(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に長尺状基板の電解めっきを施すべき領域は、回転体および配線を介して整流器等の直流電源の負極に電気的に接続される。この場合、直流電源の負極と複数の回転体とが配線により電気的に接続される。
【0006】
そのため、複数の回転体が回転することにより配線がねじれないように、各回転体と配線との接続部分には例えばロータリコネクタが設けられる。ロータリコネクタは、回転体とともに回転可能な可動電極および静止した固定電極を有し、可動電極と固定電極との間に導電性流体が充填されている。回転体は可動電極に接続され、配線は固定電極に接続される。それにより、回転体の回転時にも、配線のねじれを生じることなく配線を回転体に電気的に接続することができる。
【0007】
しかしながら、ロータリコネクタが腐食すると、固定電極に対する可動電極の相対的な回転が円滑に行われない場合がある。この場合、回転体の回転時に、ロータリコネクタの可動電極の回転とともに固定電極が動く可能性がある。それにより、配線に断線または抵抗の増加等の接続不良が生じることになる。
【0008】
めっき装置の配線に断線が生じると、電解めっきを行うことができない。また、配線の抵抗が増加した状態で電解めっきを行うと、例えば電流が一定に制御されている場合には、アノード電極と長尺状基板の電解めっきを施すべき領域との間に印加される電圧が上昇する。その結果、めっきの品質が低下する。そのため、長尺状基板に電解めっきを行う前に、めっき装置における配線の接続不良を検査する必要がある。
【0009】
しかしながら、ロールから繰り出される長尺状基板の先端部分には、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレン等の非導電性材料が形成されており、導電性材料は形成されていない。したがって、めっき装置において電流を流し得る閉回路が形成されない。
【0010】
そこで、従来は、テスタ等の計器を用いて作業者の手作業により配線の接続不良の検査を行う必要があった。このような手作業の検査は、非常に非効率的である。
【0011】
本発明の目的は、配線の接続不良の検査を効率的に行うことが可能なめっき装置およびめっき装置の配線検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[A]本発明
(1)第1の発明に係るめっき装置は、めっき対象物に電解めっきを行うめっき装置であって、めっき液を収容するためのめっき槽と、めっき槽内に設けられるアノード電極と、めっき対象物に接触可能な導電部材と、直流電源と、アノード電極と直流電源の一方の電極とを接続する第1の配線と、導電部材と直流電源の他方の電極とを接続する第2の配線と、アノード電極と導電部材との間に直列に接続された負荷およびスイッチを含む検査用回路と、第1および第2の配線の接続不良の有無を検出する検出部とを備え、スイッチは、めっき対象物のめっき時にアノード電極と導電部材とが負荷を通して接続されないようにオフされ、第1および第2の配線の検査時にアノード電極と導電部材とが負荷を通して接続されるようにオンされ、検出部は、第1および第2の配線の検査時に直流電源の電圧を検出し、検出した電圧に基づいて第1および第2の配線の不良の有無を検出するものである。
そのめっき装置においては、めっき液を収容するめっき槽内にアノード電極が設けられる。また、めっき対象物の電解めっき時には、導電部材がめっき対象物に接触する。アノード電極および導電部材は、直流電源に第1および第2の配線を介してそれぞれ電気的に接続される。この場合、スイッチは、アノード電極と導電部材とが負荷を通して接続されないようにオフされる。第1および第2の配線の検査時には、スイッチは、アノード電極と導電部材とが負荷を通して接続されるようにオンされる。それにより、検査用回路によりめっき液およびめっき対象物を経由せずに第1および第2の配線に電流を流すための閉回路が形成される。それにより、第1および第2の配線に電流が流れる状態で検出部により第1および第2の配線の接続不良の有無が検出される。
したがって、作業者が手作業で第1および第2の配線の接続不良を検査する必要がない。その結果、第1および第2の配線の接続不良の検査を効率的に行うことができる。また、検査用回路によりめっき液およびめっき対象物を経由しない閉回路が形成されるので、電解めっき時に検査用回路が電解めっきのための回路に影響を与えることがない。その結果、めっき対象物に安定的に電解めっきを行うことが可能となる。
また、第1および第2の配線の検査時に、電解めっきに用いられる直流電源により第1および第2の配線に電流が供給される。それにより、第1および第2の配線の検査のために、電解めっきのための直流電源と別に直流電源を設ける必要がない。したがって、めっき装置のコストを増加させることなく、第1および第2の配線の接続不良の検査を効率的に行うことができる。
