【実施例1】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態によるOFDM変調波送信装置を示すブロック図である。図において、OFDM変調波送信装置100は、シンボルマッピング回路(Symbol Mapper)101、S/P(シリアル/パラレル)変換器102、IFFT(高速逆フーリエ変換器)103、P/S(パラレル/シリアル)変換及びガードインターバル(GI)付加回路104、タイミング調整回路(Timing)106、D/A(デジタル/アナログ)変換器107、周波数変換器(Mixer)108、局部発振器(LO OSC)109、アナログフィルタ(BPF)110、PA(電力増幅器)111、PA制御回路(制御回路)(CONT)114、電源(PS)115、およびDC/DC変換器(DC/DC)116から構成される。なお、本実施形態におけるOFDM変調波送信装置は、シンボルマッピング回路101、およびS/P変換器102によりOFDMシンボル信号生成回路を構成し、IFFT103、P/S変換及びGI付加回路104、タイミング調整回路106、D/A変換器107、周波数変換器108、局部発振器109、アナログフィルタ110によりOFDM信号生成回路を構成している。
【0024】
PA制御回路(制御回路)114は、IFFT(高速逆フーリエ変換器)112、P/S変換及びGI付加回路113、デジタルフィルタ(BPF)121、実数成分抽出回路(Real)122、振幅検出回路(Amplitude Detector)123、制御信号変換回路(Comparator&Table)124、タイミング調整回路(Timing)125及び126から構成される。
【0025】
シンボルマッピング回路101は、送信データを含むビット列を入力し、OFDMのサブキャリア毎のシンボルを、S/P変換器102へ出力する。各々のシンボルは、位相平面上の振幅と位相の組み合わせに一対一対応している。S/P変換器102は、OFDMのサブキャリア毎のシンボルを入力し、パラレル変換出力をIFFT103及び112へ出力する。
【0026】
IFFT103は、パラレル変換されたOFDMのサブキャリア毎のシンボルを入力し、高速逆フーリエ変換して出力する。P/S変換及びGI付加回路104は、IFFT103からの高速逆フーリエ変換出力を入力し、複素数である複素デジタルベースバンド信号を出力する。
【0027】
タイミング調整回路106は、複素デジタルベースバンド信号を入力し、予め決められた時間だけ遅延させて出力する。D/A変換器107は、タイミング調整回路106の出力である複素デジタルベースバンド信号を入力し、同相信号(I信号)と直交信号(Q信号)を有する複素アナログベースバンド信号を出力する。
【0028】
周波数変換器108は、複素アナログベースバンド信号と、局部発振器109の出力である局部発振信号とを入力し、搬送帯域OFDM信号を生成する。アナログフィルタ110は、周波数変換器108からの搬送帯域OFDM信号を入力し、不要波を除去してPA111へ出力する。
【0029】
一方、PA制御回路114のIFFT112には、S/P変換器102からのパラレル変換出力が入力される。IFFT112は、パラレル変換出力を入力し、高速逆フーリエ変換してPA制御用複素時間波形データを出力する。P/S変換及びGI付加回路113は、IFFT112からの高速逆フーリエ変換出力を入力し、複素数であるPA制御用複素デジタルベースバンド信号を出力する。
【0030】
デジタルフィルタ121は、PA制御用複素デジタルベースバンド信号を入力し、不要帯域の成分を除去して出力する。実数成分抽出回路122は、デジタルフィルタ121の出力であるPA制御用複素デジタルベースバンド信号を入力し、その実数成分であるPA制御用実デジタルベースバンド信号を出力する。振幅検出回路123は、PA制御用実デジタルベースバンド信号を入力し、振幅信号を出力する。
【0031】
制御信号変換回路124は、振幅信号を入力し、電源制御信号、及びPA制御信号を生成して出力する。タイミング調整回路125は、電源制御信号を入力し、予め決められた時間だけ遅延させて出力する。タイミング調整回路126は、PA制御信号を入力し、予め決められた時間だけ遅延させて出力する。DC/DC変換器116は、タイミング調整回路125からの電源制御信号を入力し、この電源制御信号に基づいて、電源115から供給される電力の電圧を変換し、電圧変換後電力をPA111に出力する。
【0032】
