(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業機に設けられ、且つ当該作業機の駆動情報を送信する作業機用無線端末と、前記作業機の保管場所又は前記保管場所の周囲に設置され、且つ前記作業機用無線端末から送信された駆動情報を受信して収集する情報収集端末とを備え、
前記作業機用無線端末は、当該作業機用無線端末の起動時に起動信号を出力し、
前記情報収集端末は、
前記起動信号を受信時に、前記作業機用無線端末の起動を検出する起動検出手段と、
前記起動検出手段によって作業機用無線端末の起動が検出された後であって、前記駆動情報が受信できなくなった場合に、前記作業機用無線端末を設けた作業機が前記保管場所から離脱したと判断する離脱検出手段と、
前記離脱検出手段によって作業機の離脱が検出された後、前記作業機用無線端末から送信された駆動情報が再び受信可能となった場合に、当該離脱が検出された作業機が前記保管場所へ復帰したと、判断する復帰検出手段と、
前記作業機について、前記離脱検出手段による離脱の検出と前記復帰検出手段による復帰の検出とが揃った後、前記作業機用無線端末から送信された駆動情報を収集する駆動情報収集手段と、を有することを特徴とする作業機の情報収集システム。
前記情報収集端末は、少なくとも前記保管場所を含むエリアを無線通信可能な通信エリアとして設定していることを特徴とする請求項1に記載の作業機の情報収集システム。
前記情報収集端末は、前記離脱検出手段で検出した前記作業機の離脱を記録する離脱記録手段と、前記復帰検出手段で検出した前記作業機の復帰を記録する復帰記録手段とを有し、
前記情報収集端末の駆動情報収集手段は、前記作業機について、前記離脱記録手段による離脱の記録と前記復帰検出手段による復帰の記録とが揃った後、前記作業機用無線端末から送信された駆動情報を収集することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機の情報収集システム。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラクタ等の作業機のメンテナンスについて、その実施時期は、当該作業機の稼働時間を基準として決められている。この作業機の稼働時間はアワメータ時間とも呼ばれ、作業機のECU(Electric Control Unit)などで管理されている。
作業機のメンテナンスは、消耗部品の交換を中心に複数のメンテナンス項目に分けられている。各メンテナンス項目は、それぞれ異なるアワメータ時間に実施されるので、作業機は、各メンテナンス項目の実施時期が到来すると、それぞれのメンテナンス項目に対応して警告等の報知を行う仕組みを有している。
【0003】
このメンテナンスの報知が発せられると、作業機のユーザは、当該作業機をディーラに持ち込んで、当該報知に対応する消耗部品の交換や定期点検などのメンテナンス作業を受ける。
ディーラは、メンテナンスや修理のために作業機が持ち込まれたとき、又はメンテナンスや修理のためにユーザを訪問したときにしか、当該作業機のアワメータ時間を把握することができない。メンテナンスや修理を適切に行うためには、日々の稼働状況を把握することが重要である。にもかかわらず、前回のメンテナンスや修理から今回までの作業機の稼働状況(日々の稼働時間)などをディーラが収集するには、ユーザからのヒアリングに頼らざるを得ないのが現状である。
【0004】
そこで、ユーザが日々の稼働状況の記録を行えばよいが、日々確実に記録することは困難であるため、作業機の稼働状況を自動的に収集するシステムが望まれている。
作業機の稼働状況を収集するタイミングとしては、作業機が作業を終えてユーザの保管場所に戻ってきたときが最適である。よって、作業機が保管場所に戻ってきたことの検知と作業機の稼働状況の収集とを自動的に行うシステムが必要となる。
【0005】
このような作業機の稼働状況を自動的に収集するシステムではないが、物流トラックの入出庫を管理するシステムとして特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1に開示の配送車両関連処理を自動化するシステムは、動力ユニットに関連付けられた第1の識別子を取得し、前記動力ユニットの管理の下で輸送されるコンテナ装置に関連付けられた第2の識別子を取得するようにされたリーダシステムと、前記リーダシステムから、前記第1及び第2の識別子を受信し、前記識別子のうちの少なくとも1つを用いてデータベースに問い合わせを行い、前記動力ユニット及び前記コンテナ装置に関連付けられたデータを取得するようにされた情報管理システムとを備えることを特徴とするものである。
