(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに発光色が異なる、一方側に位置し、対応するインクが塗布される第1発光部と、中央側に位置し、対応するインクが塗布される第2発光部と、他方側に位置し、対応するインクが塗布される第3発光部とが順に配列された複数の発光部を有し、各発光部が、第1電極を含む下地層と、前記下地層に対向して設けられ、発光色ごとに有機発光材料を含むインクが塗布されて形成された有機発光層と、前記有機発光層に対して前記下地層と反対側に設けられる第2電極と、前記下地層に対向して設けられ、前記複数の発光部のうちの隣り合う発光部を区画し、各発光部を規定する複数の隔壁とを備える、第1画素部と、
互いに発光色が異なる、一方側に位置し、対応するインクが塗布される第1発光部と、中央側に位置し、対応するインクが塗布される第2発光部と、他方側に位置し、対応するインクが塗布される第3発光部とが順に配列された複数の発光部を有し、各発光部が、第1電極を含む下地層と、前記下地層に対向して設けられ、発光色ごとに有機発光材料を含むインクが塗布されて形成された有機発光層と、前記有機発光層に対して前記下地層と反対側に設けられる第2電極と、前記下地層に対向して設けられ、前記複数の発光部のうちの隣り合う発光部を区画し、各発光部を規定する複数の隔壁とを備え、前記第1画素部とは異なる第2画素部と、
前記第1画素部と前記第2画素部との間に介挿され、有機発光層を含むことなく、前記第1電極とは分離された同じ材料を有し構成された第3電極と、前記第2電極とを含み、前記第2電極と前記第3電極とが電気的に接続されている非画素部と、
前記第1画素部と前記非画素部との間に配設され、前記第1画素部の前記第3発光部と、前記非画素部とを区画する、前記複数の隔壁とは異なる第1隔壁と、
前記第2画素部と前記非画素部との間に配設され、前記第2画素部の前記第1発光部と、前記非画素部とを区画する前記複数の隔壁とは異なる第2隔壁と、
を有し、
前記第1隔壁は、前記第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度が、前記非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きく、
且つ、
前記第2隔壁は、前記第2画素部の第1発光部側に面する面部における傾斜角度が、前記非画素部側に面する面部における傾斜角度よりも大きい、
ことを特徴とする有機発光パネル。
前記第1隔壁における前記前1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度は、前記第1画素部の第3発光部を規定する隣り合う隔壁における対向する面部の傾斜角度よりも大きく、
且つ、
前記第2隔壁における前記前2画素部の第1発光部側に面する面部の傾斜角度は、前記第2画素部の第1発光部を規定する隣り合う隔壁における対向する面部の傾斜角度よりも大きい、
請求項1記載の有機発光パネル。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様に係る有機発光パネルは、第1画素部と、第2画素部と、非画素部と、第1隔壁と、第2隔壁とを有する。
【0024】
第1画素部は、互いに発光色が異なる、一方側に位置し、対応するインクが塗布される第1発光部と、中央側に位置し、対応するインクが塗布される第2発光部と、他方側に位置し、対応するインクが塗布される第3発光部とが順に配列された複数の発光部を有し、各発光部が、第1電極を含む下地層と、下地層に対向して設けられ、発光色ごとに有機発光材料を含むインクが塗布されて形成された有機発光層と、有機発光層に対して下地層と反対側に設けられる第2電極と、下地層に対向して設けられ、複数の発光部のうちの隣り合う発光部を区画し、各発光部を規定する複数の隔壁とを備える。
【0025】
第2画素部は、互いに発光色が異なる、一方側に位置し、対応するインクが塗布される第1発光部と、中央側に位置し、対応するインクが塗布される第2発光部と、他方側に位置し、対応するインクが塗布される第3発光部とが順に配列された複数の発光部を有し、各発光部が、第1電極を含む下地層と、下地層に対向して設けられ、発光色ごとに有機発光材料を含むインクが塗布されて形成された有機発光層と、有機発光層に対して下地層と反対側に設けられる第2電極と、下地層に対向して設けられ、複数の発光部のうちの隣り合う発光部を区画し、各発光部を規定する複数の隔壁とを備え、第1画素部とは異なる。
【0026】
非画素部は、第1画素部と第2画素部との間に介挿され、有機発光層を含むことなく、第1電極とは分離された同じ材料を有し構成された第3電極と、第2電極とを含み、第2電極と第3電極とが電気的に接続されている。
【0027】
第1隔壁は、第1画素部と非画素部との間に配設され、第1画素部の第3発光部と、非画素部とを区画するものであり、上記第1画素部および上記第2画素部の各々における複数の隔壁とは異なる。
【0028】
第2隔壁は、第2画素部と非画素部との間に配設され、第2画素部の第1発光部と、非画素部とを区画するものであり、上記第1画素部および上記第2画素部の各々における複数の隔壁とは異なる。
【0029】
上記構成において、第1隔壁は、第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きく、且つ、第2隔壁は、第2画素部の第1発光部側に面する面部における傾斜角度が、非画素部側に面する面部における傾斜角度よりも大きい、ことを特徴とする。
【0030】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、第1隔壁における第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きい、という構成を採用するので、第1隔壁における第1画素部の第3発光部側に面する面部に対する有機発光層を形成するためのインクを塗布した際のピンニング位置を、当該第3発光部における他の隔壁に面する部分でのピンニング位置に比べて、高くすることができる。このため、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、有機発光層を形成するためのインクの塗布時における蒸気濃度の分布により、第1画素部の第3発光部における第1隔壁側部分の膜厚が厚くなろうとする傾向があるのに対して、上記のように、ピンニング位置を高くすることにより、第1画素部の第3発光部での有機発光層の膜厚の偏りを抑えることができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、第2隔壁における第2画素部の第1発光部側に面する面部における傾斜角度が、非画素部側に面する面部における傾斜角度よりも大きい、という構成も併せて採用するので、第2隔壁における第2画素部の第1発光部側に面する面部に対する有機発光層を形成するためのインクを塗布した際のピンニング位置を、当該第1発光部における他の隔壁に面する部分でのピンニング位置に比べて、高くすることができる。このため、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、有機発光層を形成するためのインクの塗布時における蒸気濃度の分布により、第2画素部の第1発光部における第2隔壁側部分の膜厚が厚くなろうとする傾向があるのに対して、上記のように、ピンニング位置を高くすることにより、第2画素部の第1発光部での有機発光層の膜厚の偏りも抑えることができる。
【0032】
なお、第1画素部の第3発光部と第2画素部の第1発光部との間に非画素部がある構成の場合、非画素部には、有機発光層を形成するためのインクは塗布されない。このため、第1画素部の第3発光部における第1隔壁側、および第2画素部の第1発光部における第2隔壁側においては、インクの塗布がなされない非画素部の存在に起因して、蒸気濃度が相対的に低くなり、これより有機発光層の膜厚が当該部分で厚くなろうとする傾向がある。本発明の一態様では、このような傾向に対して、隔壁の面部の傾斜角度を上記のような関係を以って設定することで、第1画素部の第3発光部および第2画素部の第1発光部での有機発光層の膜厚の偏りを抑えることができる。