(2)直流電源は、第1および第2の配線の検査時に負荷に定電流が流れるように定電流制御を行う機能を有してもよい。
この場合、第1および第2の配線の検査時に、直流電源から第1および第2の配線ならびに負荷に一定の電流が流れ、負荷ならびに第1および第2の配線の抵抗による電圧降下が発生する。第1または第2の配線の接続不良がある場合には、第1または第2の配線の抵抗が増加することにより電圧降下が増大する。したがって、負荷ならびに第1および第2の配線の抵抗による電圧降下に基づいて第1および第2の配線の接続不良の有無を容易かつ正確に判定することができる。
(3)検出部は、検出した電圧の値が予め定められた基準電圧の値よりも大きい場合に第1または第2の配線の接続不良があることを検出してもよい。
第1および第2の配線の接続不良がない場合には、定電流制御を行う直流電源の電圧は、負荷の抵抗値と電流値との積にほぼ等しくなる。一方、第1または第2の配線の接続不良がある場合には、第1または第2の配線の抵抗が増加するので、定電流制御を行う直流電源の電圧が上昇する。したがって、基準電圧の値を第1および第2の配線の接続不良がない場合の直流電源の電圧よりも大きく設定することにより、第1および第2の配線の接続不良を確実に検出することができる。
(4)めっき装置は、検出部により第1または第2の配線の接続不良があることが検出された場合に検出信号を出力する出力部をさらに備えてもよい。
この場合、第1または第2の配線の接続不良があることが検出された場合に検出信号が出力されるので、検出信号を用いて第1または第2の配線の接続不良があることを作業者に容易に知らせることができる。したがって、作業者は、第1または第2の配線の接続不良があることを迅速に把握することができる。
(5)めっき対象物は、長尺状基板であり、めっき装置は、長尺状基板をめっき槽内を通過するように搬送する搬送機構をさらに備え、導電部材は、搬送機構により搬送される長尺状基板に接触するように設けられる導電性ローラでもよい。
この場合、電解めっき時には、長尺状基板が導電性ローラに接触する状態で搬送機構により長尺状基板がめっき槽内を通過するように搬送される。配線の検査時には、めっき液およびめっき対象物を経由することなくアノード電極および導電性ローラをそれぞれ直流電源に接続する第1および第2の配線に電流が流される。それにより、第1および第2の配線の接続不良の検査を効率的に行うことができる。
(6)第2の発明に係るめっき装置の配線検査方法は、めっき装置のめっき槽内に設けられるアノード電極およびめっき対象物に接触可能な導電部材に直流電源を電気的に接続する第1および第2の配線の接続不良を検査する配線検査方法であって、第1の配線は、アノード電極と直流電源の一方の電極とを接続し、第2の配線は、導電部材と直流電源の他方の電極とを接続し、アノード電極と導電部材との間に負荷およびスイッチが直列に接続され、配線検査方法は、めっき対象物のめっき時に、アノード電極と導電部材とが負荷を通して接続されないようにスイッチをオフするステップと、第1および第2の配線の検査時に、アノード電極と導電部材とが負荷を通して接続されるようにスイッチをオンするステップと、第1および第2の配線の検査時に、第1および第2の配線に直流電源の電圧を検出し、検出した電圧に基づいて第1および第2の配線の接続不良の有無を検出するステップとを含むものである。
そのめっき装置の配線検査方法においては、めっき液およびめっき対象物を経由せずに第1および第2の配線に電流を流すための閉回路が形成される。それにより、第1および第2の配線に電流が流れる状態で第1および第2の配線の接続不良の有無が検出される。
したがって、作業者が手作業で第1および第2の配線の接続不良を検査する必要がない。その結果、第1および第2の配線の接続不良の検査を効率的に行うことができる。また、めっき液およびめっき対象物を経由しない閉回路が形成されるので、その閉回路は、電解めっき時に電解めっきのための回路に影響を与えることがない。その結果、めっき対象物に安定的に電解めっきを行うことが可能となる。
[B]参考形態
(1)第1の
参考形態に係るめっき装置は、めっき対象物に電解めっきを行うめっき装置であって、めっき液を収容するためのめっき槽と、めっき槽内に設けられるアノード電極と、めっき対象物に接触可能な導電部材と、直流電源と、直流電源をアノード電極および導電部材に電気的に接続する配線と、配線の検査時に、めっき液およびめっき対象物を経由せずに配線に電流を流すための閉回路を形成するように構成された検査用回路と、閉回路により配線に電流が流れる状態で配線の接続不良の有無を検出する検出部とを備えたものである。
【0013】
