【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題は、ラブ・オン・ア・チップ・システム内の流体流の制御装置に関しては、n個の列S
nおよびm個の行Z
mに配置され、フローチャネル内の流体流を制御するようにそれぞれ設計されている複数のバルブからなるバルブアレイを有し、nおよびmは整数であり、さらにバルブの操作機構を
有し、バルブアレイは少なくとも2つのバルブを含み、各列S
nはバルブを有していないかまたは最多でも1つのバルブを有し、各行Z
mは0〜n個のバルブを有している
ラブ・オン・ア・チップ・システム内の流体流の制御装置において、バルブの操作機構は、n'個の列Sn'およびm'個の行Zm'に配置され平面から突出する複数の隆起部を備える1つの実質的に平坦なプレートを有し、隣接する列Sn'の間隔はバルブの隣接する列Snの間隔に等しいことによって解決される(請求項1)。
上述の課題は、このような装置の制御方法に関しては、複数のバルブがそれぞれ、特に少なくとも1つのピストンを介して与えられる押圧力で各バルブを付勢することによって操作され、押圧力で付勢されないときはバルブは開いていてこのバルブを付設されたフローチャネルの中を流体が流れ、バルブが押圧力で付勢されるとそのバルブが閉じてこのバルブを付設されたフローチャネル内で流体流が遮断されることによって解決される(請求項
7)。
上述の課題は、このような装置の製造方法に関しては、n個の列S
nおよびm個の行Z
mへのアレイの複数のバルブの配置に依存して複数のフローチャネルが設けられることによって解決される(請求項
12)。
【0010】
本発明によるラブ・オン・ア・チップ・システム内の流体流の制御装置の好ましい実施態様は、次の通りである。
・実質的に平坦なプレートは、バルブアレイの列S
nに平行に延びている第1の方向にバルブアレイに対して移動可能に支承されている(請求項
2)。
・プレートの平面から突出する複数の隆起部は、実質的に平坦なプレートが第1の方向に沿ってバルブアレイに対して移動する際に予め定められたプログラムに従って制御されながら個々のバルブが閉じられるとともに他のバルブが開かれるように、n'個の列S
n'およびm'個の行Z
m'に配置されている(請求項
3)。
・バルブアレイはチップカードに配置され、チップカードはクレジットカード形状のプラスチック材料製の平たい本体を含み、該本体の前面にはフィルム、特に粘着性フィルムが装着され、本体には前面の表面にフローチャネルが切欠きとして配置され、バルブはそれぞれのフローチャネルに少なくとも部分的に隣接して配置されたエラストマー材料を含んでいる(請求項
4)。
・本体はポリカーボネートまたはポリプロピレンから構成され、および/またはエラストマーは熱可塑性エラストマー、特にゴム、またはポリプロピレンとエチレン−プロピレン−ジエン−Mクラス−エラストマーとからなる混合物である(請求項
5)。
換言すれば、本体はポリカーボネートまたはポリプロピレンから構成され、
または、エラストマーは熱可塑性エラストマー、特にゴム、またはポリプロピレンとエチレン−プロピレン−ジエン−Mクラス−エラストマーとからなる混合物であり、
または、本体はポリカーボネートまたはポリプロピレンから構成され、かつ、エラストマーは熱可塑性エラストマー、特にゴム、またはポリプロピレンとエチレン−プロピレン−ジエン−Mクラス−エラストマーとからなる混合物である。
・チップカードはバルブの操作機構の中にサンドイッチ状に配置され、チップカードの裏面には各バルブに対してそれぞれ機構プレートに各バルブを操作するための1つのピストンが配置され、ピストンはピストンとバルブとの間で押圧力が実質的に生じないように少なくとも1つのばねを介して機構プレートとピストンとの間に初期応力をかけられている(請求項
6)。
ラブ・オン・ア・チップ・システム内の流体流の制御装置の制御方法の好ましい実施態様は、次の通りである。
・実質的に平坦なプレートが複数のバルブからなるバルブアレイに対して列S
nに平行に移動することによって、バルブの開閉が事前設定されたプログラムに従って行われる(請求項
8)。
・実質的に平坦な前記プレートのm'個の行Z
m'と、バルブアレイのm個の行Z
mとの間の差が、少なくとも1つのバルブが操作されるプロセスステップの数を生じる(請求項
9)。
・実質的に平坦な前記プレートはバルブアレイに対して相対的に固定的な速度で移動され、全ての行Z
mの相互間隔が等しいときには1つのプロセスステップの時間は行Z
m'の相互間隔によって規定され、または、全ての行Z
m'の相互間隔が等しいときには1つのプロセスステップの時間は行Z
mの相互間隔によって規定される(請求項
10)。
・実質的に平坦な前記プレートはバルブアレイに対して相対的にプロセスステップの時間に合わせられた速度で移動され、行Z
mはそれぞれ相互に、および行Z
m'はそれぞれ相互に、等しい間隔をおいて配置される(請求項
11)。
なお、独立請求項の構成要件を従属請求項の構成要件と組み合わせることができ、および、従属請求項の構成要件を相互に組み合わせることができる。