【0033】
さらに、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、第1隔壁における非画素部側に面する面部の傾斜角度が、第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度よりも小さく、また、第2隔壁における第2画素部における非画素部側に面する面部における傾斜角度が、第1発光部側に面する面部における傾斜角度よりも小さい、という構成を採用するので、非画素部における第1隔壁および第2隔壁との境界部分で第2電極の段切れやリーク電流の発生を防止することができる。即ち、第1隔壁および第2隔壁においては、非画素部側に面する面部の傾斜角度を、第1画素部の第3発光部および第2画素部の第1発光部の各側に面する面部の傾斜角度よりも相対的に緩やかなものとしているので、これらの隔壁の上部にも連続的に形成される第2電極に段切れやリーク電流が発生することを防止することができ、第2電極と第3電極との間での確実な電気的な接続を図ることができる。
【0034】
従って、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、非画素部を挟んだ第1画素部の第3発光部と第2画素部の第1発光部の双方における有機発光層の膜厚の偏りを防止でき、良好な発光特性が得られる。
【0035】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第1隔壁における前1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度が、第1画素部の第3発光部を規定する隣り合う隔壁における対向する面部の傾斜角度よりも大きく、且つ、第2隔壁における前2画素部の第1発光部側に面する面部の傾斜角度が、第2画素部の第1発光部を規定する隣り合う隔壁における対向する面部の傾斜角度よりも大きい、という構成を採用することができる。
【0036】
この構成を採用する場合には、第1隔壁における前1画素部の第3発光部側に面する面部に対するインクのピンニング位置を、第1画素部の第3発光部を規定する隣り合う隔壁における対向する面部に対するインクのピンニング位置よりも高くすることができ、上記のようなインク塗布時における蒸気濃度の分布による第1画素部の第3発光部における有機発光層の膜厚の偏りを防止することができる。
【0037】
また、第2隔壁における前2画素部の第1発光部側に面する面部に対するインクのピンニング位置を、第2画素部の第1発光部を規定する隣り合う隔壁における対向する面部に対するインクのピンニング位置よりも高くすることができ、上記のようなインク塗布時における蒸気濃度の分布による第2画素部の第1発光部における有機発光層の膜厚の偏りを防止することができる。
【0038】
よって、このような構成を採用する場合には、第1画素部の第3発光部と第2画素部の第1発光部の双方における有機発光層の膜厚の偏りを防止でき、良好な発光特性が得られる。
【0039】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第1画素部および第2画素部の各々で、第2発光部を規定する隣り合う隔壁における対向する面部の傾斜角度が等しい、という構成を採用することができる。
【0040】
有機発光パネルでは、第1画素部および第2画素部のそれぞれにおいて、各中央部に配される第2発光部については、両側に第1発光部と第3発光部とが配されることになり、蒸気濃度の偏りを生じ難い。このため、本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、第1画素部および第2画素部の各々で、第2発光部を規定する隣り合う隔壁における対向する面部の傾斜角度が互いに等しい、という構成を採用することにより、第1画素部および第2画素部の各々における第2発光部での膜厚の偏りを防止することができる。
【0041】
よって、このような構成を採用する場合には、第1画素部および第2画素部の各々において、第2発光部での有機発光層の膜厚の偏りを防止でき、良好な発光特性が得られる。
【0042】
なお、上記における「等しい」とは、必ずしも数値面で完全に等しいことを意味するのではなく、有機発光パネルの製造における寸法誤差などを考慮したものである。具体的には、パネルの中央部と外周部とにおいて、それぞれに属する画素部の発光効率の差異(輝度ムラ)が実用上許容できる範囲で、傾斜角度を等しくするということを意味する。これについては、以下においても、同じである。
【0043】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第1隔壁における非画素部側に面する面部の傾斜角度と、第2隔壁における非画素部側に面する面部における傾斜角度とが等しい、という構成を採用することができる。これにより、非画素部における、第1隔壁における非画素部側と、第2隔壁における非画素部側との両境界部分での第2電極の膜厚を同じ厚みとすることが可能となり、段切れやリーク電流の発生といった問題をさらに効果的に抑制することができる。
【0044】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、第1画素部および第2画素部の各々で、第1発光部、第2発光部、および第3発光部が、各発光色に対応するインクが同時に塗布されて有機発光層が形成されてなる、という構成を採用することができる。この構成を採用する場合には、画素部と画素部との間に非画素部が配されていることに起因して、各画素部における第1発光部の非画素部側および第3発光部の非画素部側で有機発光層の膜厚が厚くなろうとする傾向にある。
【0045】
これに対して、上記のように、第1隔壁における第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度、および、第2隔壁における第2画素部の第1発光部側に面する面部の傾斜角度を規定するので、第1画素部における第3発光部での有機発光層の膜厚、および第2画素部における第1発光部での有機発光層の膜厚の各偏りを抑制することができる。
【0046】
よって、このような構成を採用する場合には、第1画素部および第2画素部の各発光部において、有機発光層の膜厚の偏りを防止でき、良好な発光特性が得られる。
【0047】
本発明の一態様に係る有機発光パネルでは、上記構成において、「傾斜角度」が、隔壁における上記対向する各面部と、隔壁が形成されている下地層(第1電極あるいはホール注入層、さらにはホール注入輸送層がこれに該当する。)の上面と、がなす角度である、と規定することができる。
【0048】
本発明の一態様に係る有機表示装置は、上記の何れかの本発明の一態様に係る有機発光パネルを備えたことを特徴とする。よって、本発明の一態様に係る有機表示装置は、上記本発明の一態様に係る有機発光パネルが有する効果、即ち、有機発光層の膜厚の偏りを防止することにより、良好な発光特性が得られる。
【0049】
本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法は、各々が複数の発光部を有する第1画素部および第2画素部と、第1画素部と第2画素部との間に介挿された非画素部とを有する有機発光パネルを製造するための方法であって、以下の工程を有する。
【0050】
(第1工程) 基板上に、第1の電極を含む下地層を形成する。
【0051】
(第2工程) 下地層の上に、感光性レジスト材料を積層する。
【0052】
(第3工程) 積層された感光性レジスト材料をマスク露光してパターニングすることにより、第1画素部として、第1発光部に対応する第1開口、第2発光部に対応する第2開口、第3発光部に対応する第3開口を形成し、隣り合う発光部を区画して各発光部を規定する複数の隔壁を形成し、第2画素部として、第1発光部に対応する第1開口、第2発光部に対応する第2開口、第3発光部に対応する第3開口を形成し、隣り合う発光部を区画して各発光部を規定する複数の隔壁を形成し、第1画素部と第2画素部との間に非画素部に対応する開口を形成し、第1画素部と非画素部を区画する第1隔壁と、第2画素部と非画素部を区画する第2隔壁を形成する。
