特許第5676969号(P5676969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5676969多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンを含む画像コンディショニング用の接触レベリングコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676969
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンを含む画像コンディショニング用の接触レベリングコーティング
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20150205BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   B41J2/01 301
   B41J2/01 121
   B41J2/01 111
   B41J2/01 129
   B41M5/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2010-181697(P2010-181697)
(22)【出願日】2010年8月16日
(65)【公開番号】特開2011-46195(P2011-46195A)
(43)【公開日】2011年3月10日
【審査請求日】2012年8月29日
(31)【優先権主張番号】12/544,031
(32)【優先日】2009年8月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジェイ.ジャーヴァシ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ジェイ.ルーフ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー エム.ケリー
(72)【発明者】
【氏名】サントーク エス.バデーシャ
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−034846(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0234838(US,A1)
【文献】 特開昭63−205241(JP,A)
【文献】 特開2008−225186(JP,A)
【文献】 特開平09−319160(JP,A)
【文献】 特表2008−532065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
B41M 5/00
G03G 15/20
G03G 15/16
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触レベリング基材上に配置されたコーティングを含むインクジェット画像形成部材用の接触レベリング部材であって、前記コーティングは
(i)下記式で表される多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンであって、
【化1】



式中、R、R、R、R、R、R、R、およびRが同一であり、かつR、R、R、R、R、R、R、およびR
CHCHCFCFCFCF
CHCHCFCFCFCFCFCF、もしくは
CHCHCFCFCFCFCFCFCFCF
である化合物を含むか、または
(ii)少なくとも2種の異なった下記式で表される多面体オリゴマーであるシルセスキオキサン化合物の組合せであって、
【化2】



式中、R、R、R、R、R、R、R、およびR
CHCHCFCFCFCF
CHCHCFCFCFCFCFCF、もしくは
CHCHCFCFCFCFCFCFCFCF
から選択される、少なくとも2種の異なった多面体オリゴマーであるシルセスキオキサン化合物を含む、
接触レベリング部材。
【請求項2】
前記コーティングが、ポリマー性結合剤を含まない純粋のフルオロアルキル置換多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンであるか、または、フルオロアルキル置換多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンおよびポリマー性結合剤を含む、請求項1に記載の接触レベリング部材。
【請求項3】
相変化インク、ゲルインク、硬化性相変化インク、または硬化性ゲルインクを吐出して、最終画像受容基材に直接印刷するインクジェット画像形成装置に使用するための、請求項1または請求項2に記載の接触レベリング部材。
【請求項4】
インクを受容基材に付与してインク画像を形成するための少なくとも1つのプリントヘッドと、
接触レベリング部材をインク画像と圧迫接触させることにより、インク画像をコンディショニングするための接触レベリング部材と、
を含む印刷ステーションを備える印刷機であって、
前記接触レベリング部材は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接触レベリング部材である、印刷機。
【請求項5】
画像受容基材上にインクで画像を形成するステップと、
接触レベリング部材をインク画像と圧迫接触させることにより画像をコンディショニングするステップと、
を含み、
前記画像が最終画像受容基材上に直接形成され、
前記インクは、相変化インク、ゲルインク、硬化性相変化インク、または硬化性ゲルインクである画像コンディショニング方法であって、
前記接触レベリング部材は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接触レベリング部材である、画像コンディショニング方法
【請求項6】
