(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した従来の主軸ユニットでは、放熱フィンからビルトインモータの熱を放熱させることができるものの、モータ熱が主軸を回転可能に支持するベアリングケース(主軸ハウジング)に伝達されて、ベアリングケースが膨張し、加工精度に影響を与える可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は前記の問題を解決するために案出されたものであって、主軸ハウジングの膨張を防止して、加工精度の向上を図ることができる主軸ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、主軸と、これを回転させるビルトインモータとを備えた主軸ユニットにおいて、前記主軸を主軸ベアリングを介して回転可能に支持する主軸ハウジングと、前記ビルトインモータを収容するモータハウジングを支持するベース部材とを別体で形成し、前記主軸ハウジングと前記ベース部材とを断熱部材を介して連結するとともに、
前記断熱部材は、ワッシャ形状を呈し、前記主軸ハウジングを前記ベース部材に固定するためのボルトが挿通しているとともに、前記主軸ハウジングの外周方向に沿って所定のピッチで設けられており、前記断熱部材が介在される前記主軸ハウジングと前記ベース部材間に、
前記主軸ハウジングと前記ベース部材との間に形成された隙間である断熱空間を設け、前記主軸ハウジングと前記ベース部材が非接触となるように構成していることを特徴とする主軸ユニットである。
【0007】
このような構成によれば、ビルトインモータの熱はモータハウジングからベース部材まで伝わるものの、断熱部材で遮断されているので主軸ハウジングには殆んど伝わらない。したがって、主軸ハウジングの熱膨張を防止できるので、加工精度に影響を与える主軸の先端部の変動が抑制され、加工精度の向上を図ることができる。
さらに、断熱部材が介在される主軸ハウジングとベース部材間に、断熱空間を設けたことで、主軸ハウジングとベース部材間の断熱効果をより一層向上させることができる。
【0010】
請求項
2に係る発明は、前記モータハウジングの外周面に、放熱フィンを設けたことを特徴とする請求項
1に記載の主軸ユニットである。
【0011】
このような構成によれば、ビルトインモータの熱を、効率良く空気中に放熱することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ビルトインモータの熱が主軸ハウジングに伝わらないので、主軸ハウジングの膨張を防止でき、加工精度の向上を図ることができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る主軸ユニットの実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
主軸ユニットは、工作機械のコラムに設けられ、コラムは、主軸をワークに対して適宜移動させるとともに、工具マガジン側にも移動させて、主軸が把持する工具を選択的に着脱するように構成される。
【0020】
図1および
図2に示すように、主軸ユニット1は、主軸10と、これを回転させるビルトインモータ30とを備えている。さらに、主軸ユニット1は、主軸10を、主軸ベアリング51を介して回転可能に支持する主軸ハウジング50と、ビルトインモータ30を収容するモータハウジング31を支持するベース部材70とを備えている。
【0021】
図2に示すように、主軸ハウジング50は、主軸ベアリング51を介して主軸10を支持している。主軸ハウジング50とベース部材70は、それぞれ別体で形成されており、断熱部材90を介して連結されている。
【0022】
主軸10は、その先端部に、工具2を着脱するための取付穴11が形成されている。取付穴11は、先端側が拡径するテーパ形状を呈している。なお、主軸10の先端部の形状は、一例であって、これに限られるものではなく、取り付けられる工具に応じてBT、KM、HSK等、種々の工具把持部形状に対応できるように適宜形成される。主軸10の先端側となる前部分は、主軸ハウジング50内に収容されており、主軸ベアリング51にて回転可能に支持されている。主軸10の後部には、主軸10を囲繞してビルトインモータ30が設けられており、主軸10の外周面にはビルトインモータ30のロータ32が固定されている。
【0023】
主軸10は、中空構造になっており、主軸10の内部にその軸方向に移動可能なドローバー12が設けられている。ドローバー12は、その先端が工具を着脱するための取付穴11の底部(奥部)に突出するように配置されており、その先端部に工具2の端部を把持するための把持穴13を有している。一方、工具2の端部には、プルスタッド2aが形成されている。ドローバー12の把持穴13は、工具2のプルスタッド2aの外径と同等の内径を有しており、内部にプルスタッド2aが挿入可能に構成されている。
【0024】
ビルトインモータ30は、主軸10の外周面に形成されたロータ32と、このロータ32の外側に所定の間隔をあけて配置されたステータ33とを備えて構成されている。ステータ33は、コイル(図示せず)を備えており、モータハウジング31に固定されている。ビルトインモータ30は、ステータ33のコイルに電流を流すことによって、ロータ32を回転させるようになっている。ビルトインモータ30は、主軸10を直接回転させるものである。
【0025】
