(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1に示すように、蛍光温度センサ1は、被測定面に接触させ、温度に応じた蛍光を発光するためのセンサプローブ2と、センサプローブ2に励起光を投光し、センサプローブ2からの蛍光を受光し、その受光量から被測定面の温度測定を行うためのセンサモジュール3とにより構成される。
【0012】
センサプローブ2は、
図1に示すように、センサモジュール3より投光される励起光により蛍光を発光する蛍光体4と、センサモジュール3により投光される励起光を蛍光体4に導光し、蛍光体4が発する蛍光をセンサモジュール3に導光するための光ファイバ5と、センサプローブ2の先端に設けられ、蛍光体4を覆うカバー6と、光ファイバ5に傷が付かないように保護する保護管7とにより構成される。
【0013】
ここで、センサプローブ2とセンサモジュール3に設けられる蛍光体4とを接続する光ファイバ5は、励起光送信用光ファイバ5aと蛍光送信用光ファイバ5bとにより構成される。
【0014】
励起光送信用光ファイバ5aはセンサモジュール3に設けられる投光部9から投光される励起光を蛍光体4に導光するためのものである。この励起光送信用光ファイバ5aはプラスチック光ファイバにより構成される。
【0015】
蛍光送信用光ファイバ5bは蛍光体4が発する蛍光をセンサモジュール3に設けられる受光部10に導光するためのものである。この蛍光送信用光ファイバ5bは多成分ガラス光ファイバにより構成される。
【0016】
センサモジュール3は、
図1に示すように、駆動部8により、センサプローブ2に設けられる蛍光体4に励起光を投光するための投光部9と、センサプローブ2に設けられる蛍光体4が発する蛍光を受光するための受光部10と、受光部10が受光した受光量に基づいて、被測定面の温度を算出するための処理部11とにより構成される。
【0017】
次に、上記のように構成される蛍光温度センサ1の動作について説明する。
まず、蛍光温度センサ1のセンサプローブ2先端に設けられる蛍光体4が収納されるカバー6表面を被測定面に接触させる。次いで、投光部9から励起光が蛍光体4に投光される。この投光部9から投光された励起光により蛍光体4は蛍光を発光する。受光部10はこの蛍光体4が発光する蛍光を受光している。このときの受光部10が受光する受光量は、処理部11により逐一計測されている。次いで、投光部9は、蛍光体4への励起光の投光を停止する。これにより、蛍光体4は消光する。この蛍光体4の消光速度は温度が高くなるほど速くなる。この蛍光体4の消光速度を処理部11が計測することにより、被測定面の温度を計測する。
【0018】
次に、励起光送信用光ファイバ5aと蛍光送信用光ファイバ5bに用いられる光ファイバの材質設定方法について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1における励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bの光の減衰量を示す図である。
この
図2では、蛍光体4としてルビーを使用し、励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bとしてプラスチック光ファイバ(PMMA)及び多成分ガラス光ファイバを用いた場合での励起光及び蛍光の減衰量を示している。
【0019】
図2に示すように、投光部9が投光する励起光の波長(560nm〜590nm)に対して、蛍光体4の発光する蛍光の波長(690nm〜700nm)は長くなる。そのため、励起光を導光する励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光を導光する蛍光送信用光ファイバ5bを同一の光ファイバで構成すると、励起光または蛍光のどちらか一方の伝送効率が悪くなる。そこで、励起光の波長及び蛍光の波長に基づいて、最適な伝送効率を有する材質の光ファイバを用いて励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光導波路5bを構成することにより、励起光及び蛍光ともに良好な伝送を行うことができる。
【0020】
図2に示すように、プラスチック光ファイバにより励起光を導光したときの減衰量は0.08dB/mであり、多成分ガラス光ファイバにより励起光を導光したときの減衰量は0.18dB/mである。したがって、励起光を導光する励起光送信用光ファイバ5aに対してはプラスチック光ファイバを用いることで伝送効率を良好にすることができる。
【0021】
一方、プラスチック光ファイバにより蛍光を導光したときの減衰量は0.35dB/mであり、多成分ガラス光ファイバにより蛍光を導光したときの減衰量は0.2dB/mである。したがって、蛍光を導光する蛍光送信用光ファイバ5bに対しては多成分ガラス光ファイバを用いることで伝送効率を良好にすることができる。
