(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のいずれの樹脂成形用型も、シボ模様を形成するための凹凸状型面を、基体に貼り付けた樹脂層に形成してある樹脂成形用型となっている。これらの樹脂成形用型では、製品に成形される意匠を変更するためには、当該樹脂成形用型から樹脂層を剥離ないし研磨して除去するか、あるいは、当該樹脂成形用型を作り直す必要があり、製品意匠を変更するために多大な労力とコストを要していた。
また、上記した前者(特許文献1)に示すような樹脂成形用型では、熱硬化型の樹脂を用いたシボ付き樹脂層を固着して貼り付けるため、耐熱温度がシボ付き樹脂層の硬化温度より低い材料による成形型やシボ付き樹脂層が接着しにくい材質の成形型には適用できなかった。さらに、当該シボ付き樹脂層を金属製の成形型に加工する場合には、加温による型変形が生じて不具合を有するものとなっていた。
一方、上記した後者(特許文献2)に示すような樹脂成形用型では、樹脂製シボ層と通気性介在層を型に貼り付け・固着させているので、排気孔を穿孔する位置によっては、無理な姿勢で穿孔作業を行うことを余儀なくされるものであった。この場合、真空成形において成形製品表面に排気孔痕を発生させず、且つ、高品質なシボを反転させるためには、意匠面に穿孔された排気孔は、その直径が150〜220μmであることが好ましいものとなっている。例えば、自動車のドア程度の成形型であれば数は1500個以上にも上ることから、無理な姿勢で排気孔を穿孔することは、生産性が非常に悪いものとなる。当該排気孔をドリルで穿孔する場合、無理な姿勢で穿孔すると、ドリルの刃が折れてしまう虞が多分にあった。
【0006】
それゆえに、本願発明の主たる目的は、多大な労力とコストを要することなく製品表面側の意匠を簡便に変更することができ、当該意匠表面への後加工の選択も多様なものとなる、樹脂成形用型部
品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1にかかる本願発明は
、成形型に取り換え自在に装着され、製品表面側に意匠が形成された樹脂成形品を成形する樹脂成形用型部品の製造方法であって
、樹脂成形品を成形するための
母型を準備する工程(
母型準備工程)と、可撓性を有する材料で形成され、製品表面の意匠面を形成する転写面としての凹凸状面を有する反転用マスターを準備する工程(反転用マスター準備工程)と、
母型を用いて、基材層と、基材層の一方主面側で且つ転写面側に配設されて製品表面
の意匠となる意匠部とを含む
、耐熱性を有した複合層を、反転用マスターの表面に形成する工程(複合層形成工程)と、積層体から反転用マスターを剥離する工程(反転用マスター剥離工程)と、基材層の他方主面側に凹凸部を形成する工程(凹凸部形成工程)とを含む、樹脂成形用型部品の製造方法である。
請求項
2にかかる本願発明は、請求項
1にかかる発明に従属する発明であって
、転写面の反対側の面を母型の表面に沿って貼り付けて仮固定し、母型の形状を象るための工程(型取り工程)と、母型に仮固定された反転用マスターの転写面の表面に耐熱性を有する材料を塗布し、基材層および基材層の一方主面で且つ転写面側に配設されて製品表面側となる意匠部とを含む複合層を、反転用マスターの表面に形成する工程(複合層形成工程)と、反転用マスターから母型を脱型する工程(脱型工程)と、脱型工程の後、複合層から反転用マスターを剥離する工程(反転用マスター剥離工程)と、基材層の他方主面に凹凸部を形成する工程(凹凸部形成工程)とを含む、樹脂成形用型部品の製造方法である。
請求項
3にかかる本願発明は、請求項
1にかかる発明に従属する発明であって、
母型は
