(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱源ガスの流路中、前記蒸発器管群の下流側の端部から前記再生器管群をバイパスして、前記熱源ガスを前記再生器管群の下流側に流すバイパス流路と、前記バイパス流路中の前記熱源ガスの流れを制限する流れ制限手段を備える、請求項1又は請求項2に記載の吸収ヒートポンプ。
前記再生器上部管板を含んで再生器上部ヘッダが構成され、前記再生器下部管板を含んで再生器下部ヘッダが構成され、前記再生器上部ヘッダから前記再生器下部ヘッダに前記吸収液を降下させる降液管を備える、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の吸収ヒートポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、
図9に示すように、我が国の工場から排出される排熱は、100℃以上のガス排熱、40℃以上の温水排熱が、年間1110PJ(平成12年度)あると推計されている。しかし、そのうち100℃未満の温水や250℃未満のガスは温度が低いためエネルギーとして工場内での再利用が難しいとされており、その量は914PJ/年と実に82%を占めている。なかでも排ガスの形態で排出されるものが圧倒的に多い。しかしながら、排ガスの単位体積あたりの熱容量は小さく、体積流量が非常に大きくなる。また、排ガスは例えば、200℃で供給し、100℃まで利用し、180℃の蒸気を得るなどのように、排ガスの温度変化が大きくなる。
【0005】
このような排ガスの特性から、従来の吸収ヒートポンプでは体積流量の大きい排ガスを蒸発器及び再生器の熱源として利用し難かった。また流動抵抗による圧力損失のためこれを流動させるための動力が大きくなり省エネルギー効果を削ぐことになり勝ちであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1、
図3、
図4に示すように、熱源ガスGH1により冷媒CLを加熱して蒸発させる蒸発器Eと;前記蒸発した冷媒CSを吸収して吸収熱で被加熱媒体W1を加熱する吸収器Aと;吸収器Aで冷媒CSを吸収して濃度の低下した吸収液ALiを熱源ガスGH2により加熱して再生する再生器Gとを備え;蒸発器Eは、蒸発器上部管板52と、蒸発器下部管板53と、蒸発器上部管板52と蒸発器下部管板53との間に設けられた、内側を液状の前記冷媒が流れる複数本の垂直伝熱管51とを有し;再生器Gは、再生器上部管板72と、再生器下部管板73と、再生器上部管板72と再生器下部管板73との間に設けられた内側を前記吸収液ALiが流れる複数本の垂直伝熱管71とを有し;複数本の垂直伝熱管51、71の外側を垂直伝熱管51、71と交差して熱源ガスGH1、GH2が流れるように構成され;複数本の垂直伝熱管51、71は、蒸発器Eと、再生器Gとで、それぞれ蒸発器管群50と再生器管群70を構成し、蒸発器管群50と再生器管群70は、熱源ガスGHの流れに対して直線的に配列されている。
以下、蒸発器Eに先ず供給される熱源ガスをGH1と称し、蒸発器Eを通過して再生器Gに供給される熱源ガスをGH2と称する。さらに再生器Gを通過して排出される熱源ガスをGH4と称する。しかしながら、熱源ガスを各部を流れるガスとして区別する必要がないとき、あるいは包括的に扱うときは、単にGHの符合で呼ぶものとする。
【0007】
本態様のように構成すると、複数本の垂直伝熱管の外側を垂直伝熱管と交差して熱源ガスGHが流れるように構成され、さらに複数本の垂直伝熱管は、蒸発器と、再生器とで、それぞれ蒸発器管群と再生器管群を構成し、蒸発器管群と再生器管群は、熱源ガスの流れに対して直線的に配列されているので、体積流量の大きい排ガスを蒸発器及び再生器の熱源として利用するに当たって、流動抵抗による圧力損失を低く抑えることができる。そのためこれを流動させるための動力を小さく抑えることができ、省エネルギー効果を高めることができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る吸収ヒートポンプは、第1の態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、例えば、
図3に示すように、再生器上部管板72は、蒸発器上部管板52と一体の板で形成され、再生器下部管板73は、蒸発器下部管板53と一体の板で形成される。
【0009】
本態様のように構成すると、再生器上部管板は、蒸発器上部管板と一体の板で形成され、再生器下部管板は、蒸発器下部管板と一体の板で形成されるので、製造効率が高く、また蒸発器と再生器を隣接して構成し易い。さらには、蒸発器と再生器との間隔を小さく構成することが容易にできる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る吸収ヒートポンプは、例えば
図1、
図3、
図4に示すように、第1の態様又は第2の態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、再生器管群70は、熱源ガスGHの流れに対して、蒸発器管群50の下流側に配置される。
さらに、典型的には、例えば、
図3、
図4に示すように、蒸発器管群50と再生器管群70を各管板52、53、72、73と協働して外気から遮断し、各管板52、53、72、73とで熱源ガスGHの流路を構成する側板54a、54b、74a、74bを備えてもよい。
【0011】
本態様のように構成すると、再生器管群は、熱源ガスの流れに対して、蒸発器管群の下流側に配置されるので、熱源ガスは蒸発器で温度がある程度低下した後で再生器に供給される。したがって、高温ガスによる吸収液の過濃縮、結晶の危険を抑えることができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る吸収ヒートポンプは、第3の態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、例えば
