32が第1の読取りヘッド4を通過後、増分計数C
s分だけ第2の読取りヘッド6を通り過ぎる。しかし、
図3Bに示されるように、その軸受が移動している場合、第2の基準マーク34は、計数C
s以上遅れて第2の読取りヘッド6を通り過ぎる。従って、図
3Bに示されるベアリングワンダーの影響は、リングが、角度θ
εの二倍に等しい付加的な角度にわたって回転しなければならないという点にあることが分かる。第1の読取りヘッド4によって観測される第1の基準マーク32と、第2の読取りヘッド6によって観測される第2の基準マーク34との間の合計の増分計数は、C
tとして定義される。ベアリングワンダーが、図
3Bに示されるのと反対方向の場合、角度θ
εは負となる。
【0060】
計数C
sは、定義上は定数であり、あらゆる所定のリングについて既知であり得る。さらに、計数C
tは容易に測定することができる(軸受が移動するどちらの方向でも問わない)。したがって、ベアリングワンダーによって引き起こされる誤差による付加的な計数の数(すなわち、C
ε)は、次式によって計算することができる。
C
ε=(C
t−C
s)/2 (2)
【0061】
したがって、式(2)により、反復可能な「ゼロ」角度、即ち、合成基準マークが、ベアリングワンダーによる角度誤差に負けないと決定することが可能になる。
【0062】
使用の際、回転エンコーダー装置は、システムの電源が投入されるごとに値C
tを決定するように構成され得る。それから、値C
s(あらゆる所定のリングに対する定数である)をC
tから差し引き、その結果を2で割って、C
εをもたらすことができる。それから、読取りヘッドによって(例えば、第1の読取りヘッド4によって)決定された原ゼロ位置を修正するように計数C
εが使用され、あらゆるベアリングワンダーの影響を考慮に入れることができ、それによって、反復可能な基準角度(例えば、耐ワンダー零角、即ち、合成基準マーク)を導き出すことが可能になる。C
εの値は、第2の基準マーク34が第2の読取りヘッド6を通過する場合、存在するベアリングワンダーの量とは無関係であることに留意されたい。C
tの値は、第1の基準マーク32が第1の読取りヘッド4を通過する場合、存在するワンダーが引き起こす誤差のみによって決まる。換言すれば、第2の基準マーク34が第2のヘッド6に到達する以前、そこを通過しなければならないスケールの量は、ベアリングワンダーのあらゆる変化に関わらず同じままなので、第1の基準マーク32が第1の読取りヘッド4を通過した後のあらゆる軸受の動きは、重要ではない。
【0063】
第1の読取りヘッド4および第2の読取りヘッド6は、第1および第2のインクリメンタルパルスカウンタ(
図3には図示なし)を関連させている。これらのカウンタは、各読取りヘッドがインクリメンタルスケールに沿って通過すると発生されるインクリメンタルパルスの数を計数するために設けられる。第1の基準マーク32が第1の読取りヘッド4を通過するとき、第1および第2のカウンタがゼロにリセットされる場合、そのカウンタがリセットされたことによってシステムが回転した真の角度は、上記の式(1)によって与えられる。したがって、「真の」零角と、カウンタがリセットされたときのリングの角度との間の計数の誤差は、上記の式(2)によって与えられる。式(2)で与えられる計数誤差を、式(1)の未修正の平均増分計数値から差し引き、再構成することによって、次式のとおり、絶対ゼロ位置に対する修正済みの結果の増分計数(C)が得られる。
C=(C
a+C
b−C
t+C
s)/2 (3)
【0064】
第1のヘッド4が第1の基準マーク32を通過したとき、第1および第2のインクリメンタルパルスカウンタが両方ともゼロにされた場合、第2のヘッドが第2の基準マーク34に達した瞬間、C
bの値は、値C
tに等しい。C
tの値は、メモリに記憶され、増分計数を調節するのに絶えず使用可能とされ、または、より簡単には、第2の読取りヘッド6が第2の基準マーク34を通過したとき、第2の読取りヘッドに対する計数(C
b)をゼロにリセットすることができる。後者の選択肢が選択された場合、計数C
bは、本質的に成分−C
tを含む。
【0065】
増文計数値の値C
