(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5676976
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】蒸気噴射真空ポンプのコンデンサ冷却水制御装置
(51)【国際特許分類】
F28B 11/00 20060101AFI20150205BHJP
F28F 27/00 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
F28B11/00
F28F27/00 511D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-190347(P2010-190347)
(22)【出願日】2010年8月27日
(65)【公開番号】特開2011-47640(P2011-47640A)
(43)【公開日】2011年3月10日
【審査請求日】2013年4月18日
(31)【優先権主張番号】A 1354/2009
(32)【優先日】2009年8月28日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】507377469
【氏名又は名称】インテコ・スペシャル・メルティング・テクノロジーズ・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Inteco Special Melting Technologies GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト・ホルツグルーバー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・レーバー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ブッヒマイアー
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭43−028496(JP,B1)
【文献】
特開平07−208879(JP,A)
【文献】
実開昭52−018301(JP,U)
【文献】
特開昭62−178887(JP,A)
【文献】
特開平06−281366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28B 11/00
F28F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気噴射真空ポンプのコンデンサの冷却水を負圧環境で制御する装置において、
前記蒸気噴射真空ポンプ(5,6,7)の、冷却水を用いた前記コンデンサ(1,2)に連通する容器として構成された測定ポット(9)が、当該コンデンサ(1,2)の外部に取り付けられており、
さらに、速度制御されて前記冷却水の輸送量を調節する冷却水ポンプ(8)を備え、
前記測定ポット(9)は均圧化通路(11)を具備しており、
水位測定のために、前記測定ポットの上端部に、真空引き処理に適した測定プローブ(10)が取り付けられており、前記測定プローブ(10)は、速度制御される前記冷却水ポンプ(8)を制御する入力信号を提供し、
レーダープローブまたはレーザープローブが、前記水位測定用の測定プローブ(10)として用いられ、
前記均圧化通路(11)が、前記コンデンサの内部空間に接続されており、かつ、当該コンデンサの内部空間に挿入されて下方に延びており、これにより、侵入しようとする水飛沫の大半を防止できることを特徴とする、コンデンサ冷却水制御装置。
【請求項2】
請求項1において、許容可能な最高水位の位置に、機械式のフロートスイッチ(12)が安全アラームセンサとして取り付けられていることを特徴とする、コンデンサ冷却水制御装置。
【請求項3】
請求項1または2において、水位を測定する測定ポット(9)の下端部と前記コンデンサのダウンパイプ(4)との間を接続する排水パイプ(13)が取り付けられており、当該排水パイプ(13)が、鉛直に対して最大で50°の角度、好ましくは30°の角度で配設されていることを特徴とする、コンデンサ冷却水制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気噴射真空ポンプのコンデンサの冷却水を非大気圧環境で制御する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日まで、蒸気噴射真空ポンプのコンデンサ(凝縮器)内におけるコンデンサ冷却水の水位を、非大気圧環境で制御する構成はなかった。通常、一定に設定されたシステムの動作点に対して極めて不的確な輸送量で動作するポンプが用いられる。したがって、冷却水の水位は、常に、コンデンサ内に取り付けられたアラームスイッチまたはレベルスイッチによって、ある許容範囲内に制限される。