図5に示すように、熱源ガスGHの流路60中、蒸発器管群50の下流側の端部から再生器管群70をバイパスして、熱源ガスGHを再生器管群70の下流側に流すバイパス流路91と、バイパス流路91中の熱源ガスGHの流れを制限する流れ制限手段92を備える。
ここで、「制限」は「遮断」を含まない「制限」であってもよいが、典型的には「遮断」を含む概念である。
【0013】
このように構成すると、再生器での加熱量を制限することができ、吸収液の過剰濃縮あるいは結晶化を抑えることができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る吸収ヒートポンプは、第3の態様又は第4の態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、例えば
図5に示すように、熱源ガスGHの流路60中、蒸発器管群50と再生器管群70との間に熱源ガスGHの流れを制限する流れ制限手段93を備える。
ここで、「制限」は「遮断」を含まない「制限」であってもよいが、典型的には「遮断」を含む概念である。
【0015】
本態様のように構成すると、熱源ガスの流路中、蒸発器管群と再生器管群との間に熱源ガスの流れを制限する流れ制限手段を備えるので、バイパス流路中の熱源ガスの流れを制限する流れ制限手段とあいまって、バイパス流路を流れる熱源ガス量を調節し易い。
【0016】
本発明の第6の態様に係る吸収ヒートポンプは、第1の態様乃至第5の態様のいずれか1の態様に係る吸収ヒートポンプにおいて、例えば
図7又は
図8に示すように、再生器上部管板72を含んで再生器上部ヘッダ75が構成され、再生器下部管板73を含んで再生器下部ヘッダ76が構成され、再生器上部ヘッダ75から再生器下部ヘッダ76に吸収液ALiを降下させる降液管77を備える。
【0017】
本態様のように構成すると、吸収液は再生器下部ヘッダに供給され、垂直伝熱管中を流れる間に加熱され再生器上部ヘッダまで上昇する。効果的に加熱するには、吸収液は垂直伝熱管を通して再生器下部ヘッダと再生器上部ヘッダとの間で循環するのが好ましい。降液管はそのような吸収液の循環に資する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、体積流量の大きい排ガスのような熱源ガスの流動抵抗による圧力損失を抑え、熱源ガスを流動させるための動力を小さく抑えることができ、省エネルギー効果が削がれるのを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する部分には同一又は類似の符号を付し,重複した説明は省略する。
【0021】
図1のフローシートを参照して、本発明の第一の実施の形態に係る吸収ヒートポンプの構成を説明する。吸収ヒートポンプ101は、吸収液ALi(例えば、臭化リチウム水溶液)による冷媒蒸気CS(冷媒は例えば水)の吸収が行われる吸収器Aと、吸収液ALiから冷媒蒸気CSを蒸発させ吸収液ALiの再生が行われる再生器Gと、冷媒液CLから冷媒蒸気CSを発生させる蒸発器Eと、冷媒蒸気CSを凝縮させ冷媒液CLとする凝縮器Cとを備える。吸収器A、再生器G、蒸発器E、凝縮器Cはそれぞれ一つの圧力下にあり、蒸発器Eの圧力と吸収器Aの圧力は実用上等しく、再生器Gの圧力と凝縮器Cの圧力は実用上等しい。
【0022】
吸収器Aは、(1)濃溶液である吸収液ALiが移送(供給)され、移送された吸収液ALiを吸収器Aの内部に散布する吸収液スプレイ22と、(2)補給水W1が移送され、冷媒蒸気CSを吸収した希溶液である吸収液ALiによって、移送された補給水W1が加熱される被加熱管23とを備える。吸収器Aの底部は、吸収液ALiを蓄積するに十分な吸収液溜め部となっている。
【0023】
蒸発器Eは、冷媒液移送管5により凝縮器Cから移送される冷媒液CLを内部に流し、外部を流れる熱源ガスとしての排ガスGH1により加熱し蒸発させる垂直伝熱管51を備える。また蒸発器Eの上部ヘッダ55中に設置され、蒸発器E内の冷媒液CLの液面レベルを検出する液面レベルセンサL1を備える。液面レベルセンサL1は制御装置21を介して、冷媒供給弁V3を調節することにより、蒸発器E内の冷媒の液面レベルを維持する(なお、冷媒供給弁V3を設けないで冷媒ポンプ4をインバータモータ駆動として冷媒ポンプを調節してもよい)。吸収ヒートポンプ101では、蒸発器Eで蒸発した冷媒蒸気CSは、冷媒蒸気移送管16を通して吸収器Aに送られる。蒸発器Eの構造については、
図3〜
図5を参照して詳細に説明する。ここで排ガスは、典型的には工場で各種プロセスで高温部分を利用した後の200℃程度以下のガスである。ボイラからの排ガスであって、高温部分を利用した後、煙突から排出する前のガスであってもよい。
【0024】
再生器Gは、吸収液移送管路3を通して吸収器Aから移送される吸収液ALiを内部に流し、外部を流れる熱源ガスとしての排ガスGH2により加熱して冷媒蒸気を発生させ、これを濃縮する垂直伝熱管71を備える。この吸収液ALiは、吸収器Aで冷媒を吸収して濃度の低下した吸収液すなわち希溶液である。また再生器Gの上部ヘッダ75中に設置され、再生器G内の吸収液ALiの液面レベルを検出する液面レベルセンサL2を備える。液面レベルセンサL2は制御装置21を介して、溶液ポンプ1を調節することにより、再生器G内の吸収液の液面レベルを維持する(なお、溶液ポンプ1の調節の代わりに調節弁を設けてもよい)。吸収ヒートポンプ101では、再生器Gで濃縮された吸収液ALiは、吸収液移送管2を通して吸収器Aに送られる。また再生器Gで発生した冷媒蒸気CSは、冷媒蒸気移送管17を通して凝縮器Cに送られる。再生器Gの構造については、
図3〜
図5、
図7、
図8を参照して詳細に説明する。
【0025】
凝縮器Cは、冷却水WCが移送され、再生器Gから凝縮器Cに送られた冷媒蒸気CSを冷却する冷却管30を備える。冷却水WCの温度は、例えば冷却管30の入口で32℃、出口で37℃である。
【0026】