【0006】
また、交通機関の入退情報を配信するシステムとして特許文献2に開示されたものがある。
特許文献2に開示の入退情報配信システムは、管理元から、カードリーダを備えた改札装置を有する交通機関を利用して、カードリーダを備えた施設へ行く利用者が所持し、前記改札装置のカードリーダにて読み取られるIDデータが格納されているICカードと、前記交通機関に設けられた交通機関サーバと、前記施設に設けられた施設サーバと、前記交通機関サーバに設けられ、前記IDデータ、前記IDデータに対応した前記利用者を特定可能な情報を有するメールアドレスが格納された交通機関データベースと、前記交通機関サーバに設けられ、前記改札装置のカードリーダにて前記IDデータが読み取られると、前記交通機関データベースに格納されている対応する前記メールアドレス宛に前記改札装置を通過したことを示す改札通過情報メールを送信する交通機関送信手段と、前記施設にて前記改札通過情報メールを受信する施設受信手段と、前記施設サーバに設けられ、前記メールアドレスの中で前記利用者を特定するための情報、利用者情報、ならびに前記管理元のメールアドレスを格納した施設データベースと、前記管理元メールアドレスへ前記施設受信手段で受信された前記利用者の改札通過情報をメール送信する施設送信手段とを具備することを特徴とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の配送車両関連処理を自動化するシステムは、配送車両、コンテナ装置、及びその他の物品の到着又は出発を自動検出することにより、中間準備地域における在庫及びディスパッチ処理を自動化するものである。しかしこのシステムは、RFIDタグが取り付けられた配送車両やコンテナ装置などがリーダシステムを通過したことを単に検知するだけのものである。
【0009】
よって、特許文献1のシステムを用いても、作業機が保管場所に設けられたリーダシステムを通過したことは検知できるが、作業機が保管場所から出て行ったことと、保管場所へ帰って来たこととを正確に区別して検出することが困難である。
また、特許文献2に開示の入退情報配信システムは、ICカードを改札装置のカードリーダに読み取らせることで、利用者が、当該改札装置が設置された複数の駅及び施設を通過したことを単に検知するものである。よって、利用者の通過を単に検知するだけの特許文献2のシステムを用いても、作業機が保管場所から出て行ったことと、同一の保管場所へ帰って来たこととを正確に区別して検出することは困難である。
【0010】
特許文献2に類似の技術として、高速道路などに設置されているETC(Electric Toll Collection)システムも広く知られているが、作業機の保管場所への出入りを正確に検出するには、特許文献2と同様の課題を有している。
そこで、本発明は、作業機が保管場所を一旦離れた(離脱した)後に帰って来た(復帰した)ことを正確に検出すると共に、復帰した作業機に関する運行情報や故障履歴などを、人手を介さず自動的に収集できる作業機の情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、作業機に設けられ、且つ当該作業機の稼働情報を送信する作業機用無線端末と、前記作業機の保管場所又は前記保管場所の周囲に設置され、且つ前記作業機用無線端末から送信された駆動情報を受信して収集する情報収集端末とを備える作業機の情報収集システムであって、前記情報収集端末は、前記作業機用無線端末との無線通信が不能となったことに基づいて、当該作業機用無線端末を設けた作業機の前記保管場所からの離脱を検出する離脱検出手段と、前記離脱検出手段によって離脱が検出された作業機に設けられた作業機用無線端末との無線通信が再び可能となったことに基づいて、当該離脱が検出された作業機の前記保管場所への復帰を検出する復帰検出手段と、前記作業機について、前記離脱検出手段による離脱の検出と前記復帰検出手段による復帰の検出とが揃ったときに、当該作業機の作業機用無線端末との無線通信によって作業機の駆動情報を収集する駆動情報収集手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
ここで、前記情報収集端末は、少なくとも前記保管場所を含むエリアを無線通信可能な通信エリアとして設定していると好ましい。
また、前記情報収集端末は、前記離脱検出手段で検出した前記作業機の離脱を記録する離脱記録手段と、前記復帰検出手段で検出した前記作業機の復帰を記録する復帰記録手段とを有し、前記情報収集端末の駆動情報収集手段は、前記作業機について、前記離脱記録手段による離脱の記録と前記復帰検出手段による復帰の記録とが揃ったときに、当該作業機の作業機用無線端末との無線通信によって作業機の駆動情報を収集すると好ましい。
