(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676934
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】床暖房用温水マット
(51)【国際特許分類】
F24D 3/16 20060101AFI20150205BHJP
【FI】
F24D3/16 G
F24D3/16 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-140792(P2010-140792)
(22)【出願日】2010年6月21日
(65)【公開番号】特開2012-2479(P2012-2479A)
(43)【公開日】2012年1月5日
【審査請求日】2012年12月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183071
【氏名又は名称】住商メタレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067091
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 弘
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 敏夫
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−213759(JP,A)
【文献】
特開2001−193949(JP,A)
【文献】
特開平08−075179(JP,A)
【文献】
特開2006−183985(JP,A)
【文献】
特開2001−221451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.共通の金型を用いて表面に断面U字状に形成した配管収容溝を成形すると共にこの配管収容溝間に前記パネルを表面から裏面にかけて貫通する小根太組み付け溝を同時に成形して成るマット本体と、
b.前記マット本体の小根太組み付け溝内にあとから組み付け自在の前記マット本体と同一の樹脂を同一の発泡条件で成形した発泡樹脂小根太と、同じく前記小根太組み付け溝内に組み付け自在に成形した木質小根太と、
c.から成り、施工条件がネダレスタイプ仕上げの場合には前記小根太組み付け溝内に発泡樹脂小根太を組み付けてネダレスタイプに仕上げ、マットの施工条件がフローリングタイプ床仕上げの場合には前記小根太組み付け溝内に木質小根太を組み付けてフローリングタイプに仕上げることができると共に、一枚のマット本体においてネダレスタイプとフローリングタイプエリアが混在している場合には、前記手法によりネダレスタイプエイアとフローリングエリアに仕上げることができるように構成したこと、
d.を特徴とする床暖房用温水マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂製のマット本体(基材)の表面に形成した配管収容溝内に温水パイプを配管すると共に小根太組み付け溝内に木質小根太を組み付けた温水マットと、前記マット本体の小根太組み付け溝内にマット本体の樹脂と同一で同一の発泡倍率からなる発泡樹脂小根太を組み付けてネダレスタイプに仕上げることが可能な温水マット、あるいは
前記小根太組み付け溝内に木管小根太を組み付けてフローリングタイプに仕上げることが可能であると共に一枚の温水マットにおいてネダレス
タイプとフローリング
タイプにエリア分けすることができる床暖房用温水マットに関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房用温水マットには、特許文献1に紹介されているような発泡樹脂製のマット本体内に小根太と称されるフローリングやコルク等の床材を支持するための木質小根太を組み付けたタイプと、特許文献2に紹介されているようなカーペット仕上げ用に木質小根太を組み付けていない所謂ネダレスタイプのものに分類できる。
【0003】
このため、マット本体を成形する金型としては、小根太組み付け溝成形用の突出部をキャビティ内に設けたものと、ネダレスタイプのために小根太組み付け溝成形用の突出部のない2種類の金型が必要であるため、温水マットの製造メーカーではその設備投資額が膨大となり、その分温水マットの製造コストも高額になるという問題があった。
【0004】
また、製品管理においては、小根太入りとネダレスタイプをそれぞれ分けて管理する必要があるため、製品管理が面倒になるという問題があった。
【0005】
また、例えばカーペット仕上げの床の一部にピアノとか金庫といった重量物を置くために床の一角にフローリングとかコルク仕上げの所謂ハードタイプの床部分を設けたいと云った要望があっても、従来のネダレスタイプ用のマットの場合にはこの上に重量物を置くと温水パイプを圧迫してしまうため、この要望に対応できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−269083号公報
【特許文献2】特開2004−85046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、小根太入りのハードタイプとネダレスタイプの温水マットを共通の金型で成形することにより、前記した従来技術において問題となっていた設備費の問題、製造コストの問題、製品管理の問題を解消し、併せて一つの部屋でカーペット床の一角にフローリングやコルク仕上げの床を設けて重量物を置くことができるようにしたいと云った施主の要望に対応できる多様な温水マットを提供するのが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために請求項1において提供する発明は、床暖房用温水マットにおいて、a.