【0003】
蒸気噴射真空ポンプを始動させる前に、いわゆるコンデンサ冷却水回路を始動させ、当該コンデンサ冷却水回路を安定に動作させる必要がある。
【0004】
コンデンサ内のコンデンサ冷却水の動作開始は、大気圧条件下で行われる。
【0005】
複数の蒸気エゼクタを接続し、任意でこれらに水環ポンプ(水封式ポンプ)を組み合わせ、真空生成を開始すると、コンデンサ内の負圧が変化する。コンデンサ内の負圧が変化すると同時に、コンデンサの内部空間に冷却水を供給するためのコンデンサ冷却水ノズル間に差圧が生じる。ノズル間の差圧の変化により、ノズルを通過する水流量も変化する。つまり、負圧が増加するにつれて、水流量も増加することになる。
【0006】
コンデンサ内への水供給量が、真空度に応じて増加した場合、これをコンデンサの冷却水ポンプを用いて排水する必要がある。その都度で変化する水流量は、多い水量に対応した輸送量で動作するポンプと、少ない水量に対応した輸送量で動作するポンプとの、輸送特性の異なる二種類のポンプを使用することにより、ある程度管理することができる。しかしながら、この構成は、コスト上の理由で採用されない場合が多い。
【0007】
蒸気噴射真空ポンプの動作状態によって変化する水流量を、ある程度管理できるように、差圧ダンパーを用いてポンプを圧力側でスロットル調整するというエネルギー効率の低い慣習が発達した。これと併行して、最大流入圧力を超過した場合に、コンデンサが水で溢れて真空が崩壊してしまうことのないように、パイプの構造および寸法を調整し、さらに、メカニカルバルブを使用するという試みも行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これは、ポンプの吸引流を大きくすることによっても対処することができる。その反面、入水量が少なすぎると、ポンプの大きすぎる吸引流によってキャビテーションが生じ、ポンプが故障する可能性が高くなる。
【0009】
つまり、今日までの一般的な動作態様では、コンデンサ内の変化し得る水量を管理することが困難であり、不確定な状態が何回も積み重なることで、最終的に真空が崩壊する。
【0010】
基本的には、この不満足な状態は、速度制御されたポンプを使用することで改善することができる。しかしながら、そのためには、各場合における冷却水の量を把握する必要がある。なお、コンデンサの内部空間で測定を行う構成は、内部において生じる乱流や大量の飛沫のために現実的でない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の不満足な状態は、本発明により、驚くほど容易に解消することができる。
【0012】
本発明にかかる制御方法は、実施形態を示す
図1の符号を用いて説明すると、コンデンサ(1,2)内の冷却水の水位は、真空引き処理に適した測定方法、例えば、レーダープローブ、レーザープローブなどの測定プローブ(10)を用いて、コンデンサに連通する容器として当該コンデンサの外部に配設された測定ポット(9)内で測定される。その測定値は、速度制御される冷却水ポンプ(8)の輸送量を調節する測定変数、例えば、信号および制御変数として使用される。
【0013】
上述の制御方法を実行するための、本発明にかかる装置は、コンデンサ(1,2)に連通する容器として当該コンデンサの外部に配設された測定ポット(9)と、測定ポット(9)の上部の閉塞カバーに取り付けられた、水位測定用の測定プローブ(10)とで構成される。前記測定ポット(9)は、当該測定ポット(9)内の負圧がコンデンサの内部空間の負圧と確実に同一になるように、均圧化通路(11)を有している。前記測定プローブは、真空引き処理に適しており、大気圧以下の低圧環境下で円滑に作動する。測定プローブ(10)の測定値は、速度制御される冷却水ポンプ(8)を制御するための入力信号を形成する。安全のため、さらなる機械式のフロートスイッチ(12)が水位の測定ポット(9)内に取り付けられている。水位が高くなり過ぎて特定の警戒水位を超えた場合には、このフロートスイッチにより、アラーム遮断がトリガされてアラーム遮断が行われる。好ましくは、許容可能な最高水位の位置に、フロートスイッチ(12)が安全アラームセンサとして取り付けられている。
【0014】