前記多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンは、フルオロアルキル置換多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンを含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンを含み、かつ接触レベリング基材上に配置されたコーティングを含む、インクジェット画像形成部材用の接触レベリング表面、接触レベリングコーティング、印刷機、およびこれらを用いた接触レベリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体インクジェットシステムは、液滴を記録媒体に向かって吐出する複数のインクジェットを有する1つまたは複数のプリントヘッドを備える。インクジェットは、プリントヘッド中のインク供給チャンバまたはマニホールドからインクを受け、また、溶融インク溜またはカートリッジなどの供給源からインクを受容する。各インクジェットは、インク供給マニホールドに液体が通ずる一端を有するチャネルを備え、チャネルの他端にはインク滴を吐出するためのオリフィスまたはノズルがある。インクジェットのノズルは、インクジェットのノズルに対応する開口部または間隙を有するノズルプレートとして形成されてよい。作動中は、液滴吐出シグナルがインクジェット中のアクチュエータを駆動して、液滴をインクジェットノズルから記録媒体上に吐出する。記録媒体および/またはプリントヘッドアセンブリが互いに対して相対的に移動するに従ってインクジェットのアクチュエータを選択的に駆動して液滴を吐出させることにより、付着した液滴が正確なパターンを形成して特定の文字や画像を記録媒体上に形成することができる。
【0003】
インクジェット印刷システムは、通常、直接印刷アーキテクチャまたはオフセット印刷アーキテクチャのいずれかを使用する。直接印刷においては、インクはプリントヘッド中のジェットから最終的な受容ウェブまたは紙などの基材上に吐出される。オフセット印刷においては、画像は中間転写体の表面に形成されて、その後最終受容基材に転写される。
【0004】
相変化インクは周囲温度では固相であるが、インクジェット印刷装置の上昇した作動温度下では液相で存在する。ジェット作動温度において、液体インク滴は印刷装置から吐出され、インク滴が記録基材の表面に、直接に、または加熱された中間転写ベルトもしくはドラムを介して接触すると、インク滴は急速に固化して、固化したインク滴からなる所定のパターンを形成する。固形インクは通常は105℃の温度で吐出され、吐出温度において10センチポイズの溶融粘度を有する。紫外線硬化性ゲルインクは、通常は75℃の温度で吐出され、吐出温度において10センチポイズの溶融粘度を有する。
【0005】
相変化インクは、インクジェットプリンタ用として好適である。その理由は、それらが輸送、長期貯蔵中に、室温で高粘性相を維持するからであり、液体インクジェットインクの蒸発が原因となって生じるノズル詰まりに伴う問題が大きく軽減され、それによりインクジェット印刷の信頼性が向上する。インク滴が最終記録基材上に直接適用される相変化インクジェットプリンタにおいては、液滴は基材と接触すると直ちに固化し、その結果として印刷媒体表面に沿ったインクの移動が防止され、ドット品質が向上する。
【0006】
相変化インク印刷装置においては、吐出されたインクの画像は、ドラムが回転または前進するにつれて、展性のある固形中間状態に冷却されることにより、液体中間転写表面上または直接ないし最終基材装置のための最終基材上で固化する。画像形成が完了すると、転写ローラが動いてドラムと接触し、ローラと中間転写体/ドラムの湾曲した面との間に加圧された転写ニップが形成される。次に紙のシートなどの最終受容基材が転写ニップ中に供給されて、インク画像が最終受容ウェブに転写される。直接ないし最終基材装置については、シート供給ローラなどのシート供給装置により最終受容基材が動いてドラムと接触し、シート供給ローラとドラムとの間に加圧された転写ニップを形成して、インク画像が最終受容基材に直接転写される。
【0007】
相変化および紫外線硬化性などの硬化性ゲルインク用印刷機構で使用でき、両面印刷機構、および、圧迫ローラに接触するすでに印刷されたインク画像に変化を生じさせずに紙に直接現像された印刷の展着(spreading)を促進できる圧迫部材などの紙やウェブに直接接する機構を含む装置を提供すること、ならびに画像品質を改善し、画像光沢を改善し、吐出の欠陥または吐出力不足を補償することができる装置を提供することが望ましい。
【0008】
紙に直接印刷されたままの画像は、画像の品質および光沢を向上させるために、画像のコンディショニング(leveling)が必要になり得る。図1は、単純化したインクジェット印刷システム100を例示し、このシステムにおいては、プリントヘッドノズル102がインク滴104を紙108などの最終受容基材に直接噴射して、紙108の上に印刷された画像滴106を形成させる。表面エネルギーのプロファイルによって、噴射されたインク滴は紙の表面上で玉になり、矢印110、112により示したように、印刷された滴106と紙108との間で接触角を生じる。図中のγ(T)はインクの表面張力であり、γ(T)は紙の表面張力であり、γ12(T)は紙108とインク106との間の界面張力であり、ここで紙面における力の均衡は下記式で示される。
→γcosθ+γ12=γ;および
→cosθ=(γ−γ12)/γ(T)
【0009】
吐出の断続的な欠陥や力付属に加え、接触角のピニング(pinning)は、不均質な縞状のインクプロファイルを生じて、画像品質の低下や光沢の低下につながり得る。印刷された画像のコンディショニングを行うために、熱的再流動、エアナイフ剪断、所望の線幅を得るためのインク製剤の改善などの非接触型の技法、および接触型のレベリング技法など数通りの手法が提案されている。
【0010】
