(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
切断対象となるケーブルを保持可能なケーブル保持体と、該ケーブル保持体に連結され、前記ケーブルの周辺に配置された設置物に対して固定可能な支持具本体とを備えたケーブル支持具において、前記ケーブル保持体は、ケーブルを保持可能な保持部と、該保持部におけるケーブルの保持中心線に対して直交する方向に延びる第一軸線の軸線方向で前記保持部に並列状態で連結されたベースと、第一軸線と直交する方向に延びる第二軸線の軸線方向で前記ベースに並列状態で連結されるとともに、前記支持具本体に連結された連結部材とを備え、前記保持部及びベースが第一軸線周りで相対回転可能に構成され、前記ベース及び連結部材が第二軸線周りで相対回転可能に構成され、前記連結部材及び支持具本体が第二軸線と直交する方向に延びる第三軸線周りで相対回転可能に構成され、前記保持部、ベース、連結部材、及び支持具本体が任意又は所定の回転位置で位置決め可能に構成され、前記保持部は、ベースに連結され、前記第一軸線周りで回転可能に構成された保持部本体と、接離可能に構成され、前記ケーブルを挟持するための一対の挟持片と、一方の挟持片を他方の挟持片に向けて付勢する付勢手段と、前記一方の挟持片を付勢されている方向とは逆の方向に移動させることができる引張手段とを備え、前記引張手段と一方の挟持片とが連設され、他方の挟持片が保持部本体に固定されていることを特徴とするケーブル支持具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、作業者が各種作業を行うに際し、切断したケーブルが作業の妨げになる位置にある場合、切断したケーブルを作業の妨げとならない姿勢にする(位置変更する)必要がある。
【0007】
しかしながら、前記ケーブル支持具は、上述のように、ケーブル保持体と支持具本体とが第一軸及び第二軸の二軸線周りでしか相対回転できないため、ケーブル保持体の可動範囲に限りがあり、切断したケーブルを作業の妨げとならない姿勢にすることができない場合があった。
【0008】
また、前記ケーブル支持具は、ケーブル保持体及び支持具本体が第一軸及び第二軸を回転中心にして相対回転自在になっているため、ケーブルを邪魔にならない位置に移動させてもケーブルをその位置で維持させることができないことがある。すなわち、支持具本体を周辺にある設置物に取り付けた状態でケーブル保持体に保持させたケーブルの姿勢を変更したときに、切断されたケーブルの荷重やケーブルの湾曲に伴う弾性力が作用するため、該ケーブルを保持したケーブル保持体が第一軸線周り及び第二軸線周りで回転してしまい、切断したケーブルを作業の妨げとならない姿勢で維持させることができないといった問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、切断したケーブルを作業の妨げとならない姿勢にすることができ、該ケーブルを変更後の姿勢で確実に支持することのできるケーブル支持具、及びケーブルの支持方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るケーブル支持具は、切断対象となるケーブルを保持可能なケーブル保持体と、該ケーブル保持体に連結され、前記ケーブルの周辺に配置された設置物に対して固定可能な支持具本体とを備えたケーブル支持具において、前記ケーブル保持体は、ケーブルを保持可能な保持部と、該保持部におけるケーブルの保持中心線に対して直交する方向に延びる第一軸線の軸線方向で前記保持部に並列状態で連結されたベースと、第一軸線と直交する方向に延びる第二軸線の軸線方向で前記ベースに並列状態で連結されるとともに、前記支持具本体に連結された連結部材とを備え、前記保持部及びベースが第一軸線周りで相対回転可能に構成され、前記ベース及び連結部材が第二軸線周りで相対回転可能に構成され、前記連結部材及び支持具本体が第二軸線と直交する方向に延びる第三軸線周りで相対回転可能に構成され、前記保持部、ベース、連結部材、及び支持具本体が任意又は所定の回転位置で位置決め可能に構成され、
前記保持部は、ベースに連結され、前記第一軸線周りで回転可能に構成された保持部本体と、接離可能に構成され、前記ケーブルを挟持するための一対の挟持片と、一方の挟持片を他方の挟持片に向けて付勢する付勢手段と、前記一方の挟持片を付勢されている方向とは逆の方向に移動させることができる引張手段とを備え、前記引張手段と一方の挟持片とが連設され、他方の挟持片が保持部本体に固定されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成のケーブル支持具によれば、前記保持部及びベースが第一軸線周りで相対回転可能に構成され、前記連結部材及びベースが第二軸線周りで相対回転可能に構成され、連結部材及び支持具本体が第三軸線周りで相対回転可能に構成されているため、保持部が異なる三軸を回転中心にして回転することができ、保持部の可動範囲が広くなる。これにより、保持部が保持したケーブルの移動範囲(姿勢変更できる範囲)が広範囲になるため、切断したケーブルを作業の妨げとならない姿勢にすることができる。