そのめっき装置においては、めっき液を収容するめっき槽内にアノード電極が設けられる。また、めっき対象物の電解めっき時には、導電部材がめっき対象物に接触する。アノード電極および導電部材は、直流電源に配線を介してそれぞれ電気的に接続される。配線の検査時には、検査用回路によりめっき液およびめっき対象物を経由せずに配線に電流を流すための閉回路が形成される。それにより、配線に電流が流れる状態で検出部により配線の接続不良の有無が検出される。
【0014】
したがって、作業者が手作業で配線の接続不良を検査する必要がない。その結果、配線の接続不良の検査を効率的に行うことができる。また、検査用回路によりめっき液およびめっき対象物を経由しない閉回路が形成されるので、電解めっき時に検査用回路が電解めっきのための回路に影響を与えることがない。その結果、めっき対象物に安定的に電解めっきを行うことが可能となる。
【0015】
(2)閉回路は、直流電源を含むように形成されてもよい。
【0016】
この場合、配線の検査時に、電解めっきに用いられる直流電源により配線に電流が供給される。それにより、配線の検査のために、電解めっきのための直流電源と別に直流電源を設ける必要がない。したがって、めっき装置のコストを増加させることなく、配線の接続不良の検査を効率的に行うことができる。
【0017】
(3)検査用回路は、負荷およびスイッチを含み、負荷およびスイッチは、スイッチがオンされることにより負荷およびスイッチを含む閉回路が形成されるように接続されてもよい。
【0018】
この場合、スイッチがオンされることにより、配線、直流電源、負荷およびスイッチを含む閉回路が形成される。それにより、直流電源から配線および負荷に電流が流れる。配線の接続不良がある場合には、配線の抵抗が増加する。したがって、配線の抵抗の増加による電流または電圧の変化に基づいて配線の接続不良の有無を容易に判定することができる。
【0019】
(4)直流電源は、配線の検査時に閉回路に定電流が流れるように定電流制御を行う機能を有してもよい。
【0020】
この場合、配線の検査時に、直流電源から配線および負荷に一定の電流が流れ、負荷および配線の抵抗による電圧降下が発生する。配線の接続不良がある場合には、配線の抵抗が増加することにより電圧降下が増大する。したがって、負荷および配線の抵抗による電圧降下に基づいて配線の接続不良の有無を容易かつ正確に判定することができる。
【0021】
(5)検出部は、直流電源の電圧を検出し、検出した電圧に基づいて配線の接続不良の有無を検出してもよい。
【0022】
この場合、配線の検査時に、閉回路に一定の電流が流れるので、定電流制御を行う直流電源には、配線の抵抗に依存する電圧が生じる。したがって、直流電源の電圧を検出することにより配線の接続不良の有無を容易かつ正確に判定することができる。
【0023】
(6)検出部は、検出した電圧の値が予め定められた基準電圧の値よりも大きい場合に配線の接続不良があることを検出してもよい。
【0024】
配線の接続不良がない場合には、定電流制御を行う直流電源の電圧は、負荷の抵抗値と電流値との積にほぼ等しくなる。一方、配線の接続不良がある場合には、配線の抵抗が増加するので、定電流制御を行う直流電源の電圧が上昇する。したがって、基準電圧の値を配線の接続不良がない場合の直流電源の電圧よりも大きく設定することにより、配線の接続不良を確実に検出することができる。
【0025】
(7)配線は、アノード電極と直流電源の一方の電極とを接続する第1の配線および導電部材と直流電源の他方の電極とを接続する第2の配線を含み、スイッチおよび負荷は、第1の配線と第2の配線との間に直列に接続してもよい。
【0026】
この場合、配線の検査時に、直流電源、第1の配線、スイッチ、負荷および第2の配線を含む閉回路が形成される。それにより、簡単な構成で第1および第2の配線に電流を流すことができる。
【0027】
(8)めっき装置は、検出部により配線の接続不良があることが検出された場合に検出信号を出力する出力部をさらに備えてもよい。
【0028】
この場合、配線の接続不良があることが検出された場合に検出信号が出力されるので、検出信号を用いて配線の接続不良があることを作業者に容易に知らせることができる。したがって、作業者は、配線の接続不良があることを迅速に把握することができる。
【0029】
(9)めっき対象物は、長尺状基板であり、めっき装置は、長尺状基板をめっき槽内を通過するように搬送する搬送機構をさらに備え、導電部材は、搬送機構により搬送される長尺状基板に接触するように設けられる導電性ローラでもよい。
【0030】
この場合、電解めっき時には、長尺状基板が導電性ローラに接触する状態で搬送機構により長尺状基板がめっき槽内を通過するように搬送される。配線の検査時には、めっき液およびめっき対象物を経由することなくアノード電極および導電性ローラをそれぞれ直流電源に接続する配線に電流が流される。それにより、配線の接続不良の検査を効率的に行うことができる。