sは、あらゆる所定のリングに対して定数である。さらに、必要条件が起動と起動との間の角度反復性であり、異なる段取り相互間の角度反復性ではないので、この項は、実用上、無視することができる。実際には、これは、真のゼロ度位置と計算された計数位置C=0との間の計数が、計数C
sの半分に等しい定数値だけ常に異なることを意味する。
【0066】
ヘッドが位置合わせ不良である場合、式(2)において定義される関係は、位置合わせ不良によって生じる計数に関連する項(C
h)も含むことに留意されたい。しかし、C
sと同様に、C
hの値は、あらゆる所定の装置に対する定数であり、したがって、無視することができる。また、そのような項により、Cのゼロ位置が、計数C
hの半分に等しい定数値だけずれることがある。
【0067】
あらゆる設置誤差は、一定であるので、付加的な項C
rを含めることによって容易に取り除くことができる。C
rの値は、不揮発性メモリに記憶され、所望の角度に初期化した後にリングを回転させ、かつ例えばスイッチを押すことによって形成されるユーザ定義のオフセットとして設定することもできる。次に、その所望の地点における増分計数の値を使用して、結果としての増分計数(C)がその後、その角度において常にゼロであるようにすることができる。そのような場合、結果の増分計数をもたらす式は、次式のようである。
C=(C
a+C
b−C
t+C
s+C
h+C
r)/2 (4)
【0068】
リングにおける2つの基準マークを使用することを上述したが、実際には、1つの基準マークのみが求められる。
【0069】
第1および第2の読取りヘッドと、単一の基準マークを有するリングとを有する完全に設置されたエンコーダーの場合、そのシステムは、基準マークが第1の読取りヘッドを、次に第2の読取りヘッドを通過するように、リングを例えば時計回り方向に回転させることによって初期化される。基準マークが第1の読取りヘッドを通過したとき、両方の読取りヘッドと関連するカウンタがゼロに設定され、基準マークが第2の読取りヘッドを通過したとき、第2の読取りヘッドと関連するカウンタがゼロにリセットされる場合、反復可能なゼロ点は、常に90°のところにある。そのエンコーダーは、後述するように、基準マークが異なる順序で読取りヘッドを通過する場合であっても、または、リングが反対方向に回転する場合であっても、この反復可能なゼロ点を決定するように構成可能とされることに留意されたい。
【0070】
そのような読取りヘッドのあらゆる位置合わせ不良は、決定されたゼロ点が、計数C
hの半分に等しい計数の数だけどちらかの側に90°移動することによって生じる。ユーザ定義可能なオフセットC
rも、ゼロ点をあらゆる求められる角度に移動させるのに使用することができる。このように、零角は、ユーザによって定義することができ、設置が一定であると仮定すると、零角の位置は、真に角度反復可能である。必要であれば、そのエンコーダーは、回転ごとにCがゼロ(または任意の他の1つもしくは複数の値)に達したとき、合成基準マーク信号を出力するように構成することができる。ユーザに対しては、合成基準マーク信号は、単一の読取りヘッドの基準マークセンサによって発生されるであろう基準マーク信号と同様に構成されてもよい。
【0071】
ここで、
図4を参照すると、
図3を参照して記載したタイプの回転エンコーダー装置用の電子ユニット40が説明されるだろう。ユニット40は、第1の読取りヘッド46および第2の読取りヘッド48それぞれから処理が施されていない(アナログ)直角位相信号(すなわち、サイン信号およびコサイン信号)を受け取るように構成される第1の補間器42および第2の補間器44を含む。第1および第2の補間器は、第1のデコーダ50および第2のデコーダ52にそれぞれ送られるデジタル直角位相(方形波)信号(すなわち、信号QA_1、QB_1、QA_2、およびQB_2)を生成する。第1のデコーダ50および第2のデコーダ52は、それぞれ、計数および方向信号を生成する。
【0072】