米国特許出願公開第2009/0141110号は、圧迫部材が、i)基材、およびii)疎油性樹脂、フルオロポリマー潤滑剤、および第一の添加物を含むポリマーマトリックスを有する外部コーティングを備える印刷機を開示している。
【0011】
米国特許出願公開第2009/0142112号は、相変化インクを印刷媒体上に転写し、所望により定着するオフセット印刷機を開示しており、このオフセット印刷機は相変化インクにより形成された画像を受容し印刷媒体に転写して所望により固定するための画像形成部材と、i)画像形成基材の上にii)疎油性樹脂、フルオロポリマー潤滑剤、および第一の添加剤を含むポリマーマトリックスを有する外部コーティングを有する画像形成部材と、を含む。
【0012】
接触するレベリング表面に対するオフセットを防止するのに十分な程度にインクに対して疎な状態を維持しつつ、画像と接触して画像をレベリングすることができる、改善された画像コンディショニング用表面;改善された画像品質、画像光沢を提供し、かつ吐出の欠陥または力不足を補償する改善されたコンディショニング;紫外線硬化性ゲルインク印刷エンジン用の未硬化の(green)、強固な、および信頼性のある画像コンディショニングを提供する接触レベリングコーティング;および、耐摩耗性であり、作動温度に加熱された際に熱的に安定であり、高荷重下において機械的性質が不変であり、かつインクの付着に対して耐性を有する接触レベリングコーティングが依然求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0141110号
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0142112号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、接触レベリング基材上に形成され、下記式で表される多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンを含むコーティングを有する、インクジェット画像形成部材用接触レベリング表面を提供する。
【化1】
【0015】
式中、R、R、R、R、R、R、R、およびRは、互いに独立に、以下の(a)〜(h)のフッ素で置換されていてもよい基から選択され、2以上のR基はともに環を形成してもよい。
(a)線状、分岐、飽和、不飽和、環状、非環状、置換、および非置換アルキル基を含むアルキル(所望により、フッ素やフッ素以外のヘテロ原子がアルキル基中に存在してもよい);
(b)置換および非置換アリール基を含むアリール(所望によりヘテロ原子がアリール基中に存在してもよい);
(c)非置換および置換アリールアルキル基を含むアリールアルキル(アリールアルキル基のアルキル部分は、線状、分岐、飽和、不飽和、環状、または非環状であってよく、かつ所望により、ヘテロ原子がアリールアルキル基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在してもよい);
(d)非置換および置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール(アルキルアリール基のアルキル部分は、線状、分岐、飽和、不飽和、環状、または非環状であることができ、かつ所望により、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在してもよい);
(e)線状、分岐、環状、非環状、置換、および非置換のシロキシル基を含むシロキシル(所望によりヘテロ原子が存在してもよい);
(f)線状、分岐、環状、非環状、置換、および非置換のシリル基を含むシリル(所望によりヘテロ原子が存在してもよい);
(g)線状、分岐、環状、非環状、置換、および非置換のシラン基を含むシラン(所望によりヘテロ原子が存在してもよい);ならびに
(h)ヒドロキシル、アミン、カルボン酸、エポキシド、フルオロアルキル、ハロゲン化物、イミド、アクリレート、メタクリレート、ニトリル、スルホネート、チオール、シラノール、およびそれらの組合せから選択される官能基。
【0016】
本発明はさらに、インクを画像受容基材に適用してインク画像を形成するための少なくとも1つのプリントヘッドを含む印刷ステーション;接触レベリング部材をインク画像と圧迫接触させてインク画像をコンディショニングするための接触レベリング部材とを有する印刷機であって、接触レベリング部材は基材および基材上に配置された接触レベリングコーティングを含み、接触レベリングコーティングは、本明細書に記載の多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンコーティングを含む、印刷機を提供する。
【0017】
本発明はさらに、画像受容基材上にインクで画像を形成するステップと、接触レベリング部材をインク画像と圧迫接触させることにより画像をコンディショニングするステップと、を含む画像コンディショニング方法であって、接触レベリング部材は基材および基材上に配置された接触レベリングコーティングを含み、接触レベリングコーティングは本明細書に記載の多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンコーティングを含む、画像コンディショニング方法を提供する。
【0018】
接触レベリング表面は、インクジェット画像形成部材、および、相変化インク、ゲルインク、硬化性相変化インク、または硬化性ゲルインクを最終画像受容基材に直接吐出する画像形成装置、例えば紙に直接画像を形成する装置に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】基材上に吐出されたインク滴を例示する。
図2】本開示による画像コンディショニング前および後の印刷されたインク画像を例示する。
図3】従来より利用可能な接触レベリング表面におけるインクオフセットを例示する。