【0031】
(10)第2の
参考形態に係るめっき装置の配線検査方法は、めっき装置のめっき槽内に設けられるアノード電極およびめっき対象物に接触可能な導電部材に直流電源を電気的に接続する配線の接続不良を検査する配線検査方法であって、配線の検査時に、めっき液およびめっき対象物を経由せずに配線に電流を流すための閉回路を形成するステップと、閉回路により配線に電流が流れる状態で配線の接続不良の有無を検出するステップとを備えたものである。
【0032】
そのめっき装置の配線検査方法においては、めっき液およびめっき対象物を経由せずに配線に電流を流すための閉回路が形成される。それにより、配線に電流が流れる状態で配線の接続不良の有無が検出される。
【0033】
したがって、作業者が手作業で配線の接続不良を検査する必要がない。その結果、配線の接続不良の検査を効率的に行うことができる。また、めっき液およびめっき対象物を経由しない閉回路が形成されるので、その閉回路は、電解めっき時に電解めっきのための回路に影響を与えることがない。その結果、めっき対象物に安定的に電解めっきを行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、配線の接続不良の検査を効率的に行うことができる。また、めっき対象物に安定的に電解めっきを行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態に係るめっき装置およびそのめっき装置の配線検査方法について図面を参照しながら説明する。
【0037】
(1)めっき装置の全体構成
図1は、本発明の一実施の形態に係るめっき装置の模式図である。
【0038】
図1に示すように、めっき装置100は、複数のめっき部M1,M2,M3を含む。めっき部M1は、めっき槽11、アノード電極31、電源装置41および給電ローラ51a,51bを備える。めっき部M2は、めっき槽12、アノード電極32、電源装置42および給電ローラ52a,52bを備える。めっき部M3は、めっき槽13、アノード電極33、電源装置43および給電ローラ53a,53bを備える。
【0039】
電源装置41の正極は、配線L10を介してアノード電極31に接続される。電源装置41の負極は、配線L10aおよび配線L1を介して給電ローラ51aに接続されるとともに、配線L10bおよび配線L2を介して給電ローラ51bに接続される。
【0040】
同様に、電源装置42の正極は、配線L20を介してアノード電極32に接続される。電源装置42の負極は、配線L20aおよび配線L2を介して給電ローラ52aに接続されるとともに、配線L20bおよび配線L3を介して給電ローラ52bに接続される。
【0041】
また、電源装置43の正極は、配線L30を介してアノード電極33に接続される。電源装置43の負極は、配線L30aおよび配線L3を介して給電ローラ53aに接続されるとともに、配線L30bおよび配線L4を介して給電ローラ53bに接続される。
【0042】
給電ローラ51a,51b,52a,52b,53a,53bと配線L1,L2,L3,L4との接続部分には、ロータリコネクタがそれぞれ設けられる。
【0043】
給電ローラ51aのロータリコネクタとアノード電極31との間にリレー(電磁開閉器)61aおよび抵抗71aが直列に接続される。給電ローラ51bのロータリコネクタとアノード電極31との間にリレー61bおよび抵抗71bが直列に接続される。リレー61aがオンすると、電源装置41、配線L10、抵抗71a、リレー61aおよび配線L1,L10aにより構成される閉回路C1aが形成される。リレー61bがオンすると、電源装置41、配線L10、抵抗71b、リレー61bおよび配線L2,L10bにより構成される閉回路C1bが形成される。
【0044】
同様に、給電ローラ52aのロータリコネクタとアノード電極32との間にリレー62aおよび抵抗72aが直列に接続される。給電ローラ52bのロータリコネクタとアノード電極32との間にリレー62bおよび抵抗72bが直列に接続される。リレー62aがオンすると、電源装置42、配線L20、抵抗72a、リレー62aおよび配線L2,L20aにより構成される閉回路C2aが形成される。リレー62bがオンすると、電源装置42、配線L20、抵抗72b、リレー62bおよび配線L3,L20bにより構成される閉回路C2bが形成される。
【0045】
また、給電ローラ53aのロータリコネクタとアノード電極33との間にリレー63aおよび抵抗73aが直列に接続される。給電ローラ53bのロータリコネクタとアノード電極33との間にリレー63bおよび抵抗73bが直列に接続される。リレー63aがオンすると、電源装置43、配線L30、抵抗73a、リレー63aおよび配線L3,L30aにより構成される閉回路C3aが形成される。リレー63bがオンすると、電源装置43、配線L30、抵抗73b、リレー63bおよび配線L4,L30bにより構成される閉回路C3bが形成される。
