特許第5677427号(P5677427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5677427
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月25日
(54)【発明の名称】熱障壁を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 9/08 20060101AFI20150205BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20150205BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20150205BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20150205BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20150205BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20150205BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20150205BHJP
【FI】
   C25D9/08
   C25D21/12 A
   F02C7/24 A
   F02C7/00 F
   F02C7/00 C
   F01D25/00 L
   F01D5/28
   F01D9/02 102
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-522233(P2012-522233)
(86)(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公表番号】特表2013-500399(P2013-500399A)
(43)【公表日】2013年1月7日
(86)【国際出願番号】FR2010051614
(87)【国際公開番号】WO2011012819
(87)【国際公開日】20110203
【審査請求日】2013年7月9日
(31)【優先権主張番号】0955369
(32)【優先日】2009年7月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(73)【特許権者】
【識別番号】512022697
【氏名又は名称】ユニベルシテ・ドウ・ラ・ロシエル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペドラサ・デイアス,フエルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ブシヨー,バテイスト
(72)【発明者】
【氏名】バルマン,ジヨスリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ボネ,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ムヌイ,ジユステインヌ
【審査官】 深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−193997(JP,A)
【文献】 特開2000−273694(JP,A)
【文献】 特開2009−149983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 9/00−9/12,13/00−21/22
C23C 4/00−30/00
F01D 1/00−11/10
F02C 1/00−9/58
C01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の構造の少なくとも一部を被覆するセラミックコーティング層を備えた熱障壁を製造する方法において、該セラミックコーティング層は少なくとも1個の陰極(26)と少なくとも1個の陽極(28)との間でのカソード電着工程のみによって基板上に成膜され、該基板が電子導電性材料から形成されおよび該陰極を構成している方法であって、電着工程によって適用されるコーティング層がランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハフニウムの酸化物を含んでなる群から選択される少なくとも1つの酸化物を含むように、電解質(24)がランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハフニウムの塩を含んでなる群から選択される少なくとも1つの塩を含むこと、ならびに400℃から2000℃の範囲にある温度にて少なくとも10分の期間にわたってセラミックコーティング層を熱処置する段階も含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
電着工程によって適用されるコーティング層がランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハフニウムの酸化物を含んでなる群から選択される少なくとも2つの酸化物を含むように、前記電解質(24)が、ランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハフニウムの塩を含んでなる群からの少なくとも2つの塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
電着工程によって適用されるコーティング層が少なくとも酸化セリウムを含むように、前記電解質(24)が少なくとも1つのセリウム塩を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記基板が超合金、ニッケルベース超合金、コバルトベース超合金、チタンおよびこれの合金、アルミナイドおよび/またはシリサイドをベースとする金属間化合物、金属マトリックス複合体、セラミックマトリックス複合体、ならびに有機マトリックス複合体を含んでなる群に属する材料で形成されることを特徴とする、請求項1、2、または3に記載の製造方法。
【請求項5】
ランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムの、およびハウニウムの塩が初期において、電解質(24)中に0.05mol/Lから5mol/Lの範囲にある濃度で存在することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
電解質(24)が硝酸塩を0.05mol/L以上の濃度で含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
電解質(24)のpHが7未満であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