【0012】
また、上記構成のケーブル支持具は、前記保持部、ベース、連結部材、及び支持具本体が任意又は所定の回転位置で位置決め可能に構成されているため、前記保持部、ベース、連結部材、及び支持具本体を回転後の回転位置に維持させることができる。これにより、保持部が保持したケーブルを作業の妨げとならない姿勢で維持させることができる。
【0013】
従って、上記構成のケーブル支持具は、ケーブルの周辺に配置された設置物に対して支持具本体を固定し、保持部にケーブルを保持させた上でケーブルを移動させる(姿勢変更させる)ことで、ケーブルを作業の妨げとならない姿勢で支持することができる。
【0015】
さらに、上記構成のケーブル支持具によれば、常態において付勢手段の付勢で一対の挟持体が互いに接近した状態になる。そして、該ケーブル支持具は、付勢手段の付勢力に対する対抗力を作用させて一対の挟持体を離間させ、一方の挟持片と他方の挟持片との間にケーブルを配置した上で前記対抗力を排除すると、付勢手段の付勢で一対の挟持体が互いに接近してケーブルを挟持することになる。また、該ケーブル支持具は、付勢手段の付勢力に対する対抗力を作用させてケーブルを挟持した一対の挟持体を離間させることで、ケーブルを挟持した状態が解除される。
【0016】
さらに、上記構成のケーブル支持具によれば、引張手段を引き操作すると、付勢手段の付勢力に対する対抗力(引っ張り力)が作用して一対の挟持体が離間し、引張手段に対する引き操作を解除すると、付勢手段の付勢力で一対の挟持体が相対的に接近する。従って、引張手段に対する引き操作とその解除で、ケーブルを挟持したり、ケーブルの挟持を解除したりすることができる。
【0017】
また、本発明に係るケーブルの支持方法は、上
記のケーブル支持具を用いて切断対象となるケーブルを支持するケーブル支持方法において、切断対象とされるケーブルの周辺に配置された設置物に対して支持具本体を取り付ける支持具固定工程と、ケーブルを保持部に保持させるケーブル保持工程と、保持部に保持されたケーブルの配置を変更する配置変更工程と、支持具固定工程及びケーブル保持工程の後に、切断対象とされるケーブルを当該ケーブルに対する保持部の保持位置よりも上流側で切断する切断工程とを備えていることを特徴とする。
【0018】
上記のケーブルの支持方法によれば、支持具固定工程及びケーブル保持工程の後に、切断対象とされるケーブルを当該ケーブルに対する保持部の保持位置よりも上流側で切断する切断工程を備えているため、切断対象とされるケーブルが切断される前に、当該ケーブルがケーブル支持具を介して周辺にある設置物に間接的に支持された状態になり、切断工程でケーブルを切断しても保持部によるケーブルの保持位置の上流側又は下流側にあるケーブル(保持部に保持されたケーブル)が落下してしまうことを確実に防止することができる。
【0019】
さらに、上記のケーブルの支持方法は、保持部に保持されたケーブルの配置を変更する配置変更工程を備えているため、各種作業を行うときに作業の妨げにならない位置でケーブルを配置することができる。
【0020】
すなわち、上記何れかのケーブル支持具は、上述の如く、切断したケーブルを作業の妨げとならない姿勢にすることができる上に、前記保持部、ベース、連結部材、及び支持具本体を回転後の回転位置で維持させることができるため、切断工程の前又は後に配置変更工程を行うことで、各種作業を行うときに作業の妨げにならない位置で切断後のケーブルを支持することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明のケーブル支持具によれば、切断したケーブルを作業の妨げとならない姿勢にすることができ、該ケーブルを変更後の姿勢で確実に支持することができるという優れた効果を奏し得る。
【0022】