【0013】
さらに、前記情報収集端末は、前記駆動情報収集手段で収集された駆動情報を記憶する駆動情報記憶手段と、前記離脱検出手段によって保管場所からの作業機の離脱が検出されたときに既に前記駆動情報記憶手段に記憶されている前記作業機の第1の駆動情報、及び前記復帰検出手段によって保管場所への復帰が検出されたときに収集された前記作業機の第2の駆動情報に基づいて、当該作業機の駆動情報を算出する駆動情報算出手段とを備えていると好ましい。
【0014】
加えて、前記駆動情報収集手段は、前記作業機の前記保管場所への復帰の検出とを繰り返す毎に、当該作業機の前記第2の駆動情報を収集すると好ましい。
本発明の最も好ましい技術的手段は、以下の通りである。
本発明の作業機の情報収集システムは、作業機に設けられ、且つ当該作業機の駆動情報を送信する作業機用無線端末と、前記作業機の保管場所又は前記保管場所の周囲に設置され、且つ前記作業機用無線端末から送信された駆動情報を受信して収集する情報収集端末とを備え、前記作業機用無線端末は、当該作業機用無線端末の起動時に起動信号を出力し、前記情報収集端末は、前記起動信号を受信時に、前記作業機用無線端末の起動を検出する起動検出手段と、前記起動検出手段によって作業機用無線端末の起動が検出された後であって、前記駆動情報が受信できなくなった場合に、前記作業機用無線端末を設けた作業機が前記保管場所から離脱したと判断する離脱検出手段と、前記離脱検出手段によって作業機の離脱が検出された後、前記作業機用無線端末から送信された駆動情報が再び受信可能となった場合に、当該離脱が検出された作業機が前記保管場所へ復帰したと、判断する復帰検出手段と、前記作業機について、前記離脱検出手段による離脱の検出と前記復帰検出手段による復帰の検出とが揃った後、前記作業機用無線端末から送信された駆動情報を収集する駆動情報収集手段と、を有することを特徴とする。
前記情報収集端末は、前記離脱検出手段で検出した前記作業機の離脱を記録する離脱記録手段と、前記復帰検出手段で検出した前記作業機の復帰を記録する復帰記録手段とを有し、前記情報収集端末の駆動情報収集手段は、前記作業機について、前記離脱記録手段による離脱の記録と前記復帰検出手段による復帰の記録とが揃った後、前記作業機用無線端末から送信された駆動情報を収集することを特徴とする。
前記情報収集端末は、前記駆動情報収集手段で収集された駆動情報を記憶する駆動情報記憶手段と、前記離脱検出手段によって保管場所からの作業機の離脱が検出されたときに既に前記駆動情報記憶手段に記憶されている前記作業機の第1の駆動情報、及び前記復帰検出手段によって保管場所への復帰が検出されたときに収集された前記作業機の第2の駆動情報に基づいて、当該作業機の駆動情報の変化を算出する駆動情報算出手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1によれば、作業機が保管場所を一旦離れた(離脱した)後に帰って来た(復帰した)ことを正確に検出すると共に、復帰した作業機に関する運行情報や故障履歴などを、人手を介さず自動的に収集することができる。
請求項2によれば、作業機の保管場所からの離脱及び保管場所への復帰をより正確に検出することができる。
【0016】
請求項3によれば、駆動情報を収集する作業機を的確に判定することができる。
請求項4によれば、収集した駆動情報に基づいて作業機の変化を的確に把握することができる。
請求項5によれば、作業機からの駆動情報の収集を継続的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態による作業機の情報収集システム1の全体構成を示す図である。
本実施形態による作業機の情報収集システム1(以下、情報収集システム1という)は、例えば農家(ユーザ)の保管場所2から作業機3が発車して離れた(離脱した)ことを、無線通信により自動的に検出する。この後、情報収集システム1は、作業を終えた作業機3が保管場所2に戻ってきた(復帰した)ことを無線通信により自動的に検出する。その上で、情報収集システム1は、当該復帰した作業機3の駆動情報を無線通信により自動的に収集するものである。このとき収集された作業機3の駆動情報は、インターネット回線などの情報通信網4を介してメーカ(製造会社)やディーラ(販売及び保守会社)のサーバに送信されて、当該作業機3の保守(メンテナンス)や品質管理に役立てられる。
【0019】
図1を参照しながら、情報収集システム1について詳しく説明する。