吸収ヒートポンプ101は、(1)気液分離器11と、(2)気液分離器11に接続され気液分離器11に補給水W1を移送する補給水移送管路7と、(3)気液分離器11から吸収器Aの被加熱管23に補給水W1を移送する補給水移送管路6と、(4)被加熱管23から気液分離器11に補給水W1を移送して戻す補給水移送管路10と、(5)蒸気ヘッダ(不図示)に接続され、気液分離器11で発生した蒸気S(例えば、180℃)を蒸気ヘッダに供給する蒸気供給管路8とを備える。
【0027】
吸収ヒートポンプ101は、さらに、(6)再生器Gと吸収器Aとを繋ぎ、再生器Gで再生された濃溶液である吸収液ALiを吸収器Aの吸収液スプレイ22に移送する吸収液移送管路2と、(7)吸収器Aと再生器Gとを繋ぎ、吸収器Aに蓄積された希溶液である吸収液ALiを再生器Gの再生器下部ヘッダ76に移送する吸収液移送管路3と、(8)凝縮器Cと蒸発器Eとを繋ぎ、凝縮器Cで凝縮した冷媒液CLを蒸発器Eに移送する冷媒液移送管路5とを備える。
【0028】
吸収ヒートポンプ101は、さらに、(9)吸収液移送管路2を通って被加熱側に移送される濃溶液である吸収液ALiと、吸収液移送管路3を通って再生器下部ヘッダ76に移送される希溶液である吸収液ALiとの間で熱交換を行う溶液(吸収液)熱交換器X1を備える。
【0029】
吸収ヒートポンプ101は、さらに加熱側に排熱源GH3が流れ、被加熱側に補給水移送管路7を通って補給水W1が移送され、熱交換が行われる熱交換器X2を備える。熱交換器X2は図中独立した熱交換器で示しているが、熱交換器X2の伝熱部は、蒸発器E入口部あるいは蒸発器Eと再生器Gの中間の排ガスの流れ中に設けるのが好ましい。
【0030】
吸収液移送管路2には、溶液ポンプ1が設置され、溶液ポンプ1は再生器Gで再生された吸収液ALiを吸収器Aに移送する。溶液ポンプ1は、溶液熱交換器X1の上流側に設置されている。冷媒液移送管路5には、冷媒昇圧手段としての冷媒ポンプ4が設置され、冷媒ポンプ4は凝縮器Cで凝縮された冷媒液CLを蒸発器Eに移送する。補給水移送管路7には、給水ポンプ12が設置され、給水ポンプ12は補給水W1を気液分離器11に移送する。補給水移送管路7の給水ポンプ12の直下流側には、逆止弁37が設置され、補給水W1が逆流するのを防止している。補給水移送管路6には、給水ポンプ13が設置され、給水ポンプ13は補給水W1を気液分離器11から被加熱管23に移送し、さらに補給水移送管路10を通って被加熱管23から気液分離器11に移送して戻し、補給水W1を循環させる。
【0031】
冷媒液移送管路5で冷媒ポンプ4の下流側には、蒸発器下部ヘッダ56に移送する冷媒液CLの流量を調整する冷媒供給弁V3が設置されている。
【0032】
気液分離器11には、その圧力を検出する圧力センサPが設置され、下部に蓄積された補給水W1の液面レベルを検出する液面レベルセンサL3が設置されている。蒸気供給管路8には、供給する蒸気Sの圧力を調節する蒸気弁V1が設置されている。蒸気供給管路8に、図に示すように、蒸気ヘッダ(不図示)からの蒸気の逆流を防止する逆止弁38を設置してもよい。逆止弁38を設置すると、蒸気弁V1の作動に関係なく、確実に蒸気ヘッダからの蒸気の逆流を防止することができる。熱源ガスとしての排ガスGH1の供給温度は、例えば200℃である。蒸発器Eに供給された排ガスGH1は、蒸発器Eで熱を奪われ、温度が約150℃の排ガスGH2となり、さらに再生器Gに流入し、そこで熱を奪われ約100℃の排ガスGH4となって排出される。
【0033】
既に説明したように、蒸発器Eに先ず供給される排ガスをGH1と称し、蒸発器Eを通過して再生器Gに供給される排ガスをGH2と称する。さらに再生器Gを通過して排出される排ガスをGH4と称する。また排ガスを各部を流れるガスとして区別する必要がないとき、あるいは包括的に扱うときは、単にGHの符合で呼ぶ。
【0034】
補給水W1の予熱は、排ガスのような熱源ガスの供給側から蒸発器Eと再生器Gの中間部のガスGH2までの高温ガスで行うのがよい。あるいは、図示しないが、再生器Gに供給される入口の吸収液で加熱する熱交換器で行ってもよいし、蒸発器Eで発生した冷媒蒸気で加熱する熱交換器で行ってもよい。
【0035】
吸収ヒートポンプ101は、制御装置21を備える。液面レベルセンサL1からの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から冷媒液CLの流量を制御する制御弁である冷媒供給弁V3に信号を送る。そのようにして、冷媒供給弁V3の開度を蒸発器Eの液面レベルが一定になるよう調節する(但し、図中、簡略化し制御信号が液面レベルセンサL1から冷媒供給弁V3に直接送られるよう示されている)。
【0036】
液面レベルセンサL2からの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう吸収液ALiの流量を制御する制御信号(不図示)が、溶液ポンプ1を駆動するインバータモータINに送られ、インバータモータINの回転速度を調節して、再生器Gの液面レベルが一定になるように制御する(図中、簡略化して、液面レベルセンサL2からインバータモータINに信号が直接送られるように示されている)。
【0037】
気液分離器11の液面レベルセンサL3からの、液面レベルを表す液面信号(不図示)は制御装置21に送られ、制御装置21から液面レベルをほぼ一定のレベルに保つように給水ポンプ12をオン/オフさせる(図中、簡略化して、液面レベルセンサL3から給水ポンプ12に信号が直接送られるように示されている)。なお、制御装置21から液面レベルを一定のレベルに保つよう補給水W1の流量を制御する制御信号(不図示)を給水ポンプ12に送り(実際には前述のように不図示のインバータモータ)、給水ポンプ12の回転数を気液分離器11の液面レベルが一定になるよう調節してもよい。
【0038】
