(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676925
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】立軸回転機用の油煙漏洩防止装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20150205BHJP
H02K 5/167 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K5/167 B
H02K5/167 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-130762(P2010-130762)
(22)【出願日】2010年6月8日
(65)【公開番号】特開2011-259576(P2011-259576A)
(43)【公開日】2011年12月22日
【審査請求日】2013年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107467
【弁理士】
【氏名又は名称】員見 正文
(72)【発明者】
【氏名】井上 康平
(72)【発明者】
【氏名】中田 義孝
【審査官】
河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−094027(JP,A)
【文献】
実開平06−044366(JP,U)
【文献】
実開平05−057530(JP,U)
【文献】
特開2009−065743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00− 5/26
F16C 33/72−33/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(2)の軸受(7)の潤滑および冷却のための潤滑油(6)が貯められた軸受油槽(5)を備えた立軸回転機(1)用の油煙漏洩防止装置であって、
前記立軸回転機の軸受カバー(3)の上面の中央部に設けられたオイルミストシール部(4)を隙間を介して塞ぐとともに該オイルミストシール部と反対側に向けて送風するように、前記回転軸の該オイルミストシール部と前記軸受油槽との間の外周面に該回転軸の周方向に沿って等間隔に取り付けられた複数枚の羽(10)と、
該複数枚の羽を隙間を介して前記回転軸の周方向に沿って取り囲むように設けられた、かつ、上端面が前記軸受カバーの上面の内側面に取り付けられた壁(20)とを具備し、
前記回転軸の回転によって前記複数枚の羽を回転させて、該回転軸の回転による摩擦熱によって生じた前記潤滑油の油煙を該複数枚の羽で前記軸受油槽に向けて押し戻して前記オイルミストシール部から外へ漏洩しないようにするとともに、前記潤滑油の前記油煙の一部を前記壁に当てて油滴に戻して前記軸受油槽に落下させるようにした、
ことを特徴とする、立軸回転機用の油煙漏洩防止装置。
【請求項2】
前記複数枚の羽が、前記回転軸の外周面に取り付けられるバンド(30)を用いて該回転軸に取り付けられ、
前記複数枚の羽がそれぞれ、直方体形状の羽本体(11)および該羽本体の末端側に取り付けられた羽取付部材(12,12’)を備え、
前記バンドの羽取付面側に、前記羽取付部材が嵌入される羽取付部材嵌入孔(30a,30a’)が該バンドの長手方向に沿って所定の間隔で形成されており、
前記羽取付部材の前記羽本体と反対側の面の中央部に、ねじ(40)と螺合するねじ穴(12a)が形成されており、
前記バンドの前記羽取付面と反対側の面側の前記羽取付部材嵌入孔の中央部に、前記ねじを挿入させるためのねじ挿入孔(30b)が形成されている、
ことを特徴とする、請求項1記載の立軸回転機用の油煙漏洩防止装置。
【請求項3】
前記羽取付部材(12’)の外周面に、凹凸条が形成されており、
前記羽取付部材嵌入孔(30a’)の内周面に、前記羽取付部材の前記凹凸条と相補関係にある他の凹凸条が形成されている、
ことを特徴とする、請求項2記載の立軸回転機用の油煙漏洩防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立軸回転機用の油煙漏洩防止装置に関し、特に、立軸回転機の軸受の潤滑・冷却用に使用されている潤滑油の油煙の漏洩を防止するのに好適な立軸回転機用の油煙漏洩防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図4に示すように、立軸回転機1の回転軸2の軸受7の潤滑および冷却のためにタービン油などの潤滑油6が使用されているが、回転軸2の回転による摩擦熱によって潤滑油6が油煙となって軸受カバー3内に充満する。軸受カバー3内に充満した油煙の一部は、軸受カバー3の上面の中央部に設けられたかつ回転軸2が貫通するオイルミストシール部4から外へ出て、立軸回転機1の付属品を油で潤滑・汚損させる。
その結果、立軸回転機1の同軸にある発電機の固定子や回転子または周辺機器に油が付着して空気中の塵埃を吸着し、絶縁性能に悪影響を及ぼしている。
また、油の付着により立軸回転機1の周辺が汚損されるとともに滑り易くなって作業上の危険要因となっている。
【0003】
このような潤滑油6の油煙の外部への漏洩を防止するために、ラビリンスタイプ、グランドパッキンタイプおよびカーボンパッキンタイプのものが使用されている。
