(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(1)における分散媒が、水、ケトン類、アルコール類、ニトリル類、エーテル類、炭化水素類、脂肪酸エステル類、および液体油脂からなる群より選択される少なくとも1種類の分散媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体における、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の重量比が1/99〜99.99/0.01の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
工程(1)において、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の混合液から液体成分を除去する方法が、凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、デカンテーション、遠心分離、加圧濾過、減圧濾過、自然濾過からなる群より選択される1種類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
工程(3)における液滴分散が、水相中に、工程(2)で得られたS/Oサスペンションを添加し、固体脂の融点以上かつ沸点未満の温度で分散させてS/O/Wエマルションとすることで行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
工程(3)において、水相中に、HLB5以上のショ糖脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、サポニン類、およびレシチン類等からなる群より選択される少なくとも1種類の界面活性剤(B)を含有することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
工程(3)において、水相中に、アラビアガム、ゼラチン、寒天、澱粉、カラギーナン、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチン、ジェランガム、カードラン、グルコマンナン、カゼイン、アルギン酸類、糖類、プルラン、セルロース類、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、およびポリビニルアルコール等からなる群より選択される少なくとも1種類の増粘剤を含有することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
工程(3)において、水相中に、ケトン類、アルコール類、ニトリル類、およびエーテル類からなる群より選択される少なくとも1種類の親水性有機溶媒を含有することを特徴とする請求項7〜11いずれか1項に記載の製造方法。
工程(3)において、水相中でS/Oサスペンションを液滴分散させるための方法が、撹拌、ラインミキサー、多孔板分散、噴流、ポンプからなる群より選択される少なくとも1種類の剪断方法であることを特徴とする請求項7〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
工程(3)におけるS/Oサスペンション液滴の冷却が、得られたS/O/Wエマルションを固体脂の融点未満に冷却した水相に移送して、急冷させることによって行われる請求項7〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
工程(3)において、工程(2)で得られたS/Oサスペンションを噴霧冷却することによって、S/Oサスペンションを気相中で液滴分散させるとともに、該S/Oサスペンションを固体脂の融点未満まで冷却して固体脂を固化させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
本発明は、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を、固体脂の融点以上の温度で固体脂中に分散させて、S/Oサスペンションを得た後、該S/Oサスペンションを液滴分散させ、該S/Oサスペンション液滴を固体脂の融点未満に冷却することで固体脂を固化させて、固体粒子を得る、という操作を行うことを特徴とする、固体脂のマトリクス中に親水性生理活性物質が多分散したS/O型マイクロカプセルの製造方法である。
【0023】
具体的には、下記(1)〜(3)の工程を含有する、固体脂のマトリクス中に親水性生理活性物質が多分散したS/O型マイクロカプセルの製造方法でもある。
(1)親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を調製又は入手する。
(2)上記親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を、固体脂の融点以上の温度で固体脂中に分散させ、S/Oサスペンションを得る。
(3)上記S/Oサスペンションを液滴分散させ、該S/Oサスペンション液滴を固体脂の融点未満に冷却して固体脂を固化させて固体粒子を得る。
【0024】
本発明におけるS/O型マイクロカプセルとは、固体油相中に親水性の固体物質が多分散した固体粒子を意味するものであり、液体油相中に固体物質が分散したS/Oサスペンションや、水相中に該S/Oサスペンションが懸濁したS/O/Wエマルションとは異なる。
【0025】
本発明のS/O型マイクロカプセルに封入される親水性生理活性物質は水溶性のものであれば、用途に応じて適宜選択することができるが、常温で固体のものが好ましい。なお本発明において、「常温」とは特に断りのない限り20℃を意味する。上記親水性生理活性物質としては、例えば、タンパク質類、ペプチド類、アミノ酸類、抗生物質、核酸類、有機酸類、水溶性ビタミン類、水溶性補酵素類、ミネラル類、糖類等が挙げられる。
【0026】
上記タンパク質類としては、例えば、酵素、抗体、抗原、ホルモン等の他、生体物質由来タンパク質等を挙げることができ、具体的には、プロテアーゼ類、アミラーゼ類、セルラーゼ類、キナーゼ類、グルカナーゼ類、ペクチナーゼ類、イソメラーゼ類、リパーゼ類、ペクチナーゼ類;インターフェロン、インターロイキン、BMP、免疫グロブリン、ラクトフェリン、ラクトグロブリン、ラクトアルブミン、血清アルブミン、ラクトパーオキシダーゼ等の乳タンパク質由来成分等;を挙げることができる。
【0027】
上記ペプチド類としては、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)、インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン(GH−RH)、プロラクチン、エリスロポエチン、副腎皮質ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、バソプレシン、オキシトシン、カルシトニン、ガストリン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、エンケファリン、エンドルフィン、キョウトルフィン、タフトシン、サイモポイエチン、サイモシン、サイモチムリン、胸腺液性因子、血中胸腺因子、腫瘍壊死因子、コロニー誘導因子、モチリン、デイノルフィン、ボンベシン、ニューロテンシン、セルレイン、ブラジキニン、グルタチオン、心房性ナトリウム排泄増加因子、神経成長因子、細胞増殖因子、神経栄養因子、エンドセリン拮抗作用を有するペプチド類などおよびその誘導体、さらにはこれらのフラグメントまたはフラグメントの誘導体等が挙げられる。
【0028】
上記アミノ酸類としては、具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。
【0029】
上記抗生物質としては、例えば、β−ラクタム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリエンマクロライド系、グリコペプチド系、核酸系、ポリドンカルボン酸系等の抗生物質を挙げることができる。
【0030】
上記核酸類としては、具体的には、イノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸、ATP、GTP、DNA、RNA等を挙げることができる。
【0031】
上記有機酸類としては、具体的には、クエン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸等を挙げることができる。
【0032】
上記水溶性ビタミン類としては、具体的には、ビタミンB
1、ビタミンB
2、ビタミンB
6、ビタミンB
12、アスコルビン酸、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リポ酸、ビオチン等を挙げることができる。
【0033】
上記水溶性補酵素類としては、チアミン二リン酸、NADH、NAD、NADP、NADPH、FMN、FAD、補酵素A、ピリドキサルリン酸、テトラヒドロ葉酸等を挙げることができる。
【0034】
上記ミネラル類としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、カリウム、ナトリウム、銅、バナジウム、マンガン、セレン、モリブデン、コバルト等、及びこれらのミネラルが結合した化合物等を挙げることができる。