共通の金型を用いて表面に断面U字状に形成した配管収容溝を成形すると共にこの配管収容溝間に前記パネルを表面から裏面にかけて貫通する小根太組み付け溝を
同時に成形して成るマット本体と、b.前記マット本体の小根太組み付け溝内にあとから組み付け自在の前記マット本体と同一の樹脂を同一の発泡条件で成形した発泡樹脂小根太と、同じく前記小根太組み付け溝内に組み付け自在に成形した木質小根太と、c.
から成り、施工条件がネダレスタイプ仕上げの場合には前記小根太組み付け溝内に発泡樹脂小根太を組み付けてネダレスタイプに仕上げ、マットの施工条件がフローリングタイプ床仕上げの場合には前記小根太組み付け溝内に木質小根太を組み付けてフローリングタイプに仕上げることができると共に、一枚のマット本体においてネダレスタイプとフローリングタイプエリアが混在している場合には、前記手法によりネダレスタイプエイアとフローリングエリアに仕上げることができるように構成したこと、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、マット本体の成形に際して小根太入りとネダレスタイプ用の金型を用意する必要がないため、設備コストと温水マットの製造コストの低減を図ることができると共に製品管理がしやすくなり、更に多様な床仕上げが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る温水マットの一例を示す平面図。
【
図3】発泡樹脂小根太と木質小根太を組み合わせた温水マットの説明図。
【
図4】(A)〜(C) 小根太の裏面に形成した接着剤塗布領域の説明図。
【
図5】(A)〜(C)温水マットの製造工程の説明図。
【
図6】(A)、(B) 小根太組み付け溝内に発泡樹脂小根太を組み付ける工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る床暖房用温水マットは、平面視で矩形を呈し、全体の厚さは均一の平板状に形成されていて、発泡性樹脂を金型内で発泡させて成形されたマット本体(基材)と、このマット本体の表面に形成した断面U字状の1系統乃至6系統の温水パイプ配管収容溝内に配管された温水パイプ(放熱管)と、この温水パイプ間に形成された小根太組み付け溝と、この小根太組み付け溝内に組み付けられる前記マット本体と同一の樹脂を用いて同一条件で発泡成形させた発泡樹脂小根太又は木質材を切削加工した木質小根太から成る。
【0012】
また、温水マットの製造法は、マット本体を成形する金型は一つで、発泡樹脂小根太と木質小根太は別々に成形され、この2種類の小根太はあとからマット本体の小根太組み付け溝内に組み付けられる。
【0013】
前記温水パイプは、それぞれの小根太を組み付ける前に温水パイプ収容溝内に配管しても良いし、小根太を組み付けた後から配管するようにしても良く、この手順は任意である。
【0014】
また、小根太組み付け溝内に組み付ける小根太は、1枚の温水マットにおいてすべて同一材質のものとするのが原則であるが、施工現場がカーペット仕上げの部屋となっているが、施主の要望でこの部屋の一角に重量物、例えばピアノとか金庫のような物を置くスペースが必要な場合には、この一角だけには木質小根太を組み付けると共にこの小根太の上をフローリング又はコルクを施工するハード仕上げとすることにより対応する。
【0015】
勿論、この反対に、フローリングやコルク床仕上げの部屋において、カーペット又は畳床仕上げとしたい場合には、マット本体の一角の小根太組み付け溝内に発泡樹脂小根太を組み付けてネダレスタイプに仕上げる。
【0016】
以上のように、本発明によれば、一種類のマット本体で部屋の床を木質小根太が必要なフローリングやコルク仕上げ用とカーペットや畳仕上げ用に対応できる。
【0017】
本発明に係る温水マットを用いた部屋におけるフローリング、コルク、カーペット、畳等の床仕上げ工事は従来例と変るところがない。
【0018】
本実施形態1は、温水マットに関するもので、この実施例1を
図1及び
図2に基づいて詳細に説明する。
図1、2において、符号の1は温水マット全体を示し、符号の2はこの温水マット1を形成する基材としてのマット本体であって、このマット本体2はポリスチレン発泡樹脂で成形されていて、平面視矩形の平板状を呈し、表面5には温水パイプ3を収容するための断面U字状の収容溝4を形成すると共に一定の間隔で小根太組み付け溝6を形成した構成である。