PA111は、アナログフィルタ110からの搬送帯域OFDM信号、タイミング調整回路126からのPA制御信号、及びDC/DC変換器116からの電圧変換後電力を入力し、増幅された搬送帯域OFDM信号を出力する。
【0033】
次に、第1実施形態の動作について説明する。
OFDM変調波送信装置100に入力された送信データを含むビット列は、シンボルマッピング回路101に入力される。OFDMでは、複数のサブキャリアをそれぞれデジタル変調してデータ伝送を行う。デジタル変調は、位相平面上の離散的な位置(シンボル点)にデータを対応付けて伝送する。
【0034】
例えば、QPSK変調方式であれば、4つのシンボル点が定義され識別されるので、1シンボルで2ビットの情報が伝送される。同様に、64QAM変調方式であれば、64のシンボル点が定義され、1シンボルで6ビットの情報が伝送される。伝送すべきデータを、これらのシンボル点、言い換えると、シンボル点に対応する位相平面上の離散的な位置座標に対応付けることを、マッピングと呼ぶ。
【0035】
シンボルマッピング回路101は、入力された送信データを含むビット列を、サブキャリアに分配し、さらに各サブキャリア毎のシンボル点にマッピングして出力する。したがって、シンボルマッピング回路101の出力には、サブキャリア周波数と、各々のサブキャリアに対応付けられたシンボル点情報とが含まれる。シンボル点情報は、極座標形式の場合には、離散的な振幅、及び位相として、直交座標形式の場合には、離散的な同相成分、及び直交成分の座標値として与えられる。単一のシンボル点情報を、複素シンボルと呼ぶことにする。
【0036】
ここでは、直交座標形式の場合を例として、n番目のサブキャリアを変調する複素シンボルd
nを、次式(1)で定義する。また、jは虚数単位を示す。
【0037】
【数1】
【0038】
時系列データであるシンボルマッピング回路101の出力は、S/P変換器102にて、IFFT103が高速逆フーリエ変換できるようパラレルデータに変換される。ここでは複素シンボルd
nとして、シリアルからパラレルへの変換が行われる。これは高速逆フーリエ変換に関するサブキャリアの割り当てでもある。
【0039】
パラレル変換されてOFDMの各サブキャリアに割り当てられた複素シンボルd
nは、IFFT103にて高速逆フーリエ変換され、パラレルデータである複素時間波形データu{k/(Nf
0)}、(k=0,1,2,…,N−1)として出力される。複素時間波形データu{k/(Nf
0)}は、次式(2)で表される。
【0040】
【数2】
【0041】
IFFT103の出力であるパラレル複素時間波形データu{k/(Nf
0)}は、P/S変換及びGI付加回路104にて、ガードインターバルデータを付加され、さらに、シリアル時系列データに変換されて、複素数である複素デジタルベースバンド信号として出力される。数式(2)におけるk=0〜N−1の区間がOFDMとして1シンボルの時間長となっており、これをOFDMシンボルと呼ぶ。ガードインターバルとは遅延波の干渉を防ぐため、OFDMシンボル間に設けられた時間間隙で、一般にはOFDMシンボルの先頭に設けられ、等しい時間長のOFDMシンボル末尾波形が充当される。
【0042】
複素デジタルベースバンド信号は、タイミング調整回路106にて、予め決められた時間だけ遅延された後、出力される。PA111は、PA制御回路114から制御される。
一方、PA111への搬送帯域OFDM信号は、PA111の制御設定が完了した以降に入力される必要があり、PA制御回路114の遅延時間を補償するだけの遅延がタイミング調整回路106にてなされる。
【0043】
D/A変換器107は、タイミング調整回路106の出力である複素デジタルベースバンド信号を入力し、次式(3)、(4)で示す、同相信号(I信号)S
I(t)と直交信号(Q信号)S
Q(t)を有する、アナログ波形である複素アナログベースバンド信号を出力する。
【0044】
【数3】
【0045】
【数4】
【0046】
複素アナログベースバンド信号の同相信号(I信号)S
I(t)と直交信号(Q信号)S
Q(t)は、周波数変換器108にて、局部発振器109の出力であり、搬送波に相当する局部発振信号と混合され、イメージ成分をキャンセルされて、次式(5)で示す搬送帯域OFDM信号S(t)に変換される。
【0047】
【数5】
【0048】
周波数変換器108からの搬送帯域OFDM信号は、アナログフィルタ110にて不要波を除去された後、PA111へ出力される。
【0049】