、凸型および凹型を含む注型用の型を含み、凸型を準備する工程(凸型準備工程)と、可撓性を有する材料で形成され、製品表面の意匠面を形成する転写面としての凹凸状面を有する反転用マスターを準備する工程(反転用マスター準備工程)と、転写面の反対側の面を凸型の表面に沿って貼り付けて仮固定し、凸型の形状を象るための工程(型取り工程)と、凸型と所定の間隔を隔てて凹型を凸型と対向して配置する工程と、凸型および凹型間に耐熱性を有する材料を注ぎ込み、凸型に仮固定された反転用マスターの転写面の表面に
、基材層と、基材層の一方主面で且つ転写面側に配設されて製品表面側となる意匠部とを含む複合層
を形成する工程(複合層形成工程)と、複合層から凹型を脱型する工程(凹型脱型工程)と、複合層から凸型を脱型する工程(凸型脱型工程)と、複合層から反転用マスターを剥離する工程(反転用マスター剥離工程)と、基材層の他方主面に凹凸部を形成する工程(凹凸部形成工程)とを含む、樹脂成形用型部品の製造方法である。
請求項
4にかかる本願発明は、請求項
1〜請求項
3のいずれか1項にかかる発明に従属する発明であって、意匠部を支持補強する補強層を形成する工程(補強層形成工程)をさらに含む、樹脂成形用型部品の製造方法である。
請求項
5にかかる本願発明は、請求項
1〜請求項
4のいずれか1項にかかる発明に従属する発明であって、樹脂成形用型部品に対して、当該樹脂成形用型部品の厚み方向に貫通する貫通孔を形成する工程(貫通孔形成工程)をさらに含む、樹脂成形用型部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本願発明にかかる樹脂成形用型部
品の製造方法によれば、多大な労力とコストを要することなく製品表面側の意匠を簡便に変更することができ、当該意匠表面への後加工の選択も多様なものとなり、種々の成形型に装着されて好適であるという効果がある。
【0009】
本願発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本願発明にかかる樹脂成形用型部品の実施形態の一例を示す断面図解図であり、
図2は、
図1の樹脂成形用型部品を成形型に取り換え自在に装着する状態を説明するための分解断面図解図である。
図3は、
図1の樹脂成形用型部品を成形型の型面に装着した状態を説明するための断面図解図である。
図4は、
図3の要部拡大図であり、
図5は、
図4の要部拡大図である。
樹脂成形用型部品10は、製品となる成形品の意匠を向上させるために、シボ模様(皮シボ模様、肌理模様や木目模様、梨地模様、葉脈模様、鱗模様、大理石模様、塗装模様、幾何学模様など)等の装飾部をその表面側に有する樹脂成形品を作製するための成形型に取り換え自在に装着されて用いられるものである。[例えば、
図2,
図3参照。]
【0013】
樹脂成形用型部品10(以下、「型部品10」という。)は、
図1に示すように、基材層12を含む。基材層12の一方主面側で製品表面側となる面には、意匠部14が形成されている。意匠部14は、シボ模様(皮シボ模様、肌理模様や木目模様、梨地模様、葉脈模様、鱗模様、大理石模様、塗装模様、幾何学模様など)等の装飾部14aを含む。
本実施形態例では、装飾部14aが、微細な凹凸状面を有する反転用マスターにより転写された微細な凹凸状のシボ模様で形成された意匠面を含む。反転用マスターは、たとえば厚さが約0.1〜1000μmのシボ模様を意匠部14の表面側に転写させることが可能な展性・延性・可撓性を有する材料で形成されている。型部品10の製品成形面となる意匠部14の意匠面は、成形の際に所望する凹凸状のシボ模様が離型する材料で形成されている。
意匠部14には、ガラスコーティング等の表面処理により装飾部14aの表面に形成され得る鏡面状部(図示せず)が含まれてもよい。
【0014】
基材層12の他方主面側には、複数の凸部16aおよび凹部16bを有する凹凸部18が形成されている。凹凸部18は、たとえば
図2,
図3,