【0022】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、励起光と蛍光を導光する光ファイバを励起光の波長及び蛍光の波長に応じてそれぞれ設定することにより、励起光及び蛍光に対する伝送効率を高めることができるので、投光部9から投光する励起光の光量を過度に上げる必要はなく、投光部9の光源の負担を抑えることができる。
【0023】
なお、この発明の実施の形態1では、蛍光体4としてルビーを使用し、励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bを構成する光ファイバとしてプラスチック光ファイバ及び多成分ガラス光ファイバを用いて説明したが、これに限るものではなく、励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bを構成する光ファイバは、励起光の波長及び蛍光の波長に応じて適宜変更されるものである。
【0024】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係る蛍光温度センサ1の構造を示す図である。
上記実施の形態1に係る蛍光温度センサ1では、励起光送信用光ファイバ5aと蛍光送信用光ファイバ5bを構成する光ファイバとして、それぞれ導光する光の波長に適した材質の光ファイバを用いて構成したが、この発明の実施の形態2に係る蛍光温度センサ1は、励起光送信用光ファイバ5aと蛍光送信用光ファイバ5bに用いられる光ファイバの材質は同一のものを使用し、
図3に示すように、励起光送信用光ファイバ5aのコア面積に対して蛍光送信用光ファイバ5bのコア面積が大きくなるように構成したものである。
以下、
図1に示した、この発明の実施の形態1に係る蛍光温度センサ1と同一または同様の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0025】
励起光送信用光ファイバ5aは、例えば、プラスチック光ファイバにより形成され、そのバンドル直径は1mmに構成される。
【0026】
蛍光送信用光ファイバ5bは、励起光送信用光ファイバ5aと同一材質のプラスチック光ファイバにより形成され、
図3に示すように、そのバンドル直径は励起光送信用光ファイバ5aのバンドル直径よりも太い1.5mmに構成される。
【0027】
蛍光温度センサ1では、投光部9から投光される励起光の光エネルギ以上の蛍光は発生しないため、受光部10で受光する蛍光の蛍光強度を高めるため、励起光送信用光ファイバ5aのバンドル直径に対して、蛍光送信用光ファイバ5bのバンドル直径を大きくすることで、伝送効率を高めることできる。
【0028】
以上のように、この発明の実施の形態2によれば、励起光よりも弱い蛍光光量を効率的に伝送するために、蛍光送信用光ファイバ5bのコア面積を、励起光送信用光ファイバ5aのコア面積よりも大きくなるように構成することで、蛍光の伝送効率を高めることができるので、投光部9から投光する励起光の光量を過度に上げる必要はなく、投光部9の光源の負担を抑えることができる。
【0029】
実施の形態3.
図4はこの発明の実施の形態3における蛍光温度センサ1の構造を示す図である。
上記実施の形態1,2に係る蛍光温度センサ1では、センサプローブ2とセンサモジュール3とを励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bにより接続して構成したが、この発明の実施の形態3に係る蛍光温度センサ1では、例えば、狭い領域に光ファイバ5を敷設するような場合に、バンドル光ファイバ5cを用いてコア面積の異なる励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bと接続するように構成したものである。
以下、
図1,3に示した、この発明の実施の形態1に係る蛍光温度センサ1と同一または同様の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0030】
励起光送信用光ファイバ5aは、例えば、プラスチック光ファイバにより構成され、
図4に示すように、励起光送信用光ファイバ5aの蛍光体4側先端はバンドル光ファイバ5cの励起光送信用光ファイバ5a側と光軸を合わせてFCコネクタ等により接続されている。また、この励起光送信用光ファイバ5aのコア形状は円形である。
【0031】
蛍光送信用光ファイバ5bは、例えば、プラスチック光ファイバにより構成され、
図4に示すように、蛍光送信用光ファイバ5bの蛍光体4側先端はバンドル光ファイバ5cの蛍光送信用光ファイバ5b側と光軸を合わせてFCコネクタ等により接続されている。また、この励起光送信用光ファイバ5aのコア形状は円形である。
【0032】
バンドル光ファイバ5cは、励起光送信用光ファイバ5aにより導光される励起光を蛍光体4に導光し、蛍光体4が発する蛍光を蛍光送信用光ファイバ5bに導光するためのものである。また、バンドル光ファイバ5cの励起光送信用光ファイバ5a側のコア形状及び蛍光送信用光ファイバ5b側のコア形状は円形である。
【0033】
ここで、励起光送信用光ファイバ5aのコア面積S
IF、蛍光送信用光ファイバ5bのコア面積S
OF、バンドル光ファイバ5cの励起光送信用光ファイバ5a側のコア面積S
SFI及び蛍光送信用光ファイバ5b側のコア面積S
