(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676951
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】多次元ハイブリッド型および転置型有限時間インパルス応答フィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 17/06 20060101AFI20150205BHJP
H03H 17/02 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
H03H17/06 671Z
H03H17/06 671A
H03H17/02 601B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-165466(P2010-165466)
(22)【出願日】2010年7月23日
(62)【分割の表示】特願2004-19121(P2004-19121)の分割
【原出願日】2004年1月28日
(65)【公開番号】特開2010-263655(P2010-263655A)
(43)【公開日】2010年11月18日
【審査請求日】2010年8月23日
【審判番号】不服2013-9760(P2013-9760/J1)
【審判請求日】2013年5月28日
(31)【優先権主張番号】60/443258
(32)【優先日】2003年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10/610336
(32)【優先日】2003年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500587067
【氏名又は名称】アギア システムズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Agere Systems LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】カメラン アザデット
【合議体】
【審判長】
近藤 聡
【審判官】
寺谷 大亮
【審判官】
加藤 恵一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第5181198(US,A)
【文献】
米国特許第5983254(US,A)
【文献】
特表2002−507076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多次元信号を処理する方法であって、
複数の単次元信号を統合して前記多次元信号を形成するステップ、
前記多次元信号を、該次元の各々についての成分を含むベクトルとして表示するステップ、及び
前記ベクトルをハイブリッド型多次元デジタル・フィルタ装置の単一の入力部に適用してスカラ信号の出力ベクトルを生成する適用ステップ
を備え、
前記ハイブリッド型多次元デジタル・フィルタ装置がマトリックス係数を有して前記ベクトルが該マトリックス係数に乗算されるように構成され、該適用ステップは、受信された前記多次元信号からのエコー、ノイズ及びクロストークのうちの1以上を除去するものであり、
前記ハイブリッド型多次元デジタル・フィルタ装置が、複数の遅延素子、各々が少なくとも1つのベクトル加算を行う複数の加算器、入力データを該フィルタの乗算器の各々に伝達する第1のパス、及び前記複数の加算器からデータをその出力に伝達する第2のパスを備え、前記複数の遅延素子のうち少なくとも1つの遅延素子が前記第2のパス上に配置され、前記複数の遅延素子のうちの残りの遅延素子が前記第1のパス上に配置され、前記加算器の各々は前記第2のパス上に配置され、前記乗算器の各々は、前記第1のパスと前記第2のパスの間に配置されて、マトリックス乗算を実行することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記適用ステップは受信信号を等化するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
多次元信号を処理する装置であって、
複数の単次元信号を統合して前記多次元信号を形成する手段、
前記多次元信号を、該次元の各々についての成分を含むベクトルとして受信する入力ポート、及び
単一の入力部で受信された前記ベクトルを処理してスカラ信号の出力ベクトルを生成する転置型多次元デジタル・フィルタ装置
を備え、
前記転置型多次元デジタル・フィルタ装置が、マトリックス係数を有して前記ベクトルが該マトリックス係数に乗算されるように構成されて、受信された前記多次元信号からのエコー、ノイズ及びクロストークのうちの1以上を除去し、
前記転置型多次元デジタル・フィルタ装置が、複数の遅延素子、各々が少なくとも1つのベクトル加算を行う複数の加算器、受信した前記多次元信号である入力データを該フィルタの乗算器の各々に伝達する第1のパス、及び前記複数の加算器からデータをその出力に伝達する第2のパスを備え、前記複数の遅延素子の各々は前記第2のパス上に配置され、前記加算器の各々は前記第2のパス上に配置され、前記乗算器の各々は、前記第1のパスと前記第2のパスの間に配置されて、マトリックス乗算を実行することを特徴とする装置。
【請求項4】