図4に示すように、成形型Mの内面mと当接する面に形成されている。凹凸部18は、
図1の一点鎖線で囲んだ矢印Aの部位に示すように、複数の凸部16aおよび凹部16bが平面視たとえば碁盤目状に配列されている。凹凸部18の複数の凹部16bは、互いに連通する態様となっている。そのため、型部品10が成形型Mの内面mに沿って嵌め込まれて装着されたときに、たとえば
図4,
図5に示すように、
凹凸部18と成形型Mの内面mとの間に連通する通気部20が配設されるものとなる。
【0015】
本実施形態例では、基材層12、意匠部14および凹凸部18が、耐熱性を有する材料で形成され、基材層12、意匠部14および凹凸部18を含む型部品10の厚みは薄肉に形成されている。当該型部品10の厚みは、基材層12、意匠部14および凹凸部18を含めて、たとえば約3〜30mm程度の薄肉に形成されている。この場合、意匠部14の装飾部(意匠面)14aの厚みは、約1mm程度に形成され、意匠部14の表面に形成される装飾部(意匠面)14aのシボ模様は、その「シボ凸部の高さ」や「シボ凹部の深さ」が、たとえば約0.1〜1000μmに形成されている。また、凹凸部18の凹部16bの深さがたとえば約0.01〜1000μmに形成され、凸部16aと凸部16aとの間の距離がたとえば約10〜1000μmに形成されている。
【0016】
本実施形態例にかかる型部品10は、基材層12に意匠部14を支持・補強する補強層(
図1〜
図6では図示せず)をさらに含む構成とすることができ、当該補強層を有することがより好ましい。この補強層は、ガラスクロスを基材層12に内在させる方法、耐熱性を有する材料で基材層12、意匠部14および凹凸部18を含む型部品10の厚みを厚くする方法、および、耐熱性を有する樹脂材料、繊維材料、セラミック材料、金属材料の内のいずれか1つの材料または複数の材料を基材層12に内在させる方法が採用され得る。この補強層は、意匠部14とは反対側の凹凸部18の強度も補強・補完する機能も併せ持つものである。
【0017】
本実施形態例にかかる型部品10は、耐熱性を有する材料で薄肉・軽量に形成され、型部品10それ自体を単体として取り扱うのに適したものとなっているため、たとえば
図2および
図3に示すように、樹脂成形品の成形時に上記した凹凸部18が成形型Mの内面mに押し付ける方向に成形圧力が作用するように、当該成形型Mに取り換え自在に簡便に装着することができる。型部品10は、成形型Mに着脱可能な強度を有すると共に、当該成形型Mに装着した状態で成形時に当該型部品10に作用する成形圧力に耐える耐圧強度を有し、樹脂成形品を量産成形できる強度を有するものである。
【0018】
本実施形態例にかかる型部品10は、耐熱性を有する樹脂材料、繊維材料、セラミック材料、金属材料の内のいずれか1つの材料または複数の材料で形成され得る。本実施形態例では、型部品10を構成する基材層12、意匠部14および凹凸部18の材料が、常温硬化、加熱硬化、光硬化等の硬化型の樹脂材料、セラミックス、金属の単体、金属粉末の焼結体、溶射被膜、あるいは、前記した各材料と、繊維または粉粒体を混入した複合材料で形成され得るものである。
【0019】
上記樹脂材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリプロピレン樹脂、けい素樹脂、ふっ素樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、フタル酸系樹脂、スチロール系樹脂、繊維素系樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂などの樹脂を単独で使用してもよいし、2つ以上混合して使用してもよい。
【0020】
上記セラミックス材料としては、磁器材料、ガラス、セメント、石膏、ほうろう、ファインセラミックスなどが使用され得る。