一方、S/P変換器102によりパラレル変換されたOFDMのサブキャリア毎のシンボル点情報は、PA制御回路114へも入力される。PA制御回路114へ入力される複素シンボルをc
n(n=0,…,N−1)とする。
【0050】
PA制御回路114へ入力されたS/P変換器102のパラレル変換出力は、IFFT112にて高速逆フーリエ変換され、次式(6)で示す、パラレルデータであるPA制御用複素時間波形データv{k/(Nf
0)}、(k=0,1,2,…,N−1)として出力される。
【0051】
【数6】
【0052】
ここで、複素シンボルc
nは、複素シンボルd
nに対応し、PA制御用複素時間波形データv{k/(Nf
0)}は、複素時間波形データu{k/(Nf
0)}に対応し、データ数は同じである。しかし、PA制御は、信号生成ほど、演算精度を必要としない。したがって、c
nとv{k/(Nf
0)}とは、各々、d
nとu{k/(Nf
0)}に比べ、演算有効桁数を下げることにより、演算回路の規模や、演算処理量を下げることができ、その結果、演算の高速化や、消費電力の低減化、低コスト化を図ることができる。
【0053】
IFFT112の出力であるPA制御用複素時間波形データv{k/(Nf
0)}は、P/S変換及びGI期間波形付加回路113にて、ガードインターバルデータを付加され、さらに、シリアル時系列データに変換されて、複素数であるPA制御用複素デジタルベースバンド信号として出力される。PA制御用複素デジタルベースバンド信号は、デジタルフィルタ121にて所要帯域が抽出され、出力される。
【0054】
PA制御回路114が全てのサブキャリアに追従して、PA111へ電源電圧や、PA制御信号を供給するためには、最も低いサブキャリア周波数以下から最も高いサブキャリア周波数以上までの制御帯域を持つ広帯域な回路が必要となる。広帯域化は、デジタル処理においては演算量の増大に伴う、回路規模の増大や消費電力の増大、アナログ処理においては広帯域なアナログ回路の導入や消費電力の増大を生じ、さらにはいずれもコスト増につながる。
【0055】
一方、OFDM方式においては、先に述べた通り、サブキャリアやサブキャリアのセグメント毎に無線変調方式および送信電力を設定したり、一部のサブキャリアのみを使用することが可能である。増幅器による非線形歪みの影響を受けやすい多値無線変調方式、非線形歪みの発生について支配的である高電力に設定されたサブキャリアのセグメント、あるいはまさに使用されているサブキャリアの周波数帯域だけに上記制御帯域を設定できれば、デジタル処理の演算量削減や狭帯域ではあるが安価なアナログ処理系の導入が可能となり、消費電力および回路コストを抑制することができる。
【0056】
そこで、本第1実施形態では、デジタルフィルタ121を設置し、制御帯域を制限することで、上記効果を得るようにしている。
【0057】
また、シンボルマッピング回路101が、増幅器による非線形歪みの影響を受けやすい多値無線変調方式、非線形歪みの発生について支配的である高電力に設定されているサブキャリアのセグメント、あるいはまさに使用されるサブキャリアを、優先して低い周波数のサブキャリアに割り当てることにより、PA制御回路114の動作速度を下げることができる。さらに、低い周波数のサブキャリアへ割り当てを固定することで、演算量の削減や低速な回路での構成が可能となり、その結果、消費電力や、回路コストを抑制することができる。これらも、帯域制限による改善の一つと考えることができる。
【0058】
デジタルフィルタ121の出力であるPA制御用デジタルベースバンド信号は、実数成分抽出回路122にて、その実数成分が抽出され、PA制御用実デジタルベースバンド信号として出力される。PA制御用実デジタルベースバンド信号は、振幅検出回路123にて、その振幅が求められ、振幅信号に変換される。振幅を検出する方法の一つとして、絶対値を求める方法がある。振幅信号は、制御信号変換回路124に入力され、電源制御信号、及びPA制御信号に変換される。
【0059】
電源制御信号は、タイミング調整回路125にて、DC/DC変換器116の応答遅延を補償するよう予め決められた時間だけ遅延されて、DC/DC変換器116に入力される。DC/DC変換器116は、電源制御信号に基づいた電圧を、PA111に供給する。一方、PA制御信号は、タイミング調整回路126にて、PA111の応答遅延を補償するよう予め決められた時間だけ遅延されて、PA111に供給される。
【0060】
PA111は、DC/DC変換器116から供給される電圧を電源電圧とし、PA制御信号に基づいて内部バイアス電流および電圧を設定して、アナログフィルタ110からの搬送帯域OFDM信号を増幅して出力する。