【0053】
(第4工程) 第1画素部および第2画素部における、第1開口から第3開口のそれぞれに対して、有機発光材料を含むインクを滴下して乾燥させ、有機発光層を形成する。
【0054】
(第5工程) 有機発光層の上方に、第2の電極を形成する。
【0055】
本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、上記第3工程において、第1隔壁を、第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きくなるように形成し、且つ、第2隔壁を、第2画素部の第1発光部側に面する面部における傾斜角度が、非画素部側に面する面部における傾斜角度よりも大きくなるように形成する。
【0056】
また、上記第4工程では、各発光色に対応するインクを、第1画素部および第2画素部における、第1開口から第3開口のそれぞれに対して同時に滴下し、有機発光層を形成する。
【0057】
このような製造方法を用いることにより、第1隔壁における第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きく、且つ、第2隔壁における第2画素部の第1発光部側に面する面部における傾斜角度が、非画素部側に面する面部における傾斜角度よりも大きい、という特徴を有する有機発光パネルを製造することができ、上記のように、インク塗布時における蒸気濃度の分布に起因する有機発光層の膜厚の偏りを効果的に防止することができる。
【0058】
よって、本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、良好な発光特性を有する有機発光パネルを製造することができる。
【0059】
本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、上記構成において、隔壁における該当する面部の傾斜角度を大きくする具体的な方法として、例えば、次のような方法を採用することができる。
【0060】
本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、上記第3工程において、感光性レジスト材料の露光に関し、第1隔壁における第1画素部の第3発光部側に面する面部に相当する部分への露光量を、第1隔壁における非画素部側に面する面部に相当する部分への露光量よりも大きくすることにより、第1隔壁を、第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きくなるように形成し、且つ、第2隔壁における第2画素部の第1発光部側に面する面部に相当する部分への露光量を、第2隔壁における非画素部側に面する面部に相当する部分への露光量よりも大きくすることにより、第2隔壁を、第2画素部の第1発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きくなるように形成する、ことができる。
【0061】
このように、箇所に応じて露光量を変化させることにより、隔壁における該当面部の傾斜角度を相対的に大きくすることができる。
【0062】
また、本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、第3工程において、感光性レジスト材料の露光に関し、第1隔壁における第1画素部の第3発光部側に面する面部に相当する部分への光の透過率を、第1隔壁における非画素部側に面する面部に相当する部分への光の透過率よりも小さくなるように、それぞれの面部に相当する部分に対して互いに異なるマスクを用いることにより、第1隔壁を、第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きくなるように形成し、且つ、第2隔壁における第2画素部の第1発光部側に面する面部に相当する部分への光の透過率を、第2隔壁における非画素部側に面する面部に相当する部分への光の透過率よりも小さくなるように、それぞれの面部に相当する部分に対して互いに異なるマスクを用いることにより、第2隔壁を、第2画素部の第1発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きくなるように形成する、こともできる。
【0063】
このように、マスクの光の透過量を箇所ごとに変化させることにより、隔壁における該当面部の傾斜角度を相対的に大きくすることができる。
【0064】
また、本発明の一態様に係る有機発光パネルの製造方法では、第3工程において、感光性レジスト材料を露光して現像した後、第1隔壁における第1画素部の第3発光部側に面する面部に相当する部分に対し、露光処理を追加して行うことにより、第1隔壁を、第1画素部の第3発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きくなるように形成し、且つ、第2隔壁における第2画素部の第1発光部側に面する面部に相当する部分に対し、露光処理を追加して行うことにより、第2隔壁を、第2画素部の第1発光部側に面する面部の傾斜角度が、非画素部側に面する面部の傾斜角度よりも大きくなるように形成する、こともできる。
【0065】
このように、露光の実行回数を箇所ごとに変化させることにより、隔壁における該当面部の傾斜角度を相対的に大きくすることができる。
【0066】
[本発明に係る実施の形態を得るに至った経緯]
本発明者は、[背景技術]において記載した有機発光パネルおよびこれを備える有機表示装置に関し、鋭意研究の結果、次のような知見を得た。
【0067】
図20に示すように、X軸方向において、画素部90aと画素部90bとが、間に非画素部90cを介挿した状態で配されている。画素部90aおよび画素部90bには、各々に赤色(R),緑色(G),青色(B)の3つの発光色に対応したサブピクセル90a1,90a2,90a3,90b1,90b2,90b3が含まれる。各サブピクセル90a1,90a2,90a3,90b1,90b2,90b3では、基板901の上に、アノード電極902およびこれを覆う電極被覆層903が設けられており、さらに、電極被覆層902および基板901の表面を覆うように、ホール注入層904が形成され、ホール注入層904の上に、対応する発光色毎に有機発光層906a1,906a2,906a3,906b1,906b2,906b3が積層形成されている。有機発光層906a1,906a2,906a3,906b1,906b2,906b3は、ホール注入層904の上に立設されたバンク905a〜905d,905e〜905hにより区画されている。
【0068】
一方、非画素部90cでは、バスバー932およびこれを覆う電極被覆層933を有するが、有機発光層は有さない。
【0069】
図20に示すように、従来技術に係る有機発光パネルでは、画素部90a,90bにおける非画素部90cにそれぞれ隣接するサブピクセル90a3,90b1の有機発光層906a3,906b1において、膜厚に偏りを生じてしまうことがある。具体的には、サブピクセル90a3における有機発光層906a3のバンク905d側での箇所C
6の高さが、バンク905c側での箇所C
5の高さ、およびサブピクセル90a2における有機発光層906a2のバンク905b,905cの各側での箇所C
3,C
4の高さよりも、高くなるという現象が生じる。同様に、サブピクセル90b1における有機発光層906b1のバンク905e側での箇所C
7の高さが、バンク905f側での箇所C
8の高さ、およびサブピクセル90b2における有機発光層906b2のバンク905f,905gの各側での箇所C
9,C
10の高さよりも、高くなる。
【0070】
なお、サブピクセル90a1,90b3における有機発光層906a1,906b3のバンク905a,905hの各側での箇所C
1,C
12についても、同様に、高さが高くなる。
【0071】
上記現象に関し、本発明者は検討を重ねた末、有機発光層における膜厚の均一性の低下は、以下に説明するように、インク乾燥時における蒸気濃度分布の不均一に起因するものと推定した。具体的には、