上記繊維材料としては、ポリアミド繊維(アラミド繊維やケブラー繊維)などの有機繊維材料、あるいは、ガラス繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維などの無機繊維材料が用いられ、これらの繊維材料を、樹脂材料に混入する場合には、短繊維であって繊維の長さがたとえば約10〜300μmのものが用いられるのが好ましい。
【0021】
上記粉粒体としては、セラミックス材料や金属材料からなる粉粒体が用いられ、粒の直径がたとえば約10〜300μmに形成されているものが用いられるのか好ましい。
【0022】
本実施形態例では、補強層を、上記した樹脂材料、セラミック材料、繊維材料および粉粒体材料の内のいずれか1つまたは複数の材料を複合させた材料で形成するようにしてもよい。
【0023】
上述した本実施形態例にかかる型部品10では、
図2および
図3に示すように、当該型部品10が成形型Mに対して着脱自在となる構成のため、その都度、成形型Mを作り変えることなく、製品表面側に形成される意匠部を簡便に変更することができる。そのため、製品意匠の変更に応じた多品種の成形型Mを作製するための多大な労力とコストを削減することができる。
【0024】
この型部品10は、耐熱性を有する材料で形成され、部品単体として取り扱うことができる上、成形型Mに装着したとき、成形型Mが所定の成形方法に耐え得る物性、特に、たとえば機械的性質および熱的性質等を備えているので、当該型部品10が部品単体としての当該物性を有していなくても、設置相手の成形型Mに当該型部品10を嵌め込んだ状態で、成形時にかかる成形圧力に耐え得るものとなっている。したがって、この型部品10は、取り換え自在に装着される相手側の成形型Mの種類、すなわち、成形方法の種類および成形型Mの材質の如何を問わず、種々の成形型Mに着脱自在に装着することができ、その汎用性が高いものとなっている。この場合、この型部品10の設置相手となる成形型Mとしては、真空成形型、射出成形型、圧縮成形型、押出成形型、ブロー成形型等の種々の成形型が適用され得る。また、成形型Mの材質としては、金属、樹脂、複合材料および木質材料等の種々の材料の成形型や量産成形に用いるには耐久性が不足する材料で作製された簡易型
が適用され得る。
【0025】
さらに、本実施形態例にかかる型部品10では、特に、基材層12の一方主面で製品表面側に配置される意匠部14が、凹凸状面を有する反転用マスターで転写された意匠面を含んでいるため、当該意匠面は、たとえばエッチングにより形成された凹凸状面と比較すると、その形状が非常に精緻なものとなっている。また、例えば光造形法によって作製された成形型のように、従来、エッチングによるシボ加工が困難であった材質の成形型等に対しても、この型部品10によれば、容易にシボ加工を行うことができる。
【0026】
また、基材層12の他方主面で成形型Mの内面mと当接するように形成される凹凸部18は、たとえば
図4,
図5に示すように、
凹凸部18と成形型Mの内面mとの間に通気部20を形成するため、この型部品10を例えば射出成形用型に適用した場合、成形時に通気部20が減
圧されることで、成形樹脂の冷却速度を緩やかにし、より正確に反転用マスターにより意匠面を転写することができ、しかも、外観不良の発生率も減少させることができる。さらに、成形終了時には、通気部20に冷却用の気体を吹き込むことで、樹脂成形品は瞬時に冷却され、生産性が高められる。この場合、凹凸部18の凹部16bは、連通するように構成されてもよいが、連通されていなくてもよい。
【0027】
上記したように、この型部品10は、部品単体として取り扱うことができるため、たとえば樹脂成形品の成形時のガス焼き付けなどの汚れが付着した場合に、当該型部品10を取り外して容易に洗浄することができる。また、意匠面に傷を付けてしまうなどの不具合が生じた場合には、当該型部品10を交換することができるため、従来のように、生産を中断して成形型を修理に出す必要もなくなる。