コンデンサ(1,2)とダウンパイプ(4)とを接続する接続通路(13)、好ましくは排水パイプにより、測定ポット(9)内の水位がコンデンサ内の水位と同一に保たれる。前記接続通路(13)は、測定ポット(9)の下端部に配設されており、かつ、鉛直に対して最大で50°の角度、好ましくは30°の角度で当該下端部から延びている。これにより、脱気過程において生じ得る沈殿物または他の固体粒子の詰まりを防止することができる。
【0015】
測定ポット(9)は、コンデンサ(1)の内部空間の圧力と測定ポット(9)内の圧力とを確実に同一にするための均圧化通路(11)を具備している。この測定ポット(9)は、当該測定ポット(9)の上部領域からコンデンサの内部空間へと延設および接続されている。好ましくは、均圧化通路(11)は、コンデンサの内部空間における通常の(WL)よりも上方の領域へと挿入されて下方に延びている。より好ましくは、均一ライン(11)は、コンデンサの内部空間に突入する、開口11aを持つ端部11bを有しており、その端部の短い一部分が垂直下方に延びている。これにより、コンデンサの内部空間からの水飛沫が(11)内に浸入するのを防ぐことができる。
【0016】
その結果、浸入しようとする水飛沫がコンデンサの内部空間に戻されるので、当該水飛沫は測定ポット(9)内に入ることができない。よって、水飛沫は、水位測定に影響を及ぼさない。
【0017】
本発明は、先行技術に対して以下の利点を有する:
・ 許容最高水位および許容最低水位に達したときにオンまたはオフするアラームス
イッチまたはレベルスイッチを用いてポンプを断続的に制御することにより水位を調節する代わりに、冷却水ポンプの輸送量を連続的な水位測定に基づいて制御する。これにより、水位の大きな変動を防止できる。
・ 従来の冷却水ポンプの輸送量の断続的な調節に起因する大きな水位変動を回避できる。
・ コンデンサ内の水位を直接測定せずに、コンデンサと同一水位の測定ポット内の水位を測定しているので、コンデンサ内の泡立ち、波立ち等の影響を受けずに、コンデンサの水位を正確に測定できる。
・ 冷却水ポンプの輸送能力を良好なエネルギー効率で活用でき、さらに
・ ポンプの吸水時に不十分な水量しかないというようなことが起こらないので、これにより、ポンプ内のキャビテーションを回避できる。
【0018】
上記の利点およびその他の利点は、以下の構成によって達成される:
・ 水面を安定させるための、コンデンサに連通する容器として当該コンデンサの外部に配設された測定ポット、
・ 真空引き処理に適した測定プローブによる非接触の水位測定、および
・ 速度制御される冷却水ポンプの、測定値に依存した制御。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明にかかる装置を蒸気噴射真空ポンプに使用した実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を示す
図1において、真空ポンプ設備は、上部に冷却水スプレーのノズル(3)を具備するコンデンサ(1,2)と、蒸気噴射真空ポンプとしての蒸気エゼクタ(5,6,7)と、コンデンサの冷却水ポンプ(8)と、コンデンサの外部に配設された水位測定用の測定ポット(9)と、測定ポット(9)の上端部に配設された測定プローブ(10)と、測定ポット(9)からコンデンサ(1)へと延設された均圧化通路(11)と、コンデンサ(1)の下端に接続された冷却水のダウンパイプ(4)と、測定ポット(9)の下端からダウンパイプ(4)へと延設された、傾いた排水パイプ(13)とを有する。ダウンパイプ(4)の下部に接続された導入パイプ(15)に、コンデンサ(1,2)の冷却水(CL)を循環させる2つの冷却水ポンプ(8、8)が設けられており、この冷却水ポンプ(8)が戻りライン(14)を介して冷却水(CL)を輸送する。このように輸送された冷却水(CL)は、COガス洗浄、浄化槽など(図示せず
)のさらなる処理を受けたのち、ノズル(3)に送出される。
【0021】
各蒸気エゼクタ(5,6,7)にはそれぞれ、蒸気注入部(5a,6a,7a)から蒸気が注入され、蒸気噴射によるエゼクタ効果により、蒸気エゼクタ(5,6,7)内を減圧する。第1段エゼクタ(5)、第2段エゼクタ6および第3段エゼクタ(7)は、この順に直列に配置されている。第1段エゼクタ(5)は第2段エゼクタ(6)の裏側に重なって配置されており、第1段エゼクタ(5)の下流端に第2段エゼクタ(6)が接続され、第2段エゼクタの下流端に第1コンデンサ(1)が接続されている。第1コンデンサ(1)の上部に第3段エゼクタ(7)が接続され、この第3段エゼクタ(7)の下流端に、第1コンデンサ(1)よりも容積の小さい第2コンデンサ(2)が接続されている。第2コンデンサ(2)の内部空間は大気、つまり周囲環境に開放されている。
【0022】