電着工程が1時間を越えて持続しないことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
電着工程が参照電極(30)を使用することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
電着工程が陰極(26)と陽極(28)との間に電流密度を印加することによって行われることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
印加される電流密度が−0.5mA/cmから−5mA/cmの範囲にあることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
電着工程が陰極(26)と陽極(28)との間に電圧を印加することによって行われることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
印加される電圧が−30Vから+30Vの範囲にあることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
コーティング層を乾燥する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
熱処置が少なくとも0.0001バール(10Pa)の酸素の存在下の大気圧のアルゴン下で行われたことを特徴とする、請求項1から14のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板、特に航空機分野での高温用途で使用するための基板を被覆するセラミックコーティング層を備えた、熱障壁を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなセラミックコーティング層が特に熱障壁として使用されるのは、この断熱特性(非常に低い熱伝導率)のために、100℃を超え得る温度勾配により基礎を成す基板の動作温度を低下させることが可能であるからである。
【0003】
さらに金属層は、単独でまたは基板とセラミックコーティング層との間の下層としてのどちらかで、高温のときの、特に金属層が、特に2原子酸素が低い分圧にておよび/または大気圧中で1000℃を超える温度にて存在する条件下で保護を提供するα−Alアルミナの層を生じさせるアルミニウムを含むときの、酸化による腐食に対する耐性特性のために使用される。特にアルミナイド層およびMCrAlY型(式中、Mは、ニッケル、コバルト、鉄、またはこれらの金属の混合物から選択される金属である。)合金の層が挙げられ得る。このような酸化は特に天然の方式で、空気中で高温にて起こる。
【0004】
現在、このようなセラミック層または金属層を製造するための複数の方法が公知である。
【0005】
化学気相成膜(CVD)による成膜方法は、ガス状前駆物質から薄膜を成膜する方法である。CVDは、比較的安価であるという利点と、分布を均一にできるという利点と、コーティング層の厚さを制御できるという利点も示す。対照的にこの製造方法は汚染種(前駆物質/活性化物質)を利用し、このような廃棄物の続いての処理を必要とする。加えて、航空機などの分野における熱機械部品への用途のためには、作業温度は比較的高く、コーティング層を製造するために必要な時間は、3時間を下回らない数時間である。
【0006】
この技法によって基板上に成膜されたコーティング層は、従来はアルミナイドの層である。これのコーティング層を備えた基板の寿命および性能を改善するために、特に、白金中のアルミナイド層をめっきすることによって保護酸化物層の付着を改善する提案が行われてきた。これにもかかわらず、白金は非常に高価な原材料であり、白金めっきはアルミニウム処理の前に幾つかの追加操作を生じさせ、これにより生産コストがさらに上昇する。
【0007】
熱スプレー技法は、微粒子(5マイクロメートル(μm)から100μmのサイズを通例有する。)を加速して、微粒子を基板に輸送する役割を果たすベクトルガスを送出することに存し、粒子は液体状態、ペースト状態、または固体状態でさえあり得る。ベクトルガスは、エンタルピー源でもあり得、粒子を融点まで(特にプラズマスプレーによって)加熱する役割を果たす。概して、スプレー技法は方向性であり、即ちスプレー技法は線形軸に沿ってジェットを送出するので、複雑である幾何形状を有する基板のすべての部分にスプレー層をスプレーする、および/または均一化することを目的として実施される、自動システムまたは費用のかかる後処理を必要とする。加えてスプレー技法は、汚染性である工程、特に真空噴霧を使用して製造される粉末を利用する。
【0008】
この技法によって基板上に成膜されたコーティング層は、従来、MCrAlYの層、例えばFeCrAlY、CoCrAlY、またはNiCOCrAlYである。これらの層が成膜されるためには、基板と熱的および化学的に適合性である必要がある。
【0009】
別の公知の技法は、イオンを注入することによって金属形の反応性元素を合金またはコーティングの表面に添加することに存する。この比較的高価な技法は粒子加速器および真空容器の使用を必要とし、このため注入できる部品/基板のサイズに制限が設けられ、表面にてわずか約0.05μmから0.5μmまでの深さでドーピングが引き起こされる。部品/基板の形状はまた単純で、本質的に平面でなければならない。
【0010】
ブラシによって塗布され得る塗料を形成する水性もしくは有機懸濁液(スラリまたはゾル−ゲル)を塗布することによって、または塗料に部品を浸漬することによって前記層を形成することも可能であり、塗料は続いて気化される。これにもかかわらず、このような状況下で結合剤、特に有機結合剤が使用され、これらは有害なことがある揮発性元素を放出する。加えてコーティング層の十分な厚さを得るためには、懸濁液を連続して複数回塗布することが必要であり、これにより中間の乾燥段階を考慮すると、工程の実施は比較的長時間となる。さらに、このような懸濁液を、均一な方式で形状が複雑な部品に塗布することは困難である。
【0011】
コーティング部品が冷却孔を含むときに、従来技術のこれらの各種の技法がコーティング層の形成の間に少なくとも一部が閉塞される孔を生じさせることも理解できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、実質的に均一であり、および意図される用途に適切である特性を示すコーティング層を有する熱障壁を得る目的のために、単純、安価および非汚染性である方法を提案することによって、複雑な形状の基板/部品のためのコーティング層を製造する方法の欠点を軽減しようと努めている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このように、本発明は、基板の構造の少なくとも一部を被覆するセラミックコーティング層を備えた熱障壁を製造する方法に関し、セラミックコーティング層は少なくとも1個の陰極と少なくとも1個の陽極との間のカソード電着工程(CELD)のみによって基板上に成膜され、基板は電子導電性材料で形成されており、陰極を構成している。