【0028】
さらに、この型部品10が成形型Mに対して着脱自在の構造を有し、しかも、当該型部品10が耐熱材料で形成されているため、成形時の離型性を向上させる目的で意匠部表面に対して施される後加工の選択肢が広がる。この場合、離型コーティング、防汚コーティングを行うことが容易なものとなる。また、従来の成形型Mには適用するのが困難であった、高温焼成を前提としたコーティング等の後加工も施すことができる。コーティング例としては、フッ素樹脂系、シリコーン樹脂系、ガラスコーティングなどが適用され得る。
【0029】
図6は、本願発明にかかる樹脂成形用型部品の実施形態の他の例を示す断面図解図であり、
図7は、
図6の樹脂成形用型部品を成形型に取り換え自在に装着する状態を説明するための分解断面図解図である。
図8は、
図6の樹脂成形用型部品を成形型の型面に装着した状態を説明するための断面図解図である。
図9は、
図8の要部拡大図であり、
図10は、
図9の要部拡大図である。
本実施形態例にかかる型部品10は、上述の実施形態例と比べて、当該型部品10の厚み方向に貫通する貫通孔21を有している点で相違している。すなわち、
図6〜
図10に示す実施形態例にかかる型部品10には、基材層12、意匠部14および凹凸部18を貫通する複数の貫通孔21が配設されている。貫通孔21は、当該型部品10に対して、その直径がたとえば150〜220μmの円筒状に形成されている。この貫通孔21は、設置する相手の成形型Mに向かって孔径が漸次広がっていく断
面台形に形成されてもよい。
【0030】
貫通孔21は、ドリル等の切削加工により穿孔する方法、レーザーにより基材層12、意匠部14および凹凸部18を加熱溶融して穿孔する方法、または、型部品10の作製途中において、耐熱性を有する樹脂材料等が半硬化状態の時に、所望の孔径になるようにピアノ線等の線材を埋設して貫通孔部位を確保しておき、貫通孔21を形成する部分に樹脂材料等が行き渡らないようにして、樹脂材料を硬化させた後、あるいは硬化途中に、除去あるいは消滅させて当該貫通孔21を形成する方法などによって配設される。
【0031】
本実施形態例にかかる型部品10は、たとえば
図7および
図8に示すように、真空吸引孔hを備えた真空成形型Mに取り換え自在に嵌め込まれて装着されるものである。この型部品10では、それ自体単体として簡便に取り扱うことができるので、適宜、任意の位置に貫通孔21を穿孔することができる。また、その穿孔作業においても、特許文献2に示す従来技術に示すように、無理な姿勢での穿孔作業を行うこともない。なお、当初に穿孔した貫通孔21が切屑等で詰まった場合には、型部品10を設置相手の成形型Mから適宜取り外して洗浄するか、当該型部品10の別の部位に貫通孔21を穿孔すればよい。
【0032】
すなわち、この型部品10を真空成形型Mの部品として使用する場合には、当該型部品10に真空吸引用の貫通孔21を穿孔した上で真空成形型Mに嵌め込んで容易に使用することができるので、特許文献1および特許文献2等に示す従来技術のように成形型に貼り付けたシボ付き樹脂層に真空吸引用の貫通孔を穿孔するよりも簡便な穿孔作業となる。
【0033】
本実施形態例では、当該型部品10を真空成形型Mに装着させると、
図8,
図9,
図10等に示すように、型部品10の凹凸部18が真空成形型Mの内面mに当接し、当該型部品10の凹凸部18と真空成形型Mの内面mとの間に通気部20が配設され、さらに、当該通気部20と上記した貫通孔21とが連通されるものとなる。そのため、本実施形態例では、設置相手の真空成形用型Mに当初から設けられた真空吸引孔hを狙って真空吸引用の貫通孔21を穿孔する必要が無い。