図21(a)に示すように、バンク905cとバンク905dとの間に規定される領域に、有機発光層を形成するためのインク9060a3を塗布した状態を想定し、その際の蒸気濃度分布が、二点鎖線で示すように、
図21(a)の左側に比べて右側で低いとしたときに、次のような関係で有機発光層の膜厚に偏りを生じると考えられる。ここで、
図21(a)の左側に比べて右側での蒸気濃度分布が低いのは、バンク905dの右側には、非画素部90cが存在し(
図20を参照)、インクの塗布がなされないことに起因するものと考えられる。
【0072】
図21(a)に示すように、インク9060a3の滴下直後において、インク9060a3の表面プロファイルL
90は、サブピクセルの中央部分が盛り上がった形状となっている。これを乾燥させる場合には、上記のような蒸気濃度の分布に起因して、蒸気濃度の低い側で蒸発速度が速く、蒸気濃度の高い側で遅くなるので、表面プロファイルL
91へと変化すると形式的には考えられる。
【0073】
しかし、
図21(b)に示すように、乾燥途中のインク9061a3の内部では、破線矢印L
92で示すような溶剤の移動を生じる。これは、蒸発した分を補うように溶剤が移動する(表面自由エネルギを最小にするように移動する)ものであり、溶剤の移動に伴い溶質(有機発光材料)も移動する。このため、
図21(c)に示すように、蒸気濃度分布に偏りを有する場合には、表面プロファイルL
93が右側ほど盛り上がった(箇所C
6の高さよりも、箇所C
5の高さが高い)有機発光層906a3が形成されることになる。
【0074】
以上のようにして、本発明者は、有機発光パネルに関し、インク乾燥時の蒸気濃度分布の不均一に起因し、形成された有機発光層の膜厚の均一性が低下するという推論を得た。
【0075】
そして、本発明者は、パネル面内において、バンクにおける面部の傾斜角度を異ならせることにより、インクのバンク側面部におけるピンニング位置を異ならせ、この結果、有機発光層の膜厚の均一化を図るという技術的特徴を見出した。
【0076】
[実施の形態]
以下では、本発明を実施するための形態の一例について、図面を参酌しながら説明する。
【0077】
なお、以下の説明で用いる形態は、本発明の構成および作用・効果を分かりやすく説明するために用いる例であって、本発明は、その本質的な特徴部分以外に何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0078】
1.表示装置1の概略構成
本実施の形態に係る表示装置1の全体構成について、
図1を用い説明する。
【0079】
図1に示すように、表示装置(有機表示装置)1は、表示パネル部10と、これに接続された駆動制御部20とを有し構成されている。表示パネル部10は、有機材料の電界発光現象を利用した有機発光パネルであり、複数の画素部がX−Y面方向に2次元配列されている。
【0080】
また、駆動制御部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とから構成されている。
【0081】
なお、実際の表示装置1では、表示パネル部10に対する駆動制御部20の配置については、これに限られない。
【0082】
2.表示パネル10の構成
表示パネル10の構成について、
図2を用い説明する。なお、本実施の形態に係る表示パネル10は、一例として、トップエミッション型の有機発光パネルを採用し、赤(R)、緑(G)、青(B)の何れか発光色を有する有機発光層を備える複数の画素部がマトリクス状に配置され構成されているが、
図2では、一の画素部における一つのサブピクセル100を抜き出して描いている。
【0083】
図2に示すように、表示パネル10は、TFT基板(以下では、単に「基板」と記載する。)101上には、アノード電極102が形成されており、アノード電極102上に、電極被覆層103およびホール注入輸送層104が順に積層形成されている。なお、アノード電極102および電極被覆層103は、サブピクセル100毎に分離された状態で形成されている。
【0084】
ホール注入輸送層104の上には、絶縁材料からなり、サブピクセル100同士の間を区画するバンク(隔壁)105が立設されている。各サブピクセル100におけるバンク105で区画された領域には、有機発光層106が形成され、その上には、電子注入層107、カソード電極108、および封止層109が、順に積層形成されている。
【0085】
a)基板101
基板101は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料をベースとして形成されている。そして、基板101には、図示を省略しているが、TFT層およびパッシベーション膜、さらには、層間絶縁膜などが積層形成されている。
【0086】
b)アノード電極102
アノード電極102は、導電性材料からなる単層、あるいは複数の層が積層されてなる積層体から構成されており、例えば、Al(アルミニウム)やこれを含む合金、Ag(銀)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などを用い形成されている。なお、本実施の形態のように、トップエミッション型の場合には、高反射性の材料で形成されていることが好ましい。
【0087】
c)電極被覆層103
電極被覆層103は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)を用い形成されており、アノード電極102のZ軸方向上部の表面の少なくとも一部を被覆する。
【0088】
d)ホール注入輸送層104
ホール注入輸送層104は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記の内、酸化金属からなるホール注入輸送層104は、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層106に対しホールを注入および輸送する機能を有し、大きな仕事関数を有する。
【0089】
ここで、ホール注入輸送層104を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。
【0090】
e)バンク105
バンク(隔壁)105は、樹脂等の有機材料で形成されており絶縁性を有する。バンク105の形成に用いる有機材料の例としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。そして、バンク105は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。
【0091】
さらに、バンク105の形成においては、エッチング処理およびベーク処理などが施されるので、それらの処理に対して過度に変形、変質などをしないような耐性の高い材料で形成されることが好ましい。また、撥水性をもたせるために、側面部をフッ素処理することもできる。
【0092】
なお、バンク105の形成に用いる絶縁材料については、上記の各材料をはじめ、特に抵抗率が10
5[Ω・cm]以上であって、撥水性を有する材料を用いることができる。これは、抵抗率が10
5[Ω・cm]以下の材料を用いた場合には、アノード電極102とカソード電極108との間でのリーク電流、あるいは隣接サブピクセル100間でのリーク電流の発生の原因となり、消費電力の増加などの種々の問題を生じることになるためである。
【0093】
また、バンク105を親水性の材料を用い形成した場合には、バンク105の側面部とホール注入輸送層104の表面との親液性/撥液性の差異が小さくなり、有機発光層106を形成するために有機物質を含んだインクを、バンク105の開口部に選択的に保持させることが困難となってしまうためである。
【0094】
さらに、バンク105の構造については、
図2に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
【0095】
f)有機発光層106