第1の4ビットカウンタ54および第2の4ビットカウンタ56は、それぞれ、第1および第2のデコーダからの計数および方向信号を受け取る。第1および第2の4ビットカウンタによる4ビット数出力は、合計出力をもたらす加算器58によって一緒に加算される。合計出力のビット[1]および[2]は、排他的論理和ゲート60に送られ、直交位相信号の第1の部分(Quad A)を生成し、ビット[2]は、直交位相信号の第2の部分(Quad B)をもたらす。「Quad A」および「Quad B」信号は、必要であれば、ユニット40から(例えば、デコーダ/カウンタユニットに対し)出力されてもよい。
【0073】
また、第1の32ビットカウンタ62および第2の32ビットカウンタ64も、第1のデコーダ50および第2のデコーダ52からの計数および方向信号を受け取る。第1および第2の32ビットカウンタによって出力される32ビットの計数値は、合計出力(C
z)をもたらす加算器66によって一緒に加算される。除算器68は、出力(C
z)を半分にして値C
z/2をもたらすように構成される。
【0074】
第1の読取りヘッド46および第2の読取りヘッド48からの基準マークパルスもそれぞれ、第1の32ビットカウンタ62および第2の32ビットカウンタ64に供給される。初期設定ルーチンの間、第1の読取りヘッド46が基準マークを通過し、それによって基準マーク信号を生成すると、第1の32ビットカウンタ62がゼロにリセットされる。それから、初期設定ルーチンの間に、第2の読取りヘッドが基準マークを通過すると、第2の32ビットカウンタ64が0に設定される。換言すれば、基準マークが関連する読取りヘッドによって初めて検出されたとき、第1および第2の32ビットカウンタが、リセットされる。
【0075】
ユニット40は、状態機械70をさらに含む。状態機械70は、計数値C
z/2、第1の32ビットカウンタ62および第2の32ビットカウンタ64によって生成される32ビット計数値C
AおよびC
B、ならびに、第1の読取りヘッド46および第2の読取りヘッド48それぞれによって生成される複数の基準マークパルスを受け取るように構成される。状態機械70は、32ビットパルス計数値(C
p)、32ビット計数値C’、およびロードコマンドを第3の32ビットカウンタ72に出力するように構成される。第3のデコーダ74も、加算器58から導き出される「Quad A」および「Quad B」信号を受け取るために設けられる。第3のデコーダ74によって生成された結果としての計数および方向信号も、第3の32ビットカウンタ72に送られる。
【0076】
第3の32ビットカウンタ72は、第3のデコーダ74によって供給される計数および方向信号からマスターインクリメンタルカウント(master incremental count)Cを生成し、この計数Cは、比較器76に送られる。第3の32ビットカウンタ72は、また、状態機械70から32ビット数でロードすることを可能にするパラレルロード機能を有する。パラレルロード機能によって、マスターインクリメンタルカウントCが、初期化プロセス後に、C
Z計数から導き出される絶対角度値に関係するように、計数値C’を第3のカウンタ72にロードすることが可能になる。必要であれば、増分計数Cの値も装置から連続的に、または要求があれば出力されてもよい。
【0077】
第3の32ビットカウンタ72は、マスターインクリメンタルカウントCを合計計数C
pと比較するようにも構成され、また、CがC
pに等しいとき、第3の32ビットカウンタ72をゼロにリセットするように構成される。これによって、Cに設定される値が無制限に計算されることを防ぐ。C
pの値は、エンコーダーの1回転に対して増分計数値C
aによって生成されるパルスの数を計数することによって、起動時に1回、生成される。C
pは、システム設置後に、1回、決定すればよいことに留意されたい。それから、それは、後で使用するためにメモリに記憶されてもよい。
【0078】
比較器76は、マスターインクリメンタルカウントCに加えて、記憶装置から基準マーク計数値(C
I)を受け取る。計数Cが記憶された計数値C
Iに等しいとき、合成基準マークパルスが生成され、コントローラによって出力される。記憶された計数値C
Iは、必要であればユーザ定義可能であってもよい。換言すれば、C
Iの値は、ユーザによって必要に応じて設定することができる。つまり、マスターインクリメンタルカウントCがC