【0061】
振幅信号は、PA111が増幅すべき搬送帯域OFDM信号の振幅を示している。OFDM信号の振幅が大きいとき、DC/DC変換器116は、電源制御信号により、高い電圧をPA111に供給するよう制御される。この結果、ピーク電力時にも、非線形歪み発生を抑制することができる。また、PA制御信号により、PA111の内部バイアス電流や、電圧を、非線形歪み発生を抑制するように制御する。具体的には、増幅素子がバイポーラトランジスタの場合はベース電流を制御しコレクタ電流を、電界効果トランジスタの場合はゲート電圧を制御しドレイン電流を制御する。制御方法の一つとして、非線形歪みを抑制したいときに、信号無入力時のコレクタ電流やドレイン電流を増やす方法がある。
【0062】
一方、OFDM信号の振幅が小さいときには、DC/DC変換器116からPA111に供給する電圧は低い方が、またPA111内部のトランジスタ等に流れる電流は少なく設定される方が、電力の利用効率が高まる。よって、電源制御信号や、PA制御信号は、上記を満たすよう制御される。
【0063】
上記、制御信号変換回路124による振幅信号を元にした電源制御信号や、PA制御信号の生成は、予め設定された変換テーブル、関数式、あるいはこれら両方に基づいて行われる。また、変換テーブルの利用には、テーブル値の内挿や外挿演算も併用される。
【0064】
DC/DC変換器116の出力電圧制御とPA111のバイアス制御とには、各々、遅延が存在する。また、非線形歪み抑圧制御は、増幅される信号の小振幅から大振幅への遷移に先行して開始され、逆に、大振幅から小振幅への遷移からは遅れて終了するようにヒステリシス状に制御されることが好ましい。そこで、制御信号変換回路124とタイミング調整回路125、126が協調し、ヒステリシス制御を行う。具体例として、制御信号変換回路124が非線形歪み抑圧を行う期間の延長処理を分担し、タイミング調整回路125および126が、遅延特性差分を吸収することによって、前記信号振幅の遷移方向に対応したヒステリシス制御を実現する。
【0065】
なお、DFT(Discrete Fourier Transform)−Spread OFDMに基づくSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)方式においては、S/P変換器102と、IFFT103及びIFFT112との間に、
図2に示すように、「離散フーリエ変換−サブキャリアマッピング回路」、すなわち、離散フーリエ変換器(DFT)130と、サブキャリアマッピング回路131とが介挿されるが、この場合も上記と同じ効果を有する。
【0066】
上述した第1実施形態によれば、OFDMシンボル信号に基づいて、IFFT103、P/S変換及びGI付加回路104、タイミング調整回路106、D/A変換器107、周波数変換器108、局部発振器109、アナログフィルタ110がOFDM変調波信号を生成し、PA制御回路114、電源115、DC/DC変換器116が所定の電圧を有する電力とPA制御信号とを生成する。よって、各々の信号生成において適した有効桁数の演算を行えばよく、演算回路の規模や、演算処理量を下げることができる。その結果、演算の高速化や、消費電力の低減化を図ることができる。
【0067】
また、デジタルフィルタ121を備え、制御信号(電源制御信号や、PA制御信号)の制御帯域を制限しているため、消費電力や、回路コストを抑制することができる。
【0068】
また、シンボルマッピング回路101が、増幅器による非線形歪みの影響を受けやすい多値無線変調方式、非線形歪みの発生について支配的である高電力に設定されているサブキャリアのセグメント、あるいはまさに使用されるサブキャリアを、優先して低い周波数のサブキャリアに割り当てることにより、PA制御回路114の動作速度を下げることができる。さらに、低い周波数のサブキャリアへ割り当てを固定することで、演算量の削減や低速な回路での構成が可能となり、その結果、消費電力や、回路コストを抑制することができる。
さらに、PA制御回路114の入力をデジタル信号としているので、周囲からの雑音や干渉の影響を受け難くすることができる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本第2実施形態では、基本的構成は第1実施形態と同様であるが、PA制御用信号の生成についてさらに工夫している。
【0070】
