(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
−第1の実施の形態−
図面を用いて、第1の実施の形態による光学装置について説明する。
図1は実施の形態のカメラの回路構成を示すブロック図である。カメラ1は、ズームレンズや焦点調節レンズ、その他の結像レンズにより構成される撮影レンズ2、撮像素子6、制御回路7、メモリ8、ブレ検出センサ14、ブレ補正装置15、LCD駆動回路16、液晶モニタ17、操作部材18を備える。撮像素子6は、複数の光電変換素子を備えたCCDやCMOSイメージセンサによって構成される。撮像素子6は、撮像面上に結像されている被写体像を撮像し、被写体像の明るさに応じた光電変換信号(撮像信号)に変換して、制御回路7へ出力する。
【0009】
制御回路7は、図示しないCPUとメモリ等の周辺回路から構成され、種々の処理や制御を行う。たとえば、制御回路7は、撮像素子6から入力した撮像信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して画像データを生成する。そして、制御回路7は、生成した画像データに対して各種の画像処理を施した後、JPEG等の圧縮処理を施し、たとえばEXIF形式の画像ファイルを生成する。制御回路7は、生成した画像ファイルを、たとえばメモリカード等の不揮発性の記録媒体に記録する。また、制御回路7は、ブレ補正制御部71を機能的に備える。ブレ補正制御部71の詳細については、説明を後述する。
【0010】
メモリ8は、画像処理、画像圧縮処理および表示用画像データ作成処理の途中や処理後のデータを一時的に格納するために使用される。表示用画像データは、撮像素子6からの出力に基づいて、制御回路7が生成した画像データ、もしくは記録媒体に記録されている画像データに基づいて、制御回路7により生成される。生成された表示用画像データは、制御回路7によりメモリ8に格納された後、後述するLCD駆動回路16へ出力される。
【0011】
操作部材18は、レリーズボタン、電源ボタン、モードダイヤル、ズームボタン、カメラ1の各種の機能を設定するための設定メニュー画面の表示切換スイッチ、設定メニュー決定ボタンなどを含む。LCD駆動回路16は制御回路7の制御信号に基づいて、液晶モニタ17を駆動し、液晶モニタ17に画像を表示する。
【0012】
ブレ検出センサ14は、たとえばジャイロなどの角速度センサによって構成され、撮影時にカメラ1に発生する振れをピッチングとヨーイングに分解して検出する。
図2に示すように、ブレ検出センサ14は、撮影レンズ2の光軸に直交する水平方向(
図2のX軸方向)に配置されたセンサ14Xと、撮影レンズ2の光軸に直交する鉛直方向(
図2のY軸方向)に配置されたセンサ14Yとを有する。センサ14X、14YはそれぞれX軸方向およびY軸方向の回転角速度を計測して、ピッチング値およびヨーイング値(以後、ブレ検出値)を示すブレ検出信号を制御回路7のブレ補正制御部71へ出力する。なお、センサ14X、14Yとはカメラ1の回転中心、すなわち重心近傍に配置されることが好ましい。
【0013】
ブレ補正装置15は、シフトレンズ151、アクチュエータ153、および位置検出センサ154を備える。シフトレンズ151は、アクチュエータ153による駆動力に応じて、たとえばボールベアリングなどにより撮像素子6の撮像面と平行な面内、すなわち光軸と交差(直交)する平面(移動平面)内で移動(変位)可能となるように設けられる。このシフトレンズ151は、移動平面内におけるシフトレンズ151の位置に応じて向心力が働くバネ等の部材により保持されている。シフトレンズ151の移動により、撮影レンズ2を通過した被写体光は、振れを打ち消す方向に屈折される。その結果、撮影者の手振れに伴うカメラ1本体の振れに起因して発生する光学像(被写体の像)のブレが補正される。
【0014】
アクチュエータ153は、たとえば、コイル、磁石、およびヨークを有するボイスコイルモータである。アクチュエータ153は、後述するように、制御回路7のブレ補正制御部71により印加される電圧に応じて駆動力を発生して、シフトレンズ151を移動させる。位置検出センサ154は、たとえば、発光部、受光部およびスリット部を備える光位置検出センサであり、シフトレンズ151の位置を検出して、位置検出信号としてブレ補正制御部71へ出力する。
【0015】
図3を用いて、ブレ補正装置15の構成について詳細に示す。
図3(a)はブレ補正装置15の平面図であり、