Iの記憶された値と一致するときは常に、合成基準マークが生成される。したがって、そのユニットは、顧客調整可能な、またはユーザ定義可能な基準マーク出力を供給することができ、それは、合成基準マークと称されてもよい。
【0079】
C
Iを設定する1つの方法は、スイッチが押されたとき、常に、マスターインクリメンタルカウントCに等しくなるようにC
Iにおける記憶された値を更新することである。これは、顧客が、初期化の後に、リングを任意の角度に向け、スイッチを押すことができることを意味し、リングが再びその角度にあるとき、常に、合成基準マークがエンコーダーによって出力される。次に、スイッチが再び押された場合、パルスが新しい角度で出力される。しかし、これらのパルスは、結果としての増分計数(C)に応じて決まるので、当然ながら、ベアリングワンダーがどの程度であっても角度反復可能になる。
【0080】
状態機械70は、また、初期化シーケンスの間に誤差がもたらされないことを確保するように構成されてもよく、例えば、そのような状態機械は、初期化シーケンスの間、装置が割込みに対して弾力的であり、回転エンコーダーをどちらかの方向に回転させることによって装置を初期化することができることを確保してもよい。C
Zの値が絶対角度方向に関係することをその状態機械が決定するならば、第3のデコーダ72は、適切な計数値をロードすることができる。
【0081】
第1のカウンタ62、第2のカウンタ64、および、第3のカウンタ72は、少なくとも増分計数に値する全回転を計数することができるように構成されることに留意されたい。32ビットカウンタが本明細書に記載されるようにもたらされた場合、装置は、1メートル以下の直径を有するリングと、1nm以下の分解能を有するスケールとを備える。分解能が増減された場合、カウンタの能力は、それに応じて変更されてもよい。
【0082】
図4を参照して示される回路は、本発明をどのように実現できるかの一例に過ぎないことを念頭に置くべきである。ここで、多くの変形および/または代替回路レイアウトが当業者には明白であろう。例えば、32ビットの計数値(すなわち、C
Z)は加算器66から直接導き出すことができるので、第3の32ビットカウンタ72を設けることは厳密には必要ではない。さらに、4ビットカウンタ54および56を省略することができ、デジタル直角位相信号(すなわち、「Quad A」および「Quad B」)を、第1の32ビットカウンタ62および第2の32ビットカウンタ64から導き出すことができる。しかし、上述の構成は、第1の32ビットカウンタ62および第2の32ビットカウンタ64の「ロールオーバー」またはリセットと関連するあらゆる影響が回避されることを確保する。換言すれば、
図4の構成は、信頼性の高い動作をもたらすことが見出されている。
【0083】
パーシャルアーク型(partial arc)または、パーシャルロータリー型エンコーダーが設けられた場合、可能な回転量は、定義上360°未満になる。そのような用途では、カウンタの「ロールオーバー」の影響はなく、合計のライン計数値(C
p)を決定する必要はなく、また、代表的には決定することができない。そのような装置用の電子ユニットは、ゼロ位置から異なる方向に離れるように回転せしめられる場合、増分計数が負および正の値を使用することができるように構成されてもよい。例えば、決定されたゼロ位置から時計回り方向に離れる回転により、正の増分計数が生成されてもよく、ゼロ位置から反時計回り方向の回転により、負の増分計数が生成されてもよい。したがって、そのような装置に使用される増分カウンタは、好ましくは、そのような計数を信頼性高く実現するため、ラインカウント(すなわち、使用可能な角度範囲に及ぶ計数)を少なくとも二度、記憶することができる。
【0084】
また、ユニット40は、補償されるベアリングワンダー誤差の大きさの表示をもたらすように構成されてもよい。これは、2つの計数C
aおよびC
bの間の差、またはC
aもしくはC
bと組み合わされた計数Cとの差を測定することによって達成されてもよい。結果としての計数は、θ
εの瞬間の計数(すなわち、C
