(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676948
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】固体と空気の分離システム
(51)【国際特許分類】
B04C 5/10 20060101AFI20150205BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20150205BHJP
B07B 7/06 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
B04C5/10
B04C9/00
B07B7/06
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-163463(P2010-163463)
(22)【出願日】2010年7月21日
(65)【公開番号】特開2012-24663(P2012-24663A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】305039747
【氏名又は名称】青木 昭雄
(73)【特許権者】
【識別番号】593210651
【氏名又は名称】株式会社物井工機
(74)【代理人】
【識別番号】100080528
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 冨士男
(74)【代理人】
【識別番号】100073601
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 和男
(72)【発明者】
【氏名】青木 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】物井 哲雄
【審査官】
藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−035482(JP,U)
【文献】
特開平07−256152(JP,A)
【文献】
特開昭50−054964(JP,A)
【文献】
米国特許第03366247(US,A)
【文献】
特開昭62−004479(JP,A)
【文献】
米国特許第01680243(US,A)
【文献】
特開昭60−028840(JP,A)
【文献】
特開2001−121037(JP,A)
【文献】
特表2002−522742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 1/00−11/00
B07B 1/00−15/00
B03C 3/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端面が封鎖され、下端面が解放された円筒にあって、当該円筒の接線方向に沿って固体が混入した搬送空気の導入ダクトを持つ旋回導入円筒と、
前記旋回導入円筒と同軸でかつ前記旋回導入円筒の下部に連通し設けられ多孔筒および当該多孔筒を覆う外筒と、
前記多孔筒と当該多孔筒を覆う前記外筒により形成される空間を複数空間に分割する隔壁と、
前記複数空間のそれぞれに連通する複数の排気ダクトと、
前記複数の排気ダクトに連通させた複数の流入口を有する自動分岐弁と、
を有し、
前記自動分岐弁の各排気口を送風機の吸入口へ連通させて前記複数空間から所定の時間間隔で固気分離した空気を排気する事を可能としたこと、
を特徴とする固体と空気の分離システム。
【請求項2】
前記旋回導入円筒の上端面に逃がし弁を設け、かつ、前記送風機の吐出口は前記投入機を経由して前記導入ダクトへ連結し、前記自動分岐弁と送風機の吸入口との間の流路に空気流量制御弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載した固体と空気の分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として廃棄プラスチック等の浮遊材が混入する空気流から浮遊材を分離する空気搬送物分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、容器包装プラスチック類は、プラスチック製ゴミ袋につめられ資源ごみとして選別回収され、中間処理場にて一次選別の後圧縮梱包され再資源化工場へ送られる。再資源化工場では二次選別、破砕、洗浄、乾燥、粒状化等が行われ再びプラスチック原料へ戻す作業がおこなわれている。
【0003】
家庭等から回収される容器包装プラスチックごみには、プラスチックの包装材、ゴミ袋等プラスチックの袋、プラスチックボトル、プラスチックのおもちゃ(異物)の他、禁忌品と呼ばれるライターおよび小型金属ごみ(異物)が混在している。このため異物の除去が重要な作業となる。
【0004】