情報収集システム1は、作業機3(トラクタ3)に設けられた作業機用無線端末5と、トラクタ3を保有して使用する、例えば農家(ユーザ)の保管場所2又は保管場所2の周辺に設置された情報収集端末6と、を含んで構成されている。これらに加えて情報収集システム1は、トラクタ3を製造するメーカ(製造会社)に設置されたメーカ管理サーバ7と、トラクタ3の販売及び保守(メンテナンス)を実施するディーラ(販売及び保守会社)に設置されたディーラ管理サーバ8とを含むこともできる。
【0020】
図1において、保管場所2は納屋などの倉庫であり、ユーザがトラクタ3を保管する場所である。保管場所2には、トラクタ3が格納されると共に、トラクタ3との間で無線通信を行ってトラクタ3の駆動情報(運行情報、アワメータ情報、故障情報など)を自動的に収集する情報収集端末6が備えられている。情報収集端末6については、後に詳しく説明する。
【0021】
図1においてメーカは、メーカ管理サーバ7を備えている。メーカ管理サーバ7は、保管場所2の情報収集端末6から送信されたトラクタ3の駆動情報を受信して蓄積し、蓄積したトラクタ3の駆動情報をディーラのディーラ管理サーバ8に転送するものである。
図1においてディーラは、ディーラ管理サーバ8を備えている。ディーラ管理サーバ8は、メーカのメーカ管理サーバ7又はユーザの情報収集端末6からトラクタ3の駆動情報を受信するものである。
【0022】
ディーラは、ディーラ管理サーバ8で受信したトラクタ3の駆動情報を基にトラクタ3のメンテナンス時期や故障を把握し、メンテナンスの実施や故障箇所の修理を、ユーザに働きかけることができる。
本実施形態による情報収集システム1は、トラクタ3の駆動情報をユーザの保管場所2において情報収集端末6を用いて自動的に収集することに特徴があるので、その収集のための構成及び動作について、以下に詳述する。
【0023】
まず、駆動情報の収集対象となるトラクタ3について説明する。
図9に示すように、トラクタ3は、前後に車輪を有する走行車体10に、エンジン(例えば、ディーゼルエンジン)11、変速装置12等が搭載されている。この走行車体10の後部には、3点リンク機構16が昇降可能に設けられている。この3点リンク機構16には、各種の作業装置(図例は耕耘装置)13が着脱自在となっている。この作業装置13には、PTO軸を介してエンジン11からの動力が伝達される。また、エンジン11の後方には、独立搭載型のキャビン14が設けられており、キャビン14内に運転席15が設けられている。このトラクタ3は、走行や作業装置13による作業が行えるようになっている。
【0024】
図2に示すように、上述の構成のトラクタ3は、走行系や作業系の制御を行う作業機制御装置をさらに備えている。この作業機制御装置は、3つの制御装置(第1制御装置20、第2制御装置21、第3制御装置22)から構成されている。
第1制御装置20は、トラクタ3の全体を制御するものであり、第2制御装置21は主にエンジン11を制御するものである。また、第3制御装置22は、操作系(スイッチ等)からの入力に基づく所定の操作信号を、第1制御装置20や第2制御装置21に出力するものである。これら第1制御装置20、第2制御装置21、及び第3制御装置22は、車載ネットワークCAN(Controller Area Network)によって相互通信が行えるように接続されている。
【0025】
このような作業機制御装置の第1制御装置20の内部メモリ25には、トラクタ3を特定するための固有情報が保存されている。ここで、固有情報とは、トラクタ3を特定するための情報であり、例えば、トラクタ3の1台1台に割り当てられたID(identification)である。本実施形態においては、ID番号がX0001,Y0002,Z0003の3台のトラクタ3が、保管場所2にあると仮定する。
【0026】
上述の第1制御装置20には作業機用無線端末5が接続されている。この作業機用無線端末5は、トラクタ3の保管場所2に設置された情報収集端末6と無線通信を行うためのものであって、電波を発信する無線端末(無線機)である。作業機用無線端末5は、例えば、トラクタ3の運転席の周辺に設けられている。
本実施形態において、作業機3の作業機用無線端末5と保管場所2の情報収集端末6との間の無線通信方式は、特に限定されるものではない。送受信したいデータの容量に応じて所望の転送レートを確保できる方式であれば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)など、双方向通信が可能で、通信距離が例えば数十m〜数百m程度の一般的な無線通信方式を採用すればよい。
【0027】