図4】インクオフセットのない本開示による接触レベリング表面を例示する。
図5】種々の材料の試験片上の代表的インク製剤のオフセットを、試験片の説明に対する明度L(L density)により例示する。
図6】本開示の実施形態による接触レベリング表面層を有する試験片上の代表的インク製剤のオフセットを、試験片の説明に対する明度Lにより例示する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
接触レベリングコーティングは、トナー、相変化または固体インク、紫外線(UV)硬化性ゲルインク、フレキソ印刷インク、平版インクなど種々の画像形成材料によるオフセットを完全に防止するインクジェット接触レベリング表面のために提供される。接触レベリングコーティングは、固体インクならびに紫外線硬化性ゲルインクなどの硬化性固体およびゲルインクを使用するために提供される。オフセット防止接触レベリングコーティングは、多くの印刷サイクルを経た後も持続する有利な性質を有する。接触レベリングコーティングは、フルオロアルキル置換多面体オリゴマーであるシルセスキオキサン(POSS)を、単独、またはポリマー結合剤マトリックス中に組み込まれた状態でインクオフセット防止接触レベリング表面として含み、強固で信頼性のある画像コンディショニング(レベリング)を、ある実施形態においては紫外線ゲルインク印刷エンジンでの使用に提供する。POSS接触レベリングコーティングは、オフセット防止の性質につながる濡れ防止性を接触レベリング表面に付与する。
【0021】
画像コンディショニング方法は、直接紙におよび直接ウェブに印刷する装置など、直接ないし最終画像受容基材に画像形成する装置について開示されている。紙に直接印刷されたままの画像をコンディショニングする方法は、画像受容基材上にインクで画像を形成するステップと、接触レベリング部材を、吐出されたインク画像と圧迫接触させることにより画像をコンディショニングするステップと、を含む。この方法において、接触レベリング部材は、基材および基材上に配置された本明細書に記載の接触レベリングコーティングを含み、これによって画像光沢などの画像品質を改善する。インクは、相変化インクまたはゲルインク、紫外線硬化性もしくは可視光硬化性などの硬化性相変化インクまたは硬化性ゲルインクである。図2は本開示の工程200を表し、この工程において、印刷されたままの望ましくない縞状のゲル系インクのインクプロファイルを有する画像202は、本開示のレベリング工程204によって処理されて、全体的に改善された画像品質および改善された画像光沢を有する平滑な画像となるようにコンディショニングされた画像206を提供する。
【0022】
インクジェット印刷機は、インクを画像受容基材に適用してインク画像を形成するための少なくとも1つのプリントヘッドを含む印刷ステーションと、接触レベリング部材をインク画像と圧迫接触させることにより、インク画像をコンディショニングするための接触レベリング部材と、を含む。接触レベリング部材は基材および基材上に配置された本明細書に記載した接触レベリングコーティングを含む。図3によると、インクジェット装置および接触レベリング工程300は、吐出されたインク画像滴310、312を紙などの基材314上に形成するインク滴306、308を噴射するためのインクジェットプリントヘッド302および304を含む。基材314は、矢印320の方向へ動く接触レベリングローラ318を備えるコンディショニングステーションに向かって、矢印316の方向へ移動する。ここで、滴322、324が接触レベリングローラに付着するオフセットが問題となる。印刷された画像326は、インク画像が硬化されるUV硬化ステーション328へと矢印316の方向へ進む。インクの硬化は、インク画像を10から480ナノメートル、または200から480ナノメートルなど任意の所望のまたは有効な波長で化学線に曝すことにより生じさせることができる。化学線への曝露は、任意の所望のまたは有効な時間、例えば0.2から30秒などの間で行うことができる。ここで硬化とは、インク中の硬化性化合物が化学線に曝露されることにより分子量が増大すること、例えば架橋、鎖長延長などを意味する。非UV硬化性システムにおいては、硬化ステーション328が省略されるか、または選択されたインクの性質に依存して代わりの硬化装置が用意される。
【0023】
図4は、接触レベリングコーティング401が接触レベリングローラ基材418上に配置されているシステム400を例示する。インクジェットプリントヘッド、UV硬化ステーション、非UV硬化が使用される場合は代わりの硬化ステーションは、簡単化のため図4には示していないが、一般的には図3のようになる。図3について説明したように、基材上にインク画像滴を形成するインク滴を吐出するためのインクジェットプリントヘッドを含むインクジェットが使用される。基材は、可動性接触レベリングを含むコンディショニングステーションに向かって移動する。本開示のコーティングは、接触レベリングローラに対するインクのオフセットを顕著に減少させるかまたは完全に防止する。印刷された画像はUV硬化ステーションに進み、そこでインク画像が硬化される。この工程はUV硬化性インクについての記載である。インクは任意の適当なインクであってよい。インクがUV硬化性インクでない場合は代わりの硬化ステーションが用意され、あるいは非硬化性インクの場合には硬化ステーションがない。
【0024】
本開示の接触レベリング表面401を有する本開示の接触レベリングローラ418は、現在知られているかまたは開発段階のインクジェット印刷装置中に配置することができるが、本明細書に記載した装置に限定されない。ここではドラムまたはローラとして記載したが、シート、フィルム、ウェブ、箔、ストリップ、コイル、円筒、ドラム、循環ストリップ、円盤、循環ベルトを含むベルト、継ぎ目のある循環フレキシブルベルト、および継ぎ目のない循環フレキシブルベルト、およびパズルカット(puzzle cut)継ぎ目、溶接可能な継ぎ目を有する循環ベルトなど、限定されないが、任意の所望の形状が、本明細書における接触レベリング装置のために選択され得る。接触レベリングローラ418は、通常、接触レベリングローラが基材の画像のある側と接触し、かつ向かい合うローラが基材の画像のない側と接触するような位置で、向かい合うローラまたは他の装置(示していない)とともにニップを形成する。