図3(b)はブレ補正装置15のA−A線断面図であり、
図3(c)はブレ補正装置15のB−B線断面図である。なお、
図3(a)では、図面の水平方向をX軸、垂直方向をY軸として示している。
【0016】
上述したように、シフトレンズ151は、撮影レンズ2の光軸と直交する面内をX軸方向およびY軸方向に移動することにより、被写体の像の像ブレを補正するブレ補正光学系であり、可動部材であるレンズホルダ151aにより保持される。レンズホルダ151aはリング形状に形成された板状部材であり、シフトレンズ151の外周からシフトレンズ151をXY平面内で移動可能に保持する。レンズホルダ151aは、弾性支持部材151bにより非可動部(すなわちカメラ1の筐体)151c、151dに取り付けられる。このため、レンズホルダ151aおよびシフトレンズ151は、カメラ1の筐体に対しほぼ非接触を維持したまま、XY平面上を自由に可動できる。
【0017】
アクチュエータ153は、X駆動用アクチュエータ153Xと、Y駆動用アクチュエータ153Yとを有する。X駆動用アクチュエータ153Xは、レンズホルダ151aをシフトレンズ151とともにX方向に駆動するための駆動力を発生する。Y駆動用アクチュエータ153Yは、レンズホルダ151aをシフトレンズ151とともにY方向に駆動するための駆動力を発生する。
【0018】
図3(b)に示すように、X駆動用アクチュエータ153Xは、コイル153a、マグネット153bおよびヨーク153cを有するボイスコイルモータである。コイル153aはレンズホルダ151aに設けられ、非可動部151cに設けられたマグネット153bと、非可動部151dに設けられたヨーク153cとにより挟まれている。なお、図示を省略しているが、Y駆動用アクチュエータ153Yについても、X駆動用アクチュエータ153Xと同様の構成を有している。
【0019】
位置検出センサ154は、X位置検出センサ154XとY位置検出センサ154Yとを有する。X位置検出センサ154Xは、シフトレンズ151のX軸方向への移動量を計測する光位置センサである。Y位置検出センサ154Yは、シフトレンズ151のY軸方向への移動量を計測する光位置センサである。
【0020】
図3(c)に示すように、X位置検出センサ154Xはレンズホルダ151aに設けられた発光部であるLED154aおよびスリット154bと、非可動部151dに設けられた受光部(光電変換素子)であるPSD(Position Sensitive Detector)154cを有する。
図3(c)において破線で示す、LED154aから発した光は、スリット154bを通過してPSD154c上にスリット光をつくる。PSD154cは、スリット光が形成された相対位置に比例した第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とを出力する。換言すると、第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とは、非可動部151dに対するレンズホルダ151aの相対位置を示している。なお、図示を省略しているが、Y位置検出センサ154Yについても、X位置検出センサ154Xと同様の構成を有している。
【0021】
図3(d)は、PSD154cに対するLED154aの相対位置と、第1位置検出信号I1および第2位置検出信号I2との関係を示す図である。
図3(d)に示すように、PSD154cに対するLED154aの相対位置がX軸方向の+側に移動するほど、第1位置検出信号I1の出力値は増加し、第2位置検出信号I2の出力値は減少する。また、PSD154cに対するLED154aの相対位置がX軸方向の−側に移動するほど、第1位置検出信号I1の出力値は減少し、第2位置検出信号I2の出力値は増加する。第1位置検出信号I1の出力値と第2位置検出信号I2の出力値はLED154aの相対位置によらず一定である。すなわち、PSD154cの受光面におけるスリット光の位置により、第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2との出力値の比が変化する。上述したようにして位置検出センサ154から出力された位置検出信号は、図示しないA/D変換回路等によりデジタル信号に変換されて制御回路7へ出力される。
【0022】
なお、
図3(a)に示すように、レンズホルダ151aには、固定孔155が設けられている。シフトレンズ151を駆動させない場合、たとえば電源OFFの場合は、固定孔155に非可動部151cまたは151dからピン等が挿入されることによって、レンズホルダ151aがXY平面上で固定される。