図3は、本第2実施形態によるOFDM変調波送信装置を示すブロック図である。なお、
図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。本第2実施形態では、
図1のOFDM変調波送信装置100のIFFT112、PA制御回路114に替えて、各々、IFFT212、PA制御回路(制御回路)214を備えている。また、デジタルフィルタ121が省かれている。
【0071】
S/P変換器102は、OFDMのサブキャリア毎の複素シンボルを入力し、パラレル変換出力をIFFT103及び212へ出力する。IFFT212は、パラレル変換出力を入力し、その一部を内蔵する選択回路(図示しない)で選択し、高速逆フーリエ変換してPA制御用複素時間波形データを出力する。P/S変換及びGI付加回路113は、IFFT212からの高速逆フーリエ変換出力を入力し、複素数であるPA制御用複素デジタルベースバンド信号を出力する。実数成分抽出回路122は、P/S変換及びGI付加回路113の出力であるPA制御用複素デジタルベースバンド信号を入力し、その実数成分であるPA制御用実デジタルベースバンド信号を出力する。
【0072】
次に、
図3に示すOFDM変調波送信装置200の動作のうち、第1実施形態のOFDM変調波送信装置100とは異なる動作について説明する。
S/P変換器102のパラレル変換出力は、数式(1)の通りである。数式(1)において、nは、各々のサブキャリアを示している。IFFT212では、これらのサブキャリアの内、PA制御に必要なサブキャリアの複素シンボルについてのみ演算が行なわれ、それ以外のサブキャリアの複素シンボルは0として扱われる。
【0073】
以下、例としてm
s番目からm
e番目(0≦m
s<m
e≦N−1)のサブキャリアのシンボル情報が選択された場合を示す。IFFT212の入力c
m(m=0,…,N−1)は、次式(7)、(8)で表される。
【0074】
【数7】
【0075】
【数8】
【0076】
IFFT212は、高速逆フーリエ変換を行い、次式(9)で示す、パラレルデータであるPA制御用複素時間波形データw{k/(Nf
0)}、(k=0,1,2,…,N−1)を出力する。
【0077】
【数9】
【0078】
上記数式(9)を数式(6)と比較すると、加算範囲の差分から明らかに演算量が減っていることが分かる。また、数式(7)、数式(8)で示されたサブキャリアの複素シンボルの選択は、演算を要するサブキャリアを限定することであり、高速逆フーリエ変換により出力されるPA制御用複素時間波形データw{k/(Nf
0)}を帯域制限することでもある。よって、
図1におけるデジタルフィルタ121と同じ効果を有する。更に、本第2実施形態では、サブキャリア毎にフィルタを設定することができるので、OFDM信号の用途に適したフィルタ効果をより柔軟に得ることができる。なお、上記例では、周波数の連続した(隣接した)サブキャリアを選択した場合を示したが、不連続なサブキャリアを選択しても構わない。
【0079】
また、IFFT212の入力c
mに0を代入するに当たっては、単純に演算データとして0を代入し計算するだけでなく、IFFTの演算(一般には、バタフライ演算等が知られている)において、0の乗算が発生する計算パスをバイパスする処理を行うことで、演算量や、それによる電力消費を抑制することができる。また、使用するサブキャリアが一部の周波数に固定されている場合には、回路的に使用しないサブキャリアに対応する演算器を省くことで、回路規模を小さくすることができる。
【0080】
サブキャリアの複素シンボルの選択は、IFFT212内に選択回路を設けるだけでなく、S/P変換器102内のIFFT212への出力回路にて行うこともできる。さらに、PAの制御は、搬送帯域OFDM信号の非線形歪みの補償が目的であるので、補償に用いるベースバンド信号は、数式(10)、(11)に示すように、サブキャリアの周波数を最も低い周波数にシフトさせて生成することができる。
【0081】
【数10】
【0082】
【数11】
【0083】
この結果、さらに制御周波数帯域を下げることができ、デジタル処理の演算量削減や低速なアナログ処理系の導入につながる。
【0084】
上述した第2実施形態によれば、PA制御回路214は、OFDMシンボル信号の一部を選択入力して制御信号を生成するので、BPF121が無くとも制御周波数帯域を制限することができる。その結果、演算量やアナログ回路コストを抑制することができ、さらに、回路規模や、消費電力を抑制することができる。
【0085】