圧力センサPからの、圧力を表す圧力信号(図中、破線)は制御装置21に送られ、制御装置21から気液分離器11の圧力が所定の値P1になるよう蒸気Sの供給量を制御する制御信号(図中、破線)が蒸気弁V1に送られ、蒸気弁V1の開度を気液分離器11の圧力が所定の値P1になるよう調節する。所定の値P1は、例えば、蒸気ヘッダ圧よりわずかに(0.05MPa程度)高めに設定するとよい。排ガスGH1と排ガスGH3は、並列に供給されるように図示されているが、直列、あるいは一部並列、一部直列に供給してもよい。
【0039】
次に、第1の実施の形態の作用を
図1、
図2を参照して説明する。
図2は、吸収液および冷媒の状態を示すデューリング線図であり、縦軸が冷媒温度、横軸が溶液(吸収液)温度である。吸収器Aを出た希溶液である吸収液ALi(状態は、
図2中、B2の位置)は、吸収液移送管路3により移送され、溶液熱交換器X1を通過する。この吸収液ALiは熱交換器X1を通過することにより、吸収液移送配管2を通って再生器Gから吸収器Aに移送される濃溶液である吸収液ALiにより冷却される(冷却後の吸収液ALiの状態は、
図2中、B8の位置)。溶液熱交換器X1により冷却された吸収液ALiは、再生器下部ヘッダ76に移送される。
【0040】
吸収液ALiは、再生器Gの再生器下部ヘッダ76(吸収液ALiの状態は、
図2中、B5の位置)から垂直管71内を流れる間に排ガスGH2によって加熱され、吸収液ALiに吸収されていた冷媒は冷媒蒸気CSとして蒸発する。このようにして、濃縮され、再生された濃溶液である吸収液ALiは再生器上部ヘッダ75部に設けられた吸収液出口2aから流出する。
図1に示す再生器Gの上部ヘッダ75に実線で表わされている角穴が出口2aである。またそれにつながる破線は、出口ヘッダを示している。
【0041】
濃溶液となった吸収液ALi(状態は、
図2中、B4の位置)は、吸収液移送管路2を通り吸収器Aの吸収液スプレイ22に移送される。吸収液移送管路2を通る間、溶液ポンプ1により昇圧され、その後溶液熱交換器X1で、吸収器Aから再生器Gに移送される希溶液である吸収液ALiに加熱され(吸収液移送管路2を通る吸収液ALiの状態は、
図2中、B7の位置)、吸収器Aの吸収液スプレイ22に移送される。
【0042】
吸収器Aで、吸収液スプレイ22から吸収器A内に散布された濃溶液である吸収液ALi(吸収液ALiの状態は、
図2中、B6の位置)は、蒸発器Eで蒸発した冷媒蒸気CSを吸収し、被加熱管23を通る被加熱媒体としての補給水W1を吸収熱で加熱し、吸収器Aの底部に蓄積する(吸収液ALiの状態は、
図2中、B2の位置)。
【0043】
前述のように、溶液ポンプ1は、再生器G内の吸収液ALiの液面レベルが一定となるような流量の吸収液ALiを再生器Gから吸収器Aに移送する。移送量は制御装置21によって制御される。再生器Gの液面を一定に保つことにより、冷媒蒸気圧の差が大きい吸収器Aと再生器Gの間の液シールを確保する。再生器G内に滞留する吸収液を除く、系内の吸収液は、主として吸収器Aの底部に蓄積される。したがって吸収器Aの底部は、その蓄積に十分な容量を有するように構成する。吸収液移送管路2のポンプ1の出口側には逆止弁39が設けられている。ヒートポンプ101の運転中は、吸収器Aの方が再生器Gよりも圧力が高い。したがって、ヒートポンプ101を停止した際、すなわちポンプ1を停止すると、吸収液は黙っていれば吸収器Aから再生器Gに流入する。逆止弁39により、ポンプ1の逆回転が防止される。またヒートポンプ101を停止すると、吸収器Aに溜まっていた吸収液ALiは、吸収液移送管路3を流れて、再生器Gに溜まる。したがって、再生器上部ヘッダ75は、それぞれ系内の吸収液を収容するに十分な容量とする。停止時に再生器上部ヘッダ75に溜まっていた吸収液ALiは、ヒートポンプ101の起動時に、液面制御により吸収器Aに送られる。または、排ガスGHを投入する前に、あらかじめ吸収器Aに送ってもよい。
【0044】
再生器Gで蒸発した冷媒蒸気CSは冷媒蒸気移送管17を通して凝縮器Cに送られる。凝縮器Cに送られた冷媒蒸気CSは凝縮器Cで冷却管30を通る冷却水WCにより冷却され凝縮して冷媒液CL(状態は、
図2中、D1の位置)となる。凝縮器Cの冷媒液CLは、冷媒液移送管路5を通り、冷媒ポンプ4により昇圧され、冷媒供給弁V3により流量を制御されて、蒸発器Eに送られる。
【0045】
蒸発器Eに送られた冷媒液CLは、蒸発器下部ヘッダ56から垂直伝熱管51の内側を流れる間に排ガスGH1により加熱されて蒸発する (冷媒の状態は、
図2中、D2の位置)。蒸発した冷媒蒸気CSは冷媒蒸気移送管16を通して吸収器Aに送られ、吸収器Aで吸収液ALiに吸収される。
【0046】
冷媒供給弁V3は、制御装置21によって開度が調節され、凝縮器Cから蒸発器Eに移送される冷媒液CLの量を加減する。すなわち、移送される冷媒液CLの量を、蒸発器Eに蓄積する冷媒液CLの液面レベルが一定になるような量に加減する。このような制御が行われるのは、冷媒液の蒸発した量を補給するためであり、冷媒ポンプ4が気体を吸い込まないようにするためである。蒸発器Eに滞留する冷媒液を除く、系全体の冷媒液は、凝縮器Cの底部に蓄積する。したがって、凝縮器Cの底部は、その蓄積に十分な容量を有するように構成する。ヒートポンプ101を停止すると、圧力の高い蒸発器E側から、冷媒液移送管路5を通って蒸発器Eよりも低圧の凝縮器Cに冷媒液CLが逆流する恐れがある。そのような停止直後の冷媒ポンプ4の逆転を避けるために、冷媒ポンプ4の出口側に逆止弁40を設けるとよい。その代わりに冷媒供給弁V3(液面制御にまかせるとヒートポンプ停止時には開となり逆流を防げない)を、ヒートポンプ停止時には全閉とするように制御装置21を構成してもよい。
【0047】
補給水移送管路7に供給された補給水W1は、給水ポンプ12により昇圧され、気液分離器11に移送される。給水ポンプ12を出た補給水W1は、熱交換器X2で排ガスGH3により加熱され、気液分離器11に移送される。
【0048】