【0035】
上記糖類としては、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール類、およびその他多糖類等が挙げられる。単糖類としては、具体的には、アラビノース、キシロース、リボース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、ラムノース等を挙げることができる。二糖類としては、具体的には、麦芽糖、セロビオース、トレハロース、乳糖、ショ糖等を挙げることができる。オリゴ糖としては、具体的には、マルトトリオース、ラフィノース糖、スタキオース等が挙げられる。糖アルコール類としては、具体的には、アラビトール、キシリトール、アドニトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール等が挙げられる。その他多糖類としては、キチン、キトサン、アガロース、ヘパリン、ヒアルロン酸、キシログルカン、デンプン、グリコーゲン、ペクチン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸等が挙げられる。
【0036】
上記親水性生理活性物質のうち、従来の製造方法ではS/O型マイクロカプセル化が困難であった、タンパク質類やペプチド類のマイクロカプセル化に本発明の製造方法を採用するのが好ましい。そのような好ましい親水性生理活性物質として、乳タンパク質由来成分、特に、ラクトフェリンが例示される。
【0037】
また、ここで示した親水性生理活性物質は、親水性であれば、それらの誘導体や塩の形態でも使用することができ、言うまでもなくこれらの物質の2種以上を合わせて使用することもできる。
【0038】
本発明の製造方法において、S/O型マイクロカプセルのマトリクスを構成するために使用する固体脂は、常温で固体となる油性成分または油性組成物であれば特に限定されないが、融点が40℃以上であるのが好ましく、あるいは、常温では固体状で崩壊しにくく、硬質な形状であることが好ましい。なおここでいう、「固体」、「固体状」、「融点」とは、使用する固体脂として複数の成分を組み合わせる場合は、その混合組成物全体しての性質を意味する。このような固体脂(あるいはその構成成分)としては、例えば、油脂、ワックス、脂肪酸等を挙げることができる。
【0039】
上記油脂としては、例えば、植物油脂としては、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、菜種油、米油、落花生油、オリーブ油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、マンゴー脂、イリッペ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油等を挙げることができ、動物油脂としては、魚油、牛脂、乳脂、豚脂等を挙げることができ、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸の部分グリセリド等も使用できる。これら油脂としては、入手しやすく、かつ溶融・冷却固化が容易に行えるという観点から、トリステアリン、トリパルミチン等の飽和長鎖脂肪酸トリグリセリドや、カカオ脂、シア脂などの天然固体油脂、液体油脂を水素添加して得られる硬化油や天然油脂の高融点画分を分別した分別油脂の使用が好ましい。
【0040】
上記ワックスとしては、例えば、ミツロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、米ぬかロウ、カルナウバロウ、雪ロウ、セラックロウ、ホホバロウ等の食用ワックス類が挙げられる。
【0041】
上記脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ベヘニン酸およびこれらのエステル類を挙げることができる。
【0042】
また、本発明における固体脂としては、上記成分の混合物を使用しても良く、その場合、常温で液体のものを一成分として含んでいても、混合物全体として常温で固体であればよい。
【0043】
本発明の製造方法においては、親水性生理活性物質を、界面活性剤(A)との複合体として使用する。本発明における「親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体」とは、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の単なる混合物であってもよいが、好ましくは親水性生理活性物質が界面活性剤(A)で被覆されたものである。
【0044】
ここで親水性生理活性物質との複合体に使用される界面活性剤(A)は、次工程(2)で用いる固体脂と、固体脂の溶融状態で親和性が高いものであることが好ましく、具体的にはHLBは10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、5以下であることが最も好ましい。上記界面活性剤(A)としては、食品用または医薬品用として使用できるものが好ましく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、およびレシチン類を挙げることができる。
【0045】
上記グリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、脂肪酸の部分グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等を挙げることができる。脂肪酸の部分グリセリドとしては、例えば、モノグリセリンモノカプリル酸エステル、モノグリセリンモノカプリン酸エステル、モノグリセリンジカプリル酸エステル、モノグリセリンジカプリン酸エステル、モノグリセリンジラウリン酸エステル、モノグリセリンジミリスチン酸エステル、モノグリセリンジステアリン酸エステル、モノグリセリンジオレイン酸エステル、モノグリセリンジエルカ酸エステル、モノグリセリンジベヘニン酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリンオレイン酸クエン酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸有機酸エステル等を挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、重合度が2〜10のポリグリセリンを主成分とするポリグリセリンに、ポリグリセリンの水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜22の脂肪酸がエステル化したものが挙げられる。具体的には、例えば、ヘキサグリセリンモノカプリル酸エステル、ヘキサグリセリンジカプリル酸エステル、デカグリセリンモノカプリル酸エステル、トリグリセリンモノラウリン酸エステル、テトラグリセリンモノラウリン酸エステル、ペンタグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、トリグリセリンモノミリスチン酸エステル、ペンタグリセリンモノミリスチン酸エステル、ペンタグリセリントリミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸エステル、テトラグリセリンモノオレイン酸エステル、ペンタグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、トリグリセリンモノステアリン酸エステル、テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、ペンタグリセリンモノステアリン酸エステル、ペンタグリセリントリステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンジステアリン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンジステアリン酸エステル、デカグリセリントリステアリン酸エステル等が挙げられる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては、例えば、ポリグリセリンの平均重合度が2〜10、ポリリシノレイン酸の平均縮合度(リシノレイン酸の縮合数の平均)が2〜4であるものが挙げられ、例えば、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ペンタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が挙げられる。
【0046】
上記ショ糖脂肪酸エステル類としては、ショ糖の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜22の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。具体的には、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等が挙げられる。
【0047】