【0025】
工程は、接触レベリングニップを通る画像受容基材の通過速度を増大させることを含むことができ、毎秒1から250、もしくは25から150、もしくは50から100枚の通過速度を選択することができ、または毎秒1から500、もしくは25から200、もしくは75から150インチの通過速度を選択することができる。
【0026】
基材418は、金属、ゴム、繊維ガラス複合体および布帛など適当な強度および他の望ましい特性を有する任意の適当な基材材料にすることができる。金属の例には、鋼、アルミニウム、ニッケル、およびそれらの合金が挙げられる。基材の厚さは、使用される画像形成部材のタイプにより選択することができる。基材がベルト、フィルム、またはシートである場合、基材の厚さは、典型的には0.5から500ミリメートル、または1から250ミリメートルである。基材がドラムの形状であるとき、基材の厚さは典型的には0.8から25ミリメートル、または1.6から16ミリメートルである。
【0027】
接触レベリング基材418と接触レベリング表面コーティング401との間に、中間層が設けられてもよい。中間層として使用するのに適した材料は、シリコーン、フッ素化エラストマー、フッ素化シリコーン、エチレンプロピレンジエンゴム、およびそれらの混合物を含むことができる。中間層は、形状適合性であり、厚さは0.02から6.0ミリメートルまたは0.04から2.5ミリメートルである。
【0028】
接触レベリングコーティングは、周辺にアルキル官能基を有するケイ素−酸素を核とする枠組みからなる熱的に強固なケージ構造を含む1種または2種以上のPOSS化合物を含有する。POSS分子は、官能性を調節することができ、固有の官能性をもたせて容易に合成され、個別ばらばらに(discretely)ナノサイズを有する。POSS化合物は、ブレンドされたポリマー中において高度の相溶性を有することができ、かつポリマー骨格に共有結合によって容易に連結することができる。POSSをポリマー中に組込むことにより、ガラス転位温度、機械的強度、熱的および化学的耐性、ならびに加工の容易さなどの特性が改善されたナノ複合体が生成される。
【0029】
接触レベリングコーティングは、一般式(RSiO1.5を有するPOSS化合物を含み、式中、Rは種々の炭化水素、シロキサン、官能基のいずれであってもよく、R基は互いに同一であっても異なっていてもよく、nは6、8、10、12、またはそれを超える数である。POSS分子におけるケイ素−酸素の枠組みは、ケイ素原子が1つの有機基および3個の酸素原子と結合して完全縮合多環状構造を形成する複数の環構造を一般に含有する。nが8であるとき、次のような構造が形成され得る。
【化2】
【0030】
式中、R、R、R、R、R、R、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、
【0031】
線状、分岐、飽和、不飽和、環状、非環状、置換、および非置換アルキル基を含むアルキル基であり、その中で、酸素、窒素、イオウ、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が、1から36、6から24、6から12、または12から18個の炭素を有するアルキル基中に、所望により存在してもよく、
【0032】
置換および非置換アリール基を含むアリール基であり、その中で、上記のヘテロ原子が、6から36、または6から24、または12から18個の炭素原子を有するアリール基中に所望により存在してもよく、
【0033】
非置換および置換アリールアルキル基を含むアリールアルキル基であり、その中で、アリールアルキル基のアルキル部分は、線状、分岐、飽和、不飽和、環状、および/または非環状であってよく、かつ上記のヘテロ原子が、ベンジルなどのアリールアルキル基の6から36、または7から36、または12から18個の炭素原子を有するアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方中に、所望により存在してもよく、
【0034】
非置換および置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基であり、その中で、アルキルアリール基のアルキル部分は、線状、分岐、飽和、不飽和、環状、および/または非環状であってよく、その中で、上記のヘテロ原子が、トリルなどのアルキルアリール基の6から36、または7から36、または12から18個の炭素原子を有するアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方中に所望により存在してもよく、
【0035】
線状、分岐、環状、非環状、置換、および非置換であるものを含み、上記ヘテロ原子を有してもよい、1から12または3から6個のケイ素原子を含むシロキシル、シリル、およびシラン基であってよく、
上記アルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、シロキシル、シリル、およびシラン基上の置換基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミン基、イミン基、アンモニウム基、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、エポキシ基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、ウレア基、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、シリル基、シロキシル基、シラン基、それらの混合物であってよく、