また、本発明のケーブルの支持方法によれば、上記ケーブル支持具を用いるため、切断したケーブルを作業の妨げとならない姿勢にすることができ、該ケーブルを変更後の姿勢で確実に支持することができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るケーブル支持具について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において、送電用の高圧送電線(架線)から分岐されて電柱又は鉄塔に取り付けられたトランス(変圧器)に接続された高圧引下線(ケーブル)を切断し、その切断位置よりも下流側を停電状態にして各種作業(例えば、トランスや該トランスの前段にあるカットアウトの交換や点検等の作業)を行うべく、切断対象となる高圧引下線を支持することを一例に説明することとする。
【0025】
本実施形態に係るケーブル支持具は、
図1に示すように、切断対象となる高圧引下線CL1を保持可能なケーブル保持体2と、該ケーブル保持体2に連結され、前記高圧引下線CL1の周辺に配置された設置物(本実施形態においては、高圧引下線CL1が分岐された高圧送電線CL2)に対して固定可能な支持具本体3とを備えている。
【0026】
そして、前記ケーブル保持体2は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、該保持部20における高圧引下線C1の保持中心線CLに対して直交する方向に延びる第一軸線A1の軸線方向で前記保持部20に並列状態で連結されたベース21と、第一軸線A1と直交する方向に延びる第二軸線A2の軸線方向で前記ベース21に並列状態で連結されるとともに、前記支持具本体3に連結された連結部材22とを備えている。
【0027】
さらに、前記ケーブル保持体2は、前記保持部20及びベース21が第一軸線A1周りで相対回転可能に構成され、前記ベース21及び連結部材22が第二軸線A2周りで相対回転可能に構成され、前記連結部材22及び支持具本体3が第二軸線A2と直交する方向に延びる第三軸線A3周りで相対回転可能に構成されている。
【0028】
すなわち、本実施形態に係るケーブル保持体2は、
図3(a)及び
図3(b)に示す如く、保持部20とベース21とが第一軸40によって第一軸線A1周りで相対回転可能に連結され、ベース21と連結部材22とが第二軸41によって第二軸線A2周りで相対回転可能に連結され、連結部材22と支持具本体3とが第三軸42によって第三軸線A3周りで相対回転可能に連結されている。
【0029】
そして、ケーブル保持体2は、前記保持部20、ベース21、連結部材22、及び支持具本体3が任意又は所定の回転位置で位置決め可能に構成されている。本実施形態に係るケーブル支持具1は、前記保持部20、ベース21、連結部材22、及び支持具本体3が所定の回転位置で位置決め可能に構成されている。
【0030】
すなわち、本実施形態に係るケーブル保持体2は、前記保持部20及びベース21を相対回転させて所定ピッチ毎に位置決め可能な第一位置決め手段50(
図3(a))と、ベース21及び連結部材22を相対回転させて所定ピッチ毎に位置決め可能な第二位置決め手段51(
図3(a))と、連結部材22及び支持具本体3を相対回転させて所定ピッチ毎に位置決め可能な第三位置決め手段52(
図3(b))とを備えている。
【0031】
前記保持部20は、
図3(a)に示す如く、ベース21に対して第一軸線A1周りで回転可能に連結された保持部本体200と、該保持部本体200に支持されて前記第一軸線A1の軸線方向と直交する方向で接離可能に設けられた一対の挟持片201a,201bと、何れか一方の挟持片201aを何れか他方の挟持片201bに向けて付勢する付勢手段201とを備えている。また、前記保持部20は、一対の挟持片201a,201bの少なくとも何れか一方の挟持片201aを相手方の挟持片201bから離間する方向に引き操作可能な引張手段203が連設されている。
【0032】
ここで、保持部20の各構成について具体的に接続すると、前記保持部本体200は、互いに間隔をあけて対峙する一対の対向片部200a,200bと、該一対の対向片部200a,200bを接続する対向片接続部200cとを備えている。本実施形態に係る保持部本体200は、一対の対向片部200a,200bと対向片接続部200cとが一体的に形成されている。一方の対向片部200aには、前記引張手段203(後述する芯体203a)を挿通するための挿通孔204が穿設されている。そして、対向片接続部200cには、前記第一軸40を挿通するための軸受け孔205が穿設されている。
【0033】
前記軸受け孔205は、対向片接続部200cを貫通した貫通孔であり、対向片接続部200cの表面側に第一軸40と略同径で穿設された第一孔205aと、該第一孔205aに連続し、第一孔205aよりも大径な第二孔205bとで構成されている。
【0034】