また、本第2実施形態によれば、補償に用いるベースバンド信号は、サブキャリアの周波数を最も低い周波数にシフトさせて生成することができる。この結果、さらに制御周波数帯域を下げることができ、デジタル処理の演算量削減や低速なアナログ処理系の導入を図ることができる。
【0086】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本第3実施形態では、基本的構成は第1実施形態と同様であるが、PA制御用信号の生成についてさらに異なる工夫をしている。
【0087】
図4は、本第3実施形態によるOFDM変調波送信装置を示すブロック図である。なお、
図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。本第3実施形態では、
図1のOFDM変調波送信装置100のP/S変換及びGI付加回路113、PA制御回路114に替えて、各々、P/S変換及びGI付加回路313、PA制御回路(制御回路)314を備えている。また、IFFT112が省かれている。
【0088】
IFFT103は、高速逆フーリエ変換出力である複素時間波形データを、P/S変換及びGI付加回路104、313へ出力する。P/S変換及びGI付加回路313は、IFFT103からの複素時間波形データを入力し、複素数であるPA制御用複素デジタルベースバンド信号をデジタルフィルタ121へ出力する。
【0089】
次に、
図4に示すOFDM変調波送信装置300の動作のうち、第1および第2実施形態とは異なる動作について説明する。
本第3実施形態では、IFFT103の高速逆フーリエ変換出力である複素時間波形データを、P/S変換及びGI付加回路313へ直接入力し、IFFT112を省いたことにより、回路規模や、演算量それらに起因した消費電力を削減できる。
【0090】
一方で、IFFT112が有する有効桁数の削減や、第2実施形態のIFFT212が有するサブキャリア選択の効果は無くなる。それを補うため、P/S変換及びGI付加回路313は、IFFT103からの複素時間波形データの内、PA制御に必要な有効桁数を満たす上位ビットのデータのみを選択して取り込み、処理し、同様に有効ビット数を削減したPA制御用複素デジタルベースバンド信号を生成する。その結果、複素時間波形データの全ての情報を入力して処理した場合に比べ、回路規模、演算量、およびそれらに起因した消費電力を削減できる。
【0091】
上述した第3実施形態によれば、PA制御回路314は、IFFT103から複素時間波形データを入力して、DC/DC変換器116やPA111への制御信号を生成するので、複素シンボルからPA制御用複素時間波形データを求める逆フーリエ変換演算を省略することができる。その結果、回路規模や、演算量の抑制、さらには消費電力を抑制することができる。
【0092】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本第4実施形態では、その基本的構成は第1実施形態と同様であるが、PA制御用信号の生成についてさらに異なる工夫をしている。
【0093】
図5は、本第4実施形態によるOFDM変調波送信装置を示すブロック図である。なお、
図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。本第4実施形態では、
図1のOFDM変調波送信装置100のPA制御回路114、制御信号変換回路124に替えて、各々、PA制御回路(制御回路)414、制御信号変換回路424を備えている。
また、以下に説明する通り、オプションとして、シンボルマッピング回路101に替えてシンボルマッピング回路401を備え、IFFT112に替えてIFFT412を備えている。
【0094】
次に、
図5に示すOFDM変調波送信装置400の動作のうち、第1〜第3実施形態とは異なる動作について説明する。
OFDM信号のサブキャリアが一部周波数のみ使用されることがあり、特に、高いサブキャリア周波数が使用される頻度が低い場合、
図1のPA制御回路114のコストや、消費電力とその効果とを比較した場合など、PA制御回路114の追随する周波数帯域を全てのサブキャリア帯域よりも狭めた方が、低速回路を利用できることによる低コスト化や、低速動作による消費電力の削減により、有利な場合がある。
【0095】
本第4実施形態では、このような条件において、制御信号変換回路424が、PA111が増幅しようとしている搬送帯域OFDM信号がPA制御回路414の追従できる帯域内にあるか否かを認識し、もし追従できない帯域外にあると判断した場合には、DC/DC変換器116の出力電圧をOFDM信号振幅に追従させることを止め、PA111の非線形歪みが最も低くなる電源制御信号とPA制御信号とを出力する。