また、本実施形態例では、成形時に当該型部品10の通気部20が減圧されることで、成形樹脂の冷却速度を緩やかにし、より正確に反転用マスターで意匠面を転写することができ、外観不良の発生も減少させることができる。さらに、成形終了時には、通気部20に冷却用の気体を吹き込むことで、樹脂成形品は瞬時に冷却され、生産性を高めることができる。
【0034】
図11は、本願発明の実施形態にかかる樹脂成形用型部品の製造方法の一例を示す要部工程図であって、(A)〜(D)はその製造方法の要部を示す断面図解図であり、
図12は、本願発明の実施形態にかかる樹脂成形用型部品の製造方法の一例を示す他の要部工程図であって、(A),(B)はその製造方法の他の要部を示す断面図解図である。
図13は、
図11および
図12に示す製造方法に用いられる反転用マスターの一例を示す断面図解図である。
この製造方法は、成形型に取り換え自在に装着され、製品表面側に意匠が形成された樹脂成形品を成形する樹脂成形用型部品の製造方法であって、以下に示す(1)〜(5)の工程を含む。
(1)型準備工程
図11の(A)に示すように、樹脂成形品を成形するための型としてのたとえば母型100を準備する。母型は、樹脂材料、複合材料、石膏材料および木質材料等で形成されている。母型100は、型部品10の型面を作製するためのものであり、当該型面は樹脂成形品(製品)の外殻形状となる。母型100は、CADデータ等から作製してもよいし、反転して作製してもよい。
(2)反転用マスター準備工程
反転用マスター22は、たとえば
図13に示すように、可撓性を有するたとえば樹脂材料で形成された反転用樹脂シート体28を含み、当該反転用樹脂シート体28の表面には、上記した樹脂成形品(製品)表面の意匠面を形成する、転写面としてのたとえば凹凸状面28aが形成されている。
(3)型取り工程
反転用マスター22は、
図11の(B)に示すように、その転写面となる凹凸状面28aの反対側の平坦面を母型100の表面に沿って貼り付けて仮固定することによって、母型100の形状が象られる。この場合、反転用マスター22は、真空吸引力(VC)により母型100の表面に密着される。反転用マスター22は、接着剤で貼り付けられてもよい。
(4)複合層形成工程
母型100に仮固定された反転用マスター22の転写面の表面に、
図11の(B)に示すように、耐熱性を有する材料として、たとえば樹脂材料ないし複合材料を塗布し、上記した基材層12と、基材層12の一方主面で且つ転写面側に配設されて製品表面の意匠となる意匠部14とを含む複合層24を、反転用マスター22の表面に形成する。この場合、複合層24となる耐熱性を有する材料は、たとえば刷毛塗り、手塗り、吹き付け等の塗布による方法、あるいは、一旦半硬化のシート状にしたものを積層する方法などによって、反転用マスター22の表面に形成される。
(5)補強層形成工程
複合層24の表面に、
図11の(C)に示すように、意匠部14を支持補強する補強層26を形成する。この場合、補強層26は、耐熱性を有する樹脂材料、繊維材料、セラミック材料、金属材料の内のいずれか1つの材料または複数の材料を、複合層24の表面に、上記した塗布方法等で塗布することによって形成される。
この補強層形成工程において
、上記した成形型Mの内面mに沿って、基材層12または補強層26に、加熱手段および/または冷却手段を内蔵させる工程を含むことができる。
この場合、加熱手段としてのたとえば可撓性を有する加熱用の面ヒーター(シートヒーター)が、基材層12または補強層26に埋設される。当該面ヒーター(シートヒーター)の厚みは、たとえば約3mm以下に形成されることが好ましい。加熱手段としては、面ヒータ(シートヒーター)以外にも、その中に加熱用流体を通過させる加熱用の管(以下、加熱管という。)を基材層12または補強層26に埋設するようにしてもよい。加熱管の直径は、たとえば約3〜30mmに形成されることが好ましい。