一般に回収された容器包装プラスックごみは、袋を破った後ベルトコンベアに流され、目視による異物除去が実施されている。しかしながらプラスチック包装材は嵩密度が低く嵩張るため、目視による異物の視認を難しくしている。特に禁忌品と呼ばれるライター、小物金属等はプラスチック包装材の下に隠れている或いはこれらに紛れ込んでいるため視認が極めて困難である。このため破袋後にトロンメル等、篩を通し小物を篩下に落下させ小物の異物を除去する方法も取られている。
【0005】
この時篩の孔径は十分大きくする必要がある。何故なら小物異物は包装材に包まれていることが少なくなく、これらは網目を通過しない。また、篩の孔が大きい場合、これを通過した被選別物の中には小物異物のほかに資源化しうるプラスチックフィルム類が多く含まれ資源プラスチックの回収率が低下する。このため最近、篩下の残渣ごみから風力により資源化しうるプラスチックフィルム類を選別回収し、空気輸送またはコンベアにより再び資源系のラインへ戻すことも行われている。一方、プラスチックの再資源化工場では、資源系プラスチック類の選別、破砕、洗浄、乾燥、粒状化等、資源ごみとして回収されたプラスチック類を再びプラスチック原料へ戻す作業がおこなわれている。一般に破砕されたプラスチック類の搬送には空気搬送が使われている。
【0006】
空気搬送技術は古くから普及し、確立された技術である。
図11 に従来の固体と空気の分離システムを示す。前記システムは、送風機1、被輸送物の投入機2、配管15、固気分離器3から構成される。固気分離器3には逆円錐型円筒のサイクロン16がよく使われる。サイクロン16は逆円錐型円筒の下部排出口に連通し、機密性を保ちながら固体を排出しうる回転バルブ或いは二重ダンパー等のシール排出機器17が設けられている。逆円錐円筒は構造的にも簡単であり、製作コストも高くない。しかしながら回転バルブ或いは二重ダンパー等のシール排出機器17は高価かつ重量物となる。加えて、フィルム片のようにかさばる搬送物を排出するためには大きな排出機器が必要となる。サイクロン16の大きさが、処理量に対して不十分な場合、空気とプラスチック片との分離が不十分となり戻し空気側にプラスチック片が混入する。
(特許文献1)は空気搬送ダクトに連通する密閉カバーつきコンベア内にて空気と被搬送物を分離するもので、特に大きなプラスチック片類を分離するのに適している。(特許文献2)は一般的な吸引型サイクロンにおいて、ロータリーバルブ等従来型のシール排出機構を使わず低コスト粉塵排出装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−120501号公報
【特許文献2】特開2009−189965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決し、主として、廃棄プラスチック中のフィルム片等の浮遊材と、空気とを分離する簡易的な固気分離システムを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の手段により解決される.
請求項1は、従来のサイクロン型の固気分離システムに不可欠な排出口の回転バルブ又は二重ダンパー等のシール排出機器を不要としている。構造的には上端面が封鎖され、下端面が解放された円筒にあって、当該円筒の接線方向に沿って固体
が混入した搬送空気の導入ダクトを持つ旋回導入円筒と、
前記旋回導入円筒と同軸でかつ前記旋回導入円筒の下部に連通し設けられ多孔筒および当該多孔筒を覆う外筒と、
前記多孔筒と当該多孔筒を覆う前記外筒により形成される空間を複数空間に分割する隔壁と、前記複数空間のそれぞれに連通する複数の排気ダクトと、前記複数の排気ダクトに連通させた複数の流入口を有する複数の自動分岐弁と、を有し、前記複数の自動分岐弁の各排気口を送風機の吸入口へ連通させて前記複数空間から所定の時間間隔で固気分離した空気を排気する事を可能としたことにより構成されることを特徴としている。
【0010】
空気搬送物
である固体は投入機2にて送風機1による搬送空気に混入され配管A15aを経て、導入ダクト5より
空気とともに旋回導入円筒6へ吹きこまれる。空気搬送物
である固体は空気とともに旋回導入円筒6内を旋回しながら隔壁13により分割された複数空間内に至る。
このとき、送風機1を動作させかつ複数の自動分岐弁14を所定の時間間で交互に開閉動作させることで、複数空間内で前記各自動分岐弁14の開動作に応じて多孔筒7の孔から固気分離した空気は個別に排気される。
一方、多孔筒7の孔径より大きなプラスチック等の固体は、複数空間内で空気の非吸引時、すなわち、前記自動分岐弁14の閉動作に応じて自然落下し下端より排出される。すなわち、多孔筒7に貼りついたフィルム状プラスチックは非吸引時に自然落下する。
なお、非吸引時に当該空間に逆圧を加えて強制的に貼りつきを解除することも可能である。