【0014】
本発明により、電着工程によって適用されるコーティング層がランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハフニウムの酸化物からなる群から選択される、少なくとも1つの酸化物を含むように、電解質がランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハフニウムの塩をからなる群から選択される少なくとも1つの塩を含み、製造方法は400℃から2000℃の範囲にある温度にて少なくとも10分の期間にわたってセラミックコーティング層を熱処置する段階も含む。
【0015】
この方法によって、部品の材料を構成する基板の上に直接、またはさもなければ、部品を被覆して、次に被覆される基板を構成する下層の上にのどちらかでコーティング層を形成することが可能となる。
【0016】
例えば、コーティング層の成膜を望まない部分でマスクを使用することによって、または実際に局所電着によって、基板の表面の一部のみを被覆することも可能である。
【0017】
コーティング層を形成するために、本発明に従って製造方法を実施した後に、特に上述の従来技術の成膜技法を使用して、1つ以上の他の層をコーティングに含むための完全な調製の準備をすることも可能である。
【0018】
コーティング層を製造する本発明のこのような方法は、熱スプレー技法または気相成膜技法と比較して、特に環境保護的および安価(実施時間が短く、真空装置の使用を避けた大気圧で行われる。)である。このように、過去にコーティングに好適でなかった部品をコーティングすることが可能である。
【0019】
加えて、本発明の製造方法の実施は、孔のあいた部品と適合性である。電流線の形状は、孔の内部、特に小型の冷却孔の中でいずれの著しい成膜も生じるのを防止し、このため孔は閉塞されない。
【0020】
またこのような方法により、危険な化学薬品の使用および毒性廃棄物の産生が回避されることも認識されるべきである。
【0021】
最後に、本発明の製造方法は実施するのが簡単である。電解質、陰極(コーティング用部品)、および陽極は、好ましくは単一の容器内に配置される。
【0022】
ランタニド塩の中でも、セリウム、または実際にランタンおよび/もしくはガドリニウムを選択することが好ましいが、他のランタニドのいずれか、即ちプラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムを使用することも可能である。
【0023】
好ましい構成において、酸化セリウムをベースとするセラミック層の形成を引き起こすために、セリウムの1つ以上の塩が唯一または本質的に使用される。
【0024】
「酸化セリウムをベースとする」という用語は、セラミック層が大部分として、ならびに可能であれば単独の構成要素としても、酸化セリウム、特にCeおよび/またはCeOを示すことを意味する。
【0025】
好ましい構成において、前記電解質は、電着工程がランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハフニウムの酸化物からなる群からの少なくとも2つの酸化物を有するコーティング層を産生するように、ランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハフニウムの塩からなる群から選択される少なくとも2つの塩を含む。
【0026】
このことは、希土類の混合物の(例えばセリウムならびにランタン、または実際にセリウムおよびランタンおよびガドリニウムなど)オキシ水酸化物の同時成膜を単一段階で実現する役割を果たす。
【0027】
別の好ましい構成において、前記電解質は、電着工程が少なくとも1つの酸化セリウムを有するコーティング層を産生するように、少なくとも1つのセリウム塩を含む。このことは電解質がランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハフニウムの塩からなる群から選択される1、2以上の塩を有するときに当てはまる。
【0028】
好ましくは前記基板は、超合金、ニッケルベース超合金、コバルトベース超合金、チタンおよびこれの合金、アルミナイドおよび/またはシリサイドをベースとする金属間化合物、金属マトリックス複合体、セラミックマトリックス複合体、ならびに有機マトリックス複合体を含む群に属する材料で形成される。
【0029】
基板がアルミナイドをベースとする場合、以下のアルミナイドの1つまたはこの混合物、特に、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ルテニウムおよび白金アルミナイドが選択される。基板がシリサイドをベースとする場合、以下のシリサイドの1つまたはこの混合物、特に、モリブデンシリサイドおよび鉄シリサイドが選択される。
【0030】
本発明の他の特徴および利点は、非制限的な例として与えられた本発明の複数の好ましい実施の以下の記述を読むと、より良好に明らかとなる。記述は、添付図面に言及している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の製造方法の実施においての使用に好適な機構の図である。
図2】異なる電流密度を使用して、本発明の製造方法によって得られたコーティング層表面の顕微鏡写真図である。
図3】異なる電流密度を使用して、本発明の製造方法によって得られたコーティング層表面の顕微鏡写真図である。
図4】異なる電流密度を使用して、本発明の製造方法によって得られたコーティング層表面の顕微鏡写真図である。
図5】電解質中に含有された異なる配合の塩を使用して、本発明の製造方法によって得られたコーティング層表面の顕微鏡写真図である。
図6】電解質中に含有された異なる配合の塩を使用して、本発明の製造方法によって得られたコーティング層表面の顕微鏡写真図である。
図7】熱処置なしの、基板表面に成膜されたコーティング層を示す顕微鏡写真断面である。
図8】第1の熱処置ありの、基板表面に成膜されたコーティング層を示す顕微鏡写真断面である。
図9】第2の熱処置ありの、基板表面に成膜されたコーティング層を示す顕微鏡写真断面である。
図10】熱重量分析によって得られるような、ベア基板および各種の代替物によってコーティングされた基板の等温酸化挙動を示す。
図11】熱重量分析によって得られるような、ベア基板のおよび各種の代替物によってコーティングされた基板の繰返し酸化挙動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
使用され得る電着設備20は、中に被覆のための部品形成基板が浸漬されて、陰極26(作用電極)として作用する電解質24で充填された単一の容器22を備える。陽極28(または対電極)も電解質24に浸漬される。陽極28は、例えば白金グリッドの形の、電解質浴(電解質)に対して化学的に不活性である材料によって構成され、陽極は基板(陰極26)にて均一である電流線を生成するような方式で位置決めされる。