また、冷却手段としては、その中に冷却用流体を通過させる冷却用の管(以下、冷却管という。)が基材層12または補強層26に埋設される。冷却管の直径は、たとえば約3〜30mmに形成されることが好ましい。
従来の成形型Mでは、成形型Mの内面mに沿って加熱管および/または冷却管を設けるには、当該成形型Mを分割して作製するなど、非常に手間のかかる複雑な構造を有するものであったのに比べて、上記した加熱手段および/または冷却手段を内蔵させる工程によって、成形型Mの内面mに沿って、加熱ヒーター,加熱管および/または冷却管を簡単に当該型部品10の内部に埋設することができる。
(6)脱型工程
上記した複合層24、補強層26および反転用マスター22の積層体から、たとえば
図11の(D)に示すように、母型100が脱型されることによって、複合層24、補強層26および反転用マスター22の積層体が得られる。
(7)反転用マスター剥離工程
上記脱型工程の後、たとえば
図12の(A)に示すように、上記積層体から反転用マスター22が剥離されることによって、複合層24が得られる。そして、複合層24の不要部分がトリミングされる。
(8)凹凸部形成工程
複合層24には、
図12の(B)に示すように、基材層12の他方主面(下面)に、凸部30aおよび凹部30bを有する凹凸部30が形成される。この場合、機械加工等の方法によって、シボ模様等の溝部からなる凹凸部30が形成される。
(9)さらに、必要に応じて、当該複合層24には、貫通孔[
図12の(B)では、図示せず。]が穿孔される。この場合、貫通孔は、適宜、ドリル加工およびレーザー加工等によって形成される。
【実施例1】
【0035】
図14は、本願発明にかかる一実施例(実施例1)の製造方法の一例を示す要部工程図であって、(A)〜(E)はその製造方法の要部を示す断面図解図である。
図15は、本願発明にかかる一実施例(実施例1)の製造方法の一例を示す他の要部工程図であって、(A)〜(C)はその製造方法の他の要部を示す断面図解図である。
(1)型取りのための母型100を用意する(母型準備工程)。[
図14の(A)参照]
(2)厚み0.1〜50mmのシボ反転用マスター22を母型100に真空吸引力を利用しながら手で貼るなどして設置する(型取り工程)。[
図14の(B)参照]
(3)シボ反転用マスター22の上に耐熱性材料を3〜30mmの厚みに塗布して、シボ付き複合層24を形成する(複合層形成工程)。[
図14の(C)参照]
(4)耐熱性材料(複合層24)の上に、厚みが3〜30mmである補強層26を形成する(補強層形成工程)。[
図14の(D)参照]
(5)母型100のみを取り外す(脱型工程)。[
図14の(E)参照]
(6)不要部分をトリミングし、成形型と接する面となる補強層26に、機械加工で通気用のシボ模様(溝)を彫ることによって、凸部30aおよび凹部30bを有する凹凸部30が形成される(凹凸部形成工程)。[
図15の(A)参照]
(7)シボ反転用マスター22を剥離する(反転用マスター剥離工程)。[
図15の(B)参照]
(8)必要であれば、補強層26を持つシボ複合層24に成形型にはめ込む為の金属枠32を設け、レーザー加工機で真空吸引用の直径が150〜220μmの貫通孔34を穿孔する(貫通孔形成工程)。[
図15の(C)参照]
【実施例2】
【0036】
図16は、本願発明にかかる一実施例(実施例2)の製造方法の一例を示す要部工程図
であって、(A)〜(E)はその製造方法の要部を示す断面図解図である。
図17は、本
願発明にかかる一実施例(実施例2)の製造方法の一例を示す他の要部工程図であって、
(A)〜(C)はその製造方法の他の要部を示す断面図解図である。
この実施例2では、樹脂成形品の母型となる凸型110および凹型120を含む注型用
の型と、シボ反転用マスター22が準備される。(凸型準備工程、凹型準備工程および反