ε)に比例し、デジタル形式またはアナログ形式で出力することができる。この出力は、補償されている誤差の瞬間的な大きさの表示を与える。ただし、二つの読取りヘッドのシステムの場合、その誤差は、ベアリングワンダーおよび奇数高調波の誤差のみを示すことに留意されたい。あらゆる偶数高調波の誤差は、そのような誤差信号に含まれない。
【0085】
ある期間にわたって見ると、誤差出力信号は、反復可能なAC成分とランダムAC成分の両方を有する。反復可能な成分は、リングの奇数高調波導入の質により、このRMSは、一定のままであるべきである。しかし、この信号には、ある程度の「ランダム」ノイズがあり、これは、完全にベアリングワンダーの瞬間的な量によるものである。ランダムノイズの大きさは、長期にわたって平均化しサンプリングすることができる。ランダムノイズが増大したことが見出された場合、軸受が摩耗している傾向がある。そのような摩耗の表示は、軸受をそれらの寿命にわたって監視するのに使用することができる。
【0086】
ユニット40の変形例が、異なる用途に対して備えがなされてもよい。例えば、ユニット40は、混合されたデジタル直交位相信号(例えば、「Quad A」および「Quad B」)、および、合成基準マークを供給するように構成されてもよい。次に、これらの信号は、単一の読取りヘッドから直角位相および基準マーク信号を受け入れるように元々設計された機械ユニット40に供給されてもよい。あるいは、ユニット40は、合成されたサインおよびコサイン直交位相出力、ならびに、合成基準マークを供給するように構成されてもよい。ユニット40は、シリアル通信リンクを含んでもよい。そのような実施例では、インターフェースは、機械コントローラによって問い合わせられたとき、常に、位置表示(例えば、計数値C)を出力するように構成されてもよい。換言すれば、ユニット40は、必要に応じて1つ以上の任意の既知の通信プロトコルを実現するように構成されてもよい。
【0087】
ユニット40の様々な構成要素は、また、必要に応じて空間的に分離されてもよい。例えば、第1の補間器42および第2の補間器44は、読取りヘッドと統合されるか、別個の制御インターフェースに構成されてもよい。さらに、ユニット40は、回転エンコーダー装置の他の制御構成要素と統合されてもよい。
【0088】
図5を参照すると、
図4に記載されるタイプの装置の動作が、示されている。この図は、装置に電源が入れられた後の、9つの異なる方向(100から116)を向いているエンコーダー装置を示す。装置は、
図3に示されるものと類似しており、第1の読取りヘッド、第2の読取りヘッド、および、基準マーク32を有するリング30を有する。それぞれの向きについて、C
a(第1の読取りヘッドからの計数)、C
b(第2の読取りヘッドからの計数)、C
Z(第1および第2の計数の合計)、半分にしたC
z、C
diff(C
aとC
bの間の差)、C
p(リングの合計計数)、C
I(調整可能な合成基準マーク計数)、およびC(マスターインクリメンタルカウント)の値も示されている。
【0089】
エンコーダーは、第1の任意の向き100で作動され、すべての計数値は最初はゼロである。基準マークは、任意位置に配置され、初期化手順は、エンコーダーのリングを時計回り方向に回転させることによって行われる。基準マークが第1の読取りヘッド4を通過すると(すなわち、第2の向き102に達すると)、第1の読取りヘッド4と関連する計数C
aは、再度、ゼロにされる。リングをさらに回転させることにより、基準マークが第2の読取りヘッド6を通過し(すなわち、第3の向き104を選ぶ)、その際、第2の読取りヘッド6と関連する計数C
bが再度ゼロにされる。次に、基準マークは、合成基準マークとして設定されている第4の向き106を通過する。第5の向き108は、基準マークが二度目に第1の読取りヘッド4に到達する直前の装置を示す。第6の向き110は、ある程度のベアリングワンダーを第5の向き108に加えたものを示す。ベアリングワンダーは、C
aの増大とC
bの減少とをもたらすが、メインインクリメンタルカウントCには影響しないことが分かる。C
diffの値も増大し、それによってベアリングワンダーが存在することが示される。
【0090】
基準マークが二度目に第1の読取りヘッドを通過することで(すなわち、第7の向き112)、合計リング計数の測定がもたらされる。換言すれば、C