上記ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタン類の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。具体的には、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0048】
上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0049】
上記レシチン類としては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、リゾレシチン、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0050】
言うまでもなく、ここで示した界面活性剤(A)は2種以上を合わせて使用することもできる。
【0051】
本発明の親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体における、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の混合比率は特に限定されないが、その重量比が1/99〜99.99/0.01となる範囲であることが好ましく、より好ましくは30/70〜99/1の範囲であり、さらに好ましくは50/50〜95/5の範囲である。
【0052】
本発明の製造方法において、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体が入手可能であれば、それを入手してそのまま次の工程(2)に使用してもよいし、まず親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を調製した後、次の工程(2)に移ってもよい。親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を調製する方法としては特に限定されないが、好ましくは、親水性生理活性物質、界面活性剤(A)及び分散媒の混合液から、液体成分を除去することで親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を調製することができる。すなわち、
(1’)親水性生理活性物質、界面活性剤(A)及び分散媒の混合液から、液体成分を除去して、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を調製する、
(2)上記親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を、固体脂の融点以上の温度で固体脂中に分散させ、S/Oサスペンションを得る、
(3)上記S/Oサスペンションを液滴分散させ、該S/Oサスペンション液滴を固体脂の融点未満に冷却して固体脂を固化させて固体粒子を得る、
という3つの工程の操作を行うことを特徴とする、S/O型マイクロカプセルの製造方法も本発明の製造方法の一態様である。ここで工程(1’)は前記工程(1)の好ましい態様である。以下、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を得る好ましい方法(工程(1’))について説明する。
【0053】
工程(1’)においては、まず、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)とを分散媒と混合した混合液を調製する。ここで使用する親水性生理活性物質の形態は、液状、または粉末、顆粒等の固体状のものいずれをも使用することができるし、それらをそのまま使用してもあるいは水溶液の状態で使用してもよい。親水性生理活性物質をその水溶液として使用する場合、水溶液中の親水性生理活性物質の仕込み濃度は特に制限はなく、目的のマイクロカプセル中の芯物質含量に応じて、適宜調整することが可能であるが、マイクロカプセルの製造効率を高める上で、水溶液中の親水性生理活性物質の仕込み濃度は高いほど好ましく、親水性生理活性物質の水に対する飽和濃度を超えない程度まで仕込むことが可能である。
【0054】
上記工程(1’)において調製される親水性生理活性物質と界面活性剤(A)と分散媒の混合液の形態は、親水性生理活性物質、界面活性剤(A)および分散媒の状態や特性によって異なる。例えば、親水性生理活性物質を水溶液として使用し、その他の分散媒として非水溶性液体を使用する場合は、非水溶性液体からなる油相中に、親水性生理活性物質の水溶液が液滴状になって乳化分散しているW/Oエマルションの形態をとる。また、親水性生理活性物質や界面活性剤(A)が、それぞれ分散媒に対して溶解度が低い場合は、分散媒中に親水性生理活性物質や界面活性剤(A)が多分散する。一方、親水性生理活性物質および界面活性剤(A)を溶解する分散媒(均一に混合しうる2種類以上の分散媒を併用する場合も含む)を使用した場合には、上記混合液の形態は均一系となる。本発明の工程(1’)においては、親水性生理活性物質そのものあるいはその水溶液が該混合液中で多分散または乳化分散する形態をとるのが好ましい。また界面活性剤(A)は使用した分散媒に溶解した状態で存在するのが好ましい。
【0055】
本発明の工程(1’)において使用される分散媒としては、水溶性、非水溶性を問わず、使用する親水性生理活性物質、および界面活性剤(A)に対して不活性であるものであれば限定されず、例えば、水、ケトン類、アルコール類、ニトリル類、エーテル類、炭化水素類、脂肪酸エステル類、または液体油脂等を選択することができる。
【0056】
上記ケトン類としては、特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0057】
上記アルコール類としては、環状、非環状を問わず、また、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。なかでも炭素数1〜5の1価アルコール、炭素数2〜5の2価アルコール、または、炭素数3の3価アルコールが好ましい。具体的には、1価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール等を挙げることができる。2価のアルコールとしては、1、2−エタンジオール、1、2−プロパンジオール、1、3−プロパンジオール、1、2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、2、3−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール等を挙げることができる。3価のアルコールとしては、グリセリン等を用いることができる。
【0058】
上記ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、また、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に飽和のものが好ましく用いられる。具体的には、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0059】
上記エーテル類としては、環状、非環状を問わず、また、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。具体例としては、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。
【0060】
上記炭化水素類としては、環状、非環状を問わず、また、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、通常、炭素数3〜20、好ましくは炭素数5〜12のものが用いられる。具体的には、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、エチルシクロヘキサン、ノナン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等を挙げることができる。
【0061】
上記脂肪酸エステル類としては、特に制限されないが、例えば、プロピオン酸エステル、酢酸エステル、ギ酸エステル等を挙げられる。具体的には、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル等を挙げることができる。
【0062】
上記液体油脂としては、液状、および固体状の親水性生理活性物質を分散することのできる油脂であれば特に制限はなく、また常温で固体状であっても製造時の加熱によって溶融し液状となるものであればよく、例えば、動植物からの天然油脂であってもよく、合成油脂や加工油脂であってもよい。より好ましくは、食品、化粧品又は医薬用に許容されるものである。そのような液体油脂として、植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油等を挙げることができ、動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができ、さらに、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば、硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)も使用しうる。又、これらの混合物を使用しても良い。中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリドを挙げることができる。