有機発光層106は、アノード電極102から注入されたホールと、カソード電極108から注入された電子とが再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層106の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用い製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
【0096】
具体的には、例えば、特許公開公報(特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
【0097】
g)電子注入層107
電子注入層107は、カソード電極108から注入された電子を有機発光層106へ輸送する機能を有し、例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、あるいはこれらの組み合わせで形成されることが好ましい。
【0098】
h)カソード電極108
カソード電極108は、例えば、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)などで形成される。トップエミッション型の表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0099】
カソード電極108の形成に用いる材料としては、上記の他に、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらのハロゲン化物を含む層と銀を含む層とをこの順で積層した構造を用いることもできる。上記において、銀を含む層は、銀単独で形成されていてもよいし、銀合金で形成されていてもよい。また、光取出し効率の向上を図るためには、当該銀を含む層の上から透明度の高い屈折率調整層を設けることもできる。
【0100】
i)封止層109
封止層109は、有機発光層106などが水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成される。トップエミッション型の表示パネル10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
【0101】
3.バンク105の構成
図3に示すように、本実施の形態に係る表示パネル10では、一例としてライン状のバンク105を採用している。具体的には、バンク105は、各々がY軸方向に延伸形成され、X軸方向において隣接する画素部の各サブピクセル間を区画し、また、画素部と非画素部との間を区画している(
図3では、非画素部については、図示を省略)。そして、各画素部内におけるサブピクセル100は、バンク105により区画された領域ごとに、発光色が異なるように形成されており、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各発光色の3つのサブピクセルの組み合わせを以って、一つの画素部が構成されている。
【0102】
4.表示パネル10における一部領域での構成
表示パネル10における一部領域での構成について、
図4を用い説明する。なお、
図4は、
図1における表示パネル10をA−A’断面で切断し、その一部を模式化した断面端面図である。
【0103】
図4に示すように、表示パネル10は、TFT基板(以下では、単に「基板」と記載する。)101をベースとして、画素部100aと画素部100bとが、間に非画素部100cを介挿した状態で配されている。画素部100a,100bの各々は、サブピクセル100a1,100a2,100a3,100b1,・・の各々に対応して、アノード電極102が形成されており、アノード電極102上に、電極被覆層103およびホール注入輸送層104が順に積層形成されている。
【0104】
ホール注入輸送層104の上には、絶縁材料からなり、サブピクセル100a1,100a2,100a3,100b1,・・をそれぞれ規定するバンク105a〜105fが立設されている。なお、各サブピクセル100a1,100a2,100a3,100b1,・・におけるバンク105a〜105fで区画された各領域には、有機発光層、電子注入層、カソード電極、および封止層が、順に積層形成されている(
図4では、図示を省略)。
【0105】
本実施の形態に係る表示パネル10では、画素部100aがサブピクセル100a1〜100a3の組み合わせを以って構成され、画素部100bがサブピクセル100b1,・・(画素部100aと同様に3つのサブピクセルで構成)の組み合わせを以って構成されている。そして、上記のように、画素部100aと画素部100bとの間に非画素部100cが介挿されている。画素部100aのサブピクセル100a3と非画素部100cの間は、バンク105dで区画され、画素部100bと非画素部100cとの間は、バンク105eで区画されている。
【0106】
図4に示すように、非画素部100cでは、アノード電極102と同じ材料から構成され、アノード電極102とは分離された電極(バスバー)302と、これを被覆する電極被覆層303が設けられ、電極被覆層303の上には、ホール注入輸送層104が延設されている。そして、図示を省略しているが、この上にカソード電極が形成されて、バスバー302とカソード電極108が電気的に接続される。
【0107】
なお、非画素部100cでは、有機発光層は形成されない。このような構成をとることにより、ITOなどからなるカソード電極108(
図2を参照)の電気抵抗の低減を図ることができ、電圧降下を抑えることが可能となる。
【0108】
図4に示すように、本実施の形態に係る表示パネル10では、バンク105b〜105fの各々の面部105b2,105c2,105c3,105d3,105dc,105ec,105e1,105f1と下地層であるホール注入輸送層104の表面とが、それぞれ角度θb2,θc2,θc3,θd3,θdc,θec,θe1,θf1をなす。
【0109】
ここで、本実施の形態において、角度θb2,θc2,θc3,θd3,θdc,θec,θe1,θf1は、次の各式で示す関係を満足する。
【0110】
[数1] θd3>θdc
[数2] θe1>θec
[数3] θd3>θc3
[数4] θe1>θf1
[数5] θb2=θc2
[数6] θdc=θec
なお、本実施の形態では、それぞれの角度θb2,θc2,θc3,θd3,θdc,θec,θe1,θf1を、例えば、次のような範囲で設定することができる。
【0111】
[数7] 25[°]<θb2=θc2=θc3=θdc=θec=θf1<35[°]
[数8] 35[°]<θd3<45[°]
[数9] 35[°]<θe1<45[°]
上記[数1]〜[数9]の関係でバンク105a〜105fの各々の面部105b2,105c2,105c3,105d3,105dc,105ec,105e1,105f1の傾斜角度θb2,θc2,θc3,θd3,θdc,θec,θe1,θf1を規定するのは、隣り合う画素部100aと画素部100bとの間に非画素部100cを配することと、後述するインク1060a1〜1060a3,1060b1,・・の塗布形態によるものである。
【0112】
5.バンク105における側面部の傾斜角度θと有機発光層106の膜厚との関係
バンク105における面部の傾斜角度θと有機発光層106の膜厚との関係について、
図5および
図6を用い説明する。なお、
図5では、一つのサブピクセルの構造を模式的に描いている。
【0113】
図5(a)に示すように、バンク105xの面部の傾斜角度(バンク105xの面部とホール注入輸送層104の表面とがなす角度)が角度θxであり、
図5(b)に示すように、バンク105yの面部の傾斜角度(バンク105yの面部とホール注入輸送層104の表面とがなす角度)が角度θyである。角度θxと角度θyとは、次の関係を満たす。
【0114】
[数10] θy>θx
各バンク105x,105yで区画された開口部に有機発光材料を含むインク1060x,1060yを滴下(塗布)すると、各ピンニング位置Px,Pyの高さHx,Hyが次のような関係となる。
【0115】
[数11] Hy>Hx
図5(c)に示すように、インク1060xを乾燥させると、ピンニング位置Pxの高さHxが相対的に低いことに起因して、形成される有機発光層106xでは、サブピクセルの中央部分が盛り上がり、その膜厚が厚みTxとなる。