pは、リングが完全に1回転した後のC
aの値に等しく設定される。この値は、図から分かるように、第6の向き110と第7の向き112におけるC
aの値の比較とは無関係なベアリングワンダーであることに留意されたい。装置はここで初期化される。C
pの値は、基本計数Cが10,000の値に到達する(例えば、第8の向き114に示されるように)とき、常にそれをゼロにリセットするのに使用される。それから、CがC
Iに等しいとき、常に、例えば第9の向き116として合成基準マークが出力される。
【0091】
上述の例は、主に、まる360°回転させることができる回転エンコーダーに関連するが、この技術をパーシャルアークおよびパーシャルロータリーシステムにも適用できることを念頭に置くべきである。しかし、自由回転が180°未満の装置の場合、代表的には、1つの基準マークは、十分ではない。すべての場合において、各読取りヘッドは、少なくとも1つの基準マークを参照することができなければならない。したがって、自由回転が180°未満の装置の場合、2つ以上の基準マークが設けられる。
【0092】
必要な基準マークは、スケール上に予め形成されてもよく、または、顧客選択可能な基準マークが設けられてもよい。ただし、物理的に選択可能なマーク(すなわち、ユーザが選択することができる物理的基準マーク)間には、上述のように生成することができるユーザ定義可能な合成基準マークとは違って区別があることを留意されたい。エンコーダースケールの基準マークは、必要であれば、インクリメンタルスケールに対して距離で分けられたものであってもよい。
【0093】
図6を簡単に参照すると、距離で分けられた、すなわち、角度で分けられた回転エンコーダーの動作が示される。エンコーダースケールは、一連のインクリメンタルスケールライン(図示なし)と、四対の基準マークRM1〜RM4およびRM1’〜RM4’とを含む。必要に応じて、より多数の、または、より少数の基準マーク対を設けることができる。基準マークは距離で分けられ、すなわち、異なる距離だけ(例えば、インクリメンタルスケールラインの一意の数だけ)互いから分離される。第1の読取りヘッド150および第2の読取りヘッド152も示される。
【0094】
絶対角度位置は、上述の方法で、任意の一対の基準マークを使用して得られてもよい。例えば、第1の基準マーク対(RM1およびRM1’)が使用されゼロ位置、すなわち、ホームポジションとして任意に画定することができる第1の絶対角度位置(θ1)を設定してもよい。次に、第2、第3、および第4の基準マーク対は、それぞれ、第2、第3、および第4の絶対方向(θ2、θ3、およびθ4)をもたらすことができる。そのような構成では、隣接する絶対角度方向の相互間の相対角度分離(Δθ1、Δθ2、およびΔθ3として
図6に示される)は、基準マーク対の角度で分けられたものによって異なる(すなわち、一意である)。しかし、隣接する絶対角度方向それぞれの相互間の相対角度分離が既知の場合(例えば、予め測定され、ルックアップテーブルに記憶されている場合)、任意の1つの絶対方向を基本(θ1)角度に戻って関係させることができる。このように、絶対角度は、2つの絶対方向測定値から決定することができる。したがって、反復可能な基準位置を設定するのに必要なエンコーダーの回転量が、低減可能とされる。
【0095】
上述の装置は、2つの読取りヘッドを有するが、より多数の読取りヘッドが、好ましくは、ほぼ正反対に向かい合う対の形でリングに付加されてもよい。2つの読取りヘッドを設けることにより、ベアリングワンダーを含む奇数高調波によるすべての影響が補償される。4つの読取りヘッドを設けることにより、奇数高調波、ならびに、二、六、十などの偶数高調波によるすべての影響が取り除かれる。6つの読取りヘッドを設けることは、すべての奇数高調波、ならびに、二、四、八、十、十四、十六等の高調波に働く。リングの回りで均等に間隔を空けたさらなる読取りヘッド対を付加することで、さらなる高調波と関連する影響が排除される。結局、完全な解決策は、読取りヘッド対によって覆われたリングを有することであるが、このコストは非常に高い。しかしながら、4つを超える読取りヘッドを設けると、無視できる恐らくは非常に高精度の装置にのみ匹敵する改善をもたらす。