【0046】
本実施の形態では、リレー61a,61b,62a,62b,63a,63bおよび抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bにより検査用回路が構成される。
【0047】
(2)めっき装置の詳細
図2は
図1のめっき装置100の1つのめっき部の模式的斜視図である。
図2には、
図1のめっき部M1が示される。なお、
図2では、
図1のリレー61a,61bおよび抵抗71a,71bの図示が省略されている。
【0048】
図2に示すように、めっき部M1は、箱型のめっき槽11を備える。めっき槽11は、底面部および4つの側面部を有する。めっき槽11の互いに対向する2つの側面部には、上下方向に延びる長尺状の開口21,22がそれぞれ設けられる。
【0049】
一方の開口21を閉塞するように、上下方向に延びる一対の搬送ローラ23a,23bが回転可能に設けられ、他方の開口22を閉塞するように、上下方向に延びる一対の搬送ローラ23c,23dが回転可能に設けられる。この場合、搬送ローラ23a〜23dにより、2つの開口21,22が液密に封止される。
【0050】
めっき槽11内には、例えば硫酸銅を含むめっき液が収容される。なお、めっき液中の銅イオンが不足する場合、めっき液に粉末状の酸化銅がさらに添加されてもよい。また、めっき槽11の下部に、めっき槽11から漏出するめっき液を受ける収納槽(図示せず)が配置されてもよい。その場合、収納槽に溜まっためっき液はポンプを用いてめっき槽11内に戻される。
【0051】
一対の搬送ローラ23a,23bおよび一対の搬送ローラ23c,23dにより長尺状基板10が挟持される。そして、搬送ローラ23a〜23dおよび給電ローラ51a,51bが回転することにより、長尺状基板10がめっき槽11内を通過するように矢印MDで示される方向(以下、搬送方向と呼ぶ)に搬送される。それにより、長尺状基板10が連続的にめっき槽11内のめっき液に浸漬される。
【0052】
長尺状基板10の搬送方向における搬送ローラ23a,23bよりも上流側の位置に、給電ローラ51aが上下方向の軸周りに回転可能に設けられる。また、長尺状基板10の搬送方向における搬送ローラ23c,23dよりも下流側の位置に、給電ローラ51bが上下方向の軸周りに回転可能に設けられる。
【0053】
給電ローラ51a,51bは、長尺状基板10の一面に接触しつつ回転する。長尺状基板10の一面には、電解めっきを行うべきめっき領域が設けられる。給電ローラ51a,51bが長尺状基板10の一面に接触することにより、給電ローラ51a,51bが長尺状基板10のめっき領域とそれぞれ電気的に接続される。また、給電ローラ51aは、配線L1,L10aを介して電源装置41の負極に接続される。給電ローラ51bは、配線L2,L10bを介して電源装置41の負極に接続される。電源装置41は、交流電源(図示せず)に接続される。
【0054】
めっき槽11内には、長尺状基板10に沿ってアノード電極31が設けられる。この場合、アノード電極31は、長尺状基板10の一面(めっき領域が設けられた面)に対向しかつ近接するように配置される。アノード電極31としては、例えば酸化イリジウムにより被覆されたチタンが用いられる。アノード電極31は、配線L10を介して電源装置41の正極に接続される。
【0055】
給電ローラ51a,51bに電気的に接続された長尺状基板10のめっき領域が陰極(カソード)となるように、電源装置41によりアノード電極31と給電ローラ51a,51bとの間に電圧が印加される。それにより、長尺状基板10のめっき領域に電解めっきが施される。この場合、電源装置41は、長尺状基板10のめっき領域に一定の電流が流れるように定電流制御を行う。
【0056】
(3)めっき装置の動作
図3は
図1のめっき装置100の1つのめっき部M1の電気系統の構成を示すブロック図である。なお、
図1のめっき装置100の他のめっき部M2,M3の構成は、
図3のめっき部M1の構成と同様である。
【0057】
図3に示すように、電源装置41は、整流器411、電圧検出回路412および制御部413を含む。
【0058】
整流器411は、交流電源からの交流電流を直流電流に整流し、アノード電極31と給電ローラ51a,51bとの間に直流電圧を印加する。この整流器411は、配線L10に流れる電流を一定に制御する定電流制御機能を有する。
【0059】
電解めっき時には、整流器411は、配線L10、アノード電極31、電解槽11内のめっき液、長尺状基板10、給電ローラ51a,51b、配線L1,L2,L10a,L10bに一定の直流電流を供給する。