【0116】
一方、
図5(d)に示すように、インク1060yを乾燥させると、ピンニング位置Pyの高さHyが相対的に高いことに起因して、形成される有機発光層106yでは、サブピクセルの中央部分が凹み、その膜厚が厚みTyとなる。
【0117】
厚みTxと厚みTyとは、次の関係を満たす。
【0118】
[数12] Tx>Ty
上記の関係を
図6に纏めて示す。
図6に示すように、バンク105の面部における傾斜角度(テーパ角)θを小さくすれば、ピンニング位置の高さHが低くなり、結果的に得られる有機発光層106の膜厚Tが厚くなる。逆に、バンク105の面部における傾斜角度(テーパ角)θを大きくすれば、ピンニング位置の高さHが高くなり、結果的に得られる有機発光層106の膜厚Tが薄くなる。
【0119】
以上の事項について、5つのサンプルを作成して評価した。結果を
図7および
図8に示す。
【0120】
図7および
図8に示すように、サンプル2の膜厚分布に対し、テーパ角を大きくしたサンプル3およびサンプル4では、ピンニング位置が高くなっている。なお、
図7および
図8では、横軸が横方向を示し、縦軸が高さ方向を示す。
【0121】
ただし、バンクのテーパ角(傾斜角度)を50[°]まで大きくしたサンプル5では、サンプル2よりも膜厚の均一性が低下した。
【0122】
6.表示パネル10の製造方法
本実施の形態に係る表示パネル10の製造方法について、
図9、
図10および
図11を用い、特徴となる部分を説明する。なお、以下で説明を省略する製造工程については、従来技術として提案されている種々の工程を採用することが可能である。
【0123】
先ず、
図9(a)に示すように、基板101におけるZ軸方向上面に、画素部予定領域1000a,1000bにおける各サブピクセル予定領域1000a1〜1000a3,1000b1,・・の各々に対応して、アノード電極102と電極被覆層103とを順に積層形成する。また、非画素予定領域1000cに対応して、バスバー302と電極被覆層303を順に積層形成する。そして、電極被覆層103,303の上から、表面全体を覆うように、ホール注入輸送層104を積層形成する。アノード電極102およびバスバー302の形成は、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法を用いAl若しくはその合金からなる薄膜、あるいは、Ag薄膜を製膜した後、当該薄膜をフォトリソグラフィ法を用いパターニングすることによりなされる。
【0124】
また、電極被覆層103,303の形成は、例えば、アノード電極102およびバスバー302の各表面に対し、スパッタリング法などを用いITO薄膜を製膜し、当該ITO薄膜をフォトリソグラフィ法などを用いパターニングすることでなされる。そして、ホール注入輸送層104の形成では、先ず、電極被覆層103,303の各表面を含む基板101の表面に対し、スパッタリング法などを用い金属膜を製膜する。その後、形成された金属膜を酸化し、ホール注入輸送層104が形成される。
【0125】
次に、
図9(b)に示すように、例えば、スピンコート法などを用い、ホール注入輸送層104の上を覆うように、バンク材料層1050を形成する。バンク材料層1050の形成には、感光性レジスト材料を用い、具体的には、上述のように、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などの絶縁性を有する有機材料を用いることができる。
【0126】
次に、
図9(c)に示すように、バンク材料層1050の上方に、バンクを形成しようとする箇所に開口501a,501b,501cが設けられたマスク501を配する。この状態でマスク501の開口501,501b,501cを通して、露光を実行する。
【0127】
なお、
図9(c)に示すように、マスク501の開口501aは、その幅Wcが、形成しようとするバンク105cの面部105c2,105c3(
図4を参照)の下端のポイントPc1,Pc2により規定されている。
【0128】
一方、サブピクセル予定領域1000a3と非画素予定領域1000cとの間、およびサブピクセル予定領域1000b1と非画素予定領域1000cとの間に位置するマスク501の開口501b,501cは、その幅Wd1,We1が、形成しようとするバンク105d,105eの面部105d3,105e1(
図4を参照)の各上端のポイントPd1,Pe1と、非画素予定領域1000c側(
図4を参照)の各裾部分のポイントPd2,Pe2とにより規定されている。
【0129】
次に、
図10(a)に示すように、バンク材料層1050の上方に、バンク105d,105eの面部105dc,105ec(
図4を参照)に対応する箇所に開口502b,502cが設けられたマスク502を配する。そして、この状態でマスク502の開口502b,502cを通して、2回目の露光を実行する。
【0130】
なお、
図10(a)に示すように、マスク502における開口502b,502cの各幅Wd2,We2は、形成しようとするバンク105d,105eの各面部105dc,105ecの各下端のポイントPd3,Pe3と各上端のポイントPd1,Pe1とにより規定されている。
【0131】
次に、
図10(b)に示すように、現像およびベークを施すことによって、バンク105b〜105fが形成される。バンク105dにおけるサブピクセル予定領域1000a3側の面部105d3、およびバンク105eにおけるサブピクセル予定領域1000b1側の面部105e1は、上述のように、バンク105bの面部105b2、バンク105cの面部105c3、バンク105dの面部105dc、バンク105eの面部105ec、およびバンク105fの面部105f1よりも傾斜角度が大きくなる。
【0132】
その後、
図11に示すように、インクジェット法などを用い、バンク105aとバンク105bで区画された開口部(サブピクセル予定領域1000a1)に対するインク(有機発光材料を含むインク)1060a1と、バンク105bとバンク105cで区画された開口部(サブピクセル予定領域1000a2)に対するインク(有機発光材料を含むインク)1060a2と、バンク105cとバンク105dで区画された開口部(サブピクセル予定領域1000a3)に対するインク(有機発光材料を含むインク)1060a3と、バンク105eとバンク105fで区画された開口部(サブピクセル予定領域1000b1)に対するインク(有機発光材料を含むインク)1060b1を同時に塗布(滴下)する。なお、図示をしていないが、他のサブピクセル予定領域に対しても、有機発光材料を含むインクを同時に塗布する。
【0133】
ここで、上述のようにバンクを形成することにより、バンク105aにおけるサブピクセル予定領域1000a1側の面部105a1、バンク105dにおけるサブピクセル予定領域1000a3側の面部105d3、およびバンク105eにおけるサブピクセル予定領域1000b1側の面部105e1の傾斜角度を、バンク105bの面部105b2、バンク105cの面部105c3、バンク105dの面部105dc、バンク105eの面部105ec、およびバンク105fの面部105f1の各傾斜角度よりも大きくしているので、バンク105aの面部105a1に対するインク1060a1のピンニング位置Qa1,バンク105dの面部105d3に対するインク1060a3のピンニング位置Qd3、およびバンク105eの面部105e1に対するインク1060b1のピンニング位置Qe1は、他のピンニング位置Qb1,Qb2,Qc2,Qc3,Qf1よりも高い位置となる。
【0134】
このようにピンニング位置Qa1,Qd3,Qe1の高さを、他のピンニング位置Qb1,Qb2,Qc2,Qc3,Qf1の高さよりも高い位置とすることにより、形成された有機発光層106の膜厚の偏りを防止することができる。即ち、インク1060a1,1060a2,1060a3,1060b1を同時に塗布する形態を採用する場合、サブピクセル予定領域1000a3では、左側にインク塗布がなされない非画素予定領域1000cが存在し、また、サブピクセル予定領域1000b1では、右側にインク塗布されない非画素予定領域1000cが存在することによって、これら2つのサブピクセル予定領域1000a3,1000b1については、蒸気濃度に左右で偏りを生じる。これに対して、バンク105aの面部105a1、バンク105dの面部105d3、およびバンク105eの面部105ecの各傾斜角度θd3,θe1,・・を他よりも大きくすることによって、形成された有機発光層106の膜厚の偏りを防止することができる。