【0033】
好都合には、電着工程は、電解質24の抵抗の効果を最小限にするために、および電着中のより良好な制御を提供するために、陰極26付近に配置された参照電極30も使用する。本参照電極30は好ましくは飽和カロメル電極(SCE)によって構成され、カロメルは塩化第一水銀HgClである。
【0034】
この三電極電着設備20によって、電流密度および電圧がインサイチューで正確に追跡できるようになり、同時にコーティング層が作製される。
【0035】
3個の電極(陰極26、陽極28および参照電極30)は、制御およびデータ取得システム34に連結された電流源32に接続されている。
【0036】
第1の別法において、電流源32が陽極28と陰極26との間に電位(または電圧)を与える定電位モードが使用される。このような状況下では、電流源32はポテンシオスタットであり、電着工程は陰極26と陽極28との間に電圧を印加することによって行われる。陰極26と陽極28との間に印加された電圧は好ましくは−30ボルト(V)から+30Vの範囲にあり、さらに好ましくは−2.5Vから+2.5Vの範囲にある。
【0037】
好ましい第2の別法において、電流源32が陽極28と陰極26との間に電流密度を与える定電流モードが使用される。このような状況下では、電流源32はガルバノスタットであり、電着工程は陰極26と陽極28との間に電流密度を印加することによって行われる。陰極26と陽極28との間に印加された電流密度は好ましくは、−0.5ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm)から−5mA/cmの範囲にあり、さらに好ましくは−0.5mA/cmから−2mA/cmの範囲にある。
【0038】
電解質は、電解質24に溶解された塩の形で陰極上に成膜される1つ以上の種を含有する。電流密度または電位の印加は、種であって、これが用いられてセラミックコーティング層が、電解質の量と、陰極26(基板)の表面との間の界面(拡散層)に形成される種を減少させる役割を果たす。
【0039】
成膜の厚さにわたって均一であるまたは勾配を示す(組成、微細構造、結晶学的特徴などに関する)特徴を得ることが可能である。
【0040】
塩は、1つ以上のアニオンおよび/またはカチオン種、特に硝酸塩、硫酸塩、塩化物、または酢酸塩を含み、好ましくは硝酸塩である。このように、電解質は好ましくは、硝酸塩、特に硝酸セリウムを0.05モル/リットル(mol/L)以上の濃度で含む。硝酸塩を0.1mol/L以上の濃度で提供することが可能である。
【0041】
電着コーティング層の1つ以上のカチオン種は、ランタニド系列、イットリウム、ジルコニウムおよびハフニウムの種によって構成される群に属する。セリウム(単独でまたはベースとして)またはセリウムを含むいずれかの組合せを使用することが好ましい。ランタンまたはガドリニウムの使用も好ましい。
【0042】
電解質24は、溶媒に溶解された塩の量に依存する組成および濃度を示す。特に電解質24は、25ミリジーメンス平方メートル/mol(mS.m/mol)から1000mS.m/molの範囲に、好ましくは150mS.m/molから500mS.m/molの範囲にある、高いイオン導電率を示す。
【0043】
電解質24は、1つ以上のランタニドおよび/またはイットリウムおよび/またはジルコニウムおよび/またはハフニウムを含有する1つ以上の塩の比較的高濃度の溶液である。このように、電解質24の総濃度が0.05mol/Lから5mol/Lの範囲にあるための対応がなされている。
【0044】
好ましくは、ランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムの、およびハウニウムの塩は初期において、電解質中0.05mol/Lから5mol/Lの範囲に、さらに好ましくは0.1mol/Lから0.3mol/Lの範囲にある濃度である。
【0045】
電解質24の溶媒は水性ベースもしくはアルコール(エタノール)の溶液であり、実際にケトン、エステル、もしくはアルデヒド、または実際にこれらのうち2つの混合物をベースとする。電解質を水性ベース溶媒と共に使用することが好ましいのは、より汚染性が低く、再生が容易なためである。
【0046】
好ましくは電解質24の温度は、高レベルの蒸発を回避するために、および電解質24の温度の維持のために消費するエネルギーをより少なくするために、4℃から100℃の範囲に、さらに好ましくは15℃から25℃(周囲温度)の範囲にある。加えてこのような温度範囲によって、高温酸化に対する用途および/または熱障壁用途のために最適化された結晶サイズおよび酸素空孔の濃度を得ることが可能となる。
【0047】
好ましくは電解質24のpHは7未満であり、電解質は明らかに酸性で2.5から5.5の範囲にあり得る。
【0048】
追加の、しかし必須ではない方式において、電解質24は1つ以上の添加剤および/または界面活性剤も含み得る。
【0049】
電解質ならびに3個の電極26、28および30を含有する容器22は、大気圧の周囲空気と接触している。容器22は電解質24に浸漬されている。電解質24を軽く撹拌することが可能である。
【0050】
電着は好ましくは1時間(h)を超えて続かない。この期間は好ましくは、10分(min)から30分の範囲に、さらに好ましくは15分から25分の範囲にある。このように、本発明の製造方法は、比較的迅速に実施できる。
【0051】
電着の間に、特に酸素Oおよび電解質24の水HOからヒドロキシルイオンOHを生成する役割を果たす、1つ以上の還元反応(1)から(4)が得られる。
(1)2H+2e→H+2H
(2)2HO+2e→H+2OH
(3)O+2HO+4e→4OH
(4)O+2HO+2e→2OH+H
【0052】
時には、塩のアニオンは陰極反応に寄与し得る。このように、特に硝酸塩を用いると、等式は以下の通りである。
(5)NO+10H+8e→NH+3H
(6)NO+HO+2e→NO+2OH
【0053】
電解質24は酸性pHを示すので、Hカチオンの存在およびヒドロキシルイオンOH(塩基)の形成も、塩基およびカチオンを含有する形成化合物が成膜されることに寄与し得る。
【0054】
このように、セリウムカチオン種およびヒドロキシルアニオン種の特定の状況では、Ce(OH)および/またはCe(OH)2+の形成は、特に(7)から(9)の反応によって促進される。
(7)Ce3++3OH→Ce(OH)
(8)4Ce3++O+4OH→2HO→4Ce(OH)2+
(9)2Ce3++2OH+H→2Ce(OH)2+
【0055】
最後に、電着化合物の酸化および/または部分脱水が起こり得る。セリウムを含む種の特異的な状況において、Ce3+はCe4+に酸化され得る。
(10)Ce(OH)→CeO+H+e
(11)Ce(OH)2+→CeO+2H
【0056】
コーティングはこのようにして、塩基性の電気的発生によって、電解質中に存在するカチオン種との反応によって、電気的結晶化または沈殿のどちらかによって形成される。