この作業機用無線端末5は、様々なトラクタ3の情報を外部に送信するものである。作業機用無線端末5は、例えば、トラクタ3を特定するための固有情報、トラクタ3が稼働して蓄積又は変更される駆動情報、或いは、トラクタ3のエンジンなどが起動したときの起動情報(起動信号)を外部(保管場所2の情報収集端末6)に送信する。作業機用無線端末5は、上記固有情報、駆動情報などを所定の時間間隔で周期的に外部へ送信する。
【0028】
駆動情報とは、具体的には、トラクタ3のエンジンが稼働した時間数(稼働時間)や、トラクタ3に発生した不具合の情報(故障情報)のことである。稼働時間は、第1制御装置20内のアワメータによって管理されて内部メモリ25に格納されている。
また、故障情報は、例えば、エンジンのオーバーヒート、燃料センサの断線、水温センサの断線、CAN通信の不能など、トラクタ3の故障に関するものである。これら故障を識別できるように、故障内容毎に警告コードと呼ばれる数値及び記号が割り当てられており、発生した故障に対応する警告コードが、運転席に設けられた表示装置などに表示される。
【0029】
第1制御装置20の内部メモリ25には、表示装置などに表示された警告コードが、当該警告が表示されたときのアワメータの値に対応づけられて、故障情報として格納されている。
このようにして、作業機用無線端末5は、アワメータが示す稼働時間と、故障情報とを含む情報を駆動情報として、固有情報と共に保管場所2の情報収集端末6に送信する。したがって、情報収集端末6側では、特定のトラクタ3の駆動情報を取得(収集)することが可能となる。
【0030】
なお、トラクタ3の走行系や作業系の制御を行う制御装置の個数は、上述したものに限定されない。例えば、第1制御装置20、第2制御装置21、第3制御装置22を一体化して1つの制御装置で構成してもよい。また、トラクタ3は、少なくとも1つの制御装置によって走行や作業装置13による作業が行えるものであればよく、走行や作業を行うための制御方法などは上述したものに限定されない。
【0031】
次に、
図3を参照しながら、トラクタ3の保管場所2に設置された情報収集端末6について説明する。情報収集端末6は、作業機用無線端末5からの情報を受信できるパーソナルコンピュータなどの演算装置から構成されている。このような情報収集端末6では、トラクタ3の作業機用無線端末5から所定の時間間隔で周期的に送信された駆動情報(稼働時間及び故障情報)を含む情報を無線通信によって受信して、受信した駆動情報の処理を行う。
【0032】
作業機用無線端末5及び情報収集端末6は、それぞれ電波を送出可能な距離及び範囲が決まっているため、両者間の無線通信は、所定の距離及び範囲において可能となる。
本実施形態において、両者間の無線通信が可能な範囲は、
図1の破線で示す無線通信エリア9のように保管場所2とほぼ一致する範囲となるように設定するとよい。つまり、トラクタ3が保管場所2にあるときは、作業機用無線端末5と情報収集端末6との無線通信が可能であり、トラクタ3が保管場所2から出ると、当該無線通信が不能となる。
【0033】
このような情報収集端末6は、起動検出手段61、駆動情報受信手段62、離脱検出手段63、復帰検出手段64、駆動情報収集手段65、及び駆動情報算出手段66を有している。これら各手段は、電子回路やコンピュタプログラムなどで実現される。
起動検出手段61は、保管場所2にあるトラクタ3が始動して作業機用無線端末5が起動したときに、作業機用無線端末5から送信された起動信号などを受信して、作業機用無線端末5の起動を検出するものである。起動検出手段61は、作業機用無線端末5の起動信号を検知したことで、トラクタ3が保管場所2に存在することが確認できる。例えば、この起動信号の検知直後に作業機用無線端末5との無線通信可能となれば、保管場所2に保管しているトラクタ3のエンジン等が始動して作業機用無線端末5が無線通信可能となった状態であると判断できる。
【0034】
また、起動検出手段61が作業機用無線端末5の起動信号を検知することなく作業機用無線端末5が無線通信可能となれば、保管場所2の外にあるトラクタ3が保管場所2に戻ってきて無線通信が可能となった状態(復帰による無線通信可能状態)であると判断できる。
駆動情報受信手段62は、起動検出手段61が作業機用無線端末5の起動を検出したときから、作業機用無線端末5から所定間隔で周期的に送信される駆動情報(稼働時間及び故障情報)を受信するものである。
【0035】
離脱検出手段63は、所定間隔で周期的に送信される駆動情報を、駆動情報受信手段62が受信し続けているか否かを監視し、駆動情報の受信ができなくなったときに、トラクタ3が保管場所2から移動(離脱)したことを検出するものである。