【0063】
上記、油脂のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から植物油脂、合成油脂や加工油脂等が好ましい。例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、MCT等を挙げることができる。
【0064】
上記例示した分散媒のうち、上述したように親水性生理活性物質そのものあるいはその水溶液が該混合液中で多分散する好ましい形態となるためには、分散媒として少なくとも親水性生理活性物質を完全に溶解しないものを使用するのが好ましい。もちろん分散媒として親水性生理活性物質を溶解しない非水溶性のものと水とを併用し、親水性生理活性物質の水溶液と非水溶性の分散媒とでW/Oエマルションとさせてもかまわない。
【0065】
さらに、本発明の製造方法においては、取り扱い易さや、後述の液体成分の除去を行う観点から、分散媒としては、アルコール類の使用が好ましく、より好ましくは炭素数が1〜5のアルコールであり、最も好ましいのはエタノールである。また、親水性生理活性物質がアルコール類に完全に溶解しない場合には、親水性生理活性物質はそのままアルコール類中に未溶解の状態で分散することになり、より好ましい。但し、親水性生理活性物質が完全に溶解しない程度に微量の水を含んでいてもよい。
【0066】
工程(1’)における上記分散媒の仕込み量は、親水性生理活性物質、および界面活性剤(A)が分散媒中で十分に分散可能な量が仕込まれていればよく、特に親水性生理活性物質が水溶液状である場合は、W/O分散が十分可能である量が仕込まれていればよい。
【0067】
また、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)とを分散媒中で分散させるためには、各種の汎用されている乳化分散機、例えばホモミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、膜乳化機等を用いることができる。
【0068】
本発明の製造方法の工程(1’)においては、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の混合液から、液体成分を除去し、固体状の親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を得る。この場合の液体成分の除去方法には、使用する分散媒の種類によって、凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、デカンテーション、遠心分離、加圧濾過、減圧濾過、自然濾過等の方法から選択することができる。例えば、分散媒に低沸点で揮発性の高いエタノール等の溶媒を使用する場合、真空乾燥、噴霧乾燥の方法が好適に用いられる。また分散媒に高沸点で不揮発性の大豆油等を使用する場合、凍結乾燥、加圧濾過、減圧濾過等が用いられる。
【0069】
次に、本発明の製造方法においては、上記工程(1)で得られた親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を、固体脂の融点以上の温度で、溶融した固体脂中に分散させ、S/Oサスペンションを得る(工程(2))。ここでS/Oサスペンションとは、固体脂が溶融して形成されている液体油相中に、固体状の親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体が分散している懸濁液のことをいう。
【0070】
工程(2)は具体的には、まず固体脂を融点以上の温度に加熱し、溶融させた固体脂に、上記工程(1)で得られた親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を添加混合して、固体脂の融点以上かつ固体脂の沸点未満の温度条件で該複合体を分散させることで行われる。また、固体脂と、上記工程(1)で得られた親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体との混合物を、固体脂の融点以上かつ固体脂の沸点未満の温度に加熱することで、固体脂の溶融と親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体の分散を同時に行ってもよい。固体脂中に親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体を分散させる方法としては、特に限定されず、乳化分散機や撹拌機などによる混合やシェーカーによる振とう、ラインミキサーによる連続的な混合などが挙げられる。
【0071】
上記工程(2)における、親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体と、固体脂の重量比は、0.01/99.99〜70/30の範囲内であることが好ましく、1/90〜40/60の範囲内であることがより好ましい。固体脂に対する複合体の重量比が低い場合、得られるS/O型マイクロカプセル中の親水性生理活性物質量の含有量が低くなるため、例えば、所定量の親水性生理活性物質を経口投与する際に、多量のマイクロカプセルを摂取することが必要となる。一方、固体脂に対する複合体の重量比が高すぎると、製造工程において親水性生理活性物質が外水相に漏洩するなど、親水性生理活性物質の封入収率が低下する。
【0072】
次に、本発明の製造方法では、上記工程(2)において調製した親水性生理活性物質のS/Oサスペンションを液滴分散させ、該S/Oサスペンション液滴を固体脂の融点未満に冷却することで固体脂を固化させて、固体粒子としてS/O型マイクロカプセルを得る(工程(3))。
【0073】
本発明において、上記工程(3)におけるS/Oサスペンションの液滴分散は、水相中または気相中で行うのが好ましい。水相中で液滴分散を行う方法としては、例えば、水相中に、工程(2)で得られたS/Oサスペンションを添加し、固体脂の融点以上かつ沸点未満の温度で分散させてS/O/Wエマルションとする方法が、気相中で液滴分散を行う場合は、例えば、工程(2)で得られたS/Oサスペンションを噴霧冷却する方法が、それぞれ挙げられる。すなわち、本発明の製造方法における工程(3)の好ましい態様として、以下の2つの工程((3’)、(3”))のいずれかを採用することができる。
【0074】
(3’)水相中に、工程(2)で得られたS/Oサスペンションを添加し、固体脂の融点以上かつ沸点未満の温度で分散させてS/O/Wエマルションとしたのち、得られたS/O/Wエマルションを固体脂の融点未満まで冷却して固体脂を固化させ、その後水分を除去して固体粒子を得る。
【0075】
(3”)工程(2)で得られたS/Oサスペンションを噴霧冷却することによって、S/Oサスペンションを気相中で液滴分散させるとともに、該S/Oサスペンションを固体脂の融点未満まで冷却して固体脂を固化させ、固体粒子を得る。
【0076】
以下、それぞれの工程における好ましい態様・条件について説明する。
【0077】
工程(3’)におけるS/O/Wエマルションとは、水相中に、前述した親水性生理活性物質と界面活性剤(A)の複合体のS/Oサスペンションが、液滴状になって分散している懸濁液のことをいう。S/O/Wエマルションの調製は、固体脂の融点以上かつ固体脂の沸点未満で、さらに水の沸点未満で行う必要がある。上記工程(3’)において、使用する水相には、水相中におけるS/Oサスペンションの油滴分散形成の観点から、あらかじめ、界面活性剤(B)、増粘剤、親水性有機溶媒のうち、少なくとも1種を含有するのが好ましい。
【0078】
上記工程(3’)において、水相中における油滴分散形成の観点から、水相中に含有しうる界面活性剤(B)のHLBは5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、10以上であることが最も好ましい。また、上記界面活性剤(B)としては、食品用または医薬品用として使用できるものが好ましく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、サポニン類、およびレシチン類等を挙げることができる。
【0079】