【0023】
次に、
図4を参照して、本実施の形態による制御回路7のブレ補正制御部71による処理について説明する。
図4に示すように、ブレ補正制御部71は、位置検出判定部711、位置演算部712、目標位置算出部713、レンズ位置算出部714、駆動ゲイン算出部715、データ保持部716およびデータ選択部717を機能的に備える。位置検出判定部711は、位置検出センサ154から出力された位置検出信号に検出誤差が含まれているか否かを判定する。なお、位置検出判定部711の詳細は説明を後述する。
【0024】
位置演算部712は、所定の制御周期Ts1ごとに位置検出センサ154から出力され、デジタル変換された位置検出信号を入力する。位置演算部712は、入力した位置検出信号を用いてシフトレンズ151の現在位置を算出する。上述したように、PSD154cの受光面に受光したLED154aからのスリット光の位置によって、第1位置検出信号と第2位置検出信号とはそれぞれの出力値の比が変化する。PSD154cの受光面の長さをLとした場合、位置演算部712は、従来からの技術と同様に、以下の式(1)などを用いてシフトレンズ151の現在位置を算出し、算出した現在位置を後述するデータ保持部716およびデータ選択部717へ出力する。
現在位置=L/2×(I1−I2)/(I1+I2) …(1)
【0025】
目標位置算出部713は、ブレ検出センサ14から入力したブレ検出値を、所定の制御周期Ts1ごとのタイミングで量子化した後、LPF演算を行って振れ量を算出する。振れ量が算出されると、目標位置算出部713は、算出した振れ量に基づいて、シフトレンズ151が光学像のブレを補正するための位置(目標位置)を算出する。シフトレンズ151の目標位置と現在位置が算出されると、レンズ位置算出部714は、目標位置と現在位置との差分に基づいて、ブレ補正のためのシフトレンズ151の移動量を算出する。駆動ゲイン算出部715は、レンズ位置算出部714により算出されたシフトレンズ151の移動量を用いて、アクチュエータ153を駆動するための駆動ゲインを算出して、制御信号としてアクチュエータ153へ出力する。
【0026】
データ保持部716はたとえば揮発性の記録媒体により構成され、位置検出判定部711による判定結果に応じて、位置演算部712により算出された現在位置を一時的に格納する。データ選択部717は、位置検出判定部711による判定結果に応じて、データ保持部716に格納された現在位置および位置演算部712により算出された現在位置の何れか一方をシフトレンズ151の現在位置として、上述したレンズ位置算出部714へ出力する。なお、データ保持部716およびデータ選択部717については詳細を後述する。
【0027】
位置検出判定部711は、所定の制御周期Ts1ごとに位置検出センサ154から出力され、デジタル変換された位置検出信号、すなわち第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とに検出誤差が含まれているか否かを判定する。位置検出判定部711は、第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とをそれぞれ微分して、算出した微分値の符号を比較することにより検出誤差の有無を判定する。
図3(d)を用いて上述したように、通常は第1位置検出信号I1の傾きと第2位置検出信号I2の傾きとは互いに逆、換言すると、第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とは互いに逆に増減する。すなわち、検出誤差が無い場合には、第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とをそれぞれ微分した値は互いに符号が異なる。したがって、位置検出判定部711は、算出した2つの微分値の符号が異なる場合(以後、非同相と呼ぶ)には検出誤差が発生していないと判定する。
【0028】
しかし、以下の(1)、(2)のような場合には、第1位置検出信号I1、第2位置検出信号I2の傾きが互いに逆にはならず、互いに同方向に増減するようになる。
(1)シフトレンズ151を駆動する際のアクチュエータ153の駆動にともなうノイズや各種のデジタル信号ノイズなどの回路上のノイズが第1位置検出信号I1、第2位置検出信号I2に混入した場合。