【0057】
コーティング層は、一般組成T(OH)z−x(L)、YHOを有する膜の初期形成から生じ、式中、
T(希土類)は、ランタニド、イットリウム、ジルコニウムおよびハウニウム、ならびに特に単独のまたは別の希土類酸化物の存在下のセリウムを含む群に属し、
Lはリガンドであり(硝酸塩または他のアニオンなど)、
は、開始塩の正電荷の数であり、
は、リガンドの負電荷の数であり、ならびに
Yは水分子の数である。
【0058】
好ましい別の構成において、場合により、本発明の製造方法はコーティング層を乾燥する段階も含む。このような段階は好ましくは、周囲温度にて少なくとも24時間、好ましくは48時間まで行われる。
【0059】
さらに正確には、いったん電着が終了すると、コーティングされた部品は各種の溶媒(水、アルコール、ケトン、エステル、アルデヒド)を使用して場合によりすすがれて、次にコーティングの基板からの完全な剥離を回避するために、十分に低い出力にて冷気流もしくは熱気流または他の何らかのガス流によって場合により乾燥され得、または部品は、コーティング中の水分の少なくとも一部を蒸発させるために、吸湿性物質の存在下で容器中にある期間にわたって貯蔵され得る、または他のいずれかの方法、例えば空調が使用され得る。好ましい方法は、アルコール中でのすすぎと、続いての少量の熱気流を使用する第1の乾燥段階と、続いての減圧下での貯蔵による(デシケータ内で、好ましくは少なくとも24時間にわたる。)第2の乾燥段階である。
【0060】
好ましい別の構成において、場合により、可能であれば乾燥ステージの後に、本発明の製造方法は、コーティング層に好ましくは400℃から2000℃の範囲にある高温が少なくとも10分の期間にわたって加えられる熱処置乾燥段階も含む。
【0061】
容器内の圧力は大気圧以下であり得る。容器中のガス状雰囲気は、完全もしくは部分酸化性および/または不活性および/または還元性であり得るが、コーティング中で形成される物質を生じさせることができ、酸素、窒素、炭素、ランタニド、イットリウム、ジルコニウム、ハウニウムまたはこれらの種のいずれかの組合せ(中性形、カチオン性形、アニオン性形、共有または金属形の)以外の種を含有する、SO、HClなどのいずれの腐食性物質も含有してはならない。
【0062】
このような状況下では、好ましくは熱処置は、少なくとも0.0001バールの酸素の存在下の大気圧のアルゴン下で、好ましくは60分の期間にわたって1050℃にて行われる。このような状況下では、好ましくは5℃/分(℃/分)の上昇および下降温度傾斜が使用される。
【0063】
コーティング層でコーティングされた部品のこのような追加の熱処置によって、コーティング層の組成、微細構造、結晶構造および/または厚さを特異的に修飾および調整することが可能になる。このような調整は、繰返し酸化に耐える能力、等温酸化に耐える能力、熱伝導率の低下、自然酸化によって得たアルミナ層の存在への依存性の低下および溶融塩または「CMAS」(「CaO−MgO−Al−SiO」、即ちエンジン吸引砂および/またはエンジンの上流部に由来する他のいずれかの破片から生じる、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよびケイ素の酸化物、ならびにこのような酸化物の混合物を含有する酸化物組成物)の成膜に耐えるより大きい能力などの、意図される用途に対応する特性を改善する役割を果たす。
【0064】
このように、本発明の製造方法によって、コーティング層の成膜は、(金属化は従来の電着から生じる現象に存在するために含まれないので、金属性ではない)セラミックである天然化合物の形で得られる。
【0065】
本発明の製造方法によって得られたコーティング層は、可変量の水を含有して(金属オキシ酸化物)、塩および溶媒から産生されたヒドロキシルアニオンまたは他のいずれかのアニオンも含む(ランタニドおよび/またはイットリウムおよび/またはジルコニウムおよび/またはハフニウムの)酸化物をベースとする組成物を示す。
【0066】
このように、ランタニドの、イットリウムの、ジルコニウムのおよびハウニウムの酸化物によって構成された群に属する酸化物に加えて、コーティング層は、式M(OH)(式中、Mは、ランタニド金属、イットリウム、ジルコニウムおよび/またはハウニウムであり、はヒドロキシルアニオンの負電荷(OH)であり、は、ランタニド金属、イットリウム、ジルコニウムおよび/またはハウニウムの正電荷の数である。)の少なくとも1つの金属水酸化物および少なくとも1つのヒドロキシルアニオン(OH)も含む。
【0067】
さらに詳細には、コーティング層は乾燥および/または熱処置後に、式MO.OHの金属オキシ酸化物を含み、式中、Mは、ランタニド金属、イットリウム、ジルコニウムおよび/またはハフニウム、ならびに好ましくはセリウムである。
【0068】
コーティング層は、ランタニド、イットリウム、ジルコニウムおよびハウニウムによって構成された群からの1つ以上の元素、また、酸素、窒素、炭素(または電解質の対イオンに含有される他のいずれかの種)を、ニッケルおよび/またはアルミニウムおよび/またはクロムおよび/またはコバルトおよび/またはチタンおよび/またはタングステンおよび/またはタンタルおよび/またはモリブデンおよび/またはレニウムおよび/またはルテニウムおよび/またはニオブおよび/またはケイ素および/または鉄および/またはマンガンおよび/または白金および/またはパラジウムおよび/またはイリジウムと共に含有する可変組成を示し得る。
【0069】
好都合な構成により、コーティング層は、場合により安定剤(ドーパント)を形成する少なくとも1つの他の希土類酸化物によって完成される、酸化セリウムのベースから形成される。
【0070】
本発明の製造方法によって得られたコーティング層は、非晶性および/または結晶性および/またはナノメートルである構造(ナノメートルオーダーのサイズを有する元素)を有し得る。概してコーティング層は、結晶がナノメートル範囲のサイズを有する結晶相の最小パーセンテージを示す。
【0071】
電着のために選択されたパラメータに応じて、本発明の製造方法によって得られたコーティング層は、高温酸化および/もしくは熱障壁効果ならびに/または有害種を捕捉する効果に耐える特性を示す。
【0072】
すべての状況の下で、孔(および場合により亀裂)を含有するいわゆる「乾燥泥」陶器微細構造に存する特異的形態は、本発明の製造方法によって得られたようなコーティング層の外面で観察され得る(図2から6)。
【0073】
酸化セリウムベースのみを用いて(および乾燥を用いて)形成されたコーティング層の表面を示す図2から4に見られるように、図1から図4まで上昇する異なる電流密度では、異なる形態を得ることが可能である(図2は−0.5mA/cm図3は−1mA/cmおよび図4は−1.5mA/cm)。
【0074】
加えて、使用する電流密度の上昇によって、サイズ(長さ、幅および奥行き)が増大する亀裂が出現する(図3および4)。
【0075】