気液分離器11に供給される補給水W1の流量は、気液分離器11内に蓄積される補給水W1の液面レベルが一定になるように、制御装置21により給水ポンプ12の回転数を制御することにより調節される。気液分離器11の補給水W1の液面レベルを一定に調節するのは、蒸気Sとして供給され失われた補給水W1に見合う分を気液分離器11に補給するためである。
【0049】
気液分離器11に移送された補給水W1は、補給水移送管路6を通り、給水ポンプ13により昇圧され吸収器Aの被加熱管23に送られ、吸収器Aで冷媒蒸気CSを吸収する吸収液ALiの吸収熱により加熱され、蒸気Sを発生させ、補給水移送管路10を通り、気液分離器11に戻り、蒸気と液を分離する。発生した蒸気Sは、蒸気供給管路8を通り、制御装置21により制御される蒸気弁V1により気液分離器11の圧力が第1の所定の圧力P1になるように流量調節されて、蒸気ヘッダ(不図示)に供給される。
【0050】
気液分離器11の圧力が所定の圧力P1になるように制御されるのは、気液分離器11の圧力が蒸気ヘッダ(不図示)の圧力より高い圧力に制御し、気液分離器11の圧力を常に蒸気ヘッダの圧力より一定の圧力だけ高い圧力とし、吸収ヒートポンプ101で発生した蒸気Sが常に蒸気ヘッダに供給されるようにし、負荷(不図示)側に安定して蒸気Sが供給されるようにするためである。
【0051】
以上のような構成により、本実施の形態の吸収ヒートポンプ101は、排ガスGH1の保有する熱を蒸発器Eから吸収器Aに汲み上げて被加熱媒体である補給水W1を加熱する。本実施の形態では、補給水W1は加熱されて水蒸気となって外部へ供給される。
【0052】
図3の斜視図及び
図4の平面図を参照して、本発明の第一の実施の形態の吸収ヒートポンプを構成する、蒸発器Eと再生器Gの構造を説明する。
図3は、蒸発器Eと再生器Gを、それぞれの上部ヘッダを一部切り欠いて斜め上方から見た斜視図である。
図4は、蒸発器Eと再生器Gを、それぞれの上部ヘッダを取り除いて上方から見た平面図である。本図において、蒸発器Eの冷媒液入口、冷媒蒸気出口、再生器Gの吸収液入口、吸収液出口は、図示を省略している。
【0053】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ101の備える蒸発器Eは、水平に配置される上部管板52とこれに平行に配置される下部管板53を備える。上部管板52と下部管板53との間には複数本の垂直伝熱管51が垂直に配置されている。各垂直伝熱管51は、上部と下部の管板52、53にそれぞれ穿設された孔に挿入され拡管された後にシール溶接されて気密性を確保している。複数本の垂直伝熱管51は、管の軸線方向から見て矩形の領域に格子状あるいは千鳥状に配列され、一群の管群を形成している。このような複数の垂直伝熱管51の内側を液状の冷媒液CLが流れる。すなわち、蒸発器Eは水管ボイラの構造を備える。
【0054】
同様に、本実施の形態の吸収ヒートポンプ101の備える再生器Gは、水平に配置される上部管板72とこれに平行に配置される下部管板73を備える。上部管板72と下部管板73との間には複数本の垂直伝熱管71が垂直に配置されている。各垂直伝熱管71は、上部と下部の管板72、73にそれぞれ穿設された孔に挿入され拡管された後にシール溶接されて気密性を確保している。複数本の垂直伝熱管71は、管の軸線方向から見て矩形の領域に格子状あるいは千鳥状に配列され、一群の管群を形成している。このような複数の垂直伝熱管71の内側を吸収液ALiが流れる。すなわち、再生器Gは水管ボイラの構造を備える。
【0055】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ101では、蒸発器Eの上部管板52と再生器Gの上部管板72、また蒸発器Eの下部管板53と再生器Gの下部管板73は、それぞれ一体の管板で形成されている。蒸発器Eと再生器Gは、共通の熱源である排ガスGHで加熱されるので隣接して設けることができ、一体の一枚の板で形成することにより効率的な製造が可能となる。蒸発器管群50と再生器管群70との間は、蒸発器Eと再生器Gのヘッダの構成が可能である限り、できるだけ近接して配置するのが好ましい。あるいは以下で説明する流れ制限手段としてのダンパを挿入配置が可能である限り、できるだけ近接して配置するのが好ましい。近接して配置することによって、排ガスGHの流路が徒に長くなることを防ぎ、排ガスGHの流れ損失を抑えることができる。
【0056】
本実施の形態の吸収ヒートポンプ101では、蒸発器Eと再生器Gそれぞれの複数本の垂直伝熱管51、71の外側を垂直伝熱管51、71と交差して排ガスGH1、GH2が流れるように構成されている。蒸発器Eの上部管板52下部管板53との間、再生器Gの上部管板72と下部管板73との間に排ガスGHの流路60が形成されている。本実施の形態では、排ガスGHは流路60を通って垂直伝熱管51、71に直角に交差して流れる。伝熱管51、71に関し、排ガスGHを管外に、冷媒液CLや吸収液ALiを管内側に流すので、排ガスGHの流路60を大きく確保し、流速の高速化を避けることができる。
【0057】
また、複数本の垂直伝熱管51、71は、蒸発器Eと、再生器Gとで、それぞれ蒸発器管群50と再生器管群70を構成し、蒸発器管群50と再生器管群70は、排ガスGHの流れに対して直線的に配列される。直線的に配列されるとは、排ガスGHの流路60がいわゆる2パスや3パスのように複数パスではなく、1パスに配置されていることをいう。言い換えれば、蒸発器管群50と再生器管群70を取り除いて、排ガスGHの供給側から排出側を見たとき、排ガスGHの流路60を通して供給側から排出側が見通せることをいう。
【0058】
直線的に配列されるので、熱源が単位体積あたりの熱容量が小さい排ガスのようなガスであり、必要な熱量を得るためには非常に大きな体積流量の熱源ガスを流す必要があるとき、流動抵抗による圧力損失を低く抑えることができる。すなわち、曲がり損失あるいはターンによる損失を低減することができる。排ガスのような熱源ガスを流動させるための動力は大きくなりがちであるが、これを小さく抑えることができ、省エネルギー効果を削ぐことがない。