また、本実施形態に係る保持部20は、対向片接続部200cの表面(ベース21と対向する面)に第一位置決め手段50の一構成である縦孔500が軸受け孔205の周りに設けられている。該縦孔500は、少なくとも一つあればよいが、本実施形態においては、二つ設けられている。該二つの縦孔500は、軸受け孔205の孔中心を中心とするピッチサークル(仮想円)上で等間隔になるように配置されている。
【0035】
一対の挟持片201a,201bは、保持部本体200の一対の対向片部200a,200b間に第一軸線A1と直交する方向で並列配置されている。各挟持片201a,201bは、互いに対向する面に高圧引下線C1が嵌まり込む凹部(採番しない)が形成されている。該凹部は、第一軸線A1と直交する方向に延びるように形成されている。すなわち、一対の挟持片201a,201bは、高圧引下線C1が第一軸線A1と直交する方向に延びるように該高圧引下線C1を挟持(保持)できるように形成されている。
【0036】
そして、本実施形態に係る保持部20は、一方の挟持片201aが第一軸線A1の軸線方向と直交する方向で移動可能に設けられる一方で、他方の挟持片201bが保持部本体200に固定されている。すなわち、他方の挟持片201bが他方の対向片部200bに固定されている。
【0037】
本実施形態において、一方の挟持片201aが第一軸線A1の軸線方向と直交する方向で移動可能に設けられているため、前記引張手段203は、移動可能な一方の挟持片201aに連設されている。より具体的に説明すると、前記引張手段203は、棒状に形成された芯体203aと、該芯体203aの一端部に取付けられた掛止体203bとを備えている。前記芯体203aは、一方の対向片部200aの挿通孔204に挿通され、一対の対向片部200a,200b間にある他端部が一方の挟持片201aに連結され、一方の対向片部200aの外側にある一端部に掛止体203bが取り付けられている。本実施形態に係る掛止体203bは環状に形成されており、高圧送電線(以下、送電線とする)C2等に対する作業に用いられる間接活線工具(例えば、絶縁ヤットコやバインド打ち器)を引っ掛けることができるようになっている。このように、本実施形態に係るケーブル支持具1は、引張手段203が移動可能な挟持片201aに連設されているため、前記掛止体203bに対する引き操作で一対の挟持片201aを接触させたり、離間させたりすることができるようになっている。
【0038】
前記付勢手段202は、螺旋状に形成されたバネが採用されており、一方の挟持片201aと一方の対向片部200aとの間に位置した状態で、かつ芯体203aが挿通されている。これにより、前記付勢手段202は、一方の挟持片201aを他方の挟持片201bに常に付勢できるように構成されている。本実施形態においては、上述の如く、他方の挟持片201bが他方の対向片部200bに固定されているため、付勢手段202は、一方の挟持片201aを他方の挟持片201bに向けて付勢するように設けられている。
【0039】
そして、前記ベース21は、ベース本体210と、ベース本体210の一端に連設された掛止部212とを備えている。また、本実施形態に係るベース21は、ベース本体210の外周面上に第一軸40が突設されている。掛止部212は、ベース本体210の一端に連結された基部212aと、該基部212aに連設された環状のフック部212bとを備えており、フック部212bに間接活線工具(例えば、絶縁ヤットコやバインド打ち器)を引っ掛けることができるようになっている。
【0040】
本実施形態に係るベース21は、前記第二軸41を挿通するための軸孔211がベース本体210と掛止部212の基部212aに跨るように穿設されている。なお、掛止部212の基部212aには、軸孔211と同心で連通する座繰り(大径の孔部)213aが設けられている。
【0041】
前記ベース本体210は、外周面の一部に軸孔211の中心線(第二軸線A2)と平行又は略平行な平坦部(採番しない)が形成されており、前記第一軸40は、平坦部と直角をなすように該平坦部に突設されている。
【0042】
また、該ベース21は、平坦部上に第一位置決め手段50の一構成である凹部501が設けられている。本実施形態において、前記凹部501は、保持部20とベース21とを位置決めする回転位置の数に対応して複数設けられている。該複数の凹部501は、第一軸40の軸中心(第一軸線A1)を中心とするピッチサークル(仮想円)上で等間隔になるように配置されている。なお、各凹部501は、後述するボール部材502の半分(半球)に対応して半球状に形成されている。
【0043】
また、該ベース21は、他端面上に第二位置決め手段51の一構成である凹部511が設けられている。本実施形態において、前記凹部511は、ベース21と連結部材22を位置決めする回転位置の数に対応して複数設けられている。該複数の凹部511は、軸孔211の穴中心(第二軸41の軸中心(第二軸線A2))を中心とするピッチサークル(仮想円)上で等間隔になるように配置されている。なお、各凹部511は、第二位置決め手段51の後述するボール部材512の半分(半球)に対応して半球状に形成されている。