上記グリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、脂肪酸の部分グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等を挙げることができる。脂肪酸の部分グリセリドとしては、例えば、モノグリセリンモノカプリル酸エステル、モノグリセリンモノカプリン酸エステル、モノグリセリンジカプリル酸エステル、モノグリセリンジカプリン酸エステル、モノグリセリンジラウリン酸エステル、モノグリセリンジミリスチン酸エステル、モノグリセリンジステアリン酸エステル、モノグリセリンジオレイン酸エステル、モノグリセリンジエルカ酸エステル、モノグリセリンジベヘニン酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリンオレイン酸クエン酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸有機酸エステル等を挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、重合度が2から10のポリグリセリンを主成分とするポリグリセリンに、ポリグリセリンの水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜22の脂肪酸がエステル化したものが挙げられる。具体的には、例えば、ヘキサグリセリンモノカプリル酸エステル、ヘキサグリセリンジカプリル酸エステル、デカグリセリンモノカプリル酸エステル、トリグリセリンモノラウリン酸エステル、テトラグリセリンモノラウリン酸エステル、ペンタグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、トリグリセリンモノミリスチン酸エステル、ペンタグリセリンモノミリスチン酸エステル、ペンタグリセリントリミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸エステル、テトラグリセリンモノオレイン酸エステル、ペンタグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、トリグリセリンモノステアリン酸エステル、テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、ペンタグリセリンモノステアリン酸エステル、ペンタグリセリントリステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンジステアリン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンジステアリン酸エステル、デカグリセリントリステアリン酸エステル等が挙げられる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては、例えば、ポリグリセリンの平均重合度が2〜10、ポリリシノレイン酸の平均縮合度(リシノレイン酸の縮合数の平均)が2〜4であるものが挙げられ、例えば、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ペンタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が挙げられる。
【0080】
上記ショ糖脂肪酸エステル類としては、ショ糖の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。具体的には、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル等が挙げられる。
【0081】
上記ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタン類の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。具体的には、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0082】
上記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0083】
上記サポニン類としては、例えば、エンジュサポニン、キラヤサポニン、大豆サポニン、ユッカサポニン等が挙げられる。
【0084】
上記レシチン類としては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、リゾレシチン、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0085】
言うまでもなく、ここで示した界面活性剤(B)は2種以上を合わせて使用することもできる。
【0086】
上記工程(3’)において、水相中の界面活性剤(B)の濃度は特に限定されないが、0.001重量%以上であることが好ましく、0.001〜5重量%の範囲がより好ましく、0.01〜1重量%の範囲がさらに好ましい。
【0087】
工程(3’)において、水相中に含有しうる増粘剤としては、特に限定されないが、食品用または医薬品用として使用できるものが好ましい。そのような増粘剤としては、例えば、アラビアガム、ゼラチン、寒天、澱粉、カラギーナン、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチン、ジェランガム、カードラン、グルコマンナン、カゼイン、アルギン酸類、糖類、プルラン、セルロース類、キサンタンガム、グアーガム、タマリンドガム、およびポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0088】
上記アルギン酸類としては、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等が挙げられる。
【0089】
上記糖類としては、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール類、およびその他多糖類等が挙げられる。単糖類としては、具体的には、アラビノース、キシロース、リボース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、ラムノース等を挙げることができる。二糖類としては、具体的には、麦芽糖、セロビオース、トレハロース、乳糖、ショ糖等を挙げることができる。オリゴ糖としては、具体的には、マルトトリオース、ラフィノース糖、スタキオース等が挙げられる。糖アルコール類としては、具体的には、アラビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、アドニトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール等が挙げられる。その他多糖類としては、キチン、キトサン、アガロース、ヘパリン、ヒアルロン酸、キシログルカン、グリコーゲン、ペクチン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸等が挙げられる。
【0090】
上記セルロース類としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
【0091】
ここで示した増粘剤は2種以上を合わせて使用することもできる。
【0092】
上記工程(3’)において、水相中の増粘剤の濃度は特に限定されないが、0.001〜10重量%となる範囲が好ましく、0.005〜3重量%の範囲がより好ましい。
【0093】
工程(3’)において水相中に含有しうる親水性有機溶媒としては、水相に容易に溶解し、溶解した水相中でS/Oサスペンションを油相の融点以上の温度で油滴状に分散できるものであれば特に限定されず、例えば、ケトン類、アルコール類、ニトリル類、エーテル類等を挙げることができる。これら親水性有機溶媒を水相中に含有させることで、均一で安定性の高いS/Oサスペンションの分散液滴を調製することができる。
【0094】
上記ケトン類としては、特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0095】
上記アルコール類としては、環状、非環状を問わず、また、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。なかでも炭素数1〜5の1価アルコール、炭素数2〜5の2価アルコール、または、炭素数3の3価アルコールが好ましい。具体的には、1価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール等を挙げることができる。2価のアルコールとしては、1、2−エタンジオール、1、2−プロパンジオール、1、3−プロパンジオール、1、2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、2、3−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール等を挙げることができる。3価のアルコールとしては、グリセリン等を用いることができる。
【0096】
上記ニトリル類としては、環状、非環状を問わず、また、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に飽和のものが好ましく用いられる。具体的には、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0097】
上記エーテル類としては、環状、非環状を問わず、また、飽和、不飽和を問わず、特に制限されないが、一般に、飽和のものが好ましく用いられる。具体例としては、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。
【0098】
本発明の製造方法においては、人体に対する毒性や、医薬品や食品等への幅広い用途展開の観点から、親水性有機溶媒として、アルコール類を使用することが好ましく、より好ましくは炭素数が1〜5のアルコールであり、最も好ましいのはエタノールである。
【0099】