モータハウジング31は、円筒形状を呈しており、ステータ33の外周部を囲繞して配置されている。モータハウジング31の内周面と、ステータ33の外周面が面接合されている。モータハウジング31の外周面には、径方向外側に向かって立設する放熱フィン34が設けられている。放熱フィン34は、モータハウジング31の周方向に延在して円環状に形成されており、モータハウジング31の軸方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。放熱フィン34は、モータハウジング31の表面積を増加させるために設けられており、ビルトインモータ30から発生する熱を効率良く空気中に放熱するようになっている。
【0026】
モータハウジング31の外周部には、モータハウジング31および放熱フィン34の全体を覆うカバー体35が設けられている。カバー体35は、円筒形状を呈しており、その内周面が放熱フィン34の先端と当接するように構成されている。これによって、カバー体35の内部に、モータハウジング31の外周面と、隣り合う放熱フィン34,34と、カバー体35の内周面とで囲まれた流路36が区画されることとなる。流路36は、モータハウジング31の周方向に沿って、複数列形成されている。カバー体35の斜め上部には、第一開口部(図示せず)が形成されており、この第一開口部には、送風ファン37が設けられている。カバー体35の斜め下部には、第二開口部(図示せず)が形成されている。第二開口部は、モータハウジング31の中心部分を挟んで第一開口部と対向する部分に形成されている。
【0027】
このような構成においては、送風ファン37によって第一開口部からカバー体35の内部に空気が送り込まれ、送り込まれた空気は、カバー体35の内部の流路36内を流れて、第二開口部から外部へ排出される。なお、第二開口部の側方には、ベース部材70の水平ベース部71と立上り部72を繋ぐ補強部材85(
図1参照)が位置しているが、補強部材85には開口部86(
図1参照)が形成されている。これによって、第二開口部から外部へ排出された空気は、開口部86を介して、主軸ユニット1の外方へ排出される。なお、ここで排出された空気を回収して熱源として利用するようにしてもよい。
【0028】
主軸ハウジング50は、例えば、スチールにて形成されている。主軸ハウジング50は、主軸10の先端側に延出する円筒部52と、円筒部52の基端側に形成された鍔部53とを備えている。円筒部52内には、主軸10が主軸ベアリング51,51を介して回転可能に収容されている。主軸ベアリング51,51は、円筒部52の先端部と基端部にそれぞれ設けられており、主軸10を支持している。鍔部53は円帯状に形成されており、円筒部52の軸方向に直交して形成されている。鍔部53には、ボルト用の貫通孔53aが所定間隔で同心円上に配置形成されている。
【0029】
ベース部材70は、主軸10を工作機械(図示せず)に固定するサドルにて構成されている。ベース部材70(サドル)は工作機械のコラム(図示せず)設けられた昇降部(図示せず)に、主軸10の軸方向に沿って前後移動可能に取り付けられている。ベース部材70は、水平方向に延在する水平ベース部71と、水平ベース部71の一端から上方に直交して立ち上がる立上り部72とを備えて構成されており、側面視L字状を呈している。水平ベース部71と立上り部72との接続部分には、補強部材85(
図1参照)が設けられている。補強部材85は、水平ベース部71の幅方向両端に立ち上げられたプレートにて構成されており、下端が水平ベース部71と接続され、前端が立上り部72に接続されている。ベース部材70は、水平ベース部71が昇降部に固定されて、工作機械本体側に接続されている。一方、立上り部72に主軸ハウジング50とモータハウジング31が固定されている。
【0030】
立上り部72の中央部には、主軸10が挿通する貫通孔73が形成されている。貫通孔73は、主軸10よりも大きい径に形成されており、モータハウジング31の先端部が、貫通孔73の内側に収容されるようになっている。なお、モータハウジング31の先端部には、前方に突出する円筒部31aが形成されており、この円筒部31aが貫通孔73内に挿入されて、モータハウジング31が、立上り部72に固定されている。立上り部72の貫通孔73の周縁部の前方面(主軸ハウジング50の鍔部53に対向する面)には、主軸ハウジング50を固定するためのボルト穴74が形成されている。ボルト穴74は、複数設けられており、主軸ハウジング50の貫通孔53aに対応する位置にそれぞれ形成されている。
【0031】
水平ベース部71の上面には、凹部75が形成されている。凹部75は、ビルトインモータ30の下方位置に形成されており、モータハウジング31およびカバー体35の下端部を収容するように構成されている。モータハウジング31の後端部には後端開口部を覆うカバー38が設けられている。カバー38は、主軸10の後端部が挿通される貫通孔を備えている。また、カバー38の後部には、主軸10の回転量を検知する回転センサ76が設けられている。カバー38は、主軸10と隙間をあけて設けられている。これによって、ビルトインモータ30の作動によって発生する熱が主軸10に伝わるのを防止できる。
【0032】
図2および