【0044】
そして、前記第一軸40は、保持部本体200(対向片接続部200c)の軸受け孔205に挿通され、軸受け孔205の第二孔205b内で先端部に抜止用のナット401が螺合されている。これにより、保持部20(保持部本体200)とベース21とが第一軸線A1周りで相対回転可能になっている。
【0045】
前記第一位置決め手段50は、前記保持部20(保持部本体200)の外面上に設けられた前記縦孔500と、ベース21の外面上に設けられた凹部501と、該縦孔500と凹部501とに跨って配置されるボール部材502と、縦孔500に配置され、ボール部材502を凹部501側に付勢する付勢手段503とを備えている。すなわち、第一位置決め手段50は、保持部20とベース21とに跨って構成されており、保持部20とベース21とが回転自在に連結される(軸受け孔205に挿通された第一軸40に抜止用のナット401が螺合される)ことで、各ボール部材502が凹部501と縦孔500とに跨って配置されるようになっている。このように第一位置決め手段50は、ボール部材502が凹部501と縦孔500とに跨って配置されることで、保持部20とベース21とを所定の回転位置で位置決めし、保持部20及びベース21に対する逆向きの回転力(必要量の回転力)の付与でボール部材502が縦孔500に押し込まれることで、保持部20及びベース21の第一軸線A1周りの相対回転を許容するようになっている。
【0046】
連結部材22は、ベース21(ベース本体210)の他端に隣接するように配置される連結部材本体220と、該連結部材本体220に突設された軸支部221とを備えている。
【0047】
本実施形態に係る連結部材22は、前記連結部材本体220のベース21と対向する面(以下、接続面という)が平面状に形成され、該接続面に第二軸41が直角をなすように延設されている。連結部材本体220の接続面には、第二位置決め手段51の一構成である縦孔510が第二軸41の周りに設けられている。該縦孔510は、少なくとも一つあればよいが、本実施形態においては、二つ設けられている。該二つの縦孔510は、第二軸41の軸中心(第二軸線A2)を中心とするピッチサークル(仮想円)上で等間隔になるように配置されている。
【0048】
前記軸支部221は、
図3(a)に示す如く、第三軸42を挿通する軸孔222が第二軸41(第二軸線A2)と直交する方向に穿設されている。すなわち、前記軸支部221は、第二軸41(第二軸線A2)と直交する方向の両面で開口を形成するように第三軸42を挿通する軸孔222が形成されている。そして、該軸支部221は、
図3(b)に示す如く、第二軸41(第二軸線A2)と直交する方向の両面のうちの一方の面には、第三位置決め手段52の一構成である縦孔520が軸孔222(第三軸線A3)周りに設けられている。該縦孔520は、少なくとも一つあればよいが、本実施形態においては、二つ設けられている。該二つの縦孔520は、軸孔222の穴中心(第三軸線A3)を中心とするピッチサークル(仮想円)上で等間隔になるように配置されている。
【0049】
そして、第二軸41は、前記ベース21の軸孔211に挿通されて先端部が抜止されている。すなわち、第二軸41は、前記ベース21の軸孔211に挿通され、先端部が掛止部212(基部212a)の座繰り213a内に配置されたナット213bに螺合されて抜け止めされている。これにより、ベース21及び連結部材22は、第二軸41の中心線を軸心(第二軸線A2)として相対回転可能に構成されている。なお、本実施形態に係るケーブル支持具1は、ベース21に掛止部212が設けられているため、掛止部212(フック部)に間接活線工具(例えば、ヤットコやバインド打ち器)を引っ掛けて回転操作することで、ベース21及び連結部材22を相対回転させることができるようになっている。
【0050】
さらに、前記第二位置決め手段51は、前記連結部材22に設けられた縦孔510と、前記ベース21に設けられた前記凹部511と、該縦孔510と凹部511とに跨って配置されるボール部材512と、縦孔510に配置され、ボール部材512を凹部511側に付勢する付勢手段513とを備えている。
【0051】