【0004】
なお、下記の特許文献1には、出力シャフトにヘリカルギアが備えられたブラシモータユニットにおいてヘリカルギア部からのグリス油分のモータハウジング内への侵入を防止するために、出力シャフトにヘリカルギアが備えられたブラシモータのモータハウジング内の回転シャフト上に、一方向(ヘリカルギアが当該一方向に回転すると、ヘリカルギアのハス歯がヘリカルギア部のグリス油分をブラシモータの方向へ押し出す方向)のみに回転するワンウェイファンを設け、ワンウェイファンの羽根が、ワンウェイファンが回転しているときに、少なくとも、出力シャフトとモータハウジングに設けられ出力シャフトを支える軸受との隙間へ向かう風が発生するように構成されたブラシモータユニット用油分侵入防止構造が開示されている。
また、下記の特許文献2には、運転時のシール性能を向上させるとともに運転/停止が繰り返されても潤滑油の漏れを防止できるようにするために、回転ラビリンス側に可動羽根機構と潤滑油戻り機構とを設け、可動羽根機構が、回転停止時には可動羽根部がバネの付勢力により雌ねじ部に案内されて回転しながら上方へ移動して流路開閉部で潤滑油戻り流路を閉鎖し、回転時には羽根部に作用する風圧によりバネの付勢力に抗して可動羽根部が雌ねじ部に案内されて回転しながら下方へ移動して流路開閉部が潤滑油戻り流路を開放し、潤滑油戻り機構が、回転停止時には球がバネの付勢力により径方向の内方に移動して潤滑油戻り流路を閉鎖し、回転時には球に作用する遠心力により、球がバネの付勢力に抗し径方向の外方に移動して潤滑油戻り流路を開放するようにした、立軸回転機のラビリンスシール構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−65743号公報
【特許文献2】特開2002−156048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のラビリンスタイプ、グランドパッキンタイプおよびカーボンパッキンタイプのものでは、構造が複雑であるいう問題があった。
【0007】
本発明の目的は、簡単な構造で潤滑油の油煙の防止することができる立軸回転機用の油煙漏洩防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の立軸回転機用の油煙漏洩防止装置は、
回転軸(2)の軸受(7)の潤滑および冷却のための潤滑油(6)が貯められた軸受油槽(5)を備えた立軸回転機(1)用の油煙漏洩防止装置であって、前記立軸回転機の軸受カバー(3)の上面の中央部に設けられたオイルミストシール部(4)
を隙間を介して塞ぐとともに該オイルミストシール部と反対側に向けて送風するように、
前記回転軸の
該オイルミストシール部と前記軸受油槽との間の外周面に該回転軸の周方向に沿って等間隔に取り付けられた複数枚の羽(10)
と、該複数枚の羽を隙間を介して前記回転軸の周方向に沿って取り囲むように設けられた、かつ、上端面が前記軸受カバーの上面の内側面に取り付けられた壁(20)とを具備し、前記回転軸の回転によって前記複数枚の羽を回転させて、該回転軸の回転による摩擦熱によって生じた前記潤滑油の油煙を該複数枚の羽で前記軸受油槽に向けて押し戻して前記オイルミストシール部から外へ漏洩しないようにするとともに、前記潤滑油の前記油煙の一部を前記壁に当てて油滴に戻して前記軸受油槽に落下させるようにしたことを特徴とする。
ここで
、前記複数枚の羽が、前記回転軸の外周面に取り付けられるバンド(30)を用いて該回転軸に取り付けられ、前記複数枚の羽がそれぞれ、直方体形状の羽本体(11)および該羽本体の末端側に取り付けられた羽取付部材(12,12’)を備え、前記バンドの羽取付面側に、前記羽取付部材が嵌入される羽取付部材嵌入孔(30a,30a’)が該バンドの長手方向に沿って所定の間隔で形成されており、前記羽取付部材の前記羽本体と反対側の面の中央部に、ねじ(40)と螺合するねじ穴(12a)が形成されており、前記バンドの前記羽取付面と反対側の面側の前記羽取付部材嵌入孔の中央部に、前記ねじを挿入させるためのねじ挿入孔(30b)が形成されていてもよい。
前記羽取付部材(12’)の外周面に、凹凸条が形成されており、前記羽取付部材嵌入孔(30a’)の内周面に、前記羽取付部材の前記凹凸条と相補関係にある他の凹凸条が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の立軸回転機用の油煙漏洩防止装置は、以下に示す効果を奏する。
(1)軸受カバーの上面の中央部に設けられたオイルミストシール部を若干の隙間を介して塞ぐように複数枚の羽を回転軸の周方向に沿って等間隔に取り付けたり、複数枚の羽を回転軸の周方向に沿って取り囲む壁を軸受カバーの上面に設けたりするだけでよいため、簡単な構造で潤滑油の油煙の漏洩を防止できる。
(2)潤滑油の油煙の漏洩を防止できるため、立軸回転機の付属品の油による潤滑・汚損、絶縁性能の劣化、周辺の汚損および作業上の危険要因を解消できる。
(3)潤滑油の油煙を壁に当てて液化したのちに軸受油槽に戻すことができるため、潤滑油の減少を防止できるとともに、潤滑油の補給回数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例による立軸回転機用の油煙漏洩防止装置の構成を説明するための図である。
【
図2】
図1(b)に示した16枚の羽10の回転軸2への取付方法について説明するための図である。