転用マスター準備工程)
(1)凹型120にネット36を設置した後、フッ素コーティングやシリコーン系離型
剤などを吹き付けて離型処理を施す。また、厚み0.1〜50mmのシボ反転用マスター
22を真空吸引力を利用しながら手で貼るなどして、母型となる凸型110に設置する(
型取り工程)。[
図16の(A)参照]
(2)凸型110と凹型120を対向配置し、5〜40mmのクリアランスを設けた状
態で組み立てる。[
図16の(B)参照]
(3)設けたクリアランスの部分に耐熱性樹脂材料を真空注型し、シボ付き複合層38
を形成する(複合層形成工程)。[
図16の(C)参照]
(4)凹型120のみを脱型する(凹型脱型工程)。[
図16の(D)参照]
(5)シボ反転用マスター22をシボ付き複合層38から剥離し、凸型110を脱型す
る(凸型脱型工程および反転用マスター剥離工程)。[
図16の(D),(E)参照]
(6)シボ付き複合層38に付着していたネット36を剥離して、シボ付き複合層38
の下面に、凸部40aおよび凹部40bを有する凹凸部
42を形成する(凹凸部形成工程
)。[
図17の(A)参照]
(7)不要部分をトリミングし、必要であれば、シボ付き複合層38に、レーザー加工
で直径150〜220μmの真空吸引用の貫通孔44を穿孔する(貫通孔形成工程)。[
図17の(B)参照]
【実施例3】
【0037】
図18は、本願発明にかかる一実施例(実施例3)の製造方法の一例を示す要部工程図であって、(A)〜(E)はその製造方法の要部を示す断面図解図である。
図19は、本願発明にかかる一実施例(実施例3)の製造方法の一例を示す他の要部工程図であって、
(A)〜(C)はその製造方法の他の要部を示す断面図解図である。
(1)母型100を準備する(母型準備工程)。[
図18の(A)参照]
(2)母型100に厚さ0.1〜50mmのシボ反転用マスター22を真空吸引力を利用しながら手で貼るなどして設置する(型取り工程)。[
図18の(B)参照]
(3)シボ反転用マスター22の上に耐熱性材料を、厚さが約3〜30mmになるように塗布して、シボ付き複合層24を形成する(複合層形成工程)。[
図18の(C)参照]
(4)厚さが3〜30mmである補強層46を設け、当該補強層46に冷却用パイプやヒーター等の管48を埋設する(補強層形成工程)。[
図18の(D)参照]
(5)母型のみを取り除く(脱型)。[
図18の(E)参照]
(6)不要部分をトリミングし、成形型と接する面となる補強層46に、機械加工で通気用のシボ模様(溝)を彫ることによって、凸部50aおよび凹部50bを有する凹凸部50が形成される(凹凸部形成工程)。[
図19の(A)参照]
(7)シボ反転用マスター22を剥離する(反転用マスター剥離工程)。[
図19の(B)参照]
(8)必要であれば、補強層46を持つシボ付き複合層24に成形型にはめ込む為の金属枠
52を設け、レーザー加工機で真空吸引用の直径が150〜220μmの貫通孔54を穿孔する(貫通孔形成工程)。[
図19の(C)参照]
【0038】
上記した各実施形態例および実施例1〜実施例3に適用され得る補強層は、たとえば
図20,
図21および
図22に示す層構造を有するものが好ましい。
すなわち、
図20に示す補強層では、ガラスクロス等の補強繊維を補強層に内在させて強度を補う構成としている。
また、
図21に示す補強層では、耐久性の高い材料として、たとえば耐熱性を有する樹脂材料、繊維材料、セラミック材料、金属材料の内のいずれか1つの材料または複数の材料で形成された補強層により強度を補う構成としている。この場合、ガラスクロス等の補強繊維はあってもなくてもよい。
さらに、
図22に示す補強層では、
図21で示した補強層を形成する耐熱性材料で当該補強層の厚みを厚くして耐久性を高めることにより、強度を補う構成としている。