SFOは、S
IF<S
SFI≦S
SFO<S
OFを満たすように構成され接続される。
【0034】
図5はこの発明の実施の形態3における励起光送信用光ファイバ5a、蛍光送信用光ファイバ5b及びバンドル光ファイバ5cの各バンドル直径条件(a)〜(d)に対する蛍光強度の比を、(a)の各バンドル直径条件のときの蛍光強度を基準にして示した図である。ここで、励起光送信用光ファイバ5a、蛍光送信用光ファイバ5b及びバンドル光ファイバ5cのコア形状は円形であり、バンドル光ファイバ5cの励起光送信用光ファイバ5a側のバンドル直径及び蛍光送信用光ファイバ5b側のバンドル直径は共に1.2mmである。また、励起光を投光する投光部9としてLEDを用い、受光部10としてフォトダイオードを用いている。
【0035】
図5(a)に示すように、励起光送信用光ファイバ5aのバンドル直径が1mmかつ蛍光送信用光ファイバ5bのバンドル直径が1mmの場合では、蛍光送信用光ファイバ5b側のバンドル光ファイバ5cのバンドル直径に対して、蛍光送信用光ファイバ5bのバンドル直径が小さいため、蛍光送信用光ファイバ5bとバンドル光ファイバ5cとの接続口で蛍光が漏洩してしまい、蛍光強度が低下する。
【0036】
また、
図5(c)に示すように、励起光送信用光ファイバ5aのバンドル直径が1.5mmかつ蛍光送信用光ファイバ5bのバンドル直径が1mmの場合では、励起光送信用光ファイバ5a側のバンドル光ファイバ5cのバンドル直径に対して、励起光送信用光ファイバ5aのバンドル直径が大きいため、励起光送信用光ファイバ5aとバンドル光ファイバ5cとの接続口で励起光が漏洩してしまい、励起光強度が低下する。さらに、蛍光送信用光ファイバ5b側のバンドル光ファイバ5cのバンドル直径に対して、蛍光送信用光ファイバ5bのバンドル直径が小さいため、蛍光送信用光ファイバ5bとバンドル光ファイバ5cとの接続口で蛍光が漏洩してしまい、蛍光強度が低下する。
【0037】
また、
図5(d)に示すように、励起光送信用光ファイバ5aのバンドル直径が1.5mmかつ蛍光送信用光ファイバ5bのバンドル直径が1.5mmの場合では、励起光送信用光ファイバ5a側のバンドル光ファイバ5cのバンドル直径に対して、励起光送信用光ファイバ5aのバンドル直径が大きいため、励起光送信用光ファイバ5aとバンドル光ファイバ5cとの接続口で励起光が漏洩してしまい、励起光強度が低下する。
【0038】
一方、
図5(b)に示すように、励起光送信用光ファイバ5aのバンドル直径を1mmとして、蛍光送信用光ファイバ5bのバンドル直径を1.5mmとした場合、すなわち、励起光送信用光ファイバ5aのバンドル直径、バンドル光ファイバ5cのバンドル直径、蛍光送信用光ファイバ5bのバンドル直径の順にバンドル直径を大きくした場合には、各接続間での励起光及び蛍光の損失がなく最も効率よく蛍光を受光部10に導光することができる。
【0039】
以上のように、この発明の実施の形態3によれば、励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bと、バンドル光ファイバ5cとの接続において、励起光送信用光ファイバ5aのコア面積、バンドル光ファイバ5cの励起光送信用光ファイバ5a側のコア面積、バンドル光ファイバ5cの蛍光送信用光ファイバ5b側のコア面積、蛍光送信用光ファイバ5bのコア面積の順にコア面積を大きくし、励起光及び蛍光の送信側の光ファイバのコアを受信側の光ファイバのコアで覆うように接続することで、励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bとバンドル光ファイバ5cとの接続間での励起光及び蛍光の漏れを防ぐことができ、励起光及び蛍光の伝送効率を高めることができるため、投光部9から投光する励起光の光量を過度に上げる必要はなく、投光部9の光源の負担を抑えることができる。
【0040】
なお、この発明の実施の形態3に係る蛍光温度センサ1では、励起光送信用光ファイバ5a、蛍光送信用光ファイバ5b及びバンドル光ファイバ5cのコア形状は円形状として説明したが、これに限るものではなく、矩形のコアを有する光ファイバを用いて構成してもよい。
【0041】
また、この発明の実施の形態3に係る蛍光温度センサ1では、励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bとを同一の材質の光ファイバを用いて説明したが、これに限るものではなく、励起光送信用光ファイバ5aと蛍光送信用光同波路5bとを別の材質の光ファイバにより構成してもよい。
【0042】
また、上述の実施の形態では励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bをバンドルの光ファイバにより構成して説明したが、これに限るものではなく、励起光送信用光ファイバ5a及び蛍光送信用光ファイバ5bを単芯の光ファイバにより構成しても構わず、また、例えば励起光送信用光ファイバ5aを単芯の光ファイバにより構成し、蛍光送信用光ファイバ5bをバンドルの光ファイバにより構成するなど、組み合わせて構成しても構わない。