【
図3】
図2(a)に示した羽取付部材12の変形例および
図2(b)に示した羽取付部材嵌入孔30aの変形例について説明するための図である。
【
図4】従来の立軸回転機1の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の目的を、立軸回転機の軸受カバーの上面の中央部に設けられたオイルミストシール部を若干の隙間を介して塞ぐとともにオイルミストシール部と反対側に向けて送風するように、立軸回転機の回転軸の外周面に回転軸の周方向に沿って等間隔に複数枚の羽を取り付けるとともに、複数枚の羽を若干の隙間を介して回転軸の周方向に沿って取り囲むように、立軸回転機の軸受カバーの上面に壁を設けることにより実現した。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の立軸回転機用の油煙漏洩防止装置の実施例について図面を参照して説明する。
本発明の一実施例による立軸回転機用の油煙漏洩防止装置は、
図1(a),(b)に示すように、立軸回転機1の軸受カバー3の上面の中央部に設けられたオイルミストシール部4を若干の隙間(たとえば、数cm程度)を介して塞ぐとともにオイルミストシール部4と反対側に向けて(すなわち、下向きまたは斜め下向きに)送風するように立軸回転機1の回転軸2の外周面に回転軸2の周方向に沿って等間隔に取り付けられた16枚の羽10と、16枚の羽10を若干の隙間(たとえば、数cm程度)を介して回転軸2の周方向に沿って取り囲むように立軸回転機1の軸受カバー3の上面に設けられた壁20とを具備する。
【0013】
次に、16枚の羽10の回転軸2への取付方法について、
図2(a)〜(d)を参照して説明する。
16枚の羽10は、回転軸2の外周面に取り付けられるバンド30(
図2(b)参照)を用いて回転軸2に取り付けられる。
そのため、
図2(a)に示すように、各羽10は、直方体形状の羽本体11と、羽本体11の末端側(同図の図示右側)に取り付けられた羽取付部材12とからなり、また、
図2(b)に示すように、バンド30の表面(羽取付面)側には、羽10の羽取付部材12が嵌入される16個の羽取付部材嵌入孔30aが、バンド30を回転軸2に取り付けたときに22.5°間隔となる16個の位置にそれぞれ形成されている。
また、羽取付部材12の羽本体11と反対側の面の中央部には、ねじ40(
図2(c)参照)と螺合するねじ穴12aが形成されており、バンド30の裏面側の羽取付部材嵌入孔30aの中央部には、ねじ40を挿入させるためのねじ挿入孔30bが形成されている。
【0014】
16枚の羽10は、以下の手順に従って回転軸2に取り付けられる。
(手順1)
図2(c)に示すように、羽10の羽取付部材12をバンド30の羽取付部材嵌入孔30aに嵌入したのち、所望の風圧および向きで送風するように羽本体11の角度調整を行う。
(手順2)
図2(d)に示すように、バンド30のねじ挿入孔30bからねじ40を挿入したのち、ねじ40を回して羽取付部材12に形成されたねじ穴12aと螺合させることにより、羽10をバンド30に取り付ける。
(手順3)手順1および手順2を繰り返すことにより、残りの15枚の羽10をバンド30に取り付ける。
(手順4)立軸回転機1の回転軸2の16枚の羽10を取り付ける位置に16枚の羽10を取り付けたバンド30を巻き付けたのち、バンド30の両端をボルトおよびナットなどのバンド固定手段を用いて固定する。
【0015】
なお、上記の手順2における羽本体11の角度調整を行い易くするために、たとえば、
図3(a)に示す羽取付部材12’のように、12個の突起12bを羽取付部材12’の外周面に羽取付部材12’の周方向に沿って等間隔に設けることにより、凹凸条を羽取付部材12’の外周面に形成するとともに、
図3(b)に示す羽取付部材嵌入孔30a’のように、12個の突起30cを羽取付部材嵌入孔30a’の内周面に羽取付部材嵌入孔30a’の周方向に沿って等間隔に設けることにより、羽取付部材12’の凹凸条と相補関係にある凹凸条を羽取付部材嵌入孔30a’の内周面に形成してもよい。
これにより、30°間隔で羽本体11の角度調整を行うことができる。
【0016】
以上のように構成された立軸回転機用の油煙漏洩防止装置を立軸回転機1に取り付けることにより、回転軸2の回転によって16枚の羽10を回転させることができるため、回転軸2の回転による摩擦熱によって生じた潤滑油6の油煙を16枚の羽10で軸受油槽5に向けて押し戻してオイルミストシール部4から外へ漏洩しないようにすることができるとともに、潤滑油6の油煙の一部を壁20に当てて油滴に戻して軸受油槽5に落下させることができる。
【0017】
以上の説明では、羽10の枚数を16枚としたが、羽10の枚数は風圧に応じて定めればよい。
また、立軸回転機用の油煙漏洩防止装置は壁20を具備したが、羽10の長さを長くすれば、壁20を具備しなくても潤滑油6の油煙がオイルミストシール部4から外へ漏洩しないようにすることができる。
【符号の説明】
【0018】
1 立軸回転機
2 回転軸
3 軸受カバー
4 オイルミストシール部
5 軸受油槽
6 潤滑油
7 軸受
10 羽
11 羽本体
12,12’ 羽取付部材
12a ねじ穴
12b 突起
20 壁
30 バンド
30a,30a’ 羽取付部材嵌入孔
30b ねじ挿入孔
30c 突起
40 ねじ