【0019】
そして、前記温水パイプ3の収容溝4には温水パイプ3が前記小根太組み付け溝6を迂回するようにして配管されていて、この温水パイプ3には、図外の熱源機で発生した約60℃の温水がヘッダー5aを介して本実施形態1では4系統に分流されてマット本体2内を一巡してヘッダー5aに還り、一括して前記熱源機へ還る構成となっている。
【0020】
また、前記小根太組み付け溝6内には、
図1において斜線で示す木質小根太7が組み付けられている。但し、この木質小根太7に替えて前記マット本体2と同一のポリスチレン発泡樹脂で成形された発泡樹脂小根太7a(
図3参照)が組み付けられる場合もあり、木質小根太7とポリスチレン発泡樹脂小根太7aは小根太組み付け溝6内に丁度収まる寸法に形成されている。
【0021】
図2において、8はマット本体2に温水パイプ3を配管し、木質小根太7(又はポリスチレン発泡樹脂小根太7a)を組み付けたのち、マット本体2の表面全体に貼り付けられたアルミニュウム箔で形成された放熱シートであって、木質小根太7及び発泡樹脂小根太7aはこの放熱シート8によりマット本体2と一体化されている。
【0022】
なお、
図1において、マット本体2は、一枚のように図示されているが、実際は曲線配管部2aと直線配管部2b等に分けられたパネルの複合体である。
【0023】
本実施例のマット本体2は、中央線P−P’で上下に2分割されていて(但し、放熱シート8は1枚である。)この中央線P−P’で谷折りが可能な構成となっている。
【0024】
なお、木質小根太7は、下地が合板の場合には釘打ち方式で固定することもできるが、スラブの場合、及びポリスチレン発泡樹脂小根太7aの場合には、裏面に
図4(A)に示すV溝9で、又は(B)に示すエンボス加工10で、又は色付け11で接着剤塗布領域を印しておくことにより、接着剤の塗布領域に正確に接着剤を塗布して接着剤の塗布不良を無くし、強度を担保するようにする。
【0025】
上記温水マット1は、マット本体2に対してすべて木質小根太7(又は発泡樹脂小根太7a)を組み付けているが、施工条件によっては、
図3に示すように一部にポリスチレン発泡樹脂小根太7aを組み付けた所謂二色構成としても良い。
【0026】
本発明において、マット本体2と発泡樹脂小根太7aは同一の樹脂で同一の条件により成形された発泡体とすることにより、床感触において違和感の無い構成としている。
【0027】
温水マット1の施工例及び床材の施工例は従来例と変らない。
【0028】
本参考例は実施
形態例1で説明した温水マット1の製造法であって、
図5(A)に示すようにマット本体2を成形するための金型a、bのキャビティc内には、小根太組み付け溝6を形成する突出部fと配管収容溝成形用突出部gが設けてあり、(B)に示す様にシリンダーd、ゲートeから発泡性樹脂hをキャビティc内に充填することで、(C)に示すマット本体2が成形される。
【0029】
木質小根太7は機械加工で形成し、ポリスチレン発泡樹脂小根太7aはこれ専用の金型で成形する。
【0030】
上記成形されたマット本体2には小根太組み付け溝6が
図6(A)に示すように形成されているので、ここに(B)に示すようにポリスチレン発泡樹脂小根太7aを組み付けてネダレスタイプに仕上げるか、木質小根太7を組み付けてフローリング床等のハードタイプに仕上げる。
【0031】
あるいは、施工条件によっては
図3に示すように、マット本体2の小根太組み付け溝6に木質小根太7とポリスチレン発泡樹脂小根太7aを組み付けて2色タイプに形成する。これにより、例えばカーペット仕上げの部屋の場合、従来は温水パイプ3にかかる位置にピアノとかタンス、金庫のような重量物を置くことはできなかったが、重量物を置く位置に木質小根太7を組み付けてこの上にフローリング、コルク等の床材を施工することで対応できる。
【符号の説明】
【0032】
1 温水マット
2 マット本体
3 温水パイプ
4 温水パイプ収容溝
5 表面
6 小根太組み付け溝
7 木質小根太
7a 発泡樹脂小根太
8 放熱シート
9 V溝
10 エンボス加工
11 色付け
a,b 金型
c キャビティ
d シリンダー
e ゲート
f 小根太成形用突出部
g 配管収容溝成形用突出部
h 発泡性樹脂