例えば、保管場所にあるトラクタ3のエンジンが始動して作業機用無線端末5が起動し、その後に駆動情報受信手段62が駆動情報を周期的に受信できる状態であれば、離脱検出手段63はトラクタ3が保管場所に存在していると判断する。一方、駆動情報受信手段62による駆動情報の周期的な受信が途絶えてしまい、所定時間以上駆動情報の受信ができなくなると、離脱検出手段63はトラクタ3が保管場所に存在せずに保管場所2から離脱したと判断する。なお、離脱検出手段63にてトラクタ3の保管場所からの離脱の判定は、駆動情報の受信間隔(例えば、1秒毎)の数倍以上、駆動情報の受信ができなくなるとすることが好ましい。
【0036】
離脱検出手段63は、離脱記録手段67を有しており、トラクタ3が離脱したことを検出すると、離脱したトラクタ3のID番号(固有情報)と当該離脱したこととを離脱記録手段67に記録する。
図4(a)は、離脱記録手段67が保持する離脱記録テーブルを示している。この離脱記録テーブルには、トラクタ3について離脱したか否かが記録されている。
図4(a)において、ID番号X0001及びY0002のトラクタ3は、離脱の項目にフラグ「1」が付されており、保管場所2を離脱したことを示している。また、ID番号Z0003のトラクタ3は、離脱の項目にフラグ「0」が付されており、保管場所2を離脱していないことを示している。
【0037】
復帰検出手段64は、離脱検出手段63がトラクタ3の離脱を検出したときから、駆動情報受信手段62が駆動情報の受信を再開したか否かを監視し、駆動情報の受信が再開されたときに、トラクタ3の保管場所2への戻り(復帰)を検出するものである。
例えば、駆動情報受信手段62が、駆動情報を受信できなくなっている状態(離脱と判断された状態)から、再び、所定間隔で周期的に駆動情報を受信できる状態に変化すると、復帰検出手段64は、トラクタ3が保管場所2へ戻ってきた(復帰した)と判断する。一方で、駆動情報受信手段62が、離脱の判断後全く駆動情報を受信できていない状態では、復帰検出手段64は、トラクタ3が保管場所2へ戻って来ていないと判断する。
【0038】
復帰検出手段64は、復帰記録手段68を有しており、トラクタ3が復帰したことを検出すると、復帰したトラクタ3のIDと当該復帰したこととを復帰記録手段68に記録する。
図4(b)は、復帰記録手段68が保持する復帰記録テーブルを示している。この復帰記録テーブルには、トラクタ3について復帰したか否かが記録されている。
図4(b)において、ID番号X0001のトラクタ3は、復帰の項目にフラグ「1」が付されており、保管場所2に復帰したことを示している。また、ID番号Y0002及びZ0003のトラクタ3は、復帰の項目にフラグ「0」が付されており、保管場所2から未だ離脱していないか、離脱した後保管場所2に復帰していないことを示している。
【0039】
駆動情報収集手段65は、トラクタ3について、離脱検出手段63による離脱の検出と復帰検出手段64による復帰の検出とが揃ったときに、当該トラクタ3の復帰が検出されたときの駆動情報を収集し記憶する手段である。駆動情報収集手段65は、記憶部(駆動情報記憶手段)69を有していて、収集した駆動情報を記憶部69に記憶する。
駆動情報収集手段65は、同一のID番号について離脱記録手段67による離脱の記録(離脱記録)と復帰検出手段64による復帰の記録(復帰記録)とが揃ったときに、つまり、復帰が検出されたトラクタ3のIDについて離脱記録手段67においてすでに離脱が記録されていたときに、復帰したトラクタ3の作業機用無線端末5との無線通信によって駆動情報受信手段62で受信した作業機3の駆動情報を収集し、記憶部(駆動情報記憶手段)69に記憶する。
【0040】
図4(c)に示すように、駆動情報収集手段65は、離脱記録手段67の離脱記録テーブルと復帰記録手段68の復帰記録テーブルを読み出して、各トラクタ3についての離脱及び復帰の状態を把握する。
図4(c)に基づいて、駆動情報収集手段65は、ID番号X0001のトラクタ3について離脱及び復帰の両項目のフラグが「1」であるため、当該トラクタ3は保管場所2を離脱した後に復帰していると判断する。また、駆動情報収集手段65は、ID番号Y0002のトラクタ3について離脱の項目のフラグが「1」であるが、復帰の項目のフラグが「0」であるため、当該トラクタ3は保管場所2から離脱したものの、保管場所2に復帰していないと判断する。さらに、ID番号Z0003のトラクタ3について離脱及び復帰の両項目のフラグが「0」であるため、当該トラクタ3は保管場所2を未だ離脱していないと判断する。
【0041】
これらの判断結果から、駆動情報収集手段65は、保管場所2を一旦離脱した後に復帰したID番号X0001のトラクタ3の駆動情報を収集することを決定する。