【0011】
請求項2の発明は、
請求項1記載の発明において、前記旋回導入円筒の上端面に逃がし弁を設け、かつ、前記送風機の吐出口は前記投入機を経由して前記導入ダクトへ連結し、前記自動分岐弁と送風機の吸入口との間の流路に空気流量制御弁を設け空気循環型としたことを特徴としている。
【0012】
これにより搬送空気の外部への排気は極めて微少となる。更に、全体の系の空気バランスの観点から旋回導入円筒6の天板に空気逃がし弁12を設けることにより搬送空気の漏れを軽減することができる。
たとえば、旋回導入円筒6に吹き込まれる搬送空気が空気排出量を上まわり搬送空気の一部が多孔筒7の下端からもれ出る場合、この逃がし弁12より搬送空気の一部を逃がすことにより解決できる。
逃がし弁12を通過した空気はフィルターを通って外部へ放出される。この場合、外部に排出される空気量は搬送空気量の10%未満のため排気清浄の設備費は軽微である。
したがって、排気清浄化のためのバグフィルター等の大型の設備が不要となり、設備および運転に係わる経費の削減高価は大きい。
また、旋回導入円筒6に吹き込まれる搬送空気量と空気排出量とのバランスが取れていない場合、例えば旋回導入円筒6に吹き込まれる搬送空気量が空気排出量より多い場合には搬送空気の一部が多孔筒7の下端排出口よりもれ出る、あるいはその逆の場合には、フィルム状プラスチックが多孔筒7の内側の上下中間部で浮遊し、落下不能に陥ることがある。
さらに、固体であるフィルム状プラスチックは、多孔筒7に貼りつき空気の排出を阻害することがある。フィルム状プラスチックが多孔筒7に貼りつくと自然には解除不能に陥りやがては多孔筒7内部の全体を覆い空気の排出が不能になる事がある。
前記空気流量制御弁4はこのようなバランスを調整するもので、フィルム状プラスチックの落下不良を解決するのに特に有効である。
【発明の効果】
【0014】
従来技術のサイクロン方式に不可欠な回転バルブ又は二重ダンパー等のシール排出機器17を不要とした。このため、排出口を十分に大きくとることが可能となり、特に嵩密度が低いフィルム状プラスチックと空気の分離の場合でも排出口での詰まりが皆無となった他、装置コストと設置スペースを大幅に削減できた。
又、空気排出空間9を隔壁13により複数に分割し交互排気および交互逆洗を可能としたため、多孔筒7の目詰まりによるトラブルは皆無となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明におけ
る実施
の形態
の前提となる参考例の固体と空気の分離システム
を示す図である。
【
図5】本発明における
実施の形態を示した固体と空気の分離システム
を示す図である。
【
図9】
本発明における実施の形態の自動分岐弁である。
【
図10】
本発明における実施の形態の空気流量制御弁である。
【
図11】従来の固体と空気の分離システム図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明
における実施
の形態
の前提となる参考例における固体と空気の分離システムを
図1に、固気分離器Aの正面図を
図2に、
図2の平面図を
図3に、
図2のA−A断面図を
図4に示す。また、
本発明の実施の形態における固体と空気の分離システムを
図5に、固気分離器Bの正面図を
図6に、
図6の平面図を
図7に、
図6のB−B断面図を
図8に、自動分岐弁を
図9に、空気流量制御弁
図10に示す。更に従来の固体と空気の分離システムを
図11に示す。
【0017】
参考例における固体と空気の分離システムについて、
図1から
図4を用いて以下に詳述する。
本装置は、
図1に示すように送風機1と、投入機2と、固気分離器A3aと、空気流量制御弁4と、前記機器相互間をつなぐ配管又はダクト及び逃がし弁12とにより構成される。
投入機2より投入された固体は、送風機1による搬送空気により配管A15aから
図3にしめす導入ダクト5を通り旋回導入内筒6の接線方向から旋回導入内筒6の内周面に沿って吹き込まれる。
固体と空気は旋回しながら
図2に示す旋回導入内筒6および円筒6に内通する
図2に示す多孔筒7を降下する。降下中多孔筒7で空気は空気排出空間9へ排出される。また多孔筒7の孔径より大きい固体は多孔筒7を降下し下部から搬送物コンテナ11に排出される。
多孔筒7を通過した空気は排気ダクト10
、配管B15bおよび空気流量制御弁4を通って送風機へ吸引される。
【0018】
一般にプラスチック類の搬送には秒速20−25m程度の管内速度が必要とされる。使用する送風機1の仕様は、輸送距離や配管抵抗に起因する圧力損失と送風量にて決められる。空気流量制御弁4は、循環空気量を最適に調整するために使われる。吸引力が大きすぎる場合、フィルムが多孔筒7に貼りつくことがある。空気流量制御弁4は、