電流密度の変化によって、コーティング層表面の組成も修飾される。より低い電流密度を印加すると、コーティング中に存在する基板元素がより高濃度で生じるのは、より低い電流密度が、特にニッケル合金をベースとする基板のニッケルで、より高い電流密度と比較して、より薄い厚さを示すためである。
【0076】
成膜の厚さも、印加された電流密度および成膜時間と共に増大する。
【0077】
最大電流密度の使用時には、最大35at%の希土類が観察されている。
【0078】
図5も酸化セリウムのみに基づいて形成されたコーティング層を示し、より高い倍率によって、コーティング層外面の針状構造の絡まりが明らかになっている。「針状構造」という用語は、構造を成す元素について3次元の優先方向に長い形態が存在する結果として、顕微鏡写真の構成要素が金属組織断面に針形状を有するように見える構造を意味する。
【0079】
相対的に図6は、混合酸化物(詳細には、セリウムおよびガドリニウムの酸化物)を使用して作製されたコーティング層について、球状微細構造がコーティング層の外層に見られることを示している。「球状微細構造」という用語は、構造を成す元素が優先的に長くなっていない、丸みのある形態が存在する結果として、不規則な円形形状である顕微鏡写真の構成要素の存在を意味するために使用される。
【0080】
本発明の製造方法から生じたコーティング層は層ごとに成長して、幾つかの特殊性を示す。
【0081】
特にコーティング層は、かなりの濃度の酸素空孔、特に1×1017空孔/立方センチメートル(空孔/cm)以上である、および好ましくは10×1020空孔/cm以上である酸素空孔の濃度を示す。
【0082】
加えてコーティング層は、複数の開口亀裂を有する多孔質構造を示す。
【0083】
本発明との関連において、このような亀裂の存在は、これらが複数の役割を演じるために望ましい。特に亀裂の存在によって、特に熱サイクルの間に異なる熱膨張係数の結果として、コーティング層(セラミックの性質を有する。)が基板(概して金属の性質を有する。)から剥離するのを回避することが可能となる。さらにこのような亀裂の存在は、周囲の酸素がコーティング層を通じて基板まで接近することを制限する。
【0084】
特に、2つの隣接する亀裂間の距離は5μmから50μmの範囲にあり、前記亀裂は1μmから25μmの範囲にある幅lを示す。
【0085】
大半の場合、特に基板またはコーティング層のどちらかがアルミニウムを含むときに、保護酸化物の薄い層(特にアルミナの層)がコーティング層と基板との間の界面に形成され、これにより酸化または高温腐食に対する保護が提供される。このような保護酸化物層は、基板の酸化によって生成することができる。保護酸化物層は、アルミニウム、希土類(ランタニドおよび/またはイットリウムおよび/またはジルコニウムおよび/またはハウニウム)および酸素を含有する。
【0086】
このコーティング層は少なくとも5μmの厚さを示す。
【0087】
コーティング層でコーティングされた部品の追加の熱処置によってコーティング層は脱水され、これによりコーティング層の微細構造および/または厚さおよび/または組成を修飾することが可能となる。
【0088】
特に比較的適度な熱処置温度、特に900℃未満の温度により、陶器の微細構造は維持され、結晶構造はより大きい範囲まで定義され、成膜の厚さは縮小し、希土類の表面濃度は低下して、基板の元素はコーティング層の中へ上昇する。
【0089】
図7は、このように、ニッケルをベースとした熱処置なしの単結晶超合金型の基板上に、酸化セリウムCeO2−xのみに基づいて形成された、本発明の製造方法で得たコーティング層の断面図である。
【0090】
図8は、図7と同じであるが、適度の温度における熱処置(通例900℃で1時間)後のコーティング層を示し、熱処置の終了時には厚さは薄くなり、針状微細構造は維持される。
【0091】
より高い温度、特に900℃を超える温度が熱処置に使用される場合、微細構造は球状となり、成膜の厚さはさらに薄くなり、界面にて生じる酸化物層はより厚くなっている。
【0092】
このように、図9は、図7と同じであるが、高温における熱処置(詳細には1050℃にて1時間)後のコーティング層を示し、熱処置の終了時にはコーティング層の厚さは薄くなり、球状微細構造が出現している。
【0093】
保護酸化物層の形成を促進する目的で、処置を行うために酸化性雰囲気が使用される。従って、空気の減圧下で熱処置を行うことが好ましい。
【0094】
この目的のために、好ましい熱処置において、コーティング層でコーティングされた部品は周囲温度にて容器内に配置され、次に容器が5×10−2ミリバール(mbar)まで真空引きされてから、大気圧のアルゴン流下で温度が5℃/分の速度で1050℃まで上昇され、熱処置はこの温度で1バールの圧力のアルゴン下で1時間行われ、次に温度が空気流下にて5℃/分の速度で周囲温度まで下げられる。これは、酸化を促進するために減圧酸素中において(少なくとも0.0001バール、即ち10パスカルで存在する残留酸素)アルゴン下で行われる処置を構成する。
【0095】
図9のコーティング層はこのような熱処置を受けている。
【0096】
ベア基板および各種の別法でコーティングされた基板について、等温酸化性能および繰返し酸化性能をそれぞれ示す図10および11をここで参照する。図10において、ミリグラム/平方センチメートル(mg.cm−2)で表現される単位面積当たりの重量増加は、大気圧の空気下での1100℃における酸化時間の関数として測定される。図11において、単位面積当たりの重量増加(mg.cm−2)は、大気圧の空気下での1100℃における繰返し酸化サイクルの回数の関数として測定される。
【0097】
曲線Aは、ニッケルベース単結晶超合金型のベア基板に関する。曲線Bは、気相アルミナイズ(VPA)技法によって成膜されたニッケルアルミナイドでコートされた同じ基板(アルミナイズ基板(alminized substrate))に関する。曲線Cは、カソード電着および熱処置によって得た酸化セリウムから成るコーティング層でコーティングされた、同じ基板に関する。最後に図10において、曲線Dは、カソード電着および熱処置によって得た酸化セリウムから成るコーティング層で被覆されたニッケルアルミナイドの下層でコーティングされた、同じ基板を有する部品に関する。
【0098】
図10および11において、コーティング層(曲線C)は、アルミナイジングによって与えられる保護(曲線B)と同様である、高温酸化(等温または繰返しにかかわらず)に対する保護を与えることがわかる。この保護は、ベア基板(曲線A)と比較して、酸化の反応速度を著しく低下させる。
【0099】
酸素空孔の存在は、コーティング層と基板との間の界面での(特にアルミナの)保護酸化物層の形成に寄与することによって、高温酸化に対するこのような耐性が可能となり、この酸化物層は続いて、酸素が界面中に進入するのを部分的に防止する。
【0100】
曲線Bと比較して曲線Cで見られる大きな重量増加が発生するのは、空孔を介して酸素が進入することによるアルミナ層のこのような形成の間である。