【0059】
以上の実施の形態では、蒸発器Eと再生器Gとで、上部管板52、72同士、下部管板53、73同士は、それぞれ一体の管板で形成されているものとしたが、それぞれ別体としてもよい。別体とすれば、蒸発器Eと再生器Gの配置をそれぞれの独自の都合により定めることができる。別体とする場合も、蒸発器管群50と再生器管群70は、排ガスGH1、GH2の流れに対して直線的に配列される点は変わらない。また別体とする場合も、両者は極力近接して配置するのが好ましい。排ガスの流路損失を低く抑えるためである。
【0060】
本実施の形態では、再生器管群70は、排ガスGHの流れに対して、蒸発器管群50の下流側に配置される。
【0061】
熱源が排ガスのようなガスであるときは、利用すべき温度幅が大きい。例えば200℃で供給されて、100℃で排出される。この場合、100℃の温度差を利用することになる。したがって、排ガスを熱源として利用するような場合は、比較的高温のガスによる吸収液の過濃縮、結晶の危険があった。しかしながら、再生器管群70を、蒸発器管群50の下流側に配置するので、排ガスGHは蒸発器Eで温度がある程度低下した後で再生器Gに供給される。したがって、排ガスGHの供給された直後の部分、言い換えれば比較的高温の部分による吸収液の過濃縮、結晶の危険を抑えることができる。
【0062】
さらに、本実施の形態では、蒸発器管群50と再生器管群70を外気から遮断し、各管板52、53、72、73と協働して排ガスGHの流路を構成する側板54a、54b、74a、74b(
図4参照)を備える。側板54a、54b、74a、74bの代わりに水冷壁としてもよいが、排ガスのように250℃程度あるいはそれ以下、典型的には200℃程度であれば、単なる平板(鉄板)で構成することができ、簡易な構造となる。すなわち、水冷壁のように複層構造で層間に圧力をもった流体を収容する構造ではなく、単層構造乃至は単板構造とすることができる。本実施の形態の吸収ヒートポンプでは、蒸発器Eと再生器Gは、大気圧以上の圧力の圧力容器となることが多い。その場合、各上部ヘッダ55、75と下部ヘッダ56、76(吸収ヒートポンプでは特に蒸発器のヘッダ)は圧力を受けるが、側板54a、54b、74a、74bが水冷壁ではなく単なる単層の平板であるので、強度的な対応が容易となる。
【0063】
又すでに説明したように、蒸発器Eと、再生器Gとが、あるいは蒸発器管群50と再生器管群70とが、排ガスGHの流れに対して直線的に配列されている。これは典型的には、側板54aと側板74aとが一枚の平面状に形成され、側板54bと側板74bが同様に一枚の平面状に形成され、それぞれ好ましくは単一の平板で形成され、さらに、蒸発器上部管板52と再生器上部管板72とが一枚の平面状に形成され、蒸発器下部管板53と再生器下部管板73とが同様に一枚の平面状に形成され、それぞれ好ましくは単一の平板で形成されていることにより実現できると言ってもよい。
【0064】
側板54a、54b、74a、74bの外気側は断熱材を施すのが好ましい。あまり温度が高くないとはいいながら、利用できる熱を外に逃がさないためである。また人体に対する安全のためである。
【0065】
さらに、本実施の形態では、蒸発器Eと再生器Gは、それぞれの管群50、70の上部の開口部を覆うように蒸発器上部ヘッダ55と再生器上部ヘッダ75を設け、下部の開口を覆うように蒸発器下部ヘッダ56(冷媒液供給室)と再生器下部ヘッダ76(溶液供給室)を設ける。蒸発器上部ヘッダ55は、気液分離室を兼ねてもよい。このように構成すると、構造の簡易化を図ることができる。
【0066】
図5の平面図を参照して、本発明の第二の実施の形態で用いる蒸発器Eと再生器Gの組合せを説明する。
図5は、蒸発器Eと発生器Gの各上部ヘッダをはずして、垂直伝熱管51、71を軸線方向から、すなわち上方から見た平面図である。本実施の形態では、熱源ガスとしての排ガスGHの流路60中、蒸発器管群50の下流側の端部から再生器管群70をバイパスして、排ガスGHを前記再生器管群70の下流側に流すバイパス流路91を備える。
【0067】
バイパス流路91は、排ガスGH1あるいは蒸発器管群50を通過した後の排ガスGH2の全てあるいは一部を、再生器管群70を避けて、その下流側に導く流路である。
【0068】
ここで、蒸発器管群50の下流側の端部とは、排ガスGH1の流れ方向最下流の垂直伝熱管51の下流側の部分、すなわち排ガスGH1が蒸発器管群50の全てを通過して排ガスGH2となった部分、さらに言い換えれば蒸発器管群50と再生器管群70との間の空間部分が好ましいが、図示のように、排ガスGH1が蒸発器管群50の上流側の複数の垂直伝熱管を通過した後の部分であってもよい。すなわち、蒸発器管群50と再生器管群70との間の空間部分を含む部分、あるいはそれよりも多少上流部分であってもよい。このとき、バイパス流路91の始まる部分は、再生器管群70にかからないようにするのが好ましい。バイパス流路91を設ける目的は、再生器G中での吸収液の過剰濃縮、ひいては結晶化を防止することだからである。
【0069】
バイパス流路91の始点を、排ガスGH1が蒸発器管群50の全てを通過して排ガスGH2となった部分とすれば、蒸発器Eで排ガスGH1の高温部分をできるだけ利用することができ熱利用の観点から好ましい。しかしながら、バイパス流路91の始点を、排ガスGH1が蒸発器管群50の上流側のある程度の本数の垂直伝熱管51を通過した後の部分としても、排ガスGH1の熱量は蒸発器Eでかなり利用できている上に、装置構成の柔軟性を高めることができる。すなわち、蒸発器管群50と再生器管群70との間の空間部分を短く構成することができ、装置のコンパクト化、流路抵抗の低減を図ることができる。
【0070】
バイパス流路91には、バイパス流量を制限するダンパ92を備える。バイパス流路91は、再生器G中での吸収液ALiの過剰濃縮、ひいては結晶化を防止するに十分な排ガスGH2をバイパスするものだからである。必要以上にバイパスする必要はない。ダンパ92は、排ガスGH2の流量を制限するだけでなく、遮断できるものが好ましい。再生器G中の吸収液の濃度が危険領域にないときは、完全に遮断した方が熱回収の観点から好ましいからである。