【0096】
上記制御信号変換回路424による帯域認識に当たっては、OFDM変調波送信装置400の外部から帯域情報(Bandwidth)を制御信号変換回路424へ入力してもよい。また、シンボルマッピング回路401や、IFFT412は、使用されるサブキャリア帯域を認識しているので、これらから帯域情報を制御信号変換回路424へ入力してもよい。
【0097】
上述した第4実施形態によれば、PA制御回路414には、帯域情報が入力される。したがって、制御信号変換回路424は、PA制御回路414、PA111、およびDC/DC変換器116の制御帯域を超える広帯域のOFDM変調波信号が生成されることを認識したときに、演算による制御信号に依らず、予め決められた電圧を有する電力とPA制御信号とをPA111に供給することができる。この結果、広帯域のOFDM変調波信号が生成される頻度が低い場合に、低コスト化や、消費電力の削減を図ることができる。
【0098】
以下、上述した第1実施形態から第4実施形態の効果についてまとめておく。
【0099】
上述した第1実施形態によれば、OFDMシンボル信号に基づいて、IFFT103、P/S変換及びGI付加回路104、タイミング調整回路106、D/A変換器107、周波数変換器108、局部発振器109、およびアナログフィルタ110がOFDM変調波信号を生成し、PA制御回路114、電源115、およびDC/DC変換器116が所定の電圧を有する電力とPA制御信号とを生成する。よって、各々の信号生成において適した有効桁数の演算を行えばよく、演算回路の規模や、演算処理量を下げることができ、その結果、演算の高速化や、消費電力の低減化を図ることができる。
また、デジタルフィルタ121を備え、制御信号(電源制御信号や、PA制御信号)の制御帯域を制限しているため、消費電力や、回路コストを抑制することができる。
また、シンボルマッピング回路101が、増幅器による非線形歪みの影響を受けやすい多値無線変調方式、非線形歪みの発生について支配的である高電力に設定されているサブキャリアのセグメント、あるいはまさに使用されるサブキャリアを優先して低い周波数のサブキャリアに割り当てることにより、PA制御回路114の動作速度を下げることができる。さらに、低い周波数のサブキャリアへ割り当てを固定することで、演算量の削減や低速な回路での構成が可能となり、その結果、消費電力や、回路コストを抑制することができる。
さらに、PA制御回路114の入力をデジタル信号としているので、周囲からの雑音や干渉の影響を受け難くすることができる。
【0100】
また、上述した第2実施形態によれば、PA制御回路214は、OFDMシンボル信号の一部を選択入力して制御信号を生成するので、BPF121が無くとも制御周波数帯域を制限することができる。その結果、演算量やアナログ回路コストを抑制することができ、さらに、回路規模や、消費電力を抑制することができる。
また、第2実施形態によれば、補償に用いるベースバンド信号は、サブキャリアの周波数を最も低い周波数にシフトさせて生成することができる。この結果、さらに制御周波数帯域を下げることができ、デジタル処理の演算量削減や低速なアナログ処理系の導入を図ることができる。
【0101】
さらに、上述した第3実施形態によれば、PA制御回路314は、IFFT103から複素時間波形データを入力して、DC/DC変換器116やPA111への制御信号を生成するので、複素シンボルからPA制御用複素時間波形データを求める逆フーリエ変換演算を省略することができる。その結果、回路規模や、演算量の抑制、さらには消費電力を抑制することができる。
【0102】
また、上述した第4実施形態によれば、PA制御回路414は、帯域情報が入力されることにより、PA制御回路414、PA111、DC/DC変換器116の制御帯域を超える広帯域のOFDM変調波信号が生成されることを認識したときに、演算による制御信号に依らず、予め決められた電圧を有する電力とPA制御信号とをPA111に供給することができる。この結果、広帯域のOFDM変調波信号が生成される頻度が低い場合に、低コスト化や、消費電力の削減を図ることができる。
【0103】
本願は、2010年1月12日に、日本に出願された特願2010−4135号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。