【0011】
本発明によるラブ・オン・ア・チップ・システム内の流体流の制御装置は複数のバルブからなるバルブアレイを有し、バルブはn個の列S
nおよびm個の行Z
mに配置されている。ここでnおよびmは整数である。アレイは少なくとも2つのバルブを含み、各列S
nはバルブを有していないかまたは最多でも1つのバルブを有し、各行Z
mは0〜n個のバルブを有している。バルブはこのバルブを付設されたフローチャネルの中の流体流を制御するように設計されている。さらに本発明による装置は、バルブの操作機構を有している。
【0012】
アレイにおけるバルブの特別な配置が簡単な制御を可能にする。各列には1つのバルブしかない。しかし、行にある任意の多数のバルブによって、必要な如何なるバルブ構造であっても具体化可能である。というのは、列の数および行の数が自由に選択可能であるからである。制御されるべき化学プロセスの要求、従って分析ないし検査のときの流動性およびプロセス、特に異なる場所で同時に行われるプロセスの時間的進行の要求に応じて、複数のバルブからなるバルブアレイを設計することができる。流体のチャネルおよび室は、バルブアレイの設計に応じて配置される。アレイ形態で複数のバルブを配置することは、本発明による装置の、特に簡単かつ多数のプロセスに適するもしくは再現可能な製造を、簡単な手段によって可能にする。
【0013】
バルブの制御機構は1つの実質的に平坦なプレートを有することができ、このプレートは、n’個の列S
n'およびm’個の行Z
m'に配置され平面から突出する複数の隆起部を備えている。隣接する行S
n'の間隔は、バルブの隣接する列S
nの間隔に等しくなっていてよい。
【0014】
バルブの制御機構は、固定的なプログラムに従って同時に全てのバルブを機械式に制御することを可能にする。n’個の列S
n'およびm’個の行Z
m'での該機構の構築は、該機構をバルブアレイに適合させる。
【0015】
実質的に平坦なプレートが、バルブアレイの列S
nに平行に延びている第1の方向にバルブアレイに対して移動可能に支承されていることによって、実質的に平坦なプレートを動かすことでバルブを制御することができる。プレートの平面から突出する複数の隆起部は、一方では、バルブアレイに対して第1の方向に沿って実質的に平坦なプレートを動かすと、予め定められたプログラムに従って制御されながら個々のバルブが開閉されるように、n’個の列S
n'およびm’個の行Z
m'に配置されていてよい。
【0016】
バルブアレイの各列S
nには1つのバルブしか配置されていないので、実質的に平坦なプレートの1つの隆起部は、列に沿ってプレートを動かすと、その1つのバルブだけを制御する。隆起部の間隔と個数に応じて、この1つのバルブを開閉することができる。1つの行における複数の隆起部は、1つの行に配置された複数のバルブの同時操作を生じる。このようにバルブおよび隆起部を配置することは、各バルブが制御されるプログラムを規定する。複数のバルブをアレイとして予め定められたように配置すると、複数の隆起部の配置によってプログラムを決定することができる。
【0017】
バルブアレイはチップカードに配置され、チップカードは、クレジットカードの形態のプラスチック材料製の平たい本体を含むことができ、その本体の前面にはフィルム、特に粘着性フィルムが装着されている。本体には前面の表面に、切欠きとしての複数のフローチャネルと、それぞれフローチャネルに少なくとも部分的に隣接して配置されエラストマー材料(エラストマー素材)を含む複数のバルブとが配置されていてよい。それにより、特別に簡単かつコスト的に手頃に製造できるバルブアレイの構造が得られる。チップカードは特にバイオセンサ装置で慣用されており、したがって標準装置として使用することができる。このことも同じくコストを引き下げる。分析装置の全面的に新しいコンセプトを開発しなくてすむからである。
【0018】
プラスチック本体はポリカーボネートまたはポリプロピレンでできていてよい。エラストマーは熱可塑性エラストマー、特にゴム、またはポリプロピレンとエチレン−プロピレン−ジエン−Mクラス−エラストマーとからなる混合物であってよい。このような材料は簡単に加工することができ、コスト的に手頃であり、また、バイオセンサ装置で使用される大半の化学薬品に対して不活性である。しかも、このような材料は分析されるべき物質と全く反応しないかもしくは僅かしか反応しない。検査を誤らせる物質ないし分子の折り畳みの変化もしくはその他の反応は、このような材料によっては起こらないのが通常である。
【0019】
チップカードは、バルブの操作機構の中にサンドイッチ状に配置されていてよい。チップカードの裏面には、各バルブに関してそれぞれ1つの機構プレートに、各バルブを操作するための1つのピストンが配置されていてよく、ピストンは少なくとも1つのばねを介して機構プレートとピストンとの間で初期応力をかけられており、それゆえピストンとバルブとの間には実質的に押圧力が存在しない。それにより、機械的に高いコストがかかるためにコスト高となる部分はバルブの操作機構の中に収納される。1回だけ使用される使い捨て装置であるチップカードの場合、このようにして安価な材料を、高いコストのかかる生産プロセスなしで使用することができる。