(2)LED154aがPDS154cの受光面の端部に位置することにより、LED154aからの発せられた全ての光がPSD154cに受光されず、光量が一定とならない場合。
【0029】
すなわち、検出誤差がある場合には、第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とをそれぞれ微分した値は互いに符号が同じとになる。したがって、位置検出判定部711は、算出した2つの微分値の符号が同じ場合(以後、同相と呼ぶ)には検出誤差が発生していると判定する。なお、位置検出判定部711は、LED154aからの光の光量を一定に制御することによる脈流やドリフト等の同位相の微小変化が常に生じることによる影響を除外して検出誤差を判定することができる。この場合、予め所定の閾値を設定し、算出した2つの微分値の絶対値が所定の閾値以内の場合には、位置検出判定部711は、微分値の符号が同相であっても検出誤差が発生していないと判定すればよい。この所定の閾値は、予め実験等によって脈流やドリフトによる影響を除外するために最適な値として設定され、図示しない記録領域に記録されているものとする。
【0030】
位置検出判定部711により非同相、すなわち検出誤差が無いと判定された場合には、データ保持部716およびデータ選択部717は以下の処理を行う。データ保持部716は、位置演算部712により算出された現在位置を入力して格納する。以前の制御周期の際に位置演算部712により算出された現在位置が既に格納されている場合には、データ保持部716は今回の制御周期で位置演算部712により算出されて入力した現在位置に置き換える。データ選択部717は、位置演算部712により算出された現在位置をレンズ位置算出部714へ出力する。
【0031】
位置検出判定部711により同相、すなわち検出誤差が発生していると判定された場合には、データ保持部716およびデータ選択部717は以下の処理を行う。データ保持部716は、位置演算部712により算出された現在位置を格納せず、以前の制御周期にて非同相と判定されたときに位置演算部712によって算出された現在位置の格納を継続する。データ選択部717は、データ保持部716に格納されている現在位置、すなわち以前の制御周期にて非同相と判定されたときに位置演算部712によって算出された現在位置を読み出す。そして、データ選択部717は、今回の制御周期で位置演算部712により算出された現在位置に代えて、データ保持部716から読み出した現在位置をレンズ位置算出部714へ出力する。
【0032】
なお、データ選択部717は、データ保持部716に格納されている現在位置を示す値そのものを用いるものに代えて、現在位置を示す信号の微分値と現在位置を示す値とを加算した値を、現在位置を示す値として用いてもよい。データ選択部717が、現在位置を示す信号の微分値と現在位置を示す値とを加算した値を、現在位置を示す値としてレンズ位置算出部714に出力することにより、シフトレンズ151の移動の変化量と移動方向とを加味したシフトレンズ151の移動量を算出できる。
【0033】
以上で説明した第1の実施の形態によるカメラ1によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)シフトレンズ151は、撮影レンズ2の光軸と交わる平面上で変位して、手振れに起因する被写体像の像ブレを補正する。位置検出センサ154のLED154aは、シフトレンズ151の変位による平面上での位置変化を検出するための検出光を発光する。位置検出センサ154のPSD154cは、検出光と交わる平面上にてLED154aに対して相対的に変位し、LED154aからの検出光を受光して、LED154aとの相対位置に応じた第1位置検出信号I1と、第2位置検出信号I2とを出力する。位置検出判定部711は、PSD154cより出力された第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とに検出誤差が発生しているか否かを判定する。そして、位置検出判定部711は、第1位置検出信号I1の変化量と第2位置検出信号I2の変化量とがシフトレンズ151の位置変化に応じて互いに増加または減少する同相の場合に検出誤差が発生していると判定するようにした。さらに、位置検出判定部711は、第1位置検出信号I1の変化量と第2位置検出信号I2の変化量とがシフトレンズ151の位置変化に応じて互いに逆に増減する非同相の場合に検出誤差が発生していないと判定するようにした。したがって、シフトレンズ151の位置検出精度の低下を防ぎ、ブレ補正装置15のブレ補正駆動の精度を維持することができる。