前記転置型多次元デジタル・フィルタ装置は転置型FIRフィルタである、請求項3に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、デジタル・フィルタ設計に関し、特に、多次元有限時間インパルス応答フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2003年1月28日出願の米国仮出願第60/443,258号の優先権を主張するものであり、参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれている、「Method and Apparatus for Reducing Noise In a Unbalanced Channel Using Common Mode Component」という名称の米国特許出願(Attorney Docket Number Azadet 24)および「Method and Apparatus For Reducing Cross−Talk With Reduced Redundancies」という名称の米国特許出願(Attorney Docket Number Azadet 25)に関連している。
【0003】
デジタル・フィルタは、一般的に、信号処理の用途に用いられている。Azadetに付与された米国特許第5,983,254号は、多数の既知の有限時間インパルス応答(FIR)フィルタの形態を開示している。たとえば、
図1はハイブリッド型のFIRフィルタを示している。ハイブリッド型は、全体的に少ない数の(直接型および転置型と比較して)遅延素子を有しており、遅延素子は入力パスおよび出力パスの両方にある。
図1に示した例示的な従来のハイブリッド型FIRフィルタ100は、3つのモジュール110−1乃至110−3を有している。モジュール110−1などの各モジュールは、3つのタップを乗算器115−1、115−2、および115−3にそれぞれ設けている。各モジュール110は、タップの数と同数の遅延素子を備えている。遅延素子は、たとえばシフト・レジスタとして実施することができる。具体的には、遅延素子105−1および105−2は入力パス101に配置され、遅延素子105−3は出力パス111に配置されている。遅延素子105−2は乗算器115−1と115−2との間に挿入されている。遅延素子105−2は乗算器115−2と115−3との間に挿入されている。加算器120−3は、加算器120−4によって算出された遅延合計および乗算器115−3によって算出された積を受信して、合計を算出する。加算器120−2は、加算器120−3によって算出された合計および乗算器115−2によって算出された積を受信して、合計を算出する。出力パス111に配置された加算器120−1は、加算器120−2によって算出された合計および乗算器115−1によって算出された積を受信して、合計を算出する。
【0004】
図1に示したモジュール110−1乃至110−3に対するフィルタ重みは、スカラ値w
0乃至w
8である。上記のフィルタ配置では、フィルタ100の伝達関数のz変換H(z)は次のように表すことができる。
H(z)=z
−1{w
0+w
1z
−1+w
2z
−2}+z
−3{w
3+w
4z
−1+w
5z
−2}+... (1)
ここで、第1項z
−1{w
0+w
1z
−1+w
2z
−2}はモジュール110−1に対応し、第2項z
−3{w
3+w
4z
−1+w
5z
−2}はモジュール110−2に対応する。
図1に示したハイブリッド型のFIRフィルタ100は、直接型のFIRフィルタおよび転置型のFIRフィルタに機能的に相当する(より少ない遅延素子である点が有益であるが)ことを示すことができる。かかるFIRフィルタのより詳細な説明については、たとえば、参照により本明細書中に組み込まれている米国特許第5,983,254号を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願第60/443,258号
【特許文献2】米国特許出願(Attorney Docket Number Azadet 24)、「Method and Apparatus for Reducing Noise In a Unbalanced Channel Using Common Mode Component」
【特許文献3】米国特許出願(Attorney Docket Number Azadet 25)、「Method and Apparatus For Reducing Cross−Talk With Reduced Redundancies」
【特許文献4】米国特許第5,983,254号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多次元信号が
図1に示したFIRフィルタ100などのFIRフィルタ上で処理されることを、多数の用途が必要としている。たとえば、二次元および三次元信号は、画像フィルタリングおよび映像処理の用途においてFIRフィルタを用いて処理されることが多い。しかし、多次元信号の各次元は、通常、独立して処理される。しかし、各次元が独立して処理されると、同じ入力信号に多数回適用される遅延などの同じ操作から冗長が生ずる。たとえば、従来のクロストーク消去装置は、通常、同じ撚線対上のエコーならびに他の撚線対のそれぞれでのニアエンド・クロストークを低減するために、所与の撚線対上の同じ信号を多数回調べる。4撚線対の場合には、たとえば、所与の信号が同じ撚線対上でのエコー消去に1回、他の3つの撚線対上でのニアエンド・クロストークについてさらに3回用いられるので、4倍の冗長がある。かかる冗長は、回路面積および電力を不必要に消費する。したがって、冗長数を低減する多次元FIRフィルタが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的に、ハイブリッド型および転置型での多次元有限時間インパルス応答フィルタを開示する。本発明は、一連の独立した計算としてではなく、多次元信号を一括して処理することを可能にするために、多次元信号をベクトル(またはマトリックス)形式で表現することができることを理解している。本発明は、既知のハイブリッド型および転置型FIRフィルタを多次元の場合に拡張して、少ない冗長で多次元信号を処理することを可能にする。上記のスカラFIRの形態とは対照的に、開示した多次元FIRフィルタに適用される入力信号は、多次元成分を有するベクトルである。また、開示したFIRフィルタは、多数の係数でマトリックス乗算を行う乗算器、および多数の入出力でベクトル加算を行う加算器を備えている。