【0101】
図11において、繰返し酸化に対する耐性もコーティング層(曲線C)およびアルミナイズ層(曲線B)で良好であることと、この耐性がベア基板の耐性よりもはるかに良好であることがわかる。
【0102】
微細構造が変化することが観察され、等温酸化(図10)または繰返し酸化(図11)の間に球状微細構造が出現する。
【0103】
本発明により、アルミナイド層(特にニッケルアルミナイド層)の成膜(CVD、または他の何らかの技法、特にVPAによる成膜にかかわらず)の前または後に、カソード電着によって成膜される、大部分が酸化物(特に酸化セリウム)から成るコーティング層の提供が可能であることが確認されるはずである。
【0104】
コーティング層に望ましい詳細な特性の関数として、本発明の製造方法の実施プロトコルの好ましい態様の記述が続く。
【0105】
応用例1:高温抗腐食および/または抗酸化
このような状況下で、使用する浴は、撹拌なしの0.1mol/Lの硝酸セリウムCe(NO、6HOの水性浴である。電着による成膜を作製するのに必要な時間は、十分に厚い成膜を得るために、好ましくは10分から20分の範囲にある。電流密度は、セラミックコーティングに望ましい特徴(亀裂のサイズ、微細構造、亀裂の幅)を得るために、好ましくは−0.5mA/cmから−1.5mA/cmの範囲にある。成膜はエタノールですすぎ、次に熱気で乾燥させ、最後にデシケータ内の乾燥空気で48時間貯蔵する。この後、熱処置を行う。好ましい処置手順を使用する(アルゴン流下で1050℃および1時間)。
【0106】
応用例2:熱障壁
ここで熱障壁用途のための電着による成膜を作製するのに必要な時間は、好ましくは20分から60分の範囲にある。印加される電流密度は、過度の亀裂およびあまりに著しい亀裂幅を制限するために好ましくは低く、−0.5mA/cmから−2mA/cmの範囲にある。成膜はエタノールですすぎ、次に熱気で乾燥させ、最後にデシケータ内の乾燥空気の下で48時間貯蔵する。この後、熱処置を行う。好ましい処置手順を使用する(アルゴン流下で1050℃および1時間)。
【0107】
本発明の製造方法によって得られたコーティング層の微細構造は孔および亀裂を示し、これによりこの種のセラミックのすでに低い熱伝導率において、追加の還元が実現される。
【0108】
応用例3:温室効果ガス排出の低減
汚染性種および有害種を捕捉できるように(交換目的で)、比較的大きい表面積を示す比較的厚い成膜を得るために、ここで電着による成膜を作製するのに必要な時間は、好ましくは20分から60分の範囲にある。電流密度は、好ましくは−0.5mA/cmから−1.5mA/cmの範囲にある。成膜は好ましくは、1×1017/cm以上の空孔率を示す。成膜はエタノールですすぎ、次に熱気で乾燥させ、最後にデシケータ内の乾燥空気の下で48時間貯蔵する。この後、熱処置を行う。好ましい処置手順を使用する(アルゴン流下で1050℃および1時間)。
【0109】
(特に航空機エンジンからの)温室効果ガス排出を低減することができる、有害種および汚染種を捕捉するこのような効果は、本発明の工程によって得たセラミック/酸化物コーティング層がランタニド、イットリウム、ジルコニウムおよびハフニウムの酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化物であって、触媒として作用する酸化物を含むという事実に起因する。この組成のためにおよびこの高い空孔、特に酸素空孔の密度のために、ガス(炭化水素、一酸化炭素、酸化窒素、すすおよび他の排気ガス化合物など)を捕捉すること、ならびに酸化還元反応により、有害なおよび/または汚染性の化合物の少なくとも一部を排除することが可能であり、同時に反応するのに好適であるイオンの少なくとも一部が再生される。本発明の工程によって得たコーティング層の良好な酸素貯蔵能力(OSC)特性にも同時に言及する必要があるのは、熱力学的に最も安定である酸化物層を形成するために、酸素空孔を存在させることによって、酸化性汚染性ガスとの関連で作用するだけでなく、コーティング層中での拡散によっても作用する酸素を周囲から捕捉する現象が存在することになるためである。
【実施例】
【0110】
使用される基板の種類の関数として、本発明の製造方法の実施に関連するプロトコルの詳細な記述が続く。
【0111】
[実施例1]
段階1.1から1.13を実施することによって、CeO2−xコーティングの層がニッケルベース基板、特にニッケルベース超合金基板の上に作製される。
【0112】
電解浴(または電解質)の調製
1.1:Ce(No、6HO塩を水に所望の濃度で溶解させる
1.2:空気との接触および金属カチオン(セリウムに適用される。)の考えられる部分酸化を回避するための密封貯蔵、
1.3:電解浴の調製。この電解浴は、周囲温度の溶液400マイクロリットル(mL)を撹拌せずに充填したビーコンである、および
1.4:3個の電極を有する従来の電気化学セル、即ち参照電極30を使用した、コーティングされる試料であって、これ自体が作用電極(陰極26)を構成する試料の表面全体に電流密度を良好に分散させる、幅広白金対電極(陽極28)。
【0113】
コーティングのための部品の調製
1.5:気相アルミナイズのために白金Ptを成膜する前に、通例のようにアルミナAlを用いたサンドブラストによってこの表面を調製するが、他のいずれの種類の調製(機械研磨、電気化学的調製など)も除外される必要はない、
1.6:試料のアルコール溶媒、好ましくはエタノール中でのグリース除去、すすぎおよび次いで熱気中での乾燥(50℃<T<200℃)、ならびに
1.7:電気接触を提供する(例えば接触クランプなど)および電着電解浴に対して不活性である(例えばPt)系を使用して、試料/部品の全体の表面上への膜形成の妨害を回避するための、試料/部品の断面(端)による試料/部品の固定。
【0114】
電着
1.8:接触クランプの、印加のための設定値の制御(印加電位または印加電流)および分極されている系の応答の記録(このためインサイチュー追跡を行うことが可能となる。)の両方の役割を果たすポテンシオスタット(またはガルバノスタット)への接続、
1.9:(表面全体に均一な成膜を得るために)白金対電極に対して完全に中心となる位置における、およびインサイチューで行われる測定の再現性を確実にするために、常に同じ方式で分極に対する系の応答を記録するために、一定であり制御された参照電極からの距離での、コーティングのための部品の浸漬、
1.10:好ましい電着条件:時間=20分、j=−1mA.cm−2、浴の濃度=0.1mol/L、
1.11:電着終了時における、部品の抜出しおよび次の水中でのすすぎ、続いてのアルコール溶媒(エタノール)中での30秒間(s)のすすぎおよび熱気中での乾燥(1.6項と同様)、
1.12:乾燥空気中、好ましくは空気から湿気を捕捉するための物質(例えばシリカゲルなど)を含有するデシケータ中での少なくとも24時間の貯蔵、ならびに
1.13:5℃/分の速度で温度が上昇および下降される、1050℃にて1時間にわたる不活性アルゴン雰囲気下での熱処置。