【0036】
式中、2つ以上のR基および/または置換基が結合してともに環を形成していてよい。
【0037】
R基は、アルコール(ヒドロキシル)、アミン、カルボン酸、エポキシド、フルオロアルキル、ハロゲン化物、イミド、アクリレート、メタクリレート、ニトリル、スルホネート、チオール、シラノール、オキシド、ならびにそれらの混合物を含む種々の官能基であってよい。nが6であるとき、対応する構造は、nが8であるときに上で定義されたR、R、R、R、R、およびR基を有する。nが10であるとき、対応する構造は、nが8であるときに上で定義された、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10基を有する。nが12であるとき、対応する構造は、nが8であるときに上で定義された、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR12基を有する。
さらに、例えば下記構造のように、「ケージ」構造を形成する結合の1つまたは2つ以上が開環しており、ケイ素および酸素原子が追加の置換基を有している化合物も含まれる。
【化3】
【化4】
【0038】
式中、R、R、R、およびRは、RからRまでと同じ定義を有してよく、さらにイミン基、アンモニウム基、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ウレタン基、ウレア基、およびそれらの組み合わせなどの置換基であってもよく、2つ以上のR基および/または置換基が結合してともに環を形成してもよい。このような構造としてはジシラノールPOSS化合物およびテトラシラノールPOSS化合物が挙げられ、例えば下記式のジシラノールイソブチルPOSS(式中、R、R、R、R、R、R、R、およびRが、全てイソブチルである)、および
【化5】
【0039】
下記式のテトラシラノールフェニルPOSS(R、R、R、R、R、R、R、およびRが、全てフェニルである)などが挙げられる。
【化6】
【0040】
さらに、これらの構造に結合したケイ素原子および酸素原子の1個または2個以上が失われ、ケイ素および酸素原子が追加の置換基を有している、例えば下記式の化合物も挙げられる。
【化7】
【0041】
式中、R、R、およびRは、RからRまでと同じ定義を有してよく、さらにヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミン基、イミン基、アンモニウム基、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、エポキシ基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、ウレア基、それらの混合物を含む置換基であってよく、2つ以上のR基および/または置換基が結合してともに環を形成してよい。このような構造の化合物としてはトリシラノールPOSS、例えば下記式のトリシラノールフェニルPOSS(R、R、R、R、R、R、およびRが全てフェニルである)が挙げられる。
【化8】
【0042】
R基としては、フェニル、イソブチル、アリルビスフェノール、シクロペンチル、トリメチルシロキシ、メタクリル、マレイミド、シクロヘキシルなどが好ましい。
【0043】
POSS分子上のR基としては、メチル、O−N(CH4+、エチル、ジブロモエチル、ノルボルネニルエチル、ビニル、トリフルオロプロピル、クロロプロピル、シアノプロピル、メルカプトプロピル、アミノプロピル、N−メチルアミノプロピル、プロピルアンモニウムハロゲン化物、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物など、アリル、−(CHCH(OCHCHOCHの式で表されるポリエチレンオキシ(mはOCHCH単位の繰り返し数を表す数であり、その平均値は13.3である)、イソブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、イソオクチル、下記式のl−エチル−3,4−シクロヘキサンジオール、
【化9】
【0044】
下記式の3−ヒドロキシ−3−メチルブチルジメチルシロキシル、
【化10】
【0045】
下記式のアミノエチルアミノプロピル、
【化11】
【0046】
フェニル、クロロベンジル、下記式のクロロベンジルエチル、
【化12】
【0047】
下記式のアミド酸、
【化13】
【0048】
アミノフェニル、N−フェニルアミノプロピル、下記式のエポキシシクロヘキシル、
【化14】
【0049】
下記式のエポキシシクロヘキシルジメチルシリル、
【化15】
【0050】
下記式のグリシジル、
【化16】
【0051】
下記式のグリシジルジメチルシリル、
【化17】
【0052】
下記式のマレイミド、
【化18】
【0053】
下記式のアクリロール、
【化19】
【0054】
下記式のメタクリル、
【化20】
【0055】
下記式のアクリレート、
【化21】
【0056】
−OSi(CHのトリメチルシロキシル、ノルボルネニル、下記式のシクロヘキセニルジメチルシリル、
【化22】
【0057】
下記式のビニルジメチルシリル、
【化23】
【0058】
−OSi(CHH、−H、−OH、下記式で表されるシラン、などが挙げられる。
【化24】
【0059】
POSSコーティングは、フルオロアルキル置換多面体オリゴマーであるシルセスキオキサンを含むことができる。フルオロアルキル置換POSS化合物は、熱および加水分解に対して安定であり、かつ他のフッ素化化合物よりも調製する際の危険が少ない。これらの化合物は、可溶にすることもでき、そのため、種々のポリマー系との複合体を形成するために組み込むことが容易である。
【0060】
POSSが下記式のものである場合、