すなわち、第二位置決め手段51は、ベース21と連結部材22とに跨って構成されており、ベース21と連結部材22とが回転自在に連結される(軸孔211に挿通された第二軸41に抜止用のナット213bが螺合される)ことで、各ボール部材512が凹部511と縦孔510とに跨って配置されるようになっている。このように第二位置決め手段51は、ボール部材512が凹部511と縦孔510とに跨って配置されることで、ベース21と連結部材22とを所定の回転位置で位置決めし、ベース21及び連結部材22に対する逆向きの回転力(必要量の回転力)の付与でボール部材512が縦孔510に押し込まれることで、ベース21及び連結部材22の第二軸線A2周りの相対回転を許容するようになっている。
【0052】
図1に戻り、前記支持具本体3は、ケーブル保持体2に連結される取付部61と、該取付部61に延設された延長部材6と、該延長部材6の先端に取り付けられた固定手段30とを備えている。
【0053】
前記取付部61は、
図2(b)及び
図3(b)に示す如く、対向配置された一対の対向部62a,62bと、該一対の対向部62a,62bの一端同士を連結する連結部63とを備えている。一対の対向部62a,62bは、前記軸支部221を介装可能な間隔をあけて配置されている。そして、一対の対向部62a,62bは、それぞれ第三軸42を挿通するための貫通孔64が同心で穿設されている。すなわち、一対の対向部62a,62bは、軸支部221の軸孔222と連通する貫通孔64が穿設されている。そして、一対の対向部62a,62bのうちの一方の対向部62aは、相手方の対向部62bとの対向面上に第三位置決め手段52の一構成である凹部521が設けられている。本実施形態において、前記凹部521は、連結部材22と支持具本体3とを位置決めする回転位置の数に対応して複数設けられている。該複数の凹部521は、軸孔222の穴中心(第三軸42の軸中心(第三軸線A3))を中心とするピッチサークル(仮想円)上で等間隔になるように配置されている。なお、各凹部521は、第三位置決め手段52の後述するボール部材522の半分(半球)に対応して半球状に形成されている。
【0054】
そして一対の対向部間に連結部材22の軸支部221が介挿された状態で、該軸支部221の軸孔222及び対向部の貫通孔に第三軸42が挿入され、該第三軸42の両端部が抜け止めされている。これにより、連結部材22と支持具本体3とが第三軸線A3周りで相対回転可能になっている。
【0055】
また、前記第三位置決め手段52は、取付部61に設けられた縦孔520と、連結部材22に設けられた凹部521と、該縦孔520及び凹部521とに跨って配置されるボール部材522と、縦孔520に配置され、ボール部材522を凹部521側に付勢する付勢手段523とを備えている。
【0056】
すなわち、第三位置決め手段52は、連結部材22と支持具本体3とに跨って構成されており、連結部材22と支持具本体3とが回転自在に連結される(支持部の軸孔及び対向部の貫通孔に挿入された第三軸42が抜け止めされる)ことで、各ボール部材522が凹部521と縦孔520とに跨って配置されるようになっている。このように第三位置決め手段52は、ボール部材522が凹部521と縦孔520とに跨って配置されることで、連結部材22と支持具本体3とを所定の回転位置で位置決めし、連結部材22及び支持具本体3に対する逆向きの回転力(必要量の回転力)の付与でボール部材522が縦孔520に押し込まれることで、連結部材22及び支持具本体3の第三軸線A3周りの相対回転を許容するようになっている。
【0057】
前記延長部材6は、所定長さの棒状をなし、全体的に電気絶縁性の素材で形成されている。該延長部材6は、固定長のものや、伸縮可能に構成されているものを採用できるが、本実施形態では、固定長のものを採用している。
【0058】
本実施形態に係る固定手段30は、延長部材6が連結される固定部材本体300と、固定部材本体300に連設された架線掛止部300aと、該架線掛止部300aに対峙し、固定部材本体300に連設された支持部300bと、該架線掛止部300aと協働して架線を挟持可能な押圧手段31とを備えている。
【0059】
前記押圧手段31は、架線掛止部300aと接離可能に構成された押圧部310と、該押圧部310に一端が連設された雄螺子体311と、該雄螺子体311の他端に取付けられた掴み部312とを備えている。そして、前記押圧手段31は、雄螺子体311が前記支持部300bに螺合されている。これにより、前記押圧手段31は、掴み部312を絶縁ヤットコ等で掴んで回転させることによって、架線掛止部300aと押圧部310とが接触した状態又は、架線掛止部300aと押圧部310とが離間した状態にすることができる。
【0060】
次に、本実施形態に係るケーブル支持具1を用いた高圧引下線C1の支持方法について説明する。
【0061】