【0071】
この実施の形態では、再生器G内の吸収液ALiの濃度を検出する濃度検出器DEN(
図1参照)を備えるとよい。再生器G内の吸収液ALiの濃度に応じてダンパ92の開度を調節することができるようにするためである。濃度検出器DENは、再生器G内の吸収液ALiの濃度が最も高くなる位置、典型的には上部ヘッダ75内に設置する。なお、
図1に示すように上部ヘッダ75から吸収器Aに吸収液ALiを導く吸収液移送管路2に設置してもよい。その場合、できるだけ再生器Gに近い位置が好ましい。濃度検出器DENは、濃度を直接検出する検出器に限らず、間接的に検出するものであってもよい。すなわち濃度に相当する物理量、例えば吸収液の密度を検出するものであってもよい。ここでいう濃度は、濃度に関連する算出値であってもよい。すなわち濃度は、密度と温度から検出するものであってもよく、音速と温度から検出するものであってもよく、濃度の代わりに密度、比重を基にしてもよい。また、再生器出口の溶液温度と
再生器Gの蒸気圧(あるいは露点)との関係から濃度を推定してもよい。すなわち、溶液の気液平衡関係から算出してもよい。再生器の蒸気圧あるいは露点は冷却水温度に強く影響されるので、溶液温度と冷却水温度から濃縮の危険性を判断してもよい。このように推定、或いは算出するものも濃度検出の一形態とする。
【0072】
この実施の形態では、さらに蒸発器Eと再生器Gとの間、さらに言えば蒸発器管群50と再生器管群70との間に、ダンパ93を設けるのが好ましい。バイパス流路91とダンパ92を備えれば、再生器管群70の流路抵抗により、かなりの量の排ガスGH2をパイパス91に流すことができるが、ダンパ93を設けることにより、調節の幅を広げることができる。ダンパ93は、多葉式、すなわち本体部分を縦または横に複数枚に分割した平板とし、それぞれの縦長あるいは横長の平板の長手方向中心軸回りを回動可能にしたものである。多葉式にすると、蒸発器Eと再生器Gとの間の空間を大きく取る必要がなく、蒸発器Eと再生器Gの組合せをコンパクト化し易い。ダンパ92も多葉式としてもよい。
【0073】
ダンパ93は、排ガスGH2の流量を制限するだけでなく、遮断できるものが好ましい。再生器G中の吸収液の濃度によっては、一時的に完全に遮断したい場合もあり得るからである。ダンパ93を完全に遮断するときは、通常はダンパ92は全開とする。
【0074】
なお、バイパス流路91を設けると、見掛け上、側板が単層構造乃至は単板構造ではなく、複層構造であるかのように見える。しかしながら、バイパス流路91は、内圧のかかる複層構造の水冷壁の構造とは異なる。すなわち、排ガスGHは排ガス流路60を流れるときは、圧力は無視できる程度に低い。したがって、側版54a、54b、74a、74bは、単層構造乃至は単板構造とすることができる点で、バイパス流路91が設けられていない場合と同様である。単層構造の側版54a、54b、74a、74bの外側に、圧力容器として扱う必要のないバイパス流路91が設けられているだけである。
【0075】
図6を参照して、熱源ガスとしての排ガス入口温度と発生蒸気熱量の関係を説明する。
図6は、横軸に熱利用装置に供給される排ガスの入口温度をとり、縦軸に各装置で発生する蒸気の熱量をとり、パラメータとして、各装置で得る水蒸気の温度をとったものである。一番上に×印と実線で示すのが本発明の実施の形態の吸収ヒートポンプで180℃の水蒸気を得る場合である。以下上から順に、×印と二点鎖線で示すのが排ガスボイラで140℃の水蒸気、*印と破線で示すのが排ガスボイラで160℃の水蒸気、*と実線で示すのが排ガスボイラで180℃の水蒸気をそれぞれ得る場合である。ここで発生蒸気熱量は、排ガスを温度200℃から100℃まで利用した場合の熱量を100として相対的な数字で示している。
【0076】
この線図から分かるように、排ガスGH1の入口温度が200℃で、180℃の水蒸気Sを得ようとすると、排ガスボイラでは約12の熱量しか得られないのに対して、吸収ヒートポンプを用いると約43の熱量が得られる。また排ガスGH1の入口温度が180℃のときは、排ガスボイラでは当然のことながら、得られる熱量はゼロであるのに対して、吸収ヒートポンプを用いると約32の熱量が得られる。
【0077】
図7の正面図他を参照して、本実施の形態での利用に適する発生器G1の実例1を説明する。この図において、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A矢視図、(d)は降液管77を1本抽出して示す拡大断面図である。すでに説明したように、再生器G1では、上部管板72、下部管板73、上部ヘッダ75と下部ヘッダ76を接続する側板74a、74bで囲まれて排ガス流路60が構成される。この流路60に、蒸発器Eから流入する排ガスGH2が流れる。排ガス流路60の、再生器G1への流入口は、広く開口している。好ましくは、排ガス流路60の蒸発器E側から、流路断面積を絞ることなく、一連の流路を構成する(
図7では、便宜上ステップ状に多少の絞りがあるように図示されている)。排ガスGH4の出口側も同様に、絞らないようにするのが好ましい。排ガスにできるだけ流路損失を与えないためである。
【0078】
上部ヘッダ75には、吸収液(濃溶液)ALi-outを吸収液移送管路2に導き出す吸収液出口2aが形成されている。吸収液出口2aは、液面レベルセンサL1(
図1参照)により検出され制御される液面よりも下方に設けられる。吸収液出口2aが液面下にもぐっていることにより、既に説明したように、吸収器Aと再生器Gとの間の液シールが維持される。
【0079】