【化25】
【0061】
、R、R、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、下記(a)〜(h)を含むフッ素で置換されてもよい置換基より選択され、2つ以上のR基がともに環を形成していてもよい。
(a)所望によりフッ素またはフッ素以外のヘテロ原子が存在してもよい、線状、分岐、飽和、不飽和、環状、非環状、置換、および非置換アルキル基などのアルキル
(b)所望によりヘテロ原子が存在してもよい、置換および非置換アリール基などのアリール;
(c)アルキル部分が線状、分岐、飽和、不飽和、環状、または非環状であってよく、アルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に、所望によりヘテロ原子が存在してもよい、非置換および置換アリールアルキル基などのアリールアルキル
(d)アルキル部分が線状、分岐、飽和、不飽和、環状、または非環状であってよく、アルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に、所望によりヘテロ原子が存在してもよい、非置換および置換アルキルアリール基などのアルキルアリール
(e)ヘテロ原子が所望により存在してもよい、線状、分岐、環状、非環状、置換、および非置換シロキシル基などのシロキシル
(f)ヘテロ原子が所望により存在してもよい、線状、分岐、環状、非環状、置換、および非置換シリル基などのシリル
(g)ヘテロ原子が所望により存在してもよい、線状、分岐、環状、非環状、置換、および非置換シラン基などのシラン
(h)ヒドロキシル、アミン、カルボン酸、エポキシド、フルオロアルキル、ハロゲン化物、イミド、アクリレート、メタクリレート、ニトリル、スルホネート、チオール、シラノール、およびそれらの組合せから選択される官能基
【0062】
ある実施態様では、R、R、R、R、R、R、R、およびRは(a)1から36個の炭素原子を有するアルキル;(b)6から36個の炭素原子を有するアリール;(c)6から36個の炭素原子を有するアリールアルキル;(d)6から36個の炭素原子を有するアルキルアリール;(e)6から12個のケイ素原子を有するシロキシル;(f)6から12個のケイ素原子を有するシリル;および(g)6から12個のケイ素原子を有するシラン;などが、所望によりフッ素で置換された置換基から、互いに独立に選択される。
【0063】
ある実施態様では、R、R、R、R、R、R、R、およびRは各々同一であり、その場合、R、R、R、R、R、R、R、およびRは、
CHCHCFCFCFCF
CHCHCFCFCFCFCFCF、または
CHCHCFCFCFCFCFCFCFCF
である。
【0064】
コーティングは、少なくとも2種の異なった多面体オリゴマーであるシルセスキオキサン化合物を含むことができる。POSSの構造の組合せ、ある実施形態においてはフッ素置換POSS、特にフルオロアルキル置換POSSの組合せとすることにより、接触レベリング表面の超疎水性および超疎油性を向上させることができる。超疎水性とは、水滴または液体滴が150°を超える高い接触角を形成する性質ということができる。超疎油性とは、炭化水素系液体の滴が150°を超える高い接触角を形成する性質ということができる。フルオロアルキル置換POSSを用いた接触レベリングコーティングは、低い表面エネルギーを有し、コーティングの表面粗さに貢献する。
【0065】
コーティングは、少なくとも2種の異なった多面体オリゴマーであるシルセスキオキサン化合物の組合せを含んでよく、このときR、R、R、R、R、R、R、およびRは、
CHCHCFCFCFCF
CHCHCFCFCFCFCFCF、および
CHCHCFCFCFCFCFCFCFCF
から選択されてよい。
【0066】
POSSコーティングは、簡易なソフト化学合成を使用して調製し、超疎水性および超疎油性コーティングを提供することができ、そのままでも、有機基を選択することによって複合体システム中に組み込んでもよく、危険性のない物質を使用して、廃棄物なしで、またはリサイクルできるものを除き副生物なしで調製することができ、下記のようなアルコール性媒質中における単一工程の、塩基を触媒としたトリアルコキシシランの縮合により合成することができる。
【化26】
【化27】
【0067】
好適な溶媒は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、または水であってよい。成分は、標準的な混合技術(攪拌棒/攪拌板)などの任意の適当な方法により、室温で混合することができる。
【0068】
この反応は、8量体フッ素置換POSS化合物を殆ど定量的な収率で生成する。例えば、下記のPOSS化合物が挙げられる。
【0069】
(1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル)Si12(FH)POSS、
(lH,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチル)Si12(FO)POSS、および
(lH,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)Si12(FD)POSS。
【0070】
上記POSS化合物中、
FHについて、RはCHCHCFCFCFCFであり、
ROについて、RはCHCHCFCFCFCFCFCFであり、
FDについて、RはCHCHCFCFCFCFCFCFCFCFである。
【0071】
POSS化合物は、例えば、ミシシッピー州Hattiesburg所在のHybrid Plasticsから市販されている。
【0072】
ある実施形態において、接触レベリング表面コーティングは、ポリマー性結合剤を含まないPOSSであり、ここで、POSS材料はそのまま(結合剤または溶媒なしに)接触レベリング基材上に配置されて接触レベリング表面を形成する。