図10に示すように流量制御弁A4aと流量制御弁B4bとにより構成され両者の開度を調整することにより、輸送のための空気の管内速度を保ちかつ循環空気量を最適化し、貼りつきを極小にすることができる。上記は請求項1に記載した構成であり特別なシール排出機器17を設けることなく固体と空気とを分離することができる。
【0019】
本
参考例では更
に逃がし弁12を具備している。
即ち固体と空気の分離システムにおいて、理想的には多孔筒7下部からは固体のみが排出され、空気の噴出しは皆無であること、即ち空気は系内を循環し、工場内環境を汚す系外への排出はゼロであることが望ましい。しかしながら、投入機2では搬送される固体のみでなくこれに付随して固体の周囲の空気も吸い込まれる。
このため固気分離器3では排気される空気よりも吹き込まれる空気量が多くなる。逃がし弁12は吹き込まれた空気の一部を固気分離器3の外へ逃がすためのもので、正圧になる旋回導入円筒6の上面に設けられている。逃がし弁12からの排気はフィルターを通して行われる。
【0020】
先に記した多孔筒7へのプラスチックフィルムの張り付きは一度張り付くと空気を排出しうる多孔筒7の面積が減少し、多孔筒7を通過する風の流速が増すため、ますますフィルムが張り付きやすくなり自然には回復しない。送風機1の吸引側は通常負圧であるが多孔筒7にフィルムが張り付くとこの負圧が増大する。この圧力を検出し、一時的に送風機1を停止し、張り付いたフィルムを自然落下させることが必要になる。
この場合一時運転停止を余儀なくされるが連続運転のプラントの空気輸送手段として用いる場合には問題となる。
以下に述べる本発明の実施の形態は上記の問題を解決するためになされたものである。
【0021】
本発明の実施の形態における固体と空気の分離システムについて、
図5から
図9を用いて以下に詳述する。
本
実施の形態の固体と空気の分離システムは、
図5に示すように送風機1と、投入機2と、固気分離器B3bと、空気流量制御弁4と、自動分岐弁
14と、前記機器相互間をつなぐ配管又はダクトにより構成される。
投入機2より投入された固体は、送風機1による搬送空気により配管A15aから
図7にしめす導入ダクト5を通り旋回導入内筒6の接線方向から旋回導入内筒6の内周面に沿って吹き込まれる。
固体と空気は旋回しながら
図6に示す旋回導入内筒6および旋回導入円筒6に内通する多孔筒7を降下する。降下中多孔筒7で空気は空気排出空間9へ排出される。
【0022】
図8に示すように空気排出空間9は、隔壁13により空気排出空間A
9aと空気排出空間B
9bとに2分割され、それぞれは排気ダクトA
10aと、排気ダクト
B10bとを経て
図9の自動分岐弁14に接続されている。
自動分岐弁14は、図9に示すように、自動分岐弁A14a、自動分岐弁B14bにより構成され、この自動分岐弁14において、自動分岐弁A14a又は自動分岐弁B14bは交互に開閉する
ように構成してあり、空気排出空間9を構成する空気排出空間A9a又は空気排出空間B9b
のいずれかの内部の空気が送風機1により吸引される。
吸引中の空気排出空間9a又は9bに臨む多孔筒7にはフィルムが張り付くことがある。張り付いたフィルムは吸引閉の期間に自然にはがれ落下する。自動分岐弁14a又は
自動分岐弁14bの開閉は概ね3分間毎に交互に行われる。
【0023】
また、張り付き解除が不十分の時は、休止期間中の空気排出空間A
9a又は空気排出空間B
9bに図示しない逆洗エアーを導入することにより更に確実に解除できる。その他の動作、機能は前述した
参考例の場合と同等である。
また、前記旋回導入円筒6、多孔筒7、外筒8は、必ずしも円筒状の必要はなく、たとえば多角形状であっても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係わる固体と空気の分離システムは、廃棄プラスチック等の固形物を空気搬送した後、固形物と輸送空気を分離する固気分離に利用できる。特に従来法の適用が難しい、固形物が、プラスチック片、紙片状で風に飛びやすく、かつ寸法が大きく場合に最適である。
【符号の説明】
【0025】
1・・・送風機、
2・・・投入機、
3・・・固気分離器、
3a・・・固気分離器A、
3b・・・固気分離器B、
4・・・空気流量制御弁、
4a・・・流量制御弁A、
4b・・・流量制御弁B、
5・・・導入ダクト、
6・・・旋回導入内筒、
7・・・多孔筒、
8・・・外筒、
9・・・空気排出空間、
9a・・・空気排出空間A、
9b・・・空気排出空間B、
10・・・排気ダクト、
10a・・・排気ダクトA、
10b・・・排気ダクトB
11・・・搬送物コンテナ、
12・・・逃がし弁、
13・・・隔壁、
14・・・自動分岐弁、
14a・・・自動分岐弁A、
14b・・・自動分岐弁B、
15・・・配管、
15a・・・配管A、
15b・・・配管B、
16・・・サイクロン、
17・・・シール排出機器