【0135】
なお、図示を省略しているが、この後に、インクの乾燥を実行し、その後、電子注入層107,カソード電極108および封止層109などを順に積層形成することで表示パネル10が形成される。
【0136】
7.効果
図4に示すように、本実施の形態に係る表示装置1の表示パネル10では、バンク105aにおけるサブピクセル100a1側の面部105の傾斜角度、およびバンク105dにおけるサブピクセル100a3側の面部105d3の傾斜角度θd3、およびバンク105eにおけるサブピクセル100b1側の面部105e1の傾斜角度θe1を、他の面部105b2,105c2,105c3,105dc,105ec,105f1の傾斜角度θb2,θc2,θc3,θdc,θec,θf1よりも大きく設定されている。このため、
図11に示すように、インク1060a1,1060a2,1060a3,1060b1,・・の塗布時において、ピンニング位置Qa1,Qd3,Qe1が、他のピンニング位置Qb1,Qb2,Qc2,Qc3,Qf1,・・よりも高くなる。
【0137】
加えて、面部105b1,105b2,105c2,105c3,105dc,105ec,105f1の各傾斜角度θb2,θc2,θc3,θdc,θec,θf1,・・は、互いに等しくなっている。
【0138】
従って、表示パネル10では、乾燥後における有機発光層106の膜厚が、サブピクセル100a1,100a2,100a3,100b1を含む全てのサブピクセルで偏りなく均一となり、輝度ムラが小さいという効果を有する。
【0139】
なお、
図9、
図10および
図11を用い説明した本実施の形態に係る表示装置1の製造方法を用いれば、上記効果を有する表示装置1の製造が可能である。
【0140】
また、上記のように、「等しく」とは、数値面で完全に等しくするということを意味するのではなく、表示装置1の製造における寸法誤差などを考慮したものである。具体的には、表示パネル10において、それぞれに属するサブピクセル100a1,100a2,100a3,100b1,・・の発光効率の差異(輝度ムラ)が実用上許容できる範囲で、傾斜角度を等しくするということを意味する。
【0141】
さらに、バンク105d,105eにおいては、非画素部100c側に面する面部105dc,105ecの傾斜角度θdc,θecを、バンク105dの面部105d3、およびバンク105eの面部105e1の各傾斜角度θd3,θe1よりも相対的に緩やかなものとしているので、これらのバンク105d,105eの上部にも連続的に形成されるカソード電極108に段切れやリーク電流が発生することを防止することができ、カソード電極10とバスバー302との間での確実な電気的な接続を図ることができる。
【0142】
[変形例1]
次に、
図12を用い、表示装置1の製造方法の変形例1について説明する。
図12は、
図9(c)から
図10(a)に示す工程に対応する工程を示す。
【0143】
図12に示すように、ホール注入輸送層104の上にバンク材料層1050を積層形成した後、その上方にマスク503を配する。マスク503には、光透過部503a,503b1,503b2,503c1,503c2が設けられている。各光透過部503aは、バンク105cを形成しようとする箇所に対応して設けられ、光透過部503b1,503b2は、バンク105dを形成しようとする箇所に対応し、光透過部503c1,503c2は、バンク105eを形成しようとする箇所に対応して設けられている。
【0144】
本変形例1に係る表示装置1の製造方法では、サブピクセル予定領域1000a2とサブピクセル予定領域1000a3との間に対応した領域の光透過部503aの幅Wcが、形成しようとするバンク105cの面部105c2,105c3(
図4を参照。)の各下端のポイントPc1,Pc2により規定されている。
【0145】
一方、サブピクセル予定領域1000a3と非画素予定領域1000cとの間、およびサブピクセル予定領域1000b1と非画素予定領域1000cとの間のそれぞれに対応した領域の光透過部503b1,503c1の幅Wd1,We1は、形成しようとするバンク105d,105eの面部105dc,105ec(
図4を参照。)の各下端のポイントPd2,Pe2により規定され、光透過部503b2,503c2の幅Wd2,We2は、バンク105d,105eの面部105d3,105e1(
図4を参照。)の上端のポイントPd1,Pe1および下端のポイントPd3,Pe3により規定されている。
【0146】
ここで、マスク503は、ハーフトーンなどのマスクを用い構成されており、光透過部503a,503b1,503c1と光透過部503b2,503c2との光の透過率が異なっている。具体的には、光透過部503b2,503c2の光の透過率は、光透過部503a,503b1,503c1の光の透過率よりも大きい。
【0147】
以上のような構成を有するマスク503を配した状態で、露光・現像を実行した後、ベークすることにより、
図10(b)に示すような、バンク105b〜105fを形成することができる。即ち、光の透過率が大きく設定された光透過部503b2,503c2を通して露光された箇所では、他の光透過部503a,503b1,503c1を通して露光された箇所よりも、上記[数1]〜[数4]で示す関係のように、側壁面の傾斜角度が大きくなる。
【0148】
なお、この後の工程は、上記実施の形態などと同様である。
【0149】
以上のような製造方法によっても、表示装置1を製造することができる。
【0150】
[変形例2]
次に、
図13および
図14を用い、表示装置1の製造方法の変形例2について説明する。
図13および
図14は、
図9(c)から
図10(b)に示す工程に対応する工程を示す。
【0151】
図13(a)に示すように、ホール注入輸送層104の上にバンク材料層1050を積層形成した後、その上方にマスク504を配する。マスク504には、バンク105を形成しようとする各箇所に対応して、開口504a,504b,504cが設けられている。
【0152】
開口504aは、上記実施の形態の製造方法で用いたマスク501の開口501aと同じ幅を以って形成されている。
【0153】
一方、サブピクセル予定領域1000a3と非画素予定領域1000cとの間、およびサブピクセル予定領域1000b1と非画素予定領域1000cとの間の、それぞれに形成しようとするバンク105d,105e(
図4を参照。)を形成しようとする箇所に設けられた開口504b,504cの幅Wd3,We3は、
図13(a)の二点鎖線で囲んだ部分に示すように、バンク105d,105e(
図4を参照)の各下端のポイントPd2,Pd3,Pe2,Pe3で規定される幅よりも大きくなるように設定されている。具体的には、傾斜角度を大きくしようとする箇所で、幅を大きくしている。
【0154】
図13(a)に示す形態のマスク504を配した状態で、1回目の露光・現像を実行する。これにより、
図13(b)に示すように、開口504a〜504c,・・のそれぞれに対応する箇所にバンク材料層1051b〜1051fが残る。
【0155】
なお、
図13(b)に示すように、1回目の露光・現像を実行した状態では、バンク材料層1051b〜1051fの各面部の傾斜角度は、均一である。ただし、バンク材料層1051d,1051eのX軸方向での幅は、バンク材料層1051a,1051c,1051fのX軸方向での幅よりも広くなる。
【0156】
本変形例2においては、この時点でのベークを行わない。
【0157】
次に、
図14(a)に示すように、バンク材料層1051b〜1051fが形成された状態で、その上方に、マスク505を配する。マスク505には、形成しようとするバンク105b〜105f,・・の面部に対応する箇所の内、傾斜角度を大きくしようとする箇所(バンク105dの面部105d3、およびバンク105eの面部105e1)に限定して開口505b,505cが設けられている。