【0073】
別の方法では、接触レベリング表面コーティングは、POSSおよびポリマー性結合剤を含む。所望により、POSSは、ポリマー骨格中に共有結合により結合していてもよい。接触レベリング表面コーティングは、POSSを含有するポリマー系を含むことができる。任意の好適なポリマー性結合剤は、フルオロエラストマー、フルオロポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリイミド、およびポリウレタンなどから選択することができる。接触レベリング表面コーティングは、POSSとフルオロエラストマー、フルオロポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリイミド、およびポリウレタンから選択されるポリマー性結合剤とを含むことができる。
【0074】
ある実施形態において、接触レベリング表面は、相変化インク、ゲルインク、硬化性相変化インク、または硬化性ゲルインクを吐出して最終画像受容基材に直接印刷するインクジェット画像形成装置に使用される。
【実施例】
【0075】
<比較例1>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(Mylar(登録商標)、帝人デュポンフィルムから市販)の4×6インチの試験片を、平坦な接触レベリング表面として用いた。
【0076】
<実施例2>
0%POSS Viton(登録商標) 対照
20重量%のViton(登録商標)GF(テトラフルオロエチレンからなるテトラポリマー、ビニルジエンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、および少量の硬化部位モノマー;Dupontから入手可能)のMIBK(メチルイソブチルケトン)溶液50グラム、および20重量%のN−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランのMIBK溶液3.5グラムを組み合わせ、周囲温度で10分間混合して、接触レベリングコーティングを形成した。調製されたコーティングを、4×6インチのポリイミド基材上に付与して接触レベリング試験片を形成した。コートされた基材を、対流オーブン中で、永久架橋されたコーティングが効果的に生ずるように適当な時間加熱した。
【0077】
<実施例3>
Viton(登録商標)中25%POSS
20重量%のViton(登録商標)GFのMIBK溶液16.7グラム、20重量%のN−アミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシランのMIBK溶液1.17グラム、および18重量%のフルオロオクチル置換POSSのMIBK溶液5.14グラムを組み合わせて、周囲温度で10分間混合し、接触レベリングコーティングを形成した。調製されたコーティングを4×6インチのポリイミド基材上に配置して接触レベリング試験片を形成した。コートされた基材を、対流オーブン中で、永久架橋されたコーティングが効果的に生ずるように適当な時間加熱した。
【0078】
<実施例4>
Viton(登録商標)中15%のPOSS
20重量%のViton(登録商標)GFのMIBK溶液50グラム、20重量%のN−アミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシランのMIBK溶液3.5グラム、および18重量%のフルオロオクチル置換POSSのMIBK溶液11.07グラムを組み合わせて、周囲温度で10分間混合し、接触レベリングコーティングを形成した。調製されたコーティングを4×6インチのポリイミド基材上に配置して接触レベリング試験片を形成した。コートされた基材を、対流オーブン中で、永久架橋されたコーティングが効果的に生ずるように適当な時間加熱した。
【0079】
<実施例5>
Viton(登録商標)中50%のPOSS
20重量%のViton(登録商標)GFのMIBK溶液10グラム、20重量%のN−アミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシランのMIBK溶液0.70グラム、および18重量%のフルオロオクチル置換POSSのMIBK溶液12グラムを組み合わせて、周囲温度で10分間混合し、接触レベリングコーティングを形成した。調製されたコーティングを4×6インチのポリイミド基材上に配置して接触レベリング試験片を形成した。コートされた基材を、対流オーブン中で、永久架橋されたコーティングが効果的に生ずるように適当な時間加熱した。
【0080】
図5は、実施例について試験を行った明度Lを例示する。
【0081】
実施例1〜5の接触レベリングコーティングを表1にまとめる。
【表1】
【0082】
図6は、POSSの重量パーセントに対する、輝度としても知られるLを例示する。ゲルインクがOHPフィルム上に噴射され、次にOHPフィルムは、上記実施例におけるレベリング試験片をレベリングロールに取り付けてあるレベリング装置を通るように供給される。続いて直ちに白紙の清浄な「チェース(chase)」シートが供給されて、OHPフィルムから離れて試験片に移り、続いてオフセットにより1回目の回転のオフセット(チェース1)および2回目の回転のオフセット(チェース2)から紙に転写されるインクのロスの影響を測定する実験が実施された。測定された輝度の値は、Viton(登録商標)基材中のPOSS含有率が増大すると増大することが見出された。さらに、図6は、紙だけについて見られると予想されるL値を示す水平の線を示し、任意のチェースに対して理想的な状態を表わす。すなわち、チェースは白紙と同等である。グラフは、POSSの添加が、POSSを含有しないViton(登録商標)試料に対して明らかに有利な結果を生じる一方、POSSの量が増大すると、最終的にはオフセットに対する改善の程度が減少することを示す。
図1
図3
図4
図5
図6
図2