【0060】
電圧検出回路412は、整流器411の正極と負極との間の電圧を検出し、検出値(以下、測定電圧値と呼ぶ)を制御部413に出力する。制御部413は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータ等からなり、作業者の操作に基づくタイミングまたは予め設定されたタイミングでリレー61a,61bをオンおよびオフにする。また、制御部413は、電圧検出回路412から出力される電圧値に基づいて配線の接続不良の有無を判定する。
【0061】
ここで、接続不良とは、配線が断線している状態に限らず、配線が部分的に断線していることにより配線の抵抗が増加している状態および配線の接続部分の接触不良により配線の抵抗が増加している状態を含む。
【0062】
配線検査時には、制御部413が最初にリレー61aをオンにする。それにより、電源装置41の整流器411、配線L10、抵抗71a、リレー61aおよび配線L1,L10aにより構成される閉回路C1a(
図1参照)が形成される。その結果、閉回路C1aに電流が流れる。整流器411は、閉回路C1aに流れる電流が一定になるように定電流制御を行う。
【0063】
制御部413は、電圧検出回路412から出力される測定電圧値を予め設定された基準電圧値と比較する。基準電圧値は、抵抗71aの抵抗値と整流器411により供給される電流の値との積に設定される。
【0064】
ここでは、
図1の抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bは抵抗値を有するものとする。例えば、抵抗71aの抵抗値が0.5Ω、整流器411により供給される電流の値が0.5Aである場合には、基準電圧値は0.25Vとなる。
【0065】
配線L10,L1,L10aに接続不良がない場合には、測定電圧値が基準電圧値とほぼ等しくなる。一方、配線L10,L1,L10aのいずれかの部分に接続不良がある場合には、配線L10,L1,L10aのいずれかの部分の抵抗値が増加するため、測定電圧値は基準電圧値よりも大きくなる。例えば、配線L10,L1,L10aのいずれかの部分が部分的に断線している場合には、測定電圧値は基準電圧値よりも数10%以上高くなり、配線L10,L1,L10aのいずれかの部分が断線している場合には、測定電圧値は検出上限まで上昇する。
【0066】
制御部413は、測定電圧値が基準電圧値よりも高い場合に、配線の接続不良があることを示す異常検出信号ESを出力する。その後、制御部413は、リレー61aをオフにする。
【0067】
次に、制御部413はリレー61bをオンにする。それにより、電源装置41の整流器411、配線L10、抵抗71b、リレー61bおよび配線L2,L10bにより構成される閉回路C1b(
図1参照)が形成される。その結果、閉回路C1bに電流が流れる。整流器411は、閉回路C1bに流れる電流が一定になるように定電流制御を行う。
【0068】
制御部413は、電圧検出回路412から出力される測定電圧値を基準電圧値と比較し、測定電圧値が基準電圧値よりも高い場合に、異常検出信号ESを出力する。その後、制御部413は、リレー61bをオフにする。
【0069】
制御部413から出力される異常検出信号ESは、パーソナルコンピュータ等の外部機器に与えられる。外部機器では、異常検出信号ESに基づいてめっき部M1の配線に接続不良があることおよび接続不良があるめっき部M1を示す情報をディスプレイに表示し、または配線に接続不良があることを示す警報音を発生する。
【0070】
図1の他のめっき部M2,M3においても、同様の配線検査が行われる。この場合、めっき部M1,M2,M3のリレー61a,61b,62a,62b,63a,63bが順にオンにされることにより、めっき部M1,M2,M3において順に配線検査が行われてもよい。あるいは、めっき部M1,M2,M3のリレー61a,62a,63aが同時にオンされた後、めっき部M1,M2,M3のリレー61b,62b,63bが同時にオンされてもよい。
【0071】
なお、
図1の抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bの抵抗値がそれぞれ異なってもよい。その場合には、抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bにそれぞれ対応する基準電圧値が設定される。
【0072】
また、抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bの抵抗値および配線検査時に整流器411により供給される電流の値は、任意に設定することができる。この場合、抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bの抵抗値と整流器411により供給される電流の値との積が整流器411の定格電圧を超えないように設定する。