蒸気(S)は、矢印で示すように、第1段エゼクタ(5)、第2段エゼクタ(6)、第1コンデンサ(1)、第3段エゼクタ(7)および第2コンデンサ(2)を通って流れる。両コンデンサ(1,2)の上部にはノズル(3)から冷却水(CL)がコンデンサ内に噴射され、コンデンサ内での蒸気Sの凝縮を促進する。第1段エゼクタ(5)に真空容器(17)が接続されており、3段の蒸気エグゼタ(5,6,7)により、真空容器(17)内が真空引きされる。
【0023】
測定プローブ(10)は測定ポット(9)内の水位、つまり第1コンデンサ(1)内の冷却水(CL)の水位を非接触で測定する。その測定値に基づき、これを測定変数としてコントローラ(図示せず)が作動し、水位が一定の許容範囲内となるように冷却水ポンプ(8)の輸送量を連続的に調節する。これにより、コンデンサ(1)内の冷却水(CL)の水位がポンプ(8)の連続的制御により調節されるので、水位の大きな変動を防止して、安定した水位調節ができ、水位が低すぎる場合のキャビテーションまたは水位が高すぎる場合のポンプの過負荷を防止できる。
【0024】
第1コンデンサ(1)内の水位が許容範囲の上限(警戒水位)を超えた場合、フロートスイッチからなるアラームセンサ(12)からの水位検出信号によりアラーム遮断される。つまり、アラームセンサ(12)からの水位検出信号を受けた前記コントローラ(図示せず)が作動して、冷却水ポンプ(8)を最大輸送量となるように駆動し、一定時間経過後に水位が下がらなければ装置全体の運転を停止する。アラームセンサ(12)からの水位検出信号により、ただちに装置全体の運転を停止してもよい。また、コンデンサ(1)内の水位が許容範囲の下限に達した場合、または下限を下回った場合に、この下限位置に設置した別のアラームセンサにより装置全体の運転を停止してもよい。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
蒸気噴射真空ポンプのコンデンサの冷却水を非大気圧環境で制御する方法において、
前記コンデンサ(1,2)の前記冷却水の水位を、真空引き処理に適した測定方法を用いて、前記コンデンサ(1,2)に連通する容器として当該コンデンサの外部に取り付けられた測定ポット(9)内で測定する過程と、
この測定値を、速度制御される冷却水ポンプ(8)の輸送量を調節する測定変数として使用する過程と、
を備えたコンデンサ冷却水制御方法。
〔態様2〕
態様1において、特定の警戒水位を超えると、アラーム遮断がフロートスイッチ(12)によって行われることを特徴とする、コンデンサ冷却水制御方法。
〔態様3〕
態様1または2に記載のコンデンサ冷却水制御方法を実行する装置において、
蒸気噴射真空ポンプ(5,6,7)の、冷却水を用いたコンデンサ(1,2)に連通する容器として構成された測定ポット(9)が、当該コンデンサ(1,2)の外部に取り付けられており、
前記測定ポット(9)は均圧化通路(11)を具備しており、
水位測定のために、前記測定ポットの上端部に、真空引き処理に適した測定プローブ(10)が取り付けられており、前記測定手段(10)は、速度制御される冷却水ポンプ(8)を制御する入力信号を提供することを特徴とする装置。
〔態様4〕
態様3において、レーダープローブが、水位測定用の測定プローブ(10)として用いられることを特徴とする、コンデンサ冷却水制御方法を実行する装置。
〔態様5〕
態様3において、レーザープローブが、水位測定用の測定プローブ(10)として用いられることを特徴とする、コンデンサ冷却水制御方法を実行する装置。
〔態様6〕
態様3、4または5において、前記均圧化通路(11)が、前記コンデンサの内部空間に接続されており、かつ、当該コンデンサの内部空間に挿入されて下方に延びており、
これにより、侵入しようとする水飛沫の大半を防止できることを特徴とする、コンデンサ冷却水制御方法を実行する装置。
〔態様7〕
態様3、4、5または6において、許容可能な最高水位の位置に、機械式のフロートスイッチ(12)が安全アラームセンサとして取り付けられていることを特徴とする、コンデンサ冷却水制御方法を実行する装置。
〔態様8〕
態様3、4、5、6または7において、水位を測定する測定ポット(9)の下端部と前記コンデンサのダウンパイプ(4)との間を接続する排水パイプ(13)が取り付けられており、当該排水パイプ(13)が、鉛直に対して最大で50°の角度、好ましくは30°の角度で配設されていることを特徴とする、コンデンサ冷却水制御方法を実行する装置。
【符号の説明】
【0025】
1,2 コンデンサ
5,6,7 蒸気噴射真空ポンプ
8 速度制御される冷却水ポンプ
9 測定ポット
10 測定プローブ
11 均圧化通路
12 アラームセンサ