【0020】
バルブの操作機構の中にチップカードをサンドイッチ状に配置することは、確実なかつ位置固定の支承につながり、それによって該機構に対するチップカードの滑りが生じない。それにより、ピストンがバルブを高い信頼度で操作できることが、いつの時点でも保証される。それによって信頼度の高い機能形態が保証される。
【0021】
上に説明した本発明の装置を制御する本発明の方法は、特に少なくとも1つのピストンを介して与えられる押圧力でそれぞれのバルブを付勢することによってバルブがそれぞれ操作されることを含んでいる。押圧力で付勢されないときにはバルブは開いていてこのバルブを付設されたフローチャネルの中を流体が流れ、押圧力でバルブが付勢されるとそのバルブが閉じて、このバルブを付設されたフローチャネル内で流体流が遮断される。
【0022】
この方法は特別に簡単であり、流体流を効率的に制御する。ここで重要なことは、バルブの気密および/または液密な閉止が保証されることである。押圧力による作動によって、バルブおよび作動構造の簡単な構成が可能である。頻繁な開閉がなされたときでも、材料疲労のない高い信頼度の機能形態が実現可能である。
【0023】
バルブの開閉は、実質的に平坦なプレートが列S
nに平行にバルブアレイに対して動くことによって、事前設定されたプログラムに従って行うことができる。
【0024】
電気的なプログラミングや、高いコストの制御調節ループは必要ない。このことは、頻繁に実施される常に同じ分析プログラムの場合、簡単で信頼度が高くコスト的に手頃な構造および方法につながる。バルブの制御は、実質的に平坦なプレートの運動により、機械式にのみ行うことができる。このことは、正に液体の取扱いや実験室の環境との関連で、高いコストのかかる制御電子装置に比べて故障の起こりやすさが低いので、検査の高い信頼性につながる。
【0025】
バルブの制御機構のm’個の行Z
m'と、バルブアレイのm個の行Z
mとの間の差は、少なくとも1つのバルブが操作されるプロセスステップの数を生じさせることができる。
【0026】
バルブの制御を含むプロセスは、一方では、実質的に平坦なプレートがバルブアレイに対して相対的に固定的な速度で動くことによって実行することができ、全ての行Z
mのそれぞれの相互間隔が等しいときには、1つのプロセスステップの時間は行Z
m'のそれぞれの相互間隔によって規定され、または、全ての行Z
m'のそれぞれの相互間隔が等しいときには、1つのプロセスステップの時間は行Z
mのそれぞれの相互間隔によって規定される。
【0027】
実質的に平坦なプレートは一定の速度で、加速する速度の場合よりも簡単かつ少ないコストで確実に駆動することができる。一定の速度での駆動はコスト的に手頃であり、信頼度が高い。プロセスステップの時間を各行の間隔によって規定することは、検査の高い再現性と信頼度につながる。
【0028】
バルブの制御を含むプロセスは、他方では、実質的に平坦なプレートがバルブアレイに対して相対的に、プロセスステップの時間にその都度合わせられている速度で動かされることによって実施することができ、行Z
mはそれぞれ相互に、および行Z
m'はそれぞれ相互に、等しい間隔をおいて配置される。
【0029】
複数の行の等しい相互間隔は本発明による装置の構造と製造を簡素化する。ただし、実質的に平坦なプレートを駆動するためのコストは、加速する運動の場合には高くなる。
【0030】
上に説明した本発明による装置の製造方法は、n個の列S
nおよびm個の行Z
mへのアレイの複数のバルブの配置に応じて、フローチャネル(flow channel)を本発明による装置に設けることを含んでいる。このことは、バルブに依存する本発明による装置の設計を可能にする。比較的高いコストで生産されるべきバルブを前提としたうえで、これに続いてフローチャネルおよび反応室が配置ないし設計される。そのようにして、複数のバルブからなるバルブアレイを常に同じアレイ鋳型で簡単かつコスト的に手頃に、鋳型の再使用によって生産することができ、アレイのどの個所にバルブを設けるかあるいは設けないかを決めるだけでよい。安価で簡単に生産できるチャネルおよび室は、バルブおよび実施されるべき反応や、所望の流動性に依存して決定および製造される。そして設計や製造のコストに関わる利点を、半導体エレクトロニクスと同じように具体化することができる。そこではデバイスが回路の役割や生産技術に応じてチップ上に配置され、デバイスの位置に応じて配線が設計されかつ具体化される。所望の電気回路が得られるように、各デバイスが相互に配線によって電気的に接続される。
【0031】
本発明による装置の制御方法、および本発明による装置の製造方法と結びついた利点は、ラブ・オン・ア・チップ・システム内の流体流の制御装置に関してすでに説明した利点に準ずる。
【0032】
次に、従属請求項の構成要件に基づく好ましい発展例を含む本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明するが、これに限定するものではない。