水相中に親水性有機溶媒を含有させる場合の、水相中の親水性有機溶媒の濃度は、1〜70容量%の範囲が好ましく、10〜50容量%の範囲がより好ましい。本発明の製造方法において、水相中のエタノール濃度が70容量%を超える場合、S/Oサスペンション中に水相中の親水性有機溶媒が取り込まれ、安定なS/Oサスペンションの分散液滴を得ることが難しいことがある。
【0100】
上記工程(3’)において、水相中に添加する界面活性剤(B)、増粘剤、あるいは親水性有機溶媒は、言うまでもなくこれらを混合して使用することもでき、これらのうちいずれか1つのみを用いて行うこともできる。
【0101】
本発明の製造方法の工程(3’)において、S/Oサスペンションを水相中で液滴分散させるための方法としては、液滴分散が適切に形成できる方法であれば特に限定はされないが、例えば、撹拌、ラインミキサー、多孔板分散、噴流、ポンプ等によって剪断を与え、液滴分散させ、S/O/Wエマルションを調製するのが好ましい。
【0102】
また、上記S/O/Wエマルションの調製を撹拌で行う場合、単位容積当たりの所要動力が0.01kW/m
3以上の条件で行うことが好ましく、0.1kW/m
3以上の条件で行うことがより好ましい。撹拌所要動力の上限は特に限定されないが、所要動力が著しく大きい場合、例えば、液自由表面からの気泡の巻き込みが激しくなり、分散液滴中に気泡が混入して安定な分散状態を得ることが難しい場合があるため、撹拌所要動力の上限は1.5kW/m
3以下であることが好ましく、より好ましくは1.0kW/m
3以下である。
【0103】
工程(3’)では、水相中に液滴分散したS/Oサスペンション、すなわち、S/O/Wエマルションを固体脂の融点未満の温度まで冷却させることにより、油相の固体脂を固化させることで、固体脂のマトリクス中に親水性生理活性物質が多分散したS/O型マイクロカプセルを得る。
【0104】
工程(3’)におけるS/Oサスペンション液滴の冷却方法には特に制限はなく、例えば、S/O/Wエマルションを調製した装置内の温度を徐々に下げて固体脂の温度未満まで冷却する方法や、得られたS/O/Wエマルションをあらかじめ固体脂の融点未満の温度に調整しておいた別装置内の水相(凝固していない水相)に、一括、あるいは徐々に投入するなどして、S/O/Wエマルションと固体脂の融点未満の温度に調整しておいた水相を混合することにより、急冷して油相を固化する方法等が挙げられる。
【0105】
上記S/O/Wエマルションを装置内で徐々に冷却する場合、冷却速度が速すぎると、得られるS/O型マイクロカプセルの均一度は低くなり、粗粒の発生等、粒子径のコントロールが困難になる場合があることから、冷却速度は、0.5℃/min以下であることが好ましく、さらには0.2℃/min以下であることが好ましい。冷却速度の下限は特に限定されないが、冷却速度が極端に遅い場合は、S/O型マイクロカプセル生成時に微粉発生が多くなる等の問題が生じるため、冷却速度は0.01℃/min以上が好ましく、0.05℃/min以上であることがより好ましい。
【0106】
一方、上記S/O/Wエマルションを固体脂の融点未満の水相と混合して急冷する場合、油相である固体脂が瞬時に固化するため、水相中に分散したS/Oサスペンションは分散形態を維持したまま固体状粒子に変化する。この冷却方法は、油相の瞬時の固化により、芯物質である親水性生理活性物質と外水相との接触機会は少なくなるため、芯物質の漏洩を抑制することができ、高いカプセル封入率を得ることが可能であるという点で、好ましい方法である。この方法でS/O/Wエマルションと混合する水相は、水のみからなる水相であってもよいが、分散状態を維持し、油滴の会合を防ぐという観点から、上述したような界面活性剤(B)、増粘剤、または親水性有機溶媒を含有する水相であることが好ましい。この場合の界面活性剤(B)、増粘剤、または親水性有機溶媒等は、工程(3)で使用したものと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0107】
工程(3’)において、以上のいずれかの方法で、水相中にS/O型マイクロカプセルが分散している懸濁液を得ることが出来る。このようにして得られたS/O型マイクロカプセルは、固体脂の融点未満の温度を維持しつつ、例えば、デカンテーション、遠心分離、加圧濾過、減圧濾過、自然濾過等による固液分離、さらに、必要に応じてケーキ洗浄を行い、さらに、真空乾燥などの乾燥処理を行って水分を除去することにより、乾燥粒子として取得することができる。
【0108】
一方、工程(3”)のように、工程(2)で得られたS/Oサスペンションを、冷却した気相中に噴霧して液滴分散させ、該S/Oサスペンション噴霧液滴を固体脂の融点未満に冷却するという、噴霧冷却法により固形状のS/O型マイクロカプセルを得ることもできる。
【0109】
工程(3”)における噴霧冷却法では、S/Oサスペンションを微粒化して噴霧するための加熱可能なノズル、噴霧により微粒化したS/Oサスペンションを流動させるチャンバー、それに続くサイクロン及びバグフィルターから成る装置が好ましく用いられる。また、S/Oサスペンションの微粒化には、圧力ノズルや二流体微噴霧ノズルなどのノズル型アトマイザー、又は回転式のディスク型アトマイザーを用いることができる。二流体微噴霧ノズルを用いる場合、S/Oサスペンションを微粒化するための加圧気体として、通常、空気を用いるが、それ以外の窒素ガスなども用いることができ、これらの加圧気体は、噴霧するS/Oサスペンションの油相成分の固体脂の融点よりも僅かに高い温度に調整することがより好ましい。
【0110】
噴霧により微細な液滴となったS/Oサスペンションは、チャンバー内を流れる冷却風により冷却固化される。この冷却風の流れ方向は、S/Oサスペンションの噴霧方向に対して、並流、向流のいずれの方向でもよい。冷却風の温度は、S/Oサスペンションの油相成分の固体脂の融点より低いことが必須となるが、造粒物のチャンバー壁面への付着や、粒子同士の合一を抑制する観点から、S/Oサスペンションの油相成分の固体脂の融点よりも10℃以上低い温度で操作することが好ましい。また、冷却固化によって生成したS/O型マイクロカプセルはチャンバーに続くサイクロン等の気固分離装置で回収を行うことが好ましい。
【0111】
上述したような本発明の製造方法によって、固体脂のマトリクス中に、親水性生理活性物質と界面活性剤の複合体が多分散した、本発明のS/O型マイクロカプセルを得ることができる。本発明の製造方法によって得られる本発明のS/O型マイクロカプセルは、親水性生理活性物質が粒子内において、偏りなく均一に分散しているS/O型マイクロカプセルであり、内包しうる親水性生理活性物質やマトリクスを構成する固体脂は、上記製造方法で述べたものと同じである。
【0112】
また、マイクロカプセル中の親水性生理活性物質の分散径は、工程(1’)における親水性生理活性物質、界面活性剤(A)及び分散媒の混合液がW/Oエマルションの形態をとる場合には、その乳化分散径に依存する。マイクロカプセル作製時の収率や生理活性作用の観点から、本発明においては工程(1’)を採用し、さらに該工程において親水性生理活性物質を水溶液として使用して分散媒中に乳化分散させ、界面活性剤(A)の添加量や、分散時の剪断強度を適宜選択して、その乳化分子径をコントロールすることで、得られるマイクロカプセル中の親水性生理活性物質の分散径が、0.01〜50μmの範囲となるようにすることが好ましく、0.01〜20μmの範囲となるようにすることがより好ましく、0.01〜10μmの範囲となるようにすることが最も好ましい。工程(1’)で固体粒子状の親水性生理活性物質をそのまま分散媒中に多分散させる場合や工程(1’)を採用しない場合は、使用する親水性生理活性物質またはその複合体の粒子径の範囲が、0.1〜50μmの範囲のものを選択するのが好ましく、0.5〜10μmの範囲のものを選択することが最も好ましい。
【0113】
本発明のS/O型マイクロカプセルの平均粒子径は、工程(3’)を採用する場合は、製造時に仕込む界面活性剤の添加濃度、撹拌速度や冷却速度によって、工程(3”)の噴霧冷却法を採用する場合は、スプレーノズルの圧力やアトマイザーの回転数等によって、それぞれ適宜調整できる。本発明においては、得られるS/O型マイクロカプセルの平均粒径を、1〜2000μmとすることが好ましく、打錠用途として使用する場合には平均粒子径が50〜500μmとすることが好ましい。
【0114】
本発明の製造方法は、親水性生理活性物質を界面活性剤との複合体として使用することで、S/Oサスペンションの分散工程における親水性生理活性物質の外相への流出を防ぐことができるため、製造時の親水性生理活性物質のロスが少なく、結果非常に高い封入収率で親水性生理活性物質を含有するS/O型マイクロカプセルを得ることが出来る。ここでいう封入収率とは、製造時に原料として使用した親水性生理活性物質の量に対する、得られたマイクロカプセル中に封入された親水性生理活性物質の合計量の割合である。本発明の製造方法においては、通常、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の封入収率で、親水性生理活性物質をS/O型マイクロカプセルとすることが出来る。一方、親水性生理活性物質を界面活性剤との複合体として使用せず、親水性生理活性物質を溶融させた固体脂にそのまま仕込んだ場合、S/Oサスペンションの分散工程において、外水相に親水性生理活性物質の著しい流出が生じ、収率の大幅な低下を招くとともに、200μm以下の微細なマイクロカプセルを得ようとする際は粒子の変形が生じやすく、球形でハンドリング性に優れた粒子とならない場合が多い。