【0158】
マスク505を配した状態で、2回目の露光・現像を行った後、ベークをすることにより、
図14(b)に示すようなバンク105b〜105f,・・が形成できる。これにより、バンク105dの面部105d3、およびバンク105eの面部105e1の傾斜角度が、他の面部105b2,105c2,105c3,105dc,105ec,105f1の傾斜角度よりも大きくなる。
【0159】
この後、上記実施の形態などと同様の工程を実行することにより、表示装置1を製造することができる。
【0160】
[製造方法の検証]
上記実施の形態および変形例1,2に係る各製造方法について、具体例を以って形成後のバンク形状について検証を行った。その結果について、
図16を用い説明する。
【0161】
図15(a)に示すように、露光量を増やすほど、形成されるバンク側面部の傾斜角度が大きくなる。具体的には、露光量を200[mJ]として露光・現像した場合に形成されるバンク側面部の傾斜角度は、23[°]であるのに対して、露光量を300[mJ]として露光・現像した場合に形成されるバンク側面部の傾斜角度は、38[°]である。この結果については、
図15(b)に示すAFM(Atomic Force Microscope)にも示されている。
【0162】
さらに、
図15(a)および
図15(b)に示すように、露光量を200[mJ]として1回目の露光・現像を行った後、露光量を100[mJ]として2回目の露光・現像を行った場合には、形成されるバンク側面部の傾斜角度が50[°]となる。これは、上記変形例2に係る製造方法に対応するものであり、バンク側面部の傾斜角度を大きくするのに有効であると考えられる。
【0163】
なお、
図15(b)において、横軸は横方向を示し、縦軸は高さ方向を示す。
【0164】
[その他の事項]
先ず、上記実施の形態および変形例1,2では、バンク105,105a〜105f,105x,105yの各面部が平面であると模式的に示したが、バンクの面部については、必ずしも平面でなくてもよい。例えば、
図16(a)に示すように、バンク605の場合には、ポイントP
61からポイントP
62までの間の面と、ポイントP
62からポイントP
63までの間の面とが、交差することになる。この場合、インク塗布時におけるピンニング位置Qy1は、ポイントP
62からポイントP
63までの間の面に存する。そして、ポイントP
62を通る仮想直線L
1を引いたときに形成される面部の傾斜角度θy2が、ピンニング位置との関係で重要となる。
【0165】
しかし、バンク605の形成においては、下地層であるホール注入輸送層104とバンク605のポイントP
61からポイントP
62までの間の面とがなす角度θy1を制御することにより、角度θy2も制御されることになるので、実質的に、傾斜角度θy1を制御することで、上記のような効果を得ることが可能である。即ち、
図16(a)に示す角度θy1に対して、ポイントP
71からポイントP
72までの間の面の角度θy11が大きいバンク705を形成した場合には(
図16(b))、
図16(b)に示すように、ポイントP
72からポイントP
73までの間の面が仮想直線L
2に対してなす角度θy12も、
図16(a)の角度θy2に対して大きくなる。
【0166】
次に、上記実施の形態および変形例1,2では、表示パネル10における上記構成の適用領域を限定しなかったが、表示パネルにおける全領域に対して上記構成を適用することもできるし、一部の領域に限定して上記構成を適用することもできる。
図17に示すように、表示パネル10を、その面に沿った方向において、形式的に、中央部に配された領域10aと、その周辺に配された領域10bとに区分けすることができる。ここで、領域10aは、アノード電極がその下部に形成されたTFT層のソース電極またはドレイン電極に接続されており、発光に寄与する領域であり、対して、領域10bは、アノード電極がその下部に形成されたTFT層のソース電極およびレイン電極の何れにも接続されておらず、発光に寄与しない領域である。そして、領域10aを、さらに中央領域10a1と周辺領域10a2とに形成期的に分けた場合、インク塗布時における蒸気濃度の分布状態から、周辺領域10a2でサブピクセル内における有機発光層の膜厚の偏りが、より顕著に生ずるものと考えられる。
【0167】
なお、周辺領域10a2と領域10bとを合わせた領域は、パネルにおける外周部の0.5[%]〜数[%]程度(例えば、1[%])の画素部とすることが考えられる。これは、バンクの面部における傾斜角度の調整を行わない場合における有機発光層の膜厚バラツキを考慮することによるものである。
【0168】
上記実施の形態および変形例1,2では、本発明の構成および作用・効果を分かりやすく説明するために一例としての各構成を採用するものであり、本発明は、本質的な部分を除き、上記形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、
図2に示すように、有機発光層106に対し、そのZ軸方向下側にアノード電極102が配されている構成を一例として採用したが、本発明は、これに限らず有機発光層106に対し、そのZ軸方向下側にカソード電極108が配されているような構成を採用することもできる。
【0169】
有機発光層106に対し、そのZ軸方向下側にカソード電極108を配する構成とする場合には、トップエミッション構造となるので、カソード電極108を反射電極層とし、その上に電極被覆層103を形成する構成を採用することになる。
【0170】
また、上記実施の形態などでは、表示装置1の具体的な外観形状を示さなかったが、例えば、
図18に示すようなシステム一部とすることができる。なお、有機EL表示装置は、液晶表示装置のようなバックライトを必要としないので、薄型化に適しており、システムデザインという観点から優れた特性を発揮する。
【0171】
また、上記実施の形態および変形例1,2では、バンク105,105a〜105f,105x,105y,605,705の形態として、
図3に示すような、所謂、ラインバンク構造を採用したが、
図19に示すような、Y軸方向に延伸するバンク要素805aとX軸方向に延伸するバンク要素805bとからなるピクセルバンク805を採用して表示パネル80を構成することもできる。
【0172】
図19に示すように、ピクセルバンク805を採用する場合には、各サブピクセル800a,800b,800cを規定するバンク805に対し、そのX軸方向およびY軸方向の各外側となる側壁部の傾斜角度を大きくすることで、上記同様の効果を得ることができる。具体的には、矢印B
1,B
2,B
3,B
4で指し示す面部の傾斜角度を、適宜調整することで上記効果を得ることが可能である。
【0173】
また、上記実施の形態および変形例1,2で採用したバンクの面部の傾斜角度の調整は、製造時の有機発光層の形成に係るインク塗布工程および乾燥工程での蒸気濃度分布に個別的に応じて適宜変更することができる。例えば、乾燥装置の構造などで、インクの乾燥時における蒸気の流れが、パネル外周部からパネル中央部に向けた方向であるような場合には、有機発光層の膜厚が厚くなる箇所に対応して、バンク側面部の傾斜角度を大きくすればよい。これにより、有機発光層の膜厚を均一化することができ、パネル全体における輝度ムラを低減することができる。
【0174】
また、上記実施の形態および変形例1,2では、発光色(赤色、緑色、青色)毎で、バンクの面部における傾斜角度(テーパー角)の設定に区別はないが、発光色に応じて有機発光材料を含むインクの特性が変化することが考えられるので、この場合、各発光色のインク特性に応じて、対応するバンクの面部の傾斜角度を規定することができる。
【0175】
さらに、上記実施の形態および変形例1,2では、バスバー302とアノード電極102とが同じ材料から構成されていることとしたが、必ずしも同じ材料から構成される必要はない。ただし、同じ材料で構成する場合、同一の工程での形成が可能となり、製造コストの低減という観点から優れる。