【0073】
特に、配線の断線の有無の検出を目的とする場合には、整流器411により供給される電流の値を0.1A〜0.5A程度と小さく設定することが好ましい。
【0074】
さらに、基準電圧値を抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bの抵抗値と整流器411により供給される電流の値との積よりも所定の余裕度分大きな値に設定してもよい。それにより、電圧の検出誤差に起因する接続不良の誤判定が防止される。
【0075】
なお、実際には整流器411のオンオフを切り替えるためのスイッチが設けられる。配線検査時には、リレー61a,61b,62a,62b,63a,63bのオンオフが切り替えられる毎に、整流器411のオンオフが切り替えられてもよく、あるいは、整流器411がオンした状態で、リレー61a,61b,62a,62b,63a,63bのオンオフのみが切り替えられてもよい。
【0076】
(4)実施の形態の効果
本実施の形態に係るめっき装置100においては、リレー61a,61b,62a,62b,63a,63bをオンにすることにより、複数のめっき部M1,M2,M3に閉回路C1a,C1b,C2a,C2b,C3a,C3bが形成され、電圧検出回路412から出力される測定電圧値に基づいて配線の接続不良の有無が検査される。それにより、作業者が手作業により配線の接続不良を検査する必要がない。したがって、配線の接続不良の検査を効率的に行うことが可能となる。
【0077】
また、めっき部M1,M2,M3のいずれかにおいて配線の接続不良が検出された場合に制御部413から異常検出信号ESが出力される。この場合、異常検出信号ESに基づいて外部機器により配線の接続不良があることおよび配線の接続不良があるめっき部を示す情報を表示することができる。それにより、作業者は、配線の接続不良の箇所を迅速に把握することができる。また、異常検出信号ESに基づいて外部機器により配線の接続不良があることを示す警報音を出力することができる。それにより、作業者は、配線の接続不良があることを迅速に把握することができる。
【0078】
さらに、配線検査が終了すると、すべてのリレー61a,61b,62a,62b,63a,63bはオフしている。すなわち、閉回路C1a,C1b,C2a,C2b,C3a,C3bは形成されない。したがって、配線検査のための抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bおよびリレー61a,61b,62a,62b,63a,63bは、電解めっきのための回路から独立している。そのため、配線検査のための回路が電解めっきに影響を与えることがない。例えば配線検査のための回路により電解めっき時の電流が減少することがない。それにより、長尺状基板10に安定的に電解めっきを行うことができる。
【0079】
(5)めっき装置の構成の他の例
図4はめっき装置の構成の他の例を示す模式図である。
図4のめっき装置100においては、複数のめっき部M1,M2,M3は、それぞれ電源装置410,420,430を備える。電源装置410,420,430は、
図3の制御部413を含まない。複数のめっき部M1,M2,M3に共通に制御部300が設けられる。
【0080】
制御部300は、めっき部M1のリレー61a,61b、めっき部M2のリレー62a,62bおよびめっき部M3のリレー63a,63bのオンおよびオフを制御する。また、制御部300は、複数の電源装置410,420,430の電圧検出回路412(
図3参照)から出力される電圧値に基づいて配線の接続不良の有無を判定する。
【0081】
本例のめっき装置100においては、共通の制御部300により複数のめっき部M1,M2,M3における配線検査を自動的に実行することができる。
【0082】
図5は
図4のめっき装置100における制御部300の動作を示すフローチャートである。
【0083】
なお、以下の説明においては、複数のリレーを順に第1〜第n
maxリレーと称する。n
maxは複数のリレーの数に等しい。
図4の例では、リレー61a,61b,62a,62b,63a,63bを順に第1〜第6リレーと称する。また、
図5において、変数nは1以上n
max以下の自然数である。
【0084】
初期状態では、複数のリレー61a,61b,62a,62b,63a,63bはオフしている。
【0085】
図5に示すように、まず、制御部300は、変数nを1に設定する(ステップS1)。次に、制御部300は、第nリレーをオンにする(ステップS2)。最初は、制御部300は、第1リレー(
図4のリレー61a)をオンにする。それにより、閉回路C1aが形成される。このとき、電源装置410の整流器411は、閉回路C1aに一定の電流が流れるように定電流制御を行う。