【0115】
本発明のS/O型マイクロカプセルは、そのままの形態での経口投与も可能であるが、打錠やハードカプセル、ソフトカプセルへの充填も可能であるほか、他の素材に混合、加工して使用することもできる。
【0116】
さらに本発明は、特定の親水性生理活性物質、具体的には乳タンパク質由来成分が、固体脂のマトリクス中に多分散したS/O型マイクロカプセルでもある。この場合の乳タンパク質由来成分としては、ラクトフェリンが好ましい。本発明の乳タンパク質由来成分含有S/O型マイクロカプセルの製造方法は特に限定されないが、上記本発明の製造方法によって得られるのが好ましい。本発明の製造方法を採用することで、ラクトフェリンを高含有するS/O型マイクロカプセルを得ることが可能である。本発明のラクトフェリン含有S/O型マイクロカプセル中のラクトフェリンの含有量は、0.01〜70重量%であることが好ましく、より好ましくは、1〜40重量%である。
【0117】
さらに本発明においては、使用する固体脂として、リパーゼによって分解されうる成分を使用することによって、腸溶性を有するS/O型マイクロカプセルとすることもできる。すなわち本発明のS/O型マイクロカプセルの好ましい一態様は、ラクトフェリンなどの胃で分解されやすい親水性生理活性物質が、胃では分解されず腸で効率よく吸収されうる製剤である。このようにして得られる本発明のラクトフェリン含有S/O型マイクロカプセルは、ラクトフェリンの持つ、免疫賦活、脂質代謝改善、骨粗鬆症の予防・改善、アレルギー症状の緩和、抗菌などの優れた効果を維持しており、経口投与によっても、充分にその効果を発揮することが出来る。
【実施例】
【0118】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0119】
以下の実施例及び比較例で、マイクロカプセルの平均粒子径、マイクロカプセル中の親水性生理活性物質の含量、及びマイクロカプセルへの親水性生理活性物質の封入収率は以下の手順で測定した。
【0120】
(マイクロカプセルの平均粒子径)
粒子径測定装置(堀場製作所 LA−950)を使用して測定した。
【0121】
(マイクロカプセル中の親水性生理活性物質の含量)
得られたマイクロカプセルを、使用した固体脂の融点以上の温度に加温して液状化した上で、水と混合し、マイクロカプセル内に封入した親水性生理活性物質を水相中に抽出した。抽出した水相中の親水性生理活性物質濃度をHPLCにより測定し、マイクロカプセル中の正味の親水性生理活性物質の含量を算出した。
【0122】
(マイクロカプセルへの親水性生理活性物質の封入収率)
工程(1)で仕込んだ親水性生理活性物質の重量と、上記方法により算出したマイクロカプセル中の親水性生理活性物質の含量より、下記式を用いて封入収率を算出した。
【0123】
封入収率(%)=(マイクロカプセル中の親水性生理活性物質の含量(重量%)×得られたマイクロカプセルの総重量)/工程(1)で仕込んだ親水性生理活性物質の重量
【実施例1】
【0124】
エタノール200mL中に、ラクトフェリン(和光純薬製)5gとショ糖エルカ酸エステル(三菱化学フーズ製、ER−290、HLB2)1.5gを添加し、40℃に加温しながらホモジナイザーにて分散し、混合液を調製した。
【0125】
上記混合液を、45℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながらエタノールを除去し、ラクトフェリンとショ糖エルカ酸エステルの複合体を得た。ここで得た複合体を、あらかじめ温度58℃に加熱して、溶融させておいたパーム分別脂(融点52℃)18gに添加し、ホモジナイザーにて分散し、ラクトフェリン複合体の分散したS/Oサスペンションを得た。次に該S/Oサスペンションをあらかじめ55℃に加熱しておいた、アラビアガム(0.5重量%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(阪本薬品工業製、ML−750、HLB14.8)(0.01重量%)含有水溶液300mLに添加し、温度57℃、撹拌所要動力0.34kW/m
3でディスクタービン翼を用いて10分間撹拌し、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ15℃に冷却しておいたアラビアガム(0.5重量部%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(0.01重量%)含有水溶液300mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥してS/O型マイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は380μmであり、マイクロカプセル中のラクトフェリン含量は18.9重量%であった。また、本実施例におけるラクトフェリンのマイクロカプセルへの封入収率は95.4%であった。また、得られたS/O型マイクロカプセルを走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−4800)で観察したところ、
図1に示したような滑らかな表面構造を有する粒子形状が観察された。
【実施例2】
【0126】
ヘキサン200mL中に、ラクトフェリン5gとショ糖ベヘニン酸エステル(三菱化学フーズ製、B−370、HLB3)1.5gを添加し、40℃に加温しながらホモジナイザーにて分散し、混合液を調製した。
【0127】
上記混合液を、45℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながらヘキサンを除去し、ラクトフェリンとショ糖ベヘニン酸エステルの複合体を得た。ここで得た複合体を、あらかじめ温度58℃に加熱して、溶融させておいたパーム分別脂(融点52℃)18gに添加し、ホモジナイザーにて分散し、ラクトフェリン複合体の分散したS/Oサスペンションを得た。次に該S/Oサスペンションをあらかじめ55℃に加熱しておいた、アラビアガム(0.5重量%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(阪本薬品工業製、ML−750、HLB14.8)(0.01重量%)含有水溶液300mLに添加し、温度57℃、撹拌所要動力0.34kW/m
3でディスクタービン翼を用いて10分間撹拌し、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ15℃に冷却しておいたアラビアガム(0.5重量部%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(0.01重量%)含有水溶液300mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥して、S/O型マイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は411μmであり、マイクロカプセル中のラクトフェリン含量は19.3重量%であった。また、本実施例におけるラクトフェリンのマイクロカプセルへの封入収率は96.1%であった。
【実施例3】
【0128】
ヘキサン200mL中に、ラクトフェリン5gとソルビタンベヘニン酸エステル(理研ビタミン製、ポエムB−150、HLB2.5)1.5gを添加し、40℃に加温しながらホモジナイザーにて分散し、混合液を調製した。
【0129】
上記混合液を、45℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌してヘキサンを除去し、ラクトフェリンとショ糖ベヘニン酸エステルの複合体を得た。ここで得た複合体を、あらかじめ温度58℃に加熱して、溶融させておいたパーム分別脂(融点52℃)18gに添加し、ホモジナイザーにて分散し、ラクトフェリン複合体の分散したS/Oサスペンションを得た。次に該S/Oサスペンションをあらかじめ55℃に加熱しておいた、アラビアガム(0.5重量%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(阪本薬品工業製、ML−750、HLB14.8)(0.01重量%)含有水溶液300mLに添加し、温度57℃、撹拌所要動力0.34kW/m
3でディスクタービン翼を用いて10分間撹拌し、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ15℃に冷却しておいたアラビアガム(0.5重量部%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(0.01重量%)含有水溶液300mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥して、S/O型マイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は323μmであり、マイクロカプセル中のラクトフェリン含量は17.0重量%であった。また、本実施例におけるラクトフェリンのマイクロカプセルへの封入収率は85.2%であった。