【0008】
開示したハイブリッド型および転置型多次元FIRフィルタに対してz変換が提供される。本明細書中で用いる多次元有限時間インパルス応答フィルタは、マトリックス係数を有する。各FIRフィルタは、それぞれ、フィルタ重みまたはタップ係数W
Nを備えたタップを有するN個の乗算器を含む。これらのフィルタ重みW
Nは、入力パスを横断する入力データによって乗算されるマトリックス被乗数を表す。乗算器はそれぞれ、マトリックス乗算を行う。各FIRフィルタの出力は次のように表すことができる。
Y(z)=H(z)Tx(z)
ここで、H(z)は、本明細書中では転置型およびハイブリッド型の両方について定義されたマトリックスであり、Tx(z)は多次元信号のベクトル表示である。各加算器は多数の成分のベクトル加算を行う。開示した多次元FIRフィルタは、たとえば、エコーならびにニアエンドおよびファーエンドのクロストークなどの撚線対環境におけるノイズを消去するか、受信信号を等化するために用いることができる。
【0009】
本発明ならびに本発明のさらなる特徴および利点に関するより完全な理解は、以下の詳細な説明および図面を参照することにより得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】3つのモジュールを有するハイブリッド型での従来の有限時間インパルス応答フィルタの図である。
【
図2】本発明の特徴を包含したハイブリッド型の有限時間インパルス応答フィルタの図である。
【
図3】本発明の特徴を包含した転置型の有限時間インパルス応答フィルタの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前述のように、従来のニアエンド・クロストーク/エコー消去装置は、通常、同じ撚線対上のエコーならびに他の撚線対のそれぞれでのクロストークを低減するために、所与の撚線対上で同じ信号を多数回調べることが分かった。たとえば、送信信号Tx1はエコー消去装置によって用いられて、第1の撚線対上の受信信号からエコーを除去し、また、撚線対2乃至4用のニアエンド消去装置によって用いられる。よって、同じ入力(たとえば、Tx1)に4回適用される同じ操作(たとえば、遅延)から冗長が生ずる。本発明は、多次元FIRフィルタ上で、ベクトル形式で、受信信号の様々な成分などの多次元信号を処理することにより、冗長を低減または完全に除去できることを理解している。よって、多次元信号の様々な成分は、一連の独立した計算としてではなく、一括して処理される。当業者には明らかであるように、ベクトルはマトリックスの特殊なケースに過ぎず(マトリックスが単一の列のみを有する場合)、ある用途では多次元信号がマトリックスとしてより良好に表現できることもあれば、他の用途では多次元信号がベクトルとしてより良好に表現できることもあることに留意されたい。
【0012】
図2は、本発明の特徴を包含したハイブリッド型の多次元FIRフィルタ200を示している。このように、本発明はハイブリッド型のFIRフィルタを多次元フィルタに拡張する。
図2に示したように、入力信号のスカラ表示は多次元成分を備えたベクトルによって置き換えられ、スカラ乗算は多数の係数を用いたマトリックス乗算になり、スカラ加算は多数の入出力を用いたベクトル加算になる(
図1に示した従来のハイブリッド型FIRフィルタ100と比較して)。
【0013】
図2に示したFIRフィルタ200は、3つのモジュール210−1乃至210−3を有する。モジュール210−1などの各モジュールは、それぞれ乗算器215−1、215−2、および215−3で3つのタップを提供する。各モジュール210は、タップの数と同数の遅延素子を備えている。具体的には、遅延素子205−1および205−2は入力パス201に配置され、遅延素子205−3は出力パス211に配置される。遅延素子205−1は乗算器215−1と215−2との間に挿入される。遅延素子205−2は乗算器215−2と215−3との間に挿入される。加算器220−3は、加算器220−4によって算出された遅延合計および乗算器215−3によって算出された積を受信し、合計を算出する。加算器220−2は、加算器220−3によって算出された合計および乗算器215−2によって算出された積を受信し、合計を算出する。出力パス211に配置された加算器220−1は、加算器220−2によって算出された合計および乗算器215−1によって算出された積を受信し、合計を算出する。
【0014】
本発明の一態様によれば、
図2に示したモジュール210−1乃至210−3に関するフィルタ重みはマトリックス値W
0からW
8である。上記のフィルタ配置では、フィルタ100の伝達関数のz変換H(z)は次のように表すことができる。
H(z)=z
−1{W
0+W
1z
−1+W
2z
−2}+z
−3{W
3+W
4z
−1+W
5z
−2}+... (1)
ここで、第1項z
−1{W
0+W
1z
−1+W
2z
−2}はモジュール210−1に対応し、第2項z
−3{W
3+W
4z
−1+W
5z
−2}はモジュール210−2に対応する。
【0015】
一般的に、本発明の多次元有限時間インパルス応答(FIR)フィルタは、ベクトル(またはマトリックス)形式で多次元信号を処理する。このようにして、多次元信号は、一連の独立した計算としてではなく、一括して処理することができる。本発明は、クロストーク消去装置における各撚線対に対する受信信号などの多次元信号を、ベクトル形式で表現できることを理解している。受信信号のベクトル表示は、たとえば、4撚線対の場合には、4つの要素Rx1、Rx2、Rx3、およびRx4を含む。