本実施形態に係る高圧引下線C1の支持方法は、送電線C2(架線)や、送電線C2を支持する腕金、腕金を支持する電柱、腕金に支持される変圧器等の高圧引下線C1の周辺に配置された設置物(高圧送電線C2)に支持具本体3を固定する支持具固定工程と、送電線C2から分岐されて変圧器などの機器に引き込まれた高圧引下線C1をケーブル保持体2に保持させるケーブル保持工程と、ケーブル保持体2に保持させた高圧引下線C1の位置を作業に適した配置に変更する配置変更工程と、前記高圧引下線C1を切断する切断工程とを備えている。
【0062】
具体的に説明すると、前記支持具固定工程では、架線掛止部300aと押圧部310とを離間した状態で架線に架線掛止部300aを引っ掛けた状態にする。そして、間接活線工具(絶縁ヤットコや、バインド打ち器等)で掴み部312を回転させ、押圧部310を架線掛止部300aの方向へ移動させることで、該押圧部310と架線掛止部300aとで送電線C2を挟み込み、送電線C2に固定手段30を固定する。
【0063】
そして、ケーブル保持工程では、掛止体203bを間接活線工具で引き操作し、一方の挟持片201aを他方の挟持片201bから離間した状態にする。この状態で、挟持片201a,201bの間に高圧引下線C1を介在させ、引き操作を解除する。そうすると、付勢手段202の付勢力によって、一方の挟持片201aが他方の挟持片201bに向けて移動する。これにより、保持部20が高圧引下線C1を保持することができる。
【0064】
前記切断工程では、作業位置に適した姿勢に変更された高圧引下線C1を作業者が切断する。本実施形態では、高圧引下線C1の保持部20が保持している部分よりも上流側を切断する。これにより、切断された高圧引下線C1は、上流側が送電線C2に支持され、下流側が、ケーブル保持体2によって送電線C2に間接的に支持された状態になる。
【0065】
そして、配置変更工程では、保持部20を第一軸A1周りで回転させたり、ベース21を第二軸A2周りで回転させたり、ベース21を第三軸線A3周りで回転させたりすることによって切断対象となるケーブルを保持した保持部20の作業に適した位置に適宜変更する。
【0066】
具体的に説明すると、保持部20の第一軸A1周りでの回転位置を決定する場合、作業者は、間接活線工具で掛止体203bを引っ掛けて、第一軸A1周りに働く回転力を加える。そうすると、第一位置決め手段50のボール部材502が嵌合している凹部501の内面に押されて付勢手段503による付勢力に対する効力が働く。
【0067】
そして、保持部20に対して第一軸A1周りに働く回転力が必要量以上の強さになると、ボール部材502は、付勢手段503を押し下げながら縦孔500に押し込まれ、保持部20が第一軸A1周りで回転する。保持部20が回転を続けてボール部材502が入り込んだ縦孔500と別の凹部501とが対向した状態になると、ボール部材502が付勢手段503によって凹部501に押し当てられ、再び縦孔500と凹部501とに跨った状態(保持部20が固定された状態)になる。上記の一連の動作を繰り返すことによって
図4(a)及び
図4(b)に示す如く、保持部20の第一軸A1周りでの回転位置が決定される。
【0068】
そして、ベース21の第二軸A2周りでの回転位置を決定する場合、作業者は、間接活線工具で掛止部212を引っ掛けて、第二軸A2周りに働く回転力を加える。そうすると、第二位置決め手段52のボール部材512が嵌合している凹部511の内面に押されて付勢手段513による付勢力に対する効力が働く。
【0069】
そして、掛止部212に加えている第二軸A2周りの方向に働く回転力が必要量以上の強さになると、ボール部材512は、付勢手段513を押し下げながら縦孔510に押し込まれ、ベース21が第二軸A2周りで回転する。ベース21が回転を続けてボール部材512が入り込んだ縦孔510と別の凹部511とが対向した状態になると、ボール部材512が付勢手段513によって凹部511に押し当てられ、再び縦孔510と凹部511とに跨った状態(ベース21が固定された状態)になる。上記の一連の動作を繰り返すことによって
図5(a)及び
図5(b)に示す如く、ベース21の第二軸線A2周りでの回転位置が決定される。
【0070】
さらに、連結部材22の第三軸A3周りでの回転位置を決定する場合、作業者は、間接活線工具で掛止部212を引っ掛けて、第三軸A3周りに働く回転力を加える。そうすると、第三位置決め手段52のボール部材522が嵌合している凹部521の内面に押されて付勢手段523による付勢力に対する効力が働く。
【0071】