これによって駆動情報収集手段65は、ID番号X0001のトラクタ3の始動前(作業機用無線端末5の起動前)、つまり、当該トラクタ3の前回の復帰時に記憶した第1の駆動情報と、当該トラクタ3の今回の復帰時に記憶した第2の駆動情報とを記憶部69に保持することになる。また、駆動情報収集手段65は、トラクタ3の駆動情報の記憶部69への記憶が完了すると、駆動情報を記憶したトラクタ3に対応する離脱記録テーブル及び復帰記憶テーブルの離脱、復帰を示すフラグをリセット(フラグを0に設定)する。
【0042】
駆動情報算出手段66は、駆動情報収集手段65に記憶された第1の駆動情報と第2の駆動情報とを比較して、保管場所2からの離脱が検出されてから保管場所2への復帰が検出されるまでの駆動情報の増加時間数及び故障情報の変化を算出する。例えば、第1の駆動情報や第2の駆動情報がアワメータであって、離脱前(起動前)のアワメータの時間(第1の駆動情報)が100時間であり、離脱して復帰後のアワメータの時間(第2の駆動情報)が120時間であったとする。そのとき、駆動情報算出手段66は、復帰後のアワメータの時間から離脱前(起動前)のアワメータの時間を差し引くことにより、離脱から復帰までのアワメータの変化時間が20時間であると求める。なお、駆動情報算出66によって算出する事項は、アワメータに限らず、故障情報の変化や他の情報の変化でも構わない。
【0043】
情報収集端末6は、収集した稼働時間に基づいて、
図5に示す稼働時間情報を図示省略の表示部に表示する。例えば、情報収集端末6は、駆動情報収集手段65で収集したトラクタ3の稼働時間と日付とを対応させることによって、トラクタ3の日毎の稼働時間帯及び1日の合計稼働時間を示す稼働時間情報を作成し、作成した稼働時間情報を表示部に表示する。
【0044】
また、情報収集端末6は、収集した故障情報に基づいて、
図6に示す故障情報の一覧表を表示部に表示する。例えば、情報収集端末6は、駆動情報収集手段65で収集したトラクタ3の故障内容及び故障発生時のアワメータを含む故障情報に基づき、故障情報の一覧表を作成して表示部に表示する。
上述の情報収集端末6の構成によって、トラクタ3の日々の駆動情報を自動的に収集することができる。トラクタ3のユーザは、これら自動的に収集された駆動情報によって、
図5の稼働時間情報や
図6の故障情報の一覧表を得ることができ、トラクタ3の状態を容易に把握することができると共に管理することができる。
【0045】
図5のフローチャートを参照しながら、情報収集システム1の動作について、トラクタ3の保管場所2からの離脱までを説明する。
ユーザが、ID番号X0001及びY0002の2台のトラクタ3を保管場所2で始動させると、2台のトラクタ3の作業機用無線端末5も起動する。作業機用無線端末5が起動すると、作業機用無線端末5は、ID番号に関連付けられた起動信号を外部に送信すると共に、第1制御装置20に格納された駆動情報(駆動情報及び故障情報)も所定の間隔で周期的に送信する(ステップS1)。
【0046】
起動検出手段61は、作業機用無線端末5から送信された起動信号を受信して、ID番号X0001及びY0002の2台のトラクタ3の始動及び両トラクタ3の作業機用無線端末5の起動を検出する(ステップS2)。
駆動情報受信手段62は、起動検出手段61が作業機用無線端末5の起動を検出したことを受けて、当該2台のトラクタ3の作業機用無線端末5から所定間隔で周期的に送信される駆動情報(稼働時間及び故障情報)の受信を開始する(ステップS3)。
【0047】
離脱検出手段63は、所定間隔で周期的に送信される駆動情報を、駆動情報受信手段62が受信し続けているか否かを監視する(ステップS4)。
ID番号X0001及びY0002の2台のトラクタ3が保管場所2から移動し、保管場所2の情報収集端末6の無線通信エリア9から離脱すると、駆動情報受信手段62は、当該2台のトラクタ3の作業機用無線端末5から送信される駆動情報を受信できなくなる。
【0048】
これによって離脱検出手段63は、駆動情報受信手段62が駆動情報を受信できなくなったことを検知し、ID番号X0001及びY0002のトラクタ3が保管場所2から移動(離脱)したことを検出する(ステップS5)。
離脱記録手段67は、離脱した2台のトラクタ3のIDと当該離脱したこととを記録する(ステップS6)。このときの記録は、
図4(a)に示した離脱記録テーブルのように、ID番号にフラグを対応づけて行われる。
【0049】
次に、
図6のフローチャートを参照しながら、情報収集システム1の動作について、トラクタ3の保管場所2への復帰以降を説明する。