【0016】
本明細書中で用いている多次元有限時間インパルス応答フィルタは、マトリックス係数を有する。
図2に示したように、FIRフィルタ200は、フィルタ重みまたはタップ係数W
Nを備えたタップをそれぞれ有するN個の乗算器215を含む。これらのフィルタ重みは、入力パス201を横断する入力データによって乗算されるマトリックス被乗数を表す。従来の形態については、各フィルタ・タップに適用される重みw
nはスカラ値であり、一方、本発明における各フィルタ・タップに適用される重みW
nはマトリックス値(4×4マトリックスなど)である。
【0017】
乗算器215はそれぞれマトリックス乗算を行う。たとえば、クロストーク消去装置における4つの撚線対について、各乗算は、4成分ベクトルによる4×4マトリックスの乗算である。
図2に示したように、FIRフィルタ200の出力は次のように表すことができる。
Y(z)=H(z)Tx(z)
ここで、H(z)は上記で定義したマトリックスであり、Tx(z)は多次元信号のベクトル表示である。また、加算器220−1乃至220−9はそれぞれ、多数の成分のベクトル加算を行う。
図2に示したハイブリッド型のFIRフィルタ200は、参照により本明細書に組み込まれている、「Method and Apparatus For Reducing Cross−Talk With Reduced Redundancies」という名称の米国特許出願(Attorney Docket Number Azadet 25)に記載されているように、エコーならびにニアエンドおよびファーエンド・クロストークなどの、撚線対環境におけるノイズを消去するため、または受信信号を等化するために用いることができる。
【0018】
図3は本発明の特徴を包含した転置型の多次元FIRフィルタを示している。このように、本発明は、転置型のFIRフィルタを多次元フィルタに拡張する。
図3に示したように、従来の転置型FIRフィルタと比較して、入力信号のスカラ表示は、多次元成分を備えたベクトルによって置き換えられ、スカラ乗算は多数の係数を用いたマトリックス乗算になり、スカラ加算は多数の入出力を用いたベクトル加算になる。
【0019】
FIRフィルタ300の伝達関数のz変換H(z)は次のように表すことができる。
H(z)=W
0+W
1z
−1+W
2z
−2+W
3z
−3+... (2)
たとえば、上記の式における第1の重み項W
0は無遅延に対応し、第2項W
1z
−1は遅延の第1段階に対応する。従来の形態については、各フィルタ・タップに適用される重みw
nはスカラ値であり、一方、本発明のフィルタ300における各フィルタ・タップに適用される重みW
nはマトリックス値(4×4マトリックスなど)である点に留意されたい。従来の転置型の有限時間インパルス応答フィルタに関するより詳細な説明については、たとえば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,983,254号を参照されたい。直接型のFIRフィルタとは異なり、転置型の入力パスには遅延素子がない点に留意されたい。
【0020】
むしろ、転置型に従えば、遅延素子はそれぞれ出力パス311に配置され、乗算器/加算器の対315、320の間に挿入される。そのため、多次元フィルタ300におけるクリティカル・パスは、乗算器315および加算器320を備えており、その結果、乗算および加算によって最大計算遅延が生ずることになる。さらに、かかる計算遅延はフィルタ300の長さ、すなわちタップの数には左右されない。
【0021】
上記のように、本明細書中で用いている多次元有限時間インパルス応答フィルタは、マトリックス係数を有する。
図3のFIRフィルタ300は、フィルタ重みまたはタップ係数W
Nを備えたタップをそれぞれ有するN個の乗算器315を含む。これらのフィルタ重みは、入力パス301を横断する入力データによって乗算されるマトリックス被乗数を表す。従来の形態については、各フィルタ・タップに適用される重みw
nはスカラ値であり、一方、本発明における各フィルタ・タップに適用される重みW
nはマトリックス値(4×4マトリックスなど)である。
乗算器315はそれぞれマトリックス乗算を行う。たとえば、クロストーク消去装置における4つの撚線対について、各乗算は、4成分ベクトルによる4×4マトリックスの乗算である。
図3に示したように、FIRフィルタ300の出力は次のように表すことができる。
Y(z)=H(z)Tx(z)
ここで、H(z)は上記で定義したマトリックスであり、Tx(z)は多次元信号のベクトル表示である。また、加算器320−1乃至320−9はそれぞれ、多数の成分のベクトル加算を行う。
図3に示した転置型のFIRフィルタ300は、参照により本明細書に組み込まれている、「Method and Apparatus For Reducing Cross−Talk With Reduced Redundancies」という名称の米国特許出願(Attorney Docket Number Azadet 25)に記載されているように、エコーならびにニアエンドおよびファーエンド・クロストークなどの、撚線対環境におけるノイズを消去するため、または受信信号を等化するために用いることができる。
【0022】
本明細書中で示し説明した実施形態および変形は、本発明の原理を例示しているに過ぎず、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、当業者によって様々な変更が実施可能であることを理解されたい。