【0034】
(2)位置演算部712は、PSD154cから出力された第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とに基づいて、シフトレンズ151の現在位置を算出する。レンズ位置算出部714は、位置演算部712により算出された現在位置に基づいて、シフトレンズ151の移動量を算出することによりシフトレンズ151の駆動を制御する。PSD154cは、所定の制御周期Ts1ごとに第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とを出力する。位置検出判定部711は、PSD154cから制御周期Ts1ごとに出力された第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とを入力するごとに検出誤差の発生の有無を判定する。位置検出判定部711により検出誤差の発生が判定された場合には、駆動ゲイン算出部715は、以前の制御周期Ts1において検出誤差の発生が判定されていないときに位置演算部712によって算出された現在位置に基づいてシフトレンズ151の駆動を制御するようにした。したがって、位置検出信号に検出誤差が重畳しているか否かに関わらず、レンズ位置算出部714は、検出誤差が重畳していない位置検出信号を用いて算出された現在位置と、目標位置算出部713により算出された目標位置とを用いて、ブレ補正のためのシフトレンズ151の移動量を算出できる。すなわち、ブレ補正精度の低下を防止できる。
【0035】
−第2の実施の形態−
図面を参照して、本発明による第2の実施の形態について説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、位置検出センサから出力された位置検出信号に検出誤差が発生していると判定された場合には、アクチュエータの駆動ゲインを低下させる点で、第1の実施の形態と異なる。
【0036】
図5は、第2の実施の形態によるブレ補正制御部71の機能を説明するブロック図である。
図5に示すように、本実施の形態のブレ補正制御部71は、
図4に示す第1の実施の形態のブレ補正制御部71に含まれるデータ保持部716とデータ選択部717とを備えていない。このため、位置検出センサ154から出力された位置検出信号に検出誤差が生じている場合には、第2の実施の形態の位置演算部712によって算出される現在位置にも誤差が生じるので、レンズ位置算出部714で算出される移動量にも誤差が発生する。
【0037】
したがって、本実施の形態においては、位置検出判定部711により同相、すなわち検出誤差が有ることが判定された場合、駆動ゲイン算出部715は、レンズ位置算出部714から入力した移動量を用いて算出した駆動ゲインを下げる。この場合、レンズ位置算出部714は、移動量に基づいて算出した駆動ゲインに、所定の係数(<1)を乗じることにより値を補正してアクチュエータ153へ出力する。または、レンズ位置算出部714は、移動量に基づいて算出した駆動ゲインから、所定の値を減算することにより値を補正してアクチュエータ153へ出力する。上記の所定の係数や所定の値は、予め実験等により、検出誤差の発生による影響を除外するために最適な値として設定され、図示しない記録領域に記録されているものとする。
【0038】
以上で説明した第2の実施の形態のカメラ1によれば、第1の実施の形態のカメラ1で得られた作用効果(1)に加えて、以下の作用効果が得られる。
位置演算部712は、PSD154cから出力された第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とに基づいて、シフトレンズ151の現在位置を算出する。駆動ゲイン算出部715は、位置演算部712により算出された現在位置に基づいて、シフトレンズ151の駆動を制御する。アクチュエータ153は、駆動ゲイン算出部715により算出された駆動ゲインに応じてシフトレンズ151を駆動させる。そして、位置検出判定部711により検出誤差の発生が判定された場合には、駆動ゲイン算出部715は、アクチュエータ153の駆動周期を低く設定するようにした。したがって、上述した処理によりアクチュエータ153に入力される駆動ゲインが下げられるので、開ループゲインが下がり周波数特性も低域側に下がる。この結果、アクチュエータ153は不要な高周波ノイズに追従しにくくなる。
【0039】
−第3の実施の形態−
図面を参照して、本発明による第3の実施の形態について説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、位置検出センサから出力された位置検出信号に検出誤差が発生していると判定された場合には、ブレ検出センサから出力されるブレ検出信号の信号帯域を低域側に制限する点で、第1の実施の形態と異なる。
【0040】
図6は第3の実施の形態によるブレ補正制御部71の機能を説明するブロック図である。
図6に示すように、本実施の形態のブレ補正制御部71は、
図4に示す第1の実施の形態のブレ補正制御部71に含まれるデータ保持部716とデータ選択部717とを備えず、LPF718とデータ選択部719とを更に備えている。
【0041】
ブレ検出センサ14から出力されたブレ検出信号は、LPF718とデータ選択部719とに入力される。LPF718は、ブレ検出センサ14から入力したブレ検出信号の信号帯域を低域側に制限するローパスフィルタである。LPF718によりローパスフィルタ処理が施されたブレ検出信号は、データ選択部719へ出力される。
【0042】
データ選択部719は、位置検出判定部711による判定結果に応じて、ブレ検出センサ14からLPF718を介さずに入力されたブレ検出信号(ローパスフィルタ処理が施されていないブレ検出信号。以後、非LPFブレ検出信号とよぶ)およびLPF718によるローパスフィルタ処理が施されたブレ検出信号(以後、LPFブレ検出信号と呼ぶ)の何れか一方を目標位置算出部713へ出力する。
【0043】
位置検出判定部711により非同相、すなわち検出誤差が無いと判定された場合には、データ選択部719は、入力したブレ検出信号のうち非LPFブレ検出信号を目標位置算出部713へ出力する。位置検出判定部711により同相、すなわち検出誤差が発生している判定された場合には、データ選択部719は、入力したブレ検出信号のうちLPFブレ検出信号を目標位置算出部713へ出力する。
【0044】
以上で説明した第3の実施の形態によると、第1の実施の形態のカメラ1で得られた作用効果(1)に加えて、以下の作用効果が得られる。
ブレ検出センサ14は、手振れを検出し、検出した手振れの量を示すブレ検出信号を出力する。位置演算部712は、PSD154cから出力された第1位置検出信号I1と第2位置検出信号I2とに基づいて、シフトレンズ151の現在位置を算出する。駆動ゲイン算出部715は、ブレ検出センサ14により出力されたブレ検出信号と、位置演算部712により算出された現在位置とに基づいて、シフトレンズ151の駆動を制御する。そして、位置検出判定部711により検出誤差の発生が判定された場合には、データ選択部791は、ブレ検出センサ14から出力されたブレ検出信号の周波数特性を低域側に切り換えるようにした。したがって、高周波の駆動ノイズや振動がブレ検出センサ14に伝搬されることによって検出誤差が重畳したブレ検出信号が、目標位置算出部713へ入力されて移動量の算出に用いられるということを防ぐことができる。すなわち、移動量の算出の精度低下を防げるので、ブレ補正の精度を維持できる。
【0045】
以上で説明した第3の実施の形態のカメラ1を、次のように変形できる。
データ選択部719は、位置検出判定部711によって同相または非同相が判定されるごとに、LFPブレ検出信号と非LPFブレ検出信号とを切り換えて出力するものに代えて、公知の技術を用いて、位置検出判定部711による同相判定の頻度に応じて非LPFブレ検出信号に切り換え出力してもよい。この結果、レンズ位置算出部714による算出に用いられるブレ検出信号の周波数特性が頻繁に瞬間的に切り換わることを防ぐことができる。
さらに、公知の技術を用いて、位置検出判定部711による同相判定の頻度に応じてLPF718のフィルタ係数が所定の割合で徐々に変更可能となるように構成されてもよい。
【0046】
第1〜第3の実施の形態のカメラ1を、次のように変形してもよい。
(1)第1〜第3の実施の形態において、シフトレンズ151を駆動させるものに代えて、撮像素子6を駆動させて撮影レンズ2および撮像素子6における被写体光の光軸と直交する方向の相対位置を変更させて、像ブレを補正するものでもよい。
(2)カメラを例として説明したが、望遠鏡等の光学装置にも適用することができる。
【0047】
また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。説明に用いた実施の形態および変形例は、それぞれを適宜組合わせて構成しても構わない。