【実施例6】
【0132】
エタノール200mL中に、ラクトフェリン(和光純薬製)5gとショ糖エルカ酸エステル(三菱化学フーズ製、ER−290、HLB2)1.5gを添加し、40℃に加温しながらホモジナイザーにて分散し、混合液を調製した。
【0133】
上記混合液を、45℃、圧力13kPaの減圧条件で30分間撹拌しながらエタノールを除去し、ラクトフェリンとショ糖エルカ酸エステルの複合体を得た。ここで得た複合体を、あらかじめ温度58℃に加熱して、溶融させておいたパーム分別脂(融点52℃)18gに添加し、ホモジナイザーにて分散し、ラクトフェリン複合体の分散したS/Oサスペンションを得た。ここで得たS/Oサスペンションを、温度60℃に加温しながら、1流体ノズル(株式会社いけうち製、空円錐スプレーノズル)に0.3MPaの圧力でポンプ送液し、それを温度10℃の冷却気相中に噴霧してS/O型マイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は155μmであり、マイクロカプセル中のラクトフェリン含量は20.0重量%であった。また、本実施例におけるラクトフェリンのマイクロカプセルへの封入収率は98.0%であった。
【0134】
MCT200mL中に、ラクトフェリン5gの溶解した水溶液50mLと、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(理研ビタミン製、ポエムPR−100、HLB0.3)1.5gを添加し、45℃に加温しながらホモジナイザーにて分散し、ラクトフェリン水溶液の分散したW/Oエマルションを調製した。
【0135】
上記W/Oエマルション中の水分を除去し、S/Oサスペンションを得るべく、上記W/Oエマルションを温度45℃、圧力13kPaの減圧条件として脱水を試みたところ、液面が激しく発泡し、脱水操作を行うことができず、所望のS/Oサスペンションは得られなかった。
(比較例2)
ラクトフェリン5gを、あらかじめ58℃に加熱して、溶融させておいたパーム分別脂(融点52℃)18gに添加し、ホモジナイザーにて分散し、ラクトフェリンが分散したS/Oサスペンションを得た。得られたS/Oサスペンションをあらかじめ55℃に加熱しておいた、アラビアガム(0.5重量%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(阪本薬品工業製、ML−750、HLB14.8)(0.01重量%)含有水溶液300mLに添加し、温度57℃、撹拌所要動力0.34kW/m3でディスクタービン翼を用いて10分間撹拌し、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ15℃に冷却しておいたアラビアガム(0.5重量部%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(0.01重量%)含有水溶液300mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥して、S/O型マイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は340μmであり、マイクロカプセル中のラクトフェリン含量は8.3重量%であった。また、本比較例におけるラクトフェリンのマイクロカプセルへの封入収率は42.1%であった。
(比較例3)
ラクトフェリン5gとショ糖エルカ酸エステル1.5gを、あらかじめ58℃に加熱して、溶融させておいたパーム分別脂(融点52℃)18gに添加し、ホモジナイザーにて分散し、ラクトフェリンの分散したS/Oサスペンションを得た。得られたS/Oサスペンションをあらかじめ55℃に加熱しておいた、アラビアガム(0.5重量%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(阪本薬品工業製、ML−750、HLB14.8)(0.01重量%)含有水溶液300mLに添加し、温度57℃、撹拌所要動力0.34kW/m3でディスクタービン翼を用いて10分間撹拌し、S/O/Wエマルションを調製した。その後、該S/O/Wエマルションを、あらかじめ15℃に冷却しておいたアラビアガム(0.5重量部%)及びデカグリセリンモノラウリン酸エステル(0.01重量%)含有水溶液300mLに一度に添加して急冷させた後、吸引濾過、真空乾燥して、S/O型マイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒子径は401μmであり、マイクロカプセル中のラクトフェリン含量は9.9重量%であった。また、本比較例におけるラクトフェリンのマイクロカプセルへの封入収率は50.4%であった。
【0136】
表1に実施例
1〜3、6、および比較例
1〜3における実験条件と、得られたS/O型マイクロカプセルの粒子径、芯物質含量、封入収率の測定結果を示す。上記実施例
1〜3、6、および比較例2、3の結果より、いずれの方法においてもラクトフェリンを内包したS/O型マイクロカプセルを得ることはできるが、本発明の好ましい製造方法による実施例1〜3及び6は、本発明の製造方法以外の方法による
比較例2と比べて、ラクトフェリンの封入効率が非常に高いことがわかる。
【実施例7】
【0138】
人工胃液中でのラクトフェリン含有マイクロカプセルの安定性
実施例1で得られたラクトフェリン含有マイクロカプセルの人工胃液中での安定性をSDS-PAGEにて解析した。人工胃液は、ブタ胃粘膜由来のペプシン(和光純薬工業株式会社製)をpH1.2の崩壊試験第1液(関東化学株式会社製)に溶解させて調製した。実施例1で得られたラクトフェリン含有マイクロカプセルを人工胃液で120分間処理した後、マイクロカプセルを回収し、中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名「アクターM2」、理研ビタミン株式会社製)を用いて、カプセル基材である油脂を溶解させ、溶解後の溶液からラクトフェリンを水相に抽出した。抽出したラクトフェリン水溶液をSDS-PAGEにて確認した。対照としてラクトフェリン水溶液を人工胃液中で5、20、40、60および120分間処理した後、SDS-PAGEにてラクトフェリンマイクロカプセルと同様の条件で確認した。
【0139】
泳動は、分離ゲル濃度10%ポリアクリルアミドゲル(e−PAGEL E−R10L、アトー株式会社製)を用いて、20mAで85分間行った。ゲル染色はクマシーブリリアントブルー(商品名「イージーステイン・アクア」、アトー株式会社製)を使用した。
【0140】
図2に示すように、対照となるラクトフェリン水溶液は人工胃液中において、5分間の処理(レーン3)でラクトフェリンを示す80kDaのバンドが消失し、ラクトフェリンの分解が生じていることが分かった。一方、ラクトフェリン含有マイクロカプセルは、120分間の処理(レーン8)でもラクトフェリンを示す80kDaのバンドが確認され、かつ、ラクトフェリン分解物を示すバンドは確認されず、本発明のS/O型マイクロカプセル中のラクトフェリンは分解されることなく存在していることが確認された。すなわち、本発明のラクトフェリンが多分散したS/O型マイクロカプセルは、胃内での消化酵素耐性が機能付与されたことが実証された。
【実施例8】
【0141】
ラクトフェリン含有マイクロカプセルの脂質代謝改善評価
ICR系マウス(日本クレア製;雄、6週齢)を、表2に示すように、対照群(A群)、ラクトフェリン粉末投与群(市販のラクトフェリン粉末(和光純薬製)を投与:B群)、ラクトフェリン含有マイクロカプセル投与群(実施例1で得られたラクトフェリン含有マイクロカプセルを投与:C群)のそれぞれ3群構成(各群9匹)に分け、高脂肪粉末精製飼料(オリエンタル酵母社製、配合組成は表3)を基本飼料とした各飼料を自由摂取させて、4週間飼育した。なお、ラクトフェリン粉末投与群、ラクトフェリン含有マイクロカプセル投与群におけるラクトフェリンの投与量は飼料に対してラクトフェリン濃度換算で1wt%となるように調整した。
【0142】
各飼料を4週間投与した後、イソフルラン麻酔下で開腹し、腹部下大静脈より採血し、血清中の中性脂肪および遊離脂肪酸を測定した。その結果を
図3および
図4に示す。また、採血後に、精巣周囲、腎臓周囲、腸管膜周囲の脂肪組織を採取し、湿重量の測定を行った。その結果を
図5〜7に示す。
【0143】
図3および
図4の結果が示すように、ラクトフェリン含有マイクロカプセル投与群(C群)は、ラクトフェリン粉末投与群(B群)よりも血清中の中性脂肪及び遊離脂肪酸を低減させ、対照群(A群)と比較すると、これらを有意に低減させる効果が明らかとなった(Dunnet検定 *:P<0.05 ,**:P<0.01)。また、
図5〜7の結果が示すように、ラクトフェリン含有マイクロカプセル投与群において内臓脂肪の低減傾向があることも明らかとなった。すなわち、本発明のラクトフェリンが多分散したS/O型マイクロカプセルは、胃内において消化酵素耐性を持ち、高い活性を維持したまま腸に届けられることを示しており、本発明による製剤化の有効性が実証された。
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】