【0115】
このようにして得たコーティング層の特徴は、以下の通りである。
【0116】
形態および厚さ:電着によって得たコーティング層は、基板表面を均一な方式で亀裂の形で不連続部を有しながら被覆して、「乾燥泥」型の外観を生じさせる。亀裂の分布はランダムであり、亀裂の幅は1μmから25μmの範囲にあり、亀裂間の距離は好ましくは5μmから50μmの範囲にある。亀裂は、コーティング層の厚さ全体を完全に、または部分的に貫通し得る。コーティング層の厚さは、1μmから100μmの範囲にあるべきである。希土類酸化物をベースとするコーティング層の下には、基板と反応する成膜から生じる下層が出現することが可能である。下層の厚さは、コーティング層の厚さを超えるべきではない。
【0117】
組成:コーティング層は、0.10at%から35at%の範囲でのランタニド型および/またはイットリウムおよび/またはジルコニウムおよび/またはハウニウムの元素、0.5at%から75at%の酸素、ならびに0.5at%から30at%の窒素と共に含む。
【0118】
結晶構造:熱処置の前に、コーティング層は、酸化物、水酸化物、硝酸塩、またはこれらの組合せとランタニド元素および/またはイットリウムおよび/またはジルコニウムおよび/またはハウニウムとの結晶相、ならびにわずかな非晶相を備える。熱処置後にコーティング層全体が結晶化される。
【0119】
微細構造:コーティング層の微細構造は、(針型の)細長形状、(球状隆起またはカリフラワー型の)丸形形状、砂漠のバラ(Desert Rose)型形状およびプレート形状を含む。このサイズは亀裂間距離を超えない。
【0120】
欠陥:コーティング層は、各種の割合(0.5%から75%)でアニオン型およびカチオン型空孔欠陥を含む。
【0121】
[実施例2]
CeO2−xコーティング層は、ニッケルアルミナイド基板上(または他の何らかの種類のアルミナイド上)に作製される。
【0122】
実施例1と同じ電解質浴用調製物を使用する。
【0123】
ここで希土類酸化物ベースのコーティング層が上に電着されている基板は、5at%から95at%のAlを1つ以上の金属元素(特にNi、Fe、Ti、Pt、Co、Cr、Si、Ru)を含む100at%までの残りと共に含有するアルミナイド型の金属間材料(バルク材料またはコーティング)に存する。
【0124】
バルク基板上には、Niをベースとする合金または超合金に使用される表面と同じである表面を調製するためのプロトコルを適用することが可能である。基板がアルミナイドコーティングである場合、項目1.6および1.7に記述したようなグリース除去および固定以外の表面調製は不要である。
【0125】
実施例1(段階1.10)を参照して上述されたのと同じ電着工程が実施される。場合により、ニッケルベース合金の活性と比較したアルミナイドの電気化学活性の違いのために、特に基板がNiAl型の化合物である場合、電着条件は好ましくは、電流密度j=−0.5mA/cmと共に、20分の浸漬時間である。(例えば化合物NiAlにおける)アルミナイドのNi(または金属)含有率がより大きい場合、ここで電流密度は好ましくは−0.75mA/cmまで上昇され得る。
【0126】
電着後の段階は、ニッケルベース合金または超合金に対して実施された段階と同様である(段階1.11から1.13)。
【0127】
このように得たコーティング層の特徴は、実施例1を参照して記述されたコーティング層の特徴と同じである。
【0128】
[実施例3]
CeO2−xコーティング層は、白金ベース基板(部品またはコーティング下層の材料)上に作製される。
【0129】
全体の手順は、表面調製(段階1.5)を除いて、ニッケルベース合金および超合金について記述された手順(実施例1)と同様のままである。ここで特定の表面調製は行われない(白金の損失を引き起こし得る、サンドブラスト、機械研磨、電気研磨、他のいずれの処置もなし)。これにもかかわらず、グリース除去段階および乾燥段階(段階1.6)は同じままである。
【0130】
ニッケルベース基板に対して実施例1で記述した工程と同じ電着工程が実施される(段階1.10)。しかし成膜条件は好ましくは、t=20分およびj=−0.75mA/cmである。
【0131】
このように得たコーティング層の特徴は、実施例1を参照して記述されたコーティング層の特徴と同じである。
【0132】
[実施例4]
CeO2−xコーティング層は、ニッケルシリサイドの基板(または他の何らかの種類のシリサイド)上に作製される。
【0133】
電解浴は実施例1と同じ方式で調製される。
【0134】
希土類酸化物ベースのコーティング層が上に電着されている基板は、5at%から95at%の範囲でSiを含有するシリサイド型の金属間材料(バルクまたはコーティング)に存する。100at%までの残りは、1つ以上の金属元素(特にMoまたはFe)に存する。
【0135】
手順はアルミナイドに使用された手順(実施例2)と同様であり、最も好ましい電着条件は、20分の時間および電流密度j=−1.5mA/cmである。
【0136】
このように得たコーティング層の特徴は、実施例1を参照して記述されたコーティング層の特徴と同じである。
【0137】
[実施例5]
CeO2−xコーティング層は、ある最低レベルの電子伝導性を示す複合材料から作製された基板上に作製される。
【0138】
基板は、ある最低レベルの電子伝導性を有するいずれかの複合材料(例えばCoマトリックスをタングステンカーバイドの補強と共に有する「サーメット」)によって構成され得る。
【0139】
複合材料が金属マトリックス(例えば:Co−WCサーメット)を所有する場合、ニッケルベース合金および超合金について、実施例1で上述したプロトコルと同じプロトコルを使用することが可能であるが、好ましくは−1.5mA/cmの電流密度を20分にわたって印加する。
【0140】
複合材料が有機マトリックスを所有する場合、ニッケルベース合金および超合金について上述したプロトコルと同じプロトコル(実施例1)を使用することが可能であるが、以下の変更a)からd)を用いる。
a)表面調製(サンドブラスト)なし、
b)アルコール−水混合物のみを用いたグリース除去、
c)20分にわたる、好ましくは−2.0mA/cmの電流密度、および
d)複合材料の最低融点を有する化合物の溶融温度のほぼ3分の2である温度での熱処置。
【0141】
複合材料がセラミックマトリックスを所有する場合、アルミナイドについて上述したプロトコルと同じプロトコル(実施例2)を使用することが可能であるが、以下の変更a)およびb)を用いる。
a)好ましくは−3.0mA/cmの電流密度を30分にわたって印加すること、および
b)同じ熱処理をしかし1100℃の温度にて使用すること。
【0142】
このように得たコーティング層の特徴は、実施例1を参照して記述されたコーティング層の特徴と同じである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11