下部ヘッダ76には、吸収液(希溶液)ALi−inを吸収液移送管路3から導入する吸収液入口3aが形成されている。吸収液入口3aから導入された吸収液ALi−inは、垂直伝熱管71内で加熱され上昇し、上部ヘッダ75に達する。垂直伝熱管71を上昇する間に、吸収液は蒸気CSを発生し濃縮される。上部ヘッダ75には、発生した蒸気CSを、冷媒蒸気移送管17に導き出す冷媒蒸気出口17aが形成されている。本実施の形態では、上部ヘッダ75は、吸収液の飛沫と蒸気CSを分離する気液分離器としても構成されている。そのために上部ヘッダ75内の空間は蒸気CSの流速が気液分離に十分な程度に低くなるよう、十分な容量に構成されている。また不図示の、折り曲げ板で構成されるエリミネータを設けてもよい。
【0080】
本実施の形態では、さらに再生器管群70の一部に降液管77を設けている。降液管77の外側(排ガス側)は断熱材78で覆われている。
【0081】
図7を参照して、再生器G1の作用を説明する。垂直伝熱管71にて、管内の吸収液ALiは、管外の排ガスGH2により加熱され沸騰し、気液二相流となって、上部ヘッダ(気液分離室)75に吹き出し、冷媒蒸気CSと吸収液(濃溶液)ALiとに分かれる。垂直伝熱管71下部には、下部ヘッダ76から吸収液(希溶液)ALiが供給される。気液分離室75の吸収液ALiの一部は、降液管77を通って、下部ヘッダ76に戻り、吸収液ALiが循環する。降液管77は再生器管群70の中にあるので、熱源となる排ガスGHで加熱されるが、降液管77外の断熱材78により、加熱量が抑えられる。したがって、液相状態あるいは蒸気が含まれるにしても、少量である。降液管77内では、垂直伝熱管71内の二相状態と比較すると、吸収液ALiの見かけ密度は大きく、下降流となる。即ち、(降液管77内の見かけ密度>垂直伝熱管71内の見かけ密度)の関係になるので、降液管77内が下降流、垂直伝熱管71内が上昇流となる。
【0082】
なお、
図7では、垂直伝熱管71の配置を碁盤目で表示しているが、干鳥配置にしてもよい。また、垂直伝熱管71をベア管で示しているが、一部又は全てをフィン付管としてもよい。熱伝達係数が、ガス側では液側よりもはるかに低いので、フィン付きとすることで、内外の熱伝達係数のバランスがよくなる。その結果として、伝熱管の本数をベアチューブの場合と比較して、大幅に少なくすることができる。
【0083】
図7では、降液管77を再生器管群70内に設けているが、
図8に示すように再生器管群70の外部、ひいては排ガス流路60の外に設けることもできる。このようにすると、降液管77内の吸収液が排ガスGHにより加熱されないので、吸収液ALiの循環がさらに良好になる。
【0084】
図8を参照して、再生器の実例2を説明する。この図において、(a)は正面図、(b)は側面図である。この再生器G2では、さらに、上部ヘッダ75及び下部ヘッダ76内に邪魔板79A、79Bをそれぞれ設ける。再生器G2では、吸収液入口3aは、下部ヘッダ76において排ガスGHの流れの下流側に設けられ、吸収液出口2aは、上部ヘッダ75において排ガスGHの流れの上流側に設けられる。
【0085】
邪魔板79Bは、下部ヘッダ76中で、排ガスGHの流れの下流側から垂直伝熱管71を排ガスGHの流れに直角な方向に分割するように1枚以上配置される(図では2枚)。同様に、邪魔板79Aは、上部ヘッダ75中で排ガスGHの流れの下流側から垂直伝熱管71を排ガスGHの流れに直角な方向に分割するように1枚以上配置される(図では2枚)。
【0086】
邪魔板79Aは、吸収液(濃溶液)ALiが上部をオーバーフローして流れるような高さに形成される。2枚以上設けられる場合は、排ガスGHの流れの下流側から上流側に行くにつれて順に低くなるような高さに形成される。図示の実例2では、邪魔板79Aと79Bは、上下で対向する位置に配置されている。また降液管77は、1枚以上の邪魔板79Aで分割された領域の、上部ヘッダ75側と下部ヘッダ76側とを連絡するように排ガス流路60の外に設けられる。
【0087】
このように構成すると、図中矢印のように吸収液ALiと排ガスGHとは全体として対向流となる。したがって、熱源ガスの排ガスGHと吸収液ALiとの間の平均温度差が大きくとれるので、並行流あるいは直交流の場合と比べて伝熱量を大きくすることができ、伝熱的に有効である。
【0088】
実例2では、邪魔板79Aと邪魔板79Bとは上下で完全に対向する位置に設けられているが、邪魔板79Bを邪魔板79Aよりも排ガスGHの流れの上流側に垂直伝熱管71の1本分以上ずらして設けてもよい(不図示)。このように構成すると、下部ヘッダ76から上昇する吸収液の一部が邪魔板79Aで分割する領域の上流側に隣接する領域に流入する。このように構成すると、吸収液ALiは邪魔板79Aの上部をオーバーフローしなくても、次々に排ガスGHの上流側に流れていくことができる。
【0089】
実例2では、邪魔板79Aと邪魔板79Bとは上下で完全に対向する位置に設けられており、降液管77は、そのようにして分割された上下対向する領域間を連絡するように設けられているが、上部ヘッダ75の領域から下部ヘッダ76の隣接する領域にたすき掛け状に連絡するように設けてもよい。このように構成すると、最初の領域で下部ヘッダ76から垂直伝熱管71を上昇してある程度濃縮されて上部ヘッダ75に達した吸収液ALiは、対向する下部ヘッダの領域に戻るのではなく、隣接した下部ヘッダの領域に降下するので、次の濃縮過程に入ることができる。この場合、対向する領域に戻す降液管とたすき掛け降液管を併用してもよい。
【0090】
再生器Gの内部では、吸収液ALiの濃度変化による平衡温度変化があり、また過濃縮の心配があるので、再生器G内での吸収液ALiの循環に注意が必要である。実例1または実例2のように再生器G1、G2に降液管77を設ければ、上部ヘッダ75と下部ヘッダ76の間で吸収液の循環を起こすことができる。一方蒸発器Eでは、冷媒CLは蒸発して蒸気CSになるので、温度はほぼ一定であり、再生器Gのような循環に対する配慮は不要である。ただし、降液管を設けて、伝熱管51内の流動(上昇流)を促し、伝熱の改良を図ってもよい。
【0091】
蒸発器Eと再生器Gは、管板を共通とするだけでなく、缶胴を一体構造としてもよい。