保管場所2を離脱したID番号X0001及びY0002の2台のトラクタ3のうち、ID番号X0001のトラクタ3が、保管場所2(つまり、無線通信エリア9)へ戻る(復帰する)と、駆動情報受信手段62は、ID番号X0001のトラクタ3の駆動情報の受信を再び開始する(ステップS7)。
【0050】
復帰検出手段64は、駆動情報受信手段62が当該トラクタ3の駆動情報の受信を開始したことを検知し、ID番号X0001のトラクタ3が保管場所2へ戻った(復帰した)ことを検出する(ステップS8)。
復帰記録手段68は、復帰したトラクタ3のIDと当該復帰したこととを記録する(ステップS9)。このときの記録は、
図4(b)に示した復帰記録テーブルのように、ID番号にフラグを対応づけて行われる。
【0051】
駆動情報収集手段65は、任意のタイミング又は復帰記録手段が復帰記録テーブルの更新をしたタイミングで、離脱記録手段67の離脱記録テーブルと復帰記録手段68の復帰記録テーブルとを参照し、
図4(c)に示すようなテーブルを得る。
このとき駆動情報収集手段65は、離脱及び復帰の両項目にフラグ「1」が付されているID番号X0001のトラクタ3について情報収集すると決定する。この決定に従って、駆動情報収集手段65は、ID番号X0001のトラクタ3の作業機用無線端末5との無線通信によって受信したトラクタ3の駆動情報を、第2の駆動情報として収集し、収集した第2の駆動情報を記憶部69に記憶する(ステップS10)。
【0052】
駆動情報算出手段66は、記憶部69に既に記憶されている第1の駆動情報と新たに記憶部69に記憶された第2の駆動情報とを比較して、保管場所2からの離脱が検出されてから保管場所2への復帰が検出されるまでの稼働時間(アワメータ)の増加時間数及び故障情報の変化を算出する(ステップS11)。
情報収集端末6は、駆動情報算出手段66によって算出された情報に基づいて、
図5に示す稼働時間情報、
図6に示す故障情報の変化を、表示部に表示する(ステップS12)。
【0053】
情報収集端末6は、駆動情報算出手段66によって算出された情報である、稼働時間情報、故障情報の変化を、ネットワーク4を介してメーカのメーカ管理サーバ7に送信する(ステップS13)。
メーカ管理サーバ7は、情報収集端末6から受信した情報を蓄積すると共に、当該情報をディーラのディーラ管理サーバ8に送信する(ステップS14)。
【0054】
以上のような処理を経て、保管場所2を一旦離れた(離脱した)後に帰って来た(復帰した)トラクタ3に関する駆動情報や故障履歴などを、人手を介さず自動的に収集できる。
また、本実施形態の情報収集システム1によって、トラクタ3の日々の駆動情報を自動的に収集することができ、トラクタ3のユーザは、これら自動的に収集された駆動情報によって、トラクタ3の状態を容易に把握することができると共に管理することができる。
【0055】
さらに、メーカ及びディーラもトラクタ3の日々の駆動情報を自動的に収集することができるので、適切な時期にトラクタ3のメンテナンス及び修理の呼びかけを行うことができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、トラクタ3の保管場所2からの離脱や保管場所2への復帰を、駆動情報受信手段62が、作業機用無線端末5から送信される駆動情報を受信しているか否かに基づいて判断している。しかし、作業機用無線端末5を、動作している間一定周期で起動信号を発信し続けるように構成してもよい。その上で、起動検出手段61が作業機用無線端末5からの起動信号を受信している限り、トラクタ3は保管場所2に存在すると判断しても良い。
【0057】
つまり、起動検出手段61が起動信号の受信を開始してから後に、起動信号の受信が不能となると、トラクタ3が保管場所2から離脱したと判断して、離脱検出手段63及び離脱記録手段67が所定の動作を行えばよい。また、トラクタ3が保管場所2から離脱した後に、起動信号の受信が再び可能となると、トラクタ3が保管場所2へ復帰したと判断して、復帰検出手段64及び復帰記録手段68が所定の動作を行えばよい。
【0058】
これとは別に、上述した実施形態では、トラクタ3の固有情報及び駆動情報が第1制御装置20(制御装置)に保存されていて、作業機用無線端末5は、第1制御装置20に保存された固有情報及び駆動情報を無線にて送信するようにしていたが、トラクタ3の固有情報は制御装置に保存されていなくてもよい。作業機用無線端末5が固有情報及び駆動情報を格納していて、当該作業機用無線端末5が無線にて自ら有する固有情報及び駆動情報を送信してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では作業機としてトラクタを例示したが、本発明は、トラクタに限らず建設機械にも適用することができる。