図3に示すように、断熱部材90は、主軸ハウジング50の鍔部53と、ベース部材70の立上り部72との間に介設されている。断熱部材90は、所定の強度と断熱性を備えた材料にて構成されている。断熱部材90は、所定の厚さを有するワッシャ形状を呈しており、主軸ハウジング50をベース部材70に固定するためのボルト91が挿通されて配置されている。断熱部材90は、所定のピッチで複数設けられており、ボルト91ごとにそれぞれ配置されている。断熱部材90は、一方の面が主軸ハウジング50の鍔部53に当接し、他方の面がベース部材70の立上り部72に当接しており、スペーサの役目を果たしている。これによって、主軸ハウジング50の鍔部53と、ベース部材70の立上り部72との間には、断熱部材90が挟持されるとともに、断熱空間となる空気層92が形成されることとなる。
【0033】
以上のような構成の主軸ユニット1によれば、主軸ハウジング50とモータハウジング31を支持するベース部材70とを別体で形成し、主軸ハウジング50とベース部材70とを断熱部材90を介して連結しているので、ビルトインモータ30の作動によって発生する熱はモータハウジング31からベース部材70まで伝わるものの、断熱部材90によって熱伝達が低減され、主軸ハウジング50に殆んど伝わらない。また、断熱部材90は、主軸ハウジング50の鍔部53と、ベース部材70の立上り部72との間でスペーサの役目を果たすので、断熱部材90が介在する以外の部分には隙間ができ、空気層92が形成される。これによって、主軸ハウジング50とベース部材70間の断熱効果がさらに向上する。
【0034】
このように、本実施形態によれば、主軸ハウジング50への熱伝達を大幅に低減できるので、主軸ハウジング50の熱膨張を防止でき、主軸ハウジング50内の主軸ベアリング51の位置が変化しない。ここで、主軸10は、主軸ハウジング50の内部に設けられた主軸ベアリング51によって軸支されているので、主軸10の回転にズレが発生せず、加工精度に影響を与える可能性のある主軸10の先端部の変動が抑制される。したがって、加工精度の向上を図ることができる。
【0035】
また、本実施形態では、ベース部材70が、主軸10を工作機械に固定するサドルにて構成され、サドルの役目を果たす水平ベース部71と、主軸ハウジング50とモータハウジング31が取り付けられる立上り部72とが、一体的に形成されているので、全体として重量を軽減しつつ、各部材(主軸ハウジング50やモータハウジング31等)を支持するのに必要な強度を確保することができる。つまり、従来は、ベース部材をサドルと別部材として構成していたので、サドルとベース部材の水平ベース部が重複して形成され、重量が増加してしまう。一方、サドルに立上り部のみを接続した場合には、サドルと立上り部との接続部分の強度が弱く、必要な強度を確保することができなかったが、本実施形態では、これらの問題点をまとめて解決している。
【0036】
さらに、本実施形態では、水平ベース部71の上面に凹部75が形成され、この凹部75内にモータハウジング31およびカバー体35の下端部が収容されるように構成されているので、主軸ユニット1全体の高さ寸法を縮めることができる。これによって、主軸ユニット1のコンパクト化および、さらなる軽量化を図ることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、モータハウジング31の外周面に放熱フィン34を設けて、カバー体35で覆い、その内部に送風ファン37で空気を流したことによって、ビルトインモータ30から発生する熱を効率よく空気中に放熱することができる。
【0038】
以上、本発明の最良の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能であるのは勿論である。例えば、本実施形態では、
主軸ハウジング50をベース部材70に固定するためのボルト91を通常のスチール製のものとしているが、断熱材料で形成された断熱ボルトを用いてもよい。このようにすれば、主軸ハウジング50に伝わる熱量をさらに低減することができる。
【0040】
次に、
主軸ユニットの参考の実施形態について、
図4を参照しながら詳細に説明する。前記実施形態では、主軸ハウジング50とベース部材70の間に断熱部材90が設けられていたのに対して、本実施形態では、ベース部材70とモータハウジング31の間に、断熱部材95が介設されていることを特徴とする。なお、その他の構成については、前記実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
断熱部材95は、ベース部材70の立上り部72とモータハウジング31の間に設けられている。断熱部材95は、立上り部72の貫通孔73の周縁部の後方面(モータハウジング31に対向する面)と、モータハウジング31の円筒部31aの基端部に位置する前方面(立上り部72に対向する面)との間に挟まれて設けられている。断熱部材95は、所定の強度と断熱性を備えた材料にて構成されている。断熱部材95は、円環形状を呈し、円筒部31aを囲むように設けられている。主軸ハウジング50とベース部材70は直接連結されている。なお、断熱部材95は、円環形状に限定されるものではなく、円周方向に所定の間隔をあけて、複数設けるようにしてもよい。この場合、隣り合う断熱部材間に断熱空間となる空気層が形成される。
【0042】
以上のような構成によれば、ベース部材70の立上り部72とモータハウジング31との間に断熱部材95を設けたことで、ベース部材70とモータハウジング31間に断熱効果を得ることができる。したがって、ビルトインモータ30の作動によって発生する熱は、断熱部材95によってベース部材70への熱伝達が低減され、主軸ハウジング50に殆んど伝わらない。これによって、前記の実施形態と同様の作用効果が得られ、加工精度の向上を図ることができる。