【0086】
次いで、制御部300は、電源装置の電圧検出回路から出力される測定電圧値が基準電圧値よりも大きいか否かを判定する(ステップS3)。最初は、制御部300は、めっき部M1の電源装置410の電圧検出回路412から出力される測定電圧値が基準電圧値よりも大きいか否かを判定する。
【0087】
測定電圧値が基準電圧値よりも大きい場合には、制御部300は、異常検出信号ESを出力する(ステップS4)。この場合、異常検出信号ESは、配線の接続不良があることおよび配線の接続不良があるめっき部を示す情報を含んでもよい。その後、制御部300は、ステップS5の処理に進む。
【0088】
ステップS3で測定電圧値が基準電圧値以下の場合には、制御部300は、ステップS5の処理に進む。
【0089】
制御部300は、第nリレーをオフにする(ステップS5)。最初は、制御部300は、第1リレー(
図4のリレー61a)をオフにする。
【0090】
そして、制御部300は、変数nがn
maxに等しいか否かを判定する(ステップS6)。変数nがn
maxに等しくない場合には、制御部300は、変数nに1を加算し(ステップS7)、ステップS2の処理に戻る。最初は、変数nは1に設定されているので、制御部300は、変数nを2に設定し、ステップS2の処理に戻る。
【0091】
制御部300は、変数nがn
maxに等しくなるまで、ステップS2〜S7の処理を繰り返す。それにより、複数のリレーが順にオンおよびオフする。
図4の例では、複数のリレー61a,61b,62a,62b,63a,63bが順にオンし、めっき部M1,M2,M3に順に閉回路C1a,C1b,C2a,C2b,C3a,C3bが形成される。したがって、複数のめっき部M1,M2,M3において順に配線検査が自動的に行われる。その結果、配線検査時の作業者の作業がさらに軽減される。
【0092】
(6)他の実施の形態
(a)上記実施の形態に係るめっき装置100は、複数のめっき部M1,M2,M3を備えるが、めっき装置100が1つのめっき部を備えてもよい。
【0093】
(b)上記実施の形態に係るめっき装置100では、各電源装置41,42,43および各電源装置410,420,430がそれぞれ電圧検出回路412を含むが、複数の電源装置41,42,43または複数の電源装置410,420,430に共通の電圧検出回路が用いられてもよい。この場合には、共通の電圧検出回路がスイッチ等により構成される切替回路を用いて複数の電源装置41,42,43または複数の電源装置410,420,430に順次接続される。
【0094】
(c)上記実施の形態に係るめっき装置100におけるリレー61a,61b,62a,62b,63a,63bの代わりに、トランジスタ等のスイッチング素子または機械的スイッチを用いてもよい。
【0095】
(d)上記実施の形態に係るめっき装置100における抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bの代わりにトランジスタまたはインダクタ等の他の負荷素子を用いてもよい。
【0096】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0097】
上記実施の形態においては、めっき槽11,12,13がめっき槽の例であり、アノード電極31,32,33がアノード電極の例であり、給電ローラ51a,51b,52a,52b,53a,53bが導電部材または導電性ローラの例であり、電源装置41,42,43,410,420,430の整流器411が直流電源の例である。
【0098】
また、配線L1,L2,L3,L4,L10,L20,L30,L10a,L10b,L20a,L20b,L30a,L30bが配線の例であり、抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bおよびリレー61a,61b,62a,62b,63a,63bが検査用回路の例であり、閉回路C1a,C1b,C2a,C2b,C3a,C3bが閉回路の例であり、電圧検出回路412が検出部の例である。
【0099】
また、抵抗71a,71b,72a,72b,73a,73bが負荷の例であり、リレー61a,61b,62a,62b,63a,63bがスイッチの例であり、配線L10,L20,L30が第1の配線の例であり、配線L1,L2,L3,L4,L10a,L10b,L20a,L20b,L30a,L30bが第2の配線の例であり、制御部413,300が出力部の例であり、異常検出信号ESが検出信号の例であり、長尺状基板10がめっき対象物または長尺状基板の例であり、搬送ローラ23a,23b,23c,23dが搬送機構の例である。
【0100】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。