そして、掛止部212に加えている第三軸A3周りの方向に働く回転力が必要量以上の強さになると、ボール部材522は、付勢手段523を押し下げながら縦孔520に押し込まれ、連結部材22が第三軸A3周りで回転する。連結部材22が回転を続けてボール部材522が入り込んだ縦孔520と別の凹部521とが対向した状態になると、ボール部材522が付勢手段523によって凹部521に押し当てられ、再び縦孔520と凹部521とに跨った状態(連結部材22が固定された状態)になる。上記の一連の動作を繰り返すことによって、
図6(a)及び
図6(b)に示す如く、連結部材22の第三軸A3周りでの回転位置が決定される。
【0072】
以上のように、作業者は、上記の動作を適宜繰り返して行うことによって、前記保持部20、ベース21、連結部材22、及び支持具本体3が所定の回転位置を決定する。これにより、切断対象となる(切断された)高圧引下線C1を保持した保持部20は、作業に適した位置に配置変更される。これに伴い、切断対象となる高圧引下線C1は、作業に適した姿勢に変更される。
【0073】
以上のように、本実施形態に係るケーブル支持具1及び高圧引下線C1の支持方法によれば、保持部20及びベース21及び連結部材22を回転させて位置を変更した状態を維持することができるため、高圧引下線C1を作業に適した位置に移動させた状態で支持することができるという優れた効果を奏し得る。
【0074】
また、本実施形態に係るケーブル支持具1及び高圧引下線C1の支持方法によれば、切断された高圧引下線C1は、切断箇所よりも上流側が送電線C2に支持され、切断箇所よりも下流側がケーブル支持具1によって送電線C2に間接的に支持された状態になっているため、落下することを防ぐことができる。
【0075】
尚、本発明のケーブル支持具及び高圧引下線C1の支持方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を行うことは勿論である。
【0076】
上記実施形態において間接活線工具で掛止体203bが引っ掛けられ、第一軸A1周りの回転力を加えて保持部20を回転させていたが、これに限定されるものではなく、例えば、挟持片201b等を間接活線工具(ヤットコ)で掴み、第一軸A1周りの回転力を加て回転させてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において間接活線工具で掛止部212が引っ掛けられ、第二軸A2周りの回転力を加えてベース21を回転させていたが、これに限定されるものではなく、例えば、挟持片201b等を間接活線工具(ヤットコ)で掴み、第二軸A2周りの回転力を加て回転させてもよい。
【0078】
また、上記実施形態において間接活線工具で掛止部212が引っ掛けられ、第三軸A3周りの回転力を加え、ベース21を回転させていたが、これに限定されるものではなく、例えば、挟持片201b等を間接活線工具(ヤットコ)で掴み、第三軸A3周りの回転力を加て回転させてもよい。
【0079】
また、上記実施形態において配置変更工程は、切断工程の後に行なわれていたが、これに限定されるものではなく、例えば、配置変更工程は、切断工程の前に行うようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態において、切断対象となる高圧引下線C1の切断箇所よりも下流側に保持部20を保持させていたが、これに限定されるものではなく、例えば、切断対象となる高圧引下線C1の切断箇所よりも上流側に保持部20を保持させてもよい。
【0081】
また、上記実施形態においてケーブル保持体2は、切断対象となる高圧引下線C1の切断箇所よりも下流側を支持するように取付けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば、少なくとも2つ以上のケーブル支持具1を使用し、切断対象となる高圧引下線C1の切断箇所の両側に少なくとも一つずつのケーブル保持体2を取り付けるようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態においてケーブル保持工程は、切断工程の前に行われていたが、これに限定されるものではなく、切断工程の後にケーブル保持工程を行い、切断された高圧引下線C1をケーブル支持具1によって送電線C2に間接的に支持させてもよい。
【0083】
また、上記実施形態において高圧引下線C1の支持方法は、支持具固定工程と、ケーブル保持工程と、配置変更工程、切断工程とを備えるように構成されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、切断工程の後に、切断された高圧引下線C1の被覆を剥離する皮剥き工程や、切断した高圧引下線C1を接続する接続工程を備えていてもよい。
【0084】
なお、皮剥き工程及び接続工程を行う前に配置変更工程を行えば、該皮剥